JP2011245102A - 湿潤時に表面が潤滑性を有する医療用具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも表面が高分子材料からなる基材層と、該基材層の少なくとも一部に担持された、分子内に複数のチオール基を有する化合物と、該分子内に複数のチオール基を有する化合物を覆う、反応性官能基を有する親水性高分子からなる表面潤滑層と、を備え、該チオール基を有する化合物が酸素を含有するイオン化ガスプラズマを照射することにより基材層に担持されており、かつ該チオール基を有する化合物と、該反応性官能基を有する親水性高分子とを反応させることで表面潤滑層が基材層に結合している、湿潤時に表面が潤滑性を有する医療用具。
【選択図】なし
Description
本実施形態の医療用具を構成する基材層1は、少なくとも表面が高分子材料からなるものである。
基材層1が「少なくとも表面が高分子材料からなる」とは、基材層1の少なくとも表面が高分子材料で構成されていればよく、基材層1全体(全部)が高分子材料で構成(形成)されているものに何ら制限されるものではない。従って、図2に示されるように、金属材料やセラミックス材料等の硬い補強材料で形成された基材層コア部1aの表面に、金属材料等の補強材料に比して柔軟な高分子材料が適当な方法(浸漬(ディッピング)、噴霧(スプレー)、塗布・印刷等の従来公知の方法)で被覆(コーティング)あるいは基材層コア部1aの金属材料等と表面高分子層1bの高分子材料とが複合化(適当な反応処理)されて、表面高分子層1bを形成しているものも、本発明の基材層1に含まれる。よって、基材層コア部1aが、異なる材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療用具の部分ごとに異なる材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。また、基材層コア部1aと表面高分子層1bとの間に、更に異なるミドル層(図示せず)が形成されていてもよい。更に、表面高分子層1bに関しても異なる高分子材料を多層に積層してなる多層構造体、あるいは医療用具の部分ごとに異なる高分子材料で形成された部材を繋ぎ合わせた構造(複合体)などであってもよい。
基材層コア部1aに用いることができる材料としては、特に制限されるものではなく、カテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の用途に応じて最適な基材層コア部1aとしての機能を十分に発現し得る補強材料を適宜選択すればよい。例えば、SUS304、SUS316L、SUS420J2、SUS630などの各種ステンレス鋼(SUS)、金、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、チタン、鉄、アルミニウム、スズおよびニッケル−チタン合金、コバルト−クロム合金、亜鉛−タングステン合金等のそれらの合金などの各種金属材料、各種セラミックス材料などの無機材料、更には金属−セラミックス複合体などが例示できるが、これらに何ら制限されるものではない。
基材層1ないし表面高分子層1bに用いることができる高分子材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ナイロン6、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン66(いずれも登録商標)などのポリアミド樹脂、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)などのポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂などのポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂(アリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、フッ素樹脂、アミノ樹脂(ユリア樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂)、ポリエステル樹脂、スチロール樹脂、アクリル樹脂、ポリアセタール樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)などが挙げられる。これらは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。上記高分子材料には、使用用途であるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の高分子基材として最適な高分子材料を適宜選択すればよい。
