以下、本発明に係る可搬型放射線画像撮影装置および放射線画像撮影システムの実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下、可搬型放射線画像撮影装置を単に放射線画像撮影装置と表す。また、以下では、放射線画像撮影装置1として、シンチレータ等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
[第1の実施の形態]
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。また、図3は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1〜図3に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等で構成されるセンサパネルSPが収納されている。
図1や図2に示すように、本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。なお、筐体2をこのようないわゆるモノコック型として形成する代わりに、例えば、フレーム板とバック板とで形成された、いわゆる弁当箱型とすることも可能である。
図1に示すように、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、バッテリ状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケータ40等が配置されている。
本実施形態では、コネクタ39は、例えば後述する図12に示すように、ケーブル51b等が接続されることにより、後述するようにコンソール58(図10参照)に画像データD等を送信したり、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55との間で信号のやり取りを行う場合の通信手段として機能するようになっている。
なお、コネクタ39の設置位置は蓋部材2Bに限定されず、放射線画像撮影装置1の適宜の位置に設置することが可能である。
また、図2に示すように、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、無線方式で画像データD等を送信したり放射線発生装置55との間で信号のやり取りを行うためのアンテナ装置41を、例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けることも可能である。その際、アンテナ装置41の設置位置は蓋部材2Cに限定されず、放射線画像撮影装置1の任意の位置にアンテナ装置41を設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置41は1個に限らず、複数設けることも可能である。
図3に示すように、筐体2の内部には、センサパネルSPの基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。また、本実施形態では、センサパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材36が設けられている。
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を保持するようになっている。
ここで、本実施形態における放射線検出素子7やTFT8の構造について、図6に示す断面図を用いて簡単に説明する。図6は、図5におけるY−Y線に沿う断面図である。
基板4の面4a上に、AlやCr等からなるTFT8のゲート電極8gが走査線5と一体的に積層されて形成されており、ゲート電極8g上および面4a上に積層された窒化シリコン(SiNx)等からなるゲート絶縁層81上のゲート電極8gの上方部分に、水素化アモルファスシリコン(a−Si)等からなる半導体層82を介して、放射線検出素子7の第1電極74と接続されたソース電極8sと、信号線6と一体的に形成されるドレイン電極8dとが積層されて形成されている。
ソース電極8sとドレイン電極8dとは、窒化シリコン(SiNx)等からなる第1パッシベーション層83によって分割されており、さらに第1パッシベーション層83は両電極8s、8dを上側から被覆している。また、半導体層82とソース電極8sやドレイン電極8dとの間には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたオーミックコンタクト層84a、84bがそれぞれ積層されている。以上のようにしてTFT8が形成されている。
また、放射線検出素子7の部分では、基板4の面4a上に前記ゲート絶縁層81と一体的に形成される絶縁層71の上にAlやCr等が積層されて補助電極72が形成されており、補助電極72上に前記第1パッシベーション層83と一体的に形成される絶縁層73を挟んでAlやCr、Mo等からなる第1電極74が積層されている。第1電極74は、第1パッシベーション層83に形成されたホールHを介してTFT8のソース電極8sに接続されている。
第1電極74の上には、水素化アモルファスシリコンにVI族元素をドープしてn型に形成されたn層75、水素化アモルファスシリコンで形成された変換層であるi層76、水素化アモルファスシリコンにIII族元素をドープしてp型に形成されたp層77が下方から順に積層されて形成されている。
放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で可視光等の電磁波に変換され、変換された電磁波が図中上方から照射されると、電磁波は放射線検出素子7のi層76に到達して、i層76内で電子正孔対が発生する。放射線検出素子7は、このようにして、シンチレータ3から照射された電磁波を電荷に変換するようになっている。
また、p層77の上には、ITO等の透明電極とされた第2電極78が積層されて形成されており、照射された電磁波がi層76等に到達するように構成されている。本実施形態では、以上のようにして放射線検出素子7が形成されている。なお、p層77、i層76、n層75の積層の順番は上下逆であってもよい。また、本実施形態では、放射線検出素子7として、上記のようにp層77、i層76、n層75の順に積層されて形成されたいわゆるpin型の放射線検出素子を用いる場合が説明されているが、これに限定されない。
放射線検出素子7の第2電極78の上面には、第2電極78を介して放射線検出素子7にバイアス電圧を印加するバイアス線9が接続されている。なお、放射線検出素子7の第2電極78やバイアス線9、TFT8側に延出された第1電極74、TFT8の第1パッシベーション層83等、すなわち放射線検出素子7とTFT8の上面部分は、その上方側から窒化シリコン(SiNx)等からなる第2パッシベーション層79で被覆されている。
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。各入出力端子11には、図7に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC12a等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
また、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPが形成されている。なお、図7では、電子部品32等の図示が省略されている。
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図8は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図9は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極78にそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極78にそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。
また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
図8や図9に示すように、本実施形態では、放射線検出素子7のp層77側(図6参照)に第2電極78を介してバイアス線9が接続されていることからも分かるように、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極78にバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極74側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
各放射線検出素子7の第1電極74はTFT8のソース電極8s(図8、図9中ではSと表記されている。)に接続されており、各TFT8のゲート電極8g(図8、図9中ではGと表記されている。)は、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bから延びる走査線5の各ラインL1〜Lxにそれぞれ接続されている。また、各TFT8のドレイン電極8d(図8、図9中ではDと表記されている。)は各信号線6にそれぞれ接続されている。
走査駆動手段15は、ゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。そして、ゲートドライバ15bは、前述したように、走査線5の各ラインL1〜Lxを介してTFT8のゲート電極8gに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧との間で切り替えて、各TFT8のオン状態とオフ状態とを制御するようになっている。
なお、各放射線検出素子7のリセット処理や、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理等において、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方については、後で説明する。
図8や図9に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。なお、本実施形態では、読み出しIC16に、1本の信号線6につき1個ずつ読み出し回路17が設けられている。
読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図8や図9中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図9中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
本実施形態では、増幅回路18はチャージアンプ回路で構成されており、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続されて構成されている。また、増幅回路18には、増幅回路18に電力を供給するための電源供給部18dが接続されている。
また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理時に、電荷リセット用スイッチ18cがオフの状態で放射線検出素子7のTFT8がオン状態とされると、各放射線検出素子7内に蓄積されていた電荷が各放射線検出素子7からTFT8を介して信号線6に放出され、信号線6を介してコンデンサ18bに流入して蓄積される。そして、蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっている。
増幅回路18は、このようにして、各放射線検出素子7から出力された電荷量に応じて電圧値を出力して電荷電圧変換するようになっている。また、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされると、増幅回路18の入力側と出力側とが短絡されてコンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて増幅回路18がリセットされるようになっている。なお、増幅回路18を、放射線検出素子7から出力された電荷に応じて電流を出力するように構成することも可能である。
増幅回路18の出力側には、相関二重サンプリング回路(CDS)19が接続されている。相関二重サンプリング回路19は、本実施形態では、サンプルホールド機能を有しており、この相関二重サンプリング回路19におけるサンプルホールド機能は、制御手段22から送信されるパルス信号によりそのオン/オフが制御されるようになっている。
そして、制御手段22は、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理においては、増幅回路18や相関二重サンプリング回路19を制御して、各放射線検出素子7から放出された電荷を増幅回路18で電荷電圧変換させ、電荷電圧変換された電圧値を相関二重サンプリング回路19でサンプリングさせて画像データDとして下流側に出力させるようになっている。
相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサ21(図8参照)に送信され、アナログマルチプレクサ21から順次A/D変換器20に送信される。そして、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図8等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
また、本実施形態では、制御手段22には、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ24が接続されている。前述したように、放射線画像撮影装置1にアンテナ装置41を設ける場合には、制御手段22にアンテナ装置41が接続される。
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり、読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフを制御したり、相関二重サンプリング回路19にパルス信号を送信して、そのサンプルホールド機能のオン/オフを制御する等の各種の処理を実行するようになっている。
走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方やその切り替え等については、放射線画像撮影システム50の構成について説明した後で説明する。
[放射線画像撮影システム]
図10および図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成を示す図である。図10や図11では、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50を用いて、撮影室R1や病室R3等で患者H(図11参照)の身体の一部すなわち被写体に放射線を照射して放射線画像撮影を行う場合が示されている。
図10に示すように、撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図10では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば、立位撮影用のブッキー装置51Aのみ、或いは、臥位撮影用のブッキー装置51Bのみが設けられていてもよい。
本実施形態では、図12に示すように、放射線画像撮影装置1のコネクタ39と、ブッキー装置51から延設されたケーブル51bの先端に設けられたコネクタ51cとが接続されて、放射線画像撮影装置1がブッキー装置51に装填されるようになっている。なお、カセッテ保持部51a内にコネクタ51cを設けておき、放射線画像撮影装置1が装填されると自動的にコネクタ39とコネクタ51cとが接続されるように構成することも可能であり、適宜に構成される。
本実施形態では、ブッキー装置51は、コネクタ51bと放射線画像撮影装置1のコネクタ39とが接続されると、ブッキー装置51から放射線画像撮影装置1に電力を供給するようになっている。そのため、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、コネクタ39、51b同士が接続されると、バッテリ24(図8参照)からの各機能部への電力の供給を停止し、コネクタ39を介してブッキー装置51から供給される電力を各機能部に供給するように切り替えるようになっている。
また、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、コネクタ39、51b同士が接続されると、それ以降の後述するコンソール58との画像データDや信号等の送受信は、ブッキー装置51のケーブル51bや後述する基地局54を介して有線方式で行うようになっている。コンソール58との画像データDや信号等の送受信を、アンテナ装置41を介して無線方式で行うように構成することも可能である。
