JP2011253853A - はんだ接合方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】フラックスに起因した溶融はんだ液滴の滑りを防止して、溶融はんだ液滴を所望の位置に供給する。
【解決手段】粉末はんだ及びフラックスを含むソルダペーストが塗布された接合対象物を加熱する工程と、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出して、前記接合対象物を介して加熱された前記ソルダペーストに前記溶融はんだ液滴を衝突させる第2工程とを含む、はんだ接合方法が提供される。
【選択図】図5
【解決手段】粉末はんだ及びフラックスを含むソルダペーストが塗布された接合対象物を加熱する工程と、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出して、前記接合対象物を介して加熱された前記ソルダペーストに前記溶融はんだ液滴を衝突させる第2工程とを含む、はんだ接合方法が提供される。
【選択図】図5
Description
本発明は、はんだ接合方法に関する。
はんだ付けは、電子部品の電極等の接合や、基板上のバンプ形成などに多用されている。近年、電子部品の小型化が進むにつれ、そのはんだ接合部は、はんだごてのこて先が入らないほど狭くなっている。このように狭いはんだ接合部に対して必要量の溶融はんだを供給する方法として、溶融はんだを液滴状に吐出する溶融はんだ吐出装置が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
一般に、溶融はんだを用いてはんだ接合を行う際には、フラックスが使用される。フラックスは、(1)接合対象物の表面を洗浄する機能、(2)溶融はんだの表面張力を低下させる機能(ぬれ性改善)、及び(3)はんだ接合部の再酸化を防止する機能を有する。該フラックスが塗布された接合対象物に上記溶融はんだを衝突させる場合、特許文献3に記載のように、はんだと接合対象物との間の十分な接合力を実現するためには、フラックスの塗布量や加熱条件を厳密に制御する必要がある。
上記のように従来のはんだ接合方法では、溶融はんだ吐出装置から吐出された溶融はんだ液滴を、予めフラックスが塗布された接合対象物に対して衝突させていた。しかし、かかる方法では、溶融はんだ液滴が接合対象物に衝突したときに、低粘度のフラックスにより滑ってしまうので、所望の位置に溶融はんだを適切に供給することができなかった。かかる溶融はんだ液滴の滑りによる位置ずれは、溶融はんだ液滴の吐出方向が接合対象物の表面に対して垂直方向である場合にも生じ得るが、特に、該吐出方向が接合対象物の表面に対して傾斜した方向である場合に顕著に生じる。
例えば、電子部品の構造によっては、溶融はんだ吐出装置から接合対象物(例えば基板)に対して垂直方向に溶融はんだ液滴を吐出できない場合が存在する。かかる場合、接合対象物に上記溶融はんだを供給するためには、溶融はんだ液滴の吐出方向又は接合対象物の保持角度の少なくとも一方を制御して、溶融はんだ液滴の吐出方向が接合対象物の表面に対して傾斜した方向となるように調整する必要がある。
しかしながら、このように溶融はんだ液滴の吐出方向を傾斜方向にすると、溶融はんだ液滴は、接合対象物の表面に対して平行な方向の速度成分を有することとなる。一般に、溶融はんだを液滴の飛翔速度は1〜2m/sと大きいので、特許文献3記載のように接合対象物上にフラックスを薄く塗布したとしても、上記溶融はんだの下部がフラックスを通過して接合対象物に到達するには、例えば10〜40ms程度の時間が必要となる。このため、溶融はんだ液滴は、衝突後に上記時間だけフラックス上を減速しつつも、接合対象物の表面に対して平行な方向に滑ってしまう。この結果、溶融はんだ液滴が接合対象物の所望の位置からずれてしまい、電子部品の歩留りが低下していた。さらに極端な場合には、溶融はんだ液滴が接合対象物の領域外に飛び出することもあり、電子部品の品質が大幅に劣化する原因となっていた。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、フラックスに起因した溶融はんだ液滴の滑りを防止して、溶融はんだ液滴を所望の位置に供給することが可能な、新規かつ改良されたはんだ接合方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、粉末はんだ及びフラックスを含むソルダペーストが塗布された接合対象物を加熱する工程と、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出して、前記接合対象物を介して加熱された前記ソルダペーストに前記溶融はんだ液滴を衝突させる第2工程と、を含む、はんだ接合方法が提供される。
前記第2工程における前記溶融はんだ吐出装置からの前記溶融はんだ液滴の吐出方向は、前記接合対象物の表面に対して傾斜していてもよい。
前記第1工程における加熱温度は、前記ソルダペーストに含まれる前記フラックスが活性化する温度以上、かつ、前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだの融点以下であってもよい。
前記第2工程の後に、前記溶融はんだ液滴が衝突した前記ソルダペーストを前記粉末はんだの融点より高い温度まで加熱する第3工程をさらに含むようにしてもよい。
前記第1工程における加熱温度は、前記ソルダペーストに含まれる前記フラックスが活性化する温度以上、かつ、前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだの融点以上であってもよい。
前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだを成す合金の組成は、前記溶融はんだ液滴を成す合金の組成とは異なり、前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだの融点は、前記溶融はんだ液滴を成す合金の融点よりも低く、前記第1工程における加熱温度は、前記ソルダペーストに含まれる前記フラックスが活性化する温度以上、かつ、前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだの融点以上であってもよい。
前記第1工程の前に、前記接合対象物に前記ソルダペーストを塗布する第4工程をさらに含むようにしてもよい。
