JP2014150757A - 植物栽培システム - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明の植物栽培システムは、太陽光エネルギーを植物栽培ハウス内の効率的な温度制御に用いることを可能ならしめることを目的とする。
【解決手段】植物栽培ハウスの室内に所定の強さ以上の太陽光が照射されるように屋根面上に配置された太陽電池と、温水循環経路と、前記温水循環経路に水を供給する給水手段と、前記温水循環経路内の温水の排水手段と、前記温水循環経路の温水の循環ポンプと、前記温水循環経路内の水を加熱するヒーターと、蓄熱手段または蓄電池と、これらの構成要素を制御する制御回路と、前記太陽光発電手段からの電力を前記制御回路に供給する電力調節回路とを有し、前記温水循環経路の一部と前記複数の温度センサのいくつかが前記培地中に埋設して設けられた埋設加温部を有する植物栽培システムを提供するものである。
【選択図】図1
【解決手段】植物栽培ハウスの室内に所定の強さ以上の太陽光が照射されるように屋根面上に配置された太陽電池と、温水循環経路と、前記温水循環経路に水を供給する給水手段と、前記温水循環経路内の温水の排水手段と、前記温水循環経路の温水の循環ポンプと、前記温水循環経路内の水を加熱するヒーターと、蓄熱手段または蓄電池と、これらの構成要素を制御する制御回路と、前記太陽光発電手段からの電力を前記制御回路に供給する電力調節回路とを有し、前記温水循環経路の一部と前記複数の温度センサのいくつかが前記培地中に埋設して設けられた埋設加温部を有する植物栽培システムを提供するものである。
【選択図】図1
Description
この発明は、植物を栽培するのに必要な太陽光をハウス内に取り込むと同時に、それ以外の余分な太陽光エネルギーを用いて加温した循環水を利用して土壌温度をコントロールすることが可能な環境負荷の小さな植物栽培システムに関する。
従来、植物を栽培するのに必要な太陽光の強さは、多くの植物においては直射日光の照射強度よりも弱くても良いことは良く知られていた。例えば、イネの育成に必要な日光の強度は直射日光の強度の2/3程度で良いとされている。また、お茶やブドウなどには、季節によって作物上に覆いを被せて照射される太陽光の強度を調節して栽培されているものもある。このような背景の中、農地などのフィールドの上に、作物を栽培するのに必要な太陽光強度を確保するように隙間を空けた板状の太陽光発電モジュールを等間隔に配列することによって、農業と太陽光発電を両立させることが可能な太陽光発電システムが提案されている(特許文献1)。
また、建物の暖房効率を向上させるために太陽光集熱器で昇温した水を床暖房として使用すると同時に床面に蓄熱剤機能を持ったコンクリートを配することによって、効率的な暖房システムができることが知られていた(特許文献2)。
さらに、栽培用ハウス内を加温するため、蓄熱剤が充填された熱交換器によって水を加熱して水蒸気を生成し、この水蒸気を蒸気散布手段によって栽培用ハウス内に導入することで、ボイラーなどを用いなくても安全に栽培ハウス内を加温することができることが開示されている(特許文献3)。
一方、ヒートポンプなどで作り出した暖気をハウス内の土壌中を通して循環させ、植物の根付近の温度を加温すると同時に、それよりも深い領域に蓄熱層を配して室内温度が低下したときにこの蓄熱層に蓄えた熱を放出することによって効果的にハウス内を加温する方法が開示されている(特許文献4)。
しかしながら、農地フィールド上に作物を栽培するのに適した太陽光強度を確保するように隙間を空けて板状の太陽光発電モジュールを等間隔に配列した太陽光発電システムは、狭い日本の国土において太陽光発電のための設置面積を確保する可能性を示したが、発電した電力を農業に直接使用するには実用的でないという課題を有する。
また、ハウス内を効率的に加温する方法として土壌を加温する方法を用いれば、栽培されている植物の根の近傍を直接加温することができるために効率的であるが、開示された技術によると加温媒体として比熱および熱伝導率が小さな空気を用いているために、土壌加温効率が悪くまた加温媒体の温度低下が速いという課題を有している。そして、蓄熱媒体が深部にある土壌そのものであるため蓄熱効率が悪い上に作物に適した温度での蓄熱ができないという課題を有していた。さらに、加熱媒体の加熱手段として通常の電気やヒートポンプなどの化石燃料にエネルギー起源を有するエネルギー源を利用すると環境負荷が大きくなる上に、経済性も悪くなるという課題をも有している。
上記の目的を達成するために、本発明の植物栽培システムは、培地上に設けられた透光性の壁面および屋根面で周囲を囲繞した植物栽培ハウスと、前記植物栽培ハウスの室内に所定の強さ以上の太陽光が照射されるように均等に隙間を空けて前記屋根面上に配置された複数の太陽電池からなる太陽光発電手段と、温水循環経路と、前記温水循環経路に外部から水を供給する給水手段と、前記温水循環経路内の温水を外部に排出する排水手段と、前記温水循環経路の温水を循環させるための循環ポンプと、前記温水循環経路内の温水を加熱するヒーターと、前記温水循環経路内の水温を計測する複数の温度センサと、前記給水手段、前記排水手段、前記循環ポンプ、前記ヒーター、および前記複数の温度センサとを制御する制御回路と、前記太陽光発電手段からの電力を適切な電圧と電流を有する電力に変換して前記制御回路に供給する電力調節回路とを有し、前記温水循環経路の一部と前記複数の温度センサのいくつかが互いに接近して前記培地中に埋設して設けられた埋設加温部からなる構成とした。
さらに、本発明の植物栽培システムにおける前記電力調節回路には蓄電池が結線されており、前記制御回路に供給する電力の内余剰な電力を当該蓄電池に充電すると同時に、前記太陽電池の出力が必要とする電力に満たなくなったときに当該蓄電池を放電して前記制御回路に供給することができる構成とした。