さらに、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、撮影室R1でブッキー装置51に装填されて用いられる場合には、後述する放射線発生装置55との信号のやり取りを行い、放射線発生装置55と連携して放射線画像撮影を行うが、その場合も、放射線発生装置55との信号のやり取りは、ブッキー装置51のケーブル51bや後述する基地局54を介して行うようになっている。
なお、以下では、このように、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが信号のやり取りを行い、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55と連携して放射線画像撮影を行う方式を、連携方式という。
図10に示すように、撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
撮影室R1には、撮影室R1内の各装置等や撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための基地局(アクセスポイントともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、基地局54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ53が設けられている。また、本実施形態では、前述した各ブッキー装置51A、51Bと基地局54とはそれぞれケーブル等で接続されている。
また、基地局54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、基地局54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
前室(操作室ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
曝射スイッチ56は、例えば図13(A)に示すように、棒状のボタン部56aと、ボタン部56aを図中矢印Sで示されるストローク方向に移動可能に支持する筐体部56bとで構成されている。そして、曝射スイッチ56のボタン部56aは、例えば、筐体部56bから上方に突出した円筒部56a1と、その内部からさらに上方に突出した円柱部56a2を備えて構成されている。
そして、図13(B)に示すように、円柱部56a2が円筒部56a1の上端部分までそのストローク方向Sに押し込まれると(すなわちいわゆる半押し操作が行われると)、曝射スイッチ56は、操作卓57を介して放射線発生装置55に起動信号を送信するようになっている。放射線発生装置55は、この起動信号を受信すると、放射線源52Aを起動させるようになっている。
また、図13(C)に示すように、曝射スイッチ56の円筒部56a1と円柱部56a2とがともに筐体部56bの上端部分まで押し込まれると(すなわちいわゆる全押し操作が行われると)、曝射スイッチ56は、操作卓57を介して放射線発生装置55に照射開始信号を送信するようになっている。
放射線発生装置55は、曝射スイッチ56からこの照射開始信号を受信すると、基地局54を介して放射線画像撮影装置1に照射開始信号を送信するようになっている。そして、後述するように、放射線発生装置55は、放射線画像撮影装置1から基地局54を介して送信されてきたインターロック解除信号を受信すると、放射線源52から放射線を照射させるようになっている。
放射線発生装置55は、このほか、指定されたブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に対して放射線を適切に照射できるように放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメータ等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を放射線源52に対して行うようになっている。
また、放射線発生装置55は、放射線の照射開始から、設定された時間が経過した時点で、放射線源52からの放射線の照射を停止させるようになっている。
一方、図11に示すように、放射線画像撮影装置1は、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、撮影室R1に行くことができないような場合、図11に示すように、放射線画像撮影装置1をベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
放射線画像撮影装置1をこのようにして用いる場合、例えば図12に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクタ39にケーブルを接続して用いると、ケーブルが邪魔になる場合が多いため、本実施形態では、放射線画像撮影装置1を単独の状態で用いる場合には、コネクタ39にケーブルを接続せずに使用するようになっている。
そのため、この場合は、放射線画像撮影装置1は、外部装置から電力の供給を受けることができないため、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、バッテリ24(図8参照)からの各機能部に電力を供給して、必要な機能部を稼動させるようになっている。
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55や放射線源52Aを病室R3に持ち込むことができないため、このような場合には、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。
この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Bは、任意の方向に放射線を照射できるように構成される。そして、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
なお、図10に示したように、放射線画像撮影装置1を、撮影室R1の臥位撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Bや、撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
しかし、上記のように病室R3や撮影室R1で、放射線画像撮影装置1を、コネクタ39にケーブルを接続しない状態で用いる場合、ポータブルの放射線発生装置55(或いは上記のような場合には撮影室R1の放射線発生装置55)との信号のやり取りを行うことができない。
そのため、このような場合には、放射線画像撮影装置1は、放射線発生装置55との信号のやり取りを行わずに、すなわち、放射線発生装置55から上記のような照射開始信号等を受信したり放射線画像撮影装置1からインターロック解除信号を送信したりすることなしに、放射線画像撮影装置1自体で自らに対する放射線の照射が開始されたこと等を検出して放射線画像撮影を行うことが必要となる。
なお、そのための構成は後で説明する。また、以下では、このように、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが信号のやり取りを行わずに、放射線画像撮影装置1が自ら少なくとも放射線の照射開始を検出して放射線画像撮影を行う方式を、非連携方式という。
また、例えば病室R3等で撮影が行われた場合、撮影後、放射線画像撮影装置1をコンソール58の所に持って行き、例えば図12に示したように、放射線画像撮影装置1のコネクタ39にコンソール58のケーブルを接続させて画像データD等を送信するように構成することができる。
また、ポータブルの放射線発生装置55に内蔵されたコンピュータや回診車に搭載したコンピュータに放射線画像撮影装置1から画像データD等を送信して、それらのコンピュータからコンソール58に画像データD等を転送したり、或いは、コンソール58を回診車に搭載して病室R3等に持ち込んで放射線画像撮影装置1から画像データD等を直接送信するように構成することも可能である。
図10に示すように、本実施形態では、撮影室R1や前室R2の外側に、コンピュータ等で構成されたコンソール58が設けられている。なお、コンソール58を前室R2等に設けるように構成することも可能であり、コンソール58の設置場所は適宜決められる。
本実施形態では、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続、或いは内蔵されている。
コンソール58は、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくると、それに基づいて表示部58a上にプレビュー画像を表示したり、或いは、放射線画像撮影装置1から送信されてきた画像データDやオフセットデータO等に基づいて、最終的な放射線画像を生成するようになっている。
なお、コンソール58に、例えば、放射線画像撮影装置1の状態をいわゆる覚醒(wake up)状態とスリープ(sleep)状態との間で遷移させる機能を持たせたり、或いは、放射線技師等の操作者が撮影室R1で行う放射線画像撮影の内容を表す撮影オーダ情報を作成したり選択したりすることを可能とする機能を持たせたりするように構成することも可能であり、適宜に構成される。
また、本実施形態は、上記のプレビュー画像や最終的な放射線画像を生成する前処理として、前述したような異常な画像データDを修正する処理に関するものであり、この処理は、放射線画像撮影装置1の制御手段22が行うように構成してもよく、或いはコンソール58で行うように構成することも可能である。
[連携方式で撮影を行う場合の処理]
次に、前述した放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填して放射線画像撮影を行う場合のように、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが信号のやり取りを行い、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55と連携して放射線画像撮影を行う連携方式において、放射線画像撮影装置1で行われる処理について説明する。
本実施形態では、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合、制御手段22は、まず、各放射線検出素子7のリセット処理を行うようになっている。各放射線検出素子7のリセット処理では、例えば図14に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバ15b(図8参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxに対してオン電圧をそれぞれ印加し、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧を印加してTFT8をオン状態として、各放射線検出素子7から余分な電荷を各信号線6に放出させる。
そして、図14に示すように、オン電圧を印加する走査線5を順次切り替えて、走査線5の各ラインL1〜Lxに順次オン電圧を印加して、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返す。制御手段22は、このようにして、走査線5の最初のラインL1から最終ラインLxまで順次オン電圧を印加して行う1面分のリセット処理Rmを繰り返すようになっている。
この場合、1面分のリセット処理Rmを所定の回数だけ繰り返した時点で、各放射線検出素子7のリセット処理を終了し、その後は、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加し、全TFT8をオフ状態とした状態で、放射線の照射を待つように構成することも可能である。
また、各放射線検出素子7に残存する余分な電荷がより少ない状態で撮影を行うという観点から、放射線の照射開始の直前まで各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返すように構成することも可能である。
この場合、図15に示すように、1面分のリセット処理Rmの最中に、前述したように放射線発生装置55側で曝射スイッチ56が操作されて、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に照射開始信号が送信されてくると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、照射開始信号が送信されてきた時点で行っている1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、各放射線検出素子7のリセット処理を終了して、走査駆動手段15から走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて全TFT8をオフ状態として、各放射線検出素子7を、その内部に電荷を蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
そして、制御手段22は、上記のように1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、放射線発生装置55にインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、基地局54を介して放射線画像撮影装置1からインターロック解除信号を受信すると、放射線源52から放射線を照射させる。
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、インターロック解除信号を送信した後、所定の時間が経過した後、図16に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出すようになっている。なお、図16中の斜線は、その期間に放射線が照射されたことを表す。
なお、放射線の照射が終了した時点で放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に放射線の照射を終了した旨の信号を送信するように構成し、放射線画像撮影装置1での各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理は、放射線発生装置55から放射線の照射を終了した旨の信号を受信した後に行うように構成することも可能である。
また、放射線画像撮影装置1が照射された放射線の線量を測定できるように構成し、所定の線量の放射線が照射された時点で放射線画像撮影装置1から放射線発生装置55に放射線の照射を終了するように指示し、その後、放射線画像撮影装置1での各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理を行うように構成することも可能である。
一方、図16に示したように、電荷蓄積状態の間、各TFT8はオフ状態とされ、各放射線検出素子7内で発生した電荷は、各放射線検出素子7内に蓄積される。その際、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷が各放射線検出素子7内に蓄積されるが、各放射線検出素子7の内部では、各放射線検出素子7自体の熱による熱励起等によりいわゆる暗電荷が常時発生しており、その暗電荷も各放射線検出素子7内に蓄積される。
そして、読み出し処理で読み出される画像データD中には、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する有用なデータ(以下、真の画像データD*という。)のほかに、暗電荷に起因するオフセット分に相当するデータ、すなわちオフセットデータOも含まれる。
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、当該放射線画像撮影や一連の放射線画像撮影の前や後に、上記の暗電荷に起因するオフセット分、すなわちオフセットデータOを検出するために、図17に示すように、図16に示した一連の処理と同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータOの読み出し処理が行われるようになっている。
なお、図17に示すように、このオフセットデータOの取得の際には、放射線画像撮影装置1に放射線は照射されず、各放射線検出素子7のリセット処理を行った後、図16に示した電荷蓄積状態と同じ時間だけ放射線画像撮影装置1を放置した後で、画像データDの読み出し処理と同様の仕方でオフセットデータOを読み出す。
また、オフセットデータOの読み出し処理の前に行う各放射線検出素子7のリセット処理は、画像データDの読み出し処理の前に行った1面分のリセット処理Rmと同じ回数分の1面分のリセット処理Rmを行う必要はなく、1面分のリセット処理Rmが必要な回数だけ繰り返されればよい。1面分のリセット処理Rmを1回だけ行うように構成することも可能である。
さらに、オフセットデータOの読み出し処理を複数回繰り返して行い、各処理で得られた複数のオフセットデータOを各放射線検出素子7ごとに平均してオフセットデータOとするように構成することも可能である。
上記のようにして、得られた画像データDについての修正処理等については、後で説明する。
