以下、本発明に係る放射線画像撮影システムおよび放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレーター等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレーター等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。
[放射線画像撮影装置]
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観を示す斜視図であり、図2は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1や図2に示すように、筐体2内にシンチレーター3や基板4等で構成されるセンサーパネルSPが収納されている。
本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状の筐体本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、筐体本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。また、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクター39、バッテリー状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケーター40等が配置されている。
本実施形態では、コネクター39は、例えば図3に示すように、ケーブルCaの先端に設けられたコネクターCが接続されることにより、例えば外部のコンソール58(後述する図11や図12参照)等の装置との間でケーブルCaを介して信号等を送受信したり画像データD等を送信したりする際の有線方式の通信手段として機能するようになっている。
また、図示を省略するが、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に、アンテナ装置41(後述する図7参照)が例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けられており、本実施形態では、このアンテナ装置41が、放射線画像撮影装置1とコンソール58等との間で信号等の無線方式で送受信する場合の通信手段として機能するようになっている。
図2に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33やバッテリー24等が取り付けられている。また、基板4やシンチレーター3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板34が配設されている。また、本実施形態では、センサーパネルSPと筐体2の側面との間に緩衝材35が設けられている。
シンチレーター3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレーター3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
また、本実施形態では、基板4は、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレーター3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。また、基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた小領域rの全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレーター3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(本実施形態ではシンチレーター3で放射線から変換された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスター等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
図4に示すように、本実施形態では、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。
各入出力端子11には、図6に示すように、後述する読み出しIC16や走査駆動手段15のゲートドライバー15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたフレキシブル回路基板(Chip On Film等ともいう。)12が、異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
そして、フレキシブル回路基板12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサーパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれ逆バイアス電圧(すなわち放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧)を印加するようになっている。
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバー15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバー15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバー15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に内蔵された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサー21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサー21は省略されている。
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサー18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。また、増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされる。
そして、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す。このようにして、各放射線検出素子7のリセット処理が行われるようになっている。
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積される。
増幅回路18では、コンデンサー18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサー18bに蓄積された後で、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
そして、相関二重サンプリング回路19は、それらの電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサー21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記憶手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピューターや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。
そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、SRAM(Static RAM)やSDRAM(Synchronous DRAM)等で構成される記憶手段23が接続されている。
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記憶手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリー24が接続されている。また、バッテリー24には、図示しない充電装置からバッテリー24に電力を供給してバッテリー24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
前述したように、制御手段22は、走査駆動手段15や読み出し回路17等を制御して画像データDの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理等を行わせるなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
なお、本実施形態では、放射線画像撮影装置1は、前述した連携方式(すなわち放射線画像撮影装置1と後述する放射線発生装置55との間で信号のやり取りを行って放射線画像撮影を行う撮影方式)と、非連携方式(すなわち放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55との間で信号のやり取りを行わずに、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射が開始されたことを検出して放射線画像撮影を行う撮影方式)のいずれの撮影方式によっても放射線画像撮影を行うことができるようになっているが、この点については、本実施形態に係る放射線画像撮影システムの構成等を説明した後で説明する。
[放射線画像撮影システム]
