JP2011247709A - 検査システム - Google Patents

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Takako Mizoguchi
崇子 溝口
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晃 塚本
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明佳 谷本
Toshiharu Miwa
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武之 板橋
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悠介 関
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Abstract

【課題】シート状の磁性体である被検査体中に混入している金属異物を高速かつ高精度で検出することを課題とする。
【解決手段】本発明は、シート状の磁性体である被検査材111に金属異物が混入しているか否かを検査する検査システム1aであって、金属異物を含む可能性のある被検査材111を磁化し、その後、被検査材111の磁化をキャンセルする強度の磁場を、被検査材111に印加し、複数の磁気センサ130で検出した磁気信号を差分処理し、その差分処理の結果に基づいて、被検査材111に金属異物が混入しているか否かを判定する。
【選択図】図1A

Description

本発明は、食品・医薬品・工業製品などに混入している金属異物を磁気的に非破壊で検出する技術に関し、特に、リチウムイオン電池の電極などのシート状の磁性体中に混入している微量の金属異物を検出する技術に関する。
リチウムイオン電池の発熱・発火事故などが2006年頃多く報告され、これらの事故の原因の多くは製造工程で混入した金属異物であると考えられている。しかし、現状のインライン検査技術では、金属異物を直接的に検査する手法は確立されていない。そのため、現状では、電池セルの充放電検査を行い、内部短絡によって電圧低下が生じる不良の電池セルをスクリーニング検査しているのが実態である。そして、このスクリーニング検査は電池として組みあがってからの検査のため、検査時間や不良品回収コストがかかるといった問題がある。
一方、磁気を用いた金属異物の検出の従来技術として、例えば、次の3つがある。
(1)特許文献1の検査システムは、磁気的に安定した検査領域を画成する磁気遮蔽容器と、磁気遮蔽容器により画成された検査領域内の磁界変動を検出するSQUID(Superconducting Quantum Interference Device:超電導量子干渉素子)を用いた磁気センサとを備え、この検査領域内を移動する被検査物に含まれる異物または欠陥を、被検査物を破壊することなく検出する。
(2)特許文献2の磁性物検出装置は、被検査体に混入された磁性異物を所定の方向に磁化させるための帯磁装置と、磁性異物を検出する検出部と、制御装置と、被検査体を搬送させるための搬送機構とを備える。検出部は、磁気シールド内に配置された磁気センサを含み、磁気センサは、一対の差動構成された検出コイルを有するSQUIDグラジオメータで構成される。
(3)特許文献3の磁気信号計測装置は、試料を移動可能な搬送機構と、当該試料の検査を実施する検査領域を形成する磁気シールド部と、その内部に設置された磁気センサと、試料に着磁用磁場を印加する着磁用磁場印加機構と、着磁用磁場とは逆方向のキャンセル磁場を、試料に印加するキャンセル磁場印加機構と、検査領域内で磁気センサにより測定された結果を計測データとして収録し、当該計測データに基づき解析を実行し、試料の良否を判定する演算手段を備える。
なお、特許文献2に記載のグラジオメータによる環境磁気ノイズの低減に関しては従来技術であり、例えば、特許文献4、特許文献5、非特許文献1(特にp.138参照)に開示されている。
特開平7−77516号公報 特開2009−92507号公報 特開2009−294062号公報 特開平4―265875号公報 特開平11−312830号公報
S. J. WILLIAMSON, L. KAUFMAN "BIOMAGNETISM", Journal of Magnetism and Magnetic Materials vol. 22, pp.129-201、1981.
特許文献1〜3に記載の従来技術は、主に、狭い領域の被検査材について検査する技術である。なお、特許文献1には、複数チャンネルのSQUIDで検出する手法が記述されているが、大きなシート状の被検査材を想定していない。また、特許文献2には、グラジオメータによる環境磁気ノイズの低減に関しての記載があるがこれは前記したように従来技術であり、大きなシート状の被検査材についての記載はない。
また、特許文献3には、小さな被検査材について考え出された磁気特性の違いを利用した計測手法および装置に関して開示されているが、大きなシート状の被検査材における検査装置の大面積化への解決策までは開示されていない。
また、特許文献4、特許文献5、非特許文献1においても、大きなシート状の被検査材についての記載はない。
つまり、従来技術では、大きなシート状の被検査材を想定していないため、そのような大きなシート状の被検査材を検査する技術ついては記載がない。そのため、実際に大きなシート状の被検査材の検査で生じる検査幅の限界やセンサの配置方法などについての課題すら知られていない。
また、インライン異物検査を実現するためには、高速で製造される被検査材の速度に遅れることなく金属異物を高速で検出しなければならない。しかし、従来技術では高速でもれなく金属異物検出を行う手法について全く開示されていない。
そこで、本発明は、前記した問題に鑑みてなされたものであり、シート状の磁性体である被検査体(材)中に混入している金属異物を高速かつ高精度で検出することを課題とする。
本発明は、シート状の磁性体である被検査体に金属異物が混入しているか否かを検査する検査システムであって、金属異物を含む可能性のある被検査体を磁化し、その後、被検査体の磁化をキャンセルする強度の磁場を、被検査体に印加し、複数の磁気センサで検出した磁気信号を差分処理し、その差分処理の結果に基づいて、被検査体に金属異物が混入しているか否かを判定する。その他の手段については後記する。
本発明によれば、シート状の磁性体である被検査体中に混入している金属異物を高速かつ高精度で検出することができる。