[非連携方式で撮影を行う場合の処理]
次に、前述した放射線画像撮影装置1をブッキー装置51に装填せずに単独の状態で用いて放射線画像撮影を行う場合のように、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55とが信号のやり取りを行わずに、放射線画像撮影装置1が自ら放射線の照射開始を検出して放射線画像撮影を行う非連携方式において、放射線画像撮影装置1で行われる処理について説明する。
放射線画像撮影が非連携方式で行われる場合、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子7のリセット処理を行う代わりに、例えば図18に示すように、最初から画像データDの読み出し処理を行うようになっている。すなわち、制御手段22は、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出させるようになっている。
なお、以下では、図18に示すように、検出部P(図4や図8参照)上に二次元状に配列された1面分の全放射線検出素子7から画像データDを読み出す期間を1フレームという。また、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理前に、各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させる各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
非連携方式の場合、上記のように、放射線画像撮影装置1が自ら少なくとも放射線の照射開始を検出するように構成することが必要となる。以下、非連携方式の場合の放射線画像撮影装置1による放射線の照射開始の検出処理等について説明する。
上記のように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射前から画像データDの読み出し処理を行う場合、放射線の照射開始前の各フレームでは、放射線が照射されない状態で各放射線検出素子7内で発生した電荷すなわち暗電荷に起因するデータが画像データDとして読み出される。
しかし、これらのデータは、暗電荷に起因するデータであるから、上記のオフセットデータに相当する。そのため、放射線の照射開始前の各フレームで得られた画像データDは、オフセットデータとして利用することができる。なお、以下、上記のように各フレームごとの読み出し処理で読み出される画像データDをオフセットデータとして利用する場合のオフセットデータを、上記の連携方式の場合のようにして取得されるオフセットデータOと区別するために、オフセットデータoという。
そこで、本実施形態では、制御手段22は、放射線の照射が開始される前の各フレームで各放射線検出素子7から読み出される各画像データDを、余分な画像データDとして廃棄するのではなく、オフセットデータoとしてそれぞれフレームごとに記憶手段23に保存させるようになっている。
しかし、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理が開始されて以降のフレームごとのオフセットデータoを全て保存する必要はない。また、記憶手段23の記憶容量等の制約もある。そのため、本実施形態では、記憶手段23に画像データDを保存するフレーム数が予め設定されている。
そして、制御手段22は、上記のように各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理を繰り返して、予め設定されたフレーム数のフレーム分の各放射線検出素子7の画像データD(この場合はオフセットデータo)が記憶手段23に保存されると、それ以降の各フレームの画像データDについては、最初に画像データDを保存したフレームから順に、過去のフレームの画像データD上に順次上書き保存していくようになっている。
一方、制御手段22は、このようにして各放射線検出素子7から画像データDを読み出して記憶手段23に保存させるとともに、読み出された画像データDの値に基づいて、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を検出するようになっている。
図18に示したように走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して各フレームごとに各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理を行っている際に、例えば図19中に斜線を付して示すように、m回目のフレームで放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されたものとする。
図19に示したような場合、m回目のフレームでは、走査線5のラインL1〜La-1にそれぞれオン電圧が印加されて、走査線5の各ラインL1〜La-1にTFT8を介して接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ読み出された画像データDは、放射線が照射される前に読み出された暗電荷に起因するデータであり、その値は相対的に小さい。
しかし、m回目のフレームの走査線5のラインLa以降の各ラインLでは、放射線の照射が開始されて、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷が読み出されるため、読み出される画像データDの値が、上記の暗電荷に起因するデータよりも相対的に格段に大きくなる。
そのため、読み出される画像データDの値を監視し、画像データDの値が増加して、例えば予め設定された閾値を越えた時点で、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を検出することができる。
なお、このように個々の画像データDの値に基づいて放射線の照射開始を検出するように構成してもよく、また、例えば、各放射線検出素子7から読み出された各画像データDを走査線5の各ラインLnごとに積算したり、各放射線検出素子7から読み出された各画像データDを各フレームごとに合計するように構成し、その積算値や合計値が予め設定された閾値を越えた時点で、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の開始を検出するように構成することが可能である。
また、例えば、各放射線検出素子7から読み出された画像データDを記憶手段23に保存する際に、それらの画像データDを図示しないヒストグラムに投票し、ヒストグラムの度数の分布に基づいて放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたか否かを判断するように構成することも可能である。
本実施形態では、制御手段22は、例えば図19に示したように、m回目のフレームで放射線の照射が開始されたと判断すると、CPUのメモリ等に当該フレームのフレーム番号mを記憶させるようになっている。
また、図19に示した場合、走査線5の各ラインL1〜La-1に接続されている各放射線検出素子7では、放射線の照射により当該各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因するデータすなわち真の画像データD*は、m+1回目のフレームで読み出される。
また、走査線5の各ラインLb+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7では、真の画像データD*はm回目のフレームで読み出されている。さらに、走査線5の各ラインLa〜Lbに接続されている各放射線検出素子7では、真の画像データD*はm回目のフレームとm+1回目のフレームとで分割されて読み出される。
そして、放射線の照射時間が図19に示した場合よりも長くなったり、放射線の照射がm回目のフレームとm+1回目のフレームに跨るような場合もあるため、本実施形態では、制御手段22は、放射線の照射開始を検出したm回目のフレームを含む3フレーム分の画像データDまで(すなわち図19の例ではm+2回目のフレームの画像データDまで)を記憶手段23に保存し、各フレームごとの画像データDの読み出し処理を停止するようになっている。
なお、上記のように、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する真の画像データD*が、複数のフレームで分割されて読み出される場合があるため、真の画像データD*を復元するために、m回目からm+2回目の各フレームの画像データDを各放射線検出素子7ごとに加算することが必要となる。
また、前述したように、放射線の照射の開始を検出したm回目のフレームの1つ前のフレームであるm−1回目のフレームの各画像データDをオフセットデータとして使うことができるため、この場合には、連携方式の場合のように、オフセットデータを取得するための処理を改めて行う必要はない。
この場合、m−1回目のフレームで読み出された画像データDを各放射線検出素子7ごとのオフセットデータoとする代わりに、例えば、放射線の照射が開始された時点で読み出し処理が行われていたm回目のフレームより前の数フレーム分の放射線検出素子ごとの画像データDの平均値を算出する等して、その平均値等を放射線検出素子7ごとのオフセットデータとするように構成することも可能である。
さらに、画像データDに基づいて放射線の照射の終了を検出するように構成することも可能である。
[連携方式と非連携方式との間の切り替え]
本実施形態では、前述したように、連携方式の場合には、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方として、図16等に示したように、放射線画像撮影前に走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7のリセット処理を行い、走査線5の最終ラインLxまでオン電圧を印加し終わった後、走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加を停止して、印加する電圧をオフ電圧に切り替え、その後、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して読み出し処理を行う。
それに対して、非連携方式の場合には、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方として、図19等に示したように、放射線画像撮影前から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して読み出し処理を繰り返し行い、放射線の照射が開始されたことを検出した後も、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う読み出し処理を続行する。
この点で、連携方式の場合と、非連携方式の場合とで、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方が異なっている。
そして、本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、コンソール58からの信号を受信したり、放射線画像撮影装置1の切替スイッチ38(図1参照)が操作される等することにより、放射線画像撮影を上記のような連携方式で処理を行うか、非連携方式で処理を行うかを切り替えるようになっている。
そして、撮影を行う方式が切り替えられると、制御手段22は、切り替えられた方式に従って、すなわち連携方式か非連携方式かによって、上記に示したように、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方を切り替えて放射線画像撮影を行うようになっている。
なお、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線画像撮影で得られた画像データDに、当該放射線画像撮影を連携方式と非連携方式のいずれの方式で行ったかを表す情報を対応付けて記憶手段23に記憶させるようになっている。
そして、後述する異常な画像データDを無効とする処理等を放射線画像撮影装置1の制御手段22が行うように構成されている場合には、制御手段22は、画像データDに対応付けられている情報に基づいて、以下で説明する各処理を連携方式の場合と非連携方式の場合とで切り替えて行うようになっている。
また、後述する異常な画像データDを無効とする処理等をコンソール58で行うように構成されている場合には、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線画像撮影で得られた画像データDをコンソール58に送信する際、当該放射線画像撮影を連携方式と非連携方式のいずれの方式で行ったかを表す情報をあわせて送信するようになっている。そして、コンソール58はその情報に基づいて、以下で説明する各処理を連携方式の場合と非連携方式の場合とで切り替えて行うようになっている。
[異常な画像データを無効とする処理]
上記のように、連携方式(図16参照)では読み出し処理で画像データDがよみだされ、非連携方式(図18、図19参照)では、真の画像データD*を復元するために、各フレームごとに読み出された各データ(画像データD)の加算値が画像データDとされる。
なお、前述したように、画像データDにはオフセットデータoが含まれており、画像データDからオフセットデータoを減算処理して真の画像データD*を算出する処理が必要となるが、この処理については後で説明する。
以下、放射線検出素子7から読み出された異常な画像データDを無効とする処理等について説明する。また、それとともに、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1や放射線画像撮影システム50の作用について説明する。
本実施形態では、画像データDに対する画像処理に関する情報として、画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報が用いられる場合について説明する。画像データDに対する画像処理に関する情報として、ゲイン補正値Gの情報やオフセットデータの情報等を有する場合については、後述する第3の実施形態で説明する。
連携方式や非連携方式で得られた各画像データDの中の異常な画像データDを無効とする処理は、連携方式で放射線画像撮影を行った場合も非連携方式で放射線画像撮影を行った場合も、ともに、画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報に基づいて行われる。
しかし、連携方式の場合と、非連携方式の場合とで、それぞれ別々の情報が備えられており、画像処理の対象となる画像データDが連携方式で行われた放射線画像撮影で取得されたものであれば連携方式で放射線画像撮影を行った場合の前記情報を選択し、画像処理の対象となる画像データDが非連携方式で行われた放射線画像撮影で取得されたものであれば非連携方式で放射線画像撮影を行った場合の前記情報を選択するようにして、各方式ごとに適切な情報を選択して参照して、画像データDを無効とする放射線検出素子7を決定し、その放射線検出素子7の画像データDを無効とするようになっている。
前述したように、この異常な画像データDを無効とする処理や後述する修正処理は、放射線画像撮影装置1の制御手段22が行うように構成してもよく、或いはコンソール58で行うように構成することも可能である。
本実施形態では、連携方式の場合の画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報として、前述した異常な放射線検出素子7の検出部P上での位置や番号等の情報からなる欠陥画素マップが用いられるようになっている。そして、欠陥画素マップは、放射線画像撮影装置1の工場出荷時等に取得され、放射線画像撮影装置1の制御手段22を構成するCPUやFPGA等のメモリや記憶手段23に保存されて登録されたり、コンソール58を構成するCPU等のメモリや記憶手段59(以下、まとめてメモリという。)にインプットされて登録される。
また、放射線画像撮影装置1の使用により経年劣化等で異常になった放射線検出素子7についても、放射線画像撮影装置1のキャリブレーション等の際に検査して、欠陥画素マップに登録するようになっている。
このような欠陥画素マップに登録されている異常な放射線検出素子7を、仮に検出部P上に配列して示すと、図20中に斜線を付して示されるa、bのように、異常な放射線検出素子7は、通常、検出部P上に点状に存在する状態となることが知られている。なお、図20および後述する図21等では、検出部Pが図4に示した状態に対応するように記載されており、図中の縦方向が信号線6が延在する方向(以下、信号線方向という。)、図中の横方向が走査線5が延在する方向に対応する。
一方、非連携方式で上記のように画像データDを取得した場合も、図20に示した連携方式の場合の異常な放射線検出素子7からは異常な画像データDが読み出される。そのため、上記の欠陥画素マップに登録されている異常な放射線検出素子7については、非連携方式の場合も同様に、異常な放射線検出素子7から読み出された画像データDが無効とされる。
