JP2011254734A - 潜熱蓄熱パネル、それを用いた蓄熱壁、および温室 - Google Patents

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Abstract

【構成】 潜熱蓄熱パネル10は、太陽熱を利用した温室(30)を温度制御するために用いられる。パネル本体12は、合成樹脂からなる平板状の容器であり、その内部には、潜熱蓄熱材が封入される。パネル本体12の上下方向の各端18,20には、互いに連結可能な形状に形成されている連結部20,24が形成される。このため、パネル10を上下に並べて配置し、一方のパネル10の連結部20と、他方のパネル10の連結部24とを連結させることによって、それらのパネル10を上下方向に連結させることが可能である。
【効果】 設置および撤去が簡単に行える蓄熱壁を構築することができる。
【選択図】図1

Description

この発明は、潜熱蓄熱パネル、それを用いた蓄熱壁、および温室に関し、特にたとえば、潜熱蓄熱材が相変化に伴って吸収または放出する潜熱を利用した、潜熱蓄熱パネル、それを用いた蓄熱壁、および温室に関する。
従来、ビニールハウス等の温室を温度制御する目的で、温室内に潜熱蓄熱材(PCM:Phase Change Material)を内装した蓄熱壁を設置する技術が公知である。
たとえば、特許文献1には、南側の壁面を全光入射型の壁体にして、入射量を最大にするとともに、北側の壁面を蓄熱構造体(蓄熱壁)にした蓄熱温室が開示されている。そして、この蓄熱構造体が、昼間は温室熱によって貯熱作用を、また夜間は温室に対して放熱作用を繰り返すことにより、温室全体としての保温性を向上させている。
特開平4−131020[A01G 9/24]
しかしながら、特許文献1の技術では、温室を新設する際にその壁面を蓄熱構造体として施工しておく必要があり、既存の温室に追加で設置することはできない、あるいはできたとしても、大掛かりな工事が必要である。さらに、たとえば夏には壁を撤去して通風乾燥、土壌殺菌などを行うことがあるが、蓄熱構造体が固定的な壁面であるため、その作業も困難である。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、潜熱蓄熱パネル、それを用いた蓄熱壁、および温室を提供することである。
この発明の他の目的は、蓄熱壁の設置や撤去を簡単に行うことができる、潜熱蓄熱パネル、それを用いた蓄熱壁、および温室を提供することである。
本発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、本発明を何ら限定するものではない。
第1の発明は、第1方向において、厚み方向と直交する方向に第1および第2端を有し、内部に潜熱蓄熱材が封入される板状のパネル本体、パネル本体内に潜熱蓄熱材を注入するための注入部、および第1および第2端にそれぞれ形成され、互いに連結可能な形状にされている第1および第2連結部を備える、潜熱蓄熱パネルである。
第1の発明では、潜熱蓄熱パネル(10)は、潜熱蓄熱材を封入したパネル本体(12)を含み、潜熱蓄熱材が相変化に伴って吸収または放出する潜熱を利用して、たとえば温室(30)内の昼夜の温度変動を抑える。パネル本体は、平板状の容器であり、実施例では、その上下方向の各端(18,22)に、互いに連結可能な形状にされている連結部(20,24)が形成される。そして、パネルどうしを上下に並べて配置し、一方のパネルの連結部(20)と、他方のパネルの連結部(24)とを連結させることによって、パネルどうしを上下方向に連結させることが可能である。また、他の実施例では、パネル本体の横方向の各端(34,38)に、互いに連結可能な形状にされている連結部(36,40)が形成される。そして、パネルどうしを左右に並べて配置し、一方のパネルの連結部(36)と、他方のパネルの連結部(40)とを連結させることによって、パネルどうしを横方向に連結させることができる。
