JP2011241430A - 高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】引張強度が980MPa以上で曲げ性に優れ、しかも溶接性など自動車用部材に求められる特性をバランスよく満たす高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供する。
【解決手段】鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板は、質量%で、C:0.12%以上0.20%以下、Si:0.10%超0.40%以下、Mn:2.2%以上3.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.001%以上0.10%以下、B:0.0010%超0.010%以下、N:0.01%以下を含有する化学組成を有し、未再結晶フェライトの面積率が0.5%未満であり、残留オーステナイトの面積率が5.0%以下であり、引張強度が980MPa以上であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板
【選択図】 図1

Description

本発明は、高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。具体的には、本発明は、引張強度が980MPa以上であり、曲げ性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関し、特に、自動車の車体のようにプレス成形、その中でも、従来困難であった曲げ成形が必要不可欠となる用途に好適な高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。ここで、本発明において、「高強度溶融亜鉛めっき鋼板」には「高強度合金化溶融亜鉛めっき鋼板」が含まれる。
近年、地球環境保護のために自動車の燃費向上が求められており、車体の軽量化および乗員の安全性確保のため、引張強度が980MPa以上である高強度鋼板、特に、防錆性を考慮した部材において、高強度溶融亜鉛めっき鋼板へのニーズが高まっている。さらに、サイドシルのように、乗客を保護する骨格部材において、引張強度が1180MPa以上である高強度溶融亜鉛めっき鋼板の適用も検討されている。
しかし、自動車用部材に供される鋼板は、高強度であるだけでは不十分であり、プレス成形性、溶接性、めっき密着性等といった、部品成形時に要求される様々な各種性能を満足するものでなければならない。特に、部品の成形プロセスを考慮すると、曲げ成形の使用頻度が最も高く、それによって様々な形状の部品に成形されるので、曲げ性に優れる高強度溶融亜鉛めっき鋼板が必要になる。しかし、引張強度の上昇に伴い、曲げ性は劣化する。また、目的とする曲げ成形が可能であったとしても、高強度部材は成形後のスプリングバック量の絶対値が大きくなるので、安定して部品精度を確保することは困難になる。部品精度を高めるためには、量産時における僅かな化学組成と製造条件のばらつきに対する引張強度の変動が小さい、すなわち、材質安定性に優れる鋼板が必要になる。しかし、引張強度の上昇に伴い、曲げ性だけでなく、材質安定性も劣化する。
一方、溶融亜鉛めっき鋼板の製造プロセスは、再結晶温度からの冷却の際に、410℃以上の溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、必要に応じて、次いで合金化を目的として浸漬後に再加熱するという特徴的な温度履歴を有する。この製造プロセスにおいて、冷却が400℃以上で一旦中断されるので、高強度鋼板に適する化学組成の鋼を製造する場合に、この温度履歴は本質的にベイナイト変態が進行しやすい熱処理条件であるといえる。しかし、その中断時間は比較的短いので、殆どの鋼において、ベイナイト変態は完了しない。このように、ベイナイトが中途に生成すると、粗大なセメンタイトだけでなく、Cがオーステナイトに濃化し、島状マルテンサイトを含む組織が得られやすくなる。粗大なセメンタイトや島状マルテンサイトは非常に強度の高い硬質相であり、不均一変形を助長する。したがって、高強度溶融めっき鋼板の曲げ性を改善することは極めて困難である。また、溶融亜鉛めっき鋼板の製造プロセスにおいて、再結晶温度からの冷却速度は通常0.1〜50℃/秒の範囲であり、高強度冷延鋼板の製造プロセスより小さく、引張強度が980MPa以上の高強度溶融亜鉛めっき鋼板を製造することそのものが困難である。
引張強度が980MPa以上の高強度溶融亜鉛めっき鋼鈑の曲げ性、さらには、材質安定性の改善について、特定の化学組成を有する鋼に対して、焼鈍条件と冷却速度を適正化するというアプローチがとられ、特許文献1に記載されているように、Mnを積極的に添加する、さらには、TiとNbを微量に添加する鋼をAc点以上900℃以下に均熱することが良いとされている。一方、特許文献2において、さらに、Crを積極的に添加する鋼を特定の条件で焼鈍し、鋼を微細なベイナイトやマルテンサイトを含む組織にすると、引張強度が980MPa以上でありながら、曲げ性だけでなく、溶接性も改善できると記載されている。しかし、上述したように、Mnを多量に含有する高強度溶融亜鉛めっき鋼板の場合、400℃以上で冷却が一旦中断されることによって、ベイナイトが生成し、オーステナイトの安定化が促進され、不安定なオーステナイトを多く含む組織になる。