上記構成によれば、粉末はんだ及びフラックスを含むソルダペーストが塗布された接合対象物が加熱された後に、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出して、前記接合対象物を介して加熱された前記ソルダペーストに前記溶融はんだ液滴が衝突する。これにより、ソルダペーストに衝突した溶融はんだ液滴は該ソルダペーストに浸透するので、はんだ接合部の表面に対して水平方向に滑ることがない。
以上説明したように本発明によれば、フラックスに起因した溶融はんだ液滴の滑りを防止して、溶融はんだ液滴を所望の位置に供給することができる。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
なお、説明は以下の順序で行うものとする。
1.第1の実施の形態(ソルダペーストの加熱温度が粉末はんだの融点未満である例)
2.第2の実施の形態(ソルダペーストの加熱温度が粉末はんだの融点より高い例)
3.第3の実施の形態(低融点の粉末はんだを含むソルダペーストを用いる例)
4.実施例
5.まとめ
1.第1の実施の形態(ソルダペーストの加熱温度が粉末はんだの融点未満である例)
2.第2の実施の形態(ソルダペーストの加熱温度が粉末はんだの融点より高い例)
3.第3の実施の形態(低融点の粉末はんだを含むソルダペーストを用いる例)
4.実施例
5.まとめ
[1.第1の実施形態]
[1.1.はんだ接合方法の概略]
まず、本発明の第1の実施形態に係るはんだ接合方法の概略について説明する。液滴状に吐出された溶融はんだ(溶融はんだ液滴)を用いてはんだ付けを行う際、電子部品(例えば、LSI等の半導体装置)の構造によっては、電子部品のはんだ接合部に対して垂直方向に溶融はんだ液滴を吐出できない場合が存在する。図1は、当該場合に該当する電子部品1の一例を模式的に示した断面図である。
[1.1.はんだ接合方法の概略]
まず、本発明の第1の実施形態に係るはんだ接合方法の概略について説明する。液滴状に吐出された溶融はんだ(溶融はんだ液滴)を用いてはんだ付けを行う際、電子部品(例えば、LSI等の半導体装置)の構造によっては、電子部品のはんだ接合部に対して垂直方向に溶融はんだ液滴を吐出できない場合が存在する。図1は、当該場合に該当する電子部品1の一例を模式的に示した断面図である。
図1に示すように、電子部品1は、略平板状の実装基板2上に、縦断面がL字状の部品筐体3が設置されている。該L字状の部品筐体3は、実装基板2の表面の一部領域を覆い隠すようにして、天地逆に配置されている。部品筐体3は、実装基板2に対して垂直方向に起立配置された支持部3aと、該支持部3aの上部から水平方向に張り出すように形成された張出部3bとからなる。この部品筐体3の張出部3bは実装基板2の表面を覆い隠しており、当該実装基板2の表面の覆い隠された位置には、平板状の第1のはんだ接合部4が設置されている。はんだ接合部4は、溶融はんだが接合される対象となる物体であり、本発明の接合対象物に相当する。図1の例では、はんだ接合部4は、実装基板2上に配置される銅等の金属配線(ランド)である。はんだ接合部4の表面(上面)は略平坦面であり、この表面上に溶融はんだ液滴が供給される。
また、部品筐体3の張出部3bの下面には、線状の第2のはんだ接合部5が設置されている。このはんだ接合部5は、例えば、部品筐体3から導出された金属配線等であり、部品筐体3の張出部3bから実装基板2に向けて鉛直下方に延びている。これらのはんだ接合部4、5は、部品筐体3の張出部3bと実装基板2との間に配置されているので、電子部品1の上方からは、該はんだ接合部4、5にアプローチすることはできず、実装基板2に対して垂直方向からの溶融はんだ液滴の供給が阻害されている。
従って、図1に示す構造の電子部品1において、溶融はんだ液滴を用いてはんだ接合部4とはんだ接合部5を接合するためには、溶融はんだ液滴を実装基板2に対して傾斜した方向に吐出して、はんだ接合部4上に供給する必要がある。ところが、このように溶融はんだ液滴の吐出方向を、はんだ接合部4(接合対象物)の表面に対して傾斜した方向とした場合、上記のように溶融はんだ液滴がはんだ接合部4に衝突したときに水平方向に滑り、はんだ接合部4の所望の位置に適切に供給できない。
そこで、本実施形態にかかるはんだ接合方法では、はんだ接合部4(接合対象物)の表面上に、従来のように低粘度のフラックスを塗布するのではなく、高粘度のペースト状のソルダペーストを塗布し、該ソルダペーストに含まれるフラックスが活性化する温度以上まで、該ソルダペーストを予め加熱しておく。フラックスは、特定の温度以上になると活性化し、上述した3つの機能((1)接合対象物表面の洗浄機能、(2)溶融はんだの表面張力低下機能(ぬれ性改善)、(3)接合対象物の再酸化防止機能)を発揮する。
そして、上記加熱されたソルダペーストに向けて、溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を傾斜方向に吐出して、該ソルダペーストに衝突させる。ソルダペーストは、ある程度の粘性を有するので、該ソルダペーストに衝突した溶融はんだ液滴は、ソルダペーストに浸透し、その衝突位置に留まる。よって、溶融はんだ液滴をはんだ接合部4(接合対象物)に衝突させたときでも、溶融はんだ液滴の滑りや、飛び出し等を好適に防止できる。
ここで、ソルダペーストは、粉末はんだとフラックスを混練した粘性体であり、一般的に表面実装基板の接合等に使用されるものである。かかるソルダペーストは、液状のフラックスと比べて高い粘性を有するので、はんだ接合部4の所望の位置にソルダペーストを塗布しておけば、該ソルダペーストは当該位置に付着した状態を維持する。従来では、予めフラックスが塗布された接合対象物に対して溶融はんだ液滴を供給する方法は一般的であったが、ソルダペーストが塗布された接合対象物に対して溶融はんだ液滴を供給する方法は存在しなかった。この理由としては、溶融はんだ液滴が接合対象物に対して衝突したときに、該溶融はんだ液滴が水平方向に滑って位置ずれする、という課題が認知されていなかったためと考えられる。
これに対し、本実施形態に係るはんだ接合方法では、従来のフラックスに代えて、ソルダペーストを接合対象物上に予め塗布し、該ソルダペーストに含まれるフラックスが活性化する温度以上に加熱しておく。これにより、溶融はんだ吐出装置から吐出された溶融はんだ液滴を、該ソルダペーストにより捕捉できるので、はんだ接合部4に向けて吐出された溶融はんだを、位置ずれさせることなく所望の位置に安定的に供給できる。以下に本実施形態に係るはんだ接合方法と、それを実現するための装置構成について詳述する。
[1.2.はんだ接合方法の詳細]
