JP2011249287A - 電池用負極とその製造方法および一次電池 - Google Patents

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Koji Nitta
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Abstract

【課題】放電特性に優れ、大電流放電が可能で、充分な放電容量を得ることができるマグネシウム負極や亜鉛負極を得ること。
【解決手段】アルミニウム多孔体内にマグネシウムまたは亜鉛を主成分とする金属が含入されている電池用負極。アルミニウム多孔体の骨格を形成するアルミニウムの表面の酸素量が、3.1質量%以下である電池用負極。アルミニウム多孔体が、連通孔を有し、閉気孔を有さず、さらにアルミニウムのみからなる電池用負極。連通孔を有する樹脂の表面にアルミニウム層を形成後、樹脂を溶融塩に浸漬した状態で、アルミニウムの標準電極電位より卑な電位に保ちながら、樹脂をアルミニウムの融点以下の温度で加熱分解してアルミニウム多孔体を作製し、さらにマグネシウムまたは亜鉛を主成分とする金属を含入する電池用負極の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、電池用負極とその製造方法および一次電池に関し、詳しくは、マグネシウム(Mg)または亜鉛(Zn)を活物質とする電池用負極とその製造方法および前記電池用負極を用いた一次電池に関する。
近年、小型の携帯用電子機器等の普及には非常にめざましいものがあり、より放電特性に優れた電池が要望されている。
一次電池の代表的な例として、マグネシウム−二酸化マンガン一次電池やアルカリ・マンガン一次電池が製品化されている(非特許文献1)。
これは、マグネシウム−二酸化マンガン一次電池のマグネシウムを活物質とする電池用負極や、アルカリ・マンガン一次電池の亜鉛を活物質とする電池用負極が、単位体積当りのエネルギー密度が大きく、安価であるためである。
高村 勉 監修「最新 電池ハンドブック」 株式会社朝倉書店、1996年12月26日発行、120〜148ページ
しかしながら、これら従来の一次電池は、充分に優れた放電特性を有しているとは言えなかった。即ち、これらの一次電池においては、負極金属(マグネシウム、亜鉛)での反応が放電電流密度を律速しているため、大電流放電を行うことが困難であり、大電流放電を行った場合には充分な放電容量を得ることができないという問題があった。また、小型のアルカリ・マンガン一次電池の場合には、エネルギー密度が低いという問題もあった。
これらの問題点に鑑み、放電特性に優れ、大電流放電が可能で、充分な放電容量を得ることができるマグネシウム−二酸化マンガン一次電池のマグネシウム負極や、優れた放電特性と共に、小型であっても高いエネルギー密度のアルカリ・マンガン一次電池の亜鉛負極を得ることができる製造技術の開発が望まれ、さらにこれらの負極を用いた一次電池の開発が望まれていた。
上記の課題は、以下に示す各発明により解決することができる。
(1)本発明に係る電池用負極は、
アルミニウム多孔体内にマグネシウムを主成分とする金属が含入されていることを特徴とする。
本発明者は、上記の課題の解決につき、鋭意検討を行った。その結果、マグネシウム−二酸化マンガン一次電池においては、負極として、従来のマグネシウム合金板に替えて、アルミニウム多孔体内にマグネシウムを主成分とする金属を含入して用いることが有効であることを見出した。
即ち、負極活物質であるマグネシウムを主成分とする金属が多孔体内に含入されているため、反応にあずかる活物質の表面積が増加されて、放電電流密度を上げることができる。この結果、大電流放電を行うことが可能となり、充分に優れた放電特性を有する一次電池を提供することができる。