さらに、本発明の植物栽培システムでは、前記ヒーターと前記培地中に埋没された前記埋設加温部の終端までの間に、当該温水循環経路内の循環水の熱を蓄熱する蓄熱手段を設けた。
また、本発明の植物栽培システムにおける前記埋設加温部は変形自在の樹脂製ホースとなっており、少なくとも当該樹脂製ホースの入口と出口およびそれらの中間に温度センサを配置した。
そして、本発明の植物栽培システムにおける前記埋設加温部内には、当該埋設加温部の長手方向に分離して蓄熱剤を配置した。
さらにまた、前記植物栽培ハウスの室内に所定の強さ以上の太陽光が照射されるように均等に隙間を有する複数の太陽熱集熱器からなる太陽熱加熱手段を前記屋根面上に前記太陽光発電手段と併置し、前記太陽熱集熱器には太陽熱温水循環経路が接続されており、前記太陽熱温水循環経路は温水混合タンクを介して循環しており、前記太陽熱温水循環経路には送液ポンプが接続されており、前記送液ポンプからの送液水は前記太陽熱加熱手段に接続されて循環ループを形成する前記太陽熱温水循環経路と加熱タンクとに分岐して流れるように構成されており、前記送液水を前記太陽熱温水循環経路または/および加熱タンクへの分岐を切替える循環水切替え手段とを有し、前記加熱タンクは前記循環ポンプを介して前記埋設加温部に接続され、当該埋設加温部の出口を前記温水混合タンクに接続して循環ループを形成する温水循環経路を構成した植物栽培システムとした。
そして、本発明の植物栽培システムにおける前記温水混合タンクと前記加熱タンクの内部には、各々第1のヒーターと第1の蓄熱手段、および第2のヒーターと第2の蓄熱手段を配しても良い。
さらに本発明の植物栽培システムにおける前記第1の蓄熱手段および第2の蓄熱手段としては、蓄熱剤が金属製または樹脂製の密閉容器内に入れられており、前記密閉容器には当該密閉容器の密閉構造を破らないような複数の貫通孔が形成したものを用いても良い。
本発明の植物栽培システムでは、屋根面から植物栽培ハウス内に所定の強さ以上の太陽光が入射するため、植物を栽培するのに十分な強度の光を得ることができ、またこの太陽光によってこの植物栽培ハウス内の雰囲気を加温して室内温度を外気よりも高い温度状態に保つことができるために、温室ハウスとして植物の栽培ができる効果を有すると同時に、屋根面上に配した太陽電池によって発電した電力によってこの植物栽培ハウス内に設けた温水循環経路内の温水循環管理をすることにより栽培植物の土壌温度管理をすることができるため、少ない太陽光発電であっても効率的に植物栽培に用いることが可能となるという効果を有する。
また、本発明の植物栽培システムでは、温水循環経路で使用するのに余剰した太陽光電力を蓄電池に充電して太陽光電力が不足したときに蓄電池からの電力を利用することができるため、安定した植物栽培のための温度管理ができるという効果を有する。
さらに、本発明の植物栽培システムは、温水循環経路中に蓄熱剤が配されることによって、時間変動の大きな太陽電池電力を用いても安定した植物栽培のための温度管理ができるという効果を有する。
さらにまた、本発明の植物栽培システムは、太陽光集熱器を太陽電池と併用して使用することによって太陽光エネルギーを直接温水製造に用いることを可能にし、より効率的な植物栽培のための温度管理をすることができるという効果を有する。
以下に本発明の植物栽培システムを実施するための最良の形態について、図面を参照しながら説明をする。
図1ないし図4および図7は、本発明の植物栽培システムの係わる1実施形態の構成を示す模式配管配線図であり、1は植物栽培ハウス、2は太陽光発電手段、2a、2b、2cは太陽電池、3は埋設加温部、4はヒーター部、5はヒーター、6は電力調節回路、7は制御回路、8は給水ポンプ、9は循環ポンプ、10は給水バルブ、11は排水バルブ、12ないし15は各々第1ないし第4の温度センサ、16は第1の給水管、17は第2の給水管、18ないし22は各々第1ないし第5の温水循環管、23は排水管、24ないし28は各々第1ないし第5の電気接続路、29aは第6の電気接続路、29bは第7の電気接続路、30ないし34は各々第8ないし第12の電気接続路、35は蓄電池、36は第13の電気接続路、37は蓄熱材部、38は蓄熱剤、39は太陽熱加熱手段、39a、39b、39cは太陽熱集熱器、40は温水混合タンク、41は第1の蓄熱手段、42は第1のヒーター、43は第4の温度センサ、44は加熱タンク、45は第2の蓄熱手段、46は第2のヒーター、47は第5の温度センサ、48は送液ポンプ、49は第1の循環水切替え手段、50は第2の循環水切替え手段、51ないし54は各々第1ないし第4の太陽熱温水循環管、55は第6の温水循環管、56ないし61は各々第13ないし第18の電気接続路、90aおよび90bは各々第2の蓄熱剤と第3の蓄熱剤である。
破線で示してある植物栽培ハウス1は、良く知られているように天井・屋根および側壁が透明な樹脂フィルムや透明なガラスで耕作地の上を囲繞して作られており、外部環境から耕作地を隔離した状態で太陽光を外部から取り入れることによってハウス内部の温室効果を高めると同時に、霜や露あるいは風雨などの外部天候の影響を受けないで植物を栽培するための施設である。
しかしながら、この植物栽培ハウス内の温度を安定した温度で制御して植物を栽培するためには、植物ハウス内に照射される太陽光エネルギーだけでは不十分であり、商用電力を用いて室内加熱を行ったり、化石燃料を燃焼させて室内加熱を行ったりしなければならなかった。
この室内加熱用のエネルギー源として、本発明の植物栽培システムにおいては、植物栽培ハウスの屋根面の上に太陽光発電手段2を配している。この太陽光発電手段2は、板状に形成された太陽電池2a、2b、2cが一定の隙間で設けられて等間隔に配列されて構成されている。この太陽電池2a、2b、2cは、一般的に複数の太陽電池セルが直列に配列されて強化ガラスや樹脂で保護された板状の太陽電池モジュールとなっている。
