JP2011249890A - 無線通信システムおよび無線通信方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 無線通信システムの設置の自由度の、反射物の存在による制限を解消する技術を提供する。
【解決手段】 反射物が存在する空間で無線機器と通信するために、少なくとも第1と第2の2つの異なる条件で電磁波を放射する。第1の条件での、電磁波の直接波と反射物による反射波との干渉によって生じるヌル領域にある無線機器と通信するために、第2の条件での電磁波の放射を行う。
【選択図】図1
【解決手段】 反射物が存在する空間で無線機器と通信するために、少なくとも第1と第2の2つの異なる条件で電磁波を放射する。第1の条件での、電磁波の直接波と反射物による反射波との干渉によって生じるヌル領域にある無線機器と通信するために、第2の条件での電磁波の放射を行う。
【選択図】図1
Description
本発明は、無線機器と無線通信を行う無線通信システムおよび無線通信方法に関する。
RFID(Radio Frequency IDentification)タグをはじめとする無線機器と無線通信する無線通信システムが知られている。RFIDタグと無線通信する無線通信システムは、例えば、バーコードの代替技術としての期待が持たれている。RFIDタグと無線通信する無線通信システムは、一般にRFIDシステムと呼ばれる。RFIDタグとの通信プロトコルには、国際標準規格ISO/IEC18000−6Cや、EPC Global C1G2(Class1 Generation2)等の規格がある。
RFIDシステムのリーダ/ライタがアンテナを介して放射した読み取り電磁波が側壁面や床面で反射して生ずる反射波と、無線ICタグに到達する直接波とが干渉を起こし、部分的に電界強度の低い場所が発生し、無線ICタグの読み取りに失敗することが知られている。この直接波と反射波との干渉により部分的に電界強度が低くなることで無線機器との通信に失敗する場所は、デッドスポットやヌル領域と呼ばれる。かかる問題を解決するために、送信用アンテナの電磁波の放射方向を反射波が生じない方向へ変更する技術が提案されている(特許文献1)。
一般に無線通信システムのアンテナは任意の場所に設置できるわけではなく、設置場所には、建物の柱や壁、電源の位置、通路の確保、アンテナ設置による景観の問題や、既存の各種管理システムへの組み込みのための制約などがある。従って、ヌル領域の発生を防ぐために反射物の存在による反射波が生じない方向へ電磁波を放射していたのでは、無線通信システムの設置の自由度が制限され、無線通信システムの設置に不利となる。
本発明の目的は、無線通信システムの設置の自由度の、反射物の存在による制限を解消する技術を提供することにある。
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、下記のとおりである。
本発明では、反射物が存在する空間で無線機器と通信するために、少なくとも第1と第2の2つの異なる条件で電磁波を放射する。第1の条件での、電磁波の直接波と反射物による反射波との干渉によって生じるヌル領域にある無線機器と通信するために、第2の条件での電磁波の放射を行う。
本発明により、無線通信システムの設置の自由度の、反射物の存在による制限を解消することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
図1は、本発明のRFIDシステムの実施例を示す図である。図1に示すように、本実施例のRFIDシステム101は、リーダ/ライタ(R/W)102と、第1のアンテナ103と、第2のアンテナ104とを有する。反射物となる床面105の上にリーダ/ライタ102が設置され、床面105の上方に第1のアンテナ103と第2のアンテナ104とが設置される。第1のアンテナ103と第2のアンテナ104とは反射物である床面105の鉛直方向の位置を異ならせて配置される。リーダ/ライタ102と第1のアンテナ103とが接続され、リーダ/ライタ102と第2のアンテナ104とが接続されている。
本実施例では、反射物は床面105である。なお、反射物は床面に限られず、例えば、RFIDシステム101は台の天板の上に設置されても良く、その場合には台の天板の上面が反射物となる。また、例えば、壁に沿うようにRFIDシステム101を設置する場合には、壁面が反射物となる。