第1実施形態の検査システムの構成図である。 第1実施形態の検査システムの機能ブロック図である。 磁性体の残留磁化のヒステリシス曲線を示す図である。 クライオスタットの内部に配置する検出コイルと、被検査材との関係を示す図である。 大きなシート状の被検査材における金属異物を検出するときに使用する複数のクライオスタット(検出コイル部)の配置の例を示す図である。 金属異物検出状態をアドレス管理するための表示画面の例を示す図である。 金属異物を検出するときに使用するクライオスタットの構成例を示す図である。 検出コイルおよびクライオスタットの構成例を示す図である。 検出コイルの構成例を示す図である。 (a)は検出コイル部が平面差分量として計測した磁場変化波形を示す図であり、(b)は磁場変化波形について高速フーリエ変換による磁場波形のパワースペクトラム解析を行った結果を示した図である。 アンプ・フィルタ部の制御などを説明するための図である。 間欠塗工された被検査材を磁気センサで検査する状態をモデル化した図である。 グラジオメータの位置Xに対する2つの検出コイル部に入る磁場、およびグラジオメータで検出される差分信号を示したグラフを示す図である。 被検査材の磁化強度が高くなく、キャンセル磁場を用いずに金属異物を検出する場合で、被検査材の端部から磁場波形と金属異物からの磁場波形との混合波形が出現する現象を説明するための図である。 第2実施形態の検査システムの構成図である。 第2実施形態の検査システムの機能ブロック図である。 複数のクライオスタットと、膜質検出用の複数の磁気センサと、磁場印加装置および磁場キャンセル装置との配置を示す図である。 複数の磁気センサをSQUID磁気センサで構築した場合の検出コイルの形状を示す図である。 複数の磁気センサで検出される磁場波形の例を示す図であり、(a)の2つの波形が膜質モニタリング波形を示す図であり、(b)の波形が金属異物モニタリング波形を示す図である。 膜質モニタリングの結果のリアルタイムの表示例を示す図である。 第3実施形態の検査システムの構成図である。 金属異物検出状態と被検査材の光学検出状態とを同時にアドレス管理するための表示画面の例を示す図である。 第4実施形態の検査システムの構成図である。 膜質モニタリングの結果と被検査材の光学検出状態のリアルタイムの表示例を示す図である。 クライオスタットの内部に配置する検出コイルと、超電導ループを用いた磁気シールド部材と、被検査材との関係を示す図である。 超電導ループを用いた磁気シールド部材を有するクライオスタット内部の構成例を示す図である。 超電導ループを用いた磁気シールド部材を有する検出コイル部の構成例を示す図である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態と称する。)について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態において、磁気センサとは、被検査材(被検査体)の磁化強度を検出する手段であり、具体的には、例えば、SQUIDと検出コイル部から構成される。
(第1実施形態)
第1実施形態の検査システムの構成と動作の概要は、次の通りである。まず、被検査材(例えば、リチウムイオン電池の電極などのシート状の磁性体)を磁気シールド外部に配置してある磁場印加装置によって磁化する。次に、キャンセル磁場印加装置によって被検査材の磁化を消失させる。これによって、被検査材は、金属異物(以下、単に「異物」とも称する。)の磁気信号のみが発生する状態となる(被検査材と金属異物は磁気特性が異なるため。詳細は後記)。
その後、被検査材を高速で磁気シールド内部に送り込み、磁気シールド内部に配置された高感度な磁気センサによって、金属異物を検出する。ただし、磁気シールドは、検出コイル部(検出コイル手段)の構成や、必要な磁気センサの感度や、必要周波数帯域などによって必ずしも必須の構成ではない。
図1Aに示すように、第1実施形態の検査システム1a(1)は、大きなシート状の被検査材における金属異物を高速かつ高精度で検出するため、以下の4点の特徴を有する構成となっている。
(1)磁気センサ130を複数個用意し、それぞれの磁気センサ130が交互に入り組んだ配置(千鳥配置)とする。
(2)磁気センサ130の検出コイル部において、被検査材の移動方向に対して垂直方向のコイル径(長軸)を移動方向のコイル径(短軸)よりも長くし、この検出コイル部の長軸が移動方向に垂直の方向に配置してある。
(3)検出コイル部について、平面差分の磁場を計測するように、2つの検出コイル部を正負反対向きの磁場を検出できる構成とし、短軸方向に2つのコイルを配置する構成とする。
(4)複数個の検出コイル部について、被検査材の幅全てを検査でき、なおかつ検査漏れが起きないように、検出コイル部の長軸方向の端部は、被検査材の移動方向で見た場合にそれぞれの検出コイル部で重なり領域をもつ構成とする。
これらについて、図1A〜図8を用いて詳細に説明する。
まず、図1Aを参照して、本実施形態の超電導量子干渉素子(Superconducting Quantum Interference Device: SQUID)を用いた検査システム1aの構成について説明する。SQUIDはクライオスタット(低温保持装置)101に内蔵されており(詳細は図7、図8などで後記)、クライオスタット101の底部に金属異物から発生する磁場を検出する検出コイル部(図8参照)が配置してある。本実施形態の検査システム1aは、クライオスタット101を複数個配置し、大きなシート状の被検査材を計測できる構成としている(図4参照)。
クライオスタット101は、ガントリ110によって保持され、ベルトコンベア108−1(移動手段)の支持部と一体構成となっており、被検査材111と磁気センサ130との距離を微調整できる構成となっている(詳細は後記)。クライオスタット101からはクライオスタット101の内部にあるSQUIDを磁束計動作させる駆動回路部102と電気接続するケーブルが配置されている。駆動回路部102の出力は、アンプ・フィルタ部103(フィルタ処理手段)を通り、さらに、AD(アナログ・デジタル)コンバータ(不図示)を介し、デジタル信号となってコンピュータ104に送られ、記録される。なお、制御部・速度検出部109については後記する。
また、コンピュータ104は、駆動回路部102やアンプ・フィルタ部103を制御し、回路設定や磁束計動作・アンプのゲインやフィルタの定数などを変更する。さらに、コンピュータ104は、被検査材の移動速度の検出や制御を行い、図9に示すフィルタ処理の周波数計算に必要な被検査材の速度情報を得ることができる(詳細は後記)。
図1Aに戻って、クライオスタット101の外側には、外部からの妨害磁気雑音を遮蔽する磁気シールド105が、クライオスタット101を囲むように配置してある。シート状の被検査材111(以下、単に「被検査材」とも称する。)は、磁気シールド105の開口部(図1の左方)から挿入され、ベルトコンベア108−1,108−2(移動手段)によって移動方向Fの方向に移動し、クライオスタット101の磁気センサ130の下方を通過する。
なお、このように2つのベルトコンベア108−1,108−2を用いている理由は、磁場印加装置107(磁場印加手段)およびキャンセル磁場印加装置106(キャンセル磁場印加手段)によってベルトコンベア108−2の部材が磁化したとしても、磁気センサ130の下方を通過するベルトコンベア108−1の部材が磁化しないようにするためである。