第1の発明によれば、パネルどうしを連結させることで、温室に適した蓄熱壁を簡単に設けることができ、しかもパネルを取り外して解体するだけでよいので、蓄熱壁の撤去にも手間がかからない。
第2の発明は、第1の発明に従属し、パネル本体は、第1方向とは異なる第2方向において、厚み方向と直交する方向に第3および第4端を有し、第3および第4端にそれぞれ形成され、互いに連結可能な形状にされている第3および第4連結部をさらに備える。
第2の発明では、パネル本体(12)の上下方向の各端(18,20)には、互いに連結可能な形状されている連結部(20,24)が形成され、さらにそのパネル本体の横方向の各端(34,38)には、互いに連結可能な形状にされている連結部(36,40)が形成される。
第2の発明によれば、パネルどうしが上下方向にも横方向にも連結可能であるため、強度の高い蓄熱壁を構築することができる。
第3の発明は、第1または2の発明に従属し、パネル本体の内部に形成され、当該パネル本体内を上下方向に仕切る少なくとも1つの仕切り部をさらに備え、仕切り部によって仕切られた空間ごとに注入部が形成される。
第3の発明では、パネル本体(12)の内部には、パネル本体内をたとえば上下方向に等間隔に仕切る仕切り部(42)が形成される。そして、仕切り部によって仕切られた空間ごとに注入部(28)が形成される。
第3の発明によれば、パネル本体内の全体に均等に潜熱蓄熱材を充填できる。
第4の発明は、第1ないし3のいずれかの発明に従属し、第1連結部は、第1端から第2端と反対側に突出する突起を含み、第2連結部は、第2端を突起と嵌合可能な形状に窪ませた窪みを含み、突起と窪みとを嵌合させたときに、それらの嵌合部分の内側に注入部が収容される。
第4の発明では、パネル本体(12)の一端(34)に形成される連結部(36)は、突起であり、パネル本体(12)の他端(38)に形成される連結部(40)は、突起と嵌合可能な形状の窪みである。そして、一方のパネル(10)の突起と他方のパネルの窪みとを嵌合させたときに、それらの嵌合部分の内側に注入部(28)が収容される。
第4の発明によれば、注入部から万が一潜熱蓄熱材が漏れてしまった場合でも、その潜熱蓄熱材の外部への流出が生じにくい。
第5の発明は、第1の発明の潜熱蓄熱パネルを用いて構築した蓄熱壁であって、潜熱蓄熱パネルの第1連結部を他の潜熱蓄熱パネルの第2連結部に連結した、蓄熱壁である。
第5の発明では、温室(30)内の土壌面上に配置した一方のパネル(10)の連結部(20)に、他方のパネルの連結部(24)を連結させることによって、パネルどうしが上下方向または横方向に連結され、これによって、蓄熱壁(32)が構築される。
第6の発明は、第2の発明の潜熱蓄熱パネルを用いて構築した蓄熱壁であって、潜熱蓄熱パネルの第1連結部を他の潜熱蓄熱パネルの第2連結部に連結するとともに、そのうちの少なくとも1つの潜熱蓄熱パネルの第3連結部をさらに他の潜熱蓄熱パネルの第4連結部に連結した、蓄熱壁である。
第6の発明では、温室(30)内の土壌面上に配置した第1パネル(10,10a)の連結部(20)を、第2パネル(10,10b)の連結部(24)に連結させるとともに、第1パネルの連結部(36)を、第3パネル(10,10c)の連結部(40)に連結させることによって、パネルどうしが上下方向ならびに横方向に連結され、これによって蓄熱壁(32)が構築される。
第7の発明は、東側壁面、西側壁面、南側壁面および北側壁面を有し、内部に第5または6の発明の蓄熱壁が設置された温室であって、蓄熱壁は、北側壁面の内側に設置される第1蓄熱壁、および東側壁面および西側壁面のそれぞれの内側に設置される第2蓄熱壁を含み、第2蓄熱壁の高さを北側壁面から南側壁面に向けて低くなるようにした、温室である。
第7の発明では、温室(30)は、東側壁面(30b)、西側壁面(30c)、南側壁面(30d)、および北側壁面(30a)を有し、その内部には、北側壁面を中心に面積を大きくした蓄熱壁(32)が構築されている。たとえば、北側壁面の内側の土壌面上には、北側壁面に相当する高さを有する第1蓄熱壁が設置される。また、たとえば、温室の東側壁面および西側壁面の内側の土壌面上には、北側壁面から南側壁面に向けて高さが階段状に低くなるようにされた第2蓄熱壁が設置される。