この非連携方式の場合、本実施形態では、当該異常な放射線検出素子7についてm回目からm+2回目の各フレーム(図19参照)でそれぞれ画像データDが読み出されるが、この処理で、それらの3回分の各画像データDの全てが無効とされる。従って、当該異常な放射線検出素子7については、上記のように各フレームの画像データDが加算される処理は行われない。
また、本発明者らの研究では、非連携方式において上記のように画像データDの読み出し処理を行った場合、上記の欠陥画素マップでは必ずしも把握し切れない検出部P上の位置の各放射線検出素子7で異常な画像データDが読み出されるという知見が得られている。また、そのような異常な画像データDが現れる検出部P上の位置には、一定の特徴があることも分かってきた。
具体的には、非連携方式において上記のように画像データDの読み出し処理を行った場合、例えば、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたm回目のフレームにおける各放射線検出素子7の各画像データD(或いはm回目からm+2回目の各フレームの画像データDの加算値としての画像データD)を詳しく分析すると、図21中に斜線を付して示されるc、dのように、異常な画像データDが読み出される放射線検出素子7が、検出部P上に線状に現れることが分かった。
しかも、異常な画像データDが読み出される放射線検出素子7は、m回目のフレームで放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていた間に走査駆動手段15からオン電圧が印加された走査線5のラインLa〜Lb(図19参照)に対応する範囲内で、信号線方向に延びる特定の列上に並ぶように線状に現れる。
なお、この現象は、放射線が例えば検出部Pの全域にわたって照射された場合に観測されるものであり、放射線が検出部P上の上記の範囲すなわち走査線5のラインLaからラインLbまでの範囲のみに照射されたことを意味するものではない。
このような現象が生じる原因は、以下のように考えられている。
例えば、図22に示すように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない状態で、走査線5のあるラインLiにオン電圧が印加されて、走査線5の当該ラインLiに接続されている各放射線検出素子7iから画像データDiが読み出される場合、放射線検出素子7iに蓄積されていた電荷Qが信号線6に放出されて、増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される。
その際、当該信号線6に接続されている他の放射線検出素子7i-1、7i+1、7i+2等からは、オフ状態とされている各TFT8を介して僅かではあるが電荷qがそれぞれリークしており、これらのリークした各電荷qも当該信号線6を介して増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される。
そのため、増幅回路18からは、オン電圧が印加された走査線5のラインLiに接続されている放射線検出素子7iから読み出された電荷Qと、当該信号線6に接続されている他の放射線検出素子7からリークした各電荷qとの合計値に相当する電圧値が出力され、それが当該放射線検出素子7iの画像データDiとして読み出される。
一方、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されている最中に、走査線5のあるラインLiにオン電圧が印加されて、走査線5の当該ラインLiに接続されている各放射線検出素子7iから画像データDiが読み出される場合、放射線検出素子7iに蓄積されていた電荷Qは、上記と同様に信号線6に放出されて、増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される。この点では、上記と同様である。
しかし、放射線検出素子7の中には、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると(本実施形態では照射された放射線がシンチレータ3(図3参照)で電磁波に変換され、この電磁波が照射されると)、放射線検出素子7内では異常に大きな電荷が発生するものが存在する。また、各TFT8の中には、放射線(或いは電磁波)が照射されると、TFT8内を流れる電流が異常に大きくなるものも存在する。
そして、上記のように放射線検出素子7iから電荷Qが放出されている最中に、他の異常な放射線検出素子7からTFT8を介して、或いは他の放射線検出素子7から異常なTFT8を介して、大量の電荷qが信号線6に放出されると、増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される電荷Qと電荷qの合計値が異常に大きくなる。そのため、当該放射線検出素子7iがたとえ正常な放射線検出素子7であったとしても、当該放射線検出素子7iから読み出された画像データDiが異常な値になる。
そして、異常な放射線検出素子7や異常なTFT8から大量の電荷qが放出される現象が放射線画像撮影装置1に放射線が照射されている限り続く。そのため、図21に示したように、異常な画像データDが読み出される放射線検出素子7が、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていた間に走査駆動手段15からオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lbに対応する範囲内で、信号線方向に延びる特定の列上に並ぶように線状に現れる現象が生じると考えられている。
放射線の照射が終了すれば、異常な放射線検出素子7や異常なTFT8から大量の電荷qが放出される現象はなくなり、それらからリークする電荷qの値は元に戻る。そのため、異常な画像データDが読み出される放射線検出素子7が走査線5の各ラインLa〜Lbに対応する範囲内にだけ現れる。
なお、上記の連携方式の場合は、放射線が照射されている最中には画像データDの読み出し処理が行われないため、上記の非連携方式の場合のような現象は生じない。
このように、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合、欠陥画素マップに登録されている、検出部P上に点状に存在する異常な放射線検出素子7の情報のほかに、異常な画像データDが読み出される放射線検出素子7が並ぶ、信号線方向に延びる特定の列の情報が必要になる。
そこで、本実施形態では、非連携方式の場合の画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報として、前述した欠陥画素マップのほかに、異常な画像データDが読み出される各放射線検出素子7の、検出部P上での信号線方向に延びる列の情報、すなわち列の番号や位置等の情報が用いられるようになっている。
また、本発明者らの研究によれば、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、異常な画像データDが読み出される放射線検出素子7の列が、放射線画像撮影装置1の使用期間が長くなるほど増加する可能性があることが分かっている。
図23は、TFT8のゲート電極8gに印加する電圧VgとTFT8内を流れる電流Idの関係を表すグラフである。このグラフでは、電圧Vgが0[V]より大きい場合が上記のオン電圧に対応し、電圧Vgが0[V]より小さい場合が上記のオフ電圧に対応する。また、図23には、放射線画像撮影装置1の使用を開始した初期の状態における関係が図中αで示される曲線で表されており、放射線画像撮影装置1の使用を開始した後、ある程度長い期間が経過した後における関係が図中βで示される曲線で表されている。
図23に示すように、放射線画像撮影装置1の使用期間に応じて上記の関係を表す曲線が、電圧Vgが小さくなる方向、すなわち図中で左側にシフトしていくことが分かる。
また、TFT8をオフ状態とするためにTFT8のゲート電極8gに印加するオフ電圧として、例えば−5[V]を印加するように構成した場合、−5[V]の電圧Vg(すなわちオフ電圧)を印加した場合にTFT8内を流れる電流Id(すなわちTFT8を介してリークする電流)の値が、放射線画像撮影装置1の使用を開始した後の使用期間が長くなるほど大きくなることが分かる。
そして、このようにTFT8を介してリークする電流Idが大きくなると、図22に示したように、TFT8にオン電圧が印加されて電荷Qが放出されている放射線検出素子7iと同じ信号線6に接続されている他の放射線検出素子7からTFT8を介してリークする電荷qが大きくなり、結果的に、当該放射線検出素子7iから読み出された画像データDiが異常に大きな値になる場合が生じ得る。
そして、この場合も、図21に示したように、異常に大きな画像データDが読み出される放射線検出素子7が、検出部P上に線状に現れる状態になる。
そこで、上記の列の情報についても、欠陥画素マップと同様に、放射線画像撮影装置1の工場出荷時等に取得され、放射線画像撮影装置1の制御手段22のメモリに保存されて登録されたり、コンソール58のメモリにインプットされて登録されるが、放射線画像撮影装置1の使用期間が長くなり、上記のように異常に大きな画像データDが並ぶようになった列が新たに生じた場合には、その列の情報も放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58のメモリに登録する。
なお、新たに異常な画像データDが並ぶようになったか否かの判断は、実際に撮影された放射線画像を見て判断してもよいが、例えば、放射線画像撮影装置1のキャリブレーション等の際に、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しながら上記のようにフレームごとの画像データDの読み出し処理を行わせて上記の列の情報を得ることも可能である。
また、放射線画像撮影装置1のキャリブレーションの際、放射線画像撮影装置1に実際に放射線を照射する代わりに、各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を逆にして、すなわち、通常の状態で各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が基準電位V0よりも低い電圧である場合には基準電位V0よりも高い電圧を印加するようにすると、放射線照射時と同程度のレベルの電流が各放射線検出素子7に生じ、TFT8に欠陥があるとリーク電流が非常に大きくなるため、バイアス電圧をそのように印加して上記のようにフレームごとの画像データDの読み出し処理を行わせることで、上記の列の情報を得ることも可能である。
放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、放射線画像撮影を連携方式で行ったか非連携方式で行ったかによって、適切な情報を参照して、画像データDを無効とする放射線検出素子7を決定するようになっている。
すなわち、本実施形態では、制御手段22やコンソール58は、放射線画像撮影が連携方式で行われた場合には、画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報として上記の欠陥画素マップを参照して、画像データDを無効とする放射線検出素子7を決定する。また、放射線画像撮影が非連携方式で行われた場合には、画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報として上記の欠陥画素マップと列の情報を参照して、画像データDを無効とする放射線検出素子7を決定するようになっている。
なお、非連携方式の場合、図21に示したように、異常な画像データDが読み出される放射線検出素子7の列の検出部P上の位置は、走査線5の各ラインLa〜Lbに対応する範囲内に収まる。そのため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていた間に走査駆動手段15からオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lbを特定できる場合には、上記の列の走査線5の各ラインLa〜Lbに対応する範囲内の各放射線検出素子7や、当該列のその近傍の各放射線検出素子7の画像データDのみを無効とするように構成することが可能である。
しかし、実際には、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されていた間に走査駆動手段15からオン電圧が印加された走査線5の各ラインLa〜Lbを特定することは必ずしも容易でなく、そのような場合には、当該列に属する全ての放射線検出素子7の画像データDを無効とするように構成することも可能である。
[無効とした画像データを修正する処理]
放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、上記のようにして画像データDを無効とする放射線検出素子7を決定すると、無効とした当該放射線検出素子7の画像データDを修正する処理を行うが、連携方式の場合と非連携方式の場合とで、それぞれ前処理を行う必要がある。
連携方式で得られた各放射線検出素子7ごとの各画像データDには、それぞれ前述した暗電荷に起因するオフセットデータOが重畳されているため、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、下記(2)式に従って、各画像データDからそれぞれオフセットデータOを減算処理して、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する有用なデータである真の画像データD*を算出する。
D*=D−O …(2)
また、非連携方式では、前述したように、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する真の画像データD*が複数のフレームで分割されて読み出される場合があるため、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、各フレームごとに得られた画像データDを加算して復元する。なお、以下では、m回目からm+2回目のフレームで得られた各放射線検出素子7ごとの各画像データDをそれぞれD(m)〜D(m+2)と表す。
その際、各フレームごとの画像データD(m)〜D(m+2)にはそれぞれオフセットデータoが重畳されているため、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、下記(3)式に従って、各画像データD(m)〜D(m+2)からそれぞれオフセットデータoを減算処理し、それらを加算して真の画像データD*を算出する。
D*=(D(m)−o)+(D(m+1)−o)+(D(m+2)−o)
∴D*=D(m)+D(m+1)+D(m+2)−3o …(3)
なお、無効とした放射線検出素子7の画像データDについては、上記の(2)式や(3)式に従った演算処理を行う必要はない。また、無効とした放射線検出素子7の画像データDについても上記の(2)式や(3)式に従った演算処理を行い、算出した真の画像データD*を破棄するように構成することも可能である。
放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、続いて、無効とした放射線検出素子7の真の画像データD*を修正する修正処理を行う。
修正処理では、例えば、無効とした放射線検出素子7に検出部P上で隣接する放射線検出素子7について算出された真の画像データD*に基づいて線形補間や重み付け補間等の手法を用いて、無効とした当該放射線検出素子7の真の画像データD*が修正されるように構成される。
そして、放射線画像撮影装置1で上記の各処理を行った場合には、修正処理後、連携方式の場合には放射線画像撮影装置1からブッキー装置51や基地局54(図10参照)を介してコンソール58に真の画像データD*や修正された真の画像データD*が送信される。
また、非連携方式の場合にはブッキー装置51等を介さずに、前述したように、コンソール58に直接或いは他のコンピュータ等を介して真の画像データD*や修正された真の画像データD*が送信される。
そして、コンソール58では、上記のようにして取得した真の画像データD*や修正された真の画像データD*、或いは放射線画像撮影装置1で処理が行われて送信されてきた真の画像データD*や修正された真の画像データD*に基づいて、前述した(1)式に示したように真の画像データD*にゲイン補正値Gを乗算した値を対数変換処理したり、階調処理等の各種の画像処理が行われて、最終的な放射線画像が生成される。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50によれば、連携方式で放射線画像撮影を行う場合と、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合とで、放射線画像撮影の際に走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方を切り替えることで、放射線画像撮影装置1が放射線発生装置55と連携がとれない場合(すなわち非連携方式の場合)でも、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出して、適切に放射線画像撮影を行うことが可能となる。