RFIDシステム101は、通信対象となる無線機器のRFIDタグ106と無線通信するために、反射物となる床面105が存在する空間へ、電磁波を放射する。具体的には、RFIDシステム101は、電磁波として所定の周波数の電磁波を第1のアンテナ103または第2のアンテナ104を介して出力し、RFIDタグ106はRFIDシステム101から放射された電磁波から電力を得て起動し、IDなどの情報をリーダ/ライタ102に返す。所定の周波数は、例えば、300MHz乃至3GHzのマイクロ波領域の周波数であり、例えば、953MHzである。
リーダ/ライタ102は、図2の内部構成例に示すように、論理回路201と、送信回路202と、受信回路203と、サーキュレータ204と、アンテナ103とアンテナ104とを切り替える切替装置205とを有する。リーダ/ライタ102の動作は、まず論理回路201が、送信回路202に対して高周波信号の生成の命令と、切換装置205に対して選択するアンテナを命令する。送信回路202で生成された高周波信号は、サーキュレータ204と、切替装置205と、選択されたアンテナを介し、空間に送信される。尚、サーキュレータ204は、受信回路203へ高周波信号が送信されることを防ぐ。したがって、リーダ/ライタ102は、第1のアンテナ103を介する電磁波の出力と、第2のアンテナ104を介する電磁波の出力とを切り替えて行うことができる。
第1のアンテナ103を介して出力される電磁波は、RFIDタグ106に向けて放射されるが、このときRFIDタグ106には、図1に示したように、直接波107と、反射物である床面105による反射波108とが到達する。ここで、第1のアンテナ103と反射物である床面105と通信対象である無線機器のRFID106の位置関係により、直接波107と反射波108とが干渉し、RFIDタグ106のある場所での電磁波の電界の振幅を弱め合うと、RFIDタグ106のある場所で電磁波の電界強度が弱くなる。干渉により電界強度が弱くなり、RFIDタグ106の起動に十分な電力供給が出来ない状況などが生じるために、無線機器との通信に失敗する領域、すなわちヌル領域が生じる。
ここで、RFIDシステム101では、上述のように、リーダ/ライタ102が第1のアンテナ103を介する電磁波の出力と、第2のアンテナ104を介する電磁波の出力とを切り替えて行うことができる切替装置205を備えており、ヌル領域にあるRFIDタグ106と通信するために、第1のアンテナ103からの電磁波の放射と切り替えて、第2のアンテナ104からRFIDタグ106に向けて電磁波を放射する。第1のアンテナ103と第2のアンテナ104とは反射物である床面105の鉛直方向の位置を異ならせて配置されているので、互いのヌル領域の位置は、ずれる。
これにより、無線通信システムであるRFIDシステム101が第1のアンテナ103を介しての電磁波の放射をヌル領域が生じる条件で行い、無線機器であるRFIDタグ106がヌル領域に存在しても、第2のアンテナ104を介する電磁波の放射に切り替えることより、RFIDシステム101がRFIDタグ106と通信できる。このように、第1のアンテナ103を反射物による反射波が生じ、結果ヌル領域を生じる配置としても、第2のアンテナ104を介する電磁波の放射により無線機器のRFIDタグ106と通信できるので、無線通信システムの反射物の存在による設置の自由度の制限を解消できる。すなわち、第1のアンテナを介して電磁波を放射する第1の条件と、第2のアンテナを介して電磁波を放射する第2の条件とで、無線機器と通信することで、無線通信システムの反射物の存在による設置の自由度の制限を解消できる。
RFIDシステム101の第1のアンテナ103と第2のアンテナ104の望ましい配置について、説明する。説明のために、床面105の鉛直方向、すなわち、高さ方向の位置をA、第1のアンテナ103の高さ方向の位置をA’、第2のアンテナ104の高さ方向の位置をA’’、RFIDタグ106の高さ方向の位置をA’’’、第1のアンテナ103と第2のアンテナ104の床面105に水平な方向の位置をB、RFIDタグ106の床面105に水平な方向の位置をB’とする。
なお、図1に示す例では、第1のアンテナ103と第2のアンテナ104の床面105に水平な方向の位置とが同じ位置Bとしている。これは、第1のアンテナ103のヌル領域は、第1のアンテナ103を中心として同心円状に発生するので、第2のアンテナ104の水平方向の位置を合わせることで、第2のアンテナ104のヌル領域が第1のアンテナ103を中心として同心円状に存在することになり、第1のアンテナ103と第2のアンテナ104の互いのヌル領域が重ならないように配置し易くなるからである。本実施例では、AA’間の距離は0.8m、AA’’間の距離は0.9mから1.1mの間、AA’’’間の距離は1m、BB’間の距離は1.6mとする。
