JP2011256882A - 弁開閉時期制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】運転中のエンジンが停止した場合に、迅速にエンジン始動時の位相に復帰することが可能な弁開閉時期制御装置を提供する。
【解決手段】弁開閉時期制御装置は、位相変換機構7と、内燃機関の始動時の初期位相において相対位相を固定可能なロック機構と、2種類の圧力室5、6を連通するバイパス流路1と、バイパス流路1に設けられ、内燃機関が停止する際に開いてバイパス流路1に作動流体を流通可能とする開閉機構2と、バイパス流路1に設けられ、2種類の圧力室5、6の内の一方から他方への作動流体の流通を許容し、逆方向への流通を妨げる逆止機構3と、を備える。
【選択図】図7
【解決手段】弁開閉時期制御装置は、位相変換機構7と、内燃機関の始動時の初期位相において相対位相を固定可能なロック機構と、2種類の圧力室5、6を連通するバイパス流路1と、バイパス流路1に設けられ、内燃機関が停止する際に開いてバイパス流路1に作動流体を流通可能とする開閉機構2と、バイパス流路1に設けられ、2種類の圧力室5、6の内の一方から他方への作動流体の流通を許容し、逆方向への流通を妨げる逆止機構3と、を備える。
【選択図】図7
Description
本発明は、内燃機関の吸気弁及び排気弁の少なくとも一方の開閉時期を制御するための弁開閉時期制御装置に関する。
従来、内燃機関(エンジン)の運転状態に応じて吸気弁や排気弁の開閉時期を変更する弁開閉時期制御装置が実用化されている。例えば、クランクシャフトに対するカムシャフトの回転位相を変化させることによりカムシャフトの回転に伴って開閉される吸排気弁の開閉時期を変更する機構が知られている。ところで、吸気弁及び排気弁にはそれぞれ、エンジン始動時に好適な開閉時期が存在している。この開閉時期は一般的に車両の走行時などエンジンが通常運転中の場合とは異なることが多い。つまり、クランクシャフトとカムシャフトとの回転位相は、エンジンの始動時と運転時とで異なることが多い。例えば、下記に示す特許文献1には、進角側と遅角側との中間においてエンジン始動時の回転位相を機械的に定めるために、ロック機構を有する可変バルブタイミング機構が開示されている。エンジンが運転状態となって油圧が上昇するとロック機構が解除され、運転状態に応じた適切な位相制御が可能となる。
下記に示す特許文献2には、進角油圧室と遅角油圧室とを連通するバイパス油路、及び当該バイパス油路に設けられて遅角油圧室から進角油圧室へのオイルの流れを妨げる逆止弁が備えられたバルブタイミング調整装置が記載されている。この逆止弁はオイルが低温の場合に作動するものである。特許文献2の機構では、エンジンの始動時における好適な回転位相は、クランクシャフトに対してカムシャフトが最遅角側にある場合である。この機構によれば、オイルが低温であるエンジン始動時に、進角油圧室の油圧が上昇すると逆止弁が開き、進角油圧室から遅角油圧室へオイルが流れて位相が変換される。従って、エンジンが確実に始動して、正常運転に移行することができる。エンジンが正常運転の状態になると、オイルの温度が上昇して逆止弁は作動しなくなる。従って、進角油圧室の油圧が上昇してもバイパス油路は連通されず、運転状態に応じた適切な位相制御が可能となる。
ところで、運転中のエンジンが停止すると、油圧も急速に低下するため、運転中と同様に制御しても回転位相がエンジン始動時の初期位置に復帰しない場合がある。例えば、特許文献1のようにロック機構を有していても、ロックが機能する位置まで相対回転できずにエンジン始動時に適した回転位相に復帰できない場合がある。また、特許文献2のように、バイパス油路を備えていても、エンジン停止後に短い時間で再始動する場合には、オイルが冷えておらず、逆止弁が作動しない場合がある。
本願発明は、上記課題に鑑みて創案されたもので、運転中のエンジンが停止した場合に、迅速にエンジン始動時の位相に復帰することが可能な弁開閉時期制御装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成するための本発明に係る弁開閉時期制御装置の特徴構成は、
内燃機関のクランクシャフトに対して同期回転する駆動側回転部材と、前記駆動側回転部材に対して同軸上に配置され、前記内燃機関の吸気弁及び排気弁の少なくとも一方を開閉するカムシャフトに対して一体回転する従動側回転部材との相対位相を、可動する仕切りによって容積が相補的に可変する進角室及び遅角室のそれぞれに対する作動流体の給排によって変位させる位相変換機構と、
