JP2011241454A - 疲労特性に優れた厚鋼板 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】C、Si、Mn、P、S、Al、Nを含有し、鋼組織中の転位密度が1×1010〜10×1010(/cm2)であり、母材の強度とHAZの強度の比の指標となる(転位密度/1010)/DI値が2.2以上6.5以下であり、HAZの均一伸びとHAZの強度の比の指標となるH値/DI値が23以下である。
【選択図】なし
Description
P:0.015%以下(0%を含まない)、S:0.01%以下(0%を含まない)、Al:0.005〜0.06%、N:0.0038〜0.010%を夫々含有するとともに、残部は不可避的不純物であり、鋼組織中の転位密度が1×1010〜10×1010(/cm2)であり、前記転位密度と、下記式(1)および(2)で表されるDI値およびH値が
H値/DI値≦23 および
2.2≦(転位密度/1010)/DI値≦6.5
の関係を満たすことを特徴とするものであり、疲労特性に優れている。
DI値=(C/10)0.5×(1.7−0.09×6)×(0.7×Si+1)×F1×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(200×F2+1) ・・・(1)
但し、上記式(1)において
F1は、
Mn<1.2の場合は、F1=3.33×Mn+1
Mn≧1.2の場合は、F1=5.1×(Mn−1.2)+5
F2は、
B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14<0の場合は、F2=0
B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14≧0の場合は、F2=B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14
H値=−153×C+112×Si−3×Mn−63×Cu+240×Al−15×Ni−305×Cr+1791×Mo−110×Nb−758×Ti−1929×B+1068×N+4 ・・・(2)
(上記式(1)、(2)中、元素名は各元素の含有量(質量%)を表し、含有していない元素がある場合、その含有量については0質量%として計算するものとする。)
DI値=(C/10)0.5×(1.7−0.09×6)×(0.7×Si+1)×F1×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(200×F2+1) ・・・(1)
但し、上記式(1)において
F1は、
Mn<1.2の場合は、F1=3.33×Mn+1
Mn≧1.2の場合は、F1=5.1×(Mn−1.2)+5
F2は、
B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14<0の場合は、F2=0
B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14≧0の場合は、F2=B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14
本発明では、母材とHAZの境目付近に応力集中させるため、HAZと比べて母材の強度が十分に低くなるよう、母材強度の指標となる上記転位密度と、HAZの強度の指標となるDI値を(転位密度/1010)/DI値が6.5以下となるように制御する。(転位密度/1010)/DI値は好ましくは6.0以下であり、より好ましくは5.5以下である。一方、母材の強度が低下しすぎると、母材が疲労破壊してしまうこととなるため、(転位密度/1010)/DI値は2.2以上とする。(転位密度/1010)/DI値は好ましくは2.5以上であり、より好ましくは3.0以上である。
H値=−153×C+112×Si−3×Mn−63×Cu+240×Al−15×Ni−305×Cr+1791×Mo−110×Nb−758×Ti−1929×B+1068×N+4 ・・・(2)
H値は、HAZの伸びと合金元素との関係を実験的に求めたものである。一般的に、鋼材において引張強度が高くなるほど均一伸びは低くなるものであるが、本発明では、本発明のHAZの強度クラス(約500〜700MPa)においても低い均一伸びを達成している点で従来技術と異なっている。すなわち、本願発明ではHAZの均一伸びの指標となるH値と、HAZの強度の指標となるDI値をH値/DI値≦23の関係を満たすように制御している。H値/DI値は好ましくは20以下であり、より好ましくは15以下である。一方、H値/DI値の値が小さくなりすぎると母材強度が上がって靭性が下がることがある。そこでH値/DI値は、好ましくは3以上であり、より好ましくは5以上である。
Cは、鋼板の強度を確保するために必須の元素である。そこでC量を0.02%以上とする。C量は、好ましくは0.03%以上であり、より好ましくは0.04%以上である。一方、C量が過剰になると硬質な島状マルテンサイト(MA)が多く生成して母材の靭性劣化を招くこととなる。そこでC量は0.15%以下とする。C量は、好ましくは0.13%以下であり、より好ましくは0.11%以下である。
Siは、必須元素ではないが、固溶強化により強度を確保するのに有用な元素である。このような効果を発揮させるためには、0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.10%以上である。一方、Si量が過剰になると硬質な島状マルテンサイト(MA)が多く生成して母材の靭性劣化を招くこととなる。従ってSi量の上限は0.30%以下とする。Si量は、好ましくは0.27%以下であり、より好ましくは0.23%以下である。
Mnは、鋼板の強度を確保するのに有用な元素である。そこでMn量は1.0%以上とする。Mn量は、好ましくは1.20%以上であり、より好ましくは1.40%以上である。一方、Mn量が過剰になるとHAZの強度が上昇しすぎて靭性が劣化する。そこでMn量は2.5%以下とする。Mn量は、好ましくは2.3%以下であり、より好ましくは2.0%以下である。