第7の発明によれば、日当たりが悪く夜間の温度低下が著しい北側壁面の付近の作物に対しても、十分な保温効果を与えることができる。
この発明によれば、パネルどうしを連結させて蓄熱壁を構築するようにしたため、新設される温室のみならず、既存の温室に対しても、その温室に適した蓄熱壁を簡単に設けることができる。
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
この発明の一実施例の潜熱蓄熱パネルを示す斜視図である。 図1の潜熱蓄熱パネルを示す平面図である。 (a)は、図1の潜熱蓄熱パネルを示す上面図であり、(b)は、図1の潜熱蓄熱パネルを示す側面図である。 図1のIV−IV線における潜熱蓄熱パネルの断面を示す断面図である。 図1の潜熱蓄熱パネルどうしを上下方向に連結させる様子を示す図解図である。 図1の潜熱蓄熱パネルを用いて温室内に蓄熱壁を構築する方法の一例を示す図解図である。 図1の潜熱蓄熱パネルを用いて温室内に蓄熱体を構成する方法の他の一例を示す図解図である。 図1の潜熱蓄熱パネルを用いて温室内に蓄熱体を構成する方法のさらに他の一例を示す図解図である。 この発明のさらに別の実施例の潜熱蓄熱パネルを示す斜視図である。 図9の潜熱蓄熱パネルを示す平面図である。 (a)は、図9の潜熱蓄熱パネルを示す上面図であり、(b)は、図9の潜熱蓄熱パネルを示す側面図である。 図1の潜熱蓄熱パネルどうしを横方向に連結させる様子を示す図解図である。 この発明のさらに別の実施例の潜熱蓄熱パネルを示す斜視図である。 図13の潜熱蓄熱パネルどうしを上下方向ならびに横方向に連結させる様子組み合わせる様子を示す図解図である。 この発明のさらに別の実施例の潜熱蓄熱パネルを示す斜視図である。
図1を参照して、この発明の一実施例である潜熱蓄熱パネル(以下、単に「パネル」という。)10は、潜熱蓄熱材を封入したパネル本体12を含み、ビニールハウスやガラス室などの太陽熱を利用した温室内に設置される。そして、潜熱蓄熱材が相変化に伴って吸収または放出する潜熱を利用して、たとえば日照中に太陽熱を受けて潜熱蓄熱材を溶融、蓄熱しておき、夜間にその熱を(温室内へ)輻射および自然滞流により放出することによって、温室内の昼夜の温度変動を抑える。
なお、潜熱蓄熱材としては、従来公知のものを適宜用いるとよく、たとえば塩化カルシウム6水和塩および硫酸ナトリウム10水和塩などの無機水和物を好適に用いることができる。この潜熱蓄熱材には、所望の相変化温度に調整するための融点調整剤が適宜添加される。潜熱蓄熱材の相変化温度は、設置環境において求められる温度に適宜調整され、特に限定されないが、温室に設置される場合には、10−25℃、好ましくは15−20℃に調整される。
図2および図3に示すように、パネル本体12は、高密度ポリエチレンなどの合成樹脂からなる平板状の容器であり、厚み方向に対向する2枚の主面14を有している。
パネル本体12の寸法は、作業者が持ち運び可能な程度の大きさに設定され、その上下方向の長さは、たとえば300−600mmに設定され、その左右(横)方向の長さは、たとえば300−600mmに設定される。また、パネル本体12の厚みは、パネル本体12の大きさや材質などに応じて適宜設定されるが、パネル本体12内に潜熱蓄熱材が封入された状態で自立可能となるように、たとえば12−27mmに設定される。
パネル本体12には、主面14どうしを連結する1または複数(この実施例では28つ)の補強部16が設けられる。補強部16は、図4に示すように、たとえばパネル本体12を厚み方向に貫通する管状に形成され、封入した潜熱蓄熱材が固形に相変化して膨張或いは収縮したときや、自重によって膨張したときなどに、主面14が湾曲変形してしまうことを防止するとともに、自身の上に積層されたパネル10の荷重に耐え得るようにパネル本体12を補強する。
また、パネル本体12の上下方向の各端18,22には、互いに連結可能な形状にされている連結部20,24が形成される。