また、上記ミドル層(図示せず)に用いることができる材料としては、特に制限されるものではなく、使用用途に応じて適宜選択すればよい。例えば、各種金属材料、各種セラミックス材料、さらには有機−無機複合体などが例示できるが、これらに何ら限定されるものではない。以下、「少なくとも表面が高分子材料からなる基材層1」を単に「高分子基材層1」、あるいは「基材層1」とも略称する。
本実施形態の医療用具を構成する分子内に複数のチオール基を有する化合物(以下、単に「チオール化合物」とも略称する)2は、高分子基材層1表面の少なくとも一部に担持されている。
本発明の医療用具では、酸素を含有するイオン化ガスプラズマを照射すること(プラズマ処理)によりチオール化合物2を基材層1に固定化させている。
本形態では、基材層1にチオール化合物溶液を塗布する前(チオール化合物塗布前)に、予め基材層1表面に酸素を含有するイオン化ガスプラズマを照射するものである。これにより、基材層1表面を改質、活性化し、チオール化合物溶液に対する基材層1表面の濡れ性を向上させることができるため、チオール化合物溶液を基材層1表面に均一に塗布することができる。当該イオン化ガスプラズマ処理は、カテーテル、ガイドワイヤ、留置針等の医療用具の細く狭い内表面であっても、所望のプラズマ処理を施すことが可能である。
高分子基材層1にチオール化合物溶液を塗布する手法としては、特に制限されるものではなく、塗布・印刷法(コーティング法)、浸漬法(ディッピング法)、噴霧法(スプレー法)、スピンコート法、混合溶液含浸スポンジコート法など、従来公知の方法を適用することができる。
本形態では、基材層1表面に上記チオール化合物溶液を塗布後、再度酸素を含有するイオン化ガスプラズマ照射するものである。かかるプラズマ処理によっても、チオール化合物2と基材層1表面を活性化して、チオール化合物2と基材層1表面とを反応させ、チオール化合物2を強固に固定化することができると共に、チオール化合物同士の酸化反応を促進し、高分子基材層上に形成される膜の強度を向上させることができる。
チオール化合物2を基材層1表面に固定化する際、上記チオール化合物塗布後のプラズマ処理を行った後、さらに加熱処理等によって、基材層1表面とチオール化合物2の反応、あるいはチオール化合物2自体の架橋を促進させることも可能である。
本実施形態の医療用具を構成する表面潤滑層3は、チオール化合物2表面を覆う反応性官能基を有する親水性高分子からなるものである。
本実施形態の医療用具を構成する表面潤滑層3の厚さとしては、使用時の優れた表面潤滑性を永続的に発揮することができるだけの厚さを有していればよく、特に制限されない。未膨潤時の表面潤滑層3の厚さは、好ましくは0.5〜5μm、より好ましくは1〜5μm、さらにより好ましくは1〜3μmの範囲である。未膨潤時の表面潤滑層3の厚さが0.5μm未満の場合、均一な被膜を形成するのが困難であり、湿潤時に表面の潤滑性を十分発揮し得ない場合がある。一方、未膨潤時の表面潤滑層3の厚さが5μmを超える場合、高厚な表面潤滑層が膨潤することで、該医療用具10を生体内の血管等に挿入する際に、血管等と該医療用具とのクリアランスが小さい部位(例えば、末梢血管内部等)を通す際、こうした血管等の内部組織を損傷したり、該医療用具を通しにくくなる可能性がある。
表面潤滑層3を構成する反応性官能基を有する親水性高分子は、特に制限されないが、例えば、反応性官能基を分子内に有する単量体と親水性単量体とを共重合することにより得ることができる。
上記反応性官能基を有する単量体としては、チオール基と反応性を有するものであればよく、特に制限されない。具体的には、グリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートなどのエポキシ基を有する単量体、アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどのイソシアネート基を分子内に有する単量体等を例示できる。なかでも、チオール基との反応性に優れることから反応性官能基がエポキシ基であり、反応が熱により促進され、さらに架橋構造を形成することで不溶化して容易に表面潤滑層を形成させることができ、取り扱いも比較的容易であるグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートなどのエポキシ基を有する単量体が好ましい。