JP2011251920A - N−ビニルアミドの製造方法およびそれに用いられるアパタイト - Google Patents

N−ビニルアミドの製造方法およびそれに用いられるアパタイト Download PDF

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Abstract

【課題】 N-(α-アルコキシアルキル)アミドの脱アルコール反応によるN-ビニルアミド製造において、極めて高い転化率および選択率を達成するN-ビニルアミドの製造方法ならびに、それに用いる触媒を提供することを目的とする。
【解決手段】 一般式(1)で表されるアパタイトをリン酸化合物で表面修飾した表面修飾アパタイト触媒の存在下、N-(α-アルコキシアルキル)アミドを脱アルコール反応させてN-ビニルアミドを製造する方法によって上記課題は解決される。
【化1】
Figure 2011251920

(式中、MはMg、Ca、Sr、Ba、Pb、MnおよびCdからなる群から選択される少なくとも1種であり、ZはP、AsおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種であり、XはOH、F、Cl、Br、IおよびAtからなる群から選択される少なくとも1種であり、0≦y<1である。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、N-(α-アルコキシエチル)アミドの脱アルコールにより、N-ビニルアミドを高収率かつ高選択的に製造する方法に関するものである。N-ビニルアミドは、化粧品、コーティング剤、インク組成物、石油回収剤、医薬中間体などに用いられる。
N-ビニルアミドを製造する方法については、1)アミドとアセチレンを反応させる方法、2)ビニルエーテルとアミドを反応させる方法、3)ビニルエステルとアミドを反応させる方法、4)2級アミン化合物とオキシラン化合物またはアルキレンカーボネート類を反応させる方法、5)エチリデンビス(ホルムアミド)の熱分解反応を行う方法、6)N-(α-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンの脱水反応を行う方法、7)N-(α-アルコキシエチル)アミドの脱アルコール反応を行う方法、などが知られている。
1)として、特許文献1〜4では、強塩基触媒存在下、2-ピロリドンとアセチレンを反応させることによりN-ビニル-2-ピロリドンを製造する方法が開示されている。また、特許文献5〜6では、強塩基触媒存在下、ε-カプロラクタムとアセチレンを反応させることによりN-ビニル-ε-カプロラクタムを製造する方法が開示されている。この方法では、高い選択率でN-ビニルアミドが得られるが、(1)アセチレンを加圧下で用いるために常に爆発の危険性がつきまとう、(2)2-ピロリドンからN-ビニル-2-ピロリドンを製造する場合、転化率を高くするとエチリデンビス(2-ピロリドン)が副生して選択率が低下するため、転化率を60〜70%程度に抑える必要がある、(3)ε-カプロラクタムからN-ビニル-ε-カプロラクタムを製造する場合、塩基化合物存在下で開環重合が起こり易く、反応は低温で行うことが望ましいが、その場合、反応収率を向上させるために高いアセチレン分圧が必要となり安全性の面で一層不利である、といった問題点がある。
2)として、非特許文献1には、パラジウム触媒存在下、ビニルエーテルとアミドを反応させることによりN-ビニルアミドを製造する方法が開示されている。この方法では、良好な収率でN-ビニルアミドが得られるが、原料のビニルエーテルは比較的高価であること、高価なパラジウム触媒を5モル%も使用しているといったことから、経済的な製法とは言い難い。
3)として、特許文献7には、塩基化合物存在下、ビニルエステルとホルムアミドを反応させることによりN-ビニルホルムアミドを製造する方法が開示されている。この方法では、ホルムアミドの転化率やN-ビニルホルムアミドの選択率は十分であるとはいえない。また、ビニルエステル由来のカルボン酸が副生する問題がある。
4)として、特許文献8にはアルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素と、ケイ素とを含有してなる酸化物触媒存在下、2級アミン化合物とオキシラン化合物またはアルキレンカーボネート類を反応させることでN-ビニルアミドを製造する方法が開示されているが、満足できる転化率・選択性は得られていない。