多孔体としては、特開昭57−174484号公報に示されたニッケル多孔体が知られている。しかし、ニッケルが電解液に不安定という問題があった。これに対して、特開平08−170126号公報に示されたアルミニウム多孔体の場合、アルミニウムは電解液に対して比較的安定であるため、電池用負極として好ましい。
アルミニウム多孔体としては、芯となる骨格自体がアルミニウムによって形成された多孔体だけでなく骨格が、銅、ニッケル、鉄などの芯材の表面にアルミニウム層が形成された多孔体であってもよい。後者の場合、高強度の多孔体を形成することができる。
なお、マグネシウムを主成分とする金属とは、マグネシウム以外に少量の金属が含有されていてもよいことを意味し、特に、亜鉛やアルミニウムなどの金属が含有されていることが好ましい。
(2)また、本発明に係る電池用負極は、
アルミニウム多孔体内に亜鉛を主成分とする金属が含入されていることを特徴とする。
本発明者は、アルカリ・マンガン一次電池において、上記と同様に検討を行った結果、負極として、従来の亜鉛粉をバインダーで固めた負極に替えて、アルミニウム多孔体内に亜鉛を主成分とする金属を含入して用いることが有効であることを見出した。
即ち、負極活物質である亜鉛を主成分とする金属が多孔体内に含入されているため、前記と同様、反応にあずかる活物質の表面積が増加されて、放電電流密度を上げることができる。この結果、大電流放電を行うことが可能となり、充分に優れた放電特性を有する一次電池を提供することができる。
さらに、このような電池用負極を小型のアルカリ・マンガン一次電池に採用した場合、充分なエネルギー密度を確保できる。
前記と同様、アルミニウム多孔体としては、銅などの芯材の表面にアルミニウム層が形成されたアルミニウム多孔体であってもよい。
なお、亜鉛を主成分とする金属とは、前記と同様、亜鉛以外に少量の金属が含有されていてもよいことを意味し、特に、酸化亜鉛が含有されていることが好ましい。
(3)そして、前記の電池用負極は、
前記アルミニウム多孔体の骨格を形成するアルミニウムの表面の酸素量が、3.1質量%以下であることを特徴とする。
アルミニウム多孔体の骨格を形成するアルミニウムの表面の酸素量が、3.1質量%以下であるアルミニウム多孔体を用いて、電池用負極を形成することにより、一層放電電流密度を上げることができ、一層優れた放電特性を有する一次電池を提供することができる。
Alはもともと酸化され易いため、これまで表面の酸素量が充分に少ないアルミニウム多孔体が無かった。例えば特開平8−170126号公報に記載の発泡樹脂の表面に形成させたAlの共晶合金の皮膜の表面にAl粉末を塗着後、非酸化性の雰囲気中で熱処理して作製されたアルミニウム多孔体の場合は、表面に酸化皮膜が生成するため、表面の酸素量が多い。
表面の酸素量が多い場合には、含入されたマグネシウムや亜鉛が酸素(O)によって酸化され活物質としての機能が低下するため、大きな放電電流密度を得ることができず、大電流放電を行うことができない。また、生成した酸化物は抵抗層となるため、特性が低下する。
このため、本発明者は、酸素量の少ないアルミニウム多孔体を研究し、酸素量3.1質量%以下のアルミニウム多孔体の開発に成功した。
本発明は、このようなアルミニウム多孔体を用いることを特徴としており、表面の酸素量が3.1質量%以下のアルミニウム多孔体を用いるため、一層大きな放電電流密度を得ることができ、大電流放電を行うことができる。
ここで、本発明のリチウム電池用合金負極の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。製造方法の第一段階では、連通孔を有するアルミニウム多孔体を製造し、第二段階では、そのアルミニウム多孔体に前記したマグネシウムや亜鉛を主成分とする金属を含入する。
図1は、その第一段階の概略を示す模式図である。図1(a)は、連通孔を有する樹脂1の断面の一部を示す拡大模式図であり、樹脂1を骨格として孔が形成されている様子を示している。図1(b)は、連通孔を有する樹脂1の表面にアルミニウム層2が形成された様子(アルミニウム層被膜樹脂3)を示している。図1(c)は、アルミニウム層被膜樹脂3から樹脂1を熱分解させて消失させた後の様子(アルミニウム多孔体4)を示している。