この太陽電池2a、2b、2cの隙間としては、植物栽培ハウス1内の植物が育成するのに十分な量の太陽光がその隙間を透過できる間隔を確保してある。この植物が育成するのに必要な太陽光の強さは、その植物の光合成量が飽和する光強度、すなわち光飽和点を目安にして定める。すなわち、植物栽培ハウス1内で栽培する植物の光飽和点以上の光強度が植物栽培ハウス1内に照射されるように太陽電池2a、2b、2cの隙間を定める。
この光飽和点の例としては、トマトで70klux、イネで40〜50klux、ナス、エンドウ、モモ、ナシなどで40klux、レタスやミツバで20〜25kluxとなっている。これら栽培しようとする植物に応じて上記太陽電池2a、2b、2cを配列する隙間を設定する。具体的には、晴天時昼の太陽光の照度は100klux程度であるから、ナスやエンドウなどの場合は隙間部分の面積が太陽電池の部分の面積に対して40%以上となるように、またレタスやミツバなどの場合は、隙間部分の面積が太陽電池の部分の面積に対して25%以上となるようにすればよい。
また、太陽電池セルの発電量は、電池材料によって異なるが3〜4W程度であることを考慮して、モジュールサイズを決めれば太陽電池モジュール、すなわち太陽電池2a、2b、2cの枚数を設定することができる。例えば、3Wセルを12枚配列した太陽電池モジュールの発電電力は36Wとなる。この太陽電池モジュールの寸法は、おおよそ0.3m×1m程度と見積もることができる。したがって、100アールの植物栽培ハウスでナスを栽培する場合は、上記の隙間を空けてこの植物栽培ハウスの屋根に太陽電池を配列するとすれば、20000枚配列することが可能となる。この太陽電池の1日の平均発電量は、2000kWh程度と見積もることができる。
図8に、植物栽培ハウス1の上に配列されている太陽電池の配列の1例を示す模式図を示す。図8において、100は太陽電池であり、101は太陽電池セル、102は隙間である。太陽電池100は、表面に太陽電池セル101を行列状に配列して構成されている。図8では、隙間102は、太陽電池100の幅に対して2倍の距離が空けられて構成されているが、既述したように、隙間102は植物栽培ハウスで栽培する植物の光飽和点にしたがって定められるものである。図8に示した太陽電池100は、12枚の太陽電池セル101が直列に接続されて太陽電池モジュールを形成している。1つの太陽電池100を何枚の太陽電池セル101で構成するかは、必要とする太陽光発電規模、発電した電力を取り扱う電力調節回路の能力と数量、植物栽培ハウス中に目的の太陽光強度を取り入れるのに必要な配列方法などに依存して決めることができる。
100アールの植物栽培ハウスで暖房を行うのに毎日平均160kWh程度の電力が必要と言われているが、上記のように隙間を空けて太陽電池を配列しても十分な電力を発電することができ、隙間に対しては12倍以上のマージンがあることがわかる。
一方、上記で示した太陽電池による植物栽培ハウスの暖房は、この植物栽培ハウス内全体の暖房であり極めて暖房効率が悪い。この暖房効率を向上させるためには、植物栽培ハウス内の雰囲気を扇風機で循環させるなどの暖房以外のエネルギーがさらに必要となってくる。
また、植物栽培ハウス内の雰囲気全てを加熱させると、室内の湿度が高くなる。そのため、夜間に外気温が下がるにつれてこの植物栽培ハウス内の温度も低下して、栽培している植物に水が結露する。これが原因で、栽培している植物にカビが生えたり、病気になったりする場合がある。
本発明の植物栽培システムでは、太陽電池による電力の利用効率を向上させるとともに、上記のような栽培植物への病害を防止するため、太陽電池による電力を用いて栽培植物の根の近傍にある土壌を加温するための温水循環経路を有している。この温水循環経路は、図面において、第1ないし第5の温水循環管18ないし22、および埋設加熱部3で構成される。この温水循環経路中を温水が循環する。特に、埋設加熱部3は、栽培する植物の根の近傍にある土壌中に埋設されており、その中を流れる温水によって土壌を加熱する。
この温水循環経路中には、内部の温水を循環させるための循環ポンプ9と、循環水を加熱して所定の温度の温水にするヒーター5がヒーター部4中に取り付けられている。さらに、この温水循環経路に沿って複数の温度センサが設けられている。
ヒーター部4は、温水タンクとなっており、十分な熱容量の温水が蓄えられるようになっている。また、ヒーター5は、ニクロム線やカーボン発熱体などの抵抗発熱体の周囲をガラステープやガラス管で保護したり、セラミックで絶縁したものをステンレス管内に収納したりしたものであって、このニクロム線やカーボン発熱体は第6の電気接続路29aや第7の電気接続路29bで制御回路7に接続されている。一方、第4の温度センサ15は、第8の電気接続路30で制御回路7に接続され、ヒーター5の近傍の水温を計測した信号を制御回路7に送る。
第1の温度センサ12、第2の温度センサ13、および第3の温度センサ14は、埋設加温部3の長手方向に沿って配置されている。ここでは、埋設部3の近傍に配置する温度センサは、流れの入口、出口、およびこれらの中間の3カ所に配置したが、さらに多くの温度センサを配置しても良いことは言うまでもない。
制御回路7は、第1の温度センサ12、第2の温度センサ13、第3の温度センサ14の温度信号に従って、埋設加温部3の温度が目的の温度になるようにヒーター5に流す電流と循環ポンプ9の出力とを制御する。第4の温度センサ15は、ヒーター部4の水量が低下して温度が高くなり過ぎるような動作を防止する役割を果たす。同様に、温水循環経路内の温度管理を行うために、ここで示したよりも多くの温度センサを本発明の植物栽培システム内に配しても良い。