せん断加工によって、シャー切断された端面において、不安定なオーステナイトは極めて硬質なマルテンサイトに変態し、曲げ性を著しく劣化させる。したがって、特許文献1により開示された技術において、実際の自動車用部材成形プロセスに準ずるように、せん断加工されたシャー切断端面の鋼板を曲げ加工すると、割れが散発し、曲げ性は不芳であると容易に予想される。さらに、焼鈍時間を150秒超としたのでは、組織が粗大化し、耐水素脆化特性が劣化し、後述するように、自動車部材として適さない。また、Crを積極的に添加すると、熱間圧延時、あるいは、焼鈍時の粒界酸化が促進され、打ち抜き端面の性状が劣化し、特許文献2により開示された技術においても、曲げ性を改善することができない。また、この文献に記載の技術では、粒界酸化によって、鋼鈑とめっき界面近傍に多くのボイドが内在するので、めっき密着性は不芳であると容易に予想される。
特許文献3において、特定の割合となるように、CrとMoを複合添加することによって、引張強度が980MPa以上でありながら、耐パウダリング性のようなめっき密着性が改善できると記載されている。しかし、特許文献3により開示された技術のように、Crの多量含有は曲げ性の低下が懸念され、Moを必須とすることは経済性の観点から好ましくなくい。さらに、C含有量が比較的少ないため材質安定性が劣化し、引張強度が980MPa以下になることが多くなる。
一方、引張強度が980MPa以上である高強度鋼板において、部品成形時に要求される様々な各種性能だけでなく、耐水素脆化特性や耐衝撃特性のように、自動車部材として要求される性能も満足するものでなければならない。特許文献4において、Mnを積極的に添加し、めっき浸漬から合金化処理に至る温度履歴を制御することによって、引張強度が980MPa以上でありながら、耐水素脆化特性、さらには、延性が改善できると記載されている。しかし、前述のように、Mnを多量に含有させることは曲げ性を確保する観点から不利である。
一方、焼き戻しマルテンサイト組織を活用する革新的なアプローチがあり、特許文献5において、M点以下に冷却した後に再加熱することによって、引張強度が980MPa以上でありながら、曲げ性が改善できると記載されている。しかし、特許文献5により開示された技術のように、亜鉛めっき工程の後に急速冷却および再加熱を必要とする製造方法では、生産性に劣り、量産性に優れるとはいえない。また、特許文献5の実施例によれば、引張強度が980MPa以上を達成するには、実質的にCを0.20%超とすることが必要とされるが、このように高いC含有量では、溶接性が著しく劣化してしまう。
これらの特許文献に開示される従来技術から明らかなように、既存の溶融亜鉛めっき鋼板の製造プロセスにおいて、引張強度が980MPa以上であり、自動車部材に適した鋼板を生産することは実質的に不可能であった。
特開平5−179402号公報 特開2008−280608号公報 特開2006−283128号公報 特開平6−145893号公報 特開平6−108152号公報
本発明は、上述したように従来の技術では製造することが困難であった、引張強度が980MPa以上で曲げ性に優れ、しかも溶接性など自動車用部材に求められる特性をバランスよく満たす高強度溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。ここで、「曲げ性に優れる」とは、試験片の端面をシャー切断ままとし、90゜V曲げ試験の曲げ半径が2.0tにおいて、目視レベルで加工後の表面と端面に割れが出現しないことを意味する。したがって、特に断りがない限り、本明細書における曲げ性はそのような物性、実部材の観察によって評価される。なお、本発明に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板を、サイドシルのように、より高強度の自動車用部材に適用するには、曲げ性に優れ、引張試験が1180MPaであることが好ましい。
本発明は、化学組成のうち、C、Si、MnおよびB量を極めて限られた範囲に制御し、それに対する最適な製造条件を厳格に適用することによって、引張強度が980MPa以上であり、曲げ性が優れ、さらに、めっき密着性、溶接性、水素脆化特性のいずれもが自動車用部材としての必要な特性を満たす高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができるという知見に基づくものである。従来、そのような特性を同時に満足する高強度溶融亜鉛めっき鋼板を提供することは不可能であった。
本発明は、鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、この鋼板は、C:0.12%以上0.20%以下、Si:0.10%超0.40%以下、Mn:2.2%以上3.0以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.001%以上0.10%、B:0.0010超0.010%以下、N:0.01%以下を含有し、未再結晶フェライトの面積率が0.5%未満であり、残留オーステナイトの面積率が5.0%以下であり、引張強度が980MPa以上であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板である。
この本発明に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板では、化学組成が、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有することが好ましい。