前記内燃機関の始動時の初期位相において前記相対位相を固定可能なロック機構と、
全ての前記進角室及び全ての前記遅角室を連通するバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられ、前記内燃機関が停止する際に開いて前記バイパス流路に前記作動流体を流通可能とする開閉機構と、
前記バイパス流路に設けられ、前記進角室及び前記遅角室の内の一方から他方への前記作動流体の流通を許容し、逆方向への流通を妨げる逆止機構と、
を備える点にある。
内燃機関のクランクシャフトに対して同期回転する駆動側回転部材と、前記駆動側回転部材に対して同軸上に配置され、前記内燃機関の吸気弁及び排気弁の少なくとも一方を開閉するカムシャフトに対して一体回転する従動側回転部材との相対位相を、可動する仕切りによって容積が相補的に可変する進角室及び遅角室のそれぞれに対する作動流体の給排によって変位させる位相変換機構と、
前記内燃機関の始動時の初期位相において前記相対位相を固定可能なロック機構と、
全ての前記進角室及び全ての前記遅角室を連通するバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられ、前記内燃機関が停止する際に開いて前記バイパス流路に前記作動流体を流通可能とする開閉機構と、
前記バイパス流路に設けられ、前記進角室及び前記遅角室の内の一方から他方への前記作動流体の流通を許容し、逆方向への流通を妨げる逆止機構と、
を備える点にある。
位相変換機構を介して駆動される吸気弁や排気弁の反作用により、カムシャフトは回転トルクを発生し、位相変換機構はこの回転トルクを受けている。内燃機関が停止する際には、内燃機関に連動するポンプも動作を停止するため、位相変換機構の制御も緩慢となる。停止指示を受けた内燃機関が停止するまでには、多少の時間を要するが、この間、位相変換機構の駆動側回転部材と従動側回転部材との間には上記回転トルクとしての交番トルクが発生する。本特徴構成によれば、内燃機関が停止する際に一方通行のバイパス流路が形成される。一方通行のバイパス流路を形成することによって交番トルクの正負一方側のみのトルクを取り出すことができる。つまり、通常は内燃機関の停止時に位相変換機構の一方の圧力室から流体溜まりへ排出される流体を、バイパス流路を介して他方の圧力室へと導く。これに対し、他方の圧力室から一方の圧力室への流れは逆止機構によって妨げられる。運転中の内燃機関が停止する際、当然ながら、駆動側回転部材と従動側回転部材との相対位相が初期位相、即ちロック機構が働くロック位置であるとは限らない。しかし、本特徴構成によれば、内燃機関を停止させる際に相対位相が初期位相とは異なっていても、バイパス流路を介して流通する流体によって早期に相対位相を初期位相へと復帰させることが可能となる。その結果、運転中のエンジンが停止した場合に、迅速にエンジン始動時の位相に復帰することが可能な弁開閉時期制御装置を提供することができる。
また、本発明に係る弁開閉時期制御装置は、前記内燃機関が停止する際に、前記進角室及び前記遅角室に対する前記作動流体の給排による流体圧に加え、前記バイパス流路を流通する前記作動流体による流体圧を用いて前記相対位相を前記初期位相へ変位させることを特徴とする。
運転中の内燃機関は停止する際に若干の停止期間を経て停止する。従って、内燃機関に連動する機械式のポンプも吐出力を低下させながら、停止期間中も吐出を継続する。この時、位相変換機構を初期位相側に制御すると、停止期間中のポンプの吐出力を利用することができる。また、本特徴によれば、ポンプによる流体圧に加えて、バイパス流路を流通する作動流体の流体圧を用いて位相変換機構を初期位相側へと駆動する。その結果、内燃機関が停止する際に、位相変換機構の相対位相が初期位相とは異なっていても、早期に相対位相を初期位相へと復帰させることが可能となる。
また、本発明に係る弁開閉時期制御装置は、前記開閉機構が、流体圧バルブであることを特徴とする。
内燃機関が停止する際には、内燃機関に連動する機械式のポンプの動作も次第に停止していき、吐出力が低下する。バイパス流路の開閉機構を流体圧バルブとすると、内燃機関が運転中の際には強い吐出力による流体圧で閉弁され、吐出力の低下に伴って低下する流体圧で開弁される開閉機構を実現することができる。即ち、内燃機関が停止する際に開いてバイパス流路に作動流体を流通可能とする開閉機構を良好に構築することができる。