次に、図2〜図6を参照して、本実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。図2は、本実施形態に係るはんだ接合方法を示すフローチャートである。図3〜図6は、本実施形態に係るはんだ接合方法の各工程を模式的に示す断面図である。
次に、図2〜図6を参照して、本実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。図2は、本実施形態に係るはんだ接合方法を示すフローチャートである。図3〜図6は、本実施形態に係るはんだ接合方法の各工程を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、本実施形態に係るはんだ接合方法は、前工程S100と、後工程S102〜S114とに大別される。前工程S100では、電子部品1のはんだ接合部4にソルダペースト7を塗布する。次いで、後工程S102〜S114では、溶融はんだ吐出装置10のノズルから吐出された溶融はんだ液滴6を、はんだ接合部4に衝突させて、はんだ接合を行う。この溶融はんだ吐出装置10は、例えば、溶融金属を液滴状に吐出可能な溶融金属吐出装置で構成される。また、本実施形態に係るはんだ接合方法は、フラックス残渣が少ないため、上記後工程ではんだ接合を完了させることを特徴としており、はんだ接合した後に、フラックス残渣を洗浄する工程(リフロー洗浄等)が不要である。
本実施形態で使用するソルダペースト7は、固形状の粉末はんだ8と、液状のフラックス9とを混練して成るペースト状の粘性体である(図4参照。)。ここで、粉末はんだ8は、上記溶融はんだ吐出装置10から吐出される溶融はんだと同一の合金組成を有することが好ましい。以下では、粉末はんだ8として、例えばSn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだ(例えば、Sn−3.0Ag−0.5Cuの鉛フリーはんだ)を使用し、フラックス9として、例えばロジン系フラックスを使用したソルダペースト7の例について説明する。
しかし、かかる例に限定されず、各種の一般的なソルダペーストを使用してもよい。例えば、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8は、上記Sn−Ag−Cu系の鉛フリーはんだ以外にも、Sn−Zn系、Sn−Bi−Ag(Au)系、Sn−Cu−Ni系、Sn−Pb系などの任意の合金組成のはんだであってもよい。また、粉末はんだ8は、溶融はんだ吐出装置10から吐出される溶融はんだとは異なる合金組成を有してもよい。
また、ソルダペースト7に含まれるフラックス9は、上記ロジン系フラックス(主剤:ロジン)の例に限定されず、例えば、ロジン系以外の樹脂系フラックス(主剤:ロジン変性、合成樹脂等)、有機酸系フラックス(主剤:水ベース又は溶剤ベースの有機酸等)、無機酸系フラックス(主剤:水溶性又は非水溶性の無機酸等)などであってもよい。また、フラックス9に含まる主剤以外の活性剤、添加剤、溶剤成分等も、適宜変更してもよい。
以下では、上記粉末はんだ8とフラックス9とが混練されたソルダペースト7を利用したはんだ接合において、ソルダペースト7を加熱する温度条件を例示して説明する。なお、当該温度条件は、使用するソルダペースト7の種類に応じて適切に調整することが好ましいが、以下の温度条件は、他の一般的なソルダペーストにも適応可能である。
以下に、図2のフローチャートを参照して、第2の実施形態に係る一連のはんだ接合プロセスについて詳述する。
まず、図3を参照しながら前工程S100について説明する。前工程では、図3に示すように、電子部品1のはんだ接合部4にソルダペースト7が塗布される(ステップS100)。ソルダペースト7は粘性体であるので、はんだ接合部4に塗布されたソルダペースト7は、接合目標位置を中心としたドーム形状を維持することができる。
このときのソルダペースト7の塗布量は、はんだ接合完了時に、ソルダペースト7に含まれるフラックス9の残渣が問題とならない範囲とする。例えば、面積1.0mm2、2.0mm2、3.0mm2のはんだ接合部4に対してそれぞれ、0.3mg、0.6mg、0.9mg程度のソルダペーストを塗布すればよい。つまり、はんだ接合部4の面積1.0mm2当たりのソルダペースト7の塗布量は、例えば0.3mg程度であるが、かかる例に限定されず、ソルダペースト7の塗布量は、ソルダペースト7や溶融はんだ液滴6の組成等に応じて適宜変更してもよい。
また、ソルダペースト7の塗布方法としては、はんだ接合対象の電子部品1が実装基板2に既にセットしてある場合は、例えば、ディスペンサを用いてソルダペースト7を塗布すればよい。一方、はんだ接合対象の電子部品1を後でセットすることが可能な場合は、例えば、予めスクリーンを使用してソルダペースト7を塗布することも可能である。このとき、塗布方法に応じた粘度を有するソルダペースト7が選択される必要がある。
また、上記S100におけるソルダペースト7の塗布量が、はんだ接合に必要なはんだ量に対して十分に少ない場合、はんだ接合完了時におけるはんだ量のばらつきは、ソルダペースト7の塗布量のばらつきには影響を受けず、後工程における溶融はんだ液滴6の供給量のばらつきに依存する。よって、かかる場合、ソルダペースト7の塗布量に高い精度は要求されない。
次に、図4〜図6を参照しながら。後工程S102〜S114について説明する。後工程では、まず、図4に示すように、はんだ接合部4の周辺を外部から加熱して、該はんだ接合部4に塗布されたソルダペースト7を加熱する(ステップS102)。図4の例では、実装基板2の下面にヒータ等の加熱装置30を接触させ、該加熱装置30により実装基板2を加熱することで、実装基板2の上面に設置されたはんだ接合部4が加熱され、この結果、はんだ接合部4上に塗布されたソルダペースト7が加熱される。このように、接合対象物であるはんだ接合部4を介して間接的にソルダペースト7を加熱することで、ソルダペースト7を所望の温度範囲まで均等に加熱できる。
上記S102で開始されたはんだ接合部4周辺の加熱処理は、S114で終了するまで継続される。かかる加熱処理中(S102〜S114)には、はんだ接合部4の周辺に設置された温度センサ(図示せず。)により、はんだ接合部4の温度Tが継続的に測定される(ステップS104、S110)。