そして、非連携方式で放射線画像撮影を行った場合には、連携方式で放射線画像撮影を行った場合と同様の形態(すなわち検出部P上に点状に発生する形態)で異常な画像データDが発生するほか、連携方式の場合とは異なる形態(すなわち検出部P上に線状(列状)に発生する形態)で異常な画像データDが発生する。
そのため、本実施形態の場合には、画像データDに対する画像処理に関する情報としての画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報を、連携方式で放射線画像撮影を行った場合と非連携方式で放射線画像撮影を行った場合とでそれぞれ別々に備えておき、連携方式で得られた画像データDや、非連携方式で得られた画像データDに対して、それぞれ対応する前記情報を参照することで、各方式の場合に異常な画像データDが発生する位置をそれぞれ的確に把握することが可能となる。
そして、前記情報を参照して、画像データDを無効とする放射線検出素子7を決定し、無効とした放射線検出素子7の異常な真の画像データD*を例えばそれに隣接する放射線検出素子7の正常な真の画像データD*で線形補間等の手法を用いて修正することで、異常な画像データ(すなわち真の画像データD*)を的確に修正することが可能となる。
このように、連携方式で放射線画像撮影を行う場合と、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合とで、画像データDに対する画像処理に関する情報としての画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報を別々に備えておき、連携方式で得られた画像データDや非連携方式で得られた画像データDに対して、それぞれ対応する前記情報を参照することで、各方式の場合に、画像データDに対する画像処理を的確に行うことが可能となる。
[第2の実施の形態]
上記の第1の実施形態では、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合に、走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方として、図18や図19に示したように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されている最中にも画像データDの読み出し処理を続けて行う場合について説明した。
しかし、この他にも、例えば、図24に示すように、放射線の照射が開始されて走査線5のラインL3に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDの積算値が閾値を越える等して放射線の照射開始を検出した場合に、その時点で走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオフ電圧に切り替えて画像データDの読み出し処理を停止するように構成することも可能である。
そして、この場合は、図24に示すように、画像データD(なお、図24では画像データdと表記されている。)の読み出し処理を停止した後、連携方式の場合(図16参照)と同様に、電荷蓄積状態に移行して、放射線の照射を受けた後、再度、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して画像データDの読み出し処理が行われる。
すなわち、本実施形態では(なお、後述する第3の実施形態や第4の実施形態においても同様である。)、非連携方式の場合でも、連携方式の場合(図16等参照)と同様に、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されている間は走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加が停止され、印加する電圧がオフ電圧に切り替えられる。
しかし、連携方式の場合には、図15に示したように、1面分のリセット処理Rmを行っている最中に放射線発生装置55から照射開始信号が送信されてきても、走査線5の最終ラインLxまでオン電圧の順次の印加を続行し、走査線5の最終ラインLxにオン電圧を印加した後で初めて走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加が停止されて、印加する電圧がオフ電圧に切り替えられる。
それに対し、非連携方式の場合には、図24等に示すように、放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたことが検出された時点で、各走査線5に対するオン電圧の印加を停止する。すなわち、走査線5の途中のラインLnであっても、放射線の照射が開始されたことが検出されれば、走査線5の当該ラインLnでオン電圧の印加を停止してしまう。
少なくとも、この点において、連携方式の場合と、非連携方式の場合とで、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方が異なっている。
なお、以下では、電荷蓄積状態の前の読み出し処理を、放射線画像撮影前の読み出し処理といい、図24に示すように、その際に読み出される画像データを、放射線画像撮影後の読み出し処理で読み出される本画像としての画像データDと区別するために、画像データdという。すなわち、放射線画像撮影前の読み出し処理では画像データdが読み出され、放射線画像撮影後の読み出し処理では画像データDが読み出される。
また、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理を、図24に示したように、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を印加していくように構成することも可能であり、また、図25に示すように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した走査線5(すなわち最後にオン電圧を印加した走査線5)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図25の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧を順次印加するように構成することも可能である。
上記のように放射線の照射開始を検出した時点で走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加を停止するように構成する場合、図25等を見て分かるように、放射線の照射開始を検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5のラインLnでは、放射線が照射されている最中にTFT8がオン状態とされるため、それに接続されている各放射線検出素子7から、放射線の照射により発生した有用な電荷の一部、すなわち前述した真の画像データD*の一部が放出されてしまっている。
そのため、この走査線5のラインLnに接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDについては、有効なデータではないとして破棄するように構成することが可能である。この場合、図26に示すように、走査線5のラインLnがいわゆる線欠陥とされる。そして、この場合、それに隣接する各放射線検出素子7の画像データDで補間する等して修復するように構成される場合がある。
このように、非連携方式の場合、図16等に示した連携方式の場合には生じ得ない線欠陥が、放射線の照射が開始された時点でオン電圧が印加されていた走査線5の部分に発生し得る点でも、連携方式の場合とは異なる特徴を有している。
しかし、この場合、放射線発生装置55の放射線源52から照射される放射線の線量が瞬時に所定の線量に達せずに緩やかに増加していくような場合には、例えば図27に示すように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理において、実際には走査線5のラインLnにオン電圧を印加した時点で放射線の照射が始まっているにもかかわらず、その時点では照射開始を検出できずに検出が遅れ、走査線5の複数のラインL(図27の場合はラインLn〜Ln+2)にオン電圧が印加されて画像データdの読み出し処理が行われた後でようやく放射線の照射開始が検出される場合がある。
この場合、例えば図27に示すように、走査線5のラインLn+2にオン電圧が印加された時点でそれに接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データdに基づいて放射線の照射開始が検出されたとすると、図28に示すように、線欠陥が走査線5のラインLn〜Ln+2で発生し、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れる状態になる。
このように線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れる状態であっても、例えば上記と同様にそれらの走査線5に隣接する走査線5のラインLn-1とラインLn+3に接続されている各放射線検出素子7から読み出された本画像としての各画像データDで例えば線形補間する等して、走査線5のラインLn〜Ln+2に接続されている各放射線検出素子7の画像データDをそれぞれ修復するように構成することが考えられなくはない。
しかし、このように構成すると、例えば、このように補間された画像データDを用いて生成された放射線画像を医療における診断用等に用いるような場合、放射線画像に撮影されているはずの小さな病変部が上記のように線欠陥とされた各走査線5の部分に撮影されており、それらの画像データDが上記のように破棄されることで病変部の情報が失われ、病変部が撮影されていない周囲の画像データD(上記の場合は走査線5のラインLn-1やラインLn+3に接続されている各放射線検出素子7から読み出された各画像データD)で線形補間する等の処理が行われると、病変部の情報が放射線画像上から消えてしまう虞れがある。
そのため、このような場合に、走査線5のラインLn〜Ln+2に接続されている各放射線検出素子7の各画像データDを、走査線5のラインLn-1とラインLn+3に接続されている各放射線検出素子7の各画像データDを用いて線形補間等によって修復する代わりに、或いは線形補間等により得られる値を織り交ぜながら、走査線5のラインLn〜Ln+2に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDを、それらの各放射線検出素子7について読み出された画像データD自体の値に基づいて修復するように構成することも可能である。
そして、このように、走査線5のラインLn〜Ln+2に接続されている各放射線検出素子7の各画像データDを修復する場合、これらの画像データDを、以下のようにして修復することができる。
ここで、注意が必要なのは、放射線画像撮影装置1は、上記のように、走査線5のあるラインL(図27の場合はラインLn+2)にオン電圧が印加されて読み出された画像データdが閾値dthを越えた時点で放射線の照射が開始されたことを検出するものであり、放射線発生装置55の放射線源52(図11参照)から放射線画像撮影装置1に対して実際に放射線の照射が開始されて、読み出される画像データdの値が上昇しても、画像データdの値が閾値dthを越えない限りは、放射線画像撮影装置1は、実際に放射線の照射が開始されていることを認識することができない点である。
そのため、放射線画像撮影装置1自体では、実際に放射線の照射がいつ開始されたかを検出することができないため、実際に放射線の照射が開始されてから放射線の照射が開始されたことを検出するまでの間に、何本の走査線5にオン電圧が印加されて画像データdの読み出し処理が行われたか、すなわちどの走査線5を線欠陥とすべきかを、少なくとも放射線画像撮影装置1が放射線の照射が開始されたことを検出した時点では把握することはできない。
そこで、この問題を解決する1つの方法としては、線欠陥とすべき走査線5の本数を、予め設定しておくように構成することが可能である。
また、例えば、放射線発生装置55の放射線源52から照射される放射線の線量の立ち上がりの情報(すなわちどの程度速やかに立ち上がるかついての情報)や、放射線画像撮影装置1で走査線5のあるラインLにオン電圧を印加してから次の走査線5のラインLにオン電圧を印加するまでの周期等を考慮して、それらの撮影条件に応じて、線欠陥とすべき走査線5を決定するように構成することも可能である。
さらに、例えば、放射線画像撮影が終了した後の画像データDに対する画像処理の段階で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdの値や、放射線画像撮影後の読み出し処理で本画像として読み出された画像データDの値を解析する等して、どの走査線5を線欠陥とするかを割り出すように構成することも可能である。
具体的には、前述したように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出される画像データdの値が増加する。そして、例えば、画像データdを走査線5の各ラインLkのライン番号kの順にプロットすると、例えば図29に示すように、放射線の照射が開始されたことが検出された走査線5のラインLn+2付近の各走査線5の画像データdは、実際に放射線画像撮影装置1に放射線が照射される以前はほぼ0の値をとる。
しかし、放射線の照射が開始されたことが検出された走査線5のラインLn+2の2本前にオン電圧が印加された走査線5のラインLnから、画像データdの値が0とは有意に異なる値になっている。そこで、この場合には、放射線の照射開始を検出した走査線5のラインLn+2を含むラインLn〜Ln+2の3本の走査線5が線欠陥とされる。
また、本画像である画像データDを解析する場合には、例えば、放射線画像撮影後の読み出し処理で読み出された画像データDを走査線の各ラインL1〜Lxのライン番号kの順にプロットした場合の画像データDの推移が、例えば図30に示すように推移している場合、この画像データDの値の推移を解析すると、走査線5の各ラインLn〜Ln+2を線欠陥とすべきであることが分かる。
このようにして、まず、線欠陥とすべき走査線5の本数を予め設定しておいたり、画像データdや画像データDの値を解析する等して、どの走査線5を線欠陥とするかを割り出して決定する。
次に、上記のようにして決定した線欠陥とされた走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データDに対して修復処理を行うが、その際、上記の第1の実施形態の場合と同様に、線欠陥とされた走査線5に接続されている各放射線検出素子7から本来読み出されるべき画像データが、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdと放射線画像撮影後の読み出し処理で読み出された画像データDとに分割されて読み出されていると見なす。
そのため、各放射線検出素子7について画像データDと画像データdとを加算すれば、本来の画像データが得られるが、上記のように、画像データDにも画像データdにも暗電荷に起因するオフセット分すなわちオフセットデータO、oがそれぞれ重畳されているため、下記(4)式と(5)式に従って、まず、画像データDや画像データdについて真の画像データD*や真の画像データd*を算出する。
D*=D−O …(4)
d*=d−o …(5)
この場合、本画像である画像データDに重畳されているオフセットデータOは、例えば第1の実施形態で連携方式の場合について説明した手法と同様に、例えば図27に示した放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理から電荷蓄積状態を経て、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理を行った際の処理シーケンスを繰り返すことで取得することができる。
その場合、オフセットデータOを取得する際には、電荷蓄積状態では、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない状態で放射線画像撮影装置1が放置されることは、第1の実施形態で連携方式の場合について説明した場合と同様である。また、オフセットデータOを取得する際には、放射線の照射が開始されたことを検出する必要はないため、画像データdの読み出し処理の代わりに、例えば1回或いは複数回の各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