これらの本発明に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板では、化学組成が、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有することが好ましい。
これらの本発明に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板では、化学組成が、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有することが好ましい。
これらの本発明に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板では、化学組成が、Bi:0.05%以下をさらに含有することが好ましい。
別の観点からは、本発明は、下記工程(A)〜(C)を備えることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
(A)上述した本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板における鋼板の化学組成を有する鋼材に、圧延開始温度:1100℃以上1300℃以下、仕上温度:800℃以上1000℃以下、巻取温度:400℃以上750℃以下の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
(B)前記熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
(C)前記冷延鋼板に、Ac点および810℃以上950℃以下の温度域に5秒間以上150秒間以下保持する焼鈍を施した後、得られた冷延焼鈍鋼板を、800℃から580℃までの平均冷却速度が3℃/秒以上50℃/秒以下で、400℃以上560℃以下の温度域まで冷却し、引き続いて、400℃以上600℃以下の温度域にめっき浴浸漬時を含めて25秒間以上500秒間以下保持する連続溶融亜鉛めっき工程。
さらに別の観点からは、本発明は、上述した本発明に係る製造方法により得られた溶融亜鉛めっき鋼板に430℃以上540℃以下の温度域で合金化処理を施すことを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法である。
本発明により、980MPa以上の引張強度を有し、曲げ性に優れ、さらに溶接性などの特性も併せ持つ高強度溶融亜鉛めっき鋼板を得ることができる。本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板は、産業上、特に、自動車分野において、広範に使用可能である。
本発明に係る未再結晶フェライトを含む鋼板の一例における圧延方向断面の観察画像である。
以下、本発明を実施するための形態を説明する。
1.化学組成
はじめに、本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板の化学組成を上述のように規定した理由を説明する。
(C:0.12%以上0.20%以下)
Cは、強度向上に寄与する元素であり、材質安定性を確保しつつ、鋼板の引張強度を980MPa以上にするために、0.12%以上含有させる。しかし、0.20%を超えてCを含有させると溶接性が劣化する。このため、C含有量は0.12%以上0.20%以下とする。好ましくは、0.19%以下である。なお、0.13%以上のCを含有させると、引張強度を1180MPa以上にすることが容易になる。このため、C含有量は0.13%以上とすることが好ましい。
(Si:0.10%超0.40%以下)
Siは、延性をさほど劣化させることなく、あるいは、延性を向上させて、めっき密着性向上に寄与する元素であり、本発明では0.10%超含有させる。しかし、0.40%を超えてSiを含有させると、めっきの濡れ性が劣化し、不めっき欠陥が製造時に多発する。このため、Si含有量は、0.10%超0.40%以下とする。なお、0.20%以上のSiを含有させると、TRIP効果が助長され、延性が一層向上する。このため、Si含有量は0.20%以上とすることが好ましい。
(Mn:2.2%以上3.0%以下)
Mnは、強度向上に寄与する元素であり、材質安定性を確保しつつ、鋼板の引張強度を980MPa以上にするために、2.2%以上含有させる。しかし、3.0%を超えてMnを含有させると、転炉における鋼の溶解や精錬が困難になるだけでなく、バンド組織が発達するとともに、不安定なオーステナイトやMnSが生成し、曲げ性が著しく劣化する。このため、Mn含有量は2.2%以上3.0%以下とする。好ましくは、2.9%以下である。なお、2.4%以上のMnを含有させると、引張強度を1180MPa以上にすることが容易になる。このため、Mn含有量は2.4%以上とすることが好ましい。
(P:0.025%以下)
Pは、一般には不可避的に含有される不純物であるが、固溶強化元素でもあり、鋼板の強化に有効であるので、積極的に含有させてもかまわない。しかし、P含有量が0.025%超となると溶接性の劣化が著しくなる。このため、P含有量は0.025%以下とする。好ましくは、0.015%以下である。一方、より確実に鋼板を強化するには、P含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
(S:0.005%以下)
