JP2011241430A - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板は、質量%で、C:0.12%以上0.20%以下、Si:0.10%超0.40%以下、Mn:2.2%以上3.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.001%以上0.10%以下、B:0.0010%超0.010%以下、N:0.01%以下を含有する化学組成を有し、未再結晶フェライトの面積率が0.5%未満であり、残留オーステナイトの面積率が5.0%以下であり、引張強度が980MPa以上であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板
【選択図】 図1
Description
別の観点からは、本発明は、下記工程(A)〜(C)を備えることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
(A)上述した本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板における鋼板の化学組成を有する鋼材に、圧延開始温度:1100℃以上1300℃以下、仕上温度:800℃以上1000℃以下、巻取温度:400℃以上750℃以下の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に、Ac3点および810℃以上950℃以下の温度域に5秒間以上150秒間以下保持する焼鈍を施した後、得られた冷延焼鈍鋼板を、800℃から580℃までの平均冷却速度が3℃/秒以上50℃/秒以下で、400℃以上560℃以下の温度域まで冷却し、引き続いて、400℃以上600℃以下の温度域にめっき浴浸漬時を含めて25秒間以上500秒間以下保持する連続溶融亜鉛めっき工程。
1.化学組成
はじめに、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の化学組成を上述のように規定した理由を説明する。
Cは、強度向上に寄与する元素であり、材質安定性を確保しつつ、鋼板の引張強度を980MPa以上にするために、0.12%以上含有させる。しかし、0.20%を超えてCを含有させると溶接性が劣化する。このため、C含有量は0.12%以上0.20%以下とする。好ましくは、0.19%以下である。なお、0.13%以上のCを含有させると、引張強度を1180MPa以上にすることが容易になる。このため、C含有量は0.13%以上とすることが好ましい。
Siは、延性をさほど劣化させることなく、あるいは、延性を向上させて、めっき密着性向上に寄与する元素であり、本発明では0.10%超含有させる。しかし、0.40%を超えてSiを含有させると、めっきの濡れ性が劣化し、不めっき欠陥が製造時に多発する。このため、Si含有量は、0.10%超0.40%以下とする。なお、0.20%以上のSiを含有させると、TRIP効果が助長され、延性が一層向上する。このため、Si含有量は0.20%以上とすることが好ましい。
Mnは、強度向上に寄与する元素であり、材質安定性を確保しつつ、鋼板の引張強度を980MPa以上にするために、2.2%以上含有させる。しかし、3.0%を超えてMnを含有させると、転炉における鋼の溶解や精錬が困難になるだけでなく、バンド組織が発達するとともに、不安定なオーステナイトやMnSが生成し、曲げ性が著しく劣化する。このため、Mn含有量は2.2%以上3.0%以下とする。好ましくは、2.9%以下である。なお、2.4%以上のMnを含有させると、引張強度を1180MPa以上にすることが容易になる。このため、Mn含有量は2.4%以上とすることが好ましい。
Pは、一般には不可避的に含有される不純物であるが、固溶強化元素でもあり、鋼板の強化に有効であるので、積極的に含有させてもかまわない。しかし、P含有量が0.025%超となると溶接性の劣化が著しくなる。このため、P含有量は0.025%以下とする。好ましくは、0.015%以下である。一方、より確実に鋼板を強化するには、P含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
Sは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、曲げ性および溶接性の観点からは低いほど好ましい。このため、S含有量は0.005%以下とする。好ましくは、0.003%以下である。さらに好ましくは、0.0015%以下である。
Alは、鋼を脱酸させるために添加される元素であり、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させるのに有効に作用する元素でもあるため、sol.Al含有量は0.001%以上とする。しかし、sol.Al含有量が0.10%を超えると、溶接性が劣化するとともに、酸化物系介在物が増加するために表面性状が劣化する。このため、sol.Al含有量は0.001%以上0.10%以下とする。なお、好ましくは、0.020%以上0.080%以下である。
