JP2011241455A - 粉末成形方法、圧粉磁心の製造方法、その圧粉磁心の製造方法により製造された圧粉磁心、及び、その圧粉磁心を用いたリアクトル - Google Patents

粉末成形方法、圧粉磁心の製造方法、その圧粉磁心の製造方法により製造された圧粉磁心、及び、その圧粉磁心を用いたリアクトル Download PDF

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Abstract

【課題】製品強度を向上させることができる粉末成形方法、圧粉磁心の製造方法、その圧粉磁心の製造方法により製造された圧粉磁心及びその圧粉磁心を用いたリアクトルを提供すること。
【解決手段】金属粉末の表面を樹脂でコーティングしてある粉末材料を圧縮成形する粉末成形方法であって、成形空間に供給された粉末材料を第1の加圧力で加圧し、成形体10を得た後、第1の加圧力より小さい第2の加圧力F2で成形体10を加圧しながら、成形体10を成形空間から抜き出し、その後、成形空間から抜き出した成形体10を第2の加圧力F2で加圧し続けて保持する。
【選択図】図11

Description

本発明は、粉末成形方法、圧粉磁心を製造する圧粉磁心の製造方法、その圧粉磁心の製造方法により製造された圧粉磁心、及び、その圧粉磁心を用いたリアクトルに関する。
従来より、外型を挟んで上下に上型と下型を配置した成形機が知られている。成形機は、外型と下型との間に形成される成形空間に金属粉末を供給された後、上型を下降させて金属粉末を圧縮して成形体を成形し、その後、上型と下型とで成形体を挟み込んで成形体に圧力を加えた状態で、成形体を成形空間から抜き出し、さらにその後に、上型を上昇させて成形体を取り出せるようにする。金属粉末の圧縮成形時には、成形体に大きな内部応力が発生するため、成形体を成形空間から抜き出す場合に、上型と下型とで成形体を保持することにより、成形体に発生した内部応力を緩やかに開放し、クラック等が成形体に生じることを防止する(例えば特許文献1及び特許文献2参照。)。
特開平5−77099号公報 特開2004−345222号公報
しかしながら、リアクトルのコア等に適用される圧粉磁心は、鉄損を小さくするために、珪素合金粉末や、珪素浸透層が表面に形成された軟磁性金属粉末を絶縁性のある樹脂でコーティングした圧粉磁心用粉末を圧縮成形する。この圧粉磁心用粉末を従来の粉末成形方法により圧縮成形した成形体は、普通の焼結部品に用いられる金属粉末を従来の粉末成形方法により圧縮成形した成形体と比較して強度が低く、例えば、当該成形体を熱処理した製品をインサート成形する場合に、樹脂成形型を締める力によって亀裂が入ることがあった。
その理由について、発明者らは、次のように考えている。
従来の粉末成形方法は、上型と下型とで加圧しながら成形材を成形空間から抜き出した後、成形体を上型と下型との間で0秒〜0.5秒保持し、その後、上型を上昇させて成形体への加圧を解除していた。
一般的な金属粉末は、形状が複雑であるため、上型と下型との間で圧縮されると、粉末同士が絡み合いやすく、その結果、圧縮成形後に上型と下型との間で0秒〜0.5秒成形体を保持するだけでも、強度が得られる。
それに対して、圧粉磁心用粉末は、鉄損を小さくするために、粉末成形時の粉末の変形でコーティング樹脂膜が破れにくいように、略球状にされている。また、圧粉磁心用粉末は、そもそも珪素合金粉末が硬い粉末であったり、浸珪処理時の加熱等によって、軟磁性金属粉末が硬くなっている。更に、圧粉磁心用粉末は、粉末間の絶縁性を確保して渦電流の発生を抑制するために、表面が絶縁性のある樹脂でコーティングされている。そのため、圧粉磁心用粉末は、圧縮成形時に一般的な金属粉末と同じ圧力を与えられても、粉末同士が絡み合いにくく、一般的な金属粉末の圧縮成形時に対して1.5倍〜3倍程度もの圧力を加えられて圧縮される必要があった。このような樹脂コーティングされた粉末を原料とする圧粉磁心製品の強度は、製品の粉末粒子間に形成される樹脂膜の強度に大きく依
存すると考えられる。
