JP2011252097A - 制振性難燃樹脂組成物 - Google Patents

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Kazuo Yoshida
和郎 吉田
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Abstract

【課題】制振特性、機械特性、成形時の熱安定性、耐湿性に優れ、ハロゲン化合物やアンチモン化合物を使用せずに難燃特性に優れた環境面でも好ましい制振性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜70質量%、(b)スチレン系樹脂0〜70質量%、(c)水添共重合体5〜40質量%、および(d)有機リン化合物1〜40質量%を含有し、前記水添共重合体(c)が、特定の水添ランダム共重合体ブロック(B)を有する水添共重合体であり、前記水添共重合体(c)の動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが0℃以上50℃未満の範囲に少なくとも1つ存在し、前記有機リン化合物(d)が、下記式(I)で表される化合物である。

【選択図】なし

Description

本発明は、制振性と難燃性に優れた樹脂組成物に関する。
近年、パソコン、オーディオ、ゲーム等向けのCD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、MD等光ディスクドライブ用機構部品に用いる材料おいて、軽量化、生産性向上、コストダウンを目的とした樹脂化の動きが進んでいる。
また、温度および振動等において厳しい使用環境となる車載用の、CDプレーヤー、DVDプレーヤー,DVDビデオ,DVDナビゲーション等向けディスクチェンジャー用トレーに用いる材料としては、より優れた耐熱性、寸法精度、制振・制音性能が要求されるようになってきている。特に制振・制音性能については要求が厳しくなってきており、具体的には、走行時の振動によるストッカートレー同士やストッカートレーとストッカートレーを収納するボックス(マガジン)との接触等により発生するノイズの低減が課題となっている。しかしながら、これまでの一般的な材料では、これらの課題に対応することは難しかった。
このように、車載用光ディスクチェンジャーを中心とした光ディスク向けトレーに用いる材料として、耐熱性、寸法精度、軽量性および制振・制音性能を兼ね備えた熱可塑性樹脂材料の開発が要求されている。
また、従来、住宅や乗り物などの換気・給排気設備部品、建築材料分野、自動車,船舶,航空機等の輸送分野、機械分野等では、種々の制振材および防音材が用いられている。これらの制振材および防音材は、主にアスファルト系、合成ゴム系または合成樹脂系の材料からなる。アスファルト系材料は、主にアスファルトにゴムや熱可塑性エラストマーを配合した材料であるが、粘着性が高く、また耐熱性に劣り、さらにアスファルト中にゴムや熱可塑性エラストマーを均一に分散させることが難しい等の問題がある。また、合成ゴム系材料は、複雑な配合や加硫工程を有するため加工性に問題がある。
これらのうち合成樹脂系材料としては、塩化ビニル樹脂が広く使用されてきた。塩化ビニル樹脂は、可塑剤および充填剤の添加量を調整することにより、硬度および力学的物性を広範に設定可能であり、柔軟性、制振性、耐磨耗性および耐傷付き性に優れた材料とすることができる。しかしながら、材料の軽量化や、近年、塩化ビニル樹脂の焼却、分解時の環境に対する負荷が高いとする懸念等から、ポリ塩化ビニル系材料を他の材料で代替する要求が高まってきた。このような代替材料の候補として、オレフィン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン系ブロック共重合体等を例示することができる。
これらのうち、エチレン−α−オレフィン系共重合体等のオレフィン系樹脂は、その分子構造が非極性であるため、表面に印刷および塗装を行うことが困難であるという問題を有している。また、充填剤を添加する場合、充填可能な割合の上限値が低く、また充填剤の分散性が不充分となる場合がある。
また、エチレン−酢酸ビニル共重合体は、耐熱性が低く、また酢酸ビニルモノマーが製品中に残留した場合、特有の不快臭をもち、更に残留する酢酸ビニルモノマーの分解に起因するアセトアルデヒド発生の可能性がある等の問題点を有している。
スチレン系ブロック共重合体やその組成物は、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体が代表的であるが、これらは分子内に二重結合を有し、耐薬品性および耐候性が低いという欠点を有する。また、これらブロック共重合体には水素添加タイプもあるが、生産コストが高く、工業的な応用分野が限定される。また、いずれの重合体の特性も、ポリ塩化ビニル樹脂の弾性率、制振性、耐磨耗性および耐傷付き性等の物理的な特性とは大きな違いがある。
一方、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、高軟化点を有する非晶性熱可塑性樹脂の代表であり、バランスのとれた機械的性質、優れた電気的性質を有し、しかもリン系難燃剤により難燃化されやすい樹脂である。しかしながら、ポリフェニレンエーテル系樹脂単独では、制振性および制音性に乏しい。制振性および制音性を改良したポリフェニレンエーテル系樹脂系材料として、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物を配合した制振材料(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4参照)や、さらにはスチレン−ブタジエンランダム共重合体構造を有するブロック共重合体の水素添加物を配合した制振材料(例えば、特許文献5および特許文献6参照)が知られている。
特開平03−181552号公報 特開平11−12457号公報 特開平11−35817号公報 特開2003−217251号公報 特開2001−139798号公報 特開2007−126520号公報
しかしながら、特許文献1〜6に開示の制振材料では、制振性、機械特性、難燃特性、成形時の熱安定性および耐湿性等の面で不充分であり、これらの特性をさらに向上させた材料の開発が求められている。
そこで、本発明は、制振特性、機械特性、成形時の熱安定性および耐湿性に優れる脂組成物を提供することを課題とする。さらにはハロゲン化合物やアンチモン化合物を使用せずに難燃特性に優れた環境面でも好ましい樹脂組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の研究を重ねた。その結果、ポリフェニレンエーテル系樹脂、スチレン系樹脂、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体ブロックを水添してなる水添ランダム共重合体ブロックを有する特定構造の水添共重合体、ならびに特定構造の有機リン化合物を含有する樹脂組成物が、上記課題を解決することを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
[1]
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜70質量%、
(b)スチレン系樹脂0〜70質量%、
(c)水添共重合体5〜40質量%、および
(d)有機リン化合物1〜40質量%を含有し、
前記水添共重合体(c)が、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加して得られ、且つ共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水素添加して得られる少なくとも1つの水添ランダム共重合体ブロック(B)を有する水添共重合体であり、
前記水添共重合体(c)の動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが0℃以上50℃未満の範囲に少なくとも1つ存在し、
前記有機リン化合物(d)が、下記式(I)で表される化合物である、樹脂組成物。
[式(I)中、
Aは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数5〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、
xおよびyは、それぞれ独立して、0、1、2、3または4であり、
nは、それぞれ独立して0または1であり、
Nは、1〜30である。]
[2]
前記水添共重合体(c)が、
さらに、ビニル芳香族単量体単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(A)を含有し、
カップリング構造を有し、かつ
下記(1)〜(6)を満足する水添共重合体である、[1]に記載の樹脂組成物。
(1)ビニル芳香族単量体単位の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、40〜90質量%であること。
(2)重合体ブロック(A)の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、5〜50質量%であること。
(3)重量平均分子量が3万〜100万であること。
(4)共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が、75%以上であること。
(5)水添共重合体(c)に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが0℃以上40℃未満の範囲に少なくとも1つ存在すること。
(6)分子末端に重合体ブロック(A)を有する構造であること。
[3]
水添共重合体(c)が、
さらに、ビニル芳香族単量体単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(A)、および共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックを水素添加して得られる少なくとも1つの水添重合体ブロック(C)を含有し、
水添共重合体(c)100質量%に対して、前記重合体ブロック(A)の含有量が5〜50質量%であり、前記水添ランダム共重合体ブロック(B)の含有量が40〜90質量%であり、前記水添重合体ブロック(C)の含有量が5〜40質量%である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]
水添共重合体(c)が、
ビニル芳香族単量体単位からなる少なくとも2つの重合体ブロック(A)を含有し、かつ
下記(7)〜(9)を満足する水添共重合体である、[1]〜[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
(7)ビニル芳香族単量体単位の含有量が、水添共重合体(c)100質量%対して、50〜80質量%であること。
(8)重合体ブロック(A)の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、8〜40%であること。
(9)水添ランダム共重合体ブロック(B)の水素添加前のランダム共重合体ブロックにおいて、共役ジエン単量体単位のビニル結合量が8〜20%であること。
[5]
前記水添共重合体(c)の動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが5〜35℃の範囲に少なくとも1つ存在する、[1]〜[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]
半値幅法により測定した2次共振ピークの損失係数(η)が0.04以上である、[1]〜[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]
さらに、水添ブロック共重合体(e)を1〜30質量%含有し、
前記水添ブロック共重合体(e)が、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加して得られ、前記(c)水添共重合体とは異なる構造の水添ブロック共重合体である、[1]〜[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]
さらに、ポリオレフィン系重合体(f)を1〜40質量%含有する、[1]〜[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]
さらに、無機充填剤(g)を2〜60質量%含有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[10]
前記無機充填剤(g)が、板状または鱗片状の無機充填剤である、[9]に記載の樹脂組成物。
[11]
前記無機充填剤(g)が、ガラスフレーク、マイカおよびタルクからなる群より選択される1種以上である、[9]に記載の樹脂組成物。
本発明は、制振特性、機械特性、成形性に優れ、成形時の熱安定性および耐湿性に優れる制振性樹脂材料を提供することを可能とするものである。さらには本発明の樹脂組成物は、ハロゲン化合物やアンチモン化合物を使用しなくても難燃特性に優れるため、環境面でも好ましい。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下、本願発明について具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