Bは、本発明において重要な元素であり、後述するように、最適な製造条件を選択することによって、引張強度が上昇しても、結晶粒界や異相界面が強化され、曲げ性および耐水素脆化特性の劣化が抑制される。したがって、目的とする曲げ性と耐水素脆化特性を達成するために、Bを0.0010%超含有させる。しかし、0.010%を超えてBを含有させると、粗大な析出物が結晶粒界に生成し、曲げ性が劣化する。このため、B含有量は0.0010%超0.010%以下とする。上記効果をより確実に得るため、さらに、引張強度を1180MPa以上にするために、B含有量は0.0015%以上とすることが好ましい。
Nは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、曲げ性の観点からは低いほど好ましい。そのため、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは、0.006%以下である。
Ti、NbおよびVは、いずれも、強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。1180MPa以上の引張強度を確保するには、Ti、NbおよびVの1種または2種以上を含有させることが有効である。上記効果をより確実に得るため、Ti、NbおよびVの何れかの元素を0.003%以上含有させることが好ましい。しかし、それぞれ0.5%を超えて含有させると、Ti、NbやVを含む介在物が増加するために表面性状が劣化する。このため、Ti、NbおよびVの含有量はそれぞれ0.5%以下とすることが好ましい。
Cr、Mo、CuおよびNiは、いずれも、強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。1180MPa以上の引張強度を確保するには、Cr、Mo、CuおよびNiの1種または2種以上含有させることが有効である。上記効果をより確実に得るため、いずれかの元素を0.005%以上含有させることが好ましい。しかし、0.5%を超えてCr含有させると、曲げ性やめっき密着性が劣化し、0.5%を超えてCuやMo、あるいは、1.0%を超えてNiを含有させても、上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるだけでなく、熱間圧延や冷間圧延が困難となる。このため、Cr、Mo、CuおよびNiの1種または2種以上を上記の量で含有することが好ましい。
Ca、Mg、REMおよびZrは、いずれも、介在物制御、特に介在物の微細分散化に寄与し、曲げ性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。しかし、過剰に含有させると表面性状を劣化させるため、それぞれの元素の含有量を0.01%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るため、いずれかの元素を0.0005%以上含有させることが好ましい。
Biは、曲げ性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。しかし、過剰に含有させると、熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難になるため、Bi含有量を0.05%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るため、Bi含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の鋼組織の限定理由について説明する。
上記組成を有する本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、未再結晶フェライトの面積率が0.5%未満であり、残留オーステナイトの面積率が5.0%以下を含有する鋼組織を有する。
引張強度が980MPa以上となる領域で、目的とする曲げ性を達成するには、未再結晶フェライトの面積率を0.5%未満とする(0%の場合も含む)。ここで述べる未再結晶フェライトは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、図1のように観察される圧延方向に伸長した組織である。
引張強度が980MPa以上となる領域で、目的とする曲げ性を達成するには、オーステナイトの面積率を5%以下とする(0%の場合も含む)。なお、冷却停止温度を後述する範囲にすると、オーステナイトの平均C濃度が0.4質量%以上1質量%以下になる。平均C濃度が0.4質量%以上1%質量以下のオーステナイトは不安定であり、引張強度の上昇に効果的であるが、曲げ性を劣化させる。