Pは、粒界破壊を起こしやすく靭性に悪影響を及ぼす不純物元素であるため、その含有量はできるだけ少ないことが好ましい。母材およびHAZ靭性を確保するためには、P量は0.015%以下とする。P量は、好ましくは0.013%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。
Sは、Mn硫化物を形成して母材靭性を劣化させる元素であるので、その含有量はできるだけ少ないことが好ましい。母材の靭性を確保するためには、S量は0.01%以下とする。S量は、好ましくは0.008%以下であり、より好ましくは0.006%以下である。
Alは、脱酸剤として有用な元素であるとともに、鋼板のミクロ組織化による疲労強度向上効果も発揮する元素である。そこでAl量は0.005%以上とする。Al量は、好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。一方、Al量が過剰になると島状マルテンサイト(MA)が多く生成して疲労特性に悪影響を与える。そこでAl量は0.06%以下とする。Al量は、好ましくは0.05%以下であり、より好ましくは0.045%以下である。
Nは、Al等と結合して窒化物を形成することによって鋼板組織を微細化させ、母材およびHAZの靭性、疲労特性を確保する上で有用な元素である。そこでN量を0.0038%以上とする。N量は、好ましくは0.0040%以上であり、より好ましくは0.0045%以上、さらに好ましくは0.0050%以上である。一方、N量が過剰になると、固溶N量が増大して歪時効が起こることによって母材およびHAZの靭性が劣化する。そこでN量は0.010%以下とする。N量は、好ましくは0.009%以下であり、より好ましくは0.008%以下である。
Cu、Ni、Cr、およびMoは、いずれも鋼板の高強度化に有効な元素であり、その効果はこれらの含有量が増加するにつれて増大する。このような観点から、Cu量、Ni量、Mo量はいずれも0.1%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.2%以上である。Cr量は、0.2%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.5%以上である。一方、これらの元素が過剰になると、強度の過大な上昇を招き、母材およびHAZ靭性を劣化させる。そこで、Cu、Ni、およびCrはいずれも2%以下とすることが好ましい。Mo量は0.6%以下とすることが好ましい。Cu量およびNi量はいずれも1.0%以下とすることがより好ましく、さらに好ましくは0.8%以下である。Cr量はより好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.3%以下である。Mo量はより好ましくは0.5%以下であり、さらに好ましくは0.4%以下である。
V、Nb、およびTiはいずれも炭窒化物として析出し、γ粒の粗大化を抑制することによって母材靭性を良好にするのに有効な元素である。そこで、V量、Nb量はいずれも0.010%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.020%以上である。Ti量は0.010%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.012%以上である。一方、V量、Nb量、およびTi量が過剰になるとHAZ組織の粗大化を招き、HAZ靭性が劣化する。そこでV量およびTi量はいずれも0.1%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.08%以下であり、さらに好ましくは0.06%以下である。Nb量は0.060%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.050%以下であり、さらに好ましくは0.040%以下である。
Bは、母材およびHAZの靭性を向上させるのに有効な元素である。そこで、B量は0.0005%以上含有させるのが好ましく、より好ましくは0.0008%以上である。一方、B量が過剰になるとオーステナイト粒界でのBN偏析を招き、母材およびHAZの靭性を劣化させる。そこでB量は、0.005%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.0045%以下であり、さらに好ましくは0.0040%以下であり、一層好ましくは0.0020%以下である。
Caは、硫化物の形態を制御してHAZの靭性向上に寄与する元素である。そこで、Ca量は0.0005%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0010%以上である。しかしながら、その含有量が過剰であると粗大介在物が生成して母材およびHAZの靭性が劣化する。そこでCa量は、0.010%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.0080%以下であり、さらに好ましくは0.0050%以下である。
Mgは、酸化物および窒化物を形成し、オーステナイト粒の粗大化を抑制することによってHAZ特性(靭性)を向上させる。そこでMg量は、0.0005%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0010%以上である。一方、Mg量が過剰になると介在物が粗大化して靭性が劣化する。そこで、Mg量は0.005%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.0040%以下であり、さらに好ましくは0.0030%以下である。
ZrおよびHfはいずれも、窒化物を形成してオーステナイト粒を微細化し、HAZ特性改善に有効な元素である。そこでZr量は0.001%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.002%以上である。Hf量は0.0010%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.0015%以上である。一方、Zr量およびHf量が過剰になると却ってHAZ特性を劣化させるようになるので、Zr量は0.1%以下とすることが好ましく、Hf量は0.05%以下とすることが好ましい。Zr量はより好ましくは0.05%以下であり、さらに好ましくは0.02%以下である。Hf量はより好ましくは0.03%以下であり、さらに好ましくは0.02%以下である。