5)として、特許文献9、10には活性炭素、酸化マグネシウム、リン酸ケイ素、ピロリン酸ストロンチウム、中性または塩基性のカルシウムヒドロキシアパタイト、CuCrO2およびLa2O3よりなる群から選択される多孔性触媒存在下、エチリデンビス(ホルムアミド)を熱分解することでN-ビニルホルムアミドを製造する方法が開示されている。しかし、エチリデンビス(ホルムアミド)を熱分解した場合に副生するホルムアミドと目的化合物であるN-ビニルホルムアミドの沸点はほぼ同程度であり、ホルムアミドの分離・回収が困難であるという問題がある。
6)として、特許文献11および非特許文献2〜3には、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素と、ケイ素とを含有してなる酸化物触媒存在下、N-(α-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンを気相分子内脱水反応させることによりN-ビニル-2-ピロリドンを製造する方法が開示されている。また、特許文献12には、第4族元素混合物存在下、N-(β-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドンを気相分子内脱水反応させることによりN-ビニル-2-ピロリドンを製造する方法が開示されている。しかし、これらの方法ではN-ビニル-2-ピロリドンの収率は90%程度であり、工業的な大量製造にはまだ問題があった。
7)として、特許文献9には、活性炭素、酸化マグネシウム、リン酸ケイ素、ピロリン酸ストロンチウム、中性または塩基性のカルシウムヒドロキシアパタイト、CuCrO2およびLa2O3よりなる群から選択される多孔性触媒存在下、N-(α-アルコキシエチル)ホルムアミドを脱アルコール反応させることによりN-ビニルホルムアミドを製造する方法が開示されている。しかし、この方法ではN-(α-アルコキシエチル)ホルムアミドの転化率とN-ビニルホルムアミドの選択率の両方を満足させる成績は得られていない。また、特許文献13には、アルカリ金属元素および/またはアルカリ土類金属元素と、ケイ素とを含有してなる酸化物触媒存在下、N-(α-アルコキシエチル)-2-ピロリドンを気相分子内脱アルコール反応させることによりN-ビニル-2-ピロリドンを製造する方法が開示されている。しかし、この方法は転化率・収率が95%以上に達しない場合があるなど課題が残っていた。
特表平4−501252号公報 特許第3545062号公報 国際公開第09/150075号パンフレット 米国特許第5665889号明細書 特許第4026869号公報 特開平11−60558号広報 特開平8−59582号広報 特開平9−227465号広報 特公平6−60136号広報 特公平7−49398号広報 特許第2939433号公報 特許第3030846号公報 特許第2986405号公報
Org. Lett. 2004, 6, 1845. J. Mol. Catal. A: Chemical 2005, 239, 125. Bull. Chem. Soc. Jpn. 2008, 81, 449.
本発明は、N-(α-アルコキシアルキル)アミドの脱アルコール反応によるN-ビニルアミドの製造において、極めて高い転化率および選択率を達成するN-ビニルアミドの製造方法ならびに、それに用いる触媒を提供することを目的とする。
本発明者らは、N-(α-アルコキシエチル)アミドを脱アルコールさせるための触媒について鋭意研究を重ねた結果、N-(α-アルコキシエチル)アミドの脱アルコール反応には、1)リン酸水素イオンを酸点としてもち、酸点と塩基点が規則正しく並ぶ規則構造体であるアパタイトが触媒として高選択性を示すことから有効であること、また2)アパタイトの表面をリン酸化合物で処理しアパタイトの酸強度を高めることで触媒活性を格段に向上させることが可能である一方、選択性が低下する場合のあることを見出した。更に研究を進めた結果、3)アパタイトのハメット酸強度が−3.0〜+4.0の範囲にある場合に触媒活性と選択率の両方について極めて高い成績を示すことを突き止め、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、一般式(1)で表されるアパタイトをリン酸化合物で表面修飾したアパタイト(表面修飾アパタイト)の存在下、N-(α-アルコキシアルキル)アミドを脱アルコール反応させてN-ビニルアミドを製造する方法およびそれに用いられるアパタイト(表面修飾アパタイト触媒)に関する。
Figure 2011251920
(式中、MはMg、Ca、Sr、Ba、Pb、MnおよびCdからなる群から選択される少なくとも1種であり、ZはP、AsおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種であり、XはOH、F、Cl、Br、IおよびAtからなる群から選択される少なくとも1種であり、0≦y<1である。)