本実施例のアンテナ配置の場合、第1のアンテナ103の直接波107のRFIDタグ106への伝送距離は、1.61mであり、反射波108の第1のアンテナ103からRFIDタグ106への伝送距離は2.41mとなる。したがって、直接波107と反射波108の伝搬距離差(ΔDa)は、0.8mとなる。なお、反射波108の伝送距離は、レイトレーシング法を用いて求めても良い。レイトレーシング法によれば、反射物となる床面105に対するRFIDタグ106の鏡像111と第1のアンテナ103の直線距離を反射波108の伝送距離とする。
本実施例のアンテナ配置での、RFIDタグ106に到達する電磁波の電界の振幅を図3を用いて説明する。
リーダ/ライタ102が第1のアンテナ103を選択して電磁波を放射した場合、図3のグラフ301に示すように、RFIDタグ106に到達する第1のアンテナ103からの電磁波の電界振幅は、直接波107の振幅302と反射波108の振幅303の合成波の振幅304となる。本実施例では、直接波107と反射波108とでは、伝搬距離差(ΔDa)が0.8mと2.5波長であるため、位相差(ΔPa)はπであり、直接波107と反射波108は互いに打ち消し合う。よって、合成波304の振幅は、直接波107と反射波108が打ち消しあって、直接波107の振幅302より小さくなり、ヌル領域の発生の原因となる。
一方、リーダライタ102が第2のアンテナ104を選択して電磁波を放射した場合、図3のグラフ305に示すように、第2のアンテナ104から放射されRFIDタグ106に到達する電磁波の電界振幅は、直接波109の振幅306と反射波110の振幅307の合成波の振幅308となる。直接波109と反射波110の位相差ΔPbは、直接波109と反射波110の伝搬距離差が、周波数953MHzでは、2.75波長から3.25波長の間になるために、−π/2からπ/2の間になる。なお、グラフ305では、位相差ΔPbが0の場合を示した。したがって、合成波の振幅308は、直接波109と反射波110が強めあって、直接波109の振幅306より大きくなる。すなわち、第1のアンテナ103を介して放射される直接波107と反射波108との干渉によって生じるヌル領域内に、第2のアンテナ104を介して放射される電磁波の直接波108と反射波109とが干渉によって強め合う点が含まれる。
次に、本実施例のRFIDシステム101から放射される電磁波の電界強度の第1のアンテナ103、第2のアンテナ104からの距離依存性を、図4に示した模式図を用いて説明する。図4の縦軸は、RFIDシステム101から放射される電磁波の電界強度を示し、図4の横軸は、第1のアンテナ103、第2のアンテナ104からの距離を示す。破線401は、第1のアンテナ103からの電磁波の放射による電界強度を、点線402は、第2のアンテナ104からの電磁波の放射による電界強度を示す。また、縦軸には、RFIDシステム101とRFIDタグ106の通信における、RFIDタグ106が動作できる電力を与えられる電磁波の電界強度の下限403を示した。この下限となる強度403を下回る領域が、ヌル領域である。本実施例で示した第1のアンテナ103と第2のアンテナ104とRFIDタグ106の位置関係では、RFIDタグ106が置かれている場所とその周辺は、前述の通り直接波107と反射波108とが干渉して電界振幅を弱め合うために、ヌル領域となる。
一方で、RFIDタグ106が置かれる場所とその周辺のヌル領域内で、第2のアンテナ104からの電磁波の放射による電界強度が、下限403を超えるために、第2のアンテナ104からの電磁波の放射により、RFIDシステム101とRFIDタグ106が通信できる。さらに本実施例のように、第2のアンテナ104を介して放射される電磁波の直接波109と反射波110が、第1のアンテナ103を介して放射される電磁波のヌル領域となる場所で、干渉により電界振幅を強め合う点を含むように、第2のアンテナ104を配置することで、図4に示すように、横軸のRFIDタグ106の位置のヌル領域内に、強度402では干渉により強くなる点を含むことで、その点および周辺において電界強度を高くすることができ、電界強度404として仮想的に図4に示した反射物が無いと仮定した場合の直接波107の場合と同程度、またはそれ以上の通信品質を得ることができる。