また、本発明に係る弁開閉時期制御装置は、前記開閉機構が、電動バルブであることを特徴とする。
バイパス流路の開閉機構を電動バルブとすると、停止指示を受けた内燃機関が停止し始める際に、速やかにバイパス流路を開放し、作動流体を流通させることができる。即ち、内燃機関が停止する際に開いてバイパス流路に作動流体を流通可能とする開閉機構を迅速且つ良好に構築することができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の弁開閉時期制御装置の構成を模式的に示す破断断面図である。図2は、図1のII−II断面図であり、1つの作動状態における位相変換機構の状態を模式的に示す平面図である。図中の符号7は、位相変換機構を示す。位相変換機構7は、内燃機関(エンジン)に対して同期回転する駆動側回転部材72と、駆動側回転部材72に対して同軸上に配置される従動側回転部材71とを有している。本例では、駆動側回転部材72の内側に従動側回転部材71が配置された場合を示している。駆動側回転部材72は、プーリや図示のようなスプロケットとなっている。駆動側回転部材72には、不図示のベルトやチェーンを介してエンジンのクランクシャフトからの回転が伝達される。カムシャフト8にボルト75で固定される従動側回転部材71が駆動側回転部材72と一体回転し、カムシャフト8を回転させてエンジンの吸気弁や排気弁を開閉する。
駆動側回転部材72と従動側回転部材71との間には、空間が形成されている。この空間は、可動する仕切りであるベーン73によって2種類の圧力室5及び6に分割されている。空間の容積は決まっており、空間の中でベーン73の位置が変化することによって、2種類の圧力室5及び6は、相補的にその容積が変わる。容積が変わることによって、駆動側回転部材72と従動側回転部材71との相対的な回転位相が変位され、ピストン運動するエンジンに対する吸気弁や排気弁の開閉タイミングが変更される。尚、仕切りは図2に示すような板状のベーン73に限らず、ブロック形状のものでもよい。
図2に示す例では、位相変換機構7は時計回りに回転する。図2には、駆動側回転部材72に対して従動側回転部材71の位相が最も遅れた状態を示している。符号5及び符号6は圧力室である。図2では、圧力室5に作動流体が供給され、圧力室6に対する相対的な容積が増加することによって従動側回転部材71の位相が駆動側回転部材72に対して遅角側に制御されている。圧力室6に作動流体が供給されると逆側(進角側)に制御される。従って、本例では、以下、圧力室5を遅角室、圧力室6を進角室と称する。尚、当然ながら、遅角室5又は進角室6に作動流体を供給すると共に進角室6又は遅角室5から作動流体を排出してもよい。
また、図1において、遅角室5に通じる流路51を遅角流路、進角室6に通じる流路61を進角流路と称する。尚、遅角室5及び進角室6は完全密閉されてはおらず、各圧力室の容量を超える作動流体が供給されると、作動流体は位相変換機構7の外側へ漏れ出す。作動流体は例えばエンジンオイル(以下、オイルと略称する。)であり、漏れ出したオイルはエンジンの各部へ供給されるオイルと共に回収される。以下、作動流体がオイルである場合を例として説明する。
図3は、本実施形態に係る位相変換機構7への油圧回路の例を模式的に示すブロック図である。符号11はオイルパンである。オイルパン11は、上述したように、エンジンの
各部に供給され回収されたオイルが貯留される貯留部である。符号12は、エンジンの回転に連動する機械式のポンプである。符号13はオイルフィルタである。ポンプ12によってオイルパン11から汲み上げられたオイルに含まれる煤などの不純物は、オイルフィルタ13でろ過される。ろ過されたオイルは、分岐したそれぞれの流路を経て位相変換機構7やその他のエンジン各部10に供給される。位相変換機構7への流路には、逆止弁14が設けられている。逆止弁14は位相変換機構7からのオイルの逆流を防ぎ、位相変換機構7の動作を安定させる。
各部に供給され回収されたオイルが貯留される貯留部である。符号12は、エンジンの回転に連動する機械式のポンプである。符号13はオイルフィルタである。ポンプ12によってオイルパン11から汲み上げられたオイルに含まれる煤などの不純物は、オイルフィルタ13でろ過される。ろ過されたオイルは、分岐したそれぞれの流路を経て位相変換機構7やその他のエンジン各部10に供給される。位相変換機構7への流路には、逆止弁14が設けられている。逆止弁14は位相変換機構7からのオイルの逆流を防ぎ、位相変換機構7の動作を安定させる。