図1Bを参照して、図1Aで示した検査システム1aの処理の流れについて説明する。なお、磁気検出には異物検出用の平面差分磁気検出部1021を使用する。平面差分磁気検出部1021は、駆動回路部102によって磁気センサとして駆動し、それぞれにアンプ・フィルタ部103を有する構成とする。これらの測定結果は、コンピュータ104内に取り込まれ、異物検出部1041(判定手段)の処理が行われる。ここで異物検出部1041は、測定された磁気信号と定められた閾値との大小関係を比較することによって、異物の有無を判定する。
その閾値は、測定に先立ち、オペレータ等により入出力部1043(キーボードなど)を通じて入力され、コンピュータ104内のメモリ等に格納されている。情報管理部1042(判定手段)は、これらの異物検出部1041の情報を判断し、その情報を定量値や2次元分布図などによって示す。また、情報管理部1042は、制御部・速度検出部109によって検出したベルトコンベア(被検査材111の移動手段)108−1の移動速度(つまり、被検査材111の移動速度)に合わせて駆動回路部102とアンプ・フィルタ部103を制御し最適に設定する。なお、情報管理部1042は、例えば、CPU(Central Processing Unit)とメモリによって実現することができる。
次に、磁気シールド105の外部に配置してある磁場印加装置107とキャンセル磁場印加装置106をシート状の被検査材111が通過することによる動作や効果について説明する。
最初に、磁性体の残留磁化のヒステリシス曲線について、図2(a)を用いて説明する。図2(a)に示すように、着磁前に磁化を持たなかった磁性体に磁場を印加すると経路<1>→<2>に沿って残留磁化は増加し、最大残留磁化に到達する。その後、印加する磁場を弱めても、残留磁化は印加磁場が0になるまで変化しないが(経路<2>→<3>)、逆の方向の磁場を印加すると、経路<3>→<5>に沿って残留磁化は減少する。その途中で、残留磁化がゼロになる点<4>がある。このときの印加磁場の値をキャンセル磁場と呼ぶ。また、その後、印加磁場を増加させると、経路<5>→<6>→<7>→<2>に沿って残留磁化は増加する。
次に、図2(b)を用いて、被検査材111と金属異物の残留磁化ヒステリシス曲線について説明する。一般に、材質によって磁気特性は異なるため、被検査材111と金属異物とでは異なる残留磁化ヒステリシス曲線を持つ可能性が高い。このとき、被検査材111のキャンセル磁場Aと金属異物のキャンセル磁場Bが異なるため、それらを一度飽和する(最大になる)まで磁化した後に、キャンセル磁場Aに相当する磁場を与えることで、被検査材111から発生する磁気信号のみを除去することができる。
以上のように磁場印加装置107によって飽和磁化まで磁場を印加し、その後、シート状の被検査材111特有の磁化をキャンセルするようにキャンセル磁場印加装置106によって磁場を逆方向に印加する。以上の工程によってキャンセル磁場により被検査材111の残留磁化は消失し、金属異物のみの磁気信号の検出が可能となる。このため、シート状の被検査材111全体を磁化およびキャンセル磁化させるようにシート幅より長い磁場印加装置107とキャンセル磁場印加装置106を配置する(図4参照)。
シート状の被検査材111は磁場印加装置107とキャンセル磁場印加装置106を通過後、クライオスタット101の下部にまで達する。このクライオスタット101の内部には磁気センサ130が配置してある。これらの関係について図3を用いて説明する。図3に示すように、被検査材111は移動方向Fの方向に移動してくる。磁気センサ130を構成する検出コイル部203a(203),203b(203)は、その長軸A2が移動方向Fと垂直な方向で、短軸A1が移動方向Fと平行な方向になるように、クライオスタット101内部に配置される。
また、検出コイル部203a,203bは移動方向Fの方向に2列で配置され、それぞれ反対方向(紙面の下部方向と、上部方向)の磁場を検出する構成とし、これらの2つの検出コイル部203で計測される磁気信号の差分量を計測値とする。つまり、検出コイル部203a,203bは、移動方向Fに移動する金属異物よって局所的な部位に生じる磁気信号の変化量を検出する構成となっている。
図4は、大きなシート状の被検査材を検査するためのクライオスタット(検出コイル部)101−1,101−2,101−3,101−4,101−5(101)の配置例を示している。被検査材111は、移動方向Fの方向にベルトコンベア108−1の上を移動する。被検査材111は幅Dを有しているため、検査領域をその幅Dより広い幅Eとしている。また、各クライオスタット101(検出コイル部203)を互い違いの位置(千鳥)に配置し、確実にもれなく被検査材全体の異物検出を行うため、各検出コイル部203が検出できる領域が重なるオーバーラップ領域O−1,O−2,O−3,O−4を設ける。
このように、検出コイル部203を千鳥配置としたため、クライオスタット101−2,101−2,101−3ではクライオスタット101−4,101−5より、距離G離れ、その分、検出時間の遅れが発生する。この検出時間の遅れについて、コンピュータ104が時間補正を行う。さらに、複数個の検出コイル部203を被検査材111の幅D方向に配置することができるため、どこで異物が発生したかをアドレス管理により把握することが可能である。
異物検出用のアドレス管理画面は、例えば、コンピュータ104の表示部(表示手段)上に図5のように表示される。図5ではシートNo.2の(L3、R2)の位置に異物が混入していることが分かる。この異物検出情報は数字や文字でも下部の表示部3101に表示され、現在の検査状況や過去の検査履歴を常にモニタすることができる。なお、図5では、移動方向Fの方向に所定の移動時間(たとえば1秒など)当たりの長さである行L1〜L9が配置され、移動方向Fに垂直な方向に列R1〜R5が各クライオスタット101−1〜101−5に対応して表示してある。
このとき、図4で示した距離Gにおける時間差の補正は、図1Aで示した制御部・速度検出部109によって被検査材111の速度に合わせて計算されたタイムラグを用いて行われる。なお、図4のクライオスタット101内部の検出コイル部長軸と磁場印加装置107とキャンセル磁場印加装置106とは平行配置になるように配置することが望ましい。そうして、図5のような情報を管理することで、シート状の被検査材の金属異物のアドレス管理が可能となる。
図6を参照して、異物検出用のクライオスタット101の構成例について説明する。クライオスタット101は、極低温の冷媒(液体ヘリウムや液体窒素)を貯蔵するため、真空層を有する構造となっている(図7で後記)。クライオスタット101は、検出コイル部(図8参照)をクライオスタット101内部(底部)に装着できるように、下部に突出したテール部1013を有する構造としている。この構造により、底板に加わる大気圧による力を最小限にすることができるため、テール部1013の底板1014の面積を狭小化でき、底板1014の厚みを薄くでき、磁気センサ130と被検査材111との間の距離を最小化することができる。以上の構成により、磁気センサ130を被検査材111に近付けられるため、高感度の異物検出が可能となる。
