以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。本発明による画像表示装置では、複数種類の階調表示を実現するためにパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)方式を用いる。
図1は、本発明による画像表示装置の一例を示す模式的外観図である。画像表示装置10において、図示しないバッテリ(電池)によって表示素子(電気光学素子)1の駆動電圧が供給される。表示素子1は、透明の状態と、光散乱状態とを、外部からの信号等に基づく透明電極への電圧印加の有無によって切り替えることが可能であり、透明電極の形状等により文字および図形を表示することができるものである。
なお、本発明において、透明とは、光の透過率が80%以上である状態を意味する。また、透明の場合には、観察者3は、表示素子1を介して被観察物を視認できる。すなわち、画像表示装置10は、被観察物からの光を透過させる機能(以下、光透過機能という)を備えている。
図2は、画像表示装置10における表示素子1の一構成例を示す模式的断面図である。図2において、一対の基板101,108の相対する面には、透明電極102,107が設けられる。さらに内側には配向膜103,106が設けられる。そして、配向膜103,106の間に、液晶を含み、スペーサ(図示せず)によって厚みが制御された液晶層104が挟持される。そして、シール層105によって液晶層104が封止される。
基板101,108の材質は、透明性が確保できれば特に限定されない。基板101,108として、ガラス基板やプラスチック基板を使用することができる。また、表示素子1の形状は、平面状である必要はなく湾曲していてもよい。
また、基板101,108上に設けられる透明電極102,107として、ITO(酸化インジウム−酸化錫)のような金属酸化物などの透明な電極材料を使用することができる。以下、透明電極102,107が設けられた基板101,108を電極付き基板という。
光透過状態と光散乱状態をとることができる液晶層104は、透明な一対の電極付き基板間に、液晶とその液晶に溶解可能な硬化性化合物とを含有する組成物(以下、未硬化組成物ともいう)を挟持させ、熱や紫外線、電子線などの手段を用いて硬化性化合物を硬化させて液晶/高分子複合体として形成される液晶層であることが好ましい。このような液晶と高分子の複合体からなる液晶を、以下、液晶/高分子複合体ともいう。
液晶/高分子複合体に用いる液晶としては、誘電異方性が正でも負でもよいが、透過状態と光散乱状態の切り替えに要する応答時間を短くするためには、液晶の粘度が低く、さらに誘電異方性が負の液晶を用いることが好ましい。なお、液晶として硬化性ではない化合物が使用される。また、硬化性化合物は液晶性を有していてもよい。
誘電率異方性が負の液晶を使用する場合には、電極付き基板において、液晶層104と接触する側に液晶分子のプレチルト角が基板表面に対して60度以上であるようにする処理が施されていると、配向欠陥を少なくすることができ、透明性が向上するため好ましい。この場合、ラビング処理を施さなくてもよい。プレチルト角は70度以上であることがより好ましい。なお、プレチルト角を、基板表面に垂直の方向を90度として規定する。
液晶層104を形成する液晶/高分子複合体を構成する液晶として、公知の液晶から適宜選択できる。配向膜103,106により未硬化組成物のプレチルト角を制御することができる電極付き基板を用いることによって、誘電率異方性が正の液晶も誘電率異方性が負の液晶も使用可能であるが、より高い透明性や応答速度の面では誘電率異方性が負の液晶が好ましい。配向膜にラビング処理を施すこともできる。また、駆動電圧を低下させるためには誘電率異方性の絶対値が大きい方が好ましい。
また、液晶/高分子複合体を構成する硬化性化合物も透明性を有することが好ましい。さらに、硬化後に、電圧を印加したときに液晶のみが応答するように液晶と硬化性化合物とが分離していると、駆動電圧を下げることができるので好ましい。
本発明では、液晶に溶解可能な硬化性化合物のうち、未硬化時の液晶と硬化性化合物との混合物の配向状態を制御可能であって、硬化する際に高い透明性を保持することができる硬化性化合物が使用される。
硬化性化合物として、式(1)の化合物や式(2)の化合物を例示できる。