ポンプ12、オイルフィルタ13、逆止弁14を経由したオイルは、ECU(electronic control unit)4によって制御されるオイルコントロールバルブ(OCV)15に供
給される。位相変換機構7には、カムシャフト8の内部を通る進角流路61、遅角流路51を介してオイルが給排されるので、OCV15には、進角流路61及び遅角流路51が接続される。OCV15は、進角流路61及び遅角流路51をそれぞれオイル供給路あるいはオイル排出路として設定する。図2に示した例では、OCV15によって進角流路61がオイル供給路、遅角流路51がオイル排出路として設定されている。つまり、位相変換機構7を進角側へ制御する場合の油圧回路が示されている。
給される。位相変換機構7には、カムシャフト8の内部を通る進角流路61、遅角流路51を介してオイルが給排されるので、OCV15には、進角流路61及び遅角流路51が接続される。OCV15は、進角流路61及び遅角流路51をそれぞれオイル供給路あるいはオイル排出路として設定する。図2に示した例では、OCV15によって進角流路61がオイル供給路、遅角流路51がオイル排出路として設定されている。つまり、位相変換機構7を進角側へ制御する場合の油圧回路が示されている。
尚、図1及び図2に示す位相変換機構7には、位相変換機構7を初期位相に固定するためのロック機構9が設けられている。初期位相とは、エンジンの始動時に好適な弁開閉時期を設定するための位相変換機構7の相対位相である。本実施形態では、初期位相は最遅角側や最進角側ではなく、両者の中間である中間位相に設定されている(追って示す図6参照)。
ロック機構9は、ロック制御流路91、ロックピン93、バネ95により構成されている。ロックピン93はバネ95などの弾性部材によってロック制御流路91に対して付勢されている。ロック制御流路91にオイルが供給されるとロックピン93が付勢力に抗って後退し、ロックが解除されて位相変換機構7の相対回転が可能となる。本実施形態において、ロック機構9は、初期位相から進角方向側への所定の位相角をロック機構9の作動範囲として許容するラチェット機構を備えている。これにより、相対位相が初期位相から所定の位相角分、遅角方向へずれていてもロック機構9が作動する。尚、位相変換機構7の構成によっては、ロック制御流路91を進角流路61や遅角流路51と兼用することが可能である。ロック制御流路91は、逆止弁14とOCV15との間の流路から分岐した流路がオイルスイッチングバルブ(OSV)97を介して接続される。OSV97も、OCV15と同様にECU4によって制御される。
図3に示すように、油圧回路には、2種類の圧力室、即ち進角室6と遅角室5とを連通するバイパス流路1が設けられている。詳細な作用については後述するが、このバイパス流路1は、運転中のエンジンが停止する際に、早期に位相変換機構7を初期位相に復帰させるために設けられている。このため、バイパス流路1には、エンジンが停止する際に開いてバイパス流路1にオイルを流通可能とする開閉機構としてのOCV2が設けられている。図3に示した油圧回路は、エンジンが運転中で位相変換機構7が運転状態に応じて制御されている状態を例示しているため、バイパス流路1のOCV2は閉じた状態である。また、バイパス流路1は、オイルを一方向にのみ流通させる一方通行の流路である。このため、バイパス流路1には、2種類の圧力室の内の一方から他方へのオイルの流通を許容し、逆方向への流通を妨げる逆止機構としての逆止弁3が設けられている。図3に示した例では、遅角室5から進角室6へのオイルの流通が許容された一方通行の流路である。
位相変換機構7を介して駆動される吸気弁や排気弁の反作用により、カムシャフト8は回転トルクを発生し、位相変換機構7はこの回転トルクを受ける。運転中のエンジンが停止する際には、エンジンに連動するポンプ12も動作を停止するため、位相変換機構7の