また、画像データdに対するオフセットデータoは、第1の実施形態における非連携方式の場合と同様に、放射線画像撮影前に各フレームごとに行われる読み出し処理において、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が行われる前のフレームで読み出された画像データdをオフセットデータoとして利用することができるため、例えばそのようにして取得されたオフセットデータoを用いることができる。
そして、上記(4)式および(5)式に従って算出される真の画像データD*と真の画像データd*とを加算することによって、線欠陥とされた走査線5に接続されている各放射線検出素子7について、当該各放射線検出素子7から本来読み出されるべき真の画像データD*を修復することができる。
なお、前述した図22を用いて説明したように、放射線の照射が開始されてから放射線の照射開始が検出されるまでの間に読み出された画像データd、すなわち線欠陥とされた走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データd中には、上記の放射線の照射により当該放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因するデータや、暗電荷に起因するデータのほかに、放射線の照射により当該放射線検出素子7が接続されている信号線6に接続されている他の放射線検出素子7からリークする電荷qの増加分も含まれている。
そのため、他の放射線検出素子7からリークする電荷qの増加分を真の画像データd*から差し引いた値を改めて真の画像データd*としたり、真の画像データd*に所定の係数を乗算した値を改めて真の画像データd*とするように構成することも可能である。
ところで、上記のように、線欠陥とされた走査線5に接続されている各放射線検出素子7から読み出されるべき真の画像データD*が放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdと放射線画像撮影後の読み出し処理で読み出された画像データDとに分割されて読み出されていると見なす場合、第1の実施形態で示した非連携方式の場合と全く同じ理由で、前述した図21の場合と同様に、図31中に斜線e、fを付して示すように、修復された画像データDの中に、異常な画像データDが信号線方向に延びる線状に現れる現象が発生する。
すなわち、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された場合(本実施形態では照射された放射線がシンチレータ3(図3参照)で電磁波に変換され、この電磁波が照射された場合に)内部は異常に大きな電荷が発生する異常な放射線検出素子7や、リーク量が異常に大きくなるTFT8を介して、大量の電荷qが信号線6に流入するため、当該信号線6に接続されている各放射線検出素子7から読み出される画像データdが異常な値になる。
そして、この現象が、放射線が照射されている限り続くため、図31に示したように、上記のように画像データD(すなわち真の画像データD*)を修復しても、当該信号線6に接続されている各放射線検出素子7の修復された画像データD(真の画像データD*)の値が異常になると考えられている。
そこで、本実施形態においても、非連携方式の場合の画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報として、連携方式の場合の欠陥画素マップのほかに、異常な画像データDが読み出される各放射線検出素子7の、検出部P上での信号線方向に延びる列の情報、すなわち列の番号や位置等の情報が参照されて、異常な画像データDが読み出される信号線方向に延びる各放射線検出素子7の列が割り出され、それらの各放射線検出素子7について読み出された画像データDや画像データdが無効とされる。
そして、第1の実施形態の場合と同様に、修正処理では、例えば、無効とした放射線検出素子7に検出部P上で隣接する放射線検出素子7について算出された真の画像データD*に基づいて線形補間や重み付け補間等の手法を用いて、無効とした当該放射線検出素子7の真の画像データD*が修正されるように構成される。
従って、第2の実施形態で示したような場合においても、修復した画像データDのうち、上記の第1の実施形態で説明した非連携方式で放射線画像撮影を行った場合の情報、すなわち欠陥画素マップと列の情報とを用いて、線状に現れた異常な画像データDを無効とし、無効とした画像データDを例えばそれに隣接する修復された正常な画像データDを用いて修正するように構成することが可能となる。
すなわち、非連携方式で放射線画像撮影を行う際に、図24や図27に示したように、放射線の照射開始前から画像データdの読み出し処理を繰り返し行い、放射線の照射開始を検出した時点で画像データdの読み出し処理を停止して電荷蓄積状態に移行するように構成した場合においても、もともと欠陥画素マップに登録されている放射線検出素子7から読み出される異常な画像データDは勿論、線状に現れる異常な画像データDをも的確に無効とし、無効とした画像データDを的確に修正することが可能となる。
そのため、このような場合でも、本発明を適用することができる。
また、その他、図19に示した第1の実施形態の場合と同様に、放射線の照射が開始されたことを検出した後も、引き続き走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して画像データDの読み出し処理を行うように構成されている場合や、図24や図27に示した第2の実施形態の場合と同様に、放射線の照射開始を検出した時点で画像データdの読み出し処理を停止して電荷蓄積状態に移行するように構成しても、実際上、引き続き数本の走査線5にオン電圧が印加されて画像データdの読み出し処理が行われてしまうような場合にも、同様に、本発明を適用することが可能である。
なお、上記の第1の実施形態や第2の実施形態では、図21や図31に示したように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された間にオン電圧が印加された走査線5(すなわち線欠陥とされる走査線5)の部分の範囲内で、信号線方向に延びる線状に現れる異常な画像データD(真の画像データD*)のみを修正する場合について説明した。
しかし、このように構成する代わりに、非連携方式で放射線画像撮影を行った場合の情報中の列の情報に基づいて、上記の範囲外の各放射線検出素子7も含む当該列に属する全ての放射線検出素子7の画像データD(真の画像データD*)を無効として修正するように構成することが可能である。
また、当該列に属し、放射線の照射開始を検出した走査線5のラインL(上記の例では走査線5のラインLn+2)から当該ラインLの所定本数前までの走査線5の各ラインLに接続されている各放射線検出素子7の画像データDのみを無効として修正するように構成することも可能である。
[第3の実施の形態]
上記の第1、第2の実施形態では、画像データDに対する画像処理に関する情報として、画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報を、連携方式の場合と非連携方式の場合とで予め別々に有しており、画像データDに対する画像処理を行う放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58が、放射線画像撮影が連携方式で行われたか非連携方式で行われたかに応じて上記の各情報のうちの適宜の情報を参照して、画像データDを無効とする放射線検出素子7を決定し、無効とした放射線検出素子7の画像データDを修正する場合について説明した。
一方、本発明者らの研究では、前述したように、連携方式の場合と非連携方式の場合とで、画像データDの最終的な画像処理を施して上記(1)式に示したように最終的な画像データDlastを算出するために必要となるゲイン補正値Gも、両方の場合で異なる値を用いることが必要になる可能性があることが分かってきた。
また、上記(1)式の演算で必要となるオフセットデータOは、通常、図17に示したように、放射線画像撮影の前や後に、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しない状態で放射線画像撮影装置1を所定時間放置する等の処理を行って、放射線画像撮影ごとにオフセットデータOを取得するように構成される場合が多いが、この放射線画像撮影ごとのオフセットデータOの取得をやめ、その代わりに、予め各放射線検出素子7ごとのオフセットデータOの情報を有しておき、それに基づいて放射線画像撮影ごとのオフセットデータOを導出するように構成される場合もある。
本発明者らの研究では、そのような場合に、連携方式の場合と非連携方式の場合とで、予め備えておくべきオフセットデータOが異なり得ることが分かってきた。
画像データDに対する画像処理に関する情報として、上記のゲイン補正値Gの情報を有する場合については後で説明するとして、以下、まず、各放射線検出素子7ごとのオフセットデータOの情報を、連携方式の場合と非連携方式の場合とで別々に備える場合について説明する。
[オフセットデータOの情報について]
放射線画像撮影を連携方式で行う場合、前述した図14〜図16に示したように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射前に各放射線検出素子7のリセット処理を、走査線5の最終ラインLxにオン電圧を印加した時点で停止し、電荷蓄積状態を経た後、走査線5の最初のラインL1から順に各走査線5にオン電圧を順次印加して画像データDの読み出し処理を行うといった一定の処理シーケンスに従って画像データDが読み出される。
一方、オフセットデータOは、TFT8がオフ状態とされている間、すなわち図16を用いて説明すると、放射線の照射前の各放射線検出素子7のリセット処理で各走査線5を介して各TFT8に印加する電圧を最後にオン電圧からオフ電圧に切り替えてから、画像データDの読み出し処理で走査線5を介して当該TFT8に印加する電圧をオン電圧からオフ電圧に切り替えるまでの時間(以下、この時間を実効蓄積時間という。)中に各放射線検出素子7内に蓄積される暗電荷に起因するデータである。
そして、本発明者らの研究では、オフセットデータOはTFT8の実効蓄積時間に比例して増加するとは限らず、寧ろ、図32に示すように、オフセットデータOはTFT8の実効蓄積時間Tに対して非線形に変化することが分かっている。
そこで、例えば、放射線画像撮影を連携方式で行う場合に、リセット処理の停止後に全ての走査線5にオフ電圧を印加する状態である電荷蓄積状態を、必ず予め設定した一定の時間だけ維持するように構成することができる。
このように構成すると、各放射線検出素子7のリセット処理におけるゲート周期(すなわちある走査線5にオン電圧を印加してから次の走査線5にオン電圧を印加するまでの周期)と、画像データDの読み出し処理におけるゲート周期とが異なる場合には、走査線5の各ラインL1〜Lxごとの実効蓄積時間が異なる時間になる。
しかし、各走査線5ごとに見た場合、同じ走査線5では各放射線画像撮影ごとの実効蓄積時間、すなわち当該走査線5に接続されている各TFT8の実効蓄積時間が必ず同じ長さの時間になる。従って、各放射線検出素子7のオフセットデータOを、各放射線画像撮影ごとに同じ値とすることが可能となる。
そこで、予め実験的に、上記のように電荷蓄積状態を上記の一定の時間の間維持した状態で各放射線検出素子7のオフセットデータOを取得して、例えば図33に示すように、各放射線検出素子(m,n)に対してそれぞれ取得したオフセットデータO(m,n)を割り当てたオフセット画像poを作成する。
具体的には、例えば、放射線画像撮影装置1に通電して基板4の温度が安定した時点で、各放射線検出素子7のリセット処理を行い、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されない状態で上記のように電荷蓄積状態を一定の時間の間維持し、その後、読み出し処理を行って各放射線検出素子7ごとにオフセットデータOを取得する。
この場合、各オフセットデータO(m,n)を取得する処理を1回だけ行うと、取得された各オフセットデータO(m,n)にノイズが含まれるため、上記の処理を複数回行って、各放射線検出素子(m,n)について複数のオフセットデータO(m,n)を取得して、例えばその平均値を算出して、当該平均値を当該放射線検出素子(m,n)のオフセットデータO(m,n)とするように構成することが好ましい。
そして、このようにして作成したオフセット画像poを、連携方式で放射線画像撮影を行った場合に読み出された画像データDに対する画像処理を行う場合に参照するオフセット画像poとして、予め放射線画像撮影装置1の記憶手段23(図8等参照)やコンソール58の記憶手段59(図10参照)に保存する等して有しておく。
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、例えば上記(1)式に従って各放射線検出素子7ごとに画像データDに対する画像処理を行う場合には、画像データDが連携方式で行われた放射線画像撮影で得られたものである場合には、上記のオフセット画像poを参照して、上記(1)式のOに、当該放射線検出素子(m,n)に対応するオフセットデータO(m,n)を代入して画像処理を行うように構成される。
一方、放射線画像撮影を非連携方式で行う場合にも、例えば図25や図27に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理で放射線の照射が開始されたことを検出した時点で全ての走査線5にオフ電圧を印加して電荷蓄積状態に移行するが、この電荷蓄積状態を、予め設定した一定の時間だけ維持するように構成される。
そして、図25等に示した場合には、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理におけるゲート周期と、画像データDの読み出し処理におけるゲート周期とが同じであるため、走査線5の各ラインL1〜Lxごとの実効蓄積時間が同じ時間になる。そのため、各放射線検出素子7のオフセットデータOは、各放射線画像撮影ごとに同じ値となる。
そこで、上記の連携方式の場合と同様に、予め実験的に各放射線検出素子(m,n)のオフセットデータO(m,n)を取得し、各放射線検出素子(m,n)にオフセットデータO(m,n)をそれぞれ割り当てた1枚のオフセット画像poを作成しておき、予め記憶手段23や記憶手段59に保存する等して有しておく。
そして、画像データDに対する画像処理時にそのオフセット画像poを参照することで、各放射線検出素子7に対応するオフセットデータOを用いて、各画像データDの画像処理を行うように構成することができる。
しかし、非連携方式における処理シーケンスを例えば図25のように構成すると、図27に示したように、実際に放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点と、放射線画像撮影装置1の制御手段22が放射線の照射が開始されたことを検出する時点とがずれてしまい、線欠陥が隣接する複数の走査線5に連続して現れる状態になることは前述した通りである。
そこで、この現象が生じることを極力回避するために、例えば、図34に示すように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際のゲート周期が長くなるように構成される場合がある。実際に放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点と、放射線画像撮影装置1の制御手段22が放射線の照射が開始されたことを検出する時点とがずれる間に、オン電圧が印加される走査線5の本数を減らすためである。
また、例えば、図35に示すように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際のオン時間が長くなるように構成される場合がある。ここで、オン時間とは、各走査線5ごとに見た場合に、走査線5にオン電圧を印加して各TFT8をオン状態としてから印加する電圧をオフ電圧に切り替えて各TFT8をオフ状態とするまでの時間を表す。
このようにオン時間を長くすると、読み出された画像データdの値が大きくなり、画像データdの検出感度が向上する。そのため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された際に、図35に示すように、実際に放射線の照射が開始された時点或いはその直後にオン電圧が印加されて画像データdの読み出し処理が行われた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出できる可能性が高くなる。
また、仮にその時点で放射線の照射が開始されたことが検出できなくても、その次の走査線5(図35の例では走査線5のラインLn+1)にオン電圧が印加された段階では確実に放射線の照射が開始されたことを検出することができるようになる。このように、図35に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理でオン時間を長くするように構成すると、線欠陥とされる走査線5は1本、或いはせいぜい2本で済むようになる。