≪樹脂組成物≫
本実施形態に係る樹脂組成物は、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜70質量%、(b)スチレン系樹脂0〜70質量%、(c)特定の水添共重合体5〜40質量%、および(d)特定の有機リン化合物1〜40質量%を含有する。
以下、樹脂組成物の各構成成分について、詳細に説明する。
<ポリフェニレンエーテル系樹脂(成分(a))>
本実施形態において、成分(a)のポリフェニレンエーテル系樹脂としては公知のものが使用できる。
すなわち、ポリフェニレンエーテル系樹脂とは、下記一般式(II)で示される重合体の総称であって、一般式(II)で示される重合体の1種単独であっても、2種以上が組合わされた共重合体であってもよい。
(式中、R5、R6、R7およびR8は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、置換炭化水素基、アルコキシ基、シアノ基、フェノキシ基またはニトロ基を表し、nは重合度を表わす整数である。)
本実施形態において好ましいポリフェニレンエーテル系樹脂は、上記一般式(II)におけるR5およびR8がアルキル基、特に炭素原子数1〜4のアルキル基であり、R6およびR7は、水素原子もしくは炭素原子数1〜4のアルキル基であるポリマーである。nは通常50以上が好ましい。
本実施形態に用いる(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−エチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−メチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2−エチル−6−プロピル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジブロモメチル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジトリル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジクロロ−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,6−ジベンジル−1,4−フェニレン)エーテル、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルなどが挙げられる。中でも特に好ましいポリフェニレンエーテル系樹脂は、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルである。
また、ポリフェニレンエーテル系の共重合体としては、例えば、上記ポリフェニレンエーテル繰返し単位中にアルキル3置換フェノール、たとえば2,3,6−トリメチルフェノールを一部含有する共重合体を挙げることができる。また、これらのポリフェニレンエーテル系樹脂に、スチレン系化合物がグラフトした共重合体であってもよい。スチレン系化合物グラフト化ポリフェニレンエーテルとしては、上記ポリフェニレンエーテル系樹脂にスチレン系化合物として、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどをグラフト重合して得られる共重合体が挙げられる。
さらに、ポリフェニレンエーテル系樹脂は、極性基を有する化合物により変性されていてもかまわない。該化合物としては、酸ハライド、カルボニル基、酸無水物、酸アミド、カルボン酸エステル、酸アジド、スルフォン基、ニトリル基、シアノ基、イソシアン酸エステル、アミノ基、イミド基、水酸基、エポキシ基、オキサゾリン基、チオール基を有する化合物などが挙げられる。
本実施形態に用いる(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、30℃の0.5g/1dlクロロホルム溶液で測定した還元粘度(ηsp/c)が、好ましくは0.2〜1.0、より好ましくは0.3〜0.7、さらに好ましくは0.4〜0.6、特に好ましいのは0.45〜0.55である。
また、本実施形態に用いる(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂としては、[重量平均分子量/数平均分子量]の比が、好ましくは1.8〜5.0であり、より好ましくは2.2〜3.5であるような、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルが好適に使用可能である。かかる物性・特性を具備するポリフェニレンエーテル系樹脂は、成形流動性の観点からも好適である。なお、本明細書における重量平均分子量および数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算の分子量を基準として算出された値である。
上述した(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物において、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量は、10〜70質量%であり、好ましくは15〜65質量%であり、より好ましくは20〜60質量%である。(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量が前記範囲内であると、難燃性と耐熱性とのバランスが良好となる。
<スチレン系樹脂(成分(b))>
本実施形態に用いる成分(b)スチレン系樹脂は、通常のラジカル重合にて製造されるスチレン系樹脂、およびシンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂のどちらを用いてもよい。また、ゴム変性スチレン系樹脂も好適に用いられる。
通常のラジカル重合にて製造されるスチレン系樹脂としては、スチレン化合物の単独重合物、あるいはスチレン化合物と共重合可能な単量体を含有したものが挙げられる。上記スチレン化合物の例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−メチル−p−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのアルキル置換スチレン、o−クロルスチレン、m−クロルスチレン、p−クロルスチレン、p−ブロモスチレン、ジクロルスチレン、ジブロモスチレン、トリクロルスチレン、トリブロモスチレンなどのハロゲン化スチレンなどが挙げられるが、これらの中ではスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、スチレン化合物と共重合可能な単量体の例としては、たとえばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、マレオニトリルなどのシアン化ビニルや、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸などが挙げられるが、これらの中では、アクリロニトリルが好ましい。
また、本実施形態においては、より優れた耐薬品性を発現させる場合においては、シンジオタクチック構造を有するスチレン系樹脂を使用してもよい。上記シンジオタクチック構造とは、炭素−炭素結合から形成される主鎖に対してフェニル基あるいは置換フェニル基が交互に反対方向に位置する立体構造を有するものであり、そのタクティシティーは同位体炭素による核磁気共鳴法(13C−NMR法)により定量される。13C−NMR法により測定されるタクティシティーは、連続する複数個の構成単位の存在割合、たとえば2個の場合はダイアッド、3個の場合はトリアッド、5個の場合はペンタッドによって示すことができる。本実施形態において、シンジオタクチックポリスチレンとは、通常はダイアッド率75%以上、好ましくは85%以上、またはラセミペンタッド率30%以上、好ましくは50%以上のシンジオタクティシティーを有するスチレン系樹脂である。該スチレン系樹脂は、ポリスチレン、ポリ(アルキルスチレン)、ポリ(アルコキシスチレン)、ポリ(ビニル安息香酸エステル)およびこれらの混合物、あるいはこれらを主成分とする共重合体を包含する。なお、ここでポリ(アルキルスチレン)としては、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(エチルスチレン)、ポリ(イソプロピルスチレン)、ポリ(ターシャリーブチルスチレン)などが挙げられる。また、ポリ(アルコキシスチレン)としては、ポリ(メトキシスチレン)、ポリ(エトキシスチレン)などが挙げられる。これらの中、特に好ましいスチレン系樹脂として、ポリスチレン、ポリ(p−メチルスチレン)、ポリ(m−メチルスチレン)、ポリ(p−ターシャリーブチルスチレン)、さらにはスチレンとp−メチルスチレンとの共重合体を挙げることができる。このようなシンジオタクチックポリスチレンは、たとえば不活性炭化水素溶媒中または溶媒の不存在下に、チタン化合物、および水とトリアルキルアルミニウムの縮合生成物を触媒として、スチレン系単量体(上記スチレン系樹脂に対応する単量体)を重合することにより製造することができ(たとえば特開昭62−104818号公報、特開昭63−268709号公報)、また市販のものを使用することもできる。
上述した(b)スチレン系樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物において、(b)スチレン系樹脂の含有量は、0〜70質量%であり、好ましくは10〜70質量%であり、より好ましくは20〜50質量%である。(b)スチレン系樹脂の含有量が前記範囲内であると、成形流動性と耐熱性とのバランスが良好となる。
本実施形態の樹脂組成物において、ポリフェニレンエーテル系樹脂(a)、またはポリフェニレンエーテル系樹脂(a)とスチレン系樹脂(b)とからなる樹脂成分は、剛性、耐熱性、難燃性等の観点から、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100質量部に対して20質量部以上であり、制振性と成形流動性の点から95質量部以下である。好ましくは30〜95質量部、より好ましくは40〜90質量部、特に好ましくは50〜90質量部である。特に剛性が必要な構造部品用途、例えば光ディスクドライブ用機構部品、プロジェクターのなどの駆動部周辺部品などに用いる場合には55質量部以上が好ましい。
成分(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂と成分(b)スチレン系樹脂との併用比率は難燃性、機械特性、耐熱性、成形流動性および加工性により任意に調整可能であるが、一般には、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂/(b)スチレン系樹脂(質量比)は、100/0〜15/85の範囲が好ましく、より好ましくは95/5〜20/80、さらに好ましくは90/10〜20/80、特に好ましくは80/20〜30/70の範囲である。
(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の割合は、成分(a)+成分(b)=100質量部に対して、耐熱性と難燃性との観点から15質量部以上が好ましく、成形流動性と加工性との観点からは95質量部以下が好ましい。スチレン系樹脂としてポリスチレンを併用した場合は、成形流動性および加工性に優れる。スチレン系樹脂としてゴム変性スチレン系樹脂を併用した場合は、機械特性、特に耐衝撃性に優れる。
<水添共重合体(成分(c))>
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加(以下、「水添」とも言う。)して得られる水添共重合体であって、且つ共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水素添加して得られる水添ランダム共重合体ブロック(B)(以下「水添ランダム共重合体ブロック(B)」とも記す。)を有する水添共重合体である。
また、(c)水添共重合体の動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが0℃以上50℃未満の範囲に少なくとも1つ存在する。
ここで、「ビニル芳香族単量体単位」とは、単量体であるビニル芳香族化合物を重合した結果生ずる重合体の構成単位を意味し、その構造は、置換ビニル基に由来する置換エチレン基の二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。また、「共役ジエン単量体単位」とは、単量体である共役ジエン化合物を重合した結果生ずる、重合体の構成単位を意味し、その構造は、共役ジエン単量体に由来するオレフィンの二つの炭素が結合部位となっている分子構造である。
本実施形態においては、カップリング構造を有する(c)水添共重合体が特に好ましい。また、本実施形態で言うブロック共重合体のカップリング構造とは、一般に呼ばれているラジアルテレブロック構造、星形構造、放射型ブロック構造などの呼び方で表わされている構造を含むものであり、3次元構造、網目構造、かご型構造等の化学反応を介した架橋構造は本実施形態には含まれない。