制御も緩慢となる。そこで、本発明では、カムシャフト8が発生する上記回転トルクを利用して、早期に位相変換機構7を初期位相に復帰させる。弁開閉時期制御装置には、その構造上、吸気弁や排気弁のバルブスプリングの抵抗や位相変換機構の粘性抵抗等がある。従って、従動側回転部材71と一体回転するカムシャフトに生じる回転トルクは遅角側へ偏向し易い。エンジンが停止する際、位相変換機構7の制御が緩慢となると、回転トルクはさらに遅角側へ偏向し易くなる。例えば、エンジンが停止する際にカムシャフトが発生する回転トルクは、図4に示すように遅角側に偏向していく交番トルクとなる。以降、カムシャフト8が発生するこのトルクをカムトルクと称する。図4において正のトルクはカムシャフト8が遅角側へ回転しようとする力であり、負のトルクはカムシャフト8が進角側へ回転しようとする力である。エンジンが4気筒の場合には、図4に示すカムトルクの2周期がエンジンの1サイクルに相当する。
制御も緩慢となる。そこで、本発明では、カムシャフト8が発生する上記回転トルクを利用して、早期に位相変換機構7を初期位相に復帰させる。弁開閉時期制御装置には、その構造上、吸気弁や排気弁のバルブスプリングの抵抗や位相変換機構の粘性抵抗等がある。従って、従動側回転部材71と一体回転するカムシャフトに生じる回転トルクは遅角側へ偏向し易い。エンジンが停止する際、位相変換機構7の制御が緩慢となると、回転トルクはさらに遅角側へ偏向し易くなる。例えば、エンジンが停止する際にカムシャフトが発生する回転トルクは、図4に示すように遅角側に偏向していく交番トルクとなる。以降、カムシャフト8が発生するこのトルクをカムトルクと称する。図4において正のトルクはカムシャフト8が遅角側へ回転しようとする力であり、負のトルクはカムシャフト8が進角側へ回転しようとする力である。エンジンが4気筒の場合には、図4に示すカムトルクの2周期がエンジンの1サイクルに相当する。
例えば、イグニッション(IG)スイッチがオフされると、停止処理を経て0.2秒〜0.5秒でエンジンは停止する。この停止までの期間、図4に示すような交番トルクが発生しており、本発明では、これを利用して位相変換機構7の相対位相を初期位相に復帰させる。イグニッションスイッチをオフした時点から0.1秒程度、長くとも0.2秒〜0.3秒以内でロック機構9を働かせることができると好適である。エンジンがアイドリング運転時などで、例えば600rpmだと仮定すれば、0.5秒で5サイクルである。従って、カムトルクの2周期、多くとも4〜6周期以内でロック機構9が働くように位相変更すると好適である。
図5は、図2の位相変換機構7が初期位相に対して進角側にある場合の平面図である。また、図6は、図2の位相変換機構7が初期位相にある場合の平面図である。エンジンが停止する際に、位相変換機構7が初期位相よりも進角側にある場合、上述したような遅角側に偏移したカムトルクを利用して初期位相へ復帰させることが可能である。つまり、OCV15を介して与えられる位相変換機構7への制御油圧と、カムトルクとを用いて初期位相へ復帰させることが可能である。
図7は、エンジンが停止する際に位相変換機構7の相対位相を遅角側へ移相させる場合の油圧回路の一例を示している。以下、図4に示す波形図も参照しながら、エンジンが停止する際の油圧回路の動作について説明する。ECU4は、エンジン停止指示、即ちイグニッションスイッチのオフ信号(IGOFF信号)を取得して、エンジン停止の一連の処理を実行する。ECU4は、OSV97を切り替えて、ロック制御流路91からオイルを排出させる。ECU4は、不図示のセンサ等から入力される相対位相情報を取得し、初期位相に対して進角側であるか遅角側であるかを判定する。尚、図2に示すようにロック機構9はラチェット機構を備えているため、ラチェット機構が作動する位相角を考慮して判定すると好適である。位相変換機構7が図5に示すように初期位相に対して進角側にある場合、ECU4は、位相変換機構7を遅角側に移相させる制御を実行する。ECU4は、図7に示すように、遅角流路51へオイルを供給し、進角流路61からオイルを排出するように、OCV15を切り替える。
図4に示すように、イグニッションスイッチのオフにより、エンジンの回転数が減少していく。これに伴い、エンジンに連動するポンプ12のオイル吐出量も減少し、位相変換機構7の制御油圧(VVT制御油圧)も減少していく。ポンプ12の吐出量の減少に伴い、バイパス流路1の開閉機構として機能するOCV2を制御するOCV制御流路21の油圧が低下する。これにより、OCV2が開いてバイパス流路1が開通し、位相変換機構7の進角室6と遅角室5とが連通される。バイパス流路1は、遅角室5から進角室6への一方通行の流路であり、図4に示すカムトルクの内、負側のトルクを進角室6へ伝達する機能を有する。