図7を参照して、クライオスタット101および検出コイル部203の構成例について説明する。図7(a)に示す冷媒貯蔵型が最も基本的な構造であり、クライオスタット101の内部に検出コイル部203とSQUID505が全て冷媒中に配置されている。また、冷媒503(液体ヘリウムや液体窒素)を貯蔵するため、熱侵入を最小限にするため真空層502が配置してある。なお、本実施形態の図1Aから図6までは図7(a)のクライオスタットを用いた場合で説明を行っている。また、この図6と図7で示したクライオスタットは、冷媒貯蔵型で説明したが、これに限ることなく、冷凍機(パルス管冷凍機、GM(Gifford-McMahon)冷凍機など)を使用した冷却方式のものでもよい。
図7(a)以外のクライオスタット101および検出コイル部203の例として、図7(b)のセンサ真空配置型や図7(c)の検出コイル部分離型を使用してもよい。図7(b)のセンサ真空配置型は真空層502内部に検出コイル部203とSQUID505が配置されている。この構造を用いると、クライオスタット101の上部開口部506を小面積とすることができるため、クライオスタット101の上部からの熱侵入を抑えられ、貯蔵された冷媒の蒸発量を少なくできる。また、真空層502内部に検出コイル部203を配置することにより、検出コイル部203と被検査材111との距離を図7(a)のクライオスタットのものより近付けることができる。
図7(c)に示す検出コイル部分離型のクライオスタット101および検出コイル部203の構成では、検出コイル部203として常温で使用する銅線などの検出コイルを用いる。
なお、図7(a)(b)で示したクライオスタット101は、金属から発生する磁気雑音を避けるため、GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastics)のようなプラスチック材料を用いるが、図7(c)では、検出コイル部203をクライオスタット101の外部に配置するため、図7(c)のクライオスタット101は金属製の容器を使用でき、熱侵入の少ないクライオスタットを構成できる。また、図7には示していないが、冷媒を用いずに冷凍機を使用するクライオスタットおよび検出コイル部の構成でもよい。
次に、図8を参照して、検出コイル部203の構成例について説明する。検出コイル部は図7(a)(b)の構成では超伝導線を巻きつける構造とし、図7(c)では銅線を巻きつける構造とする。2つの検出コイル部203a(203),203b(203)を使用することにより、被検査材の移動方向Fに平面差分された磁場検出を実現できる。これらの検出コイル部203a,203bのコイル中心間距離のベースライン距離B1は例えば10mmとする。また、各検出コイル部203a,203bはベースライン距離B2を有する2次微分型グラジオメータの構成としている。なお、図8の検出コイル部203の構造におけるコイルの接続などの詳細については、非特許文献1(特にp.138)を参照することで理解できるので、詳細な説明を省略する。
このベースライン距離B2は検出コイル部203と被検査材111との距離と同等の例えば10mmとする。この検出コイル部203a、203bは、検出する磁束方向が反対となっており、上記平面差分の磁気検出を実現する必要がある。そのため、両者の検出コイル部203a、203bは並列または直列で接続されSQUIDに検出磁束を伝達する構成とする。
上記のような2次微分型グラジオメータであって、さらに平面方向の差分量を計測する検出コイル部(2次元グラジオメータと称する。)とすることにより、金属異物からの磁気信号の強度を下げずに妨害磁気雑音を効率よく低減することが可能となる。SQUIDは、ホルダー部603上に配置してあり、検出コイル部203内の磁束を妨げたり、乱したりしないように、検出コイル部203の法線ベクトル方向(縦方向)の面に配置してある。
図9(a)を参照して、検出コイル部203が平面差分量として計測した磁場変化波形について説明する。2つの検出コイル部203a,203b(図8参照)を用いており、これらの検出コイル部203a,203bに差交する磁束量の差分は図9(a)に示す2極のピーク波形となる。
この2極のピーク間の時間差T1は、検出コイル部203aと検出コイル部203bとの間のベースライン距離B1と、被検査材111の(移動)速度V1から次の式(1)のように計算できる。
T1=B1/V1 ・・・式(1)
また、ピーク波形の開始点から終了点までの時間差T2は、検出コイル部203aと検出コイル部203bの短軸A1と、被検査材の(移動)速度V1から次の式(2)のように計算できる。
T2=A1/V1 ・・・式(2)
この検出される磁場変化波形について高速フーリエ変換による磁場波形のパワースペクトラム解析を行うと、図9(b)のような基本周波数(1/T1または1/T2)を算出できる。この基本周波数を中心とした周波数幅Δfを抽出するフィルタを図1Aに示すアンプ・フィルタ部103で設定しコンピュータ104に記録する。式(1)で示す時間差T1と式(2)で示す時間差T2は被検査材の速度V1によって変化するため、制御部・速度検出部109から検出された速度V1の値に合わせて必要に応じてΔfの設定値を変更できる。
図10は、ベルトコンベア108−1や測定対象(被検査材111)の速度情報を用いて、磁気センサ130の測定帯域の最適計算によって駆動回路部102のパラメータを制御して最適に調整し、アンプ・フィルタ帯域の最適計算により、アンプ・フィルタ部103を制御してアンプとフィルタのパラメータを最適に調整することの説明図である。
図10に示すように、本実施形態の検査システム1aは、磁気センサ130と、駆動回路部102と、アンプ・フィルタ部103と、異物検出部1041とで基本構成されている。金属異物をさらに高速かつ高精度に判断するために、情報管理部1042(図1B参照)が次の処理を行う。
つまり、ベルトコンベア108−1や被検査材111の速度情報6005をリアルタイムに取得し、この速度情報6005を使って磁気センサ130の測定帯域の最適計算6007によって得られた情報を使い、駆動回路部102のパラメータを制御し最適値に調整する。さらに、アンプ・フィルタ帯域の最適計算6006を行い、アンプ・フィルタ部103を制御してアンプとフィルタのパラメータを最適値に調整する。特に、測定帯域に合わせた駆動回路部102のパラメータ調整とアンプ・フィルタ部103の帯域調整は異物検査の精度向上に非常に重要である。