一般に、ポリフェニレンエーテル系材料は、酸素濃度指数が低く燃焼し易いジエン系化合物の非水添重合体および水添重合体を配合することにより、難燃性は著しく低下し易い。しかしながら、本実施形態において、当該水添共重合体(c)は、ポリフェニレンエーテル系材料に配合しても、驚くべきことに難燃性の低下が小さく、特にこのカップリング構造を持つ水添共重合体(c)と後述するリン系難燃剤(d)とを併用した場合には、難燃性を維持しながら抜群の制振性能を有する樹脂組成物が得られる。したがって、当該成分を含有する樹脂組成物は、難燃性を要求される制振材料およびその用途においては特に有用である。
本実施形態に用いる成分(c)の水添共重合体は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる共重合体(以下、しばしば「ベース非水添共重合体」と称する)を水添して得られるものである。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体としては、ビニル芳香族単量体単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(A)(以下「重合体ブロック(A)」とも記す。)と、共役ジエン単量体単位およびビニル芳香族単量体単位からなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水添して得られる少なくとも1つの水添ランダム共重合体ブロック(B)とを含有する水添共重合体が好ましい。該成分(c)水添共重合体は、さらに、共役ジエン単量体単位からなる(非水添)重合体ブロックを水添して得られる水添重合体ブロック(C)(以下「水添重合体ブロック(C)」とも記す。)を含有することもできる。
上記重合体ブロック(A)および水添重合体ブロック(C)は、物理架橋点のような役割を果たすので「拘束相」と称する。これに対して、上記水添ランダム共重合体ブロック(B)は、「非拘束相」と称する。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体は、拘束相である重合体ブロックを2個以上有することが好ましい。また、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体が、水添重合体ブロック(C)を有しない場合、水添共重合体は重合体ブロック(A)を少なくとも2個有することが好ましい。本実施形態で用いる成分(c)水添共重合体が拘束相である重合体ブロックを2個以上有する場合、水添共重合体の機械強度に優れる。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体が、水添重合体ブロック(C)を有しない場合、該水添共重合体に関して得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−20〜80℃の範囲に水添ランダム共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しないことが好ましい。ここで、「−20〜80℃の範囲に水添ランダム共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない」とは、この温度範囲において水添共重合体ブロック(B)の結晶化に起因するピークが現れないか、または、結晶化に起因するピークが認められるが、その結晶化による結晶化ピーク熱量が好ましくは3J/g未満、より好ましくは2J/g未満、更に好ましくは1J/g未満、特に好ましくは結晶化ピーク熱量が無いことを意味する。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体が、水添重合体ブロック(C)を有する場合には、上記示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−20〜80℃の範囲に水添ランダム共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しないことは必要とされない。しかし、水添重合体ブロック(C)を有する場合においても、上記示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−20〜80℃の範囲に水添ランダム共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しないことが好ましい。
示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて−20〜80℃の範囲に水添ランダム重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない成分(c)の水添共重合体は、柔軟性が良好であり、本実施形態においては好ましい。上記のような−20〜80℃の範囲に水添ランダム共重合体ブロック(B)に起因する結晶化ピークが実質的に存在しない成分(c)水添共重合体は、後述するようなビニル結合量調整剤や、共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整するための、後述するような調整剤を用いて後述するような条件下で重合反応を行うことによって得られる(非水添)ブロック共重合体を水添することによって得られる。
水添重合体ブロック(C)を有する場合、示差走査熱量測定(DSC)チャートにおける、水添重合体ブロック(C)に起因する結晶化ピークに関しては、結晶化ピーク温度が30℃以上、好ましくは45〜100℃、更に好ましくは50〜90℃の温度範囲に結晶化ピークを有することが好ましい。また、この結晶化ピーク熱量は好ましくは3J/g以上、好ましくは6J/g以上、更に好ましくは10J/g以上である。
本実施形態において、結晶化ピーク温度および結晶化ピーク熱量は、示差走査熱量測定装置を用いて測定することができる。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体におけるビニル芳香族単量体単位の含有量は、水添重合体ブロック(C)を有しない場合、ポリフェニレンエーテル系樹脂との相溶性、得られた樹脂組成物の制振性と機械強度とのバランスの観点から、水添共重合体(c)100質量%に対して、40〜90質量%であることが好ましい。本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体のビニル芳香族単量体単位の含有量は、水添共重合体(c)100質量%に対して、更に好ましくは45〜85質量%、とりわけ好ましくは50〜80質量%、最も好ましくは55〜75質量%である。
成分(c)の水添共重合体が水添重合体ブロック(C)を有する場合、ビニル芳香族単量体単位の含有量は、水添共重合体(c)100質量%に対して、好ましくは35質量〜85質量%、より好ましくは40〜80質量%、更に好ましくは50〜80質量%である。
ビニル芳香族単量体単位の水添共重合体(c)100質量%に対する含有率は、ビニル芳香族単量体単位のベース非水添共重合体に対する含有率とほぼ等しいので、ビニル芳香族単量体単位の水添共重合体(c)100質量%に対する含有率は、ベース非水添共重合体に対する含有率として求める。ビニル芳香族単量体単位の水添共重合体(c)100質量%に対する含有率は、ベース非水添共重合体を検体として、紫外分光光度計を用いて測定する。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体において、重合体ブロック(A)の含有量は、水添共重合体(c)100質量%に対して、5〜50質量%である範囲が好ましい。本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体の重合体ブロック(A)の含有量が上記範囲にあれば、ポリフェニレンエーテル系樹脂(a)とスチレン系樹脂(b)との混合性が良く、柔軟性に優れる。重合体ブロック(A)の含有量は、水添共重合体(c)100質量%に対して、更に好ましくは5〜45質量%、とりわけ好ましくは8〜40質量%、最も好ましくは10〜35質量%である。
本実施形態において、重合体ブロック(A)の水添共重合体(c)100質量%に対する含有率は、重合体ブロック(A)のベース非水添共重合体に対する含有率とほぼ等しいので、重合体ブロック(A)の水添共重合体(c)100質量%に対する含有率は、重合体ブロック(A)のベース非水添共重合体に対する含有率として求める。具体的には、四酸化オスミウムを触媒としてベース非水添共重合体をターシャリーブチルハイドロパーオキサイドにより酸化分解する方法(I.M.KOLTHOFF,etal.,J.Polym.Sci.1,429(1946)に記載の方法、以下、しばしば「四酸化オスミウム分解法」と称する。)で求めたビニル芳香族重合体ブロック成分の重量(但し、平均重合度が約30以下のビニル芳香族重合体成分は除かれている。)を用いて、次の式から求める。
ビニル芳香族単量体からなる重合体ブロック(A)の含有量(質量%)={(ベース非水添共重合体中のビニル芳香族単量体からなる重合体ブロック(A)の質量/ベース非水添共重合体の質量)}×100。
なお、重合体ブロック(A)の成分(c)水添共重合体に対する含有率を直接測定する場合には、成分(c)の水添共重合体を検体として、核磁気共鳴装置(NMR)を用いて行うことができる(Y.Tanaka,et al.,RUBBER CHEMISTRY and TECHNOLOGY 54,685(1981)に記載の方法;以後、「NMR法」と称する)。
なお、上記四酸化オスミウム分解法によって求めた重合体ブロック(A)の含有率(「Os値」と称する。)と、上記NMR法によって求めた重合体ブロック(A)の含有率(「Ns値」と称する。)には、相関関係がある。本発明者らが種々の共重合体を用いて検討した結果、その関係は次の式で表されることが分かった。
Os値=−0.012(Ns値)2+1.8(Ns値)−13.0
従って、本実施形態においてNMR法によって重合体ブロック(A)の水添共重合体(c)100質量%に対する含有率(Ns値)を求めた場合には、上記式に基づいてNs値をOs値に換算する。
本実施形態に用いる成分(c)の水添共重合体における水添ランダム共重合体ブロック(B)の含有量に関しては、特に限定はない。しかし、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体が水添重合体ブロック(C)を有しない場合には、制振特性と柔軟性との点から、水添ランダム共重合体ブロック(B)の含有量は、水添共重合体(c)100質量%に対して、好ましくは50〜95質量%、更に好ましくは55〜92質量%、特に好ましくは65〜90質量%である。
一方、本実施形態に用いる成分(c)の水添共重合体が水添重合体ブロック(C)を有する場合には、水添ランダム共重合体ブロック(B)の含有量は、水添共重合体(c)100質量%に対して、好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは45〜88質量%、とりわけ好ましくは50〜85質量%である。
上記のように、水添ランダム共重合体ブロック(B)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水添して得られる。水添ランダム共重合体ブロック(B)の含有量は、上記(非水添)ランダム共重合体ブロックを製造する際の共役ジエン単量体およびビニル芳香族単量体の添加量から求められる。なお、水添ランダム共重合体ブロック(B)の成分(c)水添共重合体に対する含有率は、上記(非水添)ランダム共重合体ブロックのベース非水添共重合体に対する含有率とほぼ等しいので、水添ランダム共重合体ブロック(B)の成分(c)水添共重合体に対する含有率は、上記(非水添)ランダム共重合体ブロックのベース非水添共重合体に対する含有率として求める。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体における水添重合体ブロック(C)の含有量に関しては、特に限定はない。しかし、柔軟性と低温特性との点から、水添重合体ブロック(C)の含有量は、水添共重合体(c)100質量%に対して、好ましくは0〜50質量%、更に好ましくは5〜40質量%、更に好ましくは10〜35質量%、とりわけ好ましくは15〜30質量%である。