具体的には、図2および図3(a)に示すように、パネル本体12の上端(上端面)18には、厚み方向の一方側と他方側とを一定間隔で交互に突出させた形状の連結部20が形成される。
また、パネル本体12の下端(下端面)22には、パネル本体12の上端18の連結部20と互い違いになるように、厚み方向の一方側と他方側とを一定間隔で交互に突出させた形状の連結部24が形成される。
これらの連結部20,24には、突出している部分の内向きの面に、面圧(接触圧)を大きくして他のパネル10の連結部20,24との密着性を向上させるための弾性材26が設けられている。
そして、図5に示すように、パネル10を上下に並べて配置し、一方のパネル10の下端22に形成されている連結部24を、他方のパネル10の上端18に形成されている連結部20に嵌合させることによって、パネル10どうしを上下方向に連結させることが可能である。
さらに、パネル本体12の横方向の端面には、図2および図3(b)に示すように、パネル本体12内に潜熱蓄熱材を充填するための注入部28が形成される。注入部28は、たとえば円形等の開口であり、この開口がパネル本体12内に潜熱蓄熱材を充填した後にキャップなどを熱融着して塞がれる。
このようなパネル10は、蓄熱壁(蓄熱構造体)の構成材として用いられ、複数のパネル10を上下方向に連結させたり、横方向に並べて配置したりすることによって、蓄熱壁を構築することが可能である。以下、このパネル10を用いて、図6に示す温室30内に蓄熱壁32を構築する方法の一例を説明する。
先ず、温室30の北側壁面30aの内側に第1の蓄熱壁を形成する。具体的には、温室30の北側壁面30aに沿ってその内側(つまり、室内側)の土壌面上に、左右に隙間ができないようにパネル10を並べて配置する。そして、用意しておいた別のパネル10を各パネル10の上に連結させ、第1の蓄熱壁の高さが北側壁面30aに相当する高さになるまで、上方へのパネル10の連結作業を繰り返す。
次に、温室30の東側壁面30bおよび西側壁面30cの内側に第2の蓄熱壁を形成する。具体的には、温室30の東側壁面30bおよび西側壁面30cに沿ってその内側の土壌面上に、左右に隙間ができないようにパネル10を並べて配置する。そして、用意しておいた別のパネル10を各パネル10の上に必要に応じて連結させ、第2の蓄熱壁の高さが北側壁面30aから南側壁面30dに向けて階段状に低くなるようにする。
こうすることにより、温室30内に北側壁面30aを中心に面積を大きくした蓄熱壁32が構築されるので、日当たりが悪く夜間の温度低下が著しい北側壁面30aの付近の作物に対しても、北側壁面30a、東側壁面30b、および西側壁面30cの3方向から夜間にパネル10が放熱することで、十分な保温効果を与えることができる。
ただし、予め上下方向に連結させて任意の高さにしておいたパネル10(の集合体)を温室30内の土壌面上に並べるようにしてもよい。
また、このような蓄熱壁32は、その高さを作物の背丈に合わせて調整することが可能である。具体的には、図7(a)に示すように、作物の背丈が低いときには、その背丈に合わせた低い蓄熱壁32を構築しておき、図7(b)に示すように、作物が成長してその背丈が高くなってくれば、その伸びた分だけパネル10を上に連結させて、蓄熱壁32を高くするとよい。こうすることにより、生育初期の段階で作物への日照不足を防ぐことができ、生育に必要な最適な温度を生育の段階に応じて調整することが可能になる。
さらに、たとえば作物が生育の初期で背丈が低いときには、壁面に配設したパネル10のみの放熱では十分な保温効果が得にくいが、その分作物の葉の茂りが少なく太陽光が土壌面にも当たるため、図8(a)に示すように、パネル10を土壌面上の作物の底部に設置して、土壌面に当たる太陽光を受けて昼間に蓄熱させておき、夜間にその熱を作物の底部に放熱させることも可能である。作物が成長して葉が生い茂り、土壌面に光が当たらなくなれば、図8(b)に示すように、そのパネル10を移動させて、作物の伸びた背丈に合わせて壁面のパネル10の上に連結させればよい。こうすることにより、背丈が低い作物に対しても十分な保温効果を与えることができる。