次いで、S104で測定されたはんだ接合部4の周辺の温度Tが、第1目標温度T1に達したときに(ステップS106)、図5に示すように、上記溶融はんだ吐出装置10から溶融はんだ液滴6を吐出して、必要量の溶融はんだ液滴6をはんだ接合部4上のソルダペースト7に供給する(ステップS108)。ここで、第1目標温度T1は、ソルダペースト7に含まれるフラックス9が活性化する温度TF(例えば170℃)以上であり、かつ、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の融点TM(例えば217℃)以下の温度である(TF≦T1≦TM)。
その後、粉末はんだ8の融点TM(例えば217℃)を超えるまで、はんだ接合部4の周辺を継続的に加熱する。この結果、はんだ接合部4の周辺の温度Tが、粉末はんだ8の融点TM(例えば217℃)よりも高い第2目標温度T2に達し(T2>TM)、図5に示すように、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8が溶融して、上記S108で供給された溶融はんだ液滴6と一体化し、ぬれ広がったときに(ステップS112)、はんだ接合部4の加熱処理を終了する(ステップS114)。この結果、図5に示すように、電子部品1のはんだ接合部4とはんだ接合部5が、上記溶融した粉末はんだ8と溶融はんだ液滴6とが一体化した溶融はんだ31により接合される。該溶融はんだ31は、時間の経過とともに合金化して固化する。このようにして、一連のはんだ接合プロセスが完了する。
以上のように本実施形態では、はんだ接合部4の周辺を、フラックス9が活性化する温度TF以上の温度T1まで加熱した状態で(S106)、溶融はんだ吐出装置10から必要量の溶融はんだ液滴6を吐出して、ソルダペースト7に衝突させる(S108)。ソルダペースト7が上記温度範囲(TF≦T<TM)にある状態において、溶融はんだ液滴6がソルダペースト7に衝突したとき、該衝突した溶融はんだ液滴6は、毛細管現象により瞬時に粉末はんだ8の隙間に浸透する。当該毛細管現象が生じる理由は、以下の3つの条件が重なるからである。
(1)上記加熱により、ソルダペースト7に含まれるフラックス9の粘度が低下しているために、粉末はんだ8の凹凸が表面に現れている(図4参照)。
(2)上記加熱によりフラックス9が活性状態であるために、ソルダペースト7に衝突した溶融はんだ液滴6の表面張力が低下する。
(3)ソルダペースト7に含まれる未溶融の粉末はんだ8が狭い隙間を形成している。
(1)上記加熱により、ソルダペースト7に含まれるフラックス9の粘度が低下しているために、粉末はんだ8の凹凸が表面に現れている(図4参照)。
(2)上記加熱によりフラックス9が活性状態であるために、ソルダペースト7に衝突した溶融はんだ液滴6の表面張力が低下する。
(3)ソルダペースト7に含まれる未溶融の粉末はんだ8が狭い隙間を形成している。
上記の毛細管現象により、吐出された溶融はんだ液滴6を、はんだ接合部4に安定して供給することができる。その理由は、以下の通りである。本実施形態が対象とする電子部品1の構造上、はんだ接合部4に対して垂直方向に溶融はんだ液滴6を吐出できない場合、溶融はんだ液滴6の吐出方向又は実装基板2の保持角度を制御する必要がある。このため、はんだ接合部4に向けて傾斜方向に吐出される溶融はんだ液滴6は、はんだ接合部4の表面に対して平行な方向の速度成分を有している。
従って、従来のようにはんだ接合部4にフラックスのみが塗布されている場合、フラックスを薄く塗布したとしても、衝突した溶融はんだ液滴6の下部がフラックスを通過してはんだ接合部4に到達するには、10〜40ms程度の時間が必要となる。一般に、溶融はんだを液滴状に吐出する技術において、溶融はんだ液滴6の飛翔速度は1〜2m/sと大きい。このため、上記溶融はんだ液滴6は、はんだ接合部4に対する衝突後に上記時間だけフラックス上を減速しつつも、上記平行な方向の速度成分方向に滑る現象、ひいては、はんだ接合部4の領域外に溶融はんだ液滴6が飛び出す現象が生じる。従って、はんだ接合部4にフラックスのみを塗布した場合では、所望の位置に上記溶融はんだを供給することが困難である。
これに対して、本実施形態では、はんだ接合部4にソルダペースト7を塗布し、上記温度条件を採用することにより、ソルダペースト7に衝突した溶融はんだ液滴6は、毛細管現象により瞬時に粉末はんだ8の隙間に浸透する。従って、衝突した溶融はんだ液滴6は、滑りや飛び出しを生じることなく、瞬時に粉末はんだ8の隙間に浸透するため、溶融はんだをはんだ接合部4の所望の位置に安定して供給可能となる。
ところで、本実施形態において、ソルダペースト7に衝突した溶融はんだ液滴6が、融点TM以下である粉末はんだ8の隙間に好適に浸透するためには、該溶融はんだ液滴6は、粉末はんだ8の隙間に浸透する間に、溶融状態を保持し得る熱量を有する必要がある。このため、溶融はんだ吐出装置10から吐出される溶融はんだ液滴6の直径は、粉末はんだ8の粉径(例えば30μm)に対して十分大きく、例えば3〜10倍であることが望ましい。上記S108では、かかる液滴径を有する複数滴の溶融はんだ液滴6を、はんだ接合に必要なはんだ量に到達するまで、はんだ接合部4に対して連続して供給する。ここで、上記液滴径を有する溶融はんだ液滴6の体積が、必要なはんだ量に対して十分に小さい場合、連続して供給される溶融はんだ液滴6の液滴数を制御することで、はんだ供給量を微調整することが可能である。
また、上記のように必要量のはんだを供給した後(S108)、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の融点TM(例えば217℃)を超えるまで、外部から加熱を続けて粉末はんだ8を溶融させ、該溶融した粉末はんだ8と、供給された溶融はんだ液滴6とを一体化させる(S112)。図6に示したように、一体化した溶融はんだ31及びはんだ接合部4は、ソルダペースト7に含まれていたフラックス9に覆われているため、フラックス9の作用により容易にぬれ広がり、合金層を形成し、はんだ接合が完了する。このはんだ接合完了時のフラックス9の残渣は、S100におけるソルダペースト7の塗布量により調整できるので、はんだ接合に必要なはんだ量を全てソルダペーストにより供給する場合と比べて、フラックス9の残渣を大幅に低減することが可能である。
なお、上記例では、電子部品1の構造によりはんだ接合部4に対して垂直方向に溶融はんだ液滴6を供給できない場合に、図5に示した供給方法を採用した。即ち、図5に示したように、実装基板2上のはんだ接合部4を水平に保持するとともに、溶融はんだ吐出装置10から溶融はんだ液滴6を鉛直方向に対してある角度(例えば45度)だけ傾斜した方向に吐出し、該傾斜方向に飛翔する溶融はんだ液滴6を、上記水平保持されたはんだ接合部4に衝突させていた。