異物検出部1041は、アンプ・フィルタ部103により整形された磁気信号の強度を、予め定められた閾値と比較することによって、異物の有無を判定する。以上の構成により、高速かつ高精度に金属異物を検出でき、さらには特定周波数(所定の周波数)帯域のみの検出によって妨害磁気雑音の除去が可能となる。
また、ここで示した図9の波形は平面差分コイルによる出力を示しているが、通常の1つの検出コイル部を使う場合には検出コイル部の短軸(移動方向Fと同じ方向)A1を用いた式(2)を用いた周波数を用いてΔfの設定値とすることができる。
以上の構成を使用した場合に得られる磁場波形とキャンセル磁場による異物検査の有効性について、図11と図12を参照して説明する。図11は、間欠塗工された被検査材のモデル図である。静止しているグラジオメータの下を被検査材が紙面右から左に流れているものとするが、ここでは、グラジオメータが被検査材に対して相対的に紙面左から右に移動すると考える。
図12(a)〜(d)はグラジオメータの位置Xに対する検出コイル部203aおよび203bに入る磁場、およびグラジオメータで検出される差分信号を示したグラフである。ここで、グラジオメータの位置Xとはグラジオメータの移動方向の位置を示すので、図12(a)〜(d)の各グラフの横軸は時間軸と等価である。図12において、具体的には、(a)は被検査材自身から発生する磁気信号、(b)は金属異物からの磁気信号、(c)はキャンセル磁場印加なしの場合の被検査材と金属異物の両者からの磁気信号、(d)はキャンセル磁場印加ありの場合の被検査材と金属異物の両者からの磁気信号を示す図である。
まず、被検査材自体からの磁気信号(図12(a))について考える。コイル(検出コイル)の流れ方向の長さd(図11参照)は被検査材材料の塗工幅Lに比べて短い。そのため、検出コイル部203aに入る磁場は、被検査材の塗工が無いタイミングに同期して、立上りと立下りの幅が検出コイル幅dに対応する時間d1の矩形波を描く。
検出コイル部203bに入る磁場も検出コイル部203aに入る磁場と同様の波形を描くが、そのタイミングは検出コイル部203aに対してコイルの間隔分だけ遅れる。このとき、グラジオメータで検出される差分信号は、塗工量の一次微分波形となり、塗工端で上または下に凸のピークを持つ。
次に、金属異物からの磁気信号波形(図12(b))について考える。金属異物はコイルの流れ方向の長さd(図11参照)に比べて小さいので、検出コイル部203aと検出コイル部203bに入る磁場は、幅d2のパルス波を描く。したがって、グラジオメータで検出される差分信号は、検出コイル部203aと検出コイル部203bの間隔分だけタイミングのずれた、正負のパルス波形の重畳となる。なお、金属異物が被検査材材料に混入した場合は、金属異物からの磁気信号と被検査材からの磁気信号の和が検出される。
図12(c)に示すように、キャンセル磁場を印加しない場合のグラジオメータの磁気信号波形の例を考えると、塗工端から離れた位置にある金属異物1(図11参照)からの磁気信号は塗工端部のピークと分離しているのに対し(符号J参照)、金属異物2(図11参照)の磁気信号は塗工端部のピークに埋もれており(符号K参照)、分離が困難である。即ち、塗工端部からの磁気信号が金属異物からの磁気信号に比べて大きい場合、塗工端からコイルの長さd以内ではS/N(Signal/Noise)が低下するため、金属異物の検出が困難となることを示している。
これに対して、図12(d)に示すように、キャンセル磁場の印加により被検査材の材料からの磁気信号を10%まで低減した場合のグラジオメータの磁気信号波形の例を考えると、キャンセル磁場を印加しない場合と比べて、塗工端部のピークが小さくなり、相対的に金属異物からの磁気信号が大きくなる(符号J,K参照)。これにより、塗工端部の近傍に位置する金属異物2についても、塗工端部からの磁気信号に埋もれることなく、検出が可能となる(符号K参照)。
以上のように、キャンセル磁場による被検査材の磁化の低減と移動方向に磁気の平面差分を行うことは、特に、間欠塗工された被検査材の検査において、塗工端部近くに位置する金属異物の検出感度を上げるために有効である。
このように、キャンセル磁場は間欠塗工された被検査材の検査において有効であるだけでなく、大きなシート状の被検査材の検査においても塗工部端部から発生する磁気信号を抑制する効果がある。この塗工部端部からの磁気信号は膜の端部の位置で大きく磁気強度が異なる可能性が高く、従来の塗工面内の一点(中心点)だけの計測では計測上問題にならなかった点である。つまり、被検査材の全ての位置において漏れなく検出するためには、端部から発生する磁気信号(絶対磁場)を最大限抑制することが必要であり、この磁場キャンセル手段は非常に有効である。
図13を用いて被検査材の磁化強度(絶対値)が高くなく、キャンセル磁場を用いずに金属異物を検出する場合(一点計測例)で、被検査材の端部から、被検査材からの磁場波形と異物からの磁場波形との混合波形が出現する現象を説明する。特に、ここでは、被検査材が検出コイル部203の数倍程度の大きさしかない場合に得られる磁場波形について説明する。
図13において、上向きに磁化された被検査材および金属異物は、紙面左から右へ移動し、磁気センサ130の下を通過するものとする。被検査材が検出コイル部203aの検出領域に入る前(1)は、磁気信号はゼロである。(2)で被検査材端部が検出コイル部203aの検出領域に入ると、検出コイル部203aのみに上向きの磁場が入るので、正の磁気信号が検出される。
(3)では検出コイル部203aと検出コイル部203bに等しく上向きの磁場が入るため、磁気信号は再びゼロになる。(4)では、金属異物からの磁気信号が検出コイル部203aに入るため、正の磁気信号が検出され、(5)では金属異物からの磁気信号が検出コイル部203bに入るため、負の磁気信号が検出される。
その後、検出コイル部203aと検出コイル部203bに被検査材からの磁場が等しく磁場が入る(6)では磁気信号はゼロになる。(7)で被検査材端部が検出コイル部203aの検出領域から出ることにより負の磁気信号が検出され、被検査材が検出コイル部203bの検出領域を出る(8)で磁気信号がゼロに戻る。
以上のように、この例では、被検査材の端部のからの磁場波形の間に金属異物からの磁気信号が現れることが分かる。しかし、図12に示したように被検査材の磁場が強い場合では、被検査材の間欠塗工の端部や移動方向と平行した位置の端部などから検査対象の磁場の影響が強く出るため、図1Aに示した被検査材全面にわたる磁場印加とキャンセル磁場印加が必須の構成になる。
このように、第1実施形態の検査システム1aによれば、金属異物を含む被検査材111を磁化した後、被検査材111の磁化をキャンセルし、磁気センサ130によって被検査材111からの磁気信号を検出する。その際、複数の磁気センサ130を、検出領域が重なるように互い違い(千鳥)に配置する。これにより、大きなシート状の被検査材111に混入している微量の金属異物を高速かつ高精度で検出することができる。また、被検査材111の速度を利用したフィルタ処理を用いることにより、外部磁気雑音の影響を受けることなく正確に金属異物を高速で検出することができる。