図2は、アルミニウム層被膜樹脂3から、樹脂1を熱分解して消失させる工程を示す。アルミニウム層被膜樹脂3及び正極5を溶融塩6に浸漬し、アルミニウム層2をアルミニウムの標準電極電位より卑な電位に保つ。溶融塩中に浸漬してアルミニウム層2をアルミニウムの標準電極電位より卑な電位に保つことにより、アルミニウム層2の酸化が抑制される。なお、正極5には、溶融塩に不溶性を示せば適宜選択することができるが、たとえば、白金、チタンなどからなる電極が用いられる。
この状態で、樹脂1の分解温度以上に溶融塩6を加熱すると、アルミニウム層被膜樹脂3のうち樹脂1のみが分解して消失する。その結果、アルミニウム多孔体4が得られる。この方法により製造されたアルミニウム多孔体4は、製造法の特質上、中空糸状である。この点において、特開2002−371327で開示するようなアルミニウム発泡体の構造とは異なっている。なお、樹脂1を分解させるに際しては、アルミニウムの溶融を防ぐため、加熱温度はアルミニウムの融点以下とする。具体的には、アルミニウムの融点である660℃以下で加熱することが好ましい。
本発明における樹脂には、アルミニウムの融点以下の温度で熱分解するものであれば、任意の樹脂を選択できる。たとえば、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレン等がある。なかでも、発泡ウレタンは、気孔率が高いし、熱分解しやすい素材であるので、発泡ウレタンが本発明の製造方法に用いる樹脂として好ましい。また、樹脂の気孔率は80%〜98%、気孔径は50μm〜500μm程度のものが好ましい。樹脂は、連通孔を有することが好ましい。これにより、閉気孔が無いアルミニウム多孔体が得られる。
以上に説明したアルミニウム多孔体の表面のアルミニウムは、酸素量が極めて低く、EDX分析の析出限界である3.1質量%以下であった。また、連通孔は有するが閉気孔が無く、さらに共晶合金などを用いないため、アルミニウムのみから構成されている。
次に、第二段階として、アルミニウム多孔体4に、マグネシウムや亜鉛を主成分とする金属を含入する。
(4)また、前記の電池用負極は、
前記アルミニウム多孔体が、連通孔を有し、閉気孔を有さず、
さらにアルミニウムのみからなることを特徴とする。
従来のアルミニウム多孔体、例えば、特開2002−371327号公報に記載のAlを溶融させた状態で発泡剤を加えて発泡させたアルミニウム多孔体には閉気孔が多く存在する。また、前記した特開平8−170126号公報に記載のアルミニウム多孔体は、共晶金属であるためBi、Caその他のAl以外の金属を含有する。このように、閉気孔が多く存在する場合には、マグネシウムや亜鉛を主成分とする金属を充分に含入させることができない。
また、アルミニウム以外の金属を含有するため、マグネシウムや亜鉛の機能を充分に発揮させることができない恐れがある。これに対して、アルミニウムは電池性能を低下させる電極部におけるガスの発生を抑制する効果も期待できる。
一方、本発明のアルミニウム多孔体は、連通孔を有し、閉気孔を有さないため、マグネシウムや亜鉛を主成分とする金属、即ち活物質を多く含入することができる。この結果、大きな放電電流密度を得ることができ、大電流放電を行うことができる。
また、アルミニウム多孔体がアルミニウムのみからなるため、マグネシウムや亜鉛の機能を充分に発揮させることができる。
(5)本発明に係る一次電池は、
前記(1)〜(4)に記載の電池用負極を備えることを特徴とする。
本発明の一次電池は、前記の特徴を有する負極を備えているため、大きな放電電流密度を得ることができ、大電流放電を行うことができる。このため、前記したように、充分に優れた放電特性を有する一次電池を提供することができる。
(6)本発明に係る電池用負極の製造方法は、