上記のように、水添重合体ブロック(C)は共役ジエン単量体単位からなる(非水添)重合体ブロックを水添して得られる。水添重合体ブロック(C)の含有量は、上記共役ジエン単量体単位からなる(非水添)重合体ブロックを製造する際の共役ジエン単量体の添加量から求められる。なお、水添重合体ブロック(C)の成分(c)水添共重合体に対する含有率は、上記(非水添)重合体ブロックのベース非水添共重合体に対する含有率とほぼ等しいので、水添重合体ブロック(C)の成分(c)水添共重合体に対する含有率は、上記(非水添)重合体ブロックのベース非水添共重合体に対する含有率として求める。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体の重量平均分子量は、好ましくは3万〜100万である。本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体は、重量平均分子量が上記範囲にあることにより、機械的強度と成形加工性とのバランスに優れる。機械的強度や衝撃吸収性と成形加工性とのバランスの点からは、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体の重量平均分子量は、より好ましくは5万〜80万、更に好ましくは10万〜50万、とりわけ好ましくは15万〜40万である。特に、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体が水添重合体ブロック(C)を有する場合、成形加工性の点から、好ましくは10万を超え、100万以下、更に好ましくは12万〜80万、とりわけ好ましくは14万〜50万である。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体の分子量分布(Mw/Mn)(重量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比)は、好ましくは10以下、さらに好ましくは1.01〜8.0、特に好ましくは1.1〜5.0である。成形加工性を重視する場合、好ましくは1.3〜5.0、さらに好ましくは1.5〜5.0、ことさら好ましくは1.6〜4.5、特に好ましくは1.8〜4.0である。成分(c)水添共重合体の重量平均分子量はベース非水添共重合体の重量平均分子量とほぼ等しいので、水添共重合体の重量平均分子量はベース非水添共重合体の重量平均分子量として求める。ベース非水添共重合体の重量平均分子量は、分子量が既知の市販の標準単分散ポリスチレンに関して得た検量線を使用して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって求める。水添共重合体の数平均分子量も同様にして求める。分子量分布は、重量平均分子量の数平均分子量に対する比として、計算で求める。
上記のように、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体は共役ジエン単量体単位とビニル芳香族化合物単量体単位とを含む(非水添)共重合体(即ち、ベース非水添共重合体)を水添して得られる。本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体の該共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率は、75〜100%が好ましい。水添率は、熱安定性の点から、より好ましくは80〜100%、更に好ましくは85〜100%、特に好ましくは90〜100%である。
また、成分(c)水添共重合体におけるビニル芳香族単量体単位の二重結合の水添率に関しては特に限定はないが、水添率は好ましくは50%以下、更に好ましくは30%以下、特に好ましくは20%以下である。
なお、本実施形態において、成分(c)水添共重合体における上記水添率は、核磁気共鳴装置を用いて測定することができる。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体は、該水添共重合体に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて損失正接(tanδ)のピークが、0℃以上50℃未満、好ましくは0℃以上40℃未満、より好ましくは5℃以上35℃未満、更に好ましくは5℃以上30℃未満の範囲に少なくとも1つ存在する。0℃以上50℃未満の範囲に存在する損失正接(tanδ)のピークは、水添ランダム共重合体ブロック(B)(共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水添して得られる水添ランダム重合体ブロック)に起因するピークである。損失正接のピークが0℃以上50℃未満の範囲に少なくとも1つ存在することは、成分(c)水添共重合体の制振性、柔軟性、耐磨耗性、耐傷付き性、引っ張り強度等の機械特性のバランスの点でも好ましい。
また、本実施形態において、重合体ブロック(A)に起因する損失正接のピークの存在に関しては特に限定はないが、重合体ブロック(A)に起因する損失正接のピークは、通常、80℃を超え150℃以下の温度範囲内に存在する。
なお、本実施形態において、動的粘弾性スペクトルにおける損失正接(tanδ)のピークは、市販されている粘弾性測定解析装置を用いて測定される。
上記のように、水添ランダム共重合体ブロック(B)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる非水添ランダム共重合体ブロックを水添して得られる。上記非水添ランダム共重合体における共役ジエン単量体単位/ビニル芳香族単量体単位(重量比)に関しては、特に限定はない。しかし、上記のように、損失正接のピークが0℃以上、50℃未満の範囲に少なくとも1つ存在することを考慮すると、共役ジエン単量体単位/ビニル芳香族単量体単位(重量比)は、好ましくは60/40〜10/90、更に好ましくは50/50〜20/80、特に好ましくは45/55〜25/75であることが推奨される。
上記のように、水添ランダム共重合体ブロック(B)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水添して得られる。上記(非水添)ランダム共重合体ブロックにおける共役ジエン単量体単位のミクロ構造(シス、トランス、ビニルの比率)は、極性化合物等の使用により任意に変えることができる。本実施形態において、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロック中の共役ジエン単量体単位のビニル結合量は、40%未満であることが好ましい。{以下、1,2−ビニル結合と3,4−ビニル結合との合計量(但し、共役ジエンとして1,3−ブタジエンを使用した場合には、1,2−ビニル結合量)を単にビニル結合量と称する。}。ビニル結合量は、取り扱い性(耐ブロッキング)と制振特性の点から、好ましくは5〜35%、さらに好ましくは8〜25%、特に好ましくは8〜20%である。
本実施形態において、水添重合体ブロック(C)は、共役ジエン単量体単位からなるビニル結合量が30%未満の(非水添)重合体ブロックを水添して得られることが好ましい。上記(非水添)重合体ブロックのビニル結合量は、取り扱い性(耐ブロッキング)の点から、好ましくは8〜25%、更に好ましくは10〜25%、とりわけ好ましくは12〜20%である。
上記のビニル結合量は、ベース非水添共重合体を検体として赤外分光光度計を用いて測定される。
本実施形態に用いる成分(c)の水添共重合体は、いかなる構造のものでも使用可能であるが、カップリング構造を有することが好ましい。このような成分(c)水添共重合体の例として、カップリング剤を介してカップリング結合された下記式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
[(A−B−C)n]m−X、
[A−(B−C)n]m−X、[(A−B)n−C]m−X、
[(A−B−A)n−C]m−X、
[(B−A−B)n−C]m−X、[(C−B−A)n]m−X、
[C−(B−A)n]m−X、
[C−(A−B−A)n]m−X、
[C−(B−A−B)n]m−X
また、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体として、少なくとも2個の重合体ブロック(A)と、少なくとも1個の水添ランダム共重合体ブロック(B)とからなる、カップリング構造を有する水添共重合体も好ましく用いられる。このような水添共重合体の例として、下記式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
[(A−B)n]m−X、 [(B−A)n−B]m−X、
[(A−B)n−A]m−X、 [(B−A)n+1]m−X
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体の別の態様としてはカップリング構造を有さず、少なくとも2個の重合体ブロック(A)と、少なくとも1個の水添共重合体ブロック(B)とを包含する水添共重合体が挙げられるが、このような水添共重合体の例として、下記式で表されるような構造を有するものが挙げられる。
(C−B)n、 C−(B−C)n、 B−(C−B)n 、
C−(B−A)n、C−(A−B)n、
C−(A−B−A)n、C−(B−A−B)n 、
A−C−(B−A)n、A−C−(A−B)n、
A−C−(B−A)n−B
(A−B)n+1 、 A−(B−A)n、
B−(A−B)n+1、
上記式において、各Aはそれぞれ独立してビニル芳香族単量体単位からなる重合体ブロックを表す。各Bはそれぞれ独立して共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体を水添して得られる水添ランダム共重合体ブロックを表す。各Cはそれぞれ独立して、共役ジエン単量体単位からなる(非水添)重合体ブロックを水添して得られる水添重合体ブロックを表す。各ブロックの境界は必ずしも明瞭に区別されていなくてもよい。(非水添)ランダム共重合体を水添して得られる水添ランダム共重合体ブロック(B)中のビニル芳香族単量体単位は、均一に分布していてもよいし、テーパー状に分布していてもよい。また水添ランダム共重合体ブロック(B)には、ビニル芳香族単量体単位が均一に分布している部分および/またはテーパー状に分布している部分がそれぞれ複数個存在していてもよい。また水添ランダム共重合体ブロックBには、ビニル芳香族単量体単位含有量が異なるセグメントが複数個存在していてもよい。各nはそれぞれ独立して1以上の整数、好ましくは1〜5の整数である。各mはそれぞれ独立して2以上の整数、好ましくは2〜11の整数である。各Xはそれぞれ独立してカップリング剤の残基または多官能開始剤の残基を表す。カップリング剤としては、後述の2官能以上のカップリング剤を用いることができる。多官能開始剤としては、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムとの反応生成物、ジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物などを用いることができる。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体は、上記式で表される構造を有するものの任意の混合物であってもよい。上記式で表される水添共重合体の中、本実施形態において、組成物の機械特性と相溶性の観点から特に好ましい成分(c)水添共重合体は、水添ランダム共重合体ブロック(B)とビニル芳香族重合体ブロック(A)との結合体をカップリングした構造を有し、且つ分子末端にビニル芳香族重合体ブロック(A)を有する構造のものである。
また、本実施形態においては、カップリング構造を有する水添共重合体(c)と、カップリングしていない構造の水添共重合体とを併用することができる。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体は、該水添共重合体に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが0℃以上50℃未満の範囲に少なくとも1つ存在する。上記範囲に存在する損失正接のピークは、水添共重合体ブロック(B)(共役ジエン単量体単位とビニル芳香族化合物と単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水添して得られる水添共重合体ブロック)に起因するピークである。上記範囲以外においては、損失正接(tanδ)のピークが存在しても存在しなくてもよい。たとえば、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体は、上記範囲以外にピークを有する重合体ブロックを含んでいてもよい。
そのような重合体ブロックの例として、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)共重合体ブロック(ただし、ビニル芳香族単量体単位の含有量が50重量%を超える。)を水添して得られる水添共重合体ブロック、および、ビニル結合量が30%以上である共役ジエン単量体単位からなる(非水添)重合体ブロックを水添して得られる水添重合体ブロックが挙げられる。但し、水添共重合体がこれらの重合体ブロックを含有するとき、該水添共重合体に関して得られた示差走査熱量測定(DSC)チャートにおいて、−20〜80℃、好ましくは−50〜100℃の範囲に結晶化ピークが実質的に存在しないことが推奨される。
また、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体として、共重合体ブロック(B)に関わる損失正接(tanδ)のピークが0℃以上50℃未満の範囲に少なくとも1つ存在し、かつ重合体ブロック(C)や共役ジエン単量体単位が比較的多い共重合体ブロックに関わる損失正接(tanδ)のピークが−50以上0℃未満の範囲に少なくとも1つ存在する水添共重合体は、本実施形態の特徴の一つである制振性および低温特性の温度依存性が少ない点で好ましい。かかる水添共重合体において、損失正接(tanδ)のピークが−40℃〜−10℃未満の範囲に少なくとも1つ、かつ5〜30℃の範囲と30℃を超えて、80℃以下の範囲とにそれぞれ少なくとも1つ存在する水添共重合体が制振性および低温特性の温度依存性が少ないことから特に好ましい。
本実施形態において、共役ジエンは1対の共役二重結合を有するジオレフィンである。共役ジエンの例として、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(即ちイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンが挙げられる。これらのうち特に好ましいのは1,3−ブタジエンおよびイソプレンである。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