またこの温水循環経路には、第1の給水管16、第2の給水管17、給水ポンプ8、および給水バルブ8で構成されるこの温水循環経路に外部から水を供給する給水手段が接続されている。
さらに、この温水循環経路には、第4の温水循環管21、排水管23、循環ポンプ9、および排水バルブ11で構成されるこの温水循環経路内の水を外部に排出する排水手段が接続されている。このとき、第4の温水循環管21、排水バルブ11、および循環ポンプ9は、温水循環経路と共通の構成要素となっている。もちろん、給水手段と同様に、排水ポンプと排水バルブ11からその排水ポンプに接続された排水管が別途設けられた排水手段が構成されてもよい。また、この排水手段は、埋設加温部3とヒーター部4との間に設けても良い。
一方、太陽電池で発電された電力は、第1の電気接続路24によって接続されている電力調節回路6によって適切な電圧と電流に変換され、第5の電気接続路を介して制御回路7に供給される。この電力調節回路6は、1つのボックスで描かれているが、発電量が少ない場合を除いて一般に複数の電力制御回路から構成されている。この電力調節回路6は、制御回路に太陽光発電手段2からの直流出力をそのまま/または交流に変換すると同時に出力変動を積分して平滑化して制御回路7に送る。
制御回路7は、電力調節回路6からの電力を受けて、ヒーター5に電流を流してヒーター部4内部の水を加熱し、循環ポンプ9を作動させて第1の温水循環管18、第2の温水循環管19、第3の温水循環管20、第4の温水循環管21、および第5の温水循環管22から構成される温水循環経路内部の温水を循環させ、給水バルブ10および給水ポンプ8を作動させて給水手段から温水循環経路に水の給水を開始しまたは給水を終了し、排水バルブ11を作動させて排水手段から温水循環経路の水の排水を開始しまたは排水を終了する。この制御回路7の動作は、第1の温度センサ12、第2の温度センサ13、第3の温度センサ14、第4の温度センサ15からの信号とあらかじめ組み込んでおいたプログラムに基づいて行われたり、図示していない手動入力回路から作業者が入力した信号に基づいて行われたりする。また、制御回路7内のプログラム回路は、制御回路7に内蔵している二次電池に蓄えられた電力で常に安定して動作するようになっている。
給水バルブ10と排水バルブ11は、上記のように制御回路7からの電気信号によって開閉するために、電磁バルブを用いている。
埋設加温部3は、肉薄で変形自在な樹脂製チューブとなっている。この樹脂製チューブは、埋設前はロール状に巻かれて収納することができる。このロール状に巻かれた樹脂製チューブを、植物栽培を行う土壌部に展開して伸ばし、水を流して膨らませた状態で植物栽培用の土壌をその上からかける。このようにして、栽培しようとする植物を植える土壌中に埋設加温部3を埋設した後に、その植物栽培用の土壌に植物の種を蒔いたり苗を植えたりして栽培を行う。
この樹脂製チューブの材質としては、耐候性ゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、塩化ビニリデンなどを用いることができる。また、これらの樹脂の屈伸耐性を向上させるために、セルロースなどからなる繊維をこれらの樹脂内に充填させたものを用いても良い。
このように埋設加温部3を埋設した後、温水循環経路中の水を循環しながら、第1の温度センサ12、第2の温度センサ13、第3の温度センサ14の温度を計測しながら埋設加温部3近傍の温度が所定の温度になるまでヒーター5で温水循環経路中の水を加温する。
埋設加温部3近傍の所定の温度は、栽培する植物の種類、その植物の生育時期、埋設加温部3の埋設深さなどに関係する。一般には、埋設加温部3近傍の温度が20〜35℃程度になるようにヒーター5の温度を調節するのが望ましい。
ここでは説明を簡単にするため、埋設加温部3は本発明の植物栽培システム中に1つしかないように描いたが、この埋設加温部3の前後で流路を複数に分岐して複数の埋設加温部を設けても良いことは言うまでもない。このように、埋設加温部3を複数に分岐させて設けることによって、埋設加温部3の長さを短くすることができ、その結果分岐した複数の埋設加温部内の温度分布を均一にすることが可能となる。また、実際は、植物を栽培する場合に作る畝は複数であり、その場合には埋設加温部も複数に分岐させる方が各畝で同じ土壌加温をすることが可能となる。
ヒーター部4には5〜10m3の水を蓄えて溜めることができるようになっており、この水の温度を80℃昇温するために必要な電力量は、40〜80kJ程度であり50kW程度よりも十分少ない発電量の太陽光発電手段2を用いても加熱可能なものである。このヒーター部4を断熱構造としておくことにより、日没後に太陽光による電力供給が停止した後も数時間にわたって温水温度を20℃程度以上に保持しておくことが可能となる。当然のことながら、この温度保持効果はヒーター部4の内容積が大きいほど大きくなる。これは、水の比熱が他の物質に比べて大きいことによる。
一方、図2に示すように電力調節回路6からの出力を第13の電気接続路56を介して蓄電池35に接続して、制御回路7に供給する電力の内上記のような余剰な電力をこの蓄電池35に充電すると同時に、太陽光発電手段2の出力が必要とする電力に満たなくなったときにこの蓄電池35を放電することによって、制御回路7の動作や、本発明の植物栽培システム全体の動作を安定化することが可能となる。この蓄電池35としては、リチウム二次電池やニッケル水素二次電池などの高効率の蓄電池を用いることができるし、鉛蓄電池やニッケルカドミウム蓄電池などの安価な蓄電池を用いることもできる。