次に、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50について説明する。図11は、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50の構成例を示す図である。図11では、放射線画像撮影システム50が撮影室R1内等に構築されている場合が示されている。
撮影室R1には、ブッキー装置51が設置されており、ブッキー装置51は、そのカセッテ保持部(カセッテホルダともいう。)51aに上記の放射線画像撮影装置1を装填して用いることができるようになっている。なお、図11では、ブッキー装置51として、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bが設置されている場合が示されているが、例えば一方のブッキー装置51のみが設けられていてもよい。
図11に示すように、撮影室R1には、被写体を介してブッキー装置51に装填された放射線画像撮影装置1に放射線を照射する放射線源52Aが少なくとも1つ設けられている。本実施形態では、放射線源52Aの位置を移動させたり、放射線の照射方向を変えることで、立位撮影用のブッキー装置51Aと臥位撮影用のブッキー装置51Bのいずれにも放射線を照射することができるようになっている。
撮影室R1には、撮影室R1内の各装置等や撮影室R1外の各装置等の間の通信等を中継するための中継器(基地局等ともいう。)54が設けられている。なお、本実施形態では、中継器54には、放射線画像撮影装置1が無線方式で画像データDや信号等の送受信を行うことができるように、無線アンテナ(アクセスポイントともいう。)53が設けられている。
また、中継器54は、放射線発生装置55やコンソール58と接続されており、中継器54には、放射線画像撮影装置1やコンソール58等から放射線発生装置55に送信するLAN(Local Area Network)通信用の信号等を放射線発生装置55用の信号等に変換し、また、その逆の変換も行う図示しない変換器が内蔵されている。
前室(操作室等ともいう。)R2には、本実施形態では、放射線発生装置55の操作卓57が設けられており、操作卓57には、放射線技師等の操作者が操作して放射線発生装置55に対して放射線の照射開始等を指示するための曝射スイッチ56が設けられている。
放射線発生装置55は、放射線源52を所定の位置に移動させたり、その放射方向を調整したり、放射線画像撮影装置1の所定の領域内に放射線が照射されるように図示しない絞りやコリメーター等を調整したり、或いは、適切な線量の放射線が照射されるように放射線源52を調整する等の種々の制御を行うようになっている。
図11に示すように、本実施形態では、コンピューター等で構成されたコンソール58が前室R2に設けられている。なお、コンソール58を撮影室R1や前室R2の外側や別室等に設けるように構成することも可能であり、適宜の場所に設置される。
また、コンソール58には、CRT(Cathode Ray Tube)やLCD(Liquid Crystal Display)等を備えて構成される表示部58aが設けられており、また、図示しないマウスやキーボード等の入力手段を備えている。また、コンソール58には、HDD(Hard Disk Drive)等で構成された記憶手段59が接続され、或いは内蔵されている。
一方、放射線画像撮影装置1は、図12に示すように、ブッキー装置51には装填されずに、いわば単独の状態で用いることもできるようになっている。例えば、患者Hが病室R3のベッドBから起き上がれず、撮影室R1に行くことができないような場合には、図12に示すように、放射線画像撮影装置1を病室R3内に持ち込み、ベッドBと患者の身体との間に差し込んだり患者の身体にあてがったりして用いることができる。
また、放射線画像撮影装置1を病室R3等で用いる場合、前述した撮影室R1に据え付けられた放射線発生装置55に代えて、図12に示すように、いわゆるポータブルの放射線発生装置55が例えば回診車71に搭載される等して病室R3に持ち込まれる。この場合、ポータブルの放射線発生装置55の放射線52Pは、任意の方向に放射線を照射できるように構成されており、ベッドBと患者の身体との間に差し込まれたり患者の身体にあてがわれたりした放射線画像撮影装置1に対して、適切な距離や方向から放射線を照射することができるようになっている。
また、この場合、無線アンテナ53が設けられた中継器54が放射線発生装置55内に内蔵されており、上記と同様に、中継器54が放射線発生装置55とコンソール58との間の通信や、放射線画像撮影装置1とコンソール58との間の通信や画像データDの送信等を中継するようになっている。
なお、図11に示したように、放射線画像撮影装置1を、撮影室R1の臥位撮影用のブッキー装置51B上に横臥した患者の身体と臥位撮影用のブッキー装置51Bとの間に差し込んだり、臥位撮影用のブッキー装置51B上で患者の身体にあてがったりして用いることも可能であり、その場合は、ポータブルの放射線52Pや、撮影室R1に据え付けられた放射線源52Aのいずれを用いることも可能である。
本実施形態では、コンソール58は画像処理装置としても機能するようになっており、放射線画像撮影装置1から画像データD等が送信されてくると、それらに基づいてゲイン補正や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、放射線画像を生成するようになっている。なお、画像処理装置を、コンソール58とは別体の装置として構成することも可能である。
[連携方式および非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理について]
次に、上記の放射線画像撮影装置1を用いて、連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理と、非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理についてそれぞれ説明する。
[連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理]
本実施形態では、放射線画像撮影が連携方式で行われる場合、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、通常、まず、各放射線検出素子7のリセット処理を行うようになっている。
各放射線検出素子7のリセット処理では、例えば図13に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15b(図7参照)から走査線5の各ラインL1〜Lxに対してオン電圧をそれぞれ印加し、各TFT8のゲート電極8gにオン電圧を印加してTFT8をオン状態として、各放射線検出素子7内に残存する電荷を各放射線検出素子7から各信号線6に放出させて除去する。なお、図13や後述する図15中のτ1については、後で説明する。
そして、図13に示すように、オン電圧を印加する走査線5を順次切り替えて、走査線5の各ラインL1〜Lxに順次オン電圧を印加して、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返す。制御手段22は、このようにして、走査線5の最初のラインL1から最終ラインLxまで順次オン電圧を印加して行う検出部P(図4や図7参照)の1面分のリセット処理Rmを繰り返して行うように構成される。
そして、図14に示すように、1面分のリセット処理Rmの最中に、放射線発生装置55側で放射線技師によって曝射スイッチ56が操作されて、放射線発生装置55から放射線画像撮影装置1に照射開始信号が送信されてくると、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、照射開始信号が送信されてきた時点で行っている1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、各放射線検出素子7のリセット処理を終了する。
そして、走査駆動手段15から走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて全TFT8をオフ状態として、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生する電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
また、制御手段22は、上記のように1面分のリセット処理Rmが完了した時点で、放射線発生装置55に対してインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置55は、中継器54を介して放射線画像撮影装置1からインターロック解除信号を受信すると、放射線源52から放射線を照射させる。
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、インターロック解除信号を送信した後、放射線発生装置55から放射線の照射を終了したことを表す終了信号が送信されてくると、或いは電荷蓄積状態に移行してから所定の時間が経過した時点で、図15に示すように、走査線5の最初のラインL1から順に、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7から画像データDをそれぞれ読み出すように構成される。
なお、図15中の斜線は、その期間に放射線が照射されたことを表す。また、図15中のTcont1は電荷蓄積状態の継続時間、Tac1は、電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経て画像データDの読み出し処理において当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間(以下、実効蓄積時間という。)を表す。