本発明に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板のめっき被膜の化学組成は特に限定されない。めっき被膜が合金化溶融亜鉛めっきである場合における好適な条件を以下に示す。
被膜となる亜鉛めっき層中のFe含有量が8質量%未満の場合、合金化処理後のめっき層の表層部に軟質部位が形成されやすくなり、摺動性が低下して被膜のめっき層が母材の鋼板との界面から剥離することによるフレーク状の剥離が増加する。したがって、Fe含有量は8質量%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは9.5質量%以上である。一方、Fe含有量が15質量%を超えると、鋼板に曲げ加工が施された場合、曲げ部の内側で合金化溶融亜鉛めっき層が圧縮変形を受けることによるパウダリング剥離量が増加する。このため、Fe含有量は15質量%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは14質量%以下である。
被膜となる亜鉛めっき層中のAl含有量が0.15質量%未満の場合、めっき浴中における合金層の発達の抑制効果が不十分となり、めっき付着量の制御が困難となる。したがって、Al含有量は0.15質量%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.20質量%以上、特に好ましくは0.25質量%以上である。一方、Al含有量が0.50質量%を超える場合、合金化速度が低下することから通常のライン速度では上記Fe含有量を実現するために合金化処理温度を540℃超とせざるを得なくなる場合があり、後述するように、鋼板の引張強度を980MPa以上とすることが困難になる。したがって、Al含有量は0.50質量%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.45質量%以下、特に好ましくは0.40質量%以下である。
被膜となる亜鉛めっき層中へは、合金化処理過程において、母材からSi、Mn、P、S、Ti、Nb、V、Cr、Mo、Cu、Ni、B、Ca、REM等がとりこまれるが、通常の条件で溶融めっきおよび合金化処理した際にめっき層中にとりこまれる範囲内であれば、めっき品質に悪影響を及ぼさないので、問題ない。ここでいう通常のめっき条件とは、後述するように、めっき浴温度が410℃以上490℃以下で、鋼板の侵入温度が410℃以上500℃以下、合金化温度が430℃以上540℃以下である。
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の限定理由について説明する。
前述した鋼組成を有する溶鋼を転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法でスラブ等の鋼素材とするのが好ましい。なお、連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法などを採用してもよい。この鋼素材に熱間圧延を施し熱延鋼板とする。熱間圧延は、鋳造された鋼素材を室温まで冷却せず温片のまま加熱炉に装入して加熱した後に圧延する直送圧延、あるいは、わずかの保熱を行った後、直ちに圧延する直接圧延を行うか、あるいは、一旦、鋼素材を冷却した後に再加熱して圧延を行ってもよい。このとき、粗圧延後、仕上圧延前の粗バーに対して、誘導加熱等により全長の温度均一化を図ると、特性変動を抑制することができるので好ましい。
再加熱する場合、引張強度を確保するため、B系の化合物を再固溶させる必要がある。このような効果は、本発明では、1100℃以上に加熱することで認められるが、1300℃超に加熱した場合、効果が飽和するだけでなく、スケールロスが増加する。このため、鋼素材の再加熱温度は1100℃以上1300℃以下とする。換言すれば、熱間圧延の開始温度は1100℃以上1300℃以下である。また、再加熱により前記再固溶を確実に行うためには、この加熱時間を10分間以上とすることが好ましく、過度のスケールロスを抑制するために10時間以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、30分間以上5時間以下である。もちろん、直送圧延または直接圧延を行う場合、B化合物が固溶している限り、そのまま圧延を開始すればよいが、その場合にも圧延開始温度としては、好ましくは、1100℃以上1300℃以下とする。
熱間圧延の仕上温度を800℃以上1000℃以下の範囲とする。仕上温度が800℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、操業できない。一方、1000℃を超えると粒界酸化が顕著となり、めっき密着性が劣化する。
巻取温度を400℃以上750℃以下の範囲とする。巻取温度が400℃未満では、硬質なベイナイトやマルテンサイトが生成し、その後の冷間圧延が困難となり、操業できない。また、巻取温度が750℃を超えると、粒界酸化が顕著となり、めっき密着性が劣化する。好ましくは、500℃以上700℃以下である。