A1−O−(R1)m―O―Z―O―(R2)nO―A2 ・・・式(1)
A3−(OR3)o―O―Z’―O―(R4O)p―A4 ・・・式(2)
ここで、A1,A2,A3,A4のそれぞれは、独立的に、硬化部位となるアクリロイル基、メタクリロイル基、グリシジル基またはアリル基であり、R1,R2,R3,R4のそれぞれは、独立的に、炭素数2〜6のアルキレン基であり、Z,Z’のそれぞれは、独立的に、2価のメソゲン構造部であり、m,n,o,pのそれぞれは、独立的に、1〜10の整数である。ここで、「独立的に」とは、組み合わせが任意であって、どのような組み合わせも可能であることを意味する。
式(1)および式(2)におけるメソゲン構造Z,Z’と硬化部位A1,A2,A3,A4との間に、R1,R2,R3,R4を含む分子運動性の高いオキシアルキレン構造を導入することによって、硬化時に、硬化過程において硬化部位の分子運動性を向上でき、短時間で十分に硬化させることが可能になる。
式(1)および式(2)における硬化部位A1,A2,A3,A4は、光硬化や熱硬化が可能な上記の官能基であればいずれでもよいが、なかでも、硬化時の温度を制御できることから光硬化に適するアクリロイル基、メタクリロイル基であることが好ましい。
式(1)および式(2)におけるR1,R2,R3およびR4の炭素数については、その分子運動性の観点から1〜6が好ましく、炭素数2のエチレン基および炭素数3のプロピレン基がさらに好ましい。
式(1)および式(2)におけるメソゲン構造部Z,Z’として、1,4−フェニレン基の連結したポリフェニレン基を例示できる。1,4−フェニレン基の一部または全部を1,4−シクロへキシレン基で置換したものであってもよい。また、1,4−フェニレン基や置換した1,4−シクロへキシレン基の水素原子の一部または全部が、炭素数1〜2のアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基などの置換基で置換されていてもよい。
好ましいメソゲン構造部Z,Z’として、1,4−フェニレン基が2個連結したビフェニレン基(以下、1,4−フェニレン基が2個連結したビフェニレン基を4,4−ビフェニレン基ともいう。)、3個連結したターフェニレン基、およびこれらの水素原子の1〜4個が、炭素数1〜2のアルキル基、フッ素原子、塩素原子またはカルボキシル基に置換されたものを挙げることができる。最も好ましいものは、置換基を有しない4,4−ビフェニレン基である。メソゲン構造部を構成する1,4−フェニレン基または1,4−シクロへキシレン基同士の結合は全て単結合でもよいし、以下に示すいずれかの結合でもよい。
式(1)および式(2)におけるm,n,o,pは、それぞれ独立的に、1〜10であることが好ましく、1〜4がさらに好ましい。あまり大きいと液晶との相溶性が低下し、硬化後の電気光学素子の透明性を低下させるからである。
図3に、本発明において使用できる硬化性化合物の例を示す。液晶と硬化性化合物とを含有する組成物は、式(1),(2)で表される硬化性化合物を含め、複数の硬化性化合物を含有していてもよい。例えば、組成物に、式(1)および式(2)においてm,n,o,pの異なる複数の硬化性化合物を含有させると、液晶との相溶性を向上させることができる場合がある。
液晶と硬化性化合物とを含有する組成物は硬化触媒を含有していてもよい。光硬化の場合、ベンゾインエーテル系、アセトフェノン系、フォスフィンオキサイド系などの一般に光硬化性樹脂に用いられる光重合開始剤を使用できる。熱硬化の場合は、硬化部位の種類に応じて、パーオキサイド系、チオール系、アミン系、酸無水物系などの硬化触媒を使用でき、また、必要に応じてアミン類などの硬化助剤を使用することもできる。
硬化触媒の含有量は、含有する硬化性化合物の20重量%以下が好ましく、硬化後に硬化樹脂の高い分子量や高い比抵抗が要求される場合は0.1〜5重量%とすることがさらに好ましい。
未硬化組成物において、硬化性化合物の総量は、液晶組成物に対して0.1〜20質量%であることが好ましい。0.1質量%未満では、液晶相を硬化物により効果的な形状のドメイン構造に分割することができず、所望の透過−散乱特性を得ることができない。一方、20質量%を越えると、従来の液晶/硬化物複合体素子と同様に透過状態でのヘイズ値が増大しやすくなる。また、さらに好ましくは、液晶組成物中の硬化物の含有率が0.5〜15質量%であり、光散乱状態での散乱強度を高く、透過−散乱が切り替わる電圧値を低くすることができる。