以上のように、この実施例では、パネル本体12の上下方向の各端18,22に連結部20,24を形成して、パネル10どうしを連結可能にした。このため、パネル10どうしを連結させ、また、それを必要に応じて単体のパネル10と組み合わせることで、温室の環境条件、温室内での栽培作物や方法などの様々な条件に適した蓄熱壁を構築することが可能である。したがって、新設される温室のみならず、既存の温室に対しても、その温室に適した蓄熱壁を簡単に設けることができ、しかもパネル10を取り外して解体するだけでよいので、蓄熱壁の撤去にも手間がかからない。
また、特許文献1の技術のように、蓄熱構造体を設置する場所が限定的で集中していると、東西南面の断熱性がないので熱が逃げやすく、温室全体に熱を分布させるためには、別途風力等の動力によって熱を循環させる必要があったが、この実施例によれば、必要に応じて温室内の任意の場所に蓄熱壁を構築することができるため、熱を循環させる設備等を別途設ける必要がない。したがって、温室の温度制御を行うための設備を簡素化でき、その上、省エネ効果も期待できる。
さらに、この実施例では、パネル10どうしを上下方向に連結させて蓄熱壁を構築するため、パネル10どうしの上下の隙間から外部(つまり、室外)へ熱が逃げることがなく、またその隙間からの冷気の侵入を遮断することもできる。つまり、このような蓄熱壁は断熱効果を発揮するので、この実施例によれば、断熱用のシート等を別途設けなくても、温室全体の保温性を向上させることができる。
また、この実施例では、蓄熱壁の構成材としてパネル10を利用するのみならず、パネル10を単体で蓄熱体として利用することが可能である。その上、パネル本体12が自立可能となる所定の厚みを有していることにより、パネル10を単体で温室内の土壌面上に安定して直立させることも可能である。つまり、この実施例のパネル10は、使い勝手が良く、実用性に優れる。
しかも、パネル本体12の厚みを大きくすることで、パネル10の縦横の寸法を持ち運び可能な程度に小さく設定していても、一定以上の量の潜熱蓄熱材を充填することができる。したがって、この実施例によれば、パネル10の蓄熱性能を低下させることなく、小型化が図られる。
なお、この実施例では、パネル本体12の上下方向の各端18,22に連結部20,24が形成されて、パネル10どうしが上下方向に連結可能にされたが、これに限定される必要はない。たとえば、このパネル10を90°回転させて使用するのであれば、パネル本体12の上下方向の各端18,22が横方向の端となって、パネル10どうしは横方向に連結されることとなる。つまり、この実施例では、あくまでパネル本体12の厚み方向と直交する方向のうちの特定方向の各端に、互いに連結可能な形状にされた連結部が形成されているに過ぎず、パネル10どうしを連結可能な方向は、上述した特定方向に応じて適宜変わり得る。また、上下方向に連結可能にされたパネル10と、当該パネル10を90°回転させて横方向に連結可能にしたものとを適宜組み合わせることによって蓄熱壁を構築してもよく、さらに、上下方向に連結可能にされたパネル10と、後に詳細を説明するような、横方向に連結可能にされた別のパネル10とを適宜組み合わせることによって蓄熱壁を構築してもよい。
また、この実施例では、温室内の土壌面上に垂直自立させたパネル10の上に他のパネル10を連結させたが、これに限定される必要はない。たとえば、パネル10を上下方向に連結させて蓄熱壁をより高くする場合には、その分だけ蓄熱壁の安定が悪くなるので、底部に位置するパネル10を支持具等を用いて支持するようにしてもよい。また、図示は省略するが、蓄熱壁の外形に相当させたフレームを組んで、そのフレームの内側でをパネル10どうしを上下方向に連結させたり、横方向に並べて配置したりするようにしてもよい。
図9に示すこの発明の他の一実施例であるパネル10では、パネル本体12の横方向の各端34,38に、互いに連結可能な形状にされている連結部36,40が形成される。以下、図1に示すパネル10と共通する部分については同じ番号を付して、重複する説明は省略する。