[非連携方式で放射線画像撮影を行う場合の処理]
次に、放射線画像撮影が非連携方式で行われる場合の放射線画像撮影装置1における処理について説明する。
前述したように、非連携方式の場合、放射線画像撮影装置1と放射線発生装置55との間で信号等のやり取りが行われないため、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射が開始されたことを検出して放射線画像撮影を行うことが必要となる。以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1で行われる放射線の照射開始の検出の仕方について説明する。
なお、本実施形態に係る検出方法は、前述したように、本発明者らの研究により新たに見出された検出方法である。本発明者らの研究により新たに見出された検出方法としては、例えば、下記の2つの検出方法のいずれかを採用することが可能である。
[検出方法1]
例えば、放射線画像撮影において放射線画像撮影装置1に放射線が照射される前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することが可能である。ここで、リークデータdleakとは、図16に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図9に示した各放射線検出素子7のリセット処理や図10に示した画像データDの読み出し処理の場合と異なり、図17に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7や図8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信するようになっている。
相関二重サンプリング回路19は、制御手段22からパルス信号Sp1が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持する。そして、増幅回路18のコンデンサー18bに各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qが蓄積されて増幅回路18から出力される電圧値が上昇し、制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、相関二重サンプリング回路19は、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
そして、相関二重サンプリング回路19が電圧値の差分Vfi−Vinを算出して出力した値が、リークデータdleakとなる。リークデータdleakが、その後、A/D変換器20でデジタル値に変換されることは、前述した画像データDの読み出し処理の場合と同様である。
ところで、リークデータdleakの読み出し処理のみを繰り返し行うように構成すると、各TFT8がオフ状態のままとなってしまい、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になってしまう。
そのため、上記のように、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、図18に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理と、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理とを交互に繰り返し行うように構成することが望ましい。
なお、図18や後述する図19等のTやτ2については後で説明する。また、図19中のTcont2は電荷蓄積状態の継続時間、Tac2は実効蓄積時間、すなわち、前述したように、電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経て画像データDの読み出し処理において当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間を表す。
このように放射線画像撮影前に各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理とを交互に繰り返して行うように構成した場合、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、シンチレーター3(図2参照)で放射線から変換された電磁波が、各TFT8に照射される。そして、それにより、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷q(図16参照)がそれぞれ増加することが本発明者らの研究で分かっている。
そして、例えば図19に示すように、各放射線検出素子7のリセット処理と放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理とを交互に繰り返して行う場合、図20に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始された時点で読み出されたリークデータdleakが、それ以前に読み出されたリークデータdleakよりも格段に大きな値になる。
なお、図19および図20では、図19で走査線5のラインL4にオン電圧が印加されてリセット処理が行われた後の4回目の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakが、図20の時刻t1におけるリークデータdleakに対応する。また、図19において「R」は各放射線検出素子7のリセット処理を表し、「L」はリークデータdleakの読み出し処理を表す。
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されたリークデータdleakを監視するように構成し、読み出されたリークデータdleakが、例えば予め設定された所定の閾値dleak_th(図20参照)を越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。なお、以下、上記の走査線5のラインL4のように、放射線の照射が開始された際、或いはその直前にオン電圧が印加された走査線5を、検出ラインという。
[検出方法2]
また、上記の検出方法1のように、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成する代わりに、放射線画像撮影前に、図21に示すように、走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。
なお、前述したように、放射線画像撮影直後に行われる上記の本画像としての画像データDと区別して、以下、この放射線画像撮影前に放射線の照射開始の検出用に読み出される画像データを、照射開始検出用の画像データdという。
また、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理における読み出し回路17の増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cのオン/オフや、相関二重サンプリング回路19へのパルス信号Sp1、Sp2の送信等は、図22に示すように、図10に示した画像データDの読み出し処理における処理と同様に行われる。なお、図22等におけるTやΔTについては後で説明する。
上記のように放射線画像撮影前に照射開始検出用の画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図23に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点で読み出された照射開始検出用の画像データd(図23では走査線5のラインLnにオン電圧が印加されて読み出された照射開始検出用の画像データd)が、前述した図20に示したリークデータdleakの場合と同様に、それ以前に読み出された照射開始検出用の画像データdよりも格段に大きな値になる。
そこで、放射線画像撮影装置1の制御手段22で、放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された照射開始検出用の画像データdを監視するように構成し、読み出された照射開始検出用の画像データdが予め設定された所定の閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することができる。
なお、図23中のΔTやτ2については後で説明する。また、図23中のTcont2は電荷蓄積状態の継続時間、Tac2は実効蓄積時間を表す。さらに、図23の場合、検出ラインは走査線5のラインLnである。
[さらに改良された検出方法について]
また、上記の検出方法1において、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理で、ある走査線5に対するオン電圧の印加を開始してから次の走査線5に対するオン電圧の印加を開始するまでの周期τ2(図18や図19等参照)を長くして、リークデータdleakの読み出し処理において制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔Tを長くすると、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの値が大きくなる。