本発明は一般式(1)で表されるアパタイトをリン酸化合物で表面修飾した、ハメット酸強度が−3.0〜+4.0の表面修飾された新規なアパタイトを触媒として用いることで、N-(α-アルコキシアルキル)アミドの脱アルコール反応によるN-ビニルアミドの製造を高収率かつ高選択的に行うことができるので、N-ビニルアミドの製造分野へ寄与するところが大である。
本発明のN-ビニルアミドの製造方法は、アパタイトをリン酸化合物で表面修飾したアパタイトの存在下でN-(α-アルコキシアルキル)アミドを脱アルコールさせることで実施される。
本発明の製造方法では、一般式(1)、好ましくは、下記一般式(2)で表されるアパタイトをリン酸化合物で表面修飾したアパタイトが触媒として用いられる。
Figure 2011251920
(式中、M、Z、Xおよびyは前記と同義である。)
一般式(1)及び(2)において、選ばれるMとしては上記に挙げた群に属するものであれば特に限定されることはないが、好ましくはCaである。選ばれるZとしては上記に挙げた群に属するものであれば特に限定されることはないが、好ましくはPである。選ばれるXとしては上記に挙げた群に属するものであれば特に限定されることはないが、好ましくはOHである。
リン酸化合物によるアパタイトの表面修飾は、簡便にはリン酸化合物を溶解させた溶液中でアパタイトを加熱撹拌することで実施される。リン酸化合物を溶解させる溶媒としては、リン酸化合物を溶解できるものであれば特に限定されることはないが、具体的には、水、アセトン、メタノール、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸エチル、アセトニトリル、プロピオニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、これらの溶媒は2種以上を適宜混合して用いてもよい。
表面修飾に用いられるリン酸化合物は、特に限定されることはないが、具体的にはピロリン酸、リン酸、ポリリン酸などが挙げられ、好ましくはピロリン酸である。
リン酸化合物によるアパタイトの表面修飾は、アパタイト表面のリン酸水素イオンの水酸基とリン酸化合物が下記一般式(3)に示されるような反応をすることで行われる。この反応により、表面修飾後のアパタイトの表面リン濃度は原料アパタイトのそれよりも大きくなるため、表面修飾アパタイトのCa/P比は修飾前よりも小さくなる。したがって、表面修飾前後のアパタイト表面のCa/P比を測定し、表面修飾後の低下の度合いを調べることで、アパタイトの表面修飾の進行具合を見積もることができる。
Figure 2011251920
表面修飾アパタイトの酸性は、アパタイト表面のリン酸水素イオンの水酸基に由来する。したがって、アパタイトのリン酸化合物による表面修飾が進むほど、すなわちアパタイトの表面Ca/P比が小さくなり酸強度は大きくなる。
表面修飾アパタイトの酸強度は、表面修飾の進行具合を制御すること、すなわち反応温度、処理するリン酸化合物溶液の濃度、アパタイトとリン酸化合物の接触時間等の反応条件を規定することにより、任意に制御することができる。表面修飾アパタイトの酸強度は、反応収率・選択率の観点から、ハメット酸強度が−3.0<H≦+4.0、好ましくは+1.5<H≦+4.0、より好ましくは+1.5<H≦+3.3の範囲にあることが好ましい。
表面修飾アパタイトの酸強度は、反応温度、処理するリン酸化合物溶液の濃度、アパタイトとリン酸化合物の反応時間等により、任意に制御することができる。例えば、反応温度を60℃、反応時間を5時間とする場合、リン酸化合物の濃度を6.0M〜12.0Mに設定すれば表面修飾アパタイトのハメット酸強度を所望の範囲に調整することができる。ただし、異なる反応温度・反応時間で行う場合は、異なるリン酸化合物濃度で所望のハメット酸強度に調整することが可能であり、アパタイトの表面修飾は上記の反応条件に限定されるものではない。
表面修飾アパタイトは白色粉末として得られ、表面修飾を行うことによるアパタイトの結晶構造や形状の変化はない。
アパタイトをリン酸化合物により表面修飾を行った場合、表面修飾アパタイトのCa/P比は表面修飾前と比べて小さくなる。このCa/P比の低下の度合いは、ハメット酸強度と相関しており、ハメット酸強度が大きくなるほど、表面修飾アパタイトのCa/P比は修飾前のそれよりも小さくなる。
脱アルコール反応に用いられるN-(α-アルコキシアルキル)アミドとしては、下記一般式(4)を満たす化合物であれば特に限定されることはない。
Figure 2011251920
