JP2006195112A - 液晶素子とそれを用いた調光素子および液晶表示装置 - Google Patents

液晶素子とそれを用いた調光素子および液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】高分子分散型液晶における液晶や高分子分材料を限定することなく、従来使用している液晶と高分子材料を用いながら駆動電圧の低減を達成し、かつ/あるいは、液晶相の反射率を向上させた液晶素子とこれを用いた調光素子あるいは液晶表示装置を提供する。
【解決手段】各基板の一面上に電極を備え、かつ少なくとも一方の電極面上にポリイミドからなる表面層を有し、電極が対向配置された一対の基板間に高分子相と液晶相とを含む高分子・液晶複合体層を設けた液晶素子とする。高分子・液晶複合体として高分子分散型液晶を用いる。また、表面層を、液晶に対して垂直配向性能を有するポリイミドおよび/または水平配向性能を有するポリイミドを用いて構成する。前記構成の液晶素子を用いて液晶表示装置あるいは調光素子を構成する。
【選択図】図1

Description

本発明は、液晶素子に関し、さらに詳しくは、駆動電圧が低く反射率の高い反射型液晶素子とそれを用いた調光素子および液晶表示装置に関する。
電界の印加により、散乱、透過、吸収などの光学特性が変化する現象を利用した液晶素子が知られており、表示素子や光変調素子などとして広く使われている。特に、光の散乱を利用して白色表示を行うことのできる液晶素子は、見やすく目への負担が小さい表示素子として、さらにはバックライトや偏光板を用いないため消費電力の少ない明るい表示素子として期待されている。このような光の散乱を利用する液晶素子としては、動的散乱モード方式、高分子分散型液晶方式、フォーカルコニック相を利用したスメクチック液晶方式あるいはコレステリック-ネマチック相転移方式などが挙げられる。
上記各方式は、液晶を駆動させることによって散乱状態と透過状態を制御するものである。したがって、例えばこれら素子の液晶層の視認面と反対側に黒色や青色などの光吸収層を設け、散乱状態と透過状態を制御することによって単色の表示素子とすることが可能である。中でも高分子分散型液晶は、液晶を高分子中に分散させて複合化されていることにより、耐衝撃性を有するとともに散乱状態の明るさや作製の簡便さに優れ、大型化が容易であるなどの点から表示用の素子として特に期待されている。
しかしながら、高分子分散型液晶には従来のTN型等の液晶素子と比べて駆動電圧が高くなるという欠点がある。その原因としては、(1)高分子物質と液晶との界面における相互作用が大きく、このため、(2)液晶相を保持している高分子相による電圧降下によって液晶相にかかる電圧が低下するためと考えられている。このような問題に対処するための研究が行われ、高分子分散型液晶の駆動電圧を低減する方法がいくつか提案されている。
例えば、特定の構造式を有する化合物の混合物からなる液晶をマトリックス液晶中に分散することによって、低駆動電圧、ハイコントラスト、高保持率を満たす高分子分散型液晶複合膜を得ることが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。あるいは、特定の構造式を有するシアノ基を含む化合物を液晶組成として含有させることにより、駆動電圧を下げ、かつ電圧無印加時のヘイズを減少させることが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、特定の構造式を有する光硬化性化合物と液晶材料から構成した高分子分散型液晶を用いることにより、光学素子の駆動電圧を低減することが提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
しかしながら、上記提案ではいずれも特定の構造式を有する化合物を用いることが必須であり、従来使用されている液晶あるいは高分子の材料をそのまま使用して低駆動電圧を達成することができないという制約がある。
なお、液晶が分散保持された高分子からなるマトリックス中に導電性フィラーを混合し、駆動電圧を下げる手法も提案されている(例えば、特許文献4参照。)。
この提案によれば駆動電圧の低減に対して一定の効果が期待されるが、導電性フィラーが液晶素子としての性能(例えば、最大透過率や電荷特性など)に影響を及ぼす心配があり、また品質安定性などの点から十分なものとはいえない。
また、第1電極と第2電極の間に透明中間電極を設け、これら電極の配置や構造を工夫することによって駆動電圧を下げる手法も提案されている(例えば、特許文献5参照。)。