また、上記の検出方法2において、放射線画像撮影前の照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において、各TFT8をオン状態とする時間ΔT(図22や図23参照)、すなわち走査駆動手段15のゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧を印加してからオフ電圧に切り替えるまでの時間ΔT(以下、オン時間ΔTという。)を長くすると、1回の読み出し処理で読み出される照射開始検出用の画像データdの値が大きくなる。
そのため、上記のように構成することで、放射線画像撮影装置1における放射線の照射開始の検出感度を向上させることが可能となる。
また、図24に示すように、例えば、検出部P(図4や図7等参照)が4つの領域Pa〜Pdに分割されるなど、検出部Pが複数の領域に分割されるように構成される場合がある。このような場合、検出部Pの各領域Pa〜Pdごとに、上記の検出方法1や検出方法2を用いて放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。
そして、このように構成すれば、例えば、放射線が放射線画像撮影装置1に対して照射野が狭められて照射され、検出部Pの複数の領域Pa〜Pdのうち1つ或いはいくつかの領域のみに放射線が照射される状態になる場合があるが、そのような場合でも、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
[電荷蓄積状態への移行と画像データDの読み出し処理]
上記の検出方法1、2或いはさらに改良された検出方法を採用して非連携方式で放射線画像撮影を行う場合、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして放射線の照射が開始されたことを検出すると、連携方式の場合(図15参照)と同様に、図19(検出方法1の場合)や図23(検出方法2の場合)に示すように、放射線の照射開始を検出した時点で各走査線5へのオン電圧の印加を停止して、ゲートドライバー15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させ、各TFT8をオフ状態にして電荷蓄積状態に移行させる。
そして、例えば放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、制御手段22は、本画像としての画像データDの読み出し処理を行わせるようになっている。
本実施形態では、制御手段22は、図19や図23に示すように、前述した検出ライン(図19の場合は走査線5のラインL4、図23の場合は走査線5のラインLn)の次にオン電圧を印加すべき走査線5(図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始し、各走査線5にオン電圧を順次印加させて、画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
なお、以下、画像データDの読み出し処理の最初にオン電圧を印加する走査線5(すなわち図19の場合は走査線5のラインL5、図23の場合は走査線5のラインLn+1)を、読み出し開始ラインという。
画像データDの読み出し処理の際、本実施形態では、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を印加する周期が、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法1の場合。図19等参照)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合。図23参照)における周期τ2と同じ周期になるように、各走査線5にオン電圧を順次印加するようになっている。
このように構成すると、実効蓄積時間Tac2、すなわち電荷蓄積状態への移行前に走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経て画像データDの読み出し処理において当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間Tac2(図19や図23参照)が、各走査線5で同じ時間になり好ましい。
[オフセットデータOの読み出し処理]
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、上記のようにして、本画像としての画像データDの読み出し処理を終了すると、続いて、オフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。
前述した連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、図示を省略するが、制御手段22は、図15に示した処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。
すなわち、画像データDの読み出し処理の終了後、1面分のリセット処理(図13参照)と同じ周期τ1で走査駆動手段15から各走査線5にオン電圧を順次印加して各放射線画像撮影装置7のリセット処理を行わせ、それを、例えば1面分行わせる。そして、走査駆動手段15から各走査線5にオフ電圧を印加して電荷蓄積状態に移行させる。
そして、電荷蓄積状態を継続時間Tcont1(図15参照)だけ継続した後、画像データDの読み出し処理と同様にしてオフセットデータOを読み出すように構成される。なお、オフセットデータOの読み出し処理前の電荷蓄積状態においては、放射線画像撮影装置1に放射線は照射されない。
一方、制御手段22は、前述した非連携方式で放射線画像撮影を行う場合にも、図19に示した検出方法1の場合の処理シーケンスや、図23に示した検出方法2の場合の処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータOの読み出し処理を行うようになっている。
具体的には、例えば検出方法1(図19参照)を採用して放射線画像撮影を行う場合には、図25に示すように、制御手段22は、読み出し開始ラインL5から走査線5の最終ラインLx、最初のラインL1を経て検出ラインL4までオン電圧を順次印加させて画像データDの読み出し処理を行った後、放射線画像撮影前の各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理と同じ処理シーケンスで、読み出し開始ラインL5から検出ラインL4までオン電圧を順次印加させて各放射線検出素子7のリセット処理(図中のR参照)を行わせ、それと交互にリークデータdleakの読み出し処理(図中のL参照)を行わせる。
その際、各放射線検出素子7のリセット処理に行われるリークデータdleakの読み出し処理では、実際にリークデータdleakを読み出すように構成されることが望ましい。しかし、オフセットデータOの読み出し処理では、上記のように放射線画像撮影装置1に放射線は照射されず、放射線の照射開始の検出処理を行う必要がないため、リークデータdleakは読み出された後で破棄される。
そして、上記のようにして各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理とを行った後、制御手段22は、ゲートドライバー15bから各走査線5にオフ電圧を印加させて電荷蓄積状態に移行させ、電荷蓄積状態を、画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態(図19参照)と同じ継続時間Tcont2だけ継続させる。
そして、図25に示すように、画像データDの読み出し処理と同様にして、ゲートドライバー15bから各走査線5にオン電圧を順次印加させて、各放射線検出素子7からオフセットデータOを読み出すように構成される。
このように構成すると、連携方式の場合や検出方法2の場合も同様であるが、各走査線5ごとに、電荷蓄積状態(図19や図25参照)前の最後の各放射線検出素子7のリセット処理(各図におけるR参照)で走査線5に印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられてから、電荷蓄積状態の後、画像データDやオフセットデータOの読み出し処理で走査線5に印加された電圧がオン電圧からオフ電圧に切り替えられるまでの実効蓄積時間Tac2が、画像データDの読み出し処理の場合(図19参照)とオフセットデータOの読み出し処理の場合(図25参照)とで同じ時間になる。
前述したように、各放射線検出素子7内では暗電荷が常時発生しており、読み出される画像データD中においては、上記のように放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷に起因する有用なデータ(いわゆる真の画像データD*)に、この蓄積された暗電荷に起因するオフセット分が重畳されている。
そして、上記のように画像データDの読み出し処理の場合とオフセットデータOの読み出し処理の場合とで実効蓄積時間Tac2を同じ時間とすることで、読み出されるオフセットデータOを、真の画像データD*に重畳されている暗電荷に起因するオフセット分と同じ値とすることが可能となる。
そのため、例えば、コンソール58(図11や図12参照)等の画像処理装置において、画像データDからオフセットデータOを減算すると、画像データD中に含まれる暗電荷に起因するオフセット分とオフセットデータOとが的確に相殺されて、各放射線検出素子7ごとの真の画像データD*を的確に算出することが可能となる。
[データの画像処理装置への送信]
本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、オフセットデータOの読み出し処理が終了すると、コンソール58(図11や図12参照)等の画像処理装置に対して、本画像としての画像データDの読み出し処理で読み出した各放射線検出素子7ごとの画像データDや、オフセットデータOの読み出し処理で読み出した各放射線検出素子7ごtのオフセットデータOを送信するようになっている。