本発明の植物栽培システムに蓄電池35を接続する場合は、使用する蓄電池の種類に応じた充電方法に基づいた電流および電圧が制御された充電電力が電力制御回路6から蓄電池35に印加される。もちろん、この充電電力は、本発明の植物栽培システムで必要とする電力に対しての余剰部分の電力に対してだけ適用される。
また、太陽光以外のエネルギーを使用することになるが、電力制御回路6に外部からの商用電力を接続しておくことにより、本発明の植物栽培システムを作動させる電力が太陽光エネルギーから得られた量では不充分であったときは、この商用電力を本発明の植物栽培システムの動作に用いることが可能となる。
また、図3に示すようにヒーター5と、培地中に埋没された埋設加温部3が終了するまでの間に、温水循環経路内の循環水の熱を蓄熱する蓄熱手段37を設けることもできる。この蓄熱手段37は、内部に蓄熱剤38が配されている。図3においては、蓄熱手段37はヒーター部4の直後に配されており、ヒーター部4で加温された温水の熱を蓄熱する。
この蓄熱手段37としては、ヒーター部4と同様に熱容量の大きな熱媒質を用いることもできるし、潜熱として蓄熱する相転移型の蓄熱剤を用いても良い。相転移型の蓄熱剤は、蓄熱量が大きく取り扱いも容易であるから良く使われている。
相転移型の蓄熱剤としては、酢酸ナトリウム水和物、リン酸1水素ナトリウム水和物、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、パラフィン系などの材料が良く知られている。また、これらの物質の潜熱は水の潜熱80cal/gには及ばないものの、40〜60cal/gと大きな潜熱を有している。また、蓄熱した潜熱を利用する温度である融点も20℃〜約60℃までの広い範囲に設定できるために、栽培する植物の種類や、栽培時期、栽培規模、埋設加温部の深さ、土壌の質などに応じて、潜熱剤の種類を選択すると同時に、温水循環速度や埋設加温部として用いる樹脂チューブの太さや厚み材質を適切に選択することによって、植物栽培に適した温水循環条件を見出すことができる。
蓄熱剤としてパラフィン系を用いる場合は、使用するパラフィンの主成分分子量を適切に選択したり、異なる分子量のパラフィンを混合したりすることによって様々な融点を実現することができる。例えば、エイコサン系パラフィンを蓄熱剤として用いることによって融点32℃、潜熱58cal/gを、ドコサン系パラフィンを用いることによって融点40℃、潜熱64cal/gを得ることができ、オクタデカン系パラフィンとドコサン系パラフィンを2:1で混合することによって、融点22℃、潜熱60cal/gの蓄熱剤とすることができる。さらに高温で用いたい場合は、融点48℃のチオ硫酸ナトリウム5水和物や融点57℃の酢酸ナトリウム3水和物を用いることができる。これらの蓄熱剤は、一般に商品として容易に入手することができる。
例えば、酢酸ナトリウム3水和物を用いると、潜熱は約60cal/gと水よりも少ないが密度が1.4g/ccと大きいために、同一容積では見掛け上水よりも大きな潜熱を有することになる。そのため、これを1m3の蓄熱手段37に入れると、35万kJの熱量を57℃一定の温水として温水循環経路中に供給することが可能となる。これは、ちょうど50kWの太陽電池で1日に供給できる電気エネルギーの2/3程度のエネルギーに相当する。実際は、ヒーター5による電気熱変換効率が低いことや、循環ポンプ等の作動に必要な電気エネルギーやその他のエネルギー損失があることなどのために、晴天が続いたとしてもこの蓄熱剤38に蓄熱エネルギーを蓄えるのには数日を要する。
また、別の例としては、エイコサン系パラフィンを1m3の蓄熱手段37に入れると、22万kJの熱量を32℃一定の温水として温水循環経路中に供給することができる。この温水温度は埋設加温部3周辺における加温温度に近いために、温水の温度制御がし易いというメリットがある。
図5に本発明の植物栽培システムに用いた蓄熱手段の構成の1例を示す模式図を示す。図5において、70は断熱壁、71は蓄熱剤、72は温水管、73は温水蓋、74は蓄熱剤収納部、75は給水管部、76は排水管部である。断熱壁70と断熱蓋73は、表面と蓄熱剤収納部74を形成する内面がステンレスやアルミニウムなどの耐食性金属で覆われ、内部に発泡スチロールや発泡ウレタンあるいは多孔性セラミックスなどの断熱材で断熱された構造となっており、内部の熱を外に逃がさない構造となっている。
蓄熱剤収納部74には、蓄熱剤71が充填されていると同時に、温水循環経路と接続された温水管72が蓄熱剤71との接触面積をかせぐために蛇行して取り付けられている。なお、蓄熱剤71は融点における相変化時に体積変化を引き起こすために、蓄熱剤71の上面と断熱蓋73の間にはこの体積変化を見込んだ隙間が設けられている。
温水管72は、断熱壁70を貫通して給水管部75と排水幹部76となっており、これら給水管部75と排水管部76はジョイントによって温水循環経路を構成する温水循環管に接続されている。なお、温水管72が貫通している断熱壁は、液体状態の蓄熱剤が蓄熱手段44の外部に流出しないようにOリングが用いられてシールされている。
一方、図7に示すように、埋設加温部3の内部に第2の蓄熱剤90aと第3の蓄熱剤90bを配しても良い。これら蓄熱剤は、埋設加温部3で用いた樹脂製チューブと同様の材質と構造の樹脂製袋中に充填されている。すなわち、この樹脂製袋の材質としては、耐候性ゴム、耐熱性ゴム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、塩化ビニリデンなどを用いることができる。また、これらの樹脂の屈伸耐性を向上させるために、セルロースなどからなる繊維をこれらの樹脂内に充填させたものを用いても良い。使用する樹脂材料が耐候性ゴムや耐熱性ゴムのように伸縮性のあるものでない場合は、充填する蓄熱剤の相変化による体積変化を見込んだ空気をこの蓄熱剤と一緒に充填しておくのが好ましい。