エポキシ基を有する単量体を用いた親水性高分子は、イソシアネート基を分子内に有する単量体を用いた親水性高分子に比べて、加熱操作(加熱処理)等で反応させる際の反応速度が穏やか(適当な速度)である。そのため、加熱操作等で反応させる際、チオール化合物との反応や反応性官能基同士の架橋反応の際に、すぐに反応してゲル化したり、固まって表面潤滑層の架橋密度が上昇し潤滑性が低下するのを抑制・制御することができる程度に反応速度が穏やか(適当な速度)であることから、取り扱い性が良好であるといえる。これらの反応性官能基を有する単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記親水性単量体としては、体液や水系溶媒中において潤滑性を発現すればいかなるものであってもよく、特に制限されない。具体的には、アクリルアミドやその誘導体、ビニルピロリドン、アクリル酸やメタクリル酸及びそれらの誘導体、糖、リン脂質を側鎖に有する単量体を例示できる。例えば、N−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリルアミド、アクリロイルモルホリン、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、ビニルピロリドン、2−メタクリロイルオキシエチルフォスフォリルコリン、2−メタクリロイルオキシエチル−D−グリコシド、2−メタクリロイルオキシエチル−D−マンノシド、ビニルメチルエーテル、ヒドロキシエチルメタクリレートなどを好適に例示できる。合成の容易性や操作性の観点から、好ましくは、N,N−ジメチルアクリルアミドである。これらの親水性単量体は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
良好な潤滑性を発現するためには反応性官能基を有する単量体が集まって反応性ドメインを形成し、かつ親水性単量体が集まって親水性ドメインを形成しているブロックもしくはグラフトコポリマーであることが望ましい。こうしたブロックもしくはグラフトコポリマーであると、表面潤滑層の強度や潤滑性において良好な結果が得られる。
本実施形態では、上記した基材層1、チオール化合物2、表面潤滑層3を備え、上述したように前記チオール化合物2が酸素を含有するイオン化ガスプラズマを照射することにより基材層1に固定化されており、さらにチオール化合物の残存チオール基と親水性高分子の反応性官能基とを反応させることで表面潤滑層3が基材層1に結合していることを特徴とするものである。
表面潤滑層3を形成させる際に用いられる親水性高分子溶液の濃度は、特に限定されない。所望の厚さに均一に被覆する観点からは、親水性高分子溶液中の親水性高分子の濃度は、0.1〜20wt%、好ましくは0.5〜15wt%、より好ましくは1〜10wt%である。親水性高分子溶液の濃度が0.1wt%未満の場合、所望の厚さの表面潤滑層3を得るために、上記した浸漬操作を複数回繰り返す必要が生じるなど、生産効率が低くなる可能性がある。一方、親水性高分子溶液の濃度が20wt%を超える場合、親水性高分子溶液の粘度が高くなりすぎて、均一な膜をコーティングできない可能性があり、またカテーテル、ガイドワイヤ、注射針等の医療用具の細く狭い内面に素早く被覆するのが困難となる可能性がある。但し、上記範囲を外れても、本発明の作用効果に影響を及ぼさない範囲であれば、十分に利用可能である。
また、親水性高分子を溶解するのに用いられる溶媒としては、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、クロロホルム、アセトン、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ベンゼンなどを例示することができるが、これらに何ら制限されるものではない。これらは1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
また本発明は、表面潤滑層3を形成させる際に、加熱処理等により親水性高分子の反応性官能基(例えば、エポキシ基)とチオール化合物2の残存チオール基とを反応させることで、表面潤滑層3を基材層1に結合させるものである。
本発明の湿潤時に表面が潤滑性を有する医療用具10は、体液や血液などと接触して用いる器具のことであり、体液や生理食塩水などの水系液体中において表面が潤滑性を有し、操作性の向上や組織粘膜の損傷の低減が可能なものである。具体的には、血管内で使用されるカテーテル、ガイドワイヤ、留置針等が挙げられるが、その他にも以下の医療用具が示される。