そして、コンソール58等の画像処理装置では、上記のように、画像データDからオフセットデータOを減算して各放射線検出素子7ごとに真の画像データD*を算出し、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って放射線画像を生成するようになっている。
しかし、前述したように、一連の放射線画像撮影を連続して行うような場合、先の撮影の際に各放射線検出素子7で発生したラグが、後の撮影で読み出された各放射線検出素子7ごとの画像データDに重畳されている。そのため、特に後の撮影で読み出された画像データDについては、上記の放射線画像の生成処理の前処理として、画像データD中から、先の撮影で生じたラグによるオフセット分を排除する処理が必要になる。この処理については、以下で詳しく説明する。
なお、制御手段22は、本画像としての画像データDの読み出し処理を終了した時点や、オフセットデータOの読み出し処理を終了した時点で、例えば読み出した画像データDの中から所定の割合で画像データDを抽出してプレビュー画像用データを作成してコンソール58に送信するように構成することが可能である。
そして、コンソール58は、プレビュー画像用データを受信すると、それに基づいてプレビュー画像を生成して表示部58a(図11や図12参照)上に表示するように構成される。放射線技師が、表示されたプレビュー画像を見て、放射線画像撮影が適切に行われているか否かを確認したり、撮影が適切に行われていないと判断した場合は再撮影を行う等の処理を行うことはよく知られている通りであり、説明を省略する。
[後の撮影の画像データDの修正処理の原理について]
次に、本実施形態に係る、後の撮影で読み出された画像データD中から先の撮影で生じたラグによるオフセット分を排除して、後の撮影で得られた画像データDを修正する処理の原理について説明する。
前述したように、本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、放射線の照射により各放射線検出素子7でラグ(lag)が発生することが分かっている。そして、放射線画像撮影を連続して行う場合、先の撮影の際に各放射線検出素子7で発生したラグが、後の撮影で読み出された各放射線検出素子7ごとの画像データDにそれぞれ重畳される。そのため、後の撮影で得られる放射線画像に、先の撮影で生じたラグが残像として写り込んでしまう現象が生じる。
そこで、後の撮影で読み出される画像データDに重畳される、先の撮影で生じたラグによるオフセット分を、後の撮影で読み出された画像データDから排除することが必要になる。そして、本発明者らは、これについて有効な方法を見出すことができた。以下、この方法について説明する。
なお、本実施形態では、後述する方法がさらに改変されて適用されるため、以下で説明する方法は、本実施形態に係る、後の撮影で読み出された画像データD中から先の撮影で生じたラグによるオフセット分を排除して後の撮影で得られた画像データDを修正する処理の原理に相当する方法と言える。
前述したように、ラグは、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電子や正孔の一部が放射線検出素子7内の準安定なエネルギーレベルに遷移して移動性を失い、その準安定なエネルギー状態の電子や正孔が、熱エネルギーによって少しずつより高いエネルギーレベルの伝導帯に遷移して移動性が復活することによって発生すると考えられる。
そして、放射線検出素子7内で発生したラグは、各放射線検出素子7のリセット処理が行われれば各放射線検出素子7内から除去される。また、各放射線検出素子7からの画像データD等のデータの読み出し処理が行われれば、他の電荷とともに各放射線検出素子7から読み出され、読み出されたデータに、ラグに起因するオフセット分が重畳される状態になる。
しかし、放射線検出素子7の準安定なエネルギーレベルに存在する電子や正孔は、リセット処理や読み出し処理が行われたからといって、それによってこの準安定なエネルギーレベルからなくなるわけではない。これらの電子や正孔は、あくまで放射線検出素子7内の熱平衡によってこの準安定なエネルギーレベルとより高いエネルギーレベルの伝導帯或いは他のエネルギーレベルとの間を遷移する。
そのため、放射線が照射された直後には準安定なエネルギーレベルに多くの電子や正孔が存在し、そこから伝導帯への遷移量も多くなるため、図26に示すように、放射線検出素子7内でのラグの単位時間あたりの発生量(発生速度等ともいう。)α(t)が大きくなる。しかし、上記のように、各放射線検出素子7のリセット処理等が繰り返されるうちに、次第にこの準安定なエネルギーレベルに存在する電子や正孔の量が少なくなっていくため、図26に示すように、ラグの単位時間あたりの発生量α(t)が次第に小さくなっていく状態になる。
ここで、例えば、上記の検出方法1を採用して非連携方式で放射線画像撮影を2回連続して行う場合を考える。なお、上記の検出方法2を採用したり上記の連携方式を採用して2回連続して放射線画像撮影を行う場合も同様である。
この場合、先の撮影で読み出された本画像としての画像データD(図19参照)に基づいて、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを算出するように構成することも考えられる。しかし、比較的大きなラグが生じるほど強い放射線が照射された各放射線検出素子7から読み出される画像データDは飽和(saturate)してしまっている場合があり、このような画像データDに基づいてラグによるオフセット分Olagを算出することは困難である。
しかし、先の撮影で、画像データDの後で読み出されるオフセットデータO(図25参照)は、飽和することはない。そして、このオフセットデータOが、先の撮影で発生したラグに起因するオフセット分に相当すると考えられる。なお、先の撮影の際に読み出されたオフセットデータOを、後の撮影の際に読み出されるオフセットデータOと区別するために、以下、オフセットデータO1という。
そこで、この先の撮影の際に読み出されたオフセットデータO1に基づいて、後の撮影の際に読み出される本画像としての画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグに起因するオフセット分Olagを算出することができると考えられる。
具体的には、図27に示すように、例えば放射線画像撮影装置1の検出部P上の各走査線5のうち、走査線5のラインLmに着目する。なお、図27では、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧が印加されるタイミングが上向きの矢印でそれぞれ示されている。そして、それらは図19や図25に示したタイミングと同じである。また、図27や後述する図28、図29における「R、L」は、上記のようにこの間に各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理が交互に繰り返されることを表している。
この場合、先の撮影におけるオフセットデータOの読み出し処理で、走査線5の当該ラインLmに接続されているある放射線検出素子7から読み出されるオフセットデータO1は、オフセットデータOの読み出し処理前に電荷蓄積状態に移行する直前に走査線5のラインLmにオン電圧が印加されてから、オフセットデータOの読み出し処理で走査線5のラインLmにオン電圧が印加されるまでの間、すなわち図25における実効蓄積時間Tac2の間に、当該放射線検出素子7内で発生したラグに起因するデータになる。
すなわち、図27に示すように、先の撮影で読み出されるオフセットデータO1は、上記のラグの単位時間あたりの発生量α(t)を実効蓄積時間Tac2で積分して算出される電荷量に比例する値になる。
一方、その後、後の撮影が行われて放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、上記のように、放射線画像撮影装置1の制御手段22がそれを検出して電荷蓄積状態に移行する。そして、後の撮影における本画像としての画像データDの読み出し処理が行われる。その際、後の撮影で読み出された画像データDには、後の撮影での放射線の照射により発生した電荷等が含まれるが(図27では不図示)、さらに、図27に示すように、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagが重畳される。
そして、このラグによるオフセット分Olagは、後の撮影における画像データDの読み出し処理において、画像データDの読み出し処理前に電荷蓄積状態に移行する直前に走査線5のラインLmにオン電圧が印加されてから、画像データDの読み出し処理で走査線5の当該ラインLmにオン電圧が印加されるまでの間、すなわち図19における実効蓄積時間Tac2の間に、当該放射線検出素子7内で発生したラグに起因するデータになる。
すなわち、図27に示すように、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagも、上記のラグの単位時間あたりの発生量α(t)を実効蓄積時間Tac2で積分して算出される電荷量に比例する値になる。
このように、ある走査線5のラインLmについて見た場合、先の撮影で読み出されるオフセットデータO1も、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagも、ともに先の撮影で生じたラグの単位時間あたりの発生量α(t)を同じ実効蓄積時間Tac2で積分して算出される電荷量に比例する値になる。