Ac3点および810℃以上950℃以下の温度域で焼鈍を施す。焼鈍温度がAc3点未満または810℃未満では、未再結晶が残存し、均一な組織が得られなくなり、曲げ性が劣化する。また、焼鈍温度を950℃以下とすることにより、焼鈍炉の損傷を抑制して、生産性を向上させることができる。
上記焼鈍温度において、5秒間以上150秒間以下保持することにより焼鈍を施す。焼鈍時間が、5秒間未満では、コイル全体にわたる焼鈍温度の制御が困難になり、加工フェライトからオーステナイトへの変態が十分でないため、未再結晶が残存し、曲げ性や靭性が劣化する。しかし、焼鈍時間が150秒間を超えると、組織が粗大化し、耐水素脆化特性が劣化する。
焼鈍後の冷却について、800℃から580℃までの平均冷却速度を3〜50℃/秒とする。平均冷却速度を800℃から580℃までの温度域で規定する理由は、その温度域にて、オーステナイトがフェライトに変態しやすく、その温度域の冷却速度を制御することで、強度調整に有効なフェライトの性状が制御でき、材質安定性を確保しつつ、引張強度を980MPa以上にできるためである。しかし、平均冷却速度が3℃/秒未満では、引張強度の確保が困難になる。一方、50℃/秒超では、コイル全体にわたる冷却速度、冷却停止温度の制御が困難になり、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、操業できない。なお、800℃から580℃までの平均冷却速度を6℃/秒以上にすると、引張強度を1180MPa以上にすることが容易になる。このため、800℃から580℃までの平均冷却速度は6℃/秒以上50℃/秒とすることが好ましい。さらに好ましくは、6℃/秒以上30℃/秒以下である。
本発明では、冷却停止温度を400℃以上560℃以下の温度域とする。冷却停止温度が400℃未満では、めっき浴進入時の抜熱が大きく、操業できない。一方、冷却停止温度が560℃を超えると、操業が困難になるとともに、強度に寄与しないセメンタイトの析出が加速するため、強度確保が困難になる。さらに、粗大なセメンタイト析出および不安定なオーステナイト生成を抑制するため、540℃以下とするのが好ましい。なお、溶融亜鉛めっきでは、常法に従って、410℃以上490℃以下の溶融亜鉛めっき浴中に焼鈍した冷延鋼板を浸漬する。
上記冷却後、溶融亜鉛めっき処理、さらには必要に応じて合金化処理を施す。ここで、溶融亜鉛めっき浴の浴温が通常410℃以上490℃以下であることから、溶融亜鉛めっき浴からの抜熱が過大となって操業が困難になるのを避けるため、溶融亜鉛めっき浴浸漬前の温度は通常410℃以上500℃以下とされる。また、合金化処理温度は後述するように430℃以上540℃以下とすることが好ましい。このため、溶融亜鉛めっき処理、さらには必要に応じて合金化処理を施すために400℃以上600℃以下の温度域に不可避的に滞在させることになる。しかしながら、当該温度域はベイナイト変態およびセメンタイト析出が最も進行する温度域であるため、当該温度域における滞在時間の制御は極めて重要である。
めっき浴浸漬後に合金化処理を施す場合には、430℃以上540℃以下にて合金化処理する。合金化処理温度が430℃未満では、合金化未処理が発生し、鋼板の表面性状が劣化する。一方、合金化処理温度が540℃を超えると、めっき浴浸漬時から合金化処理に再加熱され、ベイナイト変態とセメンタイト析出が加速し、目的とする引張強度の確保が困難になる。合金化処理条件は、温度を500℃以上530℃以下とし、処理時間を5秒間以上60秒間以下とするのが好ましい。それにより、合金化度(めっき層のFe含有量)を8〜15%程度とするのが好ましい。
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により245mm厚のスラブとした。
(Ac3点の測定)
表2に示す化学組成と熱延条件が異なる32種類(表中H1〜H32)の熱延鋼板を用い、10℃/秒の昇温速度で加熱した際の膨張率変化を解析することによって、各供試鋼のAc3点を測定した。
各焼鈍冷延鋼板から、圧延方向に直角方向からJIS5号引張試験片を採取し、TS(引張強度)およびEL(全伸び)を測定した。
各焼鈍冷延鋼板から、曲げ稜線が圧延方向となるように、圧延方向に対して直角方向が長手方向となる曲げ試験片(幅40mm×長さ60mm×板厚1.2mm)を採取した。試験片の端面はシャー切断ままとした。先端に2.4mmの半径を持つ90゜のポンチで押し込み、曲げ試験を実施し、表面および端面の割れの有無を目視にて確認した。表面および端面のいずれにも割れが無いものを良好とし、表面および端面の少なくとも一方に割れがあるものを不良とした。