液晶分子を、基板表面に対してプレチルト角が60度以上になるように配向させる処理方法として、垂直配向剤を使用する方法がある。垂直配向剤を使用する方法として、例えば、界面活性剤を用いる方法や、アルキル基やフルオロアルキル基を含むシランカップリング剤などで基板界面を処理する方法、または日産化学工業社製のSE1211やJSR社製のJALS−682−R3等の市販の垂直配向剤を用いる方法がある。垂直配向状態から任意の方向に液晶分子が倒れた状態を作るためには、公知のどのような方法を採用してもよい。垂直配向剤をラビングしてもよい。また、電圧が基板101,108に対して斜めに印加されるように、透明電極101,107にスリットを設けたり、電極101,107上に三角柱を配置する方法を採用してもよい。また、特定方向に液晶分子を倒すような手段を用いなくてもよい。
二つの基板101,108間にある液晶層104の厚さを、スペーサ等で規定することができる。その厚さは1〜50μmが好ましく、3〜30μmがさらに好ましい。液晶層104の厚さが薄すぎるとコントラストが低下し、厚すぎると駆動電圧が上昇する傾向が増大するため好ましくない場合が多い。
シール層105として、透明性の高い樹脂であれば公知のどのようなものを使用することも可能である。透明性の高い樹脂を使用すれば、表示素子は全面に亘って透明感が高まり、文字や図形が空中に浮かんだように見える状態が強調される。例えば、基板101,108としてガラス基板を使用した場合には、ガラスの屈折率に近似した屈折率を有するエポキシ樹脂やアクリル樹脂を使用すれば、空中に透明なガラスが浮いているような状態を実現できる。また、シール部が通常、観察者に視認されない使用方法の場合は、特にシール層が透明である必要はない。
以上のように作製された画像表示装置10は、表示画素の透過状態と散乱状態との間の応答時間が5msよりも短く非常に速い応答速度を実現することができる。また、従来の分散型液晶素子による散乱透過モードと比べると視野角依存性が良好であり、斜めから見たときにも非常に良好な透過状態を得ることができるようにすることができる。例えば、上記の組成の硬化性化合物と液晶とを含有する液晶/高分子複合体を使用した場合、垂直から40度傾けて見た場合もほとんどヘイズがないようにすることができる。
表示素子1のサイズとして、対角線の長さが1cm程度のものから3m程度の大きいものを含め、どのようなサイズのものも使用することができる。
画像表示装置10において、表示素子1を複数枚用いてもよい。また、表示素子1に対する耐衝撃性を増すために、上下の基板101,108を固定させてもよい。
表示素子1の表裏の表面には、反射防止膜または紫外線遮断膜を設けることが好ましい。例えば、表示素子1の表裏に、SiO2やTiO2などの誘電体多層膜よりなるARコート(低反射コート)処理を施すことにより、基板表面での外光の反射を減らすことができ、コントラストをより向上させることができる。
図4は、本発明による画像表示装置10の適用例を示す説明図である。図4に示す例では、画像表示装置10(図4では、画像表示装置10における表示素子1のみが示されている。)がカメラのファインダ装置に適用されている。図4に示すように、表示素子1は、駆動回路20によって駆動されるが、その他の構成要素は、図13に示された構成要素と同じである。ただし、図13に示された例とは異なり、画像表示装置10における基板間に電圧が印加されると液晶層は散乱状態になり、電圧無印加で透過状態を呈する。従って、電圧無印加状態でも、カメラの使用者は、透視窓315を介して被観察物を視認することができる。表示素子1の一部を散乱状態とした場合、レンズ321よりその散乱状態の表示部位に入射した外光は、光路が変化してプリズム313で反射後に、その散乱状態の表示部位を通過した光の一部または全部が接眼レンズ314に入射しなくなるため、散乱状態の表示部位は観察者には暗く、すなわち概ね黒に視認される。
また、図4に示すように、カメラには温度センサ205が設置されている。温度センサ205は表示素子1の周囲温度を検知するために設けられ、表示素子1の近傍に設置されていることが好ましい。