圧縮成形時には、外型が成形圧力を受けて成形面を変形させる。この状態では、成形体を成形空間から抜き出すのが困難であるため、成形圧力を減圧してから上型と下型の間で成形体を保持した状態で成形体を成形空間から抜き出す。ところが、上述したように、圧粉磁心用粉末を圧縮成形する場合の成形圧力が、一般的な金属粉末の圧縮成形時の成形圧力に対して1.5倍〜3倍程度に高く設定されるため、圧粉磁心用粉末を圧縮成形する場合に外型が弾性変形する変形量は、一般的な金属粉末を圧縮成形する場合と比較して大きくなる。そのため、圧粉磁心用粉末を圧縮成型する成形圧力を、成形体の焼き付きを防止するように減圧すると、外型の変形戻り量が一般的な金属粉末を成形する場合と比較して大きくなる。これにより、圧粉磁心用粉末の成形体には、一般的な金属粉末の成形体にかかることのない力が、成形体の抜き出し工程時に作用する。この力は、圧粉磁心用粉末の成形体を成形空間から抜き出す際に成形体を変形させ、粉末粒子間の樹脂膜は、このときいったん破壊され、粉末同士の絡み合いを弱める。この影響は、上型と下型とで0秒〜0.5秒成形体を保持し、その後、上型を成形体から離間させる従来の粉末成形方法をとったとしても、解消しない。この結果、従来の圧粉磁心の製造方法で製造された圧粉磁心(成形体)は、強度が低くなると考えられる。
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、製品強度を向上させることができる粉末成形方法、圧粉磁心の製造方法、その圧粉磁心の製造方法により製造された圧粉磁心及びその圧粉磁心を用いたリアクトルを提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る粉末成形方法は、金属粉末の表面を樹脂でコーティングしてある粉末材料を圧縮成形する粉末成形方法であって、成形空間に供給された前記粉末材料を第1の加圧力で加圧し、成形体を得る圧縮成形工程と、前記第1の加圧力より小さい第2の加圧力で前記成形体を加圧しながら、前記成形体を前記成形空間から抜き出す抜き出し工程と、前記成形空間から抜き出した前記成形体を前記第2の加圧力で加圧し続けて保持する成形体保持工程と、を有する。
上記構成の粉末成形方法は、前記成形空間から抜き出した成形体を保持する保持時間が、いったん破壊した粉末粒子間の樹脂膜を再度形成させるのに必要な時間に設定されていることが好ましい。特に、前記金属粉末が鉄珪素合金粉末であり、前記樹脂がシリコーンである場合、前記保持時間が、2秒以上であることが好ましい。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る圧粉磁心の製造方法は、軟磁性金属粉末の表面を樹脂でコーティングしてある圧粉磁心用粉末を圧縮成形して、圧粉磁心を製造する圧粉磁心の製造方法であって、成形空間に供給された前記圧粉磁心用粉末を第1の加圧力で加圧し、成形体を得る圧縮成形工程と、前記第1の加圧力より小さい第2の加圧力で前記成形体を加圧しながら、前記成形体を前記成形空間から抜き出す抜き出し工程と、前記成形空間から抜き出した前記成形体を前記第2の加圧力で加圧し続けて保持する成形体保持工程と、を有する。
上記構成の圧粉磁心の製造方法は、前記成形空間から抜き出した成形体を保持する保持時間が、いったん破壊した粉末粒子間の樹脂膜を再度形成させるのに必要な時間に設定されていることが好ましい。特に、前記軟磁性金属粉末が鉄珪素合金粉末であり、前記樹脂がシリコーンである場合、前記保持時間が、2秒以上であることが好ましい。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係る圧粉磁心は、上記圧粉磁心の製造方法により製造されている。
上記目的を達成するために、本発明の一態様に係るリアクトルは、上記圧粉磁心を適用している。
上記態様の発明では、成形空間に供給された粉末材料(圧粉磁心用粉末)は、互いに絡み合っていない状態である。第1の加圧力で粉末材料(圧粉磁心用粉末)を加圧すると、粉末材料(圧粉磁心用粉末)が押し潰されて変形し、粉末同士が面接触する。これにより、所定形状の成形体が得られる。その後、第1の加圧力より小さい第2の加圧力で成形体を加圧しながら成形体を成形空間から抜き出す。成形空間から抜き出される成形体は、この抜き出される際に発生する成形体の変形により、粉末粒子間の樹脂膜が破壊される。樹脂膜が再度形成されるために、一定の時間が必要と考えられ、この樹脂膜の再生を確実に行わせることにより、粉末間の絡み合いが維持される。よって、上記態様の発明によれば、製品強度を向上させることができる。