そのため、先の撮影の際に読み出されたオフセットデータO1に基づいて、後の撮影の際に読み出される本画像としての画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグに起因するオフセット分Olagを算出することが可能となるのである。
そして、先の撮影で生じたラグの単位時間あたりの発生量α(t)が指数関数的に表されるとして、上記のオフセットデータO1とオフセット分Olagとを指数関数的に対応付けることも可能であるが、本実施形態では、先の撮影で生じたラグの単位時間あたりの発生量α(t)が時間tのべき乗関数的に表されるものとして、上記のオフセットデータO1とオフセット分Olagとを、下記(1)式で関係付けるようになっている。
Olag=O1×a・tb …(1)
この場合、時間tは、例えば、先の撮影におけるオフセットデータOの読み出し処理の際に走査線5のラインLmにオン電圧が印加されてから、後の撮影における画像データDの読み出し処理の際に走査線5の当該ラインLmにオン電圧が印加されるまでの時間とされる。
しかし、この時間tは、本実施形態のように構成した場合、走査線5のいずれのラインL1〜Lxにおいても同じ時間tになる。逆の言い方をすれば、上記の本実施形態のように構成すれば、上記(1)式の演算において、時間tを全ての走査線5について同じ時間tとすることが可能となるといったメリットがある。
そして、放射線検出素子7ごとに先の撮影で読み出されたオフセットデータO1に基づいて上記(1)式に従って上記のオフセット分Olag、すなわち後の撮影の際に読み出される本画像としての画像データDに重畳されている先の撮影で生じたラグに起因するオフセット分Olagを算出し、当該放射線検出素子7について後の撮影で読み出された画像データDから、算出したオフセット分Olagを減算する。
このように演算することで、後の撮影で読み出された画像データDを各放射線検出素子7ごとに修正することが可能となる。
なお、上記(1)式における定数a、bは、各放射線検出素子7ごとに設定されていてもよく、また、各放射線検出素子7における上記のラグの単位時間あたりの発生量α(t)が略同一であるような場合には、定数a、bを各放射線検出素子7に共通の値として設定するように構成することも可能である。
また、後の撮影で読み出された画像データD等に基づいて真の画像データD*、すなわち後の撮影で放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷のみに起因するデータを算出する場合、上記のように後の撮影で読み出された画像データDを修正するだけでなく、後の撮影で読み出されたオフセットデータOも修正することが必要となる。
図27に示すように、後の撮影で読み出されたオフセットデータOにも、先の撮影で生じたラグに起因するオフセット分(この後の撮影のオフセットデータOに重畳されているオフセット分をOlag_darkと表す。)が重畳されているためである。
そこで、上記と同様にして、上記(1)式と同じ下記(2)式に従って、先の撮影で読み出されたオフセットデータO1に基づいて、後の撮影で読み出されたオフセットデータOに重畳されている、先の撮影で生じたラグに起因するオフセット分Olag_darkを算出する。
Olag_dark=O1×a・tO b …(2)
なお、この場合の時間tOは、上記(1)式における時間tとは異なり、例えば、先の撮影におけるオフセットデータOの読み出し処理の際に走査線5のラインLmにオン電圧が印加されてから、後の撮影におけるオフセットデータOの読み出し処理の際に走査線5の当該ラインLmにオン電圧が印加されるまでの時間とされる。
そして、通常の場合、後の撮影で得られた画像データDから後の撮影で得られたオフセットデータOを減算することで、各放射線検出素子7ごとに真の画像データD*が算出されるが、この場合は、下記(3)式に従って、修正された画像データD(すなわちD−Olag)から修正されたオフセットデータO(O−Olag_dark)が減算されて、各放射線検出素子7ごとに真の画像データD*が算出されるように構成される。
D*=(D−Olag)−(O−Olag_dark) …(3)
[本発明における後の撮影の画像データDを修正するための処理等について]
次に、本実施形態に係る、後の撮影で読み出された画像データD中から先の撮影で生じたラグによるオフセット分を排除して後の撮影で得られた画像データD等を修正するための処理等について説明する。また、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1の作用についてもあわせて説明する。
上記の原理では、先の撮影におけるオフセットデータOの読み出し処理と、後の撮影における画像データDの読み出し処理やオフセットデータOの読み出し処理とで、各読み出し処理前に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(連携方式や検出方法1の場合)や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理(検出方法2の場合)がともに同じ周期τ(すなわちτ1或いはτ2)で行われ、電荷蓄積状態がともに同じ継続時間Tcont(すなわちTcont1或いはTcont2)だけ継続される。
そのため、上記(1)式等に示したように非常に容易かつ的確な形で先の撮影のオフセットデータO1から後の撮影のオフセット分Olagを算出することが可能となった。
しかし、例えば図28に示すように、先の撮影が前述した連携方式(図15等参照)で行われ、後の撮影が前述した非連携方式(図19や図23参照)で行われる場合には、連携方式における上記の周期τ1や電荷蓄積状態の継続時間Tcont1が、後の撮影では非連携方式における上記の周期τ2や非連携方式における継続時間Tcont2にそれぞれ変更される。なお、図28や後述する図29における「R」は連携方式において電荷蓄積状態への移行前に各放射線検出素子7のリセット処理のみが行われることを表している。
また、逆に、先の撮影が前述した非連携方式で行われ、後の撮影が前述した連携方式で行われる場合にも、上記の周期τ2や電荷蓄積状態の継続時間Tcont2が、後の撮影では周期τ1や継続時間Tcont1に変更される。
また、先の撮影と後の撮影とがともに連携方式で行われたり、或いはともに非連携方式で行われる場合であっても、周期τ1、τ2や電荷蓄積状態の継続時間Tcont1、Tcont2が変更される場合がある。すなわち、例えば、放射線画像撮影によっては放射線源52(図11や図12参照)からの放射線の照射時間が長くなる場合があるが、そのような場合には、電荷蓄積状態の継続時間Tcont1(図15参照)や継続時間Tcont2(図19や図23参照)を長くするように変更される。
また、放射線源52から照射される放射線の線量が非常に小さいような場合には、非連携方式における放射線の照射開始の検出感度を上げるために、上記の周期τ2(図19や図23参照)を長くして、リークデータdleakの読み出し処理において制御手段22から送信する2回のパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔Tを長くしたり(図18や図19参照)、照射開始検出用の画像データdの読み出し処理において各TFT8をオン状態とする時間ΔT(図22や図23参照)を長くする場合がある。
このように、先の撮影と後の撮影とがともに連携方式で行われたり、或いはともに非連携方式で行われる場合であっても、先の撮影と後の撮影とで、周期τ1、τ2が変更されたり電荷蓄積状態の継続時間Tcont1、Tcont2が変更されたりし得る。
そして、上記のように、先の撮影と後の撮影とで、周期τ1、τ2や電荷蓄積状態の継続時間Tcont1、Tcont2等の撮影に関するパラメーターが変更される場合、上記(1)式等を用いて、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを簡易に算出して、後の撮影で読み出された画像データDを修正する等の処理を行うことができなくなる。
なお、図28を見る限り、上記の周期τ1、τ2や電荷蓄積状態の継続時間Tcont1、Tcont2が変更されても、結果的に実効蓄積時間Tac1(図15参照)や実効蓄積時間Tac2(図19や図23参照)が先の撮影と後の撮影とで同じ時間であれば、撮影に関するパラメーターが変更されても、上記の原理をそのまま適用して、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを簡易に算出することが可能であるように見える。
しかし、図28では明確に示さなかったが、先の撮影と後の撮影とで上記の周期τ1、τ2や電荷蓄積状態の継続時間Tcont1、Tcont2等の撮影に関するパラメーターが変更されると、それによって放射線検出素子7内でのラグの単位時間あたりの発生量α(t)自体が先の撮影と後の撮影とで変わってしまう場合がある。そのため、実効蓄積時間Tac1、Tac2が同じ時間であっても、上記の原理をそのまま適用することができなくなるのである。
上記のように先の撮影と後の撮影とで撮影に関するパラメーターが変更される場合、先の撮影における周期τ(すなわちτ1やτ2。以下同じ。)と電荷蓄積状態の継続時間Tcont(すなわちTcont1やTcont2。以下同じ。)と、後の撮影における周期τと継続時間Tcontとの組み合わせ、すなわち先の撮影における実効蓄積時間Tac(すなわちTac1やTac2。以下同じ。)と後の撮影における実効蓄積時間Tacとの組み合わせに応じて、上記の(1)式等における定数a、bをそれぞれ予め設定しておくように構成することも可能である。
また、定数a、bを、先の撮影における実効蓄積時間Tacと後の撮影における実効蓄積時間Tacとの関数として予め設定しておくことも可能である。