しかし、図34や図35に示したように放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の仕方を変更すると、例えば図35の場合を簡略化した図36に示すように、走査線5の各ラインL1〜L4ごとに、TFT8の実効蓄積時間T1〜T4が互いに異なる時間になる。そして、この場合、TFT8の実効蓄積時間T1〜T4を小さい順に示すと、T2<T1<T4<T3となる。
すなわち、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5(図36の場合は走査線5のラインL2)で実効蓄積時間(T2)が最も短くなり、その次の走査線5、すなわち放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で最初にオン電圧が印加された走査線5(図36の場合は走査線5のラインL3)で実効蓄積時間(T3)が最も長くなる。
また、図36に示した例は、走査線5のラインL2にオン電圧が印加されて読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことが検出された場合の例であるが、走査線5の他のラインL1、L3、L4にオン電圧が印加されて読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことが検出された場合には、それぞれ走査線5の各ラインL1〜L4における実効蓄積時間T1〜T4が変わる。また、実効蓄積時間T1〜T4同士の相対的な長さも変わる。
これは、一般的な走査線5の各ラインL1〜Lxの場合も全く同様である。そして、当然のことながら、走査線5のどのラインL1〜Lxにオン電圧が印加された時点で放射線の照射が開始されたことが検出されるかは、予め決めておくことができず、予想することもできない。
また、図32に示したように、実効蓄積時間Tが変わると、それに非線形にオフセットデータOも変わる。
そこで、このような場合に、予め各放射線検出素子7ごとのオフセットデータOを予め備えておくように構成する場合には、例えば図37に示すように、図33に示したようなオフセット画像poを、走査線5のラインL1〜Lxにオン電圧が印加された時点で放射線の照射が開始されたことが検出された各場合について、それぞれ予め作成しておくように構成することが可能である。
そして、この場合は、予め作成された一群のオフセット画像poを、予め放射線画像撮影装置1の記憶手段23やコンソール58の記憶手段59に保存する等して有しておく。そして、当該放射線画像撮影の際に、放射線画像撮影装置1の制御手段22が、放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5の情報に基づいて、それに対応するオフセット画像poを参照することで、各放射線検出素子7に対応する各オフセットデータOを割り出し、それらのオフセットデータOを用いて、各画像データDの画像処理を行うように構成することができる。
なお、上記のように、予め各放射線検出素子7ごとのオフセットデータOの情報すなわち1枚の或いは一群のオフセット画像poを有しておくように構成する場合には、オフセットデータOが放射線画像撮影装置1の基板4(図3等参照)の温度等によって変化し得る点に注意が必要となる。
例えば、放射線画像撮影装置1が、図示しない支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置である場合には、例えば放射線画像撮影装置1に常時電力を供給するように構成して、常時撮影可能な状態としておくことができる。その場合、放射線画像撮影装置1の基板4の温度はほぼ一定の温度となる状態が維持されるため、予めオフセット画像poを作成する際に上記の撮影条件と同じ温度条件の下で作成すれば、上記のようにオフセット画像poに割り当てられたオフセットデータO(m,n)をそのまま各放射線検出素子(m,n)ごとのオフセットデータO(m,n)として用いることができる。
しかし、第1の実施形態で示したような可搬型の放射線画像撮影装置1の場合、バッテリ24(図8参照)から常時電力を供給するように構成すると、バッテリ24の電力の消耗が激しくなり、絶えず充電を強いられる状況になり、撮影効率の低下を招く。
そのため、このようなバッテリ内蔵型の放射線画像撮影装置1の場合、放射線画像撮影以外の場合には必要な機能部にのみ電力を供給する省電力モード(スリープモードともいう。)に切り替えることができるように構成されている場合が多い。そして、電力の消費を極力抑制するために、放射線画像撮影の直前まで省電力モードとされる場合も少なくない。
しかし、バッテリ内蔵型の放射線画像撮影装置1がこのように運用されると、実際の放射線画像撮影の際の基板4の温度が、オフセット画像poの作成時における基板4の温度と同じにならず、そのため、オフセット画像poに割り当てられたオフセットデータOをそのまま使うことができない場合がある。
そこで、上記のように、非連携方式の場合に、放射線画像撮影前から画像データdの読み出し処理が繰り返し行われることを利用して、オフセット画像poの各オフセットデータOの温度等による変化分を修正するように構成することができる。
すなわち、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始される前に、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdは、暗電荷に起因するデータである。そこで、例えば、オフセット画像poの作成時に、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理を繰り返し行わせて、例えば、検出部P上の全ての各放射線検出素子7或いは所定範囲の各放射線検出素子7から読み出された各画像データdの平均値(または合計値。以下同じ)を画像データdの情報として算出しておく。
そして、実際の放射線画像撮影の際にも、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始される前の画像データdの読み出し処理で、オフセット画像poの作成時と同じ範囲の各放射線検出素子7から読み出された各画像データdの平均値を算出する。そして、上記と同様に、それらの平均値同士の割合や差分を算出して、今回の放射線画像撮影における各放射線検出素子7のオフセットデータO(m,n)を算出して決定するように構成することができる。
このようにして、オフセット画像poで各放射線検出素子(m,n)にそれぞれ割り当てられている各オフセットデータO(m,n)を、オフセット画像poの作成時の画像データdの情報と、今回の撮影時に読み出された画像データdの情報とに基づいて修正して適用することで、各オフセットデータOの温度等による変化分を的確に修正して画像データDの画像処理に用いることが可能となる。
なお、上記のように、放射線画像撮影後の読み出し処理で読み出された本画像としての画像データDを、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdで修復する場合、画像データdに対するオフセットデータoが必要となるが、このオフセットデータoについても、オフセットデータOの場合と全く同様にしてオフセット画像が予め作成されて用いられる。
[ゲイン補正値Gの情報について]
次に、画像データDに対する画像処理に関する情報として、上記(1)式の演算の一部である下記(6)式に従って各放射線検出素子7の画像データDを正規化するために各画像データD(正確には画像データDからオフセットデータOを減算した値)に乗算する各ゲイン補正値Gの情報を、予め連携方式の場合と非連携方式の場合とで別々に備える場合について説明する。
Dnor=G×(D−O) …(6)
本発明者らの研究では、以下で説明する、いわゆるラグ(lag)によるオフセット分の影響が、特に非連携方式で放射線画像撮影を行って読み出された画像データDに対するゲイン補正値Gを決定する際に重要になることが分かってきた。
本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置1に強い放射線が照射された場合、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理を行った後、上記のようにしてオフセットデータOを読み出すと、前述したような放射線検出素子7自体の熱(温度)による熱励起等によって発生した暗電荷等に起因するオフセット分だけでなく、それとは別のラグによるオフセット分が読み出される場合があることが分かっている。
そして、暗電荷等に起因するオフセット分は、例えば各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返すことによって比較的容易に除去されるが、ラグによるオフセット分は、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返し行っても容易には消えないという特徴がある。
すなわち、暗電荷等に起因するオフセット分は、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返すと、比較的速やかに0に近い値まで低下する。しかし、ラグによるオフセット分は、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返してもなかなか除去できず、リセット処理を繰り返し行っても、放射線を照射しない状態で放射線画像撮影装置1を放置した後でオフセットデータ読み出し処理を行うと、暗電荷等に起因するオフセット分のみの場合よりも大きい値のオフセットデータOが読み出される。
このように、各放射線検出素子のリセット処理を繰り返してもラグによるオフセット分が容易に除去できない理由は、強い放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電子や正孔の一部が、一種の準安定なエネルギーレベル(metastable state)に遷移して、放射線検出素子7内での移動性を失った状態が比較的長時間保たれるためであると考えられている。
そして、この準安定なエネルギー状態の電子や正孔は、熱エネルギーによって、ある確率で、この準安定なエネルギーよりも高いと考えられるエネルギーレベルの伝導帯に遷移して移動性が復活する。このように、移動性が復活した電子や正孔がいわばじわじわと現れるため、放射線画像撮影後のオフセットデータ読み出し処理で、暗電荷等に起因するオフセット分にラグによるオフセット分が重畳されると考えられている。なお、以下、このラグによるオフセット分をOlagと表す。
なお、このラグによるオフセット分Olagは、強い放射線が照射された場合ばかりでなく、弱い放射線を含む通常の線量の放射線が照射された場合にも生じる。しかし、さほど強くない放射線が照射された場合には、オフセットデータOに含まれるラグによるオフセット分Olagの割合が無視できる程度に小さい場合が多い。
一方、本発明者らの研究では、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で、図38に示すように、走査線5の各ラインLnにオン電圧が順次印加されて画像データdが読み出された場合、走査線5の各ラインLnに印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられた直後からラグによるオフセット分Olagが発生する。
そして、単位時間あたりに発生するラグによるオフセット分OlagをΔOlagと表すと、この単位時間あたりのラグによるオフセット分ΔOlagは、図38に示すように、走査線5の各ラインLnに印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられた時点で最も大きく、その後、徐々に減衰していくことが分かっている。そのため、単位時間あたりのオフセット分ΔOlagの時間当たりの積分値として表すことができるラグによるオフセット分Olagは、時間的に図38に示すように増加する値になる。
そして、ラグによるオフセット分Olagがこのように時間的に増加するため、以下のような問題が生じる。
前述したように、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で読み出される画像データDには、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に由来する真の画像データD*と、暗電荷等に起因するオフセット分(以下、Odと表す。)とが含まれる。従って、
D=D*+Od …(7)
の関係が成り立つ。
また、オフセットデータ読み出し処理で読み出されるオフセットデータOには、暗電荷等に起因するオフセット分Odと、ラグによるオフセット分Olagとが含まれる。従って、
O=Od+Olag …(8)
の関係が成り立つ。
そのため、通常の画像処理の仕方に従って、画像データDからオフセットデータOを減算すると、暗電荷等に起因するオフセット分Odは相殺されるが、ラグによるオフセット分Olagは相殺されず、
D−O=(D*+Od)−(Od+Olag)
∴D−O=D*−Olag …(9)
となる。
いま、例えば、放射線画像撮影装置1に強い放射線を一様に、すなわち放射線入射面R(図1等参照)の前面に同じ線量の強い放射線を照射した場合を考える。この場合、最終的に得られる各放射線検出素子7ごとの画像データは、同じ値になるはずである。なお、ここでは、放射線検出素子7の異常や読み出し回路17ごとのオフセット分等は考慮しない。
この場合、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に由来する真の画像データD*は同じ値になる。
しかし、例えば図39に示すように、図36に示した処理シーケンスを繰り返して、オフセットデータOの読み出し処理を行うと、前述したように走査線5の各ラインL1〜L4ごとにTFT8の実効蓄積時間T1〜T4が異なるため、図40に示すように、走査線5の各ラインL1〜L4ごとのラグによるオフセット分Olag(1)〜Olag (4)の値が、互いに異なる値になる。
そのため、上記のように画像データDからオフセットデータOを減算する処理を行うと、上記(9)式中のD*は同じ値だが、Olagが走査線5の各ラインL1〜L4ごとに異なる値になるため、画像データDからオフセットデータOを減算して算出された値D−Oも走査線5の各ラインL1〜L4ごとに異なる値になってしまう。
しかも、前述したように、この場合、TFT8の実効蓄積時間T1〜T4がT2<T1<T4<T3の順に大きくなるため、図40に示したように、走査線5の各ラインL1〜L4ごとのラグによるオフセット分Olag(1)〜Olag (4)の値がOlag(2)<Olag (1)<Olag(4)<Olag (3)の順に大きくなる。
そのため、上記(9)式の値D−O(=D*−Olag)は、逆に、走査線5の各ラインL3、L4、L1、L2の順に大きくなる。値D−Oが大きくなるほど暗くなる(黒くなる)ように値D−Oを走査線5の各ラインL1〜L4に濃淡を付して表すと、図41に示すように、走査線5の隣接するラインL2、L3の間で値D−Oに大きな段差が生じる状態になる。なお、図41や後述する図42、図43では濃淡が強調して表現されている。
また、前述したように、実効蓄積時間は、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5(図36の場合は走査線5のラインL2)で最も短くなり、その次の走査線5、すなわち放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で最初にオン電圧が印加された走査線5(図36の場合は走査線5のラインL3)で最も長くなる。
そのため、上記の値D−O(=D*−Olag)は、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5(図36の場合は走査線5のラインL2)で最も大きくなり(すなわち暗くなり)、その次の、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理で最初にオン電圧が印加された走査線5(図36の場合は走査線5のラインL3)で最も小さくなる(すなわち明るくなる。)。
そのため、この現象を走査線5の各ラインL1〜Lxの場合に一般化した場合、上記の値D−O(=D*−Olag)は、図42に示すように、走査線5の最初のラインL1から放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5のラインLnに向けて次第に大きくなっていく(すなわち次第に暗くなっていく。)。
そして、その次の走査線5のラインLn+1で、値D−O(=D*−Olag)が急激に小さくなり(すなわち急激に明るくなり)最も小さな値になって値D−Oに段差が生じた後、走査線5の最終ラインLxに向けて大きく(暗く)なっていく状態になる。
ここで、仮に、このような傾向を有する値D−Oを前述した(6)式に代入して、ゲイン補正Gを乗算して正規化する場合、ゲイン補正値Gは、上記の傾向とは逆に、走査線5の最初のラインL1からラインLnに向けて次第に小さくなっていき、その次の走査線5のラインLn+1で最も大きくなった後、走査線5の最終ラインLxに向けて小さくなっていく値になってしまう。