スポット溶接性は、溶接電極をドーム型先端直径6mm、加圧力を3.6kN、溶接電流を7.8kA、加圧時間を30cyc、溶接時間を(板厚(mm)/0.1+3)cyc、保持時間を5cycの条件で行った。溶接後、JIS Z 3136の引張せん断試験による引張荷重(TSS)と、JIS Z 3137の十字引張試験による引張荷重(CTS)を測定し、JIS Z 3140に規定されているTSSを満たし、かつ、延性比(CTS/TSS)が0.3以上を満たすものを良好とし、いずれか一つでも満たさないものを不良とした。
耐水素脆化特性は、曲げ試験と同じ短冊試験片を内周10mmで曲げ加工した後、スプリングバック分をボルトで締め込み、曲げ加工部に応力を負荷した試験片で評価した。試験片を0.1規定の塩酸中に浸漬し、100時間を超えても割れないものを良好とし、100時間以内に割れるものを不良とした。
合金化処理を施したサンプルを長手方向が圧延方向となるように20mm×100mm
に裁断し、サンスター(株)製の一液型エポキシ系構造用接着剤(商品名:E−6973
)を接着剤として用い、重ね代:12.5mm、接着剤膜厚:200μm、焼付条件:1
80×20分、引張速度:5mm/分、室温下の条件で長手方向に引張試験を実施した。
本試験の界面密着強度は、母材変形も加わるため基板強度の影響を受けるが、今回のよう
にYPが350MPa以上の母材では、殆ど無視できる。試験の結果、強度が20MPa
以上のものを良好とし、20MPa未満のものを不良とした。
各焼鈍冷延鋼板の圧延方向および圧延方向に対して直角方向から試験片を採取し、圧延方向断面、圧延方向に対して直角方向断面の組織を電子顕微鏡で観察し、8mm2の領域を写真撮影し、画像解析により未再結晶フェライトの面積率(表5中は未再結晶面積率)を調査した。
25mm×25mm×1.2mmの各焼鈍冷延鋼板片側に化学研磨を施して0.3mm減厚し、化学研磨後の鋼板表面に対しX線回折を三回実施し、得られたプロファイルを解析し、残留オーステナイト面積率(表5中は残留γ面積率)を平均した値を算出した。
これらの結果を表5および6に示す。
なお、表1〜6において下線を付された数値は、その数値により示される含有量、条件、または機械特性が本発明の範囲外であることを示している。
供試材No.7および28は、化学組成が発明で規定する範囲を外れるため、目標とする引張強度、曲げ性、溶接性および耐水素脆化特性であるものの、不めっきが溶融亜鉛めっき製造時に発生ずる、あるいは、密着性が悪かった。
供試材No.11、13、21、32および38は、製造条件が本発明で規定する範囲を外れるため、また、供試材No19は、B含有量が本発明で規定する範囲の上限を上回るため、供試材No.36は、Mn含有量が本発明で規定する範囲の上限を上回るため、曲げ性が悪かった。
供試材No.39および41は、化学組成が本発明で規定する範囲を外れるため、溶接性が悪かった。
Claims (6)
- 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板は、質量%で、C:0.12%以上0.20%以下、Si:0.10%超0.40%以下、Mn:2.2%以上3.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.001%以上0.10%以下、B:0.0010%超0.010%以下、N:0.01%以下を含有する化学組成を有し、未再結晶フェライトの面積率が0.5%未満であり、残留オーステナイトの面積率が5.0%以下であり、引張強度が980MPa以上であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1または請求項2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 前記化学組成が、質量%で、Bi:0.05%以下をさらに含有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
- 下記工程(A)〜(C)を備えることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
(A)請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の化学組成を有する鋼材に、圧延開始温度:1100℃〜1300℃、仕上温度:800℃〜1000℃、巻取温度:400〜750℃の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に、Ac3点および810℃以上950℃以下の温度域に5秒間以上150秒間以下保持する焼鈍を施した後、800℃から580℃までの平均冷却速度を3℃/秒以上50℃/秒以下として400℃以上560℃以下の温度域まで冷却し、引き続いて、400℃以上600℃以下の温度域にめっき浴浸漬時を含めて25秒間以上500秒間以下保持する連続溶融亜鉛めっき工程。
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