かかる供給方法以外にも、例えば、図7に示すように、水平方向に対してある角度(例えば60度)だけ傾けて保持されたはんだ接合部4に、溶融はんだ吐出装置10から鉛直方向に吐出された溶融はんだ液滴6を衝突させる方法を採用してもよい。もしくは、図8に示すように、水平方向に対してある角度(例えば15度)だけ傾斜して保持されたはんだ接合部4に、鉛直方向に対してある角度(例えば30度)だけ傾斜した方向に吐出された溶融はんだ液滴6を衝突させる方法を採用してもよい。
上記図5、図6、図7のいずれの供給方法においても、溶融はんだ液滴6がはんだ接合部4の表面に対して平行な方向の速度成分を有した状態で、はんだ接合部4に衝突することは避けられない。従って、はんだ接合部4に衝突したときの溶融はんだ液滴6の滑りや飛び出しを防止するためには、上述した本実施形態に係るはんだ接合方法が有効である。
[2.第2の実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。第2の実施形態に係るはんだ接合方法は、上述した第1の実施形態に係るはんだ接合方法と比べて、ソルダペースト7を加熱するときの温度条件が異なるのみであり、その他の機能構成は第1の実施形態と実質的に同一であるので、その詳細説明は省略する。以下では第1の実施形態との相違点を中心に、第2の実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。
次に、本発明の第2の実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。第2の実施形態に係るはんだ接合方法は、上述した第1の実施形態に係るはんだ接合方法と比べて、ソルダペースト7を加熱するときの温度条件が異なるのみであり、その他の機能構成は第1の実施形態と実質的に同一であるので、その詳細説明は省略する。以下では第1の実施形態との相違点を中心に、第2の実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。
図9は、第2の実施形態に係るはんだ接合方法を示すフローチャートである。図10は、第2の実施形態に係るはんだ接合方法におけるはんだ吐出工程を模式的に示す断面図である。
図9に示すように、第2の実施形態に係るはんだ接合方法も、前工程S200と、後工程S202〜S210とに大別される。前工程S200では、電子部品1のはんだ接合部4に、上記実施形態1と同一のソルダペースト7を塗布する(図3参照。)。次いで、後工程S202〜S210では、上記第1の実施形態と異なる温度条件で、溶融はんだ吐出装置10のノズルから吐出された溶融はんだ液滴6を、はんだ接合部4に衝突させて、はんだ接合を行う。
より詳細には、後工程では、まず、第1の実施形態と同様に(図4参照。)、はんだ接合部4の周辺を外部の加熱装置30により加熱して、該はんだ接合部4に塗布されたソルダペースト7を加熱する(ステップS202)。このS202で開始された加熱処理は、S210で終了するまで継続される。かかる加熱処理中(S202〜S210)には、はんだ接合部4の周辺に設置された温度センサ(図示せず。)により、はんだ接合部4の温度Tが継続的に測定される(ステップS204)。
次いで、S204で測定されたはんだ接合部4の周辺の温度Tが、第3目標温度T3に達したときに(ステップS206)、図10に示すように、上記溶融はんだ吐出装置10から溶融はんだ液滴6を吐出して、必要量の溶融はんだ液滴6をはんだ接合部4上のソルダペースト7に供給する(ステップS208)。ここで、第3目標温度T3は、ソルダペースト7に含まれるフラックス9が活性化する温度TF(例えば170℃)以上であり、かつ、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の融点TM(例えば217℃)以上の温度である(TF≦T3、TM≦T3)。
このように第2の実施形態では、はんだ接合部4の周辺を、フラックス9が活性化し、かつ、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8が溶融する温度T3以上まで加熱した状態で(S206)、溶融はんだ吐出装置10から必要量の溶融はんだ液滴6を吐出して、ソルダペースト7に衝突させる(S208)。このとき、図10に示すように、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8は既に溶融しており、また、フラックス9も活性化しているので、該溶融した粉末はんだ8は、上記供給された溶融はんだ液滴6と一体化し、フラックスの作用により容易にぬれ広がり、合金層を形成し、はんだ付けが完了する。
ソルダペースト7が上記温度範囲(TF≦T、TM≦T)にある状態において、溶融はんだ液滴6がソルダペースト7に衝突するとき、溶融はんだ液滴6は、粉末はんだ8は既に溶融し、はんだ接合部4にぬれ広がっている。このため、溶融はんだ液滴6は衝突と同時に、溶融した粉末はんだ8と一体化する。このとき、供給される溶融はんだ液滴6に形成された酸化膜が、ソルダペースト7由来の溶融はんだとの一体化を阻害する場合がある。しかし、かかる場合においても、前者の溶融はんだ(溶融はんだ液滴6)は、後者の溶融はんだ(溶融粉末はんだ8)内部に瞬時に突入し、フラックス9に覆われた後者の溶融はんだ内部で一体化を開始するので、上記酸化膜の厚みによる影響は受けない。上記の理由により、はんだ接合部4に衝突した溶融はんだ液滴6は、溶融した粉末はんだ8の内部に瞬時に吸収されるため、滑りや飛び出しを生じることなく、溶融はんだをはんだ接合部4の所望の位置に安定して供給することができる。
上記のように必要量の溶融はんだ液滴6を供給し、一体化した溶融はんだがぬれ広がった後に、はんだ接合部4の加熱処理を終了し(ステップS210)、一連のはんだ接合プロセスが終了する。
[3.第3の実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。第3の実施形態に係るはんだ接合方法は、上述した第1の実施形態に係るはんだ接合方法と比べて、ソルダペースト7を加熱するときの温度条件と、ソルダペースト7の種類が異なるのみであり、その他の機能構成は第1の実施形態と実質的に同一であるので、その詳細説明は省略する。以下では第1の実施形態との相違点を中心に、第3の実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。