但し、ECU4が位相変換機構7を遅角側に移相させて初期位相に復帰させる制御を実行しているため、進角流路61はOCV15によりオイルパン11への排出経路に接続されている。このため、バイパス流路1を介して得られる負側のカムトルクによる油圧は進角室6へは伝達されない。その結果、図4に示すように、遅角側へ偏向していくカムトルクにより位相変換機構7は、遅角側へと移相される。移相により、相対位相がロック位置に達するとロック機構9が作動し、位相変換機構7は図6に示すように固定される。
以下、エンジンが停止する際、図2に示すように位相変換機構7が初期位相よりも遅角側にあり、進角側に移相して初期位相に復帰させる場合について具体的に説明する。
図8は、エンジンが停止する際に進角側へ移相させる場合の油圧回路の一例を示すブロック図である。図9は、カムトルクとカムトルクによる進角側への移相を示す波形図である。ECU4は、エンジン停止指示、即ちイグニッションスイッチのオフ信号(IGOFF信号)を取得して、エンジン停止の一連の処理を実行する。ロック制御流路91の切り替え、相対位相情報の取得については上述したとおりである。位相変換機構7が図1に示すように初期位相に対して遅角側にある場合、ECU4は、位相変換機構7を進角側に移相させる制御を実行する。図8に示すように、ECU4は、進角流路61へオイルを供給し、遅角流路51からオイルを排出するように、OCV15を制御する。
図9に示すように、イグニッションスイッチのオフにより、エンジンの回転数が減少していく。これに伴い、エンジンに連動するポンプ12のオイル吐出量も減少し、位相変換機構7の制御油圧(VVT制御油圧)も減少していく。ポンプ12の吐出量の減少に伴い、バイパス流路1の開閉機構として機能するOCV2の制御油圧が低下する。これにより、OCV2が開いてバイパス流路1が開通し、位相変換機構7の進角室6と遅角室5とが連通される。バイパス流路1は、遅角室5から進角室6への一方通行の流路である。バイパス流路1は、図9に示すカムトルクの内、斜線で示した負側のトルク、即ち進角側へのトルクを油圧として進角室6へ伝達する機能を有する。正側のトルクによる油圧、即ち遅角側への油圧はバイパス流路1の逆止弁3によってカットされる。
エンジンが停止するまでは、ポンプ12が作動しており、また、進角流路61への油圧回路には逆止弁14が備えられているため、進角流路61にはオイルが満ちている。ここで、負側(進角側)のカムトルクによる油圧が生じると、バイパス流路1には負圧が生じ、遅角室5から排出されたオイルがバイパス流路1を介して進角流路61へと吸上げられる。このようにして、進角室6及び遅角室5に対して給排されるオイルによる流体圧(VVT制御油圧)に加え、バイパス流路1を流通するオイルの流体圧を用いて相対位相を初期位相へ変位させる。相対位相がロック位置に達するとロック機構9が作動し、位相変換機構7が図6に示すように固定される。
逆止弁3を備えたバイパス流路1が無い場合には、位相変換機構7が初期位相に復帰するまでに、エンジンが停止してしまう場合がある。つまり、OCV15を介して与えられる制御油圧にカムトルクを加えても、カムトルクが漸次遅角側に偏向していくために進角側に充分なトルクを得ることができない場合がある。初期位相に復帰することなくエンジンが停止すれば、ポンプ12も停止するのでVVT制御油圧もカムトルクもなくなる。その結果、図9に破線で示すように、ロック機構9が作動するまでに移相が終了してしまう。しかし、本実施形態のようにバイパス流路1を設けて、遅角側へのカムトルクを除去し、進角側へのカムトルクのみを有効に活用することにより、位相変換機構7は初期位相位置へと良好に移相される。
〔第2実施例〕
〔第2実施例〕
図10は、エンジンが停止する際に進角側へ移相させる場合の第2実施形態に係る油圧
回路であり、第1実施形態の図8に対応する油圧回路である。本実施形態では、バイパス流路1の開閉機構としてのOCV2がECU4により制御される電動バルブである点において、第1実施形態と異なる。その他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。OCV2を電動バルブとすることにより、油圧の低下を待つことなく、ECU4がIGOFF信号を取得した後、速やかにバイパス流路1を開くことができる。
回路であり、第1実施形態の図8に対応する油圧回路である。本実施形態では、バイパス流路1の開閉機構としてのOCV2がECU4により制御される電動バルブである点において、第1実施形態と異なる。その他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。OCV2を電動バルブとすることにより、油圧の低下を待つことなく、ECU4がIGOFF信号を取得した後、速やかにバイパス流路1を開くことができる。