本発明の実施形態に係り、成形機の概略構成図である。 圧粉磁心用粉末の断面を示すイメージ図である。 圧粉磁心の製造工程を説明する図であって、給粉工程を示す。 圧粉磁心の製造工程を説明する図であって、圧縮成形工程を示す。 圧粉磁心の製造工程を説明する図であって、減圧工程を示す。 圧粉磁心の製造工程を説明する図であって、抜き出し工程を示す。 圧粉磁心の製造工程を説明する図であって、成形体保持工程を示す。 圧粉磁心の製造工程を説明する図であって、成形体取り出し工程を示す。 圧縮成型前における成形空間内の拡大図であって、圧粉磁心用粉末のイメージ図である。 圧縮成形後における成形体の拡大図であって、圧粉磁心用粉末のイメージ図である。 リアクトルの外観斜視図である。 コアの分解斜視図である。 比較例1〜4と実施例1〜4における比強度と成形体の保持時間との関係を示す図である。 一般的な金属粉末(Fe−Cu−C系金属粉末)を用いた製品における比強度と成形体の保持時間との関係を示す図である。
次に、本発明に係る粉末成形方法、圧粉磁心の製造方法、その圧粉磁心の製造方法により製造された圧粉磁心、及び、その圧粉磁心を用いたリアクトルの一実施形態について図面を参照して説明する。
<成形機の構成>
図1は、成形機1の概略構成図である。
図1に示す成形機1は、図2に示す圧粉磁心用粉末28を外型2と上型3と下型4との間で圧縮して成形体10(図8参照)を得るものである。外型2には、図中上下方向に貫通する成形孔2aが形成され、上型3と下型4は、成形孔2aと同軸上に配置されている。下型4は、定位置に固定されている。外型2と上型3は、駆動手段5により駆動力を付与されて、下型4に対して図中上下方向へ移動するようになっている。駆動手段5は、成形孔2aの下面開口部を下型4の成形面4aに位置合わせするように外型2を上昇させ、また、下型4の成形面4aを成形孔2aから上方へ突出させるように外型2を下降させる。また、駆動手段5は、上型3を成形孔2a内に下降させて、成形孔2aの内壁と成形面3a,4aとにより形成される成形空間Sに充填された圧粉磁心用粉末28(図2参照)を加圧する圧力を調整する。
<圧粉磁心用粉末の構成>
図2は、圧粉磁心用粉末28の断面を示すイメージ図である。
図2に示すように、圧粉磁心用粉末28は、表面がシリコーン被膜層27でコーティングされている。
図2に示す鉄珪素合金粉末24は、エタノールにシリコーン樹脂を溶解させた液に投入され、攪拌される。鉄珪素合金粉末24を所定時間攪拌したら、更にエタノールを蒸発させながら攪拌し、シリコーン樹脂を鉄珪素合金粉末24の表面に固着させる。これにより、表面が厚さ数nmのシリコーン被膜層27で覆われた圧粉磁心用粉末28(図2参照)が製造される。尚、この鉄珪素合金粉末24の表面を樹脂でコーティングするコーティング方法は、単なる一例であって、これ以外のコーティング方法を用いても良いことは言うまでもない。
このようにして製造された圧粉磁心用粉末28は、形状、粒径、鉄珪素合金粉末24の純度等が一定の基準に管理される。
<圧粉磁心の製造方法(粉末成形方法)>
図3〜図8は、圧粉磁心の製造工程を説明する図である。図9は、圧縮成型前における成形空間S内の拡大図であって、圧粉磁心用粉末28のイメージ図である。図10は、圧縮成形後における成形体10の拡大図であって、圧粉磁心用粉末28のイメージ図である。
A.給粉工程
図3に示すように、成形機1は、成形孔2aの内壁と上型3の成形面3aと下型4の成形面4aに、高級脂肪酸潤滑剤(例えば、水に分散したステアリン酸リチウムの1%溶液)が塗布される。成形機1は、下型4の成形面4aに成形孔2aの下面開口部を位置合わせするように、外型2を上昇させる。また、成形機1は、上型3を成形孔2aの上面開口部より上方まで上昇させ、成形孔2aの内壁と成形面4aにより、上方に開放された成形空間Sを形成する。この状態で、成形空間Sに圧粉磁心用粉末28を充填する。