しかしながら、このような方法では液晶素子の構造が複雑になり、製造が難しくなって生産性を低下させる原因となるなどの問題がある。
なお、本出願人は先に、三次元網状構造中に液晶を分散させて得られる液晶層を備えることにより、低電圧駆動で電気光学特性が急峻であり、さらにコントラスト比が大きく階調制御性に優れた高分子分散型液晶表示装置とする提案を行った(例えば、特許文献6参照。)。
しかし、この方法では液晶層の形成工程において複雑な操作を繰り返し行う必要があり製造上に難点がある。
一方、反射型液晶素子の散乱状態の反射率は現状では低く、白色表示の明るさが不十分であるため、さらに反射率を向上することが望まれており、高分子分散型液晶素子の反射率を向上させる手法としていくつか提案されている。
例えば、液晶と高分子の混合物表面に固化促進剤を散布することにより、高分子固化後の液晶滴を偏平にする手法が提案されている(例えば、特許文献7参照。)。あるいは、基板表面に重合性を有する物質からなる層を設けることにより、高分子分散型液晶を作製する際に層と液晶を構成する高分子との間に結合が生じ、基板界面付近でも深さ方向中央部と変わらない均一な相分離構造が得られて反射率を向上することができるということが報告されている(例えば、特許文献8参照。)。
しかしながら、上記反射率を向上する手法によれば、高分子分散液晶相の反射率を向上しコントラスト比を高くすることは可能であるが、駆動電圧を低くすることを両立させることは難しい。
特許第3033636号明細書 特開平7−238285号公報 特開平6−202086号公報 特開平6−202084号公報 特開2000−194007号公報 特許第3186200号明細書 特開平10−319375号公報 特開平9−127488号公報
本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたものであり、液晶を高分子分材料中に分散してなる高分子分散型液晶における液晶や高分子分材料を限定することなく、従来使用している液晶と高分子材料を用いながら駆動電圧の低減を達成し、かつ/あるいは、液晶相の反射率を向上させた液晶素子を提供するとともに、これを用いた調光素子あるいは液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明者らは鋭意検討した結果、液晶素子を構成する一方の面に基板を備え、他方の面が対向配置された一対の電極の少なくとも一方の電極面上にポリイミドからなる表面層を備えることによって、高分子分散型液晶の液晶や高分子材料を限定することなく駆動電圧を低減させ、反射率を向上させることができることを見出して本発明を完成するに至った。以下、本発明について具体的に説明する。
すなわち、本発明は、一方の面に基板を備え、他方の面が対向配置された一対の電極間に高分子相と液晶相とを含む高分子・液晶複合体層を設けた液晶素子において、
前記一対の電極の少なくとも一方の電極面上にポリイミドからなる表面層を備えたことを特徴とする液晶素子である。
ここで、前記高分子・液晶複合体が、液晶を高分子分材料中に分散してなる高分子分散型液晶であることを特徴とする。
また、上記いずれかの液晶素子において、前記表面層が、液晶に対して垂直配向性能を有することが好ましい。
あるいは、上記いずれかの液晶素子において、前記表面層が、液晶に対して水平配向性能を有することが好ましい。
もしくは、上記いずれかの液晶素子において、前記一対の電極の双方の電極面上にポリイミドからなる表面層を備え、該表面層の一方が液晶に対して垂直配向性能を有するとともに、他方が液晶に対して水平配向性能を有することが好ましい。
そして、上記いずれかの液晶素子において、前記表面層が、液晶に対する垂直配向性表面部位と水平配向性表面部位とから形成され、該各部位は平面方向に交互に形成されたパターンから構成されていることが好ましい。
また、上記いずれかの液晶素子において、前記一対の電極の少なくとも一方の電極と基板との間に多孔質体層を設けたことを特徴とする。
ここで、上記多孔質体層がケイ素酸化物からなることが好ましい。
また、本発明は、前記いずれかに記載の液晶素子を用いたことを特徴とする液晶表示装置に係るものである。
さらに、本発明は、前記いずれかに記載の液晶素子を用いたことを特徴とする調光素子に係るものである。
本発明におけるポリイミドからなる表面層を電極面上に備えた構成とすることにより、材料を限定することなく従来使用している液晶と高分子材料を用いながら液晶素子の駆動電圧を低減することができ、しかも液晶相の反射率を向上させることが可能である。そして、液晶を高分子分材料中に分散した高分子分散型液晶を用いることにより、散乱状態がより明るく、素早い書き換えが可能な液晶素子が簡便な製造により提供できる。