図7では、説明を簡単にするために、蓄熱剤は第2の蓄熱剤90aと第3の蓄熱剤90bの2つに分離して埋設加温部3の内部に配したものを示したが、この蓄熱剤は充填し易い量に分離して、より多くの蓄熱剤を埋設加温部3に配してもよいことは言うまでもない。
第2の蓄熱剤や第3の蓄熱剤を埋設加温部内に配するには、これら蓄熱剤を充填している樹脂袋を互いに紐でつなぎ、埋設加温部中に通すことによって行う。これら蓄熱剤を通した後、埋設加温部の両端を温水循環管にジョイントで連結すればよい。
このとき使用する蓄熱剤としては、パラフィン系の20℃〜40℃程度の低融点蓄熱剤を用いるのが使い易い。埋設加温部3の近傍の土壌温度を20〜35℃程度に管理したいためであること、埋設加温部3の近傍に植物の根が来るように植物を栽培した方が熱効率と温度管理がしやすいことのためである。
このように埋設加温部3中に蓄熱剤を配することによって、埋設加温部中の温度分布をより均一にすることが可能となると同時に、埋設加温部の長さをより長くすることが可能となる。これは、上記したように、埋設加温部を複数設ける場合も同じであり、複数の埋設加温部における1つの埋設加温部の長さを長くしても一様な土壌加温条件を得ることができるようになる。また、複数の畝であっても、畝に1本の埋設加温部を設けるだけで土壌加温が可能となる。このような土壌加温は、土壌そのものを蓄熱剤として用いることでは困難である。
本発明の植物栽培システムにおいて、土壌を加温するためのエネルギー源として太陽光のみならず太陽熱をも積極的に利用しようとしたものを図4に示す。すなわち、図4においては、本発明の植物栽培システムは、太陽光発電手段2のみでなく太陽熱加熱手段39をも有している。この太陽電池加熱手段39は複数の太陽熱集熱器39a、b、cから構成されている。
図9は、本発明の植物栽培システムに用いた太陽熱集熱器の構成の1例を示す模式図である。第9図において、110は吸光プレート、111は熱交換管、112は断熱プレート、113は給水方向を示す矢印、114は排水方向を示す矢印である。吸光プレート110は、表面が太陽光を吸収し易い黒色に塗装されており太陽光を効率的に吸収して熱に変換するための板状部品である。また、断熱プレート112は、断熱性の良い材料で構成されたり断熱性の良好な構造をしたりしている板状の断熱部品である。これら吸光プレート110と断熱プレート112との間に熱交換管111が狭持されており、吸光プレート110で熱に変換された太陽光エネルギーを断熱プレート112との間に閉じ込め、熱交換管111を加熱する。熱交換管111の内部には、水などの熱交換媒質が例えば給水方向を示す矢印113と排水方向を示す矢印114の方向に流れている。図では、熱交換媒質の給排水が太陽熱集熱器の同一端から行われる例を示したが、この給排水の位置は互いに対向する端部に設けられていても良いし、互いに90度ねじれた位置に設けられていても良い。
この熱交換管111は、熱伝導率の良好な銅や耐食性に優れたステンレス鋼などの金属材料で形成されており、吸光プレート110と断熱プレート112とで集熱した熱を効率良く熱交換管111内部に流れる水などの熱交換媒質に伝導するようになっている。また、この熱交換管111は、単位長さの熱容量を小さくするため関係を細く作られ、その内径は3〜10mmとなっている。また、熱交換管111中の熱交換物質が長時間に渡って吸光プレート110と断熱プレート112との間で熱交換ができるように図のように熱交換管111は蛇行して形成されている。
図10に、本発明の植物栽培システムにおける太陽熱集熱器の配列の一例を示す模式図を示す。図10において、120は太陽熱集熱器、121は集熱器間配管、122は給水管、123は排水管、124は隙間、125は給排水方向を示す矢印、126は排水方向を示す矢印である。図10から明らかなように、太陽熱集熱器120は、行列状に配列され、各太陽熱集熱器120の間には隙間124が形成されて全体として太陽熱加熱手段を構成している。この隙間124は、太陽光発電手段が形成している隙間と合わせて植物栽培ハウス内部に植物を栽培するのに十分な強度である所定の強度の太陽光が採光されるように大きさを定めてある。
この太陽熱加熱手段と太陽光発電手段の配置の関係としては、太陽電池と太陽熱集熱器を交互に配置してこれら太陽電池と太陽熱集熱器が同じ屋根領域に均一に配されるようにしても良いし、各々太陽電池と太陽熱集熱器を異なる領域に分離して屋根全体としては均一な太陽光が照射されるように配置しても良い。すなわち、これらが形成する隙間(あるいは影)が、植物栽培ハウスの屋根面を可能な限り一様となるように、これら太陽熱加熱手段と太陽光発電手段とを配置することが望ましい。このことによって、植物栽培ハウスで栽培される植物には、より一様な太陽光が照射されると同時に、この植物栽培ハウス内の温度分布をより一様になるように太陽光で加温することができる。
図10における給水管122には図4における第4の太陽熱温水循環管54が、図10における排水管123には図4における第1の太陽熱温水循環管51が接続されている。図4における第4の太陽熱温水循環管54と第1の太陽熱温水循環管51とは、図10に示すような太陽熱集熱器120の列の数だけの図示しない分岐を有している。
図4において、太陽熱加熱手段39によって加熱された水は、第1の太陽熱温水循環管51を通って温水混合タンク40に注入される。同時に、この温水混合タンク40には、埋設加温部3からの温水が第2の温水循環管19を通って注入される。この埋設加温部3からの温水は20℃〜40℃の温水であり、太陽熱加熱手段からの温水は60℃〜90℃の温水であり、これらが温水混合タンク40中で混合される。