次に、本発明の第3の実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。第3の実施形態に係るはんだ接合方法は、上述した第1の実施形態に係るはんだ接合方法と比べて、ソルダペースト7を加熱するときの温度条件と、ソルダペースト7の種類が異なるのみであり、その他の機能構成は第1の実施形態と実質的に同一であるので、その詳細説明は省略する。以下では第1の実施形態との相違点を中心に、第3の実施形態に係るはんだ接合方法について説明する。
図11は、第3の実施形態に係るはんだ接合方法を示すフローチャートである。図11に示すように、第3の実施形態に係るはんだ接合方法も、前工程S300と、後工程S302〜S210とに大別される。前工程S300では、電子部品1のはんだ接合部4に、上記実施形態1と異なるソルダペースト7を塗布する(図3参照。)。次いで、後工程S302〜S310では、上記第1及び第2の実施形態と異なる温度条件で、溶融はんだ吐出装置10のノズルから吐出された溶融はんだ液滴6を、はんだ接合部4に衝突させて、はんだ接合を行う。
上記第1及び第2の実施形態では、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の合金組成は、溶融はんだ吐出装置10から吐出される溶融はんだ液滴6の合金組成と同一であり、ともにSn−Ag−Cu系はんだであった。これに対し、第3の実施形態に係るソルダペースト7は、溶融はんだ液滴6とは異なる合金組成を有する低融点はんだから成る。つまり、第3の実施形態に係るソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8は、溶融はんだ液滴6を成す合金組成(Sn−Ag−Cu)とは異なる合金組成、即ち、溶融はんだ液滴6よりも融点が低い合金から成る。
上記低融点の粉末はんだ8から成るソルダペースト7を加熱するときの温度条件は、使用するソルダペースト7の種類に応じて適切に調整することが好ましいが、本実施形態では、上記低融点の鉛フリーはんだから成るソルダペースト7を使用するので、一般的なSn−3.0Ag−0.5Cuの3元系鉛フリーはんだから成るソルダペースト7を用いる場合よりも、低い温度条件を実現可能となる。
代表的な低融点の鉛フリーはんだの融点を例示すると、Sn−57Bi(融点:139℃)、Sn−57Bi−1Ag(融点:139℃以下)、Sn−7.5Bi−2Ag−0.5Cu(融点:210℃以下)、Sn−9Zn(融点:198℃)、Sn−8Zn−3Bi(融点:189℃以下)、Sn―52In(融点:117℃以下)である。このようにSn−Bi系、Sn−Zn系、Sn−In系の鉛フリーはんだは、Sn−3.0Ag−0.5Cuの3元系鉛フリーはんだ(融点:217℃)よりも融点が低い。
以下では、かかる低融点の粉末はんだ8の一例として、Sn−58Biの鉛フリーはんだ(融点TL:139℃)を使用する例について説明するが、かかる例に限定されず、上記Sn−Bi系、Sn−Zn系、Sn−In系などの低融点の鉛フリーはんだを使用してもよい。
以下に、図11のフローチャートを参照して、第3の実施形態に係る一連のはんだ接合プロセスについて詳述する。
図11に示すように、まず前工程では、Sn−58Biの鉛フリーはんだから成る粉末はんだ8を含むソルダペースト7が、はんだ接合部4に塗布される(ステップS300)。このときのソルダペースト7の塗布量や塗布方法は、第1の実施形態と同様である。
次いで、後工程では、まず、はんだ接合部4の周辺を外部の加熱装置30により加熱して、該はんだ接合部4に塗布されたソルダペースト7を加熱する(ステップS302)。このS302で開始された加熱処理は、S310で終了するまで継続される。かかる加熱処理中(S302〜S310)には、はんだ接合部4の周辺に設置された温度センサ(図示せず。)により、はんだ接合部4の温度Tが継続的に測定される(ステップS304)。
次いで、S304で測定されたはんだ接合部4の周辺の温度Tが、第4目標温度T4に達したときに(ステップS306)、上記溶融はんだ吐出装置10から溶融はんだ液滴6を吐出して、必要量の溶融はんだ液滴6をはんだ接合部4上のソルダペースト7に供給する(ステップS308)。ここで、第4目標温度T4は、ソルダペースト7に含まれるフラックス9が活性化する温度TF’(例えば120℃)以上であり、かつ、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の融点TL(例えば139℃)以上の温度である(TF’≦T4、TL≦T4)。
第3の実施形態では、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8として、Sn−58Biの鉛フリーはんだ(融点TL:139℃)を用いており、その融点TMは、ロジン系のフラックス9が活性化する温度TF’(120℃)よりも高い。従って、はんだ接合部4周辺の温度Tが、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の融点TLである139℃以上となったときには、フラックス9が活性化する温度TF’である120℃を超えている。従って、粉末はんだ8が溶融し、フラックス9の作用によりはんだ接合部4にぬれ広がるので、実施形態2と同様に、ソルダペースト7に供給された溶融はんだ液滴6は、衝突と同時に、溶融した粉末はんだ8と一体化する。
このとき、供給される溶融はんだ液滴6に形成された酸化膜が、ソルダペースト7由来の溶融はんだとの一体化を阻害する場合がある。しかし、かかる場合においても、前者の溶融はんだ(溶融はんだ液滴6)は、後者の溶融はんだ(溶融粉末はんだ8)内部に瞬時に突入し、フラックス9に覆われた後者の溶融はんだ内部で一体化を開始するので、上記酸化膜の厚みによる影響は受けない。上記の理由により、はんだ接合部4に衝突した溶融はんだ液滴6は、溶融した粉末はんだ8の内部に瞬時に吸収されるため、滑りや飛び出しを生じることなく、溶融はんだをはんだ接合部4の所望の位置に安定して供給することができる。
以上のようにして、はんだ接合部4上のソルダペースト7を温度T4まで加熱した後に、はんだ接合部4に必要量の溶融はんだ液滴6を供給して、溶融はんだを一体化させる。このとき、はんだ接合部4周辺の最大到達温度が、Sn−3.0Ag−0.5Cuの3元系鉛フリーはんだの融点TMである217℃より低い温度条件においても、上記一体化した溶融はんだは、フラックス9の作用により容易にぬれ広がり、合金層を形成し、はんだ付けが完了する。その後、はんだ接合部4の加熱処理を終了し(ステップS310)、一連のはんだ接合プロセスが終了する。