(第2実施形態)
次に、図14〜図19を用いて本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、第1実施形態で説明した被検査材に混入している金属異物の検出のみならず、被検査材そのものに塗布されている磁性金属の膜質のムラや亀裂などといった膜質検査も可能とする。ここでは、金属異物の検出方法に関しては、第1実施形態と同一のため、詳細な説明を省略する。
図14の検査システム1b(1)において、第1実施形態(図1A参照)との相違点は、磁場印加装置107とキャンセル磁場印加装置106との間に、磁気センサ701(微分コイルではなく直接測定するマグネットメータ、サーチコイルやフラックスゲート磁束計、ホール素子、SQUIDマグネットメータなど)(第2の磁気センサ)を配置した点である。また、それにともなって、駆動回路部702とアンプ・フィルタ部703も加えられている。
磁気センサ701は駆動回路部702によって磁気センサとして動作し、アンプ・フィルタ部703によって目的の周波数(第2の所定の周波数)に設定され被検査材の磁気計測を行う。このとき、制御部・速度検出部109の速度情報を用いて図10に示した手法と同じく最適な周波数帯域を検出できるように設定が行われる。ここでの最適な周波数とは、金属異物の場合とは異なり、様々な場合が想定されるため、予め予想される亀裂や膜質のムラの被検査材111の速度と周波数との関係を調査し、その周波数に合わせた調整を行うことが有効である。
続いて、図15を参照して、図14で示した検査システム1bの処理の流れについて説明する。なお、図15において、図1Bに示した構成と同一の構成には同一の符号を付与し、重複する説明を適宜省略する。
磁気検出には異物検出用の平面差分磁気検出部1021と膜質モニタ用の磁気検出部806の2つの磁気センサを使用する。平面差分磁気検出部1021と磁気検出部806は、それぞれ駆動回路部102,807によって磁気センサとして駆動し、それぞれアンプ・フィルタ部103,808を有する構成とする。これらの測定結果は、コンピュータ104内に取り込まれ、異物検出部1041と厚みムラ検出部809と残留磁化成分検出部810とによる3つの処理が行われる。
ここで異物検出部1041は、第1実施形態で説明した方法に従い、測定された磁気信号と定められた閾値との大小関係を比較することによって、異物の有無を判定する。閾値は、測定に先立ち、オペレータ等により入出力部1043を通じて入力され、コンピュータ104内のメモリ等に格納されている。厚みムラ検出部809では膜質に関わる亀裂による大きな磁気信号や、膜質(膜の厚み、膜の塗布状態、組成)のムラによる磁場の微小な変化量の周波数解析などを行う。
また、同時に、十分な磁場が被検査材111に印加されているかどうかを、飽和磁化量を見ながら判定し、必要に応じて制御部1071を使って最適な磁場を発生するように磁場印加装置107を制御する。残留磁化成分検出部810ではキャンセル磁場印加装置106によって被検査材自身の持つ磁化量をキャンセルできているかの判断を行い、キャンセル磁場印加装置106を制御部1065によって微調整し、正確に被検査材111からの磁場をゼロに近い値にしていく。
情報管理部1042では、これらの異物検出部1041と厚みムラ検出部809と残留磁化成分検出部810との情報を総合的に判断し、情報を定量値や2次元の分布図で示す。また、情報管理部1042では、制御部・速度検出部109によって検出したベルトコンベア108に乗った被検査材の速度に合わせて駆動回路部102,807とアンプ・フィルタ部103,808を制御し最適に設定する。
次に、図16を参照して、膜質検出用の磁気センサについて説明する。ここでは、図4の場合との相違点について主に説明する。図16に示すように、膜質検出用の磁気センサ901−1,901−2,901−3,901−4,901−5が配置されている。このように、磁気センサ901−1〜901−5は、クライオスタット101−1〜101−5と同様に千鳥の配置とし、大きなシート状の被検査材をもれなく測定できる構成としている。また、磁気センサ901−1〜901−5は、全てのクライオスタット101−1〜101−5の内部にある検出コイル部と平行配置になるように配置し、最も効率よく検出を行う構成としている。
また、磁気センサ901−1〜901−5は、磁場印加装置107とキャンセル磁場印加装置106との間に配置し、被検査材111が飽和磁化した状態を検出する。ただし、膜質のばらつきを詳細にみる場合はキャンセル磁場後の微小な磁場の変化を検出してもよい。
次に、図17を参照して、第2実施形態の検出コイル部203の構成例について説明する。磁気センサ901−1〜901−5は、図17に示すように、SQUIDを用いた検出コイル部203として構築できる。なお、検出コイル部203は、図8に示した2つの検出コイル部203の片方の形状と同じである。この形状を用いることにより、外部からの妨害磁場雑音を除去でき、効率よく膜質に関する磁場が検出可能となる。
次に、図18を参照して、磁気センサ901−1〜901−5で検出される磁場波形の表示例について説明する。図18に示すように、磁気センサ901−1〜901−5で検出される磁場波形の表示例のうち、(a)は膜質モニタリングの波形で、(b)は異物モニタリングの波形である。なお、いずれも縦軸は磁場強度(磁化強度)である。
(a)の膜質モニタリングの波形では、亀裂による磁気信号が強く出現している。また、拡大した波形では亀裂による波形以外に塗工によって生じた膜の荒さが波形として現われている。この荒さをΔLや周波数解析を行い定量値として示すことができる。
このように、膜質モニタリングと異物モニタリングの波形を同時に表示することにより、亀裂による波形と異物による波形とを分離することが可能である。また、異物モニタリングより先行して検出される膜質モニタリングでの異常値の情報を使い、異物モニタリング波形上でその膜質の異常値を金属異物として検出しないようにマスクすることが可能である。また、さらには、異物モニタリング波形の周波数帯域と膜質モニタリング波形の周波数帯域が異なればそれぞれ独立に波形上で異物と膜質情報を分離して表示することも可能である。以上のように、膜質モニタリングと異物モニタリングとを連携・フィードバックする構成により、亀裂と金属異物をそれぞれ検出することが可能となる。
次に、図19を参照して、膜質モニタリングの結果のリアルタイムの表示例について説明する。膜質モニタリングでは、例えば、図18に示したように波形のばらつきを幅ΔLなどで示すことができる。このΔLを各アドレスで管理し、その分布図をコンターマップ(等高線図などの等値線図)で示すと図19のようになる。図19では、ライン(移動方向)1201上に対応する波形が膜質磁場分布(または波形)1204に表示されており、被検査材の幅方向のライン1202上に対応する膜質磁場波形分布(または波形)が波形1203に表示されている。