また、ビニル芳香族化合物の例として、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルエチレン、N,N−ジメチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレンが挙げられる。これらは一種のみならず二種以上を使用してもよい。
本実施形態において好ましく用いられる、成分(c)水添共重合体の態様としては、水添共重合体(c)が、ビニル芳香族単量体単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(A)、および共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックを水素添加して得られる少なくとも1つの水添ランダム共重合体ブロック(B)を含有し、カップリング構造を有し、かつ下記(1)〜(6)を満足する水添共重合体が挙げられる。
(1)ビニル芳香族単量体単位の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、40〜90質量%であること。
(2)重合体ブロック(A)の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、5〜50質量%であること。
(3)重量平均分子量が、3万〜100万であること。
(4)共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が、75%以上であること。
(5)水添共重合体(c)に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが0℃以上40℃未満の範囲に少なくとも1つ存在すること。
(6)分子末端に重合体ブロック(A)を有する構造であること。
また、本実施形態において好ましく用いられる、成分(c)水添共重合体の他の一態様としては、水添共重合体(c)が、少なくとも2つの重合体ブロック(A)および少なくとも1つの水添共重合体ブロック(B)を含有し、かつ下記(7)〜(9)を満足する水添共重合体が挙げられる。
(7)ビニル芳香族単量体単位の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、50〜80質量%であること。
(8)重合体ブロック(A)の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、8〜40質量%であること。
(9)水添ランダム共重合体ブロック(B)の水素添加前のランダム共重合体ブロックにおいて、共役ジエン単量体単位のビニル結合量が8〜20%であること。
上記のように、本実施形態に用いる水添共重合体(c)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位からなる(非水添)ランダム共重合体を水添して得られる。該(非水添)ランダム共重合体の製造方法については特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。例えば、炭化水素溶媒中で有機アルカリ金属化合物等の重合開始剤を用いてアニオンリビング重合により製造することができる。炭化水素溶媒の例として、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、メチルシクロヘプタンなどの脂環式炭化水素類;およびベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素が挙げられる。
重合開始剤の例としては、共役ジエンおよびビニル芳香族化合物に対してアニオン重合活性を有する脂肪族炭化水素アルカリ金属化合物、芳香族炭化水素アルカリ金属化合物、有機アミノアルカリ金属化合物が挙げられる。アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウムが挙げられる。好適な有機アルカリ金属化合物の例としては、炭素数1から20の脂肪族および芳香族炭化水素リチウム化合物であり、1分子中に少なくとも1個のリチウムを含む化合物(モノリチウム化合物、ジリチウム化合物、トリリチウム化合物、テトラリチウム化合物など)が挙げられる。具体的にはn−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、tert−ブチルリチウム、n−ペンチルリチウム、n−ヘキシルリチウム、ベンジルリチウム、フェニルリチウム、トリルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとsec−ブチルリチウムとの反応生成物、さらにジビニルベンゼンとsec−ブチルリチウムと少量の1,3−ブタジエンとの反応生成物等が挙げられる。さらに、米国特許第5,708,092号明細書、英国特許第2,241,239号明細書、米国特許第5,527,753号明細書等に開示されている有機アルカリ金属化合物も使用することができる。
本実施形態において、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合する際に、重合体に組み込まれる共役ジエン単量体単位に起因するビニル結合(1,2ビニル結合または3,4ビニル結合)の量の調整や共役ジエンとビニル芳香族化合物とのランダム共重合性を調整するために、調整剤として第3級アミン化合物またはエーテル化合物を添加することができる。
第3級アミン化合物の例として、式Rabc N(ただし、Ra、Rb、Rcはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基または第3級アミノ基を有する炭化水素基である)で表される化合物が挙げられる。具体的には、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、N,N−ジメチルアニリン、N−エチルピペリジン、N−メチルピロリジン、N,N,N',N'−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N',N'−テトラエチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタン、トリメチルアミノエチルピペラジン、N,N,N',N”,N”−ペンタメチルエチレントリアミン、N,N’−ジオクチル−p−フェニレンジアミン等が挙げられる。
エーテル化合物の例としては、直鎖状エーテル化合物および環状エーテル化合物が挙げられる。直鎖状エーテル化合物の例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジフェニルエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のジエチレングリコールのジアルキルエーテル化合物類が挙げられる。また、環状エーテル化合物の例としては、テトラヒドロフラン、ジオキサン、2,5−ジメチルオキソラン、2,2,5,5−テトラメチルオキソラン、2,2−ビス(2−オキソラニル)プロパン、フルフリルアルコールのアルキルエーテルが挙げられる。
本実施形態において、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として共役ジエン単量体とビニル芳香族単量体とを共重合する方法は、バッチ重合であっても連続重合であってもよく、それらの組み合わせであってもよい。特に成形加工性の点で分子量分布を好ましい範囲に調整する上では、連続重合が推奨される。重合温度は、通常0〜180℃、好ましくは30〜150℃である。重合に要する時間は他の条件によって異なるが、通常は48時間以内であり、好ましくは0.1〜10時間である。又、重合系の雰囲気は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気にすることが好ましい。重合圧力は、上記重合温度範囲で単量体および溶媒を液相に維持するのに充分な圧力の範囲であれば特に限定はない。更に、重合系内は触媒およびリビングポリマーを不活性化させるような不純物(水、酸素、炭酸ガスなど)が混入しないように留意する必要がある。
本実施形態において、カップリング構造を有する水添共重合体(c)は、例えば、前記の重合が終了した時点で2官能以上のカップリング剤を用いてカップリング反応を行うことにより得ることができる。2官能以上のカップリング剤には特に限定はなく、公知のものを用いることができる。2官能性のカップリング剤の例として、ジメチルジクロロシラン、ジメチルジブロモシラン等のジハロゲン化合物;安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸フェニル、フタル酸エステル類等の酸エステル類が挙げられる。この中でジハロゲン化合物が好ましく用いられる。
3官能以上の多官能カップリング剤の例として、3価以上のポリアルコール類;エポキシ化大豆油、ジグリシジルビスフェノールA等の多価エポキシ化合物;式R4-n SiXn (ただし、各Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基を表し、各Xはそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、nは3または4を表す。)で表されるハロゲン化珪素化合物、例えばメチルシリルトリクロリド、t−ブチルシリルトリクロリド、四塩化珪素、およびこれらの臭素化物;式R4-nSnXn (ただし、各Rはそれぞれ独立して炭素数1から20の炭化水素基を表し、各Xはそれぞれ独立してハロゲン原子を表し、nは3または4を表す。)で表されるハロゲン化錫化合物、例えばメチル錫トリクロリド、t−ブチル錫トリクロリド、四塩化錫等の多価ハロゲン化合物が挙げられる。また、炭酸ジメチルや炭酸ジエチル等も多官能カップリング剤として使用できる。この中で、ハロゲン化珪素化合物が好ましく用いられる。
上記の方法で製造した(非水添)共重合体を水添することにより、本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体が得られる。水添触媒に特に限定はなく、公知の水添触媒を用いることができる。水添触媒の例として次のものが挙げられる。
(1)Ni、Pt、Pd、Ru等の金属をカーボン、シリカ、アルミナ、ケイソウ土等に担持した担持型不均一系水添触媒、
(2)Ni、Co、Fe、Cr等の有機酸塩またはアセチルアセトン塩などの遷移金属塩を有機アルミニウム等の還元剤とともに用いる、いわゆるチーグラー型水添触媒、および
(3)Ti、Ru、Rh、Zr等の有機金属化合物等のいわゆる有機金属錯体等の均一系水添触媒。
具体的な水添触媒としては、特公昭42−8704号公報、特公昭43−6636号公報、特公昭63−4841号公報(米国特許第4,501,857号に対応)、特公平1−37970号公報(米国特許第4,673,714号に対応)、特公平1−53851号公報、特公平2−9041号公報に記載された水添触媒を使用することができる。好ましい水添触媒の例としては、チタノセン化合物、およびチタノセン化合物と還元性有機金属化合物との混合物が挙げられる。
チタノセン化合物としては、特開平8−109219号公報に記載された化合物が使用できる。具体的には、ビスシクロペンタジエニルチタンジクロライド、モノペンタメチルシクロペンタジエニルチタントリクロライド等の(置換)シクロペンタジエニル骨格、インデニル骨格あるいはフルオレニル骨格を有する配位子を少なくとも1つ以上有する化合物が挙げられる。また、還元性有機金属化合物の例としては、有機リチウム等の有機アルカリ金属化合物、有機マグネシウム化合物、有機アルミニウム化合物、有機ホウ素化合物、有機亜鉛化合物が挙げられる。
本実施形態に用いる成分(c)水添共重合体を製造するための水添反応は、通常0〜200℃、好ましくは30〜150℃の温度範囲で実施する。水添反応に使用される水素の圧力は、通常0.1〜15MPa、好ましくは0.2〜10MPa、更に好ましくは0.3〜5MPaである。また、水添反応時間は通常3分〜10時間、好ましくは10分〜5時間である。水添反応は、バッチプロセス、連続プロセス、それらの組み合わせのいずれでも用いることができる。
上記の水添反応により、水添共重合体の溶液が得られる。水添共重合体の溶液から必要に応じて触媒残渣を除去し、水添共重合体を溶液から分離する。溶媒を分離する方法の例としては、水添後の反応液にアセトンまたはアルコール等の水添共重合体に対する貧溶媒となる極性溶媒を加えて重合体を沈澱させて回収する方法;反応液を撹拌下熱湯中に投入し、スチームストリッピングにより溶媒を除去して回収する方法;および重合体溶液を直接加熱して溶媒を留去する方法、が挙げられる。
上述した水添共重合体(c)は、1種単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
本実施形態に係る樹脂組成物において、水添共重合体(c)の含有量は、5〜40質量%であり、好ましくは7〜35質量%であり、より好ましくは10〜30質量%である。水添共重合体(c)の含有量が前記範囲内であると、制振性が良好となる。
<有機リン化合物(成分(d))>