図11は、エンジンが停止する際に遅角側へ移相させる場合の第2実施形態に係る油圧回路であり、第1実施形態の図7に対応する油圧回路である。本実施形態では、バイパス流路1の開閉機構としてのOCV2がECU4により制御される電動バルブである点において、第1実施形態と異なる。また、ECU4により制御可能であることから、図11に示すように、バイパス流路1のOCV2を閉じたままとすることができる。遅角側への移相の場合、バイパス流路1を利用する必要はないため、OCV2は閉じた状態のままとしていてよい。OCV2が電動バルブの場合、消費電力を抑制することができる。もちろん、必要に応じて第1実施形態と同様にOCV2を開くように制御してもよい。
〔第3実施例〕
〔第3実施例〕
図12は、本発明の弁開閉時期制御装置の他の構成例を模式的に示す破断断面図である。図13は、図12のXIII-XIII断面図であり、初期位相における位相変換機構の状態を
模式的に示す平面図である。図12及び図13に示す位相変換機構では、ロック制御流路が遅角流路51と兼用化されている点において図1及び図2に示す構成と異なる。また、本実施形態における初期位相は、最進角位置である。従って、エンジンが停止する際には、位相変換機構7の相対位相は、必ず初期位相を含んで遅角側となる。第3実施形態のその他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
模式的に示す平面図である。図12及び図13に示す位相変換機構では、ロック制御流路が遅角流路51と兼用化されている点において図1及び図2に示す構成と異なる。また、本実施形態における初期位相は、最進角位置である。従って、エンジンが停止する際には、位相変換機構7の相対位相は、必ず初期位相を含んで遅角側となる。第3実施形態のその他の構成及び作用については、第1実施形態と同様であるので説明を省略する。
図14は、エンジンが運転中の場合の第3実施形態に係る油圧回路の例である。ポンプ12を介してバイパス流路1の開閉機構であるOCV2に制御油圧が供給され、OCV2が閉じた状態となる。図15は、エンジンが停止する際に進角側へ移相させる場合の第3実施形態に係る油圧回路の一例である。イグニッションスイッチがオフされると、エンジンの回転数が減少していく。これに伴い、エンジンに連動するポンプ12のオイル吐出量も減少し、位相変換機構7の制御油圧(VVT制御油圧)も低下していく。ポンプ12の吐出量の減少に伴い、バイパス流路1の開閉機構として機能するOCV2の制御油圧が低下する。これにより、OCV2が開いてバイパス流路1が開通し、位相変換機構7の進角室6と遅角室5とが連通される。そして、第1実施形態と同様に、交番トルクであるカムトルクを利用して、位相変換機構7が進角側に移相される。
〔第4実施例〕
〔第4実施例〕
図16は、エンジンが停止する際に進角側へ移相させる場合の第4実施形態に係る油圧回路の一例である。図16は、第3実施形態の図15に対応する油圧回路である。その他の構成及び作用については、第3実施形態と同様であるので説明を省略する。本実施形態では、バイパス流路1の開閉機構としてのOCV2がECU4により制御される電動バルブである点において、第3実施形態と異なる。OCV2を電動バルブとすることにより、油圧の低下を待つことなく、ECU4がIGOFF信号を取得した後、速やかにバイパス流路1を開くことができる。
〔その他の実施例〕
〔その他の実施例〕
内燃機関には、吸気弁及び排気弁の少なくとも一方を開弁する際の弁のリフト量を設定可能な可変動弁機構を有するものがある。上述したように、位相変換機構7を介して駆動される吸気弁や排気弁の反作用により、カムシャフトがカムトルクを発生し、位相変換機構7が回転トルクを受ける。反作用は、吸気弁や排気弁のリフト量に応じて変動するので、カムトルクも変動する。具体的には、リフト量が大きい場合にはカムトルクも大きくなり、リフト量が小さい場合にはカムトルクも小さくなる。従って、イグニッションスイッチがオフされてエンジンが停止する際に、位相変換機構7の相対位相に応じてリフト量を変更すると好適である。