図9に示すように、成形空間Sに充填された圧粉磁心用粉末28は、球形状をなし、互いに点接触している。
B.圧縮成形工程
そして、図4に示すように、上型3が設定位置まで下降する。これにより、成形空間S内の圧粉磁心用粉末28は、成形面3a,4aと成形孔2aの内壁との間で圧縮され、成形体10が得られる。このとき、成形温度は、高級脂肪酸系潤滑剤と圧粉磁心用粉末28との反応に適した温度に管理され、例えば、100℃〜200℃に管理される。上型3が圧粉磁心用粉末28に与える第1の加圧力F1は、高級脂肪酸系潤滑剤や圧粉磁心用粉末の材料、外型2・上型3・下型4の材質、成形空間Sの内面形状等を検討して適宜定められる。本実施形態では、第1の加圧力F1は、圧粉磁心用粉末28が、球形状で硬く、表面をシリコーン被膜層27でコーティングされていることを考慮して、一般的な金属粉末を圧縮成形する場合の成形圧力に対して1.5倍〜3倍程度の範囲の設定圧力に設定される。例えば、一般的な金属粉末に作用させる成形圧力が400Mpa以上700MPa以下の範囲内で設定される場合、圧粉磁心用粉末に作用させる第1の加圧力F1は、一般的な金属粉末に作用させる成形圧力の1.5倍〜3倍程度である600MPa以上2000MPa以下の範囲内で設定することが望ましい。
図10に示すように成形空間Sの圧粉磁心用粉末28は、第1の加圧力F1を受けて押し潰され、球形状から変形して互いに面接触する。このとき、圧粉磁心用粉末28は、面接触する部分が圧着されて互いに絡み合い、塑性変形して成形体10を構成する。
図4に示すように、外型2は、成形体10を介して第1の加圧力F1が成形孔2aの内壁に作用する。第1の加圧力F1が、一般的な金属を圧縮成形する通常の場合の1.5倍〜3倍程度となる高圧であるため、外型2は、成形孔2aの内壁が外向きに弾性変形する量が、一般的な金属粉末を圧縮成形する場合と比較して大きくなる。
C.減圧工程
そして、図5に示すように、成形機1は、上型3が成形体10を加圧する第1の加圧力F1を、第2の加圧力F2に減圧する。例えば、第2の加圧力F2は、成形体10の抜き出し時に成形体10が成形空間Sの内面に焼き付くことを防止しうる圧力に設定される。より具体的には、成形孔2aの内壁が元の形状近くに戻るように、上型3が成形体10に与える圧力を減圧する。本実施形態では、第2の加圧力F2は、圧縮成形時の成形圧力の1%以上20%以下の範囲内の圧力に設定される。
上型3が成形体10に与える圧力を減圧すると、成形体10を介して第2の加圧力F2が作用する成形孔2aの内壁が圧縮成形前の状態近くに戻る。成形孔2aが元の形状に戻る力と、成形体10の圧粉磁心用粉末28が持つ弾性力により、圧粉磁心用粉末28は、上型3を持ち上げるように弾性変形しようとする。しかし、この場合、上型3が成形体10に第2の加圧力F2を付与している。そのため、圧粉磁心用粉末28は、弾性変形量が制限され、図10に示すように互いに面接触して絡み合った状態が維持される。
外型2は、図4に示すように、圧縮成形工程時における成形孔2aの内壁の弾性変形量が、一般の金属粉末を圧縮成形する通常の場合と比較して大きいため、図5に示すように、減圧工程において第1の加圧力F1が第2の加圧力F2に減圧されると、成形孔2aの弾性変形した内壁の戻り量が、一般の金属粉末を成形する場合と比較して大きくなる。そのため、成形空間Sの成形体10には、一般の金属粉末の成形時には成形体にかかることのない力が作用する。しかし、圧粉磁心用粉末28の成形体10は、第2の加圧力F2が作用するように成形空間Sの内壁(成形孔2aの内壁、上型3の成形面3a、下型4の成形面4a)に挟み込まれて保持されている。そのため、成形体10は、図10に示すように、圧粉磁心用粉末28が互いに密着し続け、またシリコーン被膜層27が鉄珪素合金粉末24から剥がれることがなく、絡み合った状態を維持する。
D.抜き出し工程
そして、図6に示すように、下型4の成形面4aを成形孔2aの上面開口部から突き出すように、外型2を下降させる。成形孔2aの内壁には、高級脂肪酸系潤滑剤が塗布されており、また、減圧工程において成形体10に作用する圧力が減圧されているため、成形体10は、外型2の下降に伴い、成形孔2aの内壁に焼き付くことなく成形空間Sから抜き出される。