これにより、アドレス管理と同時に異常部位(亀裂など)がどこにあるか明確に判断できる。さらに、膜質情報表示部1205に、膜質の現状のばらつきや最大値などを数字で示すことができる。また、膜質モニタリングと異物モニタリング(図5)を同時に表示することで(図示省略)、亀裂と異物との分別を簡易に行えるという効果がある。
このように、第2実施形態では、第1実施形態の構成に加えて、別途、膜質モニタリング用の第2の磁気センサを配置する。この第2の磁気センサは磁場印加手段の直後で計測することが望ましい。第2の磁気センサは第1実施形態の磁気センサと同じく複数個用意し、検出領域がある程度重なり合うように配置する。以上の構成により、膜塗工面のばらつきや亀裂などを検出することが可能である。また、第1実施形態の金属異物の検出画面と、膜質の検出画面を同時に表示することにより、正確に膜のアドレス管理ができる。
(第3実施形態)
次に、第3実施形態の検査システム1c(1)について説明する。図20に示すように、検査システム1cは、第1実施形態で説明した異物検出と同時に、被検査材シートの画像モニタを行うことを特徴とする。以下、第1、第2実施形態で説明した事項については、説明を適宜省略する。
図20に示すように、検査システム1cは、第1実施形態の場合(図1A参照)に対して、CCD(Charge Coupled Device)カメラ1011(撮影手段)とカメラ回路部1012を追加した構成となっている。CCDカメラ1011は、リアルタイムに撮影した被検査材シートのカメラ画像をカメラ回路部1012に送る。カメラ回路部1012は、そのカメラ画像を電気信号に変換し、コンピュータ104に送信する。
図21に示すように、送信されたカメラ画像1044と、第1実施形態で説明した異物検出画像(図5参照)とを、時刻の同期をとって重ね合わせ、同時描画することができる。この異物検出結果と被検査材モニタ画像とを同時描画することにより、被検査材111の膜の色合いの状態や間欠塗工の状態なども同時に目視確認でき、効率的な被検査材111の状態の把握が可能となる。
(第4実施形態)
次に、第4実施形態の検査システム1d(1)について説明する。図22に示すように、検査システム1dは、第2実施形態で説明した膜質モニタリングと同時に、第3実施形態で説明した被検査材シートの画像モニタリングを行うことを特徴とする。以下、第1〜第3実施形態で説明した事項については、説明を適宜省略する。
検査システム1d(1)において、CCDカメラ1011は、リアルタイムに撮影した被検査材シートのカメラ画像をカメラ回路部1012に送る。カメラ回路部1012は、そのカメラ画像を電気信号に変換し、コンピュータ104に送信する。図23は、送信されたカメラ画像と、第3実施形態に示した膜質モニタリング画像とを、時刻の同期をとって重ね合わせて同時描画した例である。
図23に示すように、この膜質モニタリングと被検査材モニタリング画像との同時描画により、被検査材111の膜の色合いでの状態や間欠塗工の状態なども同時に目視確認でき、効率的な被検査材の状態の把握が可能となる。
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。第5実施形態は検出コイル部203a,203bに特徴を有する。以下、図3で説明した事項については、説明を適宜省略する。
図24に示すように、検出コイル部203a、検出コイル部203bの周りに超電導ループ1051を配置してある。この構成により、検出コイル部203aと203bに共通で入ってくる磁束については超電導ループでキャンセルすることができる。その一方で、微小な金属異物からの磁気信号は、検出コイル部203aと203bで検出することができる。
なお、この超電導ループ1051は必ずしも完全な超電導接続を施したループ線でなくてもよく、例えば、銀シースに入った高温超電導線を半田接続して微小な抵抗を有する接続方法によるものでもよい。この超電導ループ1051を用いることにより、磁気シールド105(図1A、図14、図20、図22参照)を、より簡易なものにしたり、使用しなかったりすることが可能となる。
図25、図26には、冷蔵貯蔵型のクライオスタット101の内部に超電導ループ1061−1,1061−2,1061−3を配置した構成を示している。検出コイル部203が高さ方向の差分出力を検出する場合は、全ての高さ方向のコイルに同時に入力される磁束をゼロにしなければならない。そのため、2次元グラジオメータ(検出コイル部203)の周りに超電導ループを3つ配置した構成とする。
この3つの超電導ループ1061−1,1061−2,1061−3により、2次元グラジオメータの検出部での一様磁界の雑音を均一にキャンセルできるという効果がある。この構成は冷媒貯蔵型クライオスタットに限る構成ではなく、超伝導ループが超電導状態を保てる構成であれば真空配置型クライオスタットや冷凍機を用いたクライオスタットなどの様々なクライオスタットに導入できる。
上記の第1〜第4実施形態で示した磁気センサはSQUID磁束計を用いたもので説明を行ったが、被検査材111の磁気信号が大きい場合や測定周波数によっては、サーチコイルによる磁気センサ、MI(magnetic impedance)センサ、MR(magnetic resistance)センサ、光ポンビング磁束計などを使用し、センサをアレー状に配置をすることで本発明の全ての実施形態を実現できる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その趣旨を変えない範囲で実施することができる。ハードウェア、ソフトウェアの具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
1 検査システム
101 クライオスタット
102,702 駆動回路部
103,703 アンプ・フィルタ部
104 コンピュータ
105 磁気シールド
106 キャンセル磁場印加装置
107 磁場印加装置
108 ベルトコンベア
109 制御部・速度検出部
110 ガントリ
111 被検査材
130,701 磁気センサ
203 検出コイル部
1011 CCDカメラ
1012 カメラ回路部

Claims (18)

  1. シート状の磁性体である被検査体に金属異物が混入しているか否かを検査する検査システムであって、
    前記金属異物を含む可能性のある前記被検査体を磁化する磁場印加手段と、
    前記被検査体の磁化をキャンセルする強度の磁場を、前記被検査体に印加するキャンセル磁場印加手段と、
    前記被検査体を、前記磁場印加手段と前記キャンセル磁場印加手段の近傍を通過させる移動手段と、
    検出領域が前記被検査体の移動方向よりもその直角方向のほうに長い検出コイル手段を2つ有し、当該2つの検出コイル手段が前記移動方向に並べられて、前記被検査体について、それぞれ逆方向の磁化強度を検出する磁気センサと、