図5は、表示素子1の表示例を示す説明図である。図5に示す例では、表示素子1において、フォーカスエリアを示す23個の表示パターン811〜853が表示可能になっている。表示パターン811〜853を実現するために、図2に示された基板101において、表示パターン811〜853の各々に対応する透明電極102が設けられる。なお、図5に示す例では、表示パターン811〜853が表示される領域以外の領域は透明領域である。
なお、図5において、表示パターン821〜825は、上から2行目の5個の表示パターンであって、最左から順に、表示パターン821〜825である。表示パターン831〜837は、上から3行目の7個の表示パターンであって、最左から順に、表示パターン831〜837である。表示パターン841〜845は、上から4行目の5個の表示パターンであって、最左から順に、表示パターン841〜845である。
次に、本発明の画像表示装置10において用いられる表示パターン811〜853の各々に対応する透明電極102のPWM方式による駆動を説明する。
図6は、上記のように作製された表示素子1の印加電圧(実効値)に対する透過率を示す説明図である。図6に示すように、表示素子1は、光透過状態と光散乱状態をとることができる液晶層としての液晶層104に所定の電圧(例えば60V)が印加されているときに光散乱状態となり、液晶層104に対して電圧無印加のときに光透過状態となる。また、印加電圧(実効値)が0Vと60Vとの中間的な値(例えば、18〜35V程度)であるときに、表示素子1は、光透過状態と光散乱状態との中間的な状態をとる。
図7は、本実施の形態における表示素子1の駆動方法の一例を示すタイミング図である。図7に示すように、黒表示を行う場合には、1フレームにおいて継続して散乱信号をオンにする。中間調表示を行う場合には、1フレームにおいて、所望の透過率に応じた期間だけ散乱信号をオンにする。なお、散乱信号オン(散乱信号ON)は、透明電極102,107間に所定の電圧が印加されていることに相当し、散乱信号OFFは、透明電極102,107間の電位差が0Vである状態に相当する。
図8は、本実施の形態における表示素子1の周囲温度とPWM比との関係を示す説明図である。PWM比は、1フレームにおける散乱信号オンの期間の割合である。また、図8には、表示素子1の駆動周波数が50Hz(1フレーム:1/50秒)であって、60%の透過率にするためのPWM比が例示されている。
図8に示すように、表示素子1の周囲温度が25℃である場合には、PWM比を35%にすると、表示素子1の透過率は60%になる。また、25℃から温度が変化すると、表示素子1の透過率を60%に保つためのPWM比は、図8に示すように変化する。
なお、図8には、透過率が60%であって駆動周波数が50HzのときのPWM比が例示されているが、表示素子1の周囲温度が変わると、同じ透過率に保つためのPWM比が異なることは、他の中間調の透過率や他の駆動周波数についても同様である。
図9は、表示素子1の周囲温度が同じである場合の複数種類の駆動周波数における表示素子1の透過率とPWM比との関係を示す説明図である。図9には、周囲温度が25℃である場合の例が示されている。また、図9には、駆動周波数が50HzのときのPWM比と駆動周波数が200HzのときのPWM比との比較が一例として示されている。
図9に示すように、駆動周波数が異なると、同じ透過率を得るためのPWM比が異なる。なお、図9には、50HzのときのPWM比と駆動周波数が200HzのときのPWM比との比較が例示されているが、駆動周波数が異なると、同じ透過率を得るためのPWM比が異なることは、他の駆動周波数の組合せについても同様である。
図10は、表示素子1を駆動する駆動回路の第1の実施の形態を示すブロック図である。なお、図10に示す駆動回路は、図4に示す駆動回路20に相当する。図10に示す例では、表示パターン811〜813の各々の領域を駆動するための一方の透明電極(以下、セグメント電極という。)1021に対して、制御回路201の指示に応じて駆動電圧を印加する電極駆動回路203と、他方の透明電極1071に対して、制御回路201の指示に応じて駆動電圧を印加する電極駆動回路204とが設けられている。電極駆動回路203と電極駆動回路204とには、電圧生成回路202から駆動電圧が供給される。電圧生成回路202は、例えばカメラに装着されたバッテリから電力供給を受ける。