E.成形体保持工程
そして、図7に示すように、成形機1は、成形体10を成形空間Sから抜き出した後も、上型3により成形体10に第2の加圧力F2を作用させ続ける。成形体10は、上型3と下型4の間で所定の保持時間保持される。例えば、平均粒径が150μm〜212μmで、シリコーン被膜層27の厚さが数nmである圧粉磁心用粉末28を適用した成形体10は、上型3と下型4の間で2秒以上保持されることが好ましい。
上型3と下型4との間で保持される成形体10は、成形空間Sから抜き出される際に変形する。この変形により、粉末粒子間のシリコーン被膜は、いったん破壊される部分が発生するが、保持する間に樹脂膜が再生するために、強度が保たれる。
F.成形体取り出し工程
そして、所定の保持時間が経過したら、図8に示すように、上型3を上昇させて成形体10から引き離す。成形体10は、成形体保持工程において、シリコーン被膜が再生されているため、上型3による第2の加圧力F2を解除しても、圧粉磁心用粉末28同士の絡み合いが弱められず、製品強度が維持される。
G.復帰工程
そして、成形体10を上型3と下型4の間から取り出したら、外型2を上昇させ、図3に示す位置に復帰させる。
H.後処理工程
成形機1から取り出された成形体10は、内部に発生した歪みを解消したり硬度を高めるために、熱処理が施される。
<リアクトルの構成>
図11は、リアクトル11の外観斜視図である。
上記圧粉磁心用粉末の成形方法は、リアクトル11に適用される。リアクトル11は、コア12と、ボビン14と、ボビン14の外周に形成されたコイル13とを有する。コア12は、樹脂部材15で包囲され、樹脂部材15に塗布した接着剤16を介して冷却器17に固定されている。このようなリアクトル11は、コイル13に通電した場合にコア12に発生する熱が、樹脂部材15を介して冷却器17へ逃がされる。このリアクトル11は、例えば、ハイブリッド車のモータ用変圧回路に配置される。
図12は、コア12の分解斜視図である。
コア12は、2個の円弧コア12aと、4個の直方体コア12bと、厚さ1.6mmのセラミクス製ギャップ12cとからなる。円弧コア12aは、上記圧粉磁心の製造方法を適用して製造された後、インサート成形により樹脂部材15でモールドされる。円弧コア12aは、上記圧粉磁心の製造方法により製品強度が確保されているため、インサート成形時に樹脂成形型を型締めする力を受けても、亀裂が入らない。円弧コア12aと直方体コア12bとギャップ12cは、接着剤を介して接着されて一体化される。
<実施例と比較例の成形条件>
実施例と比較例は、シリコーン樹脂でコーティングされた圧粉磁心用粉末を適用して、次のように製造される。
鉄珪素合金粉末の表面をシリコーン樹脂でコーティングされた圧粉磁心用粉末を、成形機の成形空間に供給し、2000MPaの成形圧力を圧粉磁心用粉末に与え、圧粉磁心用粉末を圧縮成形する。その後、2000MPaの成形圧力を40MPaの成形体保持用圧力に減圧した後、成形体保持用圧力を付加しながら成形体を成形空間から抜き出す。成形体は、成形空間から抜き出された後、成形体保持用圧力を付加された状態で所定の保持時間保持される。所定の保持時間が経過すると、成形体は、成形機から取り出され、熱処理が施される。
上記成形体の製造手順において、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を0.1秒に設定したものを比較例1、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を0.3秒に設定したものを比較例2、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を0.5秒に設定したものを比較例3、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を1秒に設定したものを比較例4とする。