図4において、太陽熱加熱手段39によって加熱された水は、第1の太陽熱温水循環管51を通って温水混合タンク40に注入される。同時に、この温水混合タンク40には、埋設加温部3からの温水が第2の温水循環管19を通って注入される。この埋設加温部3からの温水は20℃〜40℃の温水であり、太陽熱加熱手段からの温水は60℃〜90℃の温水であり、これらが温水混合タンク40中で混合される。
温水混合タンク40中で混合された温水は、送液ポンプ48で第3の太陽熱温水循環管53に送液される。第1の循環水切替え手段49および第2の循環水切替え手段50は、電磁駆動バルブまたはエアー駆動バルブとなっており、制御回路7からの制御電力によって開閉をする。太陽光が照射している日中は、循環水切替え手段50は開いている状態にあり、温水混合タンク40の温水は送液ポンプ48によって第4の太陽熱温水循環管54を通って太陽熱加熱手段39に戻り太陽熱温水循環経路が形成される。また、太陽光が照射されない夜間や雨天時には、温水の放熱作用を大きくしてしまうので、この太陽熱温水循環経路を閉じた状態にしておく。
太陽熱温水循環経路の循環水流量は、第2の循環水切替え手段50における開きの大きさと送液ポンプの出力、および第1の循環水切替え手段49における開きの大きさで決められる。しかしながら、これらの量を同時に制御回路で制御することは困難であるため、第4の太陽熱温水循環管54に取り付けてある図示しない流量計で計測した水の流量に対応する電気信号に応じて第2の循環水切替え手段50の開き量を制御することによって、太陽熱温水循環経路流量の制御が行われている。
一方、第1の循環水切替え手段49が開いているときは、温水混合タンク40からの温水は加熱タンク44に注入される。この加熱タンク44内の温水は、第3の温水循環管を介して循環ポンプ9によって送液され、第5の温水循環管22、第1の温水循環管18、埋設加温部3、第2の温水循環管19を順に流れて再び温水混合タンク40に戻り、温水循環経路を形成する。
温水混合タンク40と加熱タンク44は、同じ構造を持っている。図6は、本発明の植物栽培システムに用いた温水混合タンクおよび加熱タンクの1構成を示す模式図である。図6において、80はタンク外壁、81はタンク内壁、82は温水排水口、83は給水管、84は排水管、85はヒーター、86は密閉容器、87は貫通孔、88は蓄熱剤導入口、89は蓋である。
蓄熱手段4と同様に、タンク外壁80とタンク内壁81との間は、断熱構造にして、タンク内の温水の熱が逃げないようにするのが望ましい。断熱構造としては、タンク外壁80とタンク外壁81との間に発泡樹脂や多孔質セラミックスを配したり、空気層を設けたりする構造がある。
タンク内壁81側には、温水循環経路や太陽熱温水循環経路からの温水が一時的に蓄えられるようになっている。また、ヒーター85が低部に配されており、制御回路7から供給された加熱電力によってタンク内壁81内に蓄えられた温水を加熱できるようになっている。すなわち、温水循環経路や太陽熱温水循環経路からの温水は給水管83を介して図示していない温水給水口からこれらのタンク内部に導入される。また、温水排水口82から排水管84を介してタンク内の温水が温水循環経路や太陽熱温水循環経路に排出される。
加熱タンク44に蓄えられた温水の加熱は、第1の温度センサ12、第2の温度センサ13、および第3の温度センサ14の温度が植物栽培に適した所定の温度になるようにヒーター46の電力が制御されて行われる。したがって、第1の温度センサ12、第2の温度センサ13、および第3の温度センサ14の温度が植物栽培に適した所定の温度になる加熱タンク44内の温水温度をあらかじめ温度センサ14で計測しておき、融点がその計測温度となるような蓄熱剤を選定して第2の蓄熱手段45に用いる。具体的には、融点が20℃〜40℃であるパラフィン系蓄熱剤を用いるのが便利である。
一方、第5の温度センサ47は、ヒーター46近傍の温度が所定の温度以上になって過熱状態にならないように温度検出し制御回路に信号を送る。第5の温度センサ47からの信号が所定の温度値以上の値を示した場合は、制御回路7はヒーター46に電力を供給することを停止する。
また、温水混合タンク40においては、タンク内の温水の温度を第4の温度センサ43で計測して、温度センサ43の温度測定値が所定の温度範囲に入るように制御回路7からヒーター42に電力を供給して内部の温水を加温する。この所定の温度範囲の下限は、蓄熱手段41として用いる蓄熱剤の融点と同じかそれ以上となるように設定されるのが良い。また、所定の温度範囲の上限は水の沸点である100℃よりも低く、望ましくは90℃よりも低く設定されるのが望ましい。典型的には、蓄熱剤の融点とそれよりも10℃程度高い温度範囲に温度センサの値が入るようにする。
第1の蓄熱手段41と第2の蓄熱手段45の構造としては、金属または樹脂で作られた密閉容器86中に蓄熱剤を封入して用いる。この密閉容器86は、図6に示したように、複数の貫通孔87を有している。この貫通孔87の内面は密閉容器86の密閉構造を破らないように密閉容器壁が連続して形成されており、タンク内壁81内に蓄えられた温水が貫通孔87に自由に出入りできるようになっている。すなわち、密閉容器86の内部に入れられた蓄熱剤と貫通孔87の内面で温水と熱交換することが可能な構造になっている。また、このような貫通孔87を形成することによってこれらタンク内部の温水対流を円滑に行うことができ、タンク内温水の加熱効率を向上させることができると同時にタンク内部の温度分布をより均一にすることができる。
蓄熱剤は、蓄熱剤導入口88から密閉容器86の内部に入ることができる。そして、この蓄熱剤導入口88は、図示しないキャップで閉じられており、蓄熱剤が外部に流出したり、温水が内部に流入したりしないようになっている。なお、密閉容器86に入れる蓄熱剤が相変化時の体積変化によって密閉容器86が破壊されたり、蓄熱剤が外部流出したりしないように、入れる蓄熱剤の量は密閉容器86の内容積の90%程度となるようにした。