(式中、Rは水素およびメチル基、エチル基などの炭素数1〜6の炭化水素基からなる群より選ばれる1種である。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、およびブチル基からなる群より選ばれる1種である。RおよびRはそれぞれ独立して水素およびメチル基、エチル基などの炭素数1〜8の炭化水素基からなる群より選ばれる1種であり、RおよびRは互いに結合し、5〜13員環を形成していてもよい。)
具体的には、N-(α-メトキシエチル)-2-ピロリドン、N-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドン、N-(α-ノルマルプロポキシエチル)-2-ピロリドン、N-(α-イソプロポキシエチル)-2-ピロリドン、N-(α-ノルマルブトキシエチル)-2-ピロリドン、N-(α-イソブトキシエチル)-2-ピロリドン、N-(α-ターシャリーブトキシエチル)-2-ピロリドン、N-(α-メトキシエチル)-ε-カプロラクタム、N-(α-エトキシエチル)-ε-カプロラクタム、N-(α-ノルマルプロポキシエチル)-ε-カプロラクタム、N-(α-イソプロポキシエチル)-ε-カプロラクタム、N-(α-ノルマルブトキシエチル)-ε-カプロラクタム、N-(α-イソブトキシエチル)-ε-カプロラクタム、N-(α-ターシャリーブトキシエチル)-ε-カプロラクタム、N-(α-メトキシエチル)ホルムアミド、N-(α-エトキシエチル)ホルムアミド、N-(α-ノルマルプロポキシエチル)ホルムアミド、N-(α-イソプロポキシエチル)ホルムアミド、N-(α-ノルマルブトキシエチル)ホルムアミド、N-(α-イソブトキシエチル)ホルムアミド、N-(α-ターシャリーブトキシエチル)ホルムアミド、N-(α-メトキシエチル)アセトアミド、N-(α-エトキシエチル)アセトアミド、N-(α-ノルマルプロポキシエチル)アセトアミド、N-(α-イソプロポキシエチル)アセトアミド、N-(α-ノルマルブトキシエチル)アセトアミド、N-(α-イソブトキシエチル)アセトアミド、N-(α-ターシャリーブトキシエチル)アセトアミドなどが挙げられる。
上記のN-(α-アルコキシアルキル)アミドは、例えば硫酸触媒存在下、アセタールとアミドを反応させる方法(Chem. Ber. 1965, 99, 2127.)やリン酸触媒存在下、アセトアルデヒドとアルコール、アミドを反応させる方法(特開平5−97799号公報)などで製造することができる。
本発明の製造法に係る反応は、バッチ反応装置と固定床連続反応装置のいずれで実施しても、N-(α-アルコキシアルキル)アミドの転化率、N-ビニルアミドの選択率ともに満足すべき成績が得られる。
本発明の製造法をバッチ反応装置で実施する場合、触媒はN-(α-アルコキシアルキル)アミドに対して0.1〜10wt%、好ましくは1〜5wt%の範囲で使用される。0.1wt%未満では反応速度が低下するため、生産性が落ちる。また、10wt%を超えて触媒を用いると経済的とはいえない。
本発明の製造法をバッチ反応装置で実施する場合、反応で生成するアルコールを蒸留により連続的に除くことが本反応が平衡反応である為、好ましい。
本発明の製造法を固定床連続反応装置で実施する場合、表面修飾アパタイトの粉体は成形して使用される。このとき、成形方法は特に限定されることはなく、転動成形、押し出し成形、打錠機による圧縮成形などの方法が可能である。反応は常圧、減圧、加圧のいずれでも実施できる。また、固定床反応装置の形状は縦型と横型いずれのものも用いることができる。
本発明の製造法に係る反応温度は、他の反応条件によっても異なるが、通常150〜400℃、好ましくは180〜300℃の範囲が好ましい。反応温度が150℃よりも低いとN-(α-アルコキシアルキル)アミドの転化率が低下し、400℃よりも高いと重合などの副反応が併発し、N-ビニルアミドの選択率が低下する。
本発明の製造法は、バッチ反応で行う場合、無溶媒が好ましい。
(表面のCa/P比)
ESCA測定により、触媒の表面原子濃度を見積もり、CaとPの表面原子濃度の比をとることで算出した。
ハメット酸強度は文献(『触媒講座(別巻)触媒実験ハンドブック』触媒学会編、講談社サイエンティフィック、170ページ)に従って測定した。
ハメット酸強度測定に使われる指示薬を以下に示す。
Figure 2011251920
(ハメット酸強度の測定)
25mLの三角フラスコにベンゼンを10mL程度加え、そこに少量の試料粉末を素早く加えた。続いて、指示薬溶液をpKaの小さなものから順に0.1mL程度添加し、最初に酸性色を呈した指示薬のpKaから酸強度を決定した。例えば、4−ベンゼンアゾジフェニルアミンで呈色がなく、p−ジメチルアミノアゾベンゼンで呈色があった場合には、ハメット酸強度は+1.5<H≦+3.3であるとした。