以上のように、第3の実施形態では、第1及び第2の実施形態よりも低い温度条件(T4<T2、T3)で、はんだ付けを実現できるので、外部の加熱装置30からはんだ接合部4に加える熱量を低減し、はんだ接合部4に及ぼす熱影響を抑制できる。このように外部からの熱量を低減できる理由は、高融点TMの溶融はんだ液滴6と低融点TLの粉末はんだ8とが一体化することにより、はんだ接合部4に接合されるはんだ全体の融点を低下できるとともに、上記溶融はんだ液滴6自身が有する熱量を追加できるからである。
例えば、0.3mgのソルダペースト7に対して1.3mgの溶融はんだ液滴6を供給する場合、第3の実施形態におけるはんだ接合部4周辺の到達温度T4は、200℃であればよく、上記第1及び第2の実施形態1(T2、T3>217℃)よりも、電子部品1に対する熱影響を低減することが可能となる。従って、はんだ接合対象の電子部品1の耐熱性が低い場合には、第3の実施形態に係る方法を適用することで、当該電子部品1の破損を防止できる。
[4.実施例]
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下に説明する実施例は本発明の一具現例に過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
次に、本発明の実施例について説明する。なお、以下に説明する実施例は本発明の一具現例に過ぎず、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
上記本発明の実施形態に係るはんだ接合方法により、溶融はんだをはんだ接合部4に供給する試験を行った結果について説明する。表1は当該試験の条件と評価結果を示す。本試験では、図7に示したように、水平方向に対して45°だけ傾けて保持されたはんだ接合部4に対し、溶融めっき吐出装置10から鉛直方向に吐出された溶融はんだ液滴6を衝突させた。このとき、溶融はんだ液滴6の径は、約300μm、溶融はんだ液滴6の飛翔速度は1.3m/sであった。
なお、表1に示す実施例1及び2は上記第1の実施形態に係るはんだ接合方法に相当し、実施例3は上記第2の実施形態に係るはんだ接合方法に相当し、実施例4及び5は上記第3の実施形態に係るはんだ接合方法に相当する。なお、表1には、比較例として、はんだ接合部4にフラックスのみを塗布した場合の評価結果も併記されている。
表1に示すように、実施例1〜5のいずれの場合も、溶融はんだ液滴6をソルダペースト7に衝突させたときに、該溶融はんだ液滴6は、はんだ接合部4の表面に対して水平方向に滑ったり、目標位置から飛び出したりすることなく、衝突位置に留まった。一方、比較例1〜3のいずれの場合も、溶融はんだ液滴6がはんだ接合部4の表面のフラックスに衝突したときに、該溶融はんだ液滴6は、はんだ接合部4の表面に対する水平方向の滑りや跳ねが生じ、溶融はんだを安定供給できないことが判明した。従って、上記試験結果によれば、本発明のはんだ接合方法により、溶融はんだをはんだ接合部4に安定供給できることが分かる。
また、実施例6、7において、はんだ接合部4周辺の温度Tがフラックス活性化温度TF、TF’よりも低い状態で、溶融はんだ液滴6をソルダペースト7に衝突させた場合、衝突時に溶融はんだ液滴6に若干の移動(滑り等)が生じたが、概ね安定供給可能であった。この理由としては、実施例6、7では、フラックス9が活性化していないので、ソルダペースト7に衝突した溶融はんだ液滴1が、フラックス9によりある程度弾かれたからと考えられる。このように、TがTF、TF’未満である実施例6、7は、TがTF、TF’以上である実施例1〜5よりは劣るものの、ソルダペーストを使用しない比較例1〜3に比べれば、フラックスを十分に安定供給可能であることが分かった。
[5.まとめ]
以上、本発明の第1〜第3の実施形態に係るはんだ接合方法について説明した。上記第1の実施形態によれば、はんだ接合部4にソルダペースト7を塗布した後、はんだ接合部4を外部から加熱した。そして、はんだ接合部4周辺の温度Tが、ソルダペースト7に含まれるフラックス9の活性化温度TF以上、かつ、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の融点TM未満となる温度範囲内となったときに、溶融はんだ吐出装置10から吐出された溶融はんだ液滴6をソルダペースト7に衝突させる。これにより、ソルダペースト7に衝突した溶融はんだ液滴6は、毛細管現象により、勢いよくソルダペースト7の粉末はんだ8の隙間に浸透する。従って、溶融はんだ液滴6が、はんだ接合部4の表面に対して平行な方向の速度成分を有しながら、はんだ接合部4に衝突した場合でも、溶融はんだ液滴6の滑りや飛び出しを生じることなく、安定したはんだ付けを実現できる。
以上、本発明の第1〜第3の実施形態に係るはんだ接合方法について説明した。上記第1の実施形態によれば、はんだ接合部4にソルダペースト7を塗布した後、はんだ接合部4を外部から加熱した。そして、はんだ接合部4周辺の温度Tが、ソルダペースト7に含まれるフラックス9の活性化温度TF以上、かつ、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の融点TM未満となる温度範囲内となったときに、溶融はんだ吐出装置10から吐出された溶融はんだ液滴6をソルダペースト7に衝突させる。これにより、ソルダペースト7に衝突した溶融はんだ液滴6は、毛細管現象により、勢いよくソルダペースト7の粉末はんだ8の隙間に浸透する。従って、溶融はんだ液滴6が、はんだ接合部4の表面に対して平行な方向の速度成分を有しながら、はんだ接合部4に衝突した場合でも、溶融はんだ液滴6の滑りや飛び出しを生じることなく、安定したはんだ付けを実現できる。
さらに、第1の実施形態によれば、上記溶融はんだ液滴6の供給後に、溶融はんだ液滴6が浸透したソルダペーストを、粉末はんだの融点TMより高い温度まで加熱する。これにより、粉末はんだ8を溶融させて、上記浸透した溶融はんだ液滴6と一体化させることができる。当該一体化した溶融はんだは、ソルダペースト7に含まれるフラックスの作用により、容易にぬれ広がり、合金層を形成してはんだ付けが完了する。