また、表面層の液晶に対する垂直配向性能、水平配向性能を調整することによって、駆動電圧の低減、反射率の向上を一層効果的に増長させることが可能である。あるいは、少なくとも一方の基板と電極との間にケイ素酸化物からなる多孔質体層を設けることによって、さらに効果的に反射率を向上させることもできる。
そして、本発明の液晶素子を用いることによって、駆動電圧が低く、かつ白色表示の反射率が高くて目に対する負担が軽減された液晶表示装置、あるいは、駆動電圧が低く、コントラストが良好な調光素子を提供することができる。
前述のように本発明の液晶素子は、一方の面に基板を備え、他方の面が対向配置された一対の電極間に、高分子相と液晶相とを含む高分子・液晶複合体層が設けられ、少なくとも一方の電極面上にポリイミドからなる表面層を備えたことを特徴とするものである。以下、本発明の好適な実施の形態について図を参照して説明する。
図1の概略断面図に、本発明における液晶素子を説明するための構成例(a)、(b)、(c)を示す。
図1(a)において、1A、1Bはそれぞれ対をなす基板、同様に2A、2Bは電極、3Aは一方の電極2A面上に設けられたポリイミドからなる表面層(ポリイミド表面層3A)を示し、4は高分子相と液晶相とを含む高分子・液晶複合体層を示す。また、図1(b)では、(a)のポリイミド表面層3Aはなく、一方の電極2B面上にポリイミドからなる表面層(ポリイミド表面層)3Bが設けられた構成となっている。さらに、図1(c)では、電極2A、2Bの両方の面上にポリイミド表面層3A、3Bが設けられた構成となっている。
上記のように、高分子相と液晶相とを含む高分子・液晶複合体層を設けた液晶素子の少なくとも一方の基板の電極面上にポリイミドからなる表面層を備えた構成とすることにより、その表面層と液晶分子との間に働く相互作用を制御して駆動電圧を低減させ、かつ/あるいは、反射率を向上させることができる。
従来の高分子・液晶複合体を用いた液晶素子においては、液晶相を配向させる必要性が無いため、例えば、ポリイミドなどの配向膜は設けられていなかったが、本発明者らは、ポリイミドの表面状態が低い表面エネルギー状態であることに着眼し、図1に示すような構成の液晶素子とすることにより、前記課題を解決するに至った。
すなわち、ポリイミドは、分子構造的に他の物質と分子間水素結合を形成し難く安定であるため、表面物性として低い表面エネルギーを有する。そのため、ポリイミドを電極の表面層とした場合、界面における液晶分子の相互作用、いわゆるアンカリング力が小さくなり、電界の印加時に液晶分子の向きが電界方向に揃うのを妨げる力が減少する。このような効果によって、電極に表面層を設けない場合と比較して低電圧で液晶を駆動させることができるものと考えられる。なお、本発明においては以降に説明するように、液晶に対するポリイミドの配向性能を利用し、駆動電圧の低減、反射率の向上を一層効果的に増長させることができる。
前記本発明の表面層3A、3Bに用いるポリイミドは、主鎖に環状イミド構造を有する高分子全般を指し、一般に液晶素子の配向膜として広く用いられているものを使用することができる。
上述のように、 ポリイミドからなる表面層を電極面上に備えた構成とすることにより、材料を限定することなく、液晶素子の低駆動電圧化、液晶相の反射率向上を達成することができる。したがって、従来使用している液晶と高分子材料を用いることができる。
また、液晶を高分子分材料中に分散した高分子分散型液晶を用いることによって、散乱状態をより明るくすることができ、素早い書き換えを可能とする液晶素子が製造できる。また、高分子分散型液晶を用いることによって、簡便で生産性良く液晶素子を製造することができる。
また、高分子・液晶複合体層4を形成する高分子・液晶複合体は、高分子相と液晶相の双方を含むものであればよく、その構造、構成等は限定されないが、高分子分散型液晶であることが好ましい。前記のように高分子分散型液晶は、高分子中に液晶が分散されたものであり、高分子のマトリクスあるいは三次元網目構造中に液晶がドロップレット状に分散しているものも含む。
このような液晶としては、限定するものではないが、例えば、予め光硬化性モノマーや光硬化性前駆体と液晶を混合したものを液晶セルに封入し、紫外線等のエネルギー線を照射して高分子化し高分子分散型液晶とするものがある。あるいは、マトリックスとなる高分子用材料と液晶を一旦溶解しておき、後で高分子相と液晶相を生成させ高分子分散型液晶としたものでも構わない。