Sは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、曲げ性および溶接性の観点からは低いほど好ましい。このため、S含有量は0.005%以下とする。好ましくは、0.003%以下である。さらに好ましくは、0.0015%以下である。
(sol.Al:0.001%以上0.10%以下)
Alは、鋼を脱酸させるために添加される元素であり、Ti等の炭窒化物形成元素の歩留まりを向上させるのに有効に作用する元素でもあるため、sol.Al含有量は0.001%以上とする。しかし、sol.Al含有量が0.10%を超えると、溶接性が劣化するとともに、酸化物系介在物が増加するために表面性状が劣化する。このため、sol.Al含有量は0.001%以上0.10%以下とする。なお、好ましくは、0.020%以上0.080%以下である。
(B:0.0010%超0.010%以下)
Bは、本発明において重要な元素であり、後述するように、最適な製造条件を選択することによって、引張強度が上昇しても、結晶粒界や異相界面が強化され、曲げ性および耐水素脆化特性の劣化が抑制される。したがって、目的とする曲げ性と耐水素脆化特性を達成するために、Bを0.0010%超含有させる。しかし、0.010%を超えてBを含有させると、粗大な析出物が結晶粒界に生成し、曲げ性が劣化する。このため、B含有量は0.0010%超0.010%以下とする。上記効果をより確実に得るため、さらに、引張強度を1180MPa以上にするために、B含有量は0.0015%以上とすることが好ましい。
(N:0.01%以下)
Nは、鋼に不可避的に含有される不純物であり、曲げ性の観点からは低いほど好ましい。そのため、N含有量は0.01%以下とする。好ましくは、0.006%以下である。
(Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上)
Ti、NbおよびVは、いずれも、強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。1180MPa以上の引張強度を確保するには、Ti、NbおよびVの1種または2種以上を含有させることが有効である。上記効果をより確実に得るため、Ti、NbおよびVの何れかの元素を0.003%以上含有させることが好ましい。しかし、それぞれ0.5%を超えて含有させると、Ti、NbやVを含む介在物が増加するために表面性状が劣化する。このため、Ti、NbおよびVの含有量はそれぞれ0.5%以下とすることが好ましい。
(Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上)
Cr、Mo、CuおよびNiは、いずれも、強度向上に寄与する元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。1180MPa以上の引張強度を確保するには、Cr、Mo、CuおよびNiの1種または2種以上含有させることが有効である。上記効果をより確実に得るため、いずれかの元素を0.005%以上含有させることが好ましい。しかし、0.5%を超えてCr含有させると、曲げ性やめっき密着性が劣化し、0.5%を超えてCuやMo、あるいは、1.0%を超えてNiを含有させても、上記効果が飽和してしまい、経済的に無駄であるだけでなく、熱間圧延や冷間圧延が困難となる。このため、Cr、Mo、CuおよびNiの1種または2種以上を上記の量で含有することが好ましい。
(Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上)
Ca、Mg、REMおよびZrは、いずれも、介在物制御、特に介在物の微細分散化に寄与し、曲げ性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。しかし、過剰に含有させると表面性状を劣化させるため、それぞれの元素の含有量を0.01%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るため、いずれかの元素を0.0005%以上含有させることが好ましい。
(Bi:0.05%以下)
Biは、曲げ性をさらに向上させる元素であり、必要に応じて含有させることができる任意元素である。しかし、過剰に含有させると、熱間加工性が劣化し、熱間圧延が困難になるため、Bi含有量を0.05%以下とすることが好ましい。上記効果をより確実に得るため、Bi含有量は0.0005%以上とすることが好ましい。
2.鋼組織
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の鋼組織の限定理由について説明する。
上記組成を有する本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板は、未再結晶フェライトの面積率が0.5%未満であり、残留オーステナイトの面積率が5.0%以下を含有する鋼組織を有する。
(未再結晶フェライトの面積率:0.5%未満)
引張強度が980MPa以上となる領域で、目的とする曲げ性を達成するには、未再結晶フェライトの面積率を0.5%未満とする(0%の場合も含む)。ここで述べる未再結晶フェライトは、走査型電子顕微鏡(SEM)によって、図1のように観察される圧延方向に伸長した組織である。
(オーステナイトの面積率:5%以下)