また、第2の実施形態によれば、ソルダペースト7が塗布されたはんだ接合部4を、該ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8の融点TMより高い温度まで加熱した後に、溶融はんだ吐出装置10から吐出された溶融はんだ液滴6をソルダペースト7に衝突させる。これにより、ソルダペースト7に含まれる粉末はんだ8が溶融した状態で、当該溶融はんだに対して、溶融はんだ液滴6を衝突させることができる。従って、溶融はんだ液滴6は、衝突と同時に当該溶融はんだと一体化し、フラックスの作用により、容易にぬれ広がる。よって、第1の実施形態と同様に、溶融はんだ液滴6が、はんだ接合部4に対して傾斜方向に衝突した場合でも、溶融はんだ液滴6の滑りや飛び出しを生じることなく、安定したはんだ付けを実現できる。
また、第3の実施形態によれば、融点の低い合金組成をもつ粉末はんだ8から成るソルダペースト7を選択して使用する。これにより、溶融はんだ液滴6が一般的なSn−Ag−Cu系の3元系鉛フリーはんだである場合であっても、はんだ接合時に合金層が形成される温度が、該溶融はんだ液滴の融点TM(例えば217℃)よりも低くなる。従って、第3の実施形態によれば、上記第1の実施形態の効果に加えて、一般的なSn−Ag−Cu系の3元系鉛フリーはんだから成るソルダペースト7を使用する場合に比べて、はんだ接合対象の電子部品1への熱影響を低減できるという効果も得られる。
また、上記第1〜第3の実施形態によれば、はんだ接合完了時におけるフラックスの残渣を、大幅に低減することができる。この理由について以下に説明する。上記第1〜第3の実施形態では、前工程において、従来のフラックスの代わりにソルダペースト7をはんだ接合部4に予め塗布しているが、後工程で溶融はんだ液滴6を供給せずに、前工程で十分に塗布されたソルダペースト7のみではんだ接合を完了させる方法も考えられる。しかしながら、はんだ接合に必要な量のはんだをソルダペーストのみで供給する場合、該ソルダペーストに混練されているフラックスの量も多くなり、はんだ接合後に洗浄を要するフラックス残渣が生じる。
これに対し、上記第1〜第3の実施形態のように、予めはんだ接合部4に対してソルダペースト7を少量だけ塗布し、必要なはんだ量を溶融はんだ液滴6により供給することで、はんだ接合部4に余分なフラックス9を供給しなくてすむ。はんだ接合に必要となるフラックスは、前工程ではんだ接合部4に予め塗布されるソルダペースト7内に含まれるフラックス9だけで十分である。従って、第1〜第3の実施形態のように、ソルダペースト7の塗布と溶融はんだ液滴6の供給を組み合わせることによって、はんだ接合に必要なはんだ量の全てをソルダペーストにより供給する場合と比べて、はんだ接合完了時におけるフラックスの残渣を、大幅に低減することができる。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、図1に示した構造の電子部品1に溶融はんだを供給するため、溶融はんだ液滴6の吐出方向が、はんだ接合部4(接合対象物)の表面に対して傾斜した方向である例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。溶融はんだ液滴6の吐出方向は、接合対象物の表面に対して垂直であってもよい。この場合でも、溶融はんだ液滴6は、接合対象物上に塗布されたソルダペースト7に衝突するので、溶融はんだ液滴6を接合対象物の所望位置に安定供給でき、従来のように、接合対象物上に塗布されたフラックスによって該溶融はんだ液滴が接合対象物上を滑って位置ずれすることがない。
また、本発明によるはんだ接合対象の装置は、図1に示した構造の電子部品1の例に限定されない。例えば、はんだ接合部が隠れた場所に存在するため、該はんだ接合部に対して垂直方向に溶融はんだ液滴を供給できない構造の任意の部品に対して、本発明を広く適用できる。また、本発明は、図1に示した電子部品1の例のように、溶融はんだを用いて2つの金属配線(はんだ接合部4、5)を相互に接合する場合だけではなく、例えば、基板上に配置された下地金属(本発明の接合対象物に相当する。)上に、溶融はんだを用いてバンプを形成する場合にも適用可能である。
1 電子部品
2 実装基板
3 部品筐体
4、5 はんだ接合部
6 溶融はんだ液滴
7 ソルダペースト
8 粉末はんだ
9 フラックス
10 溶融はんだ吐出装置
30 加熱装置
31 溶融はんだ
2 実装基板
3 部品筐体
4、5 はんだ接合部
6 溶融はんだ液滴
7 ソルダペースト
8 粉末はんだ
9 フラックス
10 溶融はんだ吐出装置
30 加熱装置
31 溶融はんだ
Claims (7)
- 粉末はんだ及びフラックスを含むソルダペーストが塗布された接合対象物を加熱する工程と、
溶融はんだ吐出装置から溶融はんだ液滴を吐出して、前記接合対象物を介して加熱された前記ソルダペーストに前記溶融はんだ液滴を衝突させる第2工程と、
を含む、はんだ接合方法。 - 前記第2工程における前記溶融はんだ吐出装置からの前記溶融はんだ液滴の吐出方向は、前記接合対象物の表面に対して傾斜している、請求項1に記載のはんだ接合方法。
- 前記第1工程における加熱温度は、前記ソルダペーストに含まれる前記フラックスが活性化する温度以上、かつ、前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだの融点以下である、請求項1に記載のはんだ接合方法。
- 前記第2工程の後に、前記溶融はんだ液滴が衝突した前記ソルダペーストを前記粉末はんだの融点より高い温度まで加熱する第3工程をさらに含む、請求項3に記載のはんだ接合方法。
- 前記第1工程における加熱温度は、前記ソルダペーストに含まれる前記フラックスが活性化する温度以上、かつ、前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだの融点以上である、請求項1に記載のはんだ接合方法。
- 前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだを成す合金の組成は、前記溶融はんだ液滴を成す合金の組成とは異なり、前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだの融点は、前記溶融はんだ液滴を成す合金の融点よりも低く、
前記第1工程における加熱温度は、前記ソルダペーストに含まれる前記フラックスが活性化する温度以上、かつ、前記ソルダペーストに含まれる前記粉末はんだの融点以上である、請求項1に記載のはんだ接合方法。 - 前記第1工程の前に、前記接合対象物に前記ソルダペーストを塗布する第4工程をさらに含む、請求項1に記載のはんだ接合方法。
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