連通孔を有する樹脂の表面にアルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、
前記樹脂を溶融塩に浸漬した状態で、前記アルミニウム層をアルミニウムの標準電極電位より卑な電位に保ちながら前記樹脂をアルミニウムの融点以下の温度に加熱して、前記樹脂を加熱分解してアルミニウム多孔体を作製するアルミニウム多孔体作製工程と、
前記アルミニウム多孔体にマグネシウムまたは亜鉛を主成分とする金属を含入する金属含入工程と
を有することを特徴とする。
本発明の電池用負極の製造方法によれば、前記したようにアルミニウム層の表面の酸素量が3.1質量%以下であり、連通孔を有し、閉気孔を有さず、さらにアルミニウムのみからなるアルミニウム多孔体にマグネシウムや亜鉛を主成分とする金属を含入しているため、優れた放電特性の電池用負極を提供することができる。
(7)また、前記の電池用負極の製造方法は、
前記アルミニウム層の形成方法が、真空蒸着法、スパッタリング法、レーザアブレーション法又はプラズマCVD法であることを特徴とする。
真空蒸着法では、例えば、原料のアルミニウム金属に電子ビームを照射してアルミニウム金属を溶融・蒸発させ、連通孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウム金属を付着させることにより、アルミニウム金属層を形成することができる。スパッタリング法では、例えば、アルミニウム金属のターゲットにプラズマ照射してアルミニウム金属を気化させ、連通孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウム合金を付着させることにより、アルミニウム金属層を形成することができる。レーザアブレーション法では、例えば、レーザ照射によりアルミニウム金属を溶融・蒸発させ、連通孔を有する樹脂体の樹脂表面にアルミニウム金属を付着させることにより、アルミニウム金属層を形成することができる。プラズマCVD法では、原料であるアルミニウム化合物に高周波を印加することによってプラズマ化させ、連通孔を有する樹脂の表面に付着させることにより、アルミニウム金属層を形成することができる。
(8)また、前記の電池用負極の製造方法は、
前記アルミニウム層の形成方法が、前記樹脂の表面を導電化処理した後、アルミニウムをめっきするめっき法であることを特徴とする。
水溶液中でアルミニウムをめっきすることは、実用上ほとんど不可能であるため、溶融塩中でアルミニウムをめっきする溶融塩電解めっきが行われる。この場合において、予め樹脂の表面を導電化処理した後に、溶融塩中でアルミニウムをめっきすることが好ましい。
ここで用いる溶融塩は、樹脂を加熱分解する工程で用いられることになる溶融塩と同じであっても、異なっていてもよい。具体的には、塩化カリウム、塩化アルミニウム、塩化ナトリウム等の溶融塩が使用される。また、2成分以上の塩を使用し、共晶溶融塩として使用してもよい。共晶溶融塩にした場合、溶融温度が低下するので好ましい。この溶融塩中には、少なくともアルミニウムイオンが含まれている必要がある。
(9)また、前記の電池用負極の製造方法は、
前記アルミニウム層の形成方法が、前記樹脂の表面にアルミニウムペーストを塗布する塗布法であることを特徴とする。
樹脂の表面にアルミニウムペーストを塗布する場合において、そのアルミニウムペーストは、たとえば、アルミニウム粉末、結着剤(バインダー樹脂)及び有機溶剤が混合されたものである。具体的には、アルミニウムペーストを樹脂の表面に塗布した後、加熱して有機溶剤及びバインダー樹脂を消失させるとともに、アルミニウムペーストを焼結させる。焼結時の加熱は、一段階でおこなっても複数回に分けておこなっても良い。例えば、アルミニウムペーストを塗布した後に低温で加熱して有機溶剤を消失させた後、溶融塩中に浸漬して加熱することにより、樹脂の分解と同時にアルミニウムペーストの焼結を行っても良い。