引張強度が980MPa以上となる領域で、目的とする曲げ性を達成するには、オーステナイトの面積率を5%以下とする(0%の場合も含む)。なお、冷却停止温度を後述する範囲にすると、オーステナイトの平均C濃度が0.4質量%以上1質量%以下になる。平均C濃度が0.4質量%以上1%質量以下のオーステナイトは不安定であり、引張強度の上昇に効果的であるが、曲げ性を劣化させる。
3.めっき被膜
本発明に係る高強度溶融亜鉛めっき鋼板のめっき被膜の化学組成は特に限定されない。めっき被膜が合金化溶融亜鉛めっきである場合における好適な条件を以下に示す。
(Fe:8質量%以上15質量%以下)
被膜となる亜鉛めっき層中のFe含有量が8質量%未満の場合、合金化処理後のめっき層の表層部に軟質部位が形成されやすくなり、摺動性が低下して被膜のめっき層が母材の鋼板との界面から剥離することによるフレーク状の剥離が増加する。したがって、Fe含有量は8質量%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは9.5質量%以上である。一方、Fe含有量が15質量%を超えると、鋼板に曲げ加工が施された場合、曲げ部の内側で合金化溶融亜鉛めっき層が圧縮変形を受けることによるパウダリング剥離量が増加する。このため、Fe含有量は15質量%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは14質量%以下である。
(Al:0.15質量%以上0.50質量%)
被膜となる亜鉛めっき層中のAl含有量が0.15質量%未満の場合、めっき浴中における合金層の発達の抑制効果が不十分となり、めっき付着量の制御が困難となる。したがって、Al含有量は0.15質量%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.20質量%以上、特に好ましくは0.25質量%以上である。一方、Al含有量が0.50質量%を超える場合、合金化速度が低下することから通常のライン速度では上記Fe含有量を実現するために合金化処理温度を540℃超とせざるを得なくなる場合があり、後述するように、鋼板の引張強度を980MPa以上とすることが困難になる。したがって、Al含有量は0.50質量%以下とすることが好ましい。さらに好ましくは0.45質量%以下、特に好ましくは0.40質量%以下である。
(その他)
被膜となる亜鉛めっき層中へは、合金化処理過程において、母材からSi、Mn、P、S、Ti、Nb、V、Cr、Mo、Cu、Ni、B、Ca、REM等がとりこまれるが、通常の条件で溶融めっきおよび合金化処理した際にめっき層中にとりこまれる範囲内であれば、めっき品質に悪影響を及ぼさないので、問題ない。ここでいう通常のめっき条件とは、後述するように、めっき浴温度が410℃以上490℃以下で、鋼板の侵入温度が410℃以上500℃以下、合金化温度が430℃以上540℃以下である。
4.製造方法
次に、本発明の高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法の限定理由について説明する。
前述した鋼組成を有する溶鋼を転炉、電気炉等の通常公知の溶製方法で溶製し、連続鋳造法でスラブ等の鋼素材とするのが好ましい。なお、連続鋳造法に代えて、造塊法、薄スラブ鋳造法などを採用してもよい。この鋼素材に熱間圧延を施し熱延鋼板とする。熱間圧延は、鋳造された鋼素材を室温まで冷却せず温片のまま加熱炉に装入して加熱した後に圧延する直送圧延、あるいは、わずかの保熱を行った後、直ちに圧延する直接圧延を行うか、あるいは、一旦、鋼素材を冷却した後に再加熱して圧延を行ってもよい。このとき、粗圧延後、仕上圧延前の粗バーに対して、誘導加熱等により全長の温度均一化を図ると、特性変動を抑制することができるので好ましい。
(鋼素材の圧延開始温度:1100℃以上1300℃以下)
再加熱する場合、引張強度を確保するため、B系の化合物を再固溶させる必要がある。このような効果は、本発明では、1100℃以上に加熱することで認められるが、1300℃超に加熱した場合、効果が飽和するだけでなく、スケールロスが増加する。このため、鋼素材の再加熱温度は1100℃以上1300℃以下とする。換言すれば、熱間圧延の開始温度は1100℃以上1300℃以下である。また、再加熱により前記再固溶を確実に行うためには、この加熱時間を10分間以上とすることが好ましく、過度のスケールロスを抑制するために10時間以下とすることが好ましい。さらに好ましくは、30分間以上5時間以下である。もちろん、直送圧延または直接圧延を行う場合、B化合物が固溶している限り、そのまま圧延を開始すればよいが、その場合にも圧延開始温度としては、好ましくは、1100℃以上1300℃以下とする。
(仕上温度:800℃以上1000℃以下)
熱間圧延の仕上温度を800℃以上1000℃以下の範囲とする。仕上温度が800℃未満では、圧延時の変形抵抗が大きく、操業できない。一方、1000℃を超えると粒界酸化が顕著となり、めっき密着性が劣化する。
(巻取温度:400℃以上750℃以下)
巻取温度を400℃以上750℃以下の範囲とする。巻取温度が400℃未満では、硬質なベイナイトやマルテンサイトが生成し、その後の冷間圧延が困難となり、操業できない。また、巻取温度が750℃を超えると、粒界酸化が顕著となり、めっき密着性が劣化する。好ましくは、500℃以上700℃以下である。