本実施形態に用いる成分(d)有機リン化合物は、難燃剤としての成分であり、下記一般式(I)で表されるリン化合物である。
[式(I)中、
Aは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、
1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数5〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、
x、yは、それぞれ独立して、0、1、2、3または4であり、
nは、それぞれ独立して0または1であり、
Nは、1〜30である。]
上記式(I)中、Aは、それぞれ独立してメチル基またはフェニル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。また、R1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素原子数6〜20のアリール基であることが好ましく、フェニル基、キシレニル基、クレジル基であることがより好ましい。xおよびyは、それぞれ独立して0または1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nは、1であることが好ましい。Nは、1〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、1〜5であることが特に好ましい。
上記一般式(I)で表されるリン化合物は、一般にはNの異なるリン化合物の混合物である。この場合、Nは平均値として表し、当該平均値が上記範囲内であればよい。したがって、Nが上記範囲外であるリン化合物が不純物として含まれることを排除するものではない。N=0の場合は、モノリン化合物を表し、一般に不純物として含まれる。
特に好ましくは、式(III)
[式中、Nは、1〜30である。]
のリン化合物であり、より好ましくはNが1〜10、特に好ましくはNが1〜5のリン化合物である。一般にはNの異なる化合物の混合物であり、その場合、Nは平均値として表すことも可能であり、不純物として含まれる好ましいNの数値範囲外の成分を排除するものではない。N=0の場合はモノリン化合物を表し、一般に不純物として含まれる。
これらのリン化合物は、国際公開第WO2003−089442A1号および特開2008−202009号公報に記載の方法で製造される固体状(粉状ないし顆粒状)のものである。
また、一般に市販されており、株式会社ADEKAのアデカスタブFP800が知られている。
これらのリン化合物は、本実施形態の樹脂組成物の性能面から酸価(JIS K2501に準拠して得られた値)が低いほど好ましく、好ましくは酸価が0.5以下、より好ましくは酸価が0.1以下、特に好ましくは酸価が0.05以下のものである。得られた粗生成物は不純物により酸価が高いため、トルエンに溶解し、酸あるいは塩基を含む水溶液で洗浄したのち、脱水・乾燥して固体(粉体)の製品を得る。酸価は洗浄の程度によって下げることができる。
(d)有機リン化合物は、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂との併用により難燃性を発現させるものであり、その添加割合は、所望の難燃性レベルによって異なり、(a)ポリフェニレンエーテル系樹脂の含有量によっても異なるが、本実施形態の樹脂組成物において、成分(d)有機リン化合物の含有量は、1〜40質量%であり、好ましくは3質量%以上40質量%以下、より好ましくは5質量%以上35質量%以下、更に好ましくは7質量%以上30質量%以下である。成分(d)有機リン化合物の含有量が1質量%以上であると難燃性に優れ、40質量%以下であると耐熱性に優れ経済的にも優位である。
本実施形態においては、特性を維持できる範囲で従来から知られたリン系難燃剤を併用することも可能であり、それらのリン系難燃剤としては、本実施形態に用いる(d)有機リン化合物以外の有機リン酸エステル化合物およびそのオリゴマー、各種ホスファゼン化合物、ホスフィン酸金属塩などが挙げられる。
特に好ましいのは、酸価が0.1以下(JIS K2501に準拠して得られた値)の有機リン酸エステル化合物およびそのオリゴマー、酸価が0.1以下(JIS K2501に準拠して得られた値)のフェノキシホスファゼン化合物およびその架橋体、ジメチルホスフィン酸カルシウム、ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジメチルホスフィン酸亜鉛、エチルメチルホスフィン酸カルシウム、エチルメチルホスフィン酸アルミニウム、エチルメチルホスフィン酸亜鉛、ジエチルホスフィン酸カルシウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸亜鉛などである。
本実施形態に用いる成分(d)有機リン化合物以外のリン系難燃剤は、成分(a)+成分(b)+成分(c)+成分(d)=100質量部に対して、1〜40質量部、好ましくは2〜40質量部、より好ましくは3〜30質量部、更に好ましくは4〜25質量部配合する。成分(d)の配合量が、樹脂組成物100質量部中、3質量部以上であると、難燃性が特に良好である。また、機械強度および耐加熱変形性等の観点から40質量部以下である。
<水添ブロック共重合体(成分(e))>
本実施形態の樹脂組成物においては、耐寒性を向上させる目的で、さらに、水添ブロック共重合体(e)を含有することが好ましい。
前記水添ブロック共重合体(e)は、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加して得られ、前記(c)水添共重合体とは異なる構造の水添ブロック共重合体である。また、前記水添ブロック共重合体(e)は、ランダム共重合体ブロックを有しない水添ブロック共重合体である。
水添ブロック共重合体(e)とは、少なくとも1個、好ましくは2個以上のビニル芳香族単量体単位を主体とする重合体ブロックと、少なくとも1個の共役ジエン単量体単位を主体とする重合体ブロックとを有するブロック共重合体の水素添加物であることが好ましい。このような水添ブロック共重合体(e)としては、旭化成ケミカルズ(株)製の登録商標タフテック、クレイトン社の登録商標クレイトン、クラレ社の登録商標セプトン、JSR社のダイナロン等が市販されている。前記共役ジエン単量体としては、ブタジエン、イソプレン等が好ましい。前記ビニル芳香族単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−ターシャルブチルスチレン等のアルキルスチレン、パラメトキシスチレン、ビニルナフタレン等のうちから1種、または2種以上が選ばれ、中でもスチレンが好ましい。
本実施形態の樹脂組成物において、水添ブロック共重合体(e)の含有量は、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜30質量%、さらに好ましくは5〜20質量%である。また、成分(e)の含有量は、成分(c)と成分(e)との合計100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下であり、また、好ましくは10質量部以上の範囲とすることで効果が得られる。
<ポリオレフィン系重合体(成分(f))>
本実施形態の樹脂組成物においては、さらに、成分(f)ポリオレフィン系重合体を含有させることができる。成分(f)として、結晶性のポリオレフィン樹脂を用いると、耐油性や摺動性を向上させるのに有効であり、またポリオレフィン系エラストマーを用いると、柔軟性や耐油性を向上させるのに有効である。
結晶性のポリオレフィン樹脂の例としては、エチレン、プロピレン、その他のオレフィン系炭化水素の単独重合体、およびそれらの共重合体が挙げられる。ポリオレフィン系エラストマーとしては、エチレンと各種α−オレフィンとの共重合体、エチレンとアクリル酸エステルとの共重合体やエチレンとメタクリル酸エステルとの共重合体などが挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物において、ポリオレフィン系重合体(f)の含有量は、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは1〜30質量%である。また、ポリオレフィン系重合体(f)の含有量は、成分(c)、成分(e)および成分(f)の合計100質量部に対して、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下であり、好ましくは10質量部以上の範囲とすることで効果が得られる。
<無機充填剤(成分(g))>
本実施形態の樹脂組成物においては、さらに、成分(g)無機充填剤を添加することができる。無機充填剤の具体例としては、ガラス繊維、ガラスフレーク、マイカ(金雲母、白雲母、黒雲母、絹雲母、人造雲母など)、ウォラストナイト、タルク、クロライト、カオリナイト、焼成クレーなどが挙げられるが、より好ましい無機充填剤は、ガラスフレーク、マイカ、タルク、クロライト等の板状または鱗片状の無機充填剤であり、特に好ましいのは金マイカおよび白マイカである。前記無機充填剤(g)は、ガラスフレーク、マイカおよびタルクからなる群より選択される1種以上であることが好ましい。
また、前記無機充填剤(g)は、板状または鱗片状の無機充填剤であることが好ましい。特に、板状または鱗片状の無機充填剤を配合することにより、制振特性の尺度としての片端固定定常加振法測定した共振ピークの損失係数(η)が向上する傾向にある。
上記無機充填剤は1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いてもよく、また、本実施形態の目的を損なわない範囲で、所望に応じシラン系カップリング剤による表面処理や、ウレタン樹脂やエポキシ樹脂などの集束剤による集束処理が施されたものも用いることができる。
本実施形態の樹脂組成物において、無機充填剤(g)の含有量は、好ましくは2〜70質量%、より好ましくは2〜60質量%、さらに好ましくは3〜60質量%、特に好ましくは5〜50質量%の範囲である。剛性、制振性等の物性の観点および寸法精度の向上の観点から、無機充填剤(g)の含有量は、2質量%以上であることが好ましく、成形性の観点から70質量%以下が好ましい。
≪その他の添加剤≫
本実施形態の樹脂組成物には必要に応じ、難燃助剤として、ドリップ防止剤を含んでいてもよい。このドリップ防止剤とは、燃焼の際に、ドリップ(滴下)を抑制する働きのある添加剤であり、公知のものが使用できる。ドリップ防止剤は、成分(g)を除いた樹脂成分100質量部に対し、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.05〜3質量部の範囲で添加される。
本実施形態に用いるドリップ防止剤としては、特に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などに代表されるポリフェニレンエーテル系樹脂中でフィブリル構造を形成するものがドリップの抑制効果が高いので好適である。このようなドリップ防止剤が含まれる樹脂組成物は特に難燃性に優れている。このようなポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の中でも、分散性に優れたもの、たとえば水などの溶液にPTFEを乳化分散させたもの、またアクリル酸エステル系樹脂、メタクリル酸エステル系樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合体樹脂等でPTFEをカプセル化処理したものは、変性PPE樹脂からなる成形体に、よい表面外観を与えるので好ましい。
水などの溶液にPTFEを乳化分散させたものの場合、特に制限はないが、PTFEが1μm以下の平均粒子径であるものが好ましく、特に0.5μm以下であることが好ましい。このようなPTFEとして市販されているものの具体例としては、テフロン(登録商標)30J(商標、三井デュポンフルオロケミカル(株))、ポリフロンD−2C(商標、ダイキン化学工業(株))、アフロンAD1(商標、旭硝子(株))などが挙げられる。
また、このようなポリテトラフルオロエチレンは、公知の方法によって製造することもできる(米国特許第2393967号明細書参照)。具体的には、ペルオキシ二硫酸ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムなどの遊離基触媒を使用して、水性の溶媒中において、0.7〜7MPaの圧力下で、0〜200℃、好ましくは20〜100℃の温度条件のもと、テトラフルオロエチレンを重合させることによって、ポリテトラフルオロエチレンを白色の固体として得ることができる。
このようなポリテトラフルオロエチレンは、分子量が10万以上、好ましくは20万〜300万程度のものが望ましい。ポリテトラフルオロエチレンが配合された樹脂組成物は、燃焼時のドリップが抑制される。さらに、ポリテトラフルオロエチレンとシリコーン樹脂とを併用すると、ポリテトラフルオロエチレンのみを添加したときに比べて、さらにドリップを抑制し、しかも燃焼時間を短くすることができる。
本実施形態の樹脂組成物においては、必要に応じて周知の熱可塑性樹脂をさらにブレンドしてもよい。熱可塑性樹脂としては、共役ジエンとビニル芳香族とのブロック共重合樹脂およびその水添物(但し、本実施形態に用いる成分(c)および(e)とは異なる。)、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂等が挙げられる。