また、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を2秒に設定したものを実施例1、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を3秒に設定したものを実施例2、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を4秒に設定したものを実施例3、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を10秒に設定したものを実施例4とする。
<実施例における比強度と成形体保持時間との関係>
図13は、比較例1〜4と実施例1〜4における比強度と成形体の保持時間との関係を示す図である。
比強度は、比較例1〜4及び実施例1〜4に荷重をかけ、比較例1〜4及び実施例1〜4が折れたときの荷重を測定することにより、調べた。
比較例1の比強度は、100であった。比較例2の非強度は、99であった。比較例3の比強度は、101であった。比較例4の比強度は、103であった。
一方、実施例1,2の比強度は、108であった。実施例3の比強度は、110であった。実施例4の比強度は、109であった。
以上の実験結果より、実施例1〜4の比強度は、比較例1〜4の比強度に対して、7〜9%向上することが分かった。つまり、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を2秒以上に設定することにより、成形体の比強度が7%以上向上することが分かった。そして、保持時間を2秒を超えて設定しても、成形体の比強度は、保持時間を2秒に設定した場合と殆ど変わらないことが判明した。従って、成形体の保持時間は、少なくとも2秒に設定することが好ましい。
<一般的な金属粉末を用いた成形体について>
一般的な金属粉末を用いた成形体は、次のように製造される。
比較的形状が複雑なFe−Cu−C系金属粉末(一般的な金属粉末の一例)を成形機の成形空間に供給し、Fe−Cu−C系金属粉末に500MPaの成形圧力を与えて、Fe−Cu−C系金属粉末を圧縮成形する。その後、成形圧力を保持用圧力20MPaに切り替えた後に、成形体を成形空間から抜き出す。成形体は、成形空間から抜き出された後、保持用圧力を付加された状態で所定の保持時間保持される。所定の保持時間が経過すると、成形体は、成形機から取り出され、熱処理が施される。
成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を0.1秒に設定したものを比較例11、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を0.3秒に設定したものを比較例12、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を0.5秒に設定したものを比較例13、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を1秒に設定したものを比較例14、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を3秒に設定したものを比較例15、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を5秒に設定したものを比較例16、成形空間から抜き出された成形体を保持する保持時間を10秒に設定したものを比較例17とする。
<一般的な金属粉末を用いた成形体における比強度と成形体の保持時間との関係>
図14は、一般的な金属粉末(Fe−Cu−C系金属粉末)を用いた製品における比強度と成形体の保持時間との関係を示す図である。
比強度は、比較例11〜17に荷重をかけ、比較例11〜17が折れたときの荷重を測定することにより、調べた。
比較例11の比強度は、100であった。比較例12の比強度は、101であった。比較例13の比強度は、約100であった。比較例14の比強度は、99であった。比較例15の比強度は、101であった。比較例16の比強度は、約99であった。比較例17の比強度は、101であった。