AA’’間の望ましい距離は、位相差ΔPaがπとなる場所を計算により求め、計算により求めた位相差ΔPaがπとなる場所で、直接波109と反射波110の位相差ΔPbが−π/2からπ/2の間となる第2のアンテナ104の位置を計算で求めることで得られる。すなわち、RFIDシステム101の設置場所に応じて、計算により、ヌル領域を解消するための第2のアンテナの位置を求めることができ、容易にRFIDシステム101が設置できる。
ここで、位相差ΔPaがπとなる位置を計算し、計算により求めた位相差ΔPaがπとなる場所で、位相差ΔPbが0となる第2のアンテナ104の位置を計算して、計算により求めた第2のアンテナ104の位置に第2のアンテナ104を配置すれば、ヌル領域のおおよそ中心で第2のアンテナ104からの直接波109と反射波110とが干渉で最も強め合う配置とすることができ、より高品位なRFIDシステム101とRFIDタグ106間の通信を確保するための設置が可能となる。
図5に、RFIDシステム101の、リーダ/ライタ102が、第1のアンテナ103からの電磁波の放射と第2のアンテナ104からの電磁波の放射を選択するタイミングの例を示す。すなわち、リーダ/ライタ102の切替装置205の切り替えのタイミングの例を示す。図5のタイミング例501では、リーダライタ102は、使用するアンテナを一定周期毎に変更する。これにより、RFIDシステム101は、RFIDタグ106の置かれる場所が第1のアンテナ103のヌル領域にあった場合でも、第2のアンテナ104を用いてRFIDタグ106と通信できる。
図5のタイミング例502では、リーダ/ライタ101が、使用するアンテナを一定周期毎に変更し、RFIDタグ106のレスポンスを受信した場合に、使用中のアンテナを継続的に使用する。この継続使用により、RFIDシステム101がRFIDタグ106と無線通信できる時間を長く取れる。
以上のように、本実施例のRFIDシステム101は、第2のアンテナ104の配置を上述のように調整することで、第1のアンテナ103を介しての電磁波の放射でヌル領域が生じても、第2のアンテナ104を介する電磁波の放射に切り替えることより、ヌル領域内に存在するRFIDタグ106と通信できる。すなわち、第2のアンテナ104を介する電磁波の放射により、無線通信システムの反射物の存在による設置の自由度の制限を解消できる。
図6に、実施例1のRFIDシステム101に加えて、さらに床面105に垂直な方向にも電磁波を放射する無線通信システム601を示す。図6に示す無線通信システムのRFIDシステム601では、リーダ/ライタ(R/W)102を、さらに出力を追加したリーダ/ライタ(R/W)602に代えて、追加した出力に第3のアンテナ603を接続している。
第3のアンテナ603からは、図6に第3のアンテナからの直接波604として示したように、床面105に垂直な方向へ、電磁波が放射される。すなわち、第1のアンテナ103を介する電磁波の放射の方向および第2のアンテナ104を介する電磁波の放射の方向とは直交する方向に電磁波を放射する。これにより、通信対象の無線機器のRFIDタグ106に指向性があり、第1のアンテナ103を介する電磁波の放射と第2のアンテナ104を介する電磁波の放射では、RFID106との通信が困難な場合でも、第3のアンテナ603を介する電磁波の放射により、RFID106と通信が可能になる。
図7に、RFIDシステム601のリーダ/ライタ602が、第1のアンテナ103を介する電磁波の放射と第2のアンテナ104を介する電磁波の放射と第3のアンテナ603を介する電磁波の放射とを切り替えて選択するタイミングを示す。図7のタイミング例701に示すように、リーダ/ライタ602は、使用するアンテナを一定周期毎に変更する。これにより、RFIDシステム601は、RFIDタグ106の置かれる場所が第1のアンテナ103のヌル領域にあった場合でも、実施例1と同様に第2のアンテナ104を用いてRFIDタグ106と通信でき、また、第1のアンテナ103と第2のアンテナ104では、RFIDタグ106の指向性のために通信が困難な場合でも、第3のアンテナ603を用いてRFIDタグ106と通信できる。なお、図7では、第3のアンテナ603を介する電磁波の放射で、感度良くRFIDタグ106と通信できる場合の例を示した。
図8に、一つのアンテナで、第1の条件での電磁波の放射として、第1の周波数での電磁波の放射を行い、第2の条件での電磁波の放射として、第1の周波数とは異なる第2の周波数での電磁波の放射を行う実施例を示す。