次に、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
(触媒調製)
ピロリン酸(428mg、2.40mmol)をアセトン200mLに溶解し、12.0Mのピロリン酸−アセトン溶液を調製した。80℃で減圧乾燥を行ったヒドロキシアパタイト(Aldrich製、3.06g)と12.0Mのピロリン酸−アセトン溶液を300mLナスフラスコに加え、5時間、還流撹拌を行った。
還流終了後、ヒドロキシアパタイトをろ別し、さらにアセトン300mLで洗浄を行った。80℃で減圧乾燥を行い、表面修飾アパタイトを収量3.04gで得た。得られた表面修飾ヒドロキシアパタイトについて、ESCA、ハメット酸強度の測定を行ったところ、表面修飾ヒドロキシアパタイト表面のCa/P比は0.834、ハメット酸強度は+1.5<H≦+3.3であることがわかった。
[実施例2]
30mLナスフラスコにN-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドン(8.50g、54.1mmol)と実施例1で調製した表面修飾ヒドロキシアパタイト触媒(451mg)を加えた。温度220℃で加熱撹拌を行い、反応で生成するエタノールは蒸留により連続的に反応系外へ除去した。反応20分後の反応液を1H NMRで分析したところ、N-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンの転化率は>99%、N-ビニル-2-ピロリドンの収率および選択率はそれぞれ99%、>99%であった。
[実施例3]
(触媒調製)
ピロリン酸−アセトン溶液の濃度を6.00Mに変えた以外は実施例1と同様にして表面修飾ヒドロキシアパタイトを調製した。ESCA、ハメット酸強度の測定を行ったところ、表面修飾ヒドロキシアパタイト表面のCa/P比は0.980、ハメット酸強度は+3.3<H≦+4.0であることがわかった。
[実施例4]
触媒を実施例3で調製した表面修飾ヒドロキシアパタイトに変更した以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応20分後のN-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンの転化率は97%、N-ビニル-2-ピロリドンの収率および選択率はそれぞれ97%、>99%であった。
[実施例5]
(触媒調製)
ピロリン酸−アセトン溶液の濃度を18.0Mに変えた以外は実施例1と同様にして表面修飾ヒドロキシアパタイトを調製した。ESCA、ハメット酸強度の測定を行ったところ、表面修飾ヒドロキシアパタイト表面のCa/P比は0.660、ハメット酸強度は−3.0<H≦+1.5であることがわかった。
[実施例6]
触媒を実施例5で調製した表面修飾ヒドロキシアパタイトに変更した以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応20分後のN-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンの転化率は>99%、N-ビニル-2-ピロリドンの収率および選択率はそれぞれ91%、90%であった。
[比較例1]
表面修飾を行っていないヒドロキシアパタイト(Aldrich製、表面Ca/P=1.25、ハメット酸強度+4.0<H≦+4.8)を触媒に用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応60分後のN-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンの転化率は51%、N-ビニル-2-ピロリドンの収率および選択率はそれぞれ51%、>99%であった。
[比較例2]
特許文献11の実施例6に従い、酸素を除く元素比でPLi1.25Siの組成となる触媒Li−P−O/SiOを調製した。ここで調製したLi−P−O/SiOを触媒に用いた以外は触媒に用いたこと以外は実施例1と同様にして反応を行った。反応20分後のN-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンの転化率は95%、N-ビニル-2-ピロリドンの収率および選択率はそれぞれ92%、97%であった。
[実施例7]
原料をN-(α-エトキシエチル)-ε-カプロラクタムに変更した以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応60分後のN-(α-エトキシエチル)-ε-カプロラクタムの転化率は95%、N-ビニル-ε-カプロラクタムの収率および選択率はそれぞれ95%、>99%であった。
[実施例8]