これら温水混合タンク40と加熱タンク44の内部には、図6に示すように下からヒーター85(ヒーター43またはヒーター47)、密閉容器86(第1の蓄熱手段41と第2の蓄熱手段45)が順に入れられており、温水が流出したりゴミやホコリが入ったりしないように蓋89が取り付けられている。この蓋89も、断熱構造を有していることは言うまでもない。
以上説明したように、本発明の植物栽培システムは、植物栽培に適した強度の太陽光を植物栽培ハウス内に取り込みながらこの植物栽培ハウス内を太陽光で加温しながら、太陽光発電電力や太陽熱で温水を作り出して植物を栽培する土壌を効率的に加温することで、適正な植物栽培を行うことができた。また、太陽光を十分に得ることができない曇天・雨天時や夜間でも、太陽光が照射されている間に蓄電池や蓄熱手段に蓄積した太陽光エネルギーを利用することができるようになった。
1 植物栽培ハウス、2 太陽光発電手段、2a、2b、2c 太陽電池、3 埋設加温部、4 ヒーター部、5 ヒーター、6 電力調節回路、7 制御回路、8 給水ポンプ、9 循環ポンプ、10 給水バルブ、11 排水バルブ、12 第1の温度センサ、13 第2の温度センサ、14 第3の温度センサ、15 第4の温度センサ、35 蓄電池、37 蓄熱手段、38 蓄熱剤、39太陽熱加熱手段、39a、39b、39c 太陽熱集熱器、40 温水混合タンク、41 第1の蓄熱手段、42 第1のヒーター、43 第4の温度センサ、44 加熱タンク、45 第2の蓄熱手段、46 第2のヒーター、47 第5の温度センサ、48 送液ポンプ、90a 第2の蓄熱剤、90b 第3の蓄熱剤
Claims (8)
- 培地上に設けられた透光性の壁面および屋根面で周囲を囲繞した植物栽培ハウスと、
前記植物栽培ハウスの室内に所定の強さ以上の太陽光が照射されるように均等に隙間を空けて前記屋根面上に配置された複数の太陽電池からなる太陽光発電手段と、
温水循環経路と、
前記温水循環経路に外部から水を供給する給水手段と、
前記温水循環経路内の温水を外部に排出する排水手段と、
前記温水循環経路の温水を循環させるための循環ポンプと、
前記温水循環経路内の温水を加熱するヒーターと、
前記温水循環経路内の水温を計測する複数の温度センサと、
前記給水手段、前記排水手段、前記循環ポンプ、前記ヒーター、および前記複数の温度センサとを制御する制御回路と、
前記太陽光発電手段からの電力を適切な電圧と電流を有する電力に変換して前記制御回路に供給する電力調節回路とを有し、
前記温水循環経路の一部と前記複数の温度センサのいくつかが互いに接近して前記培地中に埋設して設けられた埋設加温部を有することを特徴とする植物栽培システム。 - 前記電力調節回路には蓄電池および商用電力線が結線されており、前記制御回路に供給する電力の内余剰な電力を前記蓄電池に充電すると同時に、前記太陽光発電手段の出力が必要とする電力に満たなくなったときに前記蓄電池を放電したり前記商用電力を使用したりすることで前記制御回路に供給することを特徴とする請求項1に記載の植物栽培システム。
- 前記ヒーターと前記埋設加温部の終端までの間に、当該温水循環経路内の循環水の熱を蓄熱する蓄熱手段が設けられていることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の植物栽培システム。
- 前記埋設加温部は変形自在の樹脂製ホースとなっており、少なくとも当該樹脂製ホースの入口と出口およびそれらの中間に温度センサが配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の植物栽培システム。
- 前記埋設加温部内には、当該埋設加温部の長手方向に分離されて蓄熱剤が配置されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の植物栽培システム。
- 前記植物栽培ハウスの室内に所定の強さ以上の太陽光が照射されるように均等に隙間を有する複数の太陽熱集熱器からなる太陽熱加熱手段を前記屋根面上に前記太陽光発電手段と併置し、
前記複数の太陽熱集熱器には太陽熱温水循環経路が接続されており、
前記太陽熱温水循環経路は温水混合タンクを介して循環しており、
前記太陽熱温水循環経路には送液ポンプが接続されており、
前記送液ポンプからの送液水は前記太陽熱加熱手段に接続されて循環ループを形成する前記太陽熱温水循環経路と加熱タンクとに分岐して流れるように構成されており、
前記送液水を前記太陽熱温水循環経路または/および加熱タンクへの分岐を切替える循環水切替え手段とを有し、
前記加熱タンクは前記循環ポンプを介して前記埋設加温部に接続され、前記埋設加温部の出口は前記温水混合タンクに接続されて循環ループを形成する温水循環経路を構成することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の植物栽培システム。 - 前記温水混合タンクと前記加熱タンクの内部には、各々第1のヒーターと第1の蓄熱手段、および第2のヒーターと第2の蓄熱手段が配されていることを特徴とする請求項6に記載の植物栽培システム。
- 前記第1の蓄熱手段および第2の蓄熱手段は、蓄熱剤が金属製または樹脂製の密閉容器内に入れられており、前記密閉容器には当該密閉容器の密閉構造を破らないような複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする請求項6または7のいずれかに記載の植物栽培システム。
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