本実施形態の樹脂組成物には必要に応じ、各種添加剤を添加することが好ましい。添加剤は、プラスチックおよびゴム状重合体等の配合に一般的に配合されるものであれば特に限定はない。添加剤の例として、「ゴム・プラスチック配合薬品」(ラバーダイジェスト社編)などに記載された添加剤が挙げられる。具体例として、ゴム用軟化剤として用いられるナフテン系、パラフィン系、芳香族系のプロセスオイルや脂肪酸エステル類、脂肪族2塩基酸エステル類、フタル酸エステル類、エポキシ化大豆油等の可塑剤;酸化鉄等の顔料;ステアリン酸、ベヘニン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、エチレンビスステアロアミド等の滑剤;離型剤;有機ポリシロキサン、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤;ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、リン系以外の難燃剤、難燃助剤、帯電防止剤、有機繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属ウィスカ等の補強剤、着色剤などである。これらの添加剤は、2種以上を混合して用いてもよい。
≪樹脂組成物の製造方法≫
本実施形態の樹脂組成物の製造方法としては、特に限定はなく、公知の溶融混練方法が利用できる。例えば、バンバリーミキサー、単軸スクリュー押出機、2軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等の一般的な混和機を用いた溶融混練方法等を用いることができる。
≪用途≫
本実施形態の樹脂組成物は、制振特性の尺度として、室温中、片端固定定常加振法において、半値幅法により測定した2次共振ピークの損失係数(η)が0.02以上であることが好ましく、0.04以上であることがより好ましい。当該損失係数(η)は、最大でも0.3である。
本実施形態の樹脂組成物は、制振性に優れるため、制振性、制音性が要求される用途、電子・電気機器、機械設備の振動部や騒音部、住宅や乗り物などの床材、壁材、天井材など、制振性と剛性のバランスが要求される用途に好適に用いることができる。具体例としては、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、MD等光ディスクドライブ用機構部品、プロジェクションTV、液晶プロジェクターのファンやギヤなどの駆動部周辺部品、車載用のCDプレーヤー,DVDプレーヤー,DVDビデオ,DVDナビゲーション等向けディスクチェンジャー用トレー、スピーカーボックス、スピーカーグリルその他の各種音響機器部品等に好適である。
以下、実施例および比較例により本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
[構成成分]
樹脂組成物を構成する成分として、以下のものを使用した。
(1)成分(a):ポリフェニレンエーテル系樹脂
(PPE−1):ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フエニレンエーテル(旭化成ケミカルズ(株)製、30℃の0.5g/1dlクロロホルム溶液で測定したηsp/cが0.515であった。)
(PPE−2):ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フエニレンエーテル(旭化成ケミカルズ(株)製、30℃の0.5g/1dlクロロホルム溶液で測定したηsp/cが0.415であった。)
(2)成分(b):スチレン系樹脂
(PS−1):ハイインパクトポリスチレン(PSジャパン(株)製、ポリスチレンH9302)
(3)成分(c):水添共重合体
成分(c):水添共重合体としては、以下のように調製したポリマー1〜5を用いた。
<水添触媒の調製>
水添反応に用いる水添触媒は、次のように製造した。
窒素置換した反応容器に、乾燥および精製したシクロヘキサン2リットルを仕込み、さらに、ビス(η−シクロペンタジエニル)−ジ−p−トリルチタニウム40ミリモルと、分子量が約1,000の1,2−ポリブタジエン(1,2−ビニル結合量約85%)150グラムとを仕込んで溶解させた。その後、当該反応容器に、n−ブチルリチウム60ミリモルを含むシクロヘキサン溶液を添加して、室温で5分反応させ、直ちにn−ブタノール40ミリモルを添加して攪拌することにより、水添触媒を得た。
<ポリマー1>
内容積が10リットルの攪拌装置およびジャケット付き槽型反応器を用いて、共重合を以下の方法で行った。
シクロヘキサン10質量部を反応器に仕込んで温度70℃に調整した後、n−ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマーおよびスチレンモノマーの総量)の重量に対して0.076質量%添加して、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとも称する。)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.4モル添加した。その後、モノマーとしてスチレン10質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約6分間かけて添加し、反応器内温を約70℃に調整しながら30分間反応させた。
次に、ブタジエン35質量部とスチレン50質量部とを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。
その後、更にスチレン5質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を3分間かけて添加し、反応温度を約70℃に調整しながら30分間反応させ、共重合体を得た。
得られた共重合体のスチレン含有量は65質量%であり、スチレン重合体ブロックの含有量は15質量%、重量平均分子量は20万、分子量分布は1.2であった。水添前の、ブタジエン単量体単位とスチレン単量体単位とからなるランダム共重合体ブロックにおけるブタジエン単量体単位のビニル結合(以下「B部のビニル結合」とも記す。)量は23%であった。
なお、本実施例において、重量平均分子量は、GPCにより測定した(LC-10(島津製作所製、商品名))。溶媒としてテトラヒドロフランを用い、温度35℃で測定した。分子量が既知の市販の標準単分散ポリスチレン系ゲルを用いて作成した検量線を使用し、GPCクロマトグラムから重量平均分子量を求めた。また、同様にして上記GPCクロマトグラムから数平均分子量を求めた。分子量分布は、得られた重量平均分子量(Mw)の得られた数平均分子量(Mn)に対する比(Mw/Mn)として求めた。
次に、得られた共重合体に、上記水添触媒を共重合体の重量に対してチタン換算で100質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の重量に対して0.3質量%添加し、水添共重合体(ポリマー1)を得た。
得られたポリマー1について、ブタジエン単量体単位の二重結合の水添率は99%であり、動的粘弾性スペクトルにおける損失正接(tanδ)のピーク温度は10℃であった。得られたポリマー1の評価結果を表1に示す。また、ポリマー1について、DSC測定した結果、結晶化ピークは無かった。
なお、本実施例において、ブタジエン単量体単位の二重結合の水添率は、核磁気共鳴装置(DPX−400;ドイツ国BRUKER社製)を用いて測定した。また、動的粘弾性スペクトルにおける損失正接(tanδ)のピークは、粘弾性測定解析装置(型式DVE−V4;(株)レオロジ社製)を用いて測定した。測定周波数は、10Hzとした。
<ポリマー2>
内容積が10リットルの攪拌装置およびジャケット付き槽型反応器を用いて、共重合を以下の方法で行った。
シクロヘキサン10質量部を反応器に仕込んで温度70℃に調整した後、n−ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマーおよびスチレンモノマーの総量)の重量に対して0.076質量%添加して、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとも称する。)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.4モル添加した。その後、モノマーとしてスチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約6分間かけて添加し、反応器内温を約70℃に調整しながら30分間反応させた。
次に、ブタジエン33質量部とスチレン56質量部とを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。この間、反応器内温は約80℃になるように調整し、ジブロック構造のブロック共重合体を得た。その後、使用したn−ブチルリチウム1モルに対してジメチルジクロロシラン0.6モル添加し10分間カップリング反応した。
更に、得られたカップリング構造の共重合体に、上記水添触媒を共重合体の重量に対してチタン換算で100質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の重量に対して0.3質量%添加し、カップリング構造の水添共重合体(ポリマー2)を得た。
得られたポリマー2について、ブタジエン単量体単位の二重結合の水添率は99%であった。得られたポリマー2の評価結果を表1に示す。また、DSC測定の結果、結晶化ピークは無かった。
<ポリマー3>
内容積が10リットルの攪拌装置およびジャケット付き槽型反応器を用いて、共重合を以下の方法で行った。
ブタジエン33質量部とスチレン56質量部とを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。この間、反応器内温は約80℃になるように調整した。
次に、シクロヘキサン10質量部を反応器に仕込んで温度70℃に調整した後、n−ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマーおよびスチレンモノマーの総量)の重量に対して0.076質量%添加して、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとも称する。)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.4モル添加した。その後、モノマーとしてスチレン11質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約6分間かけて添加し、反応器内温を約70℃に調整しながら30分間反応させて、ジブロック構造のブロック共重合体を得た。その後、使用したn−ブチルリチウム1モルに対してジメチルジクロロシラン0.6モル添加し10分間カップリング反応した。
更に、得られたカップリング構造の共重合体に、上記水添触媒を共重合体の重量に対してチタン換算で100質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の重量に対して0.3質量%添加し、カップリング構造の水添共重合体(ポリマー3)を得た。
得られたポリマー3について、ブタジエン単量体単位の二重結合の水添率は99%であった。得られたポリマー3の評価結果を表1に示す。また、DSC測定の結果、結晶化ピークは無かった。
<ポリマー4>
内容積が10リットルの攪拌装置およびジャケット付き槽型反応器を用いて、共重合を以下の方法で行った。
シクロヘキサン10質量部を反応器に仕込んで温度80℃に調整した後、n−ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマーおよびスチレンモノマーの総量)の重量に対して0.076質量%添加して、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとも称する。)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.4モル添加した。その後、モノマーとしてスチレン15質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約6分間かけて添加し、反応器内温を約80℃に調整しながら30分間反応させた。
次に、ブタジエン25質量部とスチレン60質量部とを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給した。この間、反応器内温は約80℃になるように調整し、ジブロック構造のブロック共重合体を得た。その後、使用したn−ブチルリチウム1モルに対して四塩化珪素0.3モル添加し10分間カップリング反応した。
更に、得られたカップリング構造の共重合体に、上記水添触媒を共重合体の重量に対してチタン換算で100質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の重量に対して0.3質量%添加し、カップリング構造の水添共重合体(ポリマー4)を得た。
得られたポリマー4について、ブタジエン単量体単位の二重結合の水添率は99%であった。得られたポリマー4の評価結果を表1に示す。また、DSC測定の結果、結晶化ピークは無かった。
<ポリマー5>