また、高分子分散型液晶は、前述のように散乱状態の明るさが顕著であり、製造も簡便で生産性が優れているため、大型化が可能で、かつ素早く書き換えができる反射型の液晶素子として特に好ましい。あるいは、光学機能を利用する部品や部材の調光素子としても好ましく用いられる。
本発明の液晶素子は、各種液晶表示装置、例えば、プロジェクションテレビ、パソコン、TVテレホン、VTRモニター、ワードプロセッサー等の平面ディスプレイ装置、あるいは電子カーテン、液晶サングラス等、あるいは表示板、窓、扉、壁等の調光効果やシャッタ効果を利用した光学機能用途の調光素子として応用することができる。
本発明の液晶素子の具体的な形態としては、図2(a)、(b)の模式図に示すように、液晶に対して垂直配向性能を有するポリイミドからなる表面層(垂直配向性表面層)3Vを少なくとも一方の電極面上に設ける構成とすることが好ましい。3Vが液晶に対して垂直配向性能を有することによって、さらに駆動電圧を低減させることができる。
一般に垂直配向とは、電界などの外力の影響を受けない状態において表面層に対して液晶分子が略垂直方向に配向することを意味する。本発明においては、ラビングなどの一軸配向処理を施すことによって略垂直方向の配向性能を発現するようにしたポリイミド表面層のほかに、ラビングフリーで略垂直方向の配向性能を発現するようにしたポリイミド表面層も含む。すなわち、本発明の実施においては、表面層はラビング配向処理が施されたものでも、ラビング配向処理が施されていないものでも構わない。
垂直配向性能を有する表面層を用いると、少なくとも表面層と液晶相との界面では、基板に対し略垂直に存在する液晶分子が多くなるため、表面層と液晶間のアンカリング力がより小さくなり、さらに低い電圧で液晶を駆動させることができるものと考えられる。
なお、ここでいう略垂直とは、液晶分子の長軸と基板面とがなす角度(プレチルト角)が70度以上、90度以下であるものとする。
上記プレチルト角は、垂直配向性能を有する表面層が設けられた基板を用いてセルを組み立て、このセルに液晶(高分子・液晶複合体)を封入した状態とし、クリスタルローテーション等の従来の方法により測定することができる。
また、本発明の液晶素子の具体的な別の形態としては、図3(a)、(b)の模式図に示すように、液晶に対して水平配向性能を有するポリイミドからなる表面層(水平配向性表面層)3Hを少なくとも一方の電極面上に設ける構成とすることが好ましい。3Hが液晶に対して水平配向性能を有することによって、駆動電圧を上昇させることなくさらに光散乱状態の反射率を向上させることができる。
前記と同様に一般に水平配向とは、電界などの外力の影響を受けない状態において表面層に対して液晶分子が略垂水平方向に配向することを意味する。本発明においては、ラビングなどの一軸配向処理を施すことによって略垂水平方向の配向性能を発現するようにしたポリイミド表面層のほかに、ラビングフリーで略垂水平方向の配向性能を発現するようにしたポリイミド表面層も含む。すなわち、本発明の実施においては、表面層はラビング配向処理が施されたものでも、ラビング配向処理が施されていないものでも構わない。
表面層が水平配向性能を有する場合は、高分子中に分散された液晶分子の分子長軸が表面層に対して略水平となるため、高分子と液晶の屈折率差が大きくなり、全体として散乱性が高くなる。さらに、基板に配向処理が施されていなければ、液晶分子は水平な面内でランダムな方向を向いているので、入射光に対する液晶間の屈折率差が発生して散乱性が高くなると考えられる。
なお、ここでいう略平行とは、液晶分子の長軸と基板とのなす角度(プレチルト角)が0度以上、20度以下であるものとする。
前記と同様に上記プレチルト角は、水平配向性能を有する表面層が設けられた基板を用いてセルを組み立て、このセルに液晶(高分子・液晶複合体)を封入した状態とし、クリスタルローテーション等の従来の方法により測定することができる。
本発明の液晶素子の具体的なさらに別の形態としては、図4の模式図に示すように、一方を液晶に対して垂直配向性能を有するポリイミド表面層(垂直配向性表面層)3Vとし、他方を液晶に対して水平配向性能を有するポリイミド表面層(水平配向性表面層)3Hとすることによって、駆動電圧を低減しながら反射率を向上させることができる。すなわち、一方の基板側の表面層を垂直配向性能を有するポリイミドとすることによって、駆動電圧の低減効果が発現する。