しかし、前述したように、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5のラインLは、放射線画像撮影ごとに変わるため、1回の放射線画像撮影で得られた上記の値D−Oに基づいて上記のようにゲイン補正値Gを算出しても、基本的に、そのようなゲイン補正値Gは、他の放射線画像撮影で得られる値D−Oを正規化するために用いることができない。すなわち、そのようなゲイン補正値Gを用いても、値D−Oを的確に正規化することができない。
因みに、連携方式で放射線画像撮影を行った場合でも、走査線5の各ラインL1〜LxにおけるTFT8の実効蓄積時間T1〜Txが互いに異なる場合には、走査線5の各ラインL1〜Lxごとのラグによるオフセット分Olag(1)〜Olag (x)の値も異なる値になるため、上記(9)式の値D−O(=D*−Olag)も、走査線5の各ラインL1〜Lxに変化する。
しかし、この場合、値D−O(=D*−Olag)は、図43に示すように、放射線画像撮影後の画像データDの読み出し処理が開始された走査線5の最初のラインL1から走査線5の最終ラインLxに向けて徐々に大きく(暗く)なっていく状態になる。そして、連携方式の場合は、放射線画像撮影ごとに必ずこれと同じ状態になる。
そのため、このような傾向を有する値D−Oを正規化するためのゲイン補正Gも、放射線画像撮影ごとに必ず上記の傾向とは逆の状態、すなわち、走査線5の最初のラインL1から走査線5の最終ラインLxに向けて徐々に小さくなっていく値になる。
そこで、読み出される画像データDやオフセットデータOにノイズが含まれていることを考慮して、放射線画像撮影装置1に対するキャリブレーション時等に、放射線画像撮影装置1に所定の線量の放射線を照射して画像データDを読み出した後、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しないでオフセットデータOを読み出す処理を行って、各放射線検出素子7ごとに上記の値D−Oを算出する。
そして、この処理を複数回行って、複数回分の値D−Oの平均値を各放射線検出素子7ごとに算出する。そして、その平均値を上記(6)式に代入することで、値D−Oを正規化するためのゲイン補正値Gが各放射線検出素子7ごとに決定される。
この連携方式の場合のゲイン補正値Gの決定の仕方を考慮すると、結局のところ、非連携方式の場合には、上記のように、放射線の照射が開始されたことを検出した時点でオン電圧が印加されていた走査線5(以下、放射線の照射開始を検出した走査線5という。)とその次の走査線5との間で値D−Oに段差が生じてしまうこと、および放射線の照射開始を検出した走査線5が放射線画像撮影ごとに変わることが問題であることが分かる。
そこで、例えば、連携方式の場合と同様に、放射線画像撮影装置1に対するキャリブレーション時等に、上記の処理を複数回行って複数回分の値D−Oの平均値を算出するが、その際、非連携方式の場合には、連携方式の場合よりも放射線画像撮影装置1に放射線を照射する回数を多くして、算出される値D−Oの数を多くするように構成することが可能である。
このように、非連携方式の場合に放射線画像撮影装置1に放射線を照射する回数を多くして、より多くの値D−Oについて平均値を算出するように構成すると、放射線の照射開始を検出した走査線5が放射線画像撮影ごとに変わるため、放射線の照射開始を検出した走査線5とその次の走査線5との間で生じる値D−Oの段差の発生位置が放射線画像撮影ごとに変わる。
そのため、上記のように放射線画像撮影装置1に放射線を照射する回数を多くして、より多くの値D−Oについて平均値を算出するように構成すれば、放射線の照射開始を検出した走査線5とその次の走査線5との間で生じる値D−Oの段差が低減され、段差の影響がより少ない値D−Oを得ることが可能となる。
そして、そのような値D−Oを上記(6)式に代入することで、値D−Oを正規化するためのゲイン補正値Gを、段差の影響がより少ない値とすることが可能となる。
このように、連携方式の場合には、図43に示したような傾向を有する値D−Oに基づいて、ゲイン補正値Gが各放射線検出素子7ごとに決定される。一方、非連携方式の場合には、値D−Oが平均化されることで図42に示したような傾向が除去された値D−Oに基づいて、ゲイン補正値Gが各放射線検出素子7ごとに決定される。そのため、同じ放射線検出素子7から読み出された画像データD(およびオフセットデータO)に対するゲイン補正値Gが、連携方式の場合と非連携方式の場合とで異なるものになり得る。
そのため、画像データDに対する画像処理を行う放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58は、画像データDに対する画像処理に関する情報として、各放射線検出素子7ごとの各ゲイン補正値Gの情報を、連携方式で放射線画像撮影を行った場合と、非連携方式で放射線画像撮影を行った場合とで、それぞれ別々に備えておくことが好ましいのである。
そして、制御手段22やコンソール58は、連携方式で行われた放射線画像撮影で得られた画像データD(正確には値D−O。以下同じ)に対しては連携方式で放射線画像撮影を行った場合のゲイン補正値Gの情報を参照し、非連携方式で行われた放射線画像撮影で得られた画像データDに対しては非連携方式で放射線画像撮影を行った場合のゲイン補正値Gの情報を参照して、各放射線検出素子7の画像データDに対応するゲイン補正値Gを乗算して画像データDを正規化するように構成される。
なお、放射線の照射開始を検出した走査線5とその次の走査線5との間で生じる値D−Oの段差を低減する手法として、上記のように、非連携方式の場合に連携方式の場合よりも画像データDやオフセットデータOを読み出す回数を多くするように構成する代わりに、或いはそれと並行して、放射線画像撮影装置1に放射線を照射して画像データDを取得する処理と、オフセットデータOを取得する処理との時間間隔を長くするように構成することも可能である。
すなわち、この場合、放射線画像撮影装置1に放射線を照射して画像データDを読み出した後、長い時間に設定された所定の時間が経過した後、放射線画像撮影装置1に放射線を照射しないでオフセットデータOを読み出すように構成される。
このように構成すると、ラグによるオフセット分Olagは、前述したように各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返してもなかなか減らないとは言っても低減されることは確かであるから、上記の時間間隔を長くするほど、ラグによるオフセット分Olagは小さくなる。
そのため、放射線の照射開始を検出した走査線5とその次の走査線5との間で生じる値D−Oの段差が低減され、段差の影響がより少ない値D−Oを得ることが可能となる。そして、そのような値D−Oを上記(6)式に代入することで、値D−Oを正規化するためのゲイン補正値Gを、段差の影響がより少ない値とすることが可能となる。
なお、ラグによるオフセット分Olagが非常に小さく、事実上、無視できるような場合には、非連携方式で放射線画像撮影を行った場合に取得された画像データDやオフセットデータOに基づいて算出される値D−Oに、連携方式で放射線画像撮影を行った場合の値D−Oに適用するゲイン補正値Gを適用するように構成することも可能である。
また、通常の放射線検出素子7では、例えば図44に示すように、上記の値D−Oが、照射された所定の範囲の放射線の線量Iに対して線形に増減する。そのため、ある所定の線量I0の放射線を放射線画像撮影装置1に照射して上記の値D−Oを取得し、その値D−Oに基づいてゲイン補正値Gを取得すれば、そのゲイン補正値Gは、いずれの線量Iの放射線が照射された場合にも適用することができる。
しかし、放射線検出素子7の中には、図45に示すように、上記の値D−Oが、照射された所定の範囲の放射線の線量Iに対して必ずしも線形に増減しないものもある。このような放射線検出素子7に対しては、図45に示すように、複数種類の線量I1、I2、…の放射線を照射して上記の値D−Oを取得し、各値D−Oに基づいてそれぞれゲイン補正値Gを取得する。
そして、照射する放射線の線量I1、I2、…の種類を増やしたり、線量I1、I2、…の放射線を照射して得られた各値D−Oのプロットを曲線近似する等して、図45に示したような放射線の線量Iと値D−Oとの関係を得る。そして、それに基づいて、照射された放射線の線量Iとゲイン補正値Gとの関係を得る。
そして、その関係に基づいて、実際に放射線画像撮影装置1に照射された放射線の線量Iからゲイン補正値Gを算出して、ゲイン補正値Gを割り出すように構成される。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1および放射線画像撮影システム50においても、第1、第2の実施形態の場合と同様の効果を奏することが可能となる。
すなわち、連携方式で放射線画像撮影を行う場合と、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合とで、画像データDに対する画像処理に関する情報としての各放射線検出素子7のゲイン補正値Gの情報やオフセットデータOの情報を別々に備えておき、連携方式で得られた画像データDや、非連携方式で得られた画像データD或いは値D−Oに対して、それぞれ対応する前記情報を参照することで、各方式の場合に、それぞれ的確に上記の値D−Oを正規化したり、画像データDに対する画像処理を行うことが可能となる。
[第4の実施の形態]
上記の第1〜第3の実施形態では、画像データDに対する画像処理を行う放射線画像撮影装置1の制御手段22やコンソール58が、画像データDに対する画像処理に関する情報として、画像データDを無効とする放射線検出素子7の情報や、各放射線検出素子7の各ゲイン補正値GやオフセットデータOの情報等を、連携方式の場合と非連携方式の場合とで予め別々に有している場合について説明した。
しかし、これらの画像データDに対する画像処理に関する情報を、必ずしも予め連携方式の場合と非連携方式の場合とでそれぞれ有しておくように構成する必要はない。
すなわち、例えば、放射線画像撮影の前に、これから行う放射線画像撮影の方式(すなわち連携方式と非連携方式のいずれか)に従って放射線画像撮影装置1のキャリブレーションを行って、上記の画像データDに対する画像処理に関する情報を取得しておき、撮影後の画像データDに対する画像処理の際に、上記のようにして取得しておいた画像データDに対する画像処理に関する情報を参照して、画像データDに対する画像処理を行うように構成することも可能である。
具体的には、放射線画像撮影装置1を用いてこれから連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影装置1で放射線画像撮影の際に走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lx(図8等参照)にオン電圧を印加する仕方を連携方式で撮影を行う場合の仕方に切り替えて、放射線画像撮影装置1のキャリブレーションを行って、上記の画像データDに対する画像処理に関する情報を取得する。
また、放射線画像撮影装置1を用いてこれから非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、放射線画像撮影装置1で放射線画像撮影の際に走査駆動手段15から走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方を非連携方式で撮影を行う場合の仕方に切り替えて、放射線画像撮影装置1のキャリブレーションを行って、上記の画像データDに対する画像処理に関する情報を取得するように構成することが可能である。
この場合、画像データDに対する画像処理をコンソール58で行う場合には、放射線画像撮影装置1は、上記のようにして取得した画像データDに対する画像処理に関する情報をコンソール58に送信する。或いは、これらの情報を形成するために必要な、キャリブレーションにより得られた画像データDやオフセットデータO等の情報をコンソール58に送信し、コンソール58でこれらの画像データDに対する画像処理に関する情報を作成する。
このように構成すれば、上記の第1〜第3の実施形態で説明したように画像データDに対する画像処理に関する情報を連携方式の場合と非連携方式の場合とで予め有していなくてもよくなる。そして、連携方式で行われた放射線画像撮影で得られた画像データDに対しては連携方式で撮影を行う場合の仕方で得られた情報を参照し、非連携方式で行われた放射線画像撮影で得られた画像データDに対しては非連携方式で撮影を行う場合の仕方で得られた情報を参照して、各方式の場合に即して、画像データDに対する画像処理を的確に行うことが可能となる。
なお、上記の第3および第4の実施形態では、非連携方式の場合に、前述した第2の実施形態の場合と同様に、放射線画像撮影前に画像データdの読み出し処理を行うことを前提に説明したが、少なくとも第3および第4の実施形態では、放射線画像撮影前に、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。
しかし、その場合も、非連携方式では放射線発生装置55との照射開始信号等の信号のやり取りは行われないため、放射線画像撮影装置1自体で自らに対する放射線の照射が開始されたこと等を検出して放射線画像撮影を行うことが必要となる。この場合、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理は行われないため、別の手法で放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが必要となる。
そこで、例えば特開2009−219538号公報に記載されているように、バイアス線9や結線10(図8等参照)にそれらを流れる電流の値を検出する電流検出手段を設け、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されるとバイアス線9や結線10中を流れる電流の値が増加することを利用して放射線の照射が開始されたことを検出することができる。
また、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると各TFT8を介して各放射線検出素子7から信号線6にリークする電流、すなわちいわゆるリーク電流の量が増加する。そこで、これを利用して、上記のように、放射線画像撮影前に行う各放射線検出素子7のリセット処理で、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加する最中に、すなわち、ある走査線5にオン電圧を印加した後、次の走査線5にオン電圧を印加するまでの間の、走査線5の全ラインL1〜Lxにオフ電圧が印加されている最中に、各読み出し回路17に読み出し動作を行わせて、各放射線検出素子7からリークした電荷の読み出し処理を行わせる。
この場合に読み出されるデータを、画像データと区別してリークデータというものとすると、上記のように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると各放射線検出素子7からリークする電荷が増加するため、リークデータも増加する。そこで、このリークデータが増加することを利用して、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することも可能である。
このようにして、放射線画像撮影前に、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成しても、放射線画像撮影装置1自体で自らに対する放射線の照射が開始されたこと等を検出することができる。
そして、このように構成された非連携方式の場合でも、連携方式の場合と同様に、放射線画像撮影装置1に対して放射線が照射されている間は走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加が停止され、印加する電圧がオフ電圧に切り替えられる。
しかし、連携方式の場合には、図15に示したように、走査線5の最終ラインLxにオン電圧を印加して1面分のリセット処理Rmが終了した時点で初めて走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧がオフ電圧に切り替えられるのに対し、非連携方式の場合には、放射線画像撮影装置1に対して放射線の照射が開始されたことが検出された時点で、各走査線5に対するオン電圧の印加を停止する。
すなわち、走査線5の途中のラインLであっても、放射線の照射が開始されたことが検出されれば、走査線5の当該ラインLでオン電圧の印加を停止して、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオフ電圧に切り替える。少なくとも、この点で、連携方式の場合と、非連携方式の場合とで、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加する仕方が異なっている。