図10および図11(a)に示すように、パネル本体12の横方向の一端34には、連結部36として、パネル本体12の厚み方向の中央部を突出させた突起が形成される。突起は、パネル本体12の上下方向の全長に亘って延び、その上下方向の略中央部のやや窪んだ位置には、図10および図11(b)に示すように、パネル本体12内に潜熱蓄熱材を充填するための注入部28が形成されている。
また、図10および図11(a)に示すように、パネル本体12の横方向の他端38には、連結部40として、パネル本体12の厚み方向の中央部を突起と嵌合可能な形状に窪ませた窪みが形成される。
そして、図12に示すように、パネル10を左右に並べて配置して、一方のパネル10の横方向の一端34の連結部36を、他方のパネル10の横方向の他端38の連結部40に嵌合させることによって、パネル10どうしを横方向に連結させることが可能である。
この実施例では、パネル本体12の横方向の各端34,38に連結部36,40を形成して、パネル10どうしを連結可能にしたため、図1の実施例と同じように、温室の環境条件、温室内での栽培作物や方法などの様々な条件に適した蓄熱壁を構築することができる。したがって、新設される温室のみならず、既存の温室に対しても、その温室に適した蓄熱壁を簡単に設けることができ、しかもパネル10を取り外して解体するだけでよいので、蓄熱壁の撤去にも手間がかからない。
さらに、パネル10どうしの左右の隙間から外部(つまり、室外)へ熱が逃げることがなく、またその隙間からの冷気の侵入を遮断することもできるため、この実施例においても、図1の実施例と同じように、断熱用のシート等を別途設けなくても、温室全体の保温性を向上させることができる。
さらに、この実施例によれば、パネル10の突起(連結部36)と、他のパネル10の窪み(連結部40)とを嵌合させたときに、それらの嵌合部分の内側に注入部28が収容される。つまり、注入部28がパネル10の表面から隠れる位置に収容される。また、突起(連結部36)と窪み(連結部40)との間に隙間も生じない。したがって、注入部28から万が一潜熱蓄熱材が漏れてしまった場合でも、その潜熱蓄熱材の外部への流出が生じにくい。
さらにまた、この実施例では、パネル10どうしの嵌合構造が突起(連結部36)と窪み(連結部40)とを嵌合させるという単純なものであり、一方のパネル10に対して他方のパネル10を上下方向に落とし込みすることによって、それらのパネル10を横方向に連結させることが可能である。したがって、たとえば、蓄熱壁の外形に相当させたフレームを組んで、そのフレームの内側でパネル10どうしを横方向に連結させたり、上下方向に並べて配置したりする場合であっても、フレーム内にパネル10を落とし込みすることによって、パネル10どうしを簡単に横方向に連結させることができる。
なお、この実施例では、パネル本体12の横方向の各端34,38に連結部36,40が形成され、パネル10どうしが横方向に連結可能にされたが、これに限定される必要はない。図1の実施例のパネル10と同じように、この実施例では、あくまでパネル本体12の厚み方向と直交する方向のうちの特定方向の各端に、互いに連結可能な形状にされた連結部が形成されているに過ぎず、パネル10どうしを連結可能な方向は、上述した特定方向に応じて適宜変わり得る。
図13に示すこの発明のさらに他の一実施例であるパネル10では、パネル本体12の上下方向の各端18,22に、互いに連結可能な形状にされた連結部20,24が形成されるとともに、パネル本体12の横方向の各端34,38に互いに連結可能な形状にされた連結部36,40が形成される。以下、図1に示すパネル10と共通する部分については同じ番号を付して、重複する説明は省略する。
このようなパネル10は、図14に示すように、パネル10(第1パネル10a、第2パネル10b、第3パネル10c)を用意し、第1パネル10aの下端22の連結部24を、第2パネル10bの上端18の連結部20に嵌合させるとともに、第1パネル10aの横方向の一端34の連結部36を、第3パネル10cの横方向の他端38の連結部40に嵌合させることによって、第1パネル10aと第2パネル10bとを上下方向に、また第1パネル10aと第3パネル10cとを横方向に連結させることが可能である。