REM(希土類元素)は、介在物の形態を制御して、母材およびHAZの靭性向上に寄与する元素である。そこで、REM量は0.005%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.010%以上である。一方、REM量が過剰になると、酸化物が粗大になることによって母材およびHAZの靭性を劣化させる。そこで、REM量は0.02%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.018%以下である。なお、本発明においてREMは、周期律表3族に属するスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)およびランタノイド系列希土類元素(原子番号57〜71)の元素のいずれをも用いることができる。
各鋼板のt/4位置(t:板厚)付近から25mm×25mm×10mmのサイズの試験片を採取し、圧延面に平行な面を電解研磨して測定面とし、X線回折法を用いて転位密度を測定した。より具体的にはCAMP−ISIJ vol.17(2004)p.396−399に記載される方法に従って、(200)面の半価幅から転位密度を測定した。
得られた各鋼板のt/4位置(t:板厚)付近からJIS 14A号試験片を採取し、最高加熱温度:1200℃、800℃〜500℃の冷却時間Tc:100秒の条件の熱サイクルを与えた後、JIS Z2241に従って、引張試験を行い、HAZの引張強度(TS)および均一伸び(UE)を測定した。試験装置は、島津製作所製AG−IS 250kN オートグラフ引張試験機を用い、試験温度は室温とした。
各鋼板のt/4位置(t:板厚)から図1に示す形状の試験片を採取し、切欠き周辺部のみ上記(2)とほぼ同様の熱履歴となるように部分加熱を行い、島津製作所製±50kN電気油圧サーボ式疲労試験機を用いて、以下の条件で疲労試験を行った。疲労特性はHAZ強度の影響を受けるものであり、その影響を除くため試験応力/HAZ強度が0.5の時の亀裂発生サイクル数によって疲労特性を評価した。
試験環境:室温、大気中
制御方法:荷重制御
制御波形:正弦波
応力比:R=0.1
試験速度:10Hz
結果を、母材の引張強度(TS)と(転位密度/1010)/DIの値とともに、表3、4に示す。
Claims (8)
- C :0.02〜0.15%(質量%の意味。以下、同じ)、
Si:0.30%以下(0%を含む)、
Mn:1.0〜2.5%、
P :0.015%以下(0%を含まない)、
S :0.01%以下(0%を含まない)、
Al:0.005〜0.06%、
N :0.0038〜0.010%
を夫々含有するとともに、残部は不可避的不純物であり、
鋼組織中の転位密度が1×1010〜10×1010(/cm2)であり、
前記転位密度と、下記式(1)および(2)で表されるDI値およびH値が
H値/DI値≦23 および
2.2≦(転位密度/1010)/DI値≦6.5
の関係を満たすことを特徴とする疲労特性に優れた厚鋼板。
DI値=(C/10)0.5×(1.7−0.09×6)×(0.7×Si+1)×F1×(0.35×Cu+1)×(0.36×Ni+1)×(2.16×Cr+1)×(3×Mo+1)×(1.75×V+1)×(200×F2+1) ・・・(1)
但し、上記式(1)において
F1は、
Mn<1.2の場合は、F1=3.33×Mn+1
Mn≧1.2の場合は、F1=5.1×(Mn−1.2)+5
F2は、
B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14<0の場合は、F2=0
B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14≧0の場合は、F2=B−0.3×(N−Ti×14/48)×11/14
H値=−153×C+112×Si−3×Mn−63×Cu+240×Al−15×Ni−305×Cr+1791×Mo−110×Nb−758×Ti−1929×B+1068×N+4 ・・・(2)
(上記式(1)、(2)中、元素名は各元素の含有量(質量%)を表し、含有していない元素がある場合、その含有量については0質量%として計算するものとする。) - 更に、Cu:2%以下(0%を含まない)、Ni:2%以下(0%を含まない)、Cr:2%以下(0%を含まない)、およびMo:0.6%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1に記載の厚鋼板。
- 更に、V:0.1%以下(0%を含まない)、Nb:0.060%以下(0%を含まない)、およびTi:0.1%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する請求項1または2に記載の厚鋼板。
- 更に、B:0.005%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の厚鋼板。
- 更に、Ca:0.010%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の厚鋼板。
- 更に、Mg:0.005%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜5のいずれかに記載の厚鋼板。
- 更に、Zr:0.1%以下(0%を含まない)および/またはHf:0.05%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜6のいずれかに記載の厚鋼板。
- 更に、REM:0.02%以下(0%を含まない)を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の厚鋼板。
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