本発明によれば、放電特性に優れ、大電流放電が可能で、充分な放電容量を得ることができるマグネシウム負極や亜鉛負極を得ることができる。
アルミニウム多孔体の製造工程を示した模式図である。(a)は、連通孔を有する樹脂の図である。(b)は、樹脂の表面にアルミニウム層が形成された状態を示す図である。(c)は、樹脂が消失した後のアルミニウム多孔体を示す図である。 溶融塩の中での樹脂の分解工程を説明するための模式図である。 本発明のアルミニウム多孔体のSEM写真である。 本発明によるアルミニウム多孔体のEDX分析結果を示す図である。 本発明の一次電池を説明する図である。
以下、本発明をその実施の形態に基づき図面を用いて説明する。
A.電池用負極
本実施の形態におけるリチウム電池用合金負極は、アルミニウム多孔体中にマグネシウムを主成分とする金属、または亜鉛を主成分とする金属が含入されており、アルミニウム多孔体の骨格は、アルミニウムによって形成されている。そして、本実施の形態における電池用負極は、下記の製造方法により製造される(図1参照)。
B.電池用負極の製造方法
多孔性の樹脂1には、連通孔を有する発泡樹脂や不織布が用いられ、特に気孔率が80%〜98%、気孔径が50μm〜500μm程度の樹脂が好ましく、発泡ウレタンが好ましく用いられる。
以下、電池用負極の製造方法を、アルミニウム層形成工程、アルミニウム多孔体作製工程、および金属含入工程の順に説明する。
(1)アルミニウム層形成工程
真空蒸着、スパッタリング法若しくはプラズマCVD等の気相法、めっき法、アルミニウムペースト塗布法等により、樹脂1の表面に、アルミニウム層2を、直に形成してアルミニウム層被覆樹脂3を作製する。
電解めっきを行うためには、予め樹脂1の表面を導電化処理する。導電化処理には、ニッケル等の導電性金属の無電解めっき、アルミニウム等の蒸着若しくはスパッタリング、又はカーボン等の導電性粒子を含有した導電性塗料の塗布などの任意の方法が選択される。アルミニウムめっきするためのめっき浴には例えばAlCl−XCl(X:アルカリ金属)−MCl(MはCr、Mn、及び遷移金属元素から選択される添加元素)の多成分系の溶融塩が使用される。溶融塩の中に樹脂1を浸漬し、導電化処理をした樹脂を負極にして電解めっきを行う。
アルミニウム層の形成は、前記の通り、アルミニウムペーストの塗布によっても行うことができる。アルミニウムペーストは、アルミニウム粉末と結着剤(バインダー樹脂)及び有機溶剤を混合したものであり、樹脂1の表面に所定量のアルミニウムペーストを塗布後、非酸化性雰囲気下で焼結する。
(2)アルミニウム多孔体作製工程
次に、樹脂1を熱分解させて除去する(図2参照)。表面にアルミニウム層を形成した樹脂(すなわち、アルミニウム層被膜樹脂3)をLiCl、KCl、NaCl、AlClからなる群より選択される1種以上を含む塩の中で、アルミニウムの融点以下の、好ましくは500℃〜600℃の温度にて加熱して、白金またはチタン製の正極5との間に所定の電圧を印加してアルミニウム層被膜樹脂3のアルミニウム層をアルミニウムの標準電極電位より卑な電位(Li、K、Naの還元電位より貴な電位)で保って樹脂1を熱分解させて除去し、図1(c)のアルミニウム多孔体4を作製する。
(3)金属含入工程
次に、作製したアルミニウム多孔体に所定量のマグネシウムを主成分とする金属、または亜鉛を主成分とする金属を含入し、電池用負極を作製する。具体的には、例えばアルミニウム多孔体の骨格の表面に、マグネシウムを主成分とする金属を真空蒸着法により形成する。また、亜鉛を主成分とする金属の場合は、アルミニウム多孔体の骨格の表面、および骨格内の中空に、めっき法により形成する。
(実施例1)
本実施例は、アルミニウム多孔体中にマグネシウムを主成分とする金属を含入して作製された電池用負極を用いたマグネシウム−二酸化マンガン一次電池の例である。
(1)アルミニウム多孔体の作製