また、高分子・液晶複合体層の液晶の向きは、図4に示すように垂直配向性表面層近傍では基板に対して垂直なものが多く、水平配向性表面層近傍では水平なものが多くなるように高分子・液晶複合体層4の厚み方向で連続的に変化している。入射した光は、高分子・液晶複合体層の全体で散乱、反射されるので、ポリイミドが垂直配向性能のみを持つ構成の場合に比べて、反射率が向上する。
さらに、具体的な他の形態としては、図5の模式図に示すように、垂直配向性表面部位(5V)と水平配向性表面部位(5H)とが交互に平面方向に形成されたパターン構成のポリイミド表面層とすることによって、表面層の垂直配向性部位では駆動電圧を低減する効果が、水平配向性部位においては反射率を向上させる効果が発現するので、それらの部位が混在することにより両方の効果を期待することができる。なお、図5に示すパターンを形成する表面部位の形状は一例であって、四角である必要や、互いに同一形状である必要はない。
上記各部位のパターンにおける面積比率については制限はされないが、垂直配向性表面部位が広ければ駆動電圧低減効果が大きく、逆に水平配向性表面部位が広ければ散乱性向上効果が高まるので、液晶素子の使用目的等に応じて調整するのがよい。表面部位のパターンの大きさは、垂直配向性表面部位と水平配向性表面部位の反射率の差が肉眼で識別し難い程度に細かいことが必要であり、好ましくは画素サイズ(画素幅)以下である。
ここで、ポリイミドのパターンは、どのような方法で形成してもよいが、一旦ポリイミドを基板全体に形成した後に、その上に部分的にマスクを置いて他種のポリイミドを形成し、所定のパターン形状とする方法が生産性に優れる点で好ましい。
具体的なさらに他の形態としては、図6(a)、(b)の模式図に示すように、少なくとも一方の基板と電極との間に屈折率の小さい材料からなる多孔質体層を設けることによって、さらに効果的に反射率を向上させた液晶素子を提供することができる。必要により、図6(a)、(b)において、両側の基板と電極との間に屈折率が小さい多孔質体層を設けても構わない。なお、図6において、前記図1〜5に示したような、少なくとも一方の電極面上にポリイミドからなる表面層を備えるが本6図では省略する。
すなわち、図6(a)、(b)のように液晶素子を構成する層構造の隣り合う層の屈折率差を大きくすることによって、その界面での反射が増大して素子全体の反射率が大きくなるという効果がもたらされる。ここで、屈折率が小さく、かつ強度に優れる材料としてケイ素酸化物の多孔質体層を構造中に組み込むことによって、より一層散乱性に優れる液晶素子とすることができる。
前記本発明における基板としては、ガラス、あるいはポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレートなどの透明樹脂を用いることができる。そして用塗や目的などによって異なるが、液晶素子における一対の基板の両方が透明である場合、あるいは一方が透明で、他方が不透明である場合などがある。
また、基板にはITO(インジウム・スズ酸化物)などの電極が設けられるが、少なくとも透明基板の方は透明電極であることが必要である。
例えば、一例として、ITO電極層を備えた2枚のガラス基板上に、数十mN/m程度の表面エネルギーを有し、垂直配向性能を有するポリイミド膜を形成する。それぞれの基板の電極が対向するように配置し、その周辺をシール材により封止してセルを組み立てる。このセルに、予め光硬化性の材料と液晶を混合した高分子分散型液晶用プレミクスチャを封入し、紫外線等のエネルギー線を照射して高分子・液晶複合体層を形成することによって、本発明の液晶素子が作製できる。
そして、前記のように構成された本発明の液晶素子を用いることによって、駆動電圧が低く、かつ白色表示の反射率が高くて目に対する負担が軽減された液晶表示装置を提供することができる。なお、液晶表示装置においては、用途や目的に応じ、例えば、信号線や走査線などのバスラインや絵素電極、スイッチングトランジスタなどの電極構成あるいはドライバー構成など適宜設計されるが、本発明の液晶素子はアクテイブマトリックス駆動方式にも、パシブ方式にも適用可能である。
また、前記本発明の液晶素子を用いることによって、液晶を構成する高分子や液晶の材料を限定することなく低駆動電圧を達成し、散乱/透過時のコントラストが良好な調光素子を作製することができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1)
大きさが30mm×30mmのガラス基板上にITO電極層を形成した基板を2枚用意し、双方の電極層上にポリイミドAからなる表面層を形成した。ポリイミドAは、垂直配向性能を有する配向膜であり、その表面エネルギー値は約20mN/mである。