なお、透明電極1021は図2に示す透明電極102に相当し、透明電極1071は図2に示す透明電極107に相当する。また、図10では、図5に示すフォーカスエリアを示す24個の表示パターン811〜853のうちの3つの表示パターン811〜813のみが示されている。
また、図10に示すように、温度センサ205が検出した温度を示す情報が制御回路201に入力される。制御回路201は、ROMテーブルであるPWMテーブル206に記憶されているデータを入力可能である。さらに、制御回路201は、カメラ本体からフォーカス情報信号を入力する。フォーカス情報信号には、例えば、表示パターン811〜853の領域がフォーカスエリアとして選択されているか否かを示す情報や、フォーカスエリアとして選択されている表示パターンに対応する領域が合焦している否かを示す情報が含まれる。
一例として、制御回路201は、フォーカスエリアとして選択されている領域のうちの合焦していない領域の表示パターンを中間調表示し、フォーカスエリアとして選択されている領域のうちの合焦している領域の表示パターンを暗く表示する。本実施の形態では、表示パターンを暗く表示する場合には、その表示パターンの領域の透過率を例えば10%以下にする。表示パターンを中間調表示する場合には、その表示パターンの領域の透過率を例えば60%にする。
なお、図1等に示す構成において光源が設けられていないが、光源を設けてもよい。その場合、光源は、表示素子1のエッジ部に設けられ、光を液晶層に入射させる。なお、光源と表示素子1との間に光を拡散する導光部を設けることが好ましい。また、光源として特定色(一例として赤色)を発色するものを用いることによって、表示パターンを特定色で視認させることができる。
上記のように、透過率を60%にする際に、表示素子1の周囲温度が異なるとPWM比は異なる。また、駆動周波数が異なるとPWM比は異なる。
そこで、本実施の形態では、使用されうる駆動周波数と周囲温度になりうる範囲の温度とに応じたPWM比があらかじめ記憶されているPWMテーブル206が使用される。
すなわち、制御回路201は、温度センサ205を介して実際の周囲温度を把握する。なお、駆動周波数については、例えばカメラ本体のモード設定に従って決定され、決定結果が制御回路201に入力される。
使用されうる駆動周波数が50Hzおよび200Hzである場合を例にすると、PWMテーブル206には、50Hzの駆動周波数に関して、図8に例示されたようなPWM比を示すデータが温度を示すデータに対応して記憶される。また、200Hzの駆動周波数に関して、PWM比を示すデータが温度を示すデータ(例えば、25℃、10℃、0℃、−10℃、−20℃)に対応して記憶されている。
制御回路201は、使用する駆動周波数と温度センサ205を介して把握した温度とに応じたPWM比をPWMテーブル206から入力する。そして、駆動周波数とPWM比とで決まる期間だけ散乱信号がオン状態になるように電極駆動回路203,204にタイミング信号を与える。以上のように、制御回路201は、表示パターンを中間調表示する場合に周囲温度によらず中間調のレベルを一定値に維持するために温度センサ205が検知した周囲温度に応じてパルス幅を調整する。また、駆動周波数によらず中間調のレベルを一定値に維持するために表示素子を駆動する際の駆動周波数に応じてパルス幅を調整する。
なお、図8に示す例を用いる場合には、5種類の温度に対応するPWM比を示すデータがPWMテーブル206に記憶されるが、より多種類の温度に対応するPWM比を示すデータがPWMテーブル206に記憶されていることが好ましい。また、温度センサ205を介して把握した温度に一致する温度を示すデータがPWMテーブル206に存在しない場合には、制御回路201は、最も近い温度に対応するPWM比を示すデータをPWMテーブル206から入力する。
電極駆動回路203,204は、タイミング信号にもとづく期間において散乱信号をオンする。なお、所定のタイミングで透明電極102の駆動電圧と透明電極107の駆動電圧との正負を代えて交流駆動することが好ましい。
また、表示素子1において、TFT素子を駆動素子として用いる場合には、散乱信号がオフの状態であって表示素子1が透明状態であるときに、視認者に、TFT素子が視認されてしまう可能性がある。しかし、本実施の形態では、表示素子1は、TFT素子等の能動素子を含まず、スタティック駆動されるので、透明状態において、本来視認されるべきでないものが視認されてまうことはない。