気孔率97%、気孔径約300μmのポリウレタンフォームを準備した。このポリウレタンフォームの表面に真空蒸着法により、厚さ約50μmのアルミニウム層を形成した後、温度500℃のLiCl−KCl共晶溶融塩に浸漬し、アルミニウム層をアルミニウムの標準電極電位より卑な電位で30分間保持した。その後大気中で室温まで冷却し、水洗して溶融塩を除去してアルミニウム層を骨格とする厚さ0.5mm、気孔率97%のアルミニウム多孔体を作製した。
参考例では、孔径が200μm〜500μmであり、気孔率が97%で、厚みが1.0mmの発泡ウレタンフォームを準備した。この発泡ウレタンフォームを、真空蒸着装置内に配置した。アルミニウム金属を溶融・蒸発させる真空蒸着法により、発泡ウレタン樹脂の表面にアルミニウム膜を蒸着させた。その後、大気中で、550℃の熱処理をすることにより、発泡ウレタンフォームを除去した。これにより、参考例であるアルミニウム多孔体を得た。
(2)アルミニウム多孔体の構造の確認と酸素量の測定
本実施例のアルミニウム多孔体のSEM写真を図3に示す。図3より、アルミニウム多孔体を構成する孔が連通していることが分かった。また、本実施例のアルミニウム多孔体は閉気孔を有しないことが分かった。
本実施例のアルミニウム多孔体の表面について、15kVの加速電圧でEDX分析した。その結果を図4に示す。酸素のピークは観測されなかった。したがって、アルミニウム多孔体の酸素量は、EDXの検出限界以下であることが分かった。ここで、EDXによる検出限界は酸素量3.1質量%であるので、本実施例のアルミニウム多孔体の表面の酸素量は、3.1質量%以下であるといえる。
参考例のアルミニウム多孔体の表面についても、同様な条件でEDX分析した。その結果、酸素のピークが観測され、アルミニウム多孔体の酸素量は少なくとも3.1質量%を超えることが分かった。熱処理する際に、アルミニウム多孔体の表面が酸化したためである。
なお、この分析で用いた装置は、EDAX社製の「EDAX Phonenix」であり、その型式はHIT22 136−2.5である。
(3)負極の作製
上記で得られたアルミニウム多孔体内に、マグネシウムを主成分とする金属を含入し、負極を作製した。具体的には、真空蒸着法を用いて、アルミニウム多孔体の表面に、厚さが100μmのマグネシウム膜を形成した。
(4)正極の作製
二酸化マンガン(活物質)、アセチレンブラック(導電助剤)、保湿剤、塩素酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウムを所定の比率で混合して正極を作製した、なお、正極集電体としては炭素棒を使用した。
(5)マグネシウム−二酸化マンガン一次電池の組立
作製した負極および正極と電解液、セパレーターを用いて、電池容量が1000mAhのマグネシウム−二酸化マンガン一次電池を組立てた。図5は、本実施例の一次電池の構成を説明するための図である。図5において、11は一次電池、12は正極、13はセパレーター、14は負極である。なお、電解液には、塩素酸リチウム含有過塩素酸マグネシウム水溶液を用い、セパレーターには吸水性クラフト紙を用いた。
(6)比較例1
負極にマグネシウム合金板を使用したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のマグネシウム−二酸化マンガン一次電池を組立てた。
(7)電池評価
実施例1、比較例1で作成されたマグネシウム−二酸化マンガン一次電池を、カットオフ電圧1.9V−0.9Vで放電させ、0.01Cと0.1C、2種類のCレート時における放電容量率(仕込み容量対比、単位%)を測定した。測定結果を表1に示す。
Figure 2011249287
表1より、実施例1のマグネシウム−二酸化マンガン一次電池は、比較例1に比べて、放電容量率が高く、放電特性が優れていることが分かる。このように放電特性が優れているのは、実施例1に使用した電池用負極の活物質の表面積が大きく、また電気抵抗が低いためである。
(実施例2)
本実施例は、アルミニウム多孔体中に亜鉛を主成分とする金属を含入して作製された電池用負極を用いたアルカリ・マンガン一次電池の例である。