この2枚の基板を用いて電極が対向配置されるようにセルを組み立て、基板間に高分子分散型液晶からなる高分子・液晶複合体層(液晶層)を設けて素子を作製した。なお、液晶層は、大日本化学工業製のPNM−101を用いて紫外線照射処理した高分子分散型液晶である。液晶層の厚みは約20μmとした。
作製した高分子分散型液晶素子の反射率と駆動電圧を以下の条件で測定した。結果を下記表1に示す。
<反射率の測定>
反射率の測定は図7の模式図に示すように、液晶素子71の視認面の法線方向に受光部、すなわち受光ユニット72を置き、その法線から30°傾斜させた方向の光源73から白色光を当てたときの受光部へ入射する反射光(反射強度)を測定し、これと同じ条件で標準白色板を用いて測定した場合の反射強度を100%として、その反射強度比をもって反射率とした。
<駆動電圧の測定>
駆動電圧の測定は、図7における光源の照射方向を液晶素子に対して垂直とし、素子の電極間に60Hzの矩形波を0Vから30Vまで、1Vきざみで印加しながら、液晶素子を透過する透過光量を測定する方法により行った。したがって、受光部は液晶素子を挟んで光源とは反対側に設置される。
光源と受光部との間に何も置かないときの光量を100%とし、これを基準として測定した試料の透過光量の比を求め透過率とした。そして、光散乱状態(0V)と光透過状態(30V)での透過率差のうち、90%立ち上がったときの電圧をここでは「駆動電圧」とし、各試料の電界応答性を比較する指標とした。
(実施例2)
実施例1と同様にガラス基板上にITO電極層を形成した基板を準備し、その双方の電極層上にポリイミドBからなる表面層を形成した。ポリイミドBは、水平配向性能を有する配向膜であり、その表面エネルギー値は約45mN/mである。これらの基板を用いて実施例1と同様にセルを組み立て、液晶層(PNM−101:大日本化学工業製)を設けて素子を作製した。液晶層の厚みは約20μmとした。
作製した高分子分散型液晶素子の反射率と駆動電圧を実施例1と同様の条件で測定した。結果を同様に下記表1に示す。
(実施例3)
実施例1と同様の基板を用意し、一方の基板の電極層上に垂直配向性を有するポリイミドAからなる表面層を形成し、他方の基板の電極層上に水平配向性ポリイミドBからなる表面層を形成した。これらの基板を用いて実施例1と同様にセルを組み立て、液晶層(PNM−101:大日本化学工業製)を設けて高分子分散型液晶素子を作製した。液晶層の厚みは約20μmとした。
作製した高分子分散型液晶素子の反射率と駆動電圧を実施例1と同様の条件で測定した。結果を同様に下記表1に示す。
(実施例4)
基板として30mm×30mmのガラス基板を2枚用意し、うち1枚には実施例1と同様にITO電極層を形成した上に垂直配向性ポリイミドAからなる表面層を形成した。
次に、オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)、水、エタノールを酸性条件下で加熱・攪拌して得られた溶液に界面活性剤を加えたゾル溶液を用意した。このゾル溶液を、一方のITO電極を形成していない基板上にスピンコーティング法により塗布、成膜し、ホットプレート上で乾燥させた後に酸素雰囲気下でプラズマ処理を施してケイ素酸化物の多孔質膜を作製した。その上にITO電極層、および水平配向性ポリイミドBからなる表面層を順に形成した。
上記作製した各基板を用いて実施例1と同様にセルを組み立て、液晶層(PNM−101:大日本化学工業製)を設けて高分子分散型液晶素子を作製した。液晶層の厚みは約20μmとした。作製した素子は実施例3で作製した素子の一方の電極側に多孔質体層が加えられた構成である。
作製した高分子分散型液晶素子の反射率と駆動電圧を実施例1と同様の条件で測定した。結果を同様に下記表1に示す。
(比較例1)
実施例1において双方の電極層上にポリイミドAからなる表面層を設けない基板を用いた以外は実施例1と全く同様にセルを組み立て、液晶層(PNM−101:大日本化学工業製)を設けて高分子分散型液晶素子を作製し、実施例1と同様の条件で反射率と駆動電圧を測定した。結果を同様に下記表1に示す。
Figure 2006195112
以上の評価結果、本発明の構成とした実施例1〜4の高分子分散型液晶素子は、ポリイミド表面層を備えていない比較例に比べて、いずれも駆動電圧が低く、反射率が高いことが分る。
(実施例5)