    前記被検査体の移動速度に応じて、前記磁気センサの出力を所定の周波数でフィルタ処理するフィルタ処理手段と、
    前記フィルタ処理手段でフィルタ処理した2つの磁気信号を差分処理し、その差分処理の結果に基づいて、前記被検査体に前記金属異物が混入しているか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段が判定した金属異物の情報を表示する表示手段と、
    を有することを特徴とする検査システム。
  2. 前記磁気センサを複数備えており、
    複数の前記磁気センサは、前記移動方向について検出領域が重なるように配置されていることで、前記移動手段によって移動してくる前記被検査体のすべての領域をカバーしている
    ことを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
  3. 前記磁気センサを複数備えており、
    複数の前記磁気センサは、千鳥に配置されていることで、前記移動手段によって移動してくる前記被検査体のすべての領域をカバーしている
    ことを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
  4. シート状の磁性体である被検査体に金属異物が混入しているか否かを検査する検査システムであって、
    前記金属異物を含む可能性のある前記被検査体を磁化する磁場印加手段と、
    前記被検査体を、前記磁場印加手段の近傍を通過させる移動手段と、
    検出領域が前記被検査体の移動方向よりもその直角方向のほうに長い検出コイル手段を2つ有し、当該2つの検出コイル手段が前記移動方向に並べられて、前記被検査体について、それぞれ逆方向の磁化強度を検出する前記磁気センサと、
    前記移動手段による前記被検査体の移動速度と、前記磁気センサが検出する磁化強度の変化波形と、を用いたフーリエ変換による磁場波形のパワースペクトラム解析によって定まる所定の周波数で、前記磁気センサの出力をフィルタ処理するフィルタ処理手段と、
    前記フィルタ処理手段でフィルタ処理した2つの磁気信号を差分処理し、その差分処理の結果に基づいて、前記被検査体に前記金属異物が混入しているか否かを判定する判定手段と、
    前記判定手段が判定した金属異物の情報を表示する表示手段と、
    を有することを特徴とする検査システム。
  5. 前記磁気センサは、前記所定の周波数の帯域で前記被検査体の磁化強度を検出する
    ことを特徴とする請求項4に記載の検査システム。
  6. 前記磁気センサは、超伝導量子干渉素子を用いた磁気センサであり、
    前記超伝導量子干渉素子を超伝導冷却するクライオスタットを、さらに有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の検査システム。
  7. 前記判定手段は、前記被検査体に前記金属異物が混入していると判定した場合、その判定に用いられた前記磁気センサを特定すること、および、前記移動速度に基づいて、前記金属異物が混入している前記被検査体上の位置を特定し、
    前記表示手段は、前記特定した金属異物の前記被検査体上の位置を表示する
    ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の検査システム。
  8. 前記被検査体を撮影する撮影手段を、さらに有しており、
    前記表示手段は、前記金属異物の情報と、前記撮影手段が撮影した前記被検査体の画像とを、時刻の同期をとって重ね合わせて表示する
    ことを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
  9. 前記磁気センサとは別の第2の磁気センサを、さらに有しており、
    前記第2の磁気センサは、前記被検査体の磁化強度を検出し、
    前記判定手段は、前記第2の磁気センサの検出した磁化強度のバラツキに基づいて、前記被検査体の各部分の膜質を判定し、
    前記表示手段は、前記被検査体の各部分の膜質の情報を表示する
    ことを特徴とする請求項1に記載の検査システム。
  10. 前記磁気センサとは別の第2の磁気センサを、さらに有しており、
    前記第2の磁気センサは、前記被検査体の磁化強度を検出し、
    前記判定手段は、前記第2の磁気センサの検出した磁化強度のバラツキに基づいて、前記被検査体の各部分の膜質を判定し、
    前記表示手段は、前記被検査体の各部分の膜質の情報を表示する
    ことを特徴とする請求項4に記載の検査システム。
  11. 前記第2の磁気センサは、前記磁場印加手段と前記キャンセル磁場印加手段との間に配置されている
    ことを特徴とする請求項9に記載の検査システム。
  12. 前記第2の磁気センサを複数備えており、
    複数の前記第2の磁気センサは、前記移動方向について検出領域が重なるように配置されていることで、前記移動手段によって移動してくる前記被検査体のすべての領域をカバーしている
    ことを特徴とする請求項9に記載の検査システム。
  13. 前記第2の磁気センサを複数備えており、
    複数の前記第2の磁気センサは、千鳥に配置されていることで、前記移動手段によって移動してくる前記被検査体のすべての領域をカバーしている
    ことを特徴とする請求項9に記載の検査システム。
  14. 前記フィルタ処理手段は、前記移動手段による前記被検査体の移動速度と、前記第2の磁気センサが検出する磁化強度の変化波形と、を用いたフーリエ変換による磁場波形のパワースペクトラム解析によって定まる第2の所定の周波数で、前記第2の磁気センサの出力をフィルタ処理し、
    前記判定手段は、前記フィルタ処理手段でフィルタ処理した磁化強度のバラツキに基づいて、前記被検査体の各部分の膜質を判定する
    ことを特徴とする請求項10に記載の検査システム。
  15. 前記第2の磁気センサは、前記第2の所定の周波数の帯域で前記被検査体の磁化強度を検出する
    ことを特徴とする請求項14に記載の検査システム。
  16. 前記第2の磁気センサは、超伝導量子干渉素子を用いた磁気センサであり、
    前記超伝導量子干渉素子を超伝導冷却するクライオスタットを、さらに有する
    ことを特徴とする請求項9から請求項15のいずれか一項に記載の検査システム。
  17. 前記表示手段は、前記被検査体の各部分の膜質の情報とともにそれらの位置を表示する
    ことを特徴とする請求項12または請求項13に記載の検査システム。
  18. 前記表示手段は、前記被検査体の各部分の膜質の情報とともにそれらの位置を、二次元分布図を用いて表示する
    ことを特徴とする請求項17に記載の検査システム。
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