内容積が10リットルの攪拌装置およびジャケット付き槽型反応器を用いて、共重合を以下の方法で行った。
シクロヘキサン10質量部を反応器に仕込んで温度70℃に調整した後、n−ブチルリチウムを全モノマー(反応器に投入するブタジエンモノマーおよびスチレンモノマーの総量)の重量に対して0.076質量%添加して、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(以下、TMEDAとも称する。)をn−ブチルリチウム1モルに対して0.4モル添加した。その後、モノマーとしてスチレン10質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を約6分間かけて添加し、反応器内温を約70℃に調整しながら30分間反応させて、スチレン単量体単位からなる重合体ブロック(以下単に「(A)」とも記す。)を得た。
次に、ブタジエン33質量部とスチレン52質量部とを含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を60分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給して、ブタジエン単量体単位とスチレン単量体単位とからなるランダム共重合体ブロック(以下単に「(B)」とも記す。)を得た。この間、反応器内温は約80℃になるように調整し、ジブロック構造のブロック共重合体を得た。
さらに、ブタジエン5質量部を含有するシクロヘキサン溶液(モノマー濃度22質量%)を15分間かけて一定速度で連続的に反応器に供給して、ブタジエン単量体単位からなる重合体ブロック(以下単に「(C)」とも記す。)を得た。この間、反応器内温度を約65℃に保ち、各ブロック重合体(A)/(B)/(C)=10/85/5(質量比)のトリブロック構造のブロック共重合体を得た。その後、四塩化珪素をn−ブチルリチウム1モルに対して0.3モル添加し10分間カップリング反応した。
更に、得られたカップリング構造の共重合体に、上記水添触媒を共重合体の重量に対してチタン換算で100質量ppm添加し、水素圧0.7MPa、温度65℃で水添反応を行った。反応終了後にメタノールを添加し、次に安定剤としてオクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートを重合体の重量に対して0.3質量%添加し、カップリング構造の水添共重合体(ポリマー5)を得た。
得られたポリマー5について、ブタジエン単量体単位の二重結合の水添率は99%であった。得られたポリマー5の評価結果を表1に示す。また、DSC測定の結果、結晶化ピークは無かった。
<比較水添共重合体;成分(e)>
成分(c)水添共重合体とは異なるランダム構造を有しない成分(e)として、以下の(ポリスチレンブロック)−(ポリブタジエンブロック)−(ポリスチレンブロック)の水添ブロック共重合体(e−1)を用いた。
(e−1):タフテック(登録商標)H1272(旭化成ケミカルズ(株)製)。
(4)成分(d):有機リン化合物(難燃剤)
(FR−1):以下の化学式にて、N=1のものが主成分(液体クロマトグラフィー分析による面積比で約85%)で、酸価が0.05以下のリン化合物。
(FR−2):ビスフェノールA−ビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物(大八化学(株)製、CR741)。
(FR−3):レゾルシン−ビス(ジフェニルホスフェート)を主成分とするリン酸エステル化合物(大八化学(株)、商品名CR733S)。
(5)成分(f)ポリオレフィン
(f−1):ポリプロピレン樹脂:チッソポリプロXF1932(チッソ(株)製)。
(6)成分(g)無機充填剤
(g−1):板状無機充填剤:ガラスフレーク
マイクログラスフレカREFG−302(日本板硝子(株)製)。
(g−2):板状無機充填剤:タルク
ハイトロンA(竹内化学工業(株)製)。
(g−3):板状無機充填剤:マイカ
スゾライト・マイカ200HK(クラレ(株)製)。
(g−4):繊維状無機充填剤:ガラス繊維
RES03−TPO30(日本板硝子(株)製)。
[実施例1〜12および比較例1〜3]
表2および表3に示す組成で各原料成分を、25mmφ2軸押出機(Werner & Pfleiderer Corporation製、ZSK25)に仕込み、加熱筒設定最高温度300℃、回転数300rpmにて溶融混合して、樹脂組成物のペレットを作成した。この際、成分(g)無機充填剤は、前記押出機バレル途中からサイドフィードし、成分(d)有機リン化合物(難燃剤)FR−1は、前記押出機バレル途中から液状でフィードした。
得られたペレットを用いて、射出成形して試験片を作成し、以下の特性を測定した。結果を表2および表3に示す。
なお、試験片の作成は、得られた樹脂組成物ペレットを80℃で2時間乾燥した後、東芝機械(株)製IS−100GN成形機(シリンダー温度を280℃、金型温度を80℃に設定)を用いて、ISO−15103に準じて試験片を成形した。
(1)荷重撓み温度
ISO−75に準拠し、1.8MPa下、フラットワイズにて測定した。荷重撓み温度が高いほど、耐熱性に優れる。
(2)MFI
樹脂組成物ペレットを用い、ISO−1133に準拠し、250℃、10kg荷重にて測定した。
(3)シャルピー衝撃強度
耐衝撃性評価として、ISO−179に準拠し、ノッチ付きにて測定した。
(4)難燃性
UL−94に準じて、1.6mm厚みの燃焼性試験を行った。
(5)制振特性:損失係数η
常温(23℃)にて損失係数測定装置(松下インターテクノ社製)を用い、片端固定定常加振法により試験片を電磁加振させ、その応答速度を読み伝達関数を得た。次にその2次共振ピークの絶対値から3dB下がった点での周波数を読み、半値幅法から損失係数ηを求めた。尚、試験片は、127×10×4mmの試験片を用いた。
(6)MD(成形時熱安定性)
得られた樹脂組成物のペレットを80℃で2時間乾燥した後、東芝機械(株)製IS−100GN成形機(シリンダー温度を310℃、金型温度を80℃に設定)にて、前記のUL94の試験片(厚み1.6mm)を成形する際、金型表面をエタノールでふき取った。次に、完全充填に約1cmショートする圧力で100ショット連続成形を実施した。その後、金型の成形片キャビティー末端部に生じた付着物(くもり)の程度を目視で確認した。ほとんど付着物が見られない場合は○、付着物が明らかに見られる場合は×、それらの中間として付着物が少し見られる場合は△とした。成形品先端の曇りも同様に目視判断した。
(7)吸水試験
ISO−527の引っ張り試験片を用い、120℃の(加圧)熱水中で150時間浸漬し、質量増加%を測定した。質量増加%が低いほど、吸湿特性に優れる。
本発明の樹脂組成物は、制振性、制音性が要求される用途、例えば、電子・電気機器、機械設備の振動部や騒音部、住宅や乗り物などの換気・給排気設備部品、床材、壁材、天井材など、制振性と剛性のバランスが要求される用途に好適に用いることができる。具体例としては、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、MD等光ディスクドライブ用機構部品、プロジェクションTV、液晶プロジェクターのファンやギヤなどの駆動部周辺部品、車載用のCDプレーヤー,DVDプレーヤー,DVDビデオ,DVDナビゲーション等向けディスクチェンジャー用トレー、スピーカーボックス、スピーカーグリルその他の各種音響機器部品等に好適である。

Claims (11)

  1. (a)ポリフェニレンエーテル系樹脂10〜70質量%、
    (b)スチレン系樹脂0〜70質量%、
    (c)水添共重合体5〜40質量%、および
    (d)有機リン化合物1〜40質量%を含有し、
    前記水添共重合体(c)が、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加して得られ、且つ共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなる(非水添)ランダム共重合体ブロックを水素添加して得られる少なくとも1つの水添ランダム共重合体ブロック(B)を有する水添共重合体であり、
    前記水添共重合体(c)の動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが0℃以上50℃未満の範囲に少なくとも1つ存在し、
    前記有機リン化合物(d)が、下記式(I)で表される化合物である、樹脂組成物。
    [式(I)中、
    Aは、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、
    1、R2、R3およびR4は、それぞれ独立して、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数5〜6のシクロアルキル基、炭素原子数6〜20のアリール基または炭素原子数7〜12のアラルキル基を表し、
    xおよびyは、それぞれ独立して、0、1、2、3または4であり、
    nは、それぞれ独立して0または1であり、
    Nは、1〜30である。]
  2. 前記水添共重合体(c)が、
    さらに、ビニル芳香族単量体単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(A)を含有し、
    カップリング構造を有し、かつ
    下記(1)〜(6)を満足する水添共重合体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
    (1)ビニル芳香族単量体単位の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、40〜90質量%であること。
    (2)重合体ブロック(A)の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、5〜50質量%であること。
    (3)重量平均分子量が3万〜100万であること。
    (4)共役ジエン単量体単位の二重結合の水添率が、75%以上であること。
    (5)水添共重合体(c)に関して得られた動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが0℃以上40℃未満の範囲に少なくとも1つ存在すること。
    (6)分子末端に重合体ブロック(A)を有する構造であること。
  3. 水添共重合体(c)が、
    さらに、ビニル芳香族単量体単位からなる少なくとも1つの重合体ブロック(A)、および共役ジエン単量体単位からなる重合体ブロックを水素添加して得られる少なくとも1つの水添重合体ブロック(C)を含有し、
    水添共重合体(c)100質量%に対して、前記重合体ブロック(A)の含有量が5〜50質量%であり、前記水添ランダム共重合体ブロック(B)の含有量が40〜90質量%であり、前記水添重合体ブロック(C)の含有量が5〜40質量%である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
  4. 水添共重合体(c)が、
    ビニル芳香族単量体単位からなる少なくとも2つの重合体ブロック(A)を含有し、かつ
    下記(7)〜(9)を満足する水添共重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
    (7)ビニル芳香族単量体単位の含有量が、水添共重合体(c)100質量%対して、50〜80質量%であること。
    (8)重合体ブロック(A)の含有量が、水添共重合体(c)100質量%に対して、8〜40%であること。
    (9)水添ランダム共重合体ブロック(B)の水素添加前のランダム共重合体ブロックにおいて、共役ジエン単量体単位のビニル結合量が8〜20%であること。
  5. 前記水添共重合体(c)の動的粘弾性スペクトルにおいて、損失正接(tanδ)のピークが5〜35℃の範囲に少なくとも1つ存在する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. 半値幅法により測定した2次共振ピークの損失係数(η)が0.04以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  7. さらに、水添ブロック共重合体(e)を1〜30質量%含有し、
    前記水添ブロック共重合体(e)が、共役ジエン単量体単位とビニル芳香族単量体単位とからなるブロック共重合体を水素添加して得られ、前記(c)水添共重合体とは異なる構造の水添ブロック共重合体である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  8. さらに、ポリオレフィン系重合体(f)を1〜40質量%含有する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  9. さらに、無機充填剤(g)を2〜60質量%含有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  10. 前記無機充填剤(g)が、板状または鱗片状の無機充填剤である、請求項9に記載の樹脂組成物。
  11. 前記無機充填剤(g)が、ガラスフレーク、マイカおよびタルクからなる群より選択される1種以上である、請求項9に記載の樹脂組成物。
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