以上に説明したように、本実施の形態では、周囲温度に応じてPWM比を変更するので、周囲温度によらず表示パターンを所望のレベルの中間調にすることができる。また、表示素子1は電圧無印加状態で光透過状態になるので、表示素子1を介して被観察物を視認するときに表示素子1に電圧を印加する必要はなく、消費電力を低減することができる。すなわち、消費電力を低減できるとともに、温度変化を考慮しても液晶に対する負荷を大きくすることなく簡略化された駆動回路によって複数階調で各表示パターンを視認可能にすることができる被観察物からの光透過機能を有する画像表示装置を提供する目的を達成することができる。
図11は、本発明による表示素子1を駆動する駆動回路の第2の実施の形態を示すブロック図である。第2の実施の形態でも、画像表示装置10がカメラのファインダ装置に適用される場合を例にする。図11に示す例では、制御回路201に、レンズのF値を示すF値信号がカメラ本体から入力される。
第1の実施の形態においては、フォーカスエリアとして選択されている領域のうちの合焦していない領域の表示パターンを中間調表示し、フォーカスエリアとして選択されている領域のうちの合焦している領域の表示パターンを暗く表示したが、カメラのレンズがF値がより小さいレンズに交換されると、入射光量が増加するので、暗く表示したい表示パターンの明度が高くなる(すなわち、明るくなる。)。すると、暗く表示したい表示パターンの明度と中間調表示したい表示パターンの明度との差が小さくなる。なお、中間調表示されている表示パターンの明度は、レンズのF値が変わっても、さほど変化しない。
本実施の形態では、制御回路201は、レンズのF値に応じて中間調表示として使用する透過率を変更する。一例として、制御回路201は、F値信号によってF4のレンズが装着されたことを認識した場合には、中間調表示として使用する透過率を60%とし、F2.8のレンズが装着されたことを認識した場合には、中間調表示として使用する透過率を65%とするようにPWM比を制御する。そのように制御する場合には、レンズのF値によらず、暗く表示したい表示パターンの明度と中間調表示したい表示パターンの明度との差がさほど変化しないようにすることができる。
図12は、図6に示された特性の表示素子1を用いた場合の2つのF値(F−1およびF−2)を例にしたPWM比と透過率との関係の一例を示す説明図である。図12に示す例では、例えば、駆動電圧が40Vである場合には、60%の透過率を得るために、F値がF−1であるときにはPWM比を20%にし、F値がF−2であるときにはPWM比を21%にする。
また、第1の実施の形態の場合と同様に、制御回路201は、使用する駆動周波数と温度センサ205を介して把握した温度とに応じたPWM比をPWMテーブル206から入力する。そして、駆動周波数とPWM比とで決まる期間だけ散乱信号がオン状態になるように電極駆動回路203,204にタイミング信号を与えることが好ましい。
中間調表示として40%の透過率も使用する場合には、使用されうる駆動周波数が50Hzと200Hzである場合を例にすると、PWMテーブル206には、50Hzの駆動周波数に関してPWM比を示すデータが温度を示すデータ(例えば、25℃、10℃、0℃、−10℃、−20℃)に対応して記憶される。また、200Hzの駆動周波数に関して、PWM比を示すデータが温度を示すデータ(例えば、25℃、10℃、0℃、−10℃、−20℃)に対応して記憶される。
なお、60%の透過率に関するPWM比を示すデータは、第1の実施の形態の場合と同様に、PWMテーブル206に記憶されている。
第2の実施の形態では、第1の実施の形態の場合と同様に、周囲温度によらず表示パターンを所望のレベルの中間調にすることができる。また、使用されるレンズのF値によらず、暗く表示したい表示パターンの明度と中間調表示したい表示パターンの明度との差が一定になるようにすることができる。
また、レンズのF値に応じて中間調表示として使用する透過率を換えるのではなく、暗く表示したい表示パターンの方を制御するようにしてもよい。例えば、F値が小さいレンズが使用されるときに、暗く表示したい表示パターンの明度を低下させる。