図8のRFIDシステム801は、リーダ/ライタ802と、リーダ/ライタ802と接続されているアンテナ803とを備える。リーダ/ライタ802は床面105上に置かれる。アンテナ803は、床面105の上方に置かれる、リーダ/ライタ802は、第1の周波数と第2の周波数とを切り替えて出力できる送信回路を備えている。本実施例の場合、第1の周波数での電磁波の放射のときと、第2の周波数の電磁波の放射のときとで、ヌル領域の位置がずれるので、第1の周波数での電磁波の放射でのヌル領域にある無線通信機器のRFIDタグとは、第2の周波数での電磁波の放射によって無線通信することができる。
RFIDシステム801における、アンテナ803の位置に対する、第1の周波数と第2の周波数の望ましい設定について説明する。説明のため、床面105の高さ方向の位置をC、アンテナ803の高さ方向の位置をC’、アンテナ803の水平方向の位置をD、RFIDタグ106の水平方向の位置をD’とする。なお、図8に示す例では、アンテナ803と通信対象であるRFIDタグ106とが同じ高さC’にあるが、高さを同じにしたのは、発明を理解し易くするためであり、アンテナの配置にあたって、高さを同じにする必要はない。本実施例では、CC’間の距離は1m、DD’間の距離は1m、第1の周波数は850MHzとする。第2の周波数は910MHzから1032MHzの間の周波数とする。
本実施例のアンテナ配置の場合、アンテナ803を介して出力される電磁波の直接波804のRFIDタグ106への伝送距離は、1mであり、反射波805のアンテナ803からRFIDタグ106への伝送距離は、2.2mとなる。よって、直接波804と反射波805の伝送距離差ΔDは、1.2mとなる。なお、反射波805の伝送距離は、レイトレーシング法を用いて求めても良い。
したがって、リーダ/ライタ802が、第1の周波数である850MHzを選択してアンテナ803から電磁波を放射した場合、ΔDは、3.5波長分に相当する。従って、直接波804と反射波805との間の位相差はπとなり、直接波804と反射波805は干渉により打ち消し合い、ヌル領域の発生の原因となる。
一方、リーダ/ライタ802が、第2の周波数として910MHzから1032MHzを選択してアンテナ803から電磁波を放射した場合、ΔDは、3.75から4.25波長の間の距離となる。従って、直接波804と反射波805との間の位相差は−1/2πから1/2πの間の位相差となり、直接波804と反射波805は干渉により強めあう。よって、第1の周波数での電磁波の放射によって、直接波804と反射波805が打ち消しあうことでヌル領域が発生しても、第2の周波数での電磁波の放射によって、直接波804と反射波805が干渉により強めあうことで、実施例1と同様に、無線通信システム801とRFIDタグ106とが高品位に通信できる。
一方、リーダ/ライタ802が、第2の周波数として910MHzから1032MHzを選択してアンテナ803から電磁波を放射した場合、ΔDは、3.75から4.25波長の間の距離となる。従って、直接波804と反射波805との間の位相差は−1/2πから1/2πの間の位相差となり、直接波804と反射波805は干渉により強めあう。よって、第1の周波数での電磁波の放射によって、直接波804と反射波805が打ち消しあうことでヌル領域が発生しても、第2の周波数での電磁波の放射によって、直接波804と反射波805が干渉により強めあうことで、実施例1と同様に、無線通信システム801とRFIDタグ106とが高品位に通信できる。
図9に、RFIDシステム801のリーダ/ライタ802が、第1の周波数での電磁波の放射と第2の周波数での電磁波の放射を選択するタイミング例901を示す。図9のタイミング例901に示すように、リーダ/ライタ802は、使用する周波数を一定周期毎に変更する。これにより、RFIDシステム801は、リーダ/ライタ802が、第1の周波数を選択して電磁波を放射し、RFIDタグ106の位置にヌル領域が発生する場合でも、第2の周波数を選択して電磁波を放射することによって、直接波804と反射波805の位相差が変化し、RFIDタグ106と通信できる。
図10に、実施例1のRFIDシステム101に、RFIDタグ106よりさらに遠距離にあるRFIDタグ1004とも無線通信できる無線通信システムを示す。
図10に示す無線通信システムのRFIDシステム1001では、リーダ/ライタ(R/W)102を、さらに出力を追加したリーダ/ライタ(R/W)1002に代えて、追加した出力に第3のアンテナ1003を接続している。