例えば、第1及び第2実施形態の場合において以下のように適用すると好適である。相対位相が初期位相よりも遅角側であった場合は、リフト量を大きくすることによって、カムトルクが遅角側に偏向していく前半で大きな進角側のトルクを利用することができる。その結果、早期に進角側へ移相させることができる。相対位相が進角側であった場合には、何れにしてもカムトルクは遅角側へ偏向していくので、特にリフト量を変更しなくてもよい。しかし、リフト量を大きくすることによって、遅角側への移相を速くすることができる。勿論、第3及び第4実施形態においても、リフト量を変更することによって、大きなカムトルクを得るようにしてもよい。
上述した各実施形態においては、遅角室5から進角室6への一方通行のバイパス流路1を設ける場合について例示した。しかし、カムトルクが偏向する方向は、弁開閉時期制御装置の構造によって異なり得るものである。従って、当業者であれば、弁開閉時期制御装置の構造に応じ、適宜、進角室6から遅角室5への一方通行のバイパス流路1を設けるなどの改変を行うことも可能であろう。しかし、当然ながら、そのような改変もまた本発明の技術的思想に含まれる。
以上説明したように、本発明によって、運転中のエンジンが停止した場合に、迅速にエンジン始動時の位相に復帰することが可能な弁開閉時期制御装置を提供することができる。
1:バイパス流路
2:オイルコントロールバルブ(開閉機構)
3:逆止弁(逆止機構)
4:ECU
5:遅角室、圧力室
6:進角室、圧力室
7:位相変換機構
8:カムシャフト
9:ロック機構
71:従動側回転部材
72:駆動側回転部材
73:ベーン(仕切り)
2:オイルコントロールバルブ(開閉機構)
3:逆止弁(逆止機構)
4:ECU
5:遅角室、圧力室
6:進角室、圧力室
7:位相変換機構
8:カムシャフト
9:ロック機構
71:従動側回転部材
72:駆動側回転部材
73:ベーン(仕切り)
Claims (4)
- 内燃機関のクランクシャフトに対して同期回転する駆動側回転部材と、前記駆動側回転部材に対して同軸上に配置され、前記内燃機関の吸気弁及び排気弁の少なくとも一方を開閉するカムシャフトに対して一体回転する従動側回転部材との相対位相を、可動する仕切りによって容積が相補的に可変する進角室及び遅角室のそれぞれに対する作動流体の給排によって変位させる位相変換機構と、
前記内燃機関の始動時の初期位相において前記相対位相を固定可能なロック機構と、
全ての前記進角室及び全ての前記遅角室を連通するバイパス流路と、
前記バイパス流路に設けられ、前記内燃機関が停止する際に開いて前記バイパス流路に前記作動流体を流通可能とする開閉機構と、
前記バイパス流路に設けられ、前記進角室及び前記遅角室の内の一方から他方への前記作動流体の流通を許容し、逆方向への流通を妨げる逆止機構と、
を備える弁開閉時期制御装置。 - 前記内燃機関が停止する際に、前記進角室及び前記遅角室に対する前記作動流体の給排による流体圧に加え、前記バイパス流路を流通する前記作動流体による流体圧を用いて前記相対位相を前記初期位相へ変位させる請求項1に記載の弁開閉時期制御装置。
- 前記開閉機構は、流体圧バルブである請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置。
- 前記開閉機構は、電動バルブである請求項1又は2に記載の弁開閉時期制御装置
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JP2011210701A JP2011256882A (ja) | 2011-09-27 | 2011-09-27 | 弁開閉時期制御装置 |
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Citations (2)
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JP2004108370A (ja) * | 2002-09-19 | 2004-04-08 | Borgwarner Inc | 可変カムシャフトタイミング機構 |
JP2006090307A (ja) * | 2004-09-22 | 2006-04-06 | Borgwarner Inc | 可変カムタイミング位相器 |
-
2011
- 2011-09-27 JP JP2011210701A patent/JP2011256882A/ja active Pending
Patent Citations (2)
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