(1)負極の作製
実施例1と同様に作製されたアルミニウム多孔体内に、亜鉛を主成分とする金属(亜鉛に1質量%の酸化亜鉛を含有させた)を含入し、負極を作製した。具体的には、めっき法を用いて、骨格表面および骨格内の中空表面に、厚さが100μmの亜鉛膜を形成した。
(2)アルカリ・マンガン一次電池の組立
作製した負極以外は、実施例1と同じ正極と電解液、セパレーターを用いて、電池容量が40mAhのアルカリ・マンガン一次電池を組立てた。
(3)比較例2
負極として、亜鉛粉に酸化亜鉛、ゲル化剤、KOH,バインダー(ポリマー)を所定の比率で混合した合剤を使用したこと以外は、実施例2と同様にして比較例2のアルカリ・マンガン一次電池を組立てた。
(4)電池評価
実施例2、比較例2で作成されたアルカリ・マンガン一次電池を、カットオフ電圧1.9V−0.9Vで放電させ、0.1Cと0.3C、2種類のCレート時における放電容量率(仕込み容量対比、単位%)を測定した。測定結果を表2に示す。
Figure 2011249287
表2より、実施例2のアルカリ・マンガン一次電池は、比較例2に比べて、放電容量率が高く、放電特性が優れていることが分かる。このように放電特性が優れているのは、実施例1の場合と同様に、実施例2に使用した電池用負極の活物質の表面積が大きく、また電気抵抗が低いためである。
また、実施例2は比較例2に比べてエネルギー密度が高いことが確認された。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
1 樹脂
2 アルミニウム層
3 アルミニウム層被覆樹脂
4 アルミニウム多孔体
5 正極
6 溶融塩
11 一次電池
12 正極
13 セパレーター
14 負極

Claims (9)

  1. アルミニウム多孔体内にマグネシウムを主成分とする金属が含入されていることを特徴とする電池用負極。
  2. アルミニウム多孔体内に亜鉛を主成分とする金属が含入されていることを特徴とする電池用負極。
  3. 前記アルミニウム多孔体の骨格を形成するアルミニウムの表面の酸素量が、3.1質量%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電池用負極。
  4. 前記アルミニウム多孔体が、連通孔を有し、閉気孔を有さず、
    さらにアルミニウムのみからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の電池用負極。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の電池用負極を備えることを特徴とする一次電池。
  6. 連通孔を有する樹脂の表面にアルミニウム層を形成するアルミニウム層形成工程と、
    前記樹脂を溶融塩に浸漬した状態で、前記アルミニウム層をアルミニウムの標準電極電位より卑な電位に保ちながら前記樹脂をアルミニウムの融点以下の温度に加熱して、前記樹脂を加熱分解してアルミニウム多孔体を作製するアルミニウム多孔体作製工程と、
    前記アルミニウム多孔体にマグネシウムまたは亜鉛を主成分とする金属を含入する金属含入工程と
    を有することを特徴とする電池用負極の製造方法。
  7. 前記アルミニウム層の形成方法が、真空蒸着法、スパッタリング法、レーザアブレーション法又はプラズマCVD法であることを特徴とする請求項6に記載の電池用負極の製造方法。
  8. 前記アルミニウム層の形成方法が、前記樹脂の表面を導電化処理した後、アルミニウムをめっきするめっき法であることを特徴とする請求項6に記載の電池用負極の製造方法。
  9. 前記アルミニウム層の形成方法が、前記樹脂の表面にアルミニウムペーストを塗布する塗布法であることを特徴とする請求項6に記載の電池用負極の製造方法。
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