第1のアンテナ103と第2のアンテナ104の配置は、実施例1と同様とし、説明を省略する。また、第3のアンテナ1003を、第1のアンテナ103と第2のアンテナ104のヌル領域が重なる領域で、RFIDシステム1001とRFIDタグ106とが通信できるように、反射物である床面105の鉛直方向の位置を第1のアンテナ103と第2のアンテナ104とは異ならせて配置する。これにより、第3のアンテナ1003のヌル領域は、第1のアンテナ103と第2のアンテナ104のヌル領域とずれるので、第1のアンテナ103を介する電磁波の放射および第2のアンテナ104を介する電磁波の放射でのヌル領域にある無線通信機器のRFIDタグとは、第3のアンテナ1003を介する電磁波の放射によって無線通信することができる。
図11にRFIDタグ1004と通信する場合の電磁波の伝搬の様子を示した。第2のアンテナ104を介して放射される電磁波が、反射物である床面105に反射せずにRFIDタグ1004に到達する直接波1005の位相(P1b)と、反射物である床面105に反射してRFIDタグ1004に到達する反射波1006の位相(P2b)の差(ΔPb)がπであるとする。すると、第2のアンテナ104を介する電磁波の放射によっても、RFIDシステム1001はRFIDタグ1004と通信できない。ここで、第3のアンテナ1003を介して放射される電磁波が、反射物である床面105に反射せずにRFIDタグ1004に到達する直接波1007の位相(P1c)と、反射物である床面105に反射してRFIDタグ1004に到達する反射波1008の位相(P2c)の差(ΔPc)を−π/2からπ/2の間とすることで、直接波1007と反射波1008が干渉により強め合う。したがって、第3のアンテナ1003を介して電磁波を放射することで、RFIDシステム1001とRFIDタグ1004とが実施例1と同様に高品位に通信できる。
次に、本実施例のRFIDシステム1001から放射される電磁波の電界強度の第1のアンテナ103、第2のアンテナ104、第3のアンテナ1003からの距離依存性を、図12に示した模式図を用いて説明する。図12の縦軸は、RFIDシステム1001から放射される電磁波の電界強度の強度であり、図12の横軸は、第1のアンテナ103、第2のアンテナ104、第3のアンテナ1003からの距離である。破線401は、第1のアンテナ103を介しての電磁波の放射による電界強度を、点線402は、第2のアンテナ104を介しての電磁波の放射による電界強度を、一点鎖線405は、第3のアンテナ1003を介しての電磁波の放射による電界強度を示す。また、縦軸には、RFIDシステム1001とRFIDタグ1004の通信における、RFIDタグ1004が動作できる電力を与えられる電磁波の電界強度の下限403を示した。この下限となる強度403を下回る領域が、ヌル領域である。
図12に示すように、第2のアンテナ104を介して電磁波を放射して、RFIDタグ1004の位置にヌル領域が発生する場合、第3のアンテナ1003から電磁波を送信して、RFIDタグ1004の位置のヌル領域を解消できる。
本実施例のように、第2のアンテナ104のみでは対応できないヌル領域に通信対象であるRFIDタグがあったとしても、第3のアンテナ1003を設けることで、RFIDシステム1001とRFIDタグとが通信できる。
図13に、実施例1のRFIDシステム101を利用した例として、車両管理システム1301を示す。実施例1と同様に、リーダ/ライタ102が、第1のアンテナ103と第2のアンテナ104を介する電磁波の放射を切り替えて行い、車両1304の中のRFIDタグ106と無線通信する。そして、リーダ/ライタ102は、RFIDタグ106の、例えば、固有ID等のメモリデータを取得して、制御装置(CTR)1303へ転送する。そして、制御装置1303は、RFIDタグ106のメモリデータに基づいて、ゲート1302を開けて車両1304を通過させても良いかを判断し、通過して良い場合のみゲート1302を開ける。そして、車両1304は、ゲート1302を通過する。本実施例の場合、路面1305が反射物となる。
以上より、車両管理システム1301は、路面1305による反射波が生じる条件であってもアンテナを配置することができる。したがって、RFIDシステム101を用いることで、車両管理システム1301の設置の自由度が高くなる。
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。
101、601、801、1001・・・RFIDシステム、
102、602、802、1002・・・リーダ/ライタ(R/W)、