熱延鋼板は通常の方法で酸洗を施された後に冷間圧延が行われ、冷延鋼板とされる。連続焼鈍後の鋼板の組織を微細化するためには、冷間圧延の圧下率は30%以上とするのが好ましい。また、圧下率が70%を超えると、冷間圧延によって、鋼板が破断しやすくなる。なお、酸洗の前または後に、0〜5%程度の軽度の圧延を行い、形状を修正すると平坦確保の点で有利となる。また、この軽度の圧延により、酸洗性が向上し、表面濃化元素の除去が促進され、溶融めっきの密着性を向上させる効果がある。
このようにして得られた冷延鋼板は、本発明によれば、Ac点および810℃以上950℃以下の温度域に5秒間以上150秒間以下保持する焼鈍を施した後、800℃から580℃までの平均冷却速度を3℃/秒以上50℃/秒以下として、400℃以上560℃以下の温度域まで冷却した後に溶融亜鉛めっきを施す。Ac点以上、かつ、810℃以上950℃以下の温度域に5秒間以上150秒間以下の均熱による焼鈍熱処理と溶融亜鉛めっき処理とは連続溶融亜鉛めっきラインで行うことが好ましい。以下、この処理を連続溶融亜鉛めっきラインで行う場合を例にとって説明する。
本発明では、Mnを多量に含有させ、さらにBを含有させているため、加工フェライトの再結晶は著しく抑制される。そのため、焼鈍に際しての昇温時に加工歪が残存し、未再結晶粒の残存が著しく促進され、曲げ性や靭性が焼鈍条件の影響をうける。したがって、以下のような連続焼鈍条件にて目的とする性能が達成される。
(焼鈍温度:Ac点および810℃以上950℃以下)
Ac点および810℃以上950℃以下の温度域で焼鈍を施す。焼鈍温度がAc点未満または810℃未満では、未再結晶が残存し、均一な組織が得られなくなり、曲げ性が劣化する。また、焼鈍温度を950℃以下とすることにより、焼鈍炉の損傷を抑制して、生産性を向上させることができる。
(焼鈍時間:5秒間以上150秒間以下)
上記焼鈍温度において、5秒間以上150秒間以下保持することにより焼鈍を施す。焼鈍時間が、5秒間未満では、コイル全体にわたる焼鈍温度の制御が困難になり、加工フェライトからオーステナイトへの変態が十分でないため、未再結晶が残存し、曲げ性や靭性が劣化する。しかし、焼鈍時間が150秒間を超えると、組織が粗大化し、耐水素脆化特性が劣化する。
(800℃から580℃までの平均冷却速度:3℃/秒以上50℃/秒以下)
焼鈍後の冷却について、800℃から580℃までの平均冷却速度を3〜50℃/秒とする。平均冷却速度を800℃から580℃までの温度域で規定する理由は、その温度域にて、オーステナイトがフェライトに変態しやすく、その温度域の冷却速度を制御することで、強度調整に有効なフェライトの性状が制御でき、材質安定性を確保しつつ、引張強度を980MPa以上にできるためである。しかし、平均冷却速度が3℃/秒未満では、引張強度の確保が困難になる。一方、50℃/秒超では、コイル全体にわたる冷却速度、冷却停止温度の制御が困難になり、連続溶融亜鉛めっきラインにおいて、操業できない。なお、800℃から580℃までの平均冷却速度を6℃/秒以上にすると、引張強度を1180MPa以上にすることが容易になる。このため、800℃から580℃までの平均冷却速度は6℃/秒以上50℃/秒とすることが好ましい。さらに好ましくは、6℃/秒以上30℃/秒以下である。
(冷却停止温度:400℃以上560℃以下)
本発明では、冷却停止温度を400℃以上560℃以下の温度域とする。冷却停止温度が400℃未満では、めっき浴進入時の抜熱が大きく、操業できない。一方、冷却停止温度が560℃を超えると、操業が困難になるとともに、強度に寄与しないセメンタイトの析出が加速するため、強度確保が困難になる。さらに、粗大なセメンタイト析出および不安定なオーステナイト生成を抑制するため、540℃以下とするのが好ましい。なお、溶融亜鉛めっきでは、常法に従って、410℃以上490℃以下の溶融亜鉛めっき浴中に焼鈍した冷延鋼板を浸漬する。
(400℃以上600℃以下の温度域における滞在時間:25秒間以上500秒間以下、ただし、めっき浸漬時も含める)
上記冷却後、溶融亜鉛めっき処理、さらには必要に応じて合金化処理を施す。ここで、溶融亜鉛めっき浴の浴温が通常410℃以上490℃以下であることから、溶融亜鉛めっき浴からの抜熱が過大となって操業が困難になるのを避けるため、溶融亜鉛めっき浴浸漬前の温度は通常410℃以上500℃以下とされる。また、合金化処理温度は後述するように430℃以上540℃以下とすることが好ましい。このため、溶融亜鉛めっき処理、さらには必要に応じて合金化処理を施すために400℃以上600℃以下の温度域に不可避的に滞在させることになる。しかしながら、当該温度域はベイナイト変態およびセメンタイト析出が最も進行する温度域であるため、当該温度域における滞在時間の制御は極めて重要である。
400℃以上600℃以下の温度域における滞在時間が25秒間未満では、前述した不安定なオーステナイトが多量に残存し、曲げ性が劣化する。一方、滞在時間が500秒間超では、引張強度の確保が困難になる。なお、材質安定性確保の点から、400℃以上600℃以下の温度域における滞在時間は30秒間以上180秒間以下とするのがさらに好ましい。
(合金化処理温度:430℃以上540℃以下)
めっき浴浸漬後に合金化処理を施す場合には、430℃以上540℃以下にて合金化処理する。合金化処理温度が430℃未満では、合金化未処理が発生し、鋼板の表面性状が劣化する。一方、合金化処理温度が540℃を超えると、めっき浴浸漬時から合金化処理に再加熱され、ベイナイト変態とセメンタイト析出が加速し、目的とする引張強度の確保が困難になる。合金化処理条件は、温度を500℃以上530℃以下とし、処理時間を5秒間以上60秒間以下とするのが好ましい。それにより、合金化度(めっき層のFe含有量)を8〜15%程度とするのが好ましい。