図8の模式図に示すように、一方の基板81上に信号電極82や走査電極83などのバスライン、絵素電極84、スイッチングトランジスタ85などをマトリックス状に形成してアクティブマトリックス駆動方式の基板とし、他方の基板86上に絵素電極に対応した対向電極87を形成した。なお、前記実施例3のような高分子・液晶複合体層88、ポリイミド表面層、89、90を設けて液晶表示装置とした。なお、基板81と絵素電極84との間に光吸収層91が設けられている。光吸収層91は、一例として黒色の層とした。
この液晶表示装置を駆動してディスプレイ状態を調べたところ、従来の素子に比べて駆動電圧が低く、しかも白色表示における反射率が高いので白黒のコントラストが良好になり、表示を視認しやすいものであった。
(実施例6)
前記実施例3の液晶素子構成により単純マトリックス駆動方式の構成として調光素子を作製して評価したところ、低駆動電圧で、しかも散乱/透過時におけるコントラストも良好であり、調光効果やシャッタ効果を十分発揮できることが分った。
本発明における液晶素子を説明するための構成例(a)、(b)、(c)を示す概略断面図である。 本発明において垂直配向性表面層を少なくとも一方の電極面上に設けて構成される液晶素子の具体的な形態(a)、(b)を示す模式図である。 本発明において水平配向性表面層を少なくとも一方の電極面上に設けて構成される液晶素子の具体的な別の形態(a)、(b)を示す模式図である。 本発明において一方を垂直配向性表面層とし他方を水平配向性表面層として構成される液晶素子の具体的なさらに別の形態(a)、(b)を示す模式図である。 本発明における表面層が垂直配向性表面部位と水平配向性表面部位とのパターンにより構成される液晶素子の具体的な他の形態(a)、(b)を示す模式図である。 本発明において少なくとも一方の基板と電極との間に多孔質体層を設けて構成される液晶素子の具体的なさらに他の形態(a)、(b)を示す模式図である。 実施例において採用した反射率の測定方法を説明するための模式図である。 実施例における液晶表示装置の概略構成を示す模式図である。
符号の説明
1A、1B 基板
2A、2B 電極
3A、3B ポリイミド表面層
4 高分子・液晶複合体層
3V 垂直配向性表面層
3H 水平配向性表面層
5A、5B 多孔質体層
5V 垂直配向性表面部位
5H 水平配向性表面部位
71 液晶素子
72 受光ユニット
73 光源
81 基板
82 信号電極
83 走査電極
84 絵素電極
85 スイッチングトランジスタ
86 基板
87 対向電極
88 高分子・液晶複合体層
89、90 ポリイミド表面層
91 光吸収層

Claims (10)

  1. 一方の面に基板を備え、他方の面が対向配置された一対の電極間に高分子相と液晶相とを含む高分子・液晶複合体層を設けた液晶素子において、
    前記一対の電極の少なくとも一方の電極面上にポリイミドからなる表面層を備えたことを特徴とする液晶素子。
  2. 前記高分子・液晶複合体が、液晶を高分子分材料中に分散してなる高分子分散型液晶であることを特徴とする請求項1に記載の液晶素子。
  3. 前記表面層が、液晶に対して垂直配向性能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶素子。
  4. 前記表面層が、液晶に対して水平配向性能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶素子。
  5. 前記一対の電極の双方の電極面上にポリイミドからなる表面層を備え、該表面層の一方が液晶に対して垂直配向性能を有するとともに、他方が液晶に対して水平配向性能を有することを特徴とする請求項1または2に記載の液晶素子。
  6. 前記表面層が、液晶に対する垂直配向性表面部位と水平配向性表面部位とから形成され、該各部位は平面方向に交互に形成されたパターンから構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶素子。
  7. 前記一対の電極の少なくとも一方の電極と基板との間に多孔質体層を設けたことを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の液晶素子。
  8. 前記多孔質体層がケイ素酸化物からなることを特徴とする請求項7に記載の液晶素子。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の液晶素子を用いたことを特徴とする液晶表示装置。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の液晶素子を用いたことを特徴とする調光素子。
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