上記実験結果より、Fe−Cu−C系金属粉末を用いた成形体は、成形空間から抜き出した成形体の保持時間にかかわらず、比強度が100前後であった。これは、Fe−Cu−C系金属粉末が、複雑な形状をしており、圧縮成形時に絡み合いやすく、熱処理時に粉末同士の焼結が進むため、成形体の保持時間と関係なく、製品強度が得られるからであると考えられる。
尚、発明者は、成形体におけるFe−Cu−C系金属粉末の密度と引っ張り強度との関係を調べたところ、Fe−Cu−C系金属粉末の密度が高くなるにつれて、引っ張り強度が上昇することを確認した。この結果より、Fe−Cu−C系金属粉末では、圧縮成型時における成形体の保持時間よりも、Fe−Cu−C系金属粉末の密度の方が製品強度と相関関係があることが分かった。
本発明は、上記実施形態に限定されることなく、色々な応用が可能である。
例えば、上記実施形態では、下型4を固定し、上型3と外型2を下型4に対して上下方向へ移動させるようにしたが、例えば、外型2を固定して上型3と下型4を外型2に対して上下方向へ移動させるなど、成形体を抜き出す場合の金型の動作は適宜設定できる。
例えば、上記実施形態の粉末成形方法は、圧粉磁心の製造に用いたが、表面が樹脂でコーティングされた粉末を圧縮成形するものであれば、他の製品の製造に上記実施形態の粉末成形方法を適用しても良い。
3 上型
4 下型
10 成形体
11 リアクトル
24 鉄珪素合金粉末(軟磁性金属粉末の一例)
27 シリコーン被膜層
28 圧粉磁心用粉末(粉末材料の一例)
S 成形空間
F1 第1の加圧力
F2 第2の加圧力

Claims (8)

  1. 金属粉末の表面を樹脂でコーティングしてある粉末材料を圧縮成形する粉末成形方法であって、
    成形空間に供給された前記粉末材料を第1の加圧力で加圧し、成形体を得る圧縮成形工程と、
    前記第1の加圧力より小さい第2の加圧力で前記成形体を加圧しながら、前記成形体を前記成形空間から抜き出す抜き出し工程と、
    前記成形空間から抜き出した前記成形体を前記第2の加圧力で加圧し続けて保持する成形体保持工程と、
    を有することを特徴とする粉末成形方法。
  2. 請求項1に記載する粉末成形方法において、
    前記成形空間から抜き出した成形体を保持する保持時間が、いったん破壊した粉末粒子間の樹脂膜を再度形成させるのに必要な時間に設定されている
    ことを特徴とする粉末成形方法。
  3. 請求項2に記載する粉末成形方法において、
    前記金属粉末が鉄珪素合金粉末であり、前記樹脂がシリコーンである場合、前記保持時間が、2秒以上である
    ことを特徴とする粉末成形方法。
  4. 軟磁性金属粉末の表面を樹脂でコーティングしてある圧粉磁心用粉末を圧縮成形して、圧粉磁心を製造する圧粉磁心の製造方法であって、
    成形空間に供給された前記圧粉磁心用粉末を第1の加圧力で加圧し、成形体を得る圧縮成形工程と、
    前記第1の加圧力より小さい第2の加圧力で前記成形体を加圧しながら、前記成形体を前記成形空間から抜き出す抜き出し工程と、
    前記成形空間から抜き出した前記成形体を前記第2の加圧力で加圧し続けて保持する成形体保持工程と、
    を有することを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  5. 請求項4に記載する圧粉磁心の製造方法において、
    前記成形空間から抜き出した成形体を保持する保持時間が、いったん破壊した粉末粒子間の樹脂膜を再度形成させるのに必要な時間に設定されている
    ことを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  6. 請求項5に記載する圧粉磁心の製造方法において、
    前記軟磁性金属粉末が鉄珪素合金粉末であり、前記樹脂がシリコーンである場合、前記保持時間が、2秒以上である
    ことを特徴とする圧粉磁心の製造方法。
  7. 請求項4乃至請求項6の何れか1つに記載する圧粉磁心の製造方法で製造されていることを特徴とする圧粉磁心。
  8. 請求項7に記載する圧粉磁心を適用していることを特徴とするリアクトル。
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