なお、焼鈍温度にまで加熱するに際して、平均昇温速度を1℃/秒以上とするのが好ましい。平均昇温速度が1℃/秒未満では、昇温中に不均一な粒成長が生じ、不均一な組織となり、靭性が低下する。
連続溶融亜鉛めっき処理後、さらに調質圧延を伸び率0.05〜1%の範囲で行うことが好ましい。調質圧延によって降伏点伸びが抑制されるとともに、降伏強度が調整される。
このように、鋼組成の調整、熱間圧延と冷間圧延後の連続焼鈍−溶融亜鉛めっき条件の適正化により、引張強度980MPa以上と高強度で、曲げ性、めっき密着性、溶接性、さらに、焼鈍時間の適正化により、耐水素脆化特性も良好な溶融亜鉛めっき鋼板が得られる。
さらに、本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
表1に示す化学成分を有する鋼を転炉で溶製し、連続鋳造により245mm厚のスラブとした。
得られたスラブを表2に示す条件にて熱間圧延し、2.6mm厚の熱延鋼板を製板した。
得られた熱延鋼板を酸洗し、冷間圧延し、1.2mm厚の冷延鋼板を製板した。実験室にて、得られた冷延鋼板を表3に示す条件にて加熱、焼鈍、冷却した。さらに、それ以降は、合金化溶融亜鉛めっき処理中の熱履歴を模擬するように、表3に示す冷却停止温度で冷却後から浸漬開始まで所定の時間(表3中は浸漬前保持時間)保持し、想定めっき浴温である460℃まで4秒かけて冷却し、その温度で2秒保持し、続いて表2に示す合金化処理温度まで4秒かけて加熱し、合金化処理を模擬するように、その温度で5秒保持し、平均冷却速度20℃/秒で室温まで冷却し、焼鈍冷延鋼板を作製した。さらに、焼鈍冷延鋼板を伸び率0.1%で調質圧延し、各種評価用試験片を準備した。
本例において作製した焼鈍冷延鋼板は、溶融亜鉛めっきが施されていないが、合金化溶融亜鉛めっき鋼板と同じ熱履歴を受けているので、鋼板の機械的性質、溶接性および耐水素脆化特性は、同じ熱履歴を有する合金化溶融亜鉛めっき鋼板と実質的に同一である。
各種製造条件で得られた焼鈍冷延鋼板に対して、引張試験、曲げ稜線が圧延方向となるような曲げ試験を実施し、機械特性を評価した。また、後述するように、溶接性および耐水素脆化特性を評価した。さらに、目標とする引張強度、曲げ性、溶接性、耐水素脆化特性であった冷延鋼板に対し、表4に示す条件で、連続溶融亜鉛めっきラインにて溶融亜鉛めっきを施した後、不めっきの有無を確認するとともに、めっき密着性を評価した。
[試験方法]
(Ac点の測定)
表2に示す化学組成と熱延条件が異なる32種類(表中H1〜H32)の熱延鋼板を用い、10℃/秒の昇温速度で加熱した際の膨張率変化を解析することによって、各供試鋼のAc点を測定した。
(引張試験)
各焼鈍冷延鋼板から、圧延方向に直角方向からJIS5号引張試験片を採取し、TS(引張強度)およびEL(全伸び)を測定した。
(曲げ試験)
各焼鈍冷延鋼板から、曲げ稜線が圧延方向となるように、圧延方向に対して直角方向が長手方向となる曲げ試験片(幅40mm×長さ60mm×板厚1.2mm)を採取した。試験片の端面はシャー切断ままとした。先端に2.4mmの半径を持つ90゜のポンチで押し込み、曲げ試験を実施し、表面および端面の割れの有無を目視にて確認した。表面および端面のいずれにも割れが無いものを良好とし、表面および端面の少なくとも一方に割れがあるものを不良とした。
(溶接性評価試験)
スポット溶接性は、溶接電極をドーム型先端直径6mm、加圧力を3.6kN、溶接電流を7.8kA、加圧時間を30cyc、溶接時間を(板厚(mm)/0.1+3)cyc、保持時間を5cycの条件で行った。溶接後、JIS Z 3136の引張せん断試験による引張荷重(TSS)と、JIS Z 3137の十字引張試験による引張荷重(CTS)を測定し、JIS Z 3140に規定されているTSSを満たし、かつ、延性比(CTS/TSS)が0.3以上を満たすものを良好とし、いずれか一つでも満たさないものを不良とした。
(耐水素脆化特性評価試験)
耐水素脆化特性は、曲げ試験と同じ短冊試験片を内周10mmで曲げ加工した後、スプリングバック分をボルトで締め込み、曲げ加工部に応力を負荷した試験片で評価した。試験片を0.1規定の塩酸中に浸漬し、100時間を超えても割れないものを良好とし、100時間以内に割れるものを不良とした。
(めっき密着性評価)
合金化処理を施したサンプルを長手方向が圧延方向となるように20mm×100mm
に裁断し、サンスター(株)製の一液型エポキシ系構造用接着剤(商品名:E−6973
)を接着剤として用い、重ね代:12.5mm、接着剤膜厚:200μm、焼付条件:1
80×20分、引張速度:5mm/分、室温下の条件で長手方向に引張試験を実施した。
本試験の界面密着強度は、母材変形も加わるため基板強度の影響を受けるが、今回のよう
にYPが350MPa以上の母材では、殆ど無視できる。試験の結果、強度が20MPa
以上のものを良好とし、20MPa未満のものを不良とした。
(未再結晶フェライトの面積率)
各焼鈍冷延鋼板の圧延方向および圧延方向に対して直角方向から試験片を採取し、圧延方向断面、圧延方向に対して直角方向断面の組織を電子顕微鏡で観察し、8mmの領域を写真撮影し、画像解析により未再結晶フェライトの面積率(表5中は未再結晶面積率)を調査した。
(オーステナイト面積率)