反応温度を180℃に、原料をN-(α-エトキシエチル)ホルムアミドに変更した以外は実施例2と同様にして反応を行った。反応90分後のN-(α-エトキシエチル)ホルムアミドの転化率は88%、N-ビニルホルムアミドの収率および選択率はそれぞれ66%、75%であった。
[比較例3]
触媒を活性炭素(Darco 日本ノリット(株))に変更した以外は実施例7と同様にして反応を行った。反応60分後のN-(α-エトキシエチル)ホルムアミドの転化率は89%、N-ビニルホルムアミドの収率および選択率はそれぞれ1.2%、1.4%であった。
[実施例10]
実施例9で調製した表面修飾アパタイトを20MPa、2〜3分間の条件で圧力成形し、粒径0.5〜1.0mmに整粒した。ガラス製反応管(直径12mm)に成形した表面アパタイト触媒を2mL充填したのち、マントルヒーターで220℃にまで加熱した。N-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンの分圧が76mmHgとなるまでアルゴンで希釈した原料ガスを、N-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンの空間速度200h−1で供給し、常圧で反応を行った。供給開始1時間後の反応管出口より凝集した液体を捕集し、H-NMRおよびHPLCで分析したところ、N-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンの転化率は>99%、N-ビニル-2-ピロリドンの収率および選択率はそれぞれ>99%、>99%であった。
[実施例11]
原料ガスのN-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンをN-(α-エトキシエチル)-ε-カプロラクタムに変更した以外は実施例10と同様にして反応を行った。供給開始1時間後の反応管出口より凝集した生成物を捕集し、H-NMRおよびHPLCで分析したところ、N-(α-エトキシエチル)-ε-カプロラクタムの転化率は>99%、N-ビニル-ε-カプロラクタムの収率および選択率はそれぞれ>99%、>99%であった。
[実施例12]
原料ガスのN-(α-エトキシエチル)-2-ピロリドンをN-(α-エトキシエチル)ホルムアミドに変更した以外は実施例10と同様にして反応を行った。供給開始1時間後の反応管出口より凝集した生成物を捕集し、H-NMRおよびHPLCで分析したところ、N-(α-エトキシエチル)ホルムアミドの転化率は93%、N-ビニルホルムアミドの収率および選択率はそれぞれ92%、99%であった。

Claims (5)

  1. 下記一般式(1)で表されるアパタイトをリン酸化合物で表面修飾し、ハメット酸強度(Ho)を−3.0〜+4.0の範囲に調整したアパタイトの存在下、N-(α-アルコキシアルキル)アミドを脱アルコール反応させることを特徴とするN-ビニルアミドの製造方法。
    Figure 2011251920
    (式中、MはMg、Ca、Sr、Ba、Pb、MnおよびCdからなる群から選択される少なくとも1種であり、ZはP、AsおよびSbからなる群から選択される少なくとも1種であり、XはOH、F、Cl、Br、IおよびAtからなる群から選択される少なくとも1種であり、0≦y<1である。)
  2. 一般式(1)で示されるアパタイトが、下記一般式(2)で表されるリン酸塩系アパタイトであることを特徴とする請求項1記載のN-ビニルアミドの製造方法。
    Figure 2011251920
    (式中、M、Xおよびyは前記と同義である。)
  3. N-(α-アルコキシアルキル)アミドが下記一般式(3)で表される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載のN-ビニルアミドの製造方法。
    Figure 2011251920
    (式中、Rは水素および炭素数1〜6の炭化水素基からなる群より選ばれる1種である。Rはメチル基、エチル基、プロピル基、およびブチル基からなる群より選ばれる1種である。RおよびRはそれぞれ独立して水素および炭素数1〜8の炭化水素基からなる群より選ばれる1種であり、RおよびRは互いに結合し、5〜13員環を形成していてもよい。)
  4. リン酸化合物が、ピロリン酸であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のN-ビニルアミドの製造方法。
  5. 一般式(1)で表されるアパタイトをリン酸化合物で表面修飾し、ハメット酸強度(Ho)を−3.0〜+4.0の範囲に調整したアパタイト。
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