103、803・・・第1のアンテナ、
104・・・第2のアンテナ、
603、1003・・・第3のアンテナ、
604・・・第3のアンテナからの直接波
105・・・床、
106、1004・・・RFIDタグ、
107、804・・・第1のアンテナからの直接波、
108、805・・・第1のアンテナからの反射波、
109、1005・・・第2のアンテナからの直接波、
110、1006・・・第2のアンテナからの反射波、
1007・・・第3のアンテナからの直接波、
1008・・・第3のアンテナからの反射波、
111・・・RFIDタグの鏡像、
201・・・論理回路、
202・・・送信回路、
203・・・受信回路、
204・・・サーキュレータ、
205・・・切替装置、
301、305・・・グラフ、
302、306・・・直接波の振幅、
303、307・・・反射波の振幅、
304、308・・・合成波の振幅、
401・・・第1のアンテナからの電磁波の放射による電界強度、
402・・・第2のアンテナからの電磁波の放射による電界強度、
403・・・RFIDタグが動作できる下限となる電界強度、
404・・・反射の無い場合の電界強度、
405・・・第3のアンテナからの電磁波の放射による電界強度、
501、502、701・・・リーダ/ライタの使用アンテナの切替タイミング、
901・・・リーダ/ライタの使用周波数の切替タイミング、
1301・・・車両管理システム、
1302・・・ゲート、
1303・・・制御装置、
1304・・・車両。
102、602、802、1002・・・リーダ/ライタ(R/W)、
103、803・・・第1のアンテナ、
104・・・第2のアンテナ、
603、1003・・・第3のアンテナ、
604・・・第3のアンテナからの直接波
105・・・床、
106、1004・・・RFIDタグ、
107、804・・・第1のアンテナからの直接波、
108、805・・・第1のアンテナからの反射波、
109、1005・・・第2のアンテナからの直接波、
110、1006・・・第2のアンテナからの反射波、
1007・・・第3のアンテナからの直接波、
1008・・・第3のアンテナからの反射波、
111・・・RFIDタグの鏡像、
201・・・論理回路、
202・・・送信回路、
203・・・受信回路、
204・・・サーキュレータ、
205・・・切替装置、
301、305・・・グラフ、
302、306・・・直接波の振幅、
303、307・・・反射波の振幅、
304、308・・・合成波の振幅、
401・・・第1のアンテナからの電磁波の放射による電界強度、
402・・・第2のアンテナからの電磁波の放射による電界強度、
403・・・RFIDタグが動作できる下限となる電界強度、
404・・・反射の無い場合の電界強度、
405・・・第3のアンテナからの電磁波の放射による電界強度、
501、502、701・・・リーダ/ライタの使用アンテナの切替タイミング、
901・・・リーダ/ライタの使用周波数の切替タイミング、
1301・・・車両管理システム、
1302・・・ゲート、
1303・・・制御装置、
1304・・・車両。
Claims (20)
- 反射物が存在する空間に電磁波を放射してRFIDタグと通信するRFIDシステムであって、
第1のアンテナと、
前記第1のアンテナに対して、前記反射物の反射面の鉛直方向の位置を異ならせて設けられている第2のアンテナと、
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとに接続され、前記第1のアンテナを介する電磁波の放射と前記第2のアンテナを介する電磁波の放射とを切り替えて行うリーダ/ライタとを有し、
前記空間の内の、前記第1のアンテナを介して放射される前記電磁波の直接波と前記第1のアンテナを介して放射される前記電磁波の前記反射物による反射波との干渉によって生じるヌル領域に存在する前記RFIDタグと、前記第2のアンテナを介して放射される前記電磁波によって通信することを特徴とするRFIDシステム。 - 請求項1に記載のRFIDシステムであって、
前記ヌル領域に、前記第2のアンテナを介して放射される前記電磁波の直接波と前記第2のアンテナを介して放射される前記電磁波の前記反射物による反射波とが干渉して強め合う点を含むことを特徴とするRFIDシステム。 - 請求項2に記載のRFIDシステムであって、
前記振幅を強め合う点における、前記第2のアンテナを介して放射される前記電磁波の直接波と前記第2のアンテナを介して放射される前記電磁波の前記反射物による反射波との間の位相差が0であることを特徴とするRFIDシステム。 - 請求項1に記載のRFIDシステムであって、