この実施例によれば、パネル本体12の上下方向の各端18,22に連結部20,24を形成して、パネル10どうしを上下方向に連結可能にするとともに、そのパネル本体12の横方向の各端34,38に連結部36,40を形成して、パネル10どうしを横方向に連結可能にした。つまり、パネル10どうしが上下方向にも横方向にも連結可能であるため、図1および図9の実施例のパネル10と比較して、強度の高い蓄熱壁を構築することができる。したがって、たとえば地震動等によって外力が蓄熱壁に作用しても、蓄熱壁が解体されない。
さらに、パネル10どうしの上下左右の隙間から外部(つまり、室外)へ熱が逃げることがなく、またその隙間からの冷気の侵入を遮断することもできるため、図1および図9の実施例のパネル10と比較して、蓄熱壁32の断熱効果を向上させることが可能である。したがって、温室全体の保温性をより高めることができる。
図15に示すこの発明のさらに他の一実施例であるパネル10は、パネル本体12の内部に仕切り部42が設けられる。以下、図1に示すパネル10と共通する部分については同じ番号を付して、重複する説明は省略する。
図15に示すように、パネル本体12の内部には、1または複数(この実施例では3つ)の仕切り部42が形成される。仕切り部42は、パネル本体12の横(左右)方向に延びる板状体であり、パネル本体12内を上下方向にたとえば等間隔に仕切る。そして、そのパネル本体12の横方向の一端(或いは、他端)には、仕切り部42によって仕切られた空間ごとに注入部28が形成される。
ここで、注入部28から注入された潜熱蓄熱材はパネル本体12内の下端部から充満していくので、パネル本体12内の上端部まで潜熱蓄熱材を充填することが難しく、上端部にはどうしても潜熱蓄熱材が充填されていない空気層が生じてしまうため、パネル10の蓄熱性能が自身の下端側と比較して上端側で劣ってしまう。
しかしながら、この実施例によれば、パネル本体内12の仕切り部42によって仕切られた空間ごとに注入部28から潜熱蓄熱材を充填することにより、パネル本体12内の全体に均等に潜熱蓄熱材を充填することができる。したがって、パネル10は自身の上端側と下端側とで均等に蓄熱性能を発揮することができる。
ただし、図15では、図1の実施例におけるパネル10によって図示したが、図9および図13の実施例におけるパネル10でも同様である。
なお、上述の実施例では、パネル本体12を合成樹脂によって形成したが、パネル本体12の材質は特に限定されない。アルミニウムやステンレス等の一定の強度を有する金属によってパネル本体12を形成することもできる。ただし、耐食性、耐薬品性、コストおよび重量などを考慮すると、高密度ポリエチレンやポリプロプピレン等の合成樹脂を用いることが好ましい。
さらに、上述の実施例では、一方のパネル10の連結部と他方のパネル10の連結部とを嵌合させることによって、それらのパネル10を上下方向或いは横方向に連結させたが、これに限定される必要はない。特殊な工具などを使用せずにパネル10どうしを簡単に連結させることができるのであれば、嵌合のみならず、係止、係合、ボルト締めなどの適宜な連結構造を採用することができる。
さらに、潜熱蓄熱材に黒色の着色剤(染料、顔料など)を添加してもよい。たとえば、透明色(半透明、有色透明、および無色透明を含む。)のパネル本体12内に黒色の潜熱蓄熱材を充填すれば、潜熱蓄熱材に直接太陽光線が吸収されるため、パネル10の蓄熱効率を向上させることが可能である。
さらにまた、パネル10の設置する高さ位置に応じて、パネル本体12内に相変化温度が異なる潜熱蓄熱材を封入してもよい。たとえば、暖かい空気は上昇し、かつ冷たい空気は下降する原理を利用した一例を挙げると、複数のパネル10を上下方向に連結させるときに、上部に配設されるパネル10に、下部に配設されるパネル10よりも相変化温度が高い潜熱蓄熱材を封入しておけば、下部に配設されるパネル10においては低めの温度の蓄熱効率を高めることができ、また上部に配設されるパネル10においては高めの温度の蓄熱効率が高めることができる。これにより、蓄熱壁がより優れた蓄熱性能を発揮することができる。