25mm×25mm×1.2mmの各焼鈍冷延鋼板片側に化学研磨を施して0.3mm減厚し、化学研磨後の鋼板表面に対しX線回折を三回実施し、得られたプロファイルを解析し、残留オーステナイト面積率(表5中は残留γ面積率)を平均した値を算出した。
(試験結果の説明)
これらの結果を表5および6に示す。
なお、表1〜6において下線を付された数値は、その数値により示される含有量、条件、または機械特性が本発明の範囲外であることを示している。
表4における供試材No.1〜4、8〜10、12、14、14〜18、20、22、26、29、31、33、34、37および40は、本発明の条件を全て満足する本発明例の鋼板である。
一方、供試材No.5、23、24、30および35は、製造条件が本発明で規定する範囲を外れるため、目的とする引張強度が得られなかった。
供試材No.7および28は、化学組成が発明で規定する範囲を外れるため、目標とする引張強度、曲げ性、溶接性および耐水素脆化特性であるものの、不めっきが溶融亜鉛めっき製造時に発生ずる、あるいは、密着性が悪かった。
供試材No.6および25は、化学組成が本発明で規定する範囲を外れるため、目的とする引張強度が得られなかった。
供試材No.11、13、21、32および38は、製造条件が本発明で規定する範囲を外れるため、また、供試材No19は、B含有量が本発明で規定する範囲の上限を上回るため、供試材No.36は、Mn含有量が本発明で規定する範囲の上限を上回るため、曲げ性が悪かった。
供試材No.27は、B含有量が本発明で規定する範囲の下限を下回るため、曲げ性と耐水素脆化特性が悪かった。
供試材No.39および41は、化学組成が本発明で規定する範囲を外れるため、溶接性が悪かった。
本発明例の鋼板のうち、C、Mnの含有量が上述した好ましい範囲であり、強化に有効なTi:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有する、あるいは、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有し、800℃から580℃までの平均冷却速度が6℃/秒以上である供試材No.1、2、8、9、14、15、18、31、37および40は、引張強度が1180MPa以上であって、曲げ性に優れた好ましい鋼板である。

Claims (6)

  1. 鋼板の表面に溶融亜鉛めっき層を備える溶融亜鉛めっき鋼板において、前記鋼板は、質量%で、C:0.12%以上0.20%以下、Si:0.10%超0.40%以下、Mn:2.2%以上3.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、sol.Al:0.001%以上0.10%以下、B:0.0010%超0.010%以下、N:0.01%以下を含有する化学組成を有し、未再結晶フェライトの面積率が0.5%未満であり、残留オーステナイトの面積率が5.0%以下であり、引張強度が980MPa以上であることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  2. 前記化学組成が、質量%で、Ti:0.5%以下、Nb:0.5%以下およびV:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  3. 前記化学組成が、質量%で、Cr:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:1.0%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1または請求項2に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  4. 前記化学組成が、質量%で、Ca:0.01%以下、Mg:0.01%以下、REM:0.01%以下およびZr:0.01%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をさらに含有する、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  5. 前記化学組成が、質量%で、Bi:0.05%以下をさらに含有する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の高強度溶融亜鉛めっき鋼板。
  6. 下記工程(A)〜(C)を備えることを特徴とする高強度溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法:
    (A)請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載の化学組成を有する鋼材に、圧延開始温度:1100℃〜1300℃、仕上温度:800℃〜1000℃、巻取温度:400〜750℃の熱間圧延を施して熱延鋼板とする熱間圧延工程;
    (B)前記熱延鋼板に冷間圧延を施して冷延鋼板とする冷間圧延工程;および
    (C)前記冷延鋼板に、Ac点および810℃以上950℃以下の温度域に5秒間以上150秒間以下保持する焼鈍を施した後、800℃から580℃までの平均冷却速度を3℃/秒以上50℃/秒以下として400℃以上560℃以下の温度域まで冷却し、引き続いて、400℃以上600℃以下の温度域にめっき浴浸漬時を含めて25秒間以上500秒間以下保持する連続溶融亜鉛めっき工程。
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