しかし、上記のように構成する場合、先の撮影と後の撮影について生じ得る実効蓄積時間Tacの組み合わせが多岐にわたり、それらについて定数a、bを予め設定したり、定数a、bを先の撮影と後の撮影における各実効蓄積時間Tacの関数として予め設定することは、不可能ではないとしても煩雑な作業になる。しかも、放射線画像撮影装置1内に多数形成されている放射線検出素子7についてそれぞれ上記の作業を行うと、非常に煩雑な作業になる。
そこで、本実施形態では、後の撮影で読み出された画像データD中から先の撮影で生じたラグによるオフセット分を排除して後の撮影で得られた画像データD等を修正することを可能とするために、放射線画像撮影装置1で、以下のような処理を行うようになっている。
本実施形態では、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、先の撮影が行われた後、後の撮影に移行する際に、撮影に関するパラメーターである上記の周期τや電荷蓄積状態の継続時間Tcontの少なくとも一方が変更される場合には、図29に示すように、先の撮影の終了後、後の撮影の開始前に、後の撮影に関するパラメーターに基づいて、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない状態で、各放射線検出素子7からそれぞれ暗画像データOdを読み出す暗画像データOdの読み出し処理を行うようになっている。
すなわち、先の撮影と後の撮影とで周期τや電荷蓄積状態の継続時間Tacといった撮影に関するパラメーターが変更される場合には、上記の原理とは異なり、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを算出するために、先の撮影で読み出されたオフセットデータO1を用いるのではなく、先の撮影と後の撮影との間で、後の撮影に関するパラメーターに基づいてオフセットデータOの読み出し処理のみを行う。
なお、本発明では、先の撮影と後の撮影との間で後の撮影に関するパラメーターに基づいて単独に行われるオフセットデータOの読み出し処理を、画像データDの読み出し処理の直後に行われるオフセットデータOの読み出し処理と区別して、暗画像データOdの読み出し処理という。また、図29では、後の撮影のオフセットデータOの読み出し処理や後の撮影のオフセットデータOに重畳されているオフセット分をOlag_dark等の記載が省略されている。
このように構成すれば、上記のように、先の撮影と後の撮影とで上記の周期τや電荷蓄積状態の継続時間Tcont等の撮影に関するパラメーターが変更されて、放射線検出素子7内でのラグの単位時間あたりの発生量α(t)自体が先の撮影と後の撮影とで変わってしまっても、後の撮影と同じ撮影に関するパラメーターで読み出される暗画像データOdは、後の撮影におけるラグの単位時間あたりの発生量α(t)に基づいて読み出される値となる。
そのため、暗画像データOdと、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagとは、同じ発生量α(t)に基づいて読み出されたり算出されたりする値になるため、これらの間では、上記の原理をそのまま適用することが可能となるのである。
そこで、後の画像処理において、後の撮影で得られた画像データDを修正する際には、上記の原理において、上記のオフセットデータO1(上記(1)式参照)の代わりにこの暗画像データOdを適用した下記(4)式に従って、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを算出することで、ラグによるオフセット分Olagを容易かつ的確に算出することが可能となる。
Olag=Od×a・tb …(4)
その際、上記(4)式における時間tは、暗画像データOdの読み出し処理の際に走査線5のラインLmにオン電圧が印加されてから、後の撮影における画像データDの読み出し処理の際に走査線5の当該ラインLmにオン電圧が印加されるまでの時間とされる。
また、上記(4)式に適用される定数a、bとしては、上記のように、先の撮影における周期τと電荷蓄積状態の継続時間Tcontと、後の撮影における周期τと継続時間Tcontとの全ての組み合わせについてそれぞれ定数a、bを算出しておく煩雑な作業を行う必要はなく、後の撮影における周期τと電荷蓄積状態の継続時間Tcont等の撮影に関するパラメーターに基づいて放射線画像撮影を連続して行う場合の定数a、b、すなわち上記の原理における定数a、bをそのまま用いてラグによるオフセット分Olagを算出することが可能となる。
そのため、後の撮影における周期τと電荷蓄積状態の継続時間Tcont等の撮影に関するパラメーターに基づいて放射線画像撮影を連続して行う場合の定数a、bを予め算出しておけば、先の撮影と後の撮影とで周期τと電荷蓄積状態の継続時間Tcont等の撮影に関するパラメーターが変更される場合であっても、後の撮影に関するパラメーターに基づいて暗画像データOdの読み出し処理を1回行うだけで、読み出された暗画像データOdに基づいてラグによるオフセット分Olagを容易かつ的確に算出することが可能となる。
また、放射線画像撮影装置1側での、後の撮影の画像データDを修正するための処理としては、先の撮影と後の撮影とで周期τと電荷蓄積状態の継続時間Tcont等の撮影に関するパラメーターが変更される場合に、先の撮影と後の撮影との間で暗画像データOdの読み出し処理を行うだけでよい。そのため、後の撮影で得られた画像データDを修正するために必要となる暗画像データOdを、非常に容易かつ的確に取得することが可能となる。
[後の撮影の画像データDを修正するための具体的な処理等について]
以下、放射線画像撮影装置1や、本実施形態における画像処理装置であるコンソール58(以下、画像処理装置58という。)における具体的な処理等について説明する。
なお、以下では、上記の暗画像データOdに基づく、後の撮影で得られた画像データD等の修正処理を画像処理装置58で行うように構成されている場合について説明するが、後の撮影で得られた画像データDやオフセットデータOの修正処理を放射線画像撮影装置1で行い、修正された画像データD等を画像処理装置58に送信するように構成することも可能である。この場合、画像処理装置58では、修正された画像データD等に基づいて放射線画像が生成される。
また、以下では、図29に示したように、先の撮影を連携方式で行い、後の撮影を検出方法1を用いた非連携方式で行う場合を例に挙げて説明するが、上記のように、非連携方式として検出方法2を用いる場合や、先の撮影を非連携方式で行い、後の撮影を連携方式で行う場合、或いは、先の撮影と後の撮影を同じ撮影方式で行う場合に撮影に関するパラメーターを変更する場合等のいずれの場合も同様に説明される。
放射線画像撮影装置1は、先の撮影で画像データDとオフセットデータOをそれぞれ読み出すと、前述したように、読み出した画像データDやオフセットデータOを画像処理装置58に送信する。
画像処理装置58では、先の撮影で得られた画像データDやオフセットデータOには、上記のようなそれ以前の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagは重畳されていないため、通常通りの処理を行う。すなわち、各放射線検出素子7ごとに、画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出し、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って放射線画像を生成する。
また、放射線画像撮影装置1は、上記のようにして先の撮影が終了すると、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するために、前述した1面分のリセット処理Rm(図13等参照)を繰り返して行うように構成することが可能である。また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1のように、バッテリー24を内蔵する装置の場合、バッテリー24の電力の浪費を防止するために、各放射線検出素子7のリセット処理やデータの読み出し処理等を行わない、いわゆるスタンバイ状態に移行するように構成される場合もある。
そして、放射線画像撮影装置1の制御手段22は、コンソール58から、次の放射線画像撮影に向けて起動信号を受信すると、上記のようにスタンバイ状態に移行している場合には、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するために、前述した1面分のリセット処理Rmを所定回数行う。
そして、制御手段22は、コンソール58から送信されてきた情報に基づいて、先の撮影と後の撮影とで、撮影に関するパラメーターである上記の周期τや電荷蓄積状態の継続時間Tcontが変更されているか否かを判断し、それらの少なくとも一方が変更されている場合には、図29に示したように、後の撮影を開始する前に、後の撮影に関するパラメーターに基づいて、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない状態で、各放射線検出素子7からそれぞれ暗画像データOdを読み出す暗画像データOdの読み出し処理を行う。
また、それとともに、後の画像処理において上記(4)式の演算を行う際に、暗画像データOdの読み出し処理の際に走査線5のラインLmにオン電圧が印加されてから後の撮影における画像データDの読み出し処理の際に走査線5の当該ラインLmにオン電圧が印加されるまでの時間tの情報が必要となるため、暗画像データOdの読み出し処理の際にゲートドライバー15bから走査線5にオン電圧が印加されると同時に時間tのカウントを開始する。