そのように制御する場合には、例えば、電圧生成回路202を、40Vと60V程度の電圧とを供給可能に構成し、制御回路201は、レンズのF値に応じて供給電圧を変更するように電圧生成回路202に対して指示を与える。一例として、制御回路201は、F値信号によってF4のレンズが装着されたことを認識した場合には、電圧生成回路202に対して40Vを供給するように指示を与え、F2.8のレンズが装着されたことを認識した場合には、電圧生成回路202に対して60V程度を供給するように指示を与えて表示パターンがより暗く視認されるようにする。そのような制御を行う場合にも、レンズのF値によらず、暗く表示したい表示パターンの明度と中間調表示したい表示パターンの明度との差がさほど変化しないようにすることができる。一例として、図12に示された例を参照すると、2%の透過率にまで下げる場合に、F値がF−1(例えば、F4とする。)のレンズが装着された場合にはPWM比を100%にすればよいが、F値がF−2(例えば、F2.8とする。)のレンズが装着された場合にはPWM比を100%にするとともに電圧生成回路202に60Vの電圧を供給させる。PWM比を100%にしただけでは、2%の透過率にまで下げることができなからである。すなわち、表示パターンに対する駆動電圧を制御することによって、F値によらず、暗く表示したい表示パターンの明度と中間調表示したい表示パターンの明度との差がさほど変化しないようにする。
なお、上記の各実施の形態では、合焦していない領域の表示パターンを中間調表示し、合焦している領域の表示パターンを暗く表示する場合を例にしたが、そのような表示パターンの使い方は一例であって、中間調表示を活用しうる使い方であれば、他の使い方を行ってもよい。
また、上記の各実施の形態では、制御回路201とPWMテーブル206とをカメラ本体とは独立した要素としたが、それらを、カメラに組み込まれているマイクロコンピュータ(CPUとメモリ等)の一機能として実現することもできる。
また、本発明に係る画像表示装置10は、カメラのファインダ装置の他、光学顕微鏡など、観察者3が、透視窓等を介して被観察物を観察する用途において、観察者に対して透視窓等を介して情報をスーパーインポーズ表示する用途に広く適用することができる。
以下に本発明の実施例を示す。実施例中、「%」は重量%を意味する。
誘電率異方性が負であるネマチック液晶(Tc=98℃、Δε=−5.6、Δn=0.220)80%と、図3の(a)に示す二官能の硬化性化合物20%と、光重合開始剤としてのベンゾインイソプロピルエーテルとを混合した。ベンゾインイソプロピルエーテルについては、硬化性化合物(図3の(a)に示す化合物および図3の(e)に示す化合物)の総量を100%とした場合、3%になるように混合した。そして、混合液を液晶相にするために、攪拌しながら90℃に加温し、等方相にして混合液を均一にした後、温度を60℃に下げた。その後、混合層が液晶相になったことを確認した。
液晶セルを以下のように作製した。透明電極102,107上に垂直配向用ポリイミド薄膜103,106を形成した一対の基板101,108を、垂直配向用ポリイミド薄膜103,106が対向するように、散布した微量の樹脂ビーズ(直径6μm)を介して、四辺に幅約1mmで印刷したエポキシ樹脂(周辺シール)で張り合わせ、液晶セルを形成した。次いで、上記の混合液を液晶セルの中に注入した。
液晶セルを40℃に保持した状態で、主波長が約365nmのHgXeランプにより、上側より3mW/cm2、下側より約3mW/cm2の紫外線を10分間照射し、液晶/高分子複合体からなる液晶層が基板間に形成された表示素子を得た。
このようにして得られた液晶素子は、電圧非印加状態において均一な透明状態を呈していた。液晶素子に矩形波200Hz、60Vの電圧を印加したところ、液晶素子は白濁様に変化した。530nmを中心波長とした半値幅約20nmの測定光源を用いたシュリーレン光学系(光学系のF値11.5、集光角5°)で透過率を測定したところ、電圧を印加しない状態で78%であり、この値を60Vrms印加した時の透過率で割ったコントラストの値は80であった。
そして、表示素子1を、図4に示すようなカメラのファインダー装置の内部に設置される画像表示装置10の表示素子として配置し、フォーカスエリアに相当する表示パターンを60%の透過率で中間調表示されるように制御した。表示素子1の周囲温度を−20〜25℃の間で変化させたが、中間調表示部分の明るさの変化は視認されなった。