ポリエチレン(直鎖状低密度ポリエチレン;ニポロン−Z(登録商標) ZF−260、東ソー株式会社製)の中空チューブ(内径 0.86mm,外径 1.05mm)をアセトン中で超音波洗浄した後、プラズマ照射装置(DURADYNE、TRI−STAR TECHNOLOGIES製)を用いて、大気圧下で酸素混合アルゴンイオンガスプラズマ処理を25秒行った(チオール化合物塗布前のプラズマ処理)。この際、プラズマ処理は、酸素ガスとアルゴンガスとを1:50(=酸素ガス:アルゴンガスの体積比)で混合したガスを用いて行った。
実施例1において、チオール化合物塗布前のプラズマ処理時間およびチオール化合物塗布後のプラズマ処理時間を、それぞれ、125秒に変更する以外は、実施例1と同様の操作を行ない、基材層1(ポリエチレンチューブ)表面に固定化されたTEMPICからなるチオール化合物2表面を覆うように、ブロックコポリマー[p(DMAA−b−GMA)](親水性高分子)からなる厚さ(未膨潤時)が2μmの表面潤滑層3を形成した(ポリエチレンチューブ(2))。
実施例1と同様のポリエチレンチューブ(高分子基材層1)を、アセトン中で超音波洗浄した後、実施例1と同じブロックコポリマー溶液に浸漬し、室温で乾燥させ、80℃のオーブン中で5時間反応させることで、基材層1(ポリエチレンチューブ)表面を覆うように、上記ブロックコポリマー(親水性高分子)からなる厚さ(未膨潤時)が2μmの表面潤滑層3を形成した(比較ポリエチレンチューブ(1))。
上記実施例1,2で得られたポリエチレンチューブ(1)、(2)および比較例1で得られた比較ポリエチレンチューブ(1)について、下記方法にしたがって、図3に示される摩擦測定機(トリニティーラボ社製、ハンディートライボマスターTL201)20を用いて、表面潤滑維持性を評価した。
速度:1,000mm/min
荷重:50g
移動距離:25mm
端子:ポリエチレン
図4〜6に示されるように、実施例1及び2で得られたポリエチレンチューブ(1)及び(2)は、比較例1で得られた比較ポリエチレンチューブ(1)に比べて、10回の繰り返し摺動に対して摺動抵抗値を低く維持することができ、表面潤滑層の耐久性が良好だった。
1a…基材層コア部、
1b…高分子表面層、
2…チオール化合物、
3…表面潤滑層、
10…医療用具、
11…水、
12…シャーレ、
13…ステンレス棒、
14…端子、
15…重り、
16…ポリエチレンチューブ(試料)、
20…摩擦測定機。
Claims (4)
- 少なくとも表面が高分子材料からなる基材層と、
該基材層の少なくとも一部に担持された、分子内に複数のチオール基を有する化合物と、
該分子内に複数のチオール基を有する化合物を覆う、反応性官能基を有する親水性高分子からなる表面潤滑層と、を備え、
該チオール基を有する化合物が酸素を含有するイオン化ガスプラズマを照射することにより基材層に担持されており、かつ該チオール基を有する化合物と、該反応性官能基を有する親水性高分子とを反応させることで表面潤滑層が基材層に結合している、湿潤時に表面が潤滑性を有する医療用具。 - 前記チオール基を有する化合物を溶解した溶液を前記基材層表面に塗布し、その後酸素を含有するイオン化ガスプラズマを照射することによって、前記チオール基を有する化合物が基材層に担持されている、請求項1に記載の医療用具。
- 前記基材層表面に酸素を含有するイオン化ガスプラズマを照射し、その後前記チオール基を有する化合物を溶解した溶液を基材層表面に塗布することによって、前記チオール基を有する化合物が基材層に担持されている、請求項1または2に記載の医療用具。
- 前記チオール基を有する化合物を溶解した溶液を基材層表面に塗布した後に前記酸素を含有するイオン化ガスプラズマを照射し、その後加熱処理することによって、前記チオール基を有する化合物が基材層に担持されている、請求項2または3に記載の医療用具。
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JP2009082257A (ja) * | 2007-09-28 | 2009-04-23 | Japan Stent Technology Co Ltd | 潤滑性表面を有する医療用具およびその製造方法 |
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