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、各放射線検出素子7ごとの暗画像データOdを読み出すと、コンソール58から送信されてきた情報によって後の撮影が非連携方式(検出方法2)で行われることが分かっているため、続いて、各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理とを交互に繰り返し行って放射線の照射開始の検出処理を行う状態に移行する。
なお、各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理とを交互に行う前に、1面分のリセット処理Rmを所定回数分行うように構成することも可能である。また、暗画像データOdの読み出し処理後に暗画像データOdをすぐに画像処理装置58に送信するように構成することも可能であるが、暗画像データOdの送信中に放射線の照射が開始されると、検出処理や暗画像データOdの送信処理に悪影響が及ぶ虞れがある。そのため、本実施形態では、後述するように、暗画像データOdは後で送信されるようになっている。
放射線画像撮影装置1の制御手段22は、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線画の照射が開始されたことを検出すると、前述したように電荷蓄積状態に移行し、設定された継続時間Tcont2(図19参照)だけ電荷蓄積状態を継続した後で、後の撮影における本画像としての画像データDの読み出し処理を行う。
また、それとともに、暗画像データOdの読み出し処理の際に各走査線5にオン電圧が印加されてから後の撮影における画像データDの読み出し処理の際に各走査線5にオン電圧が印加されるまでの時間tをメモリーに記憶させる。
そして、それに引き続いて、画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じ処理シーケンスを繰り返して、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない状態で、後の撮影におけるオフセットデータOの読み出し処理(図29では図示を省略。)を行う。
その際、暗画像データOdの読み出し処理の際に各走査線5にオン電圧が印加されてから後の撮影におけるオフセットデータOの読み出し処理の際に各走査線5にオン電圧が印加されるまでの時間tOをメモリーに記憶させる。
そして、制御手段22は、オフセットデータOの読み出し処理を終了すると、各放射線検出素子7ごとに画像データDとオフセットデータOを送信し、それとともに、暗画像データOdと上記の時間t、tOの情報も画像処理装置58に送信する。
画像処理装置58は、放射線画像撮影装置1から後の撮影に関する画像データDとオフセットデータO、暗画像データOd、時間t、tOの情報が送信されてくると、放射線画像の生成処理の前処理として、画像データD等の中から、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olag等を排除する処理を行う。
画像処理装置58では、当該放射線画像撮影装置1の各放射線検出素子7、また、放射線画像撮影装置1が複数存在する場合には各放射線画像撮影装置7の各放射線検出素子7について、それぞれ上記(4)式の演算に用いる定数a、bが、予め記憶手段59(図11や図12参照)等に保存されている。
なお、その際、定数a、bは、上記の連携方式における周期τ1や電荷蓄積状態の継続時間Tcont1(図15参照)や、上記の非連携方式における周期τ2や電荷蓄積状態の継続時間Tcont2(図19や図23等参照)について、それぞれ上記の原理に基づいて予め実験的に求められている。また、画像処理装置58が上記の定数a、bを誤りなく適用することができるように、放射線画像撮影装置1から後の撮影をどのような撮影方式で行ったかを画像処理装置58に通知するように構成することも可能である。
そして、画像処理装置58は、画像データD等を送信してきた放射線画像撮影装置1の各放射線検出素子7について、上記(4)式の演算に用いる定数a、bを記憶手段59等から読み出す。そして、まず、上記(4)式に暗画像データOdと上記の時間tを代入して、後の撮影で読み出された画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを算出する。
続いて、画像処理装置58は、後の撮影で読み出されたオフセットデータOに重畳されている、先の撮影で生じたラフによるオフセット分Olag_darkを算出する。ラグによるオフセット分Olag_darkは、上記の原理における上記(2)式と同様だが、先の撮影で読み出されたオフセットデータO1ではなく暗画像データOdを用いて、
Olag_dark=Od×a・tO b …(5)
を演算することにより算出される。
そして、画像処理装置58は、上記の原理における上記(3)式と同様に、下記(6)式に従って、修正された画像データD(すなわちD−Olag)から修正されたオフセットデータO(すなわちO−Olag_dark)を減算して、各放射線検出素子7ごとの真の画像データD*を算出する。
D*=(D−Olag)−(O−Olag_dark) …(6)
画像処理装置58は、このようにして、後の撮影で得られた画像データD等を修正し、修正した画像データD等に基づいて各放射線検出素子7ごとに真の画像データD*を算出する。そして、算出した真の画像データD*に対してゲイン補正や欠陥画素補正、撮影部位に応じた階調処理等の精密な画像処理を行って、放射線画像を生成するようになっている。
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1によれば、放射線画像撮影装置1の制御手段は、先の撮影が行われた後、後の撮影に移行する際に、後の撮影の画像データDの読み出し処理の前の各放射線検出素子7のリセット処理や照射開始検出用の画像データdの読み出し処理で走査駆動手段15から各走査線5にオン電圧を順次印加する際の各走査線5にオン電圧を印加する周期τや、画像データDの読み出し処理の前の電荷蓄積状態の継続時間Tcontの少なくとも一方が変更される場合には、先の撮影と後の撮影との間で、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されない状態で、後の撮影と同一の周期τや電荷蓄積状態の継続時間Tcontの条件下で、各放射線検出素子7からそれぞれ暗画像データOdを読み出す。
そのため、後の撮影とは上記の周期τや電荷蓄積状態の継続時間Tcontが異なる条件下で行われた先の撮影で得られたオフセットデータO1等を、後の撮影における周期τや継続時間Tcont等の条件に適合するように換算する等の必ずしも容易でない方法で、後の撮影で読み出される画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを算出する必要がなくなる。
そして、放射線画像撮影装置1で、先の撮影と後の撮影との間に、後の撮影と同一の条件下でオフセットデータOに相当する暗画像データOdを取得することで、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを、暗画像データOdに基づいて容易に算出することが可能となる。
そのため、本実施形態に係る放射線画像撮影システム50や放射線画像撮影装置1によれば、先の撮影と後の撮影とで、上記の周期τや電荷蓄積状態の継続時間Tcont等の撮影に関するパラメーターが変更される場合であっても、後の撮影で読み出された画像データDに重畳されている、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを容易かつ的確に算出することが可能となる。
そして、画像処理装置58や放射線画像撮影装置1の制御手段22で、後の撮影で読み出された画像データDから、上記のようにして算出した先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを減算することで、後の撮影で読み出された画像データDから、先の撮影で生じたラグによるオフセット分Olagを容易かつ的確に排除することが可能となる。
なお、放射線画像撮影が、連携方式や非連携方式等の撮影方式や、上記の周期τや電荷蓄積状態の継続時間Tcont等の撮影に関するパラメーターを変更しながら、複数回連続して行われる場合にも、本発明を適用することが可能である。
すなわち、1回目の撮影の後、2回目の撮影に移行する前に、暗画像データOd(1)を読み出す。この暗画像データOd(1)には、1回目の撮影で生じたラグによるオフセット分の情報が含まれている。そして、2回目の撮影(本実施形態における先の撮影に相当する。)の後、3回目の撮影(本実施形態における後の撮影に相当する。)に移行する前に、暗画像データOd(2)を読み出す。この暗画像データOd(2)には、1回目の撮影で生じたラグによるオフセット分と2回目の撮影で生じたラグによるオフセット分の情報とが含まれている。
そして、3回目の撮影で得られた画像データDやオフセットデータOには、1回目の撮影で生じたラグによるオフセット分と2回目の撮影で生じたラグによるオフセット分とが重畳されているため、上記の暗画像データOd(2)を用いて、本実施形態と同様にして3回目の撮影で得られた画像データD等を容易かつ的確に修正することが可能となる。
このようにして、先の撮影が終了した後、後の撮影を行う前にそれぞれ暗画像データOdの読み出し処理を行うように構成すれば、読み出した暗画像データOd(k)に基づいて、k回目の撮影(すなわち後の撮影)で得られた画像データDやオフセットデータOを容易かつ的確に修正することが可能となる。
なお、本発明が上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜変更可能であることは言うまでもない。