また、上述の実施例では、温室内にパネル10を設置して、昼間の高気温時に空気熱を蓄熱し、夜間の低気温時に放熱するようにしたが、パネルの設置場所および使用方法はこれに限定されない。たとえば、住宅内に蓄熱壁を構築し、安価な深夜電力を用いて発熱させたヒーターからの熱を潜熱蓄熱材に蓄熱し、昼間にヒーターの発熱を停止して潜熱蓄熱材から放熱させる暖房器具として用いることもできる。
なお、この実施例における「上下方向」或いは「左右(横)方向」とは、パネル10の上方や下方、或いはパネル10の左方や右方に相当する方向を意味しており、温室を設置する土壌面に微量の勾配がある場合や、温室が矩形以外の形状を有している場合などに、それに合わせてパネル10どうしを実質的に斜めに連結させている場合を含む。
また、この実施例における、温室の「東側壁面」、「西側壁面」、「南側壁面」或いは「北側壁面」とは、温室の壁面が厳密に東、西、南或いは北の方位に面しているか否かを定義するものではなく、それぞれ温室の4つの壁面の中で実質的に東側方向、西側方向、南側方向或いは北側方向に面している壁面を意味する。
また、上述した長さ等の具体的数値は、いずれも単なる一例であり、必要に応じて適宜変更可能である。
10 …潜熱蓄熱パネル
12 …パネル本体
18,22,34,38 …パネル本体の端
20,24,36,40 …連結部
28 …注入部
30 …温室
32 …蓄熱壁
42 …仕切り部

Claims (7)

  1. 第1方向において、厚み方向と直交する方向に第1および第2端を有し、内部に潜熱蓄熱材が封入される板状のパネル本体、
    前記パネル本体内に前記潜熱蓄熱材を注入するための注入部、および
    前記第1および第2端にそれぞれ形成され、互いに連結可能な形状にされている第1および第2連結部を備える、潜熱蓄熱パネル。
  2. 前記パネル本体は、前記第1方向とは異なる第2方向において、厚み方向と直交する方向に第3および第4端を有し、
    前記第3および第4端にそれぞれ形成され、互いに連結可能な形状にされている第3および第4連結部をさらに備える、請求項1記載の潜熱蓄熱パネル。
  3. 前記パネル本体の内部に形成され、当該パネル本体内を上下方向に仕切る少なくとも1つの仕切り部をさらに備え、
    前記仕切り部によって仕切られた空間ごとに前記注入部が形成される、請求項1または2記載の潜熱蓄熱パネル。
  4. 前記第1連結部は、前記第1端から前記第2端と反対側に突出する突起を含み、
    前記第2連結部は、前記第2端を前記突起と嵌合可能な形状に窪ませた窪みを含み、
    前記突起と前記窪みとを嵌合させたときに、それらの嵌合部分の内側に前記注入部が収容される、請求項1ないし3のいずれかに記載の潜熱蓄熱パネル。
  5. 請求項1記載の潜熱蓄熱パネルを用いて構築した蓄熱壁であって、
    前記潜熱蓄熱パネルの前記第1連結部を他の前記潜熱蓄熱パネルの前記第2連結部に連結した、蓄熱壁。
  6. 請求項2記載の潜熱蓄熱パネルを用いて構築した蓄熱壁であって、
    前記潜熱蓄熱パネルの前記第1連結部を他の前記潜熱蓄熱パネルの前記第2連結部に連結するとともに、そのうちの少なくとも1つの潜熱蓄熱パネルの前記第3連結部をさらに他の前記潜熱蓄熱パネルの前記第4連結部に連結した、蓄熱壁。
  7. 東側壁面、西側壁面、南側壁面および北側壁面を有し、内部に請求項5または6記載の蓄熱壁が設置された温室であって、
    前記蓄熱壁は、
    前記北側壁面の内側に設置される第1蓄熱壁、および
    前記東側壁面および前記西側壁面のそれぞれの内側に設置される第2蓄熱壁を含み、
    前記第2蓄熱壁の高さを前記北側壁面から前記南側壁面に向けて低くなるようにした、温室。
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