前記反射物は、床面であることを特徴とするRFIDシステム。 - 請求項1に記載のRFIDシステムであって、
前記反射物は、路面であることを特徴とするRFIDシステム。 - 請求項1に記載のRFIDシステムであって、
前記電磁波はマイクロ波であることを特徴とするRFIDシステム。 - 請求項1に記載のRFIDシステムであって、
前記第1のアンテナを介して放射される前記電磁波の放射方向と直交する方向に前記電磁波を放射するための、第3のアンテナを有することを特徴とするRFIDシステム。 - 反射物が存在する空間に電磁波を放射して無線機器と通信する無線通信システムであって、
第1のアンテナと、
前記第1のアンテナに対して、前記反射物の反射面の鉛直方向の位置を異ならせて設けられている第2のアンテナとを有し、
前記第1のアンテナを介する電磁波の放射と、前記第2のアンテナを介する電磁波の放射とを切り替えて行うことを特徴とする無線通信システム。 - 請求項8に記載の無線通信システムであって、
前記第1のアンテナを介する前記電磁波の放射と前記第2のアンテナを介する前記電磁波の放射とを切り替え可能な切替装置を有することを特徴とする無線通信システム。 - 請求項8に記載の無線通信システムであって、
前記無線機器がRFIDタグであることを特徴とする無線通信システム。 - 請求項8に記載の無線通信システムであって、
前記反射物は、床面であることを特徴とする無線通信システム。 - 請求項8に記載の無線通信システムであって、
前記反射物は、路面であることを特徴とする無線通信システム。 - 請求項8に記載の無線通信システムであって、
前記電磁波はマイクロ波であることを特徴とする無線通信システム。 - 反射物が存在する空間で電磁波を放射して無線機器と通信する無線通信方法であって、
第1の条件と第2の条件とで条件を切り替えて前記電磁波を放射し、
前記第1の条件で放射される前記電磁波の直接波と前記第1の条件で放射される前記電磁波の前記反射物による反射波との干渉によって生じるヌル領域に存在する前記無線機器と、前記第2の条件で放射される前記電磁波によって通信することを特徴とする無線通信方法。 - 請求項14に記載の無線通信方法であって、
第1のアンテナと第2のアンテナとを準備し、
前記第1の条件では前記第1のアンテナを介して前記電磁波が放射され、
前記第2の条件では前記第2のアンテナを介して前記電磁波が放射されることを特徴とする無線通信方法。 - 請求項15に記載の無線通信方法であって、
前記ヌル領域に、前記第2の条件で放射される前記電磁波の直接波と前記第2の条件で放射される前記電磁波の前記反射物による反射波とが干渉して強めあう点を含むことを特徴とする無線通信方法。 - 請求項16に記載の無線通信方法であって、
前記第1の条件では第1の周波数で前記電磁波を放射し、
前記第2の条件では前記第1の周波数とは異なる第2の周波数で前記電磁波を放射することを特徴とする無線通信方法。 - 請求項14に記載の無線通信方法であって、
前記無線機器がRFIDタグであることを特徴とする無線通信方法。 - 請求項14に記載の無線通信方法であって、
前記反射物は、床面であることを特徴とする無線通信方法。 - 請求項14に記載の無線通信方法であって、
前記反射物は、路面であることを特徴とする無線通信方法。
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JP2010117930A JP2011249890A (ja) | 2010-05-24 | 2010-05-24 | 無線通信システムおよび無線通信方法 |
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Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2006141041A (ja) * | 1992-11-18 | 2006-06-01 | Btg Internatl Ltd | 識別システム |
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2010
- 2010-05-24 JP JP2010117930A patent/JP2011249890A/ja active Pending
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