JP2011239750A - インプリント異常症の指標としてのzdbf2メチル化異常の検査方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】インプリント異常症の指標となる遺伝子異常の新たな検査方法の提供。
【解決手段】ヒト生体試料由来のゲノムDNA抽出サンプルについて、ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域におけるメチル化状態を検出し、そのゲノムDNA抽出サンプル中のメチル化率をインプリント異常症指標の検査値として取得することを含む、インプリント異常症指標の検査方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、インプリント異常症の指標としてのメチル化異常の検査方法に関する。
精子や卵子を実験室で操作(体外受精など)する生殖補助治療(ART)は、今や不妊症患者にとって重要な治療法の1つとなっている。しかし近年、ART治療により産まれた子に、先天奇形、低出生体重児、その他の新生児における周産期合併症の発生頻度が高いという報告が多数見られる。また従来は稀であったベックウィズ・ウィーデマン症候群やアンジェルマン症候群などのインプリント病(インプリント異常症)の発生頻度の増加も指摘されている。
ゲノムインプリント(遺伝子刷り込み)とは、特定の遺伝子について、定められた一方の親(父又は母)から継承した遺伝子のみが選択的に機能し、他方の遺伝子は機能しないというアレル特異的発現が見られる現象である。インプリントは、哺乳類胎児の正常な発生、胎盤機能又は神経行動学的発達において重要な役割を果たす。ゲノムインプリントを受ける遺伝子(インプリント遺伝子)は、2本あるアレル(対立遺伝子)のうち特定の片親由来のものが識別されて、片親性発現を示す。そしてこのようなインプリント遺伝子の片親性発現には、アレル特異的メチル化領域(differentially methylation region;DMR)でのDNAメチル化が必須であることが、マウスを使ったこれまでの研究から明らかになっている。すなわちインプリント遺伝子は、メチル化を受けたアレルからは発現せず、メチル化を受けないアレルのみから特異的に発現(片親性発現)される。DMRは遺伝子のプロモーター領域やイントロン等に多く存在し、特に、CpG部位(CpGジヌクレオチド、CG配列)が密集したCpGアイランドでのDNAメチル化が重要と考えられている。インプリントに関してはDMR内のCpG部位のDNAメチル化が最もよく研究されている。
インプリント遺伝子のDMRにおけるアレル特異的メチル化状態は、始原生殖細胞において一旦リセット(インプリントの消去)され、その後、配偶子形成・成熟過程で各インプリント遺伝子について性特異的にインプリントが獲得されることで再確立される。母性インプリント遺伝子(母親由来アレルのみがメチル化され不活化される遺伝子)は卵子ではメチル化されるが、精子ではメチル化されない(卵子型インプリント)。同様に父性インプリント遺伝子(父親由来アレルのみがメチル化され不活化される遺伝子)は精子ではメチル化されるが、卵子ではメチル化されない(精子型インプリント)。卵子及び精子で確立したそれぞれのインプリント(性特異的なメチル化状態)は、受精後の着床初期に起こるリプログラミング(ゲノム全体の脱メチル化)の影響を受けず、そのメチル化は安定的に維持される。
ヒトインプリント遺伝子に関する報告は多数為されている。例えば、英国MRC(Mammalian Genetics Unit)のWWWサイト(http://www.mgu.har.mrc.ac.uk/research/imprinting/imprin-viewdatagenes.html)やオタゴ大学(ニュージーランド)のWWWサイト(http://igc.otago.ac.nz/Search.html)などを含む様々な学術用ウェブサイトにヒトを含む多様な生物由来のインプリント遺伝子のリストが掲載されている他、インプリント遺伝子に関する数多くの論文が発表されている。例えば、ヒトZDBF2は、父性インプリント遺伝子の1つとして報告されている(非特許文献1)。配偶子形成・胚形成過程でのヒトインプリント遺伝子のメチル化状態に関する情報はまだ限られているが、正常な精子形成過程では減数分裂過程に入る以前に、SNRPN(母性インプリント遺伝子)ではメチル化が消去され(非特許文献2)、H19(父性インプリント遺伝子)はメチル化を獲得する(非特許文献3及び4)という報告などもある。さらに、インプリント遺伝子のDMRにおけるメチル化異常は、インプリント病を初めとする様々な疾患、発達異常、悪性腫瘍などと関連することも報告されている(非特許文献5)。例えば、ヒト及びマウスのPEG1のDMRは、PEG1遺伝子のプロモーターからエクソン1及びイントロン1にかけて存在し、その機能する方のアレルである父性アレルは通常メチル化されないが、その父性アレルがメチル化によって不活化される場合には胎児は発育遅延を生じ、胎児死亡例が増加する。多くのインプリント遺伝子が新生児の成長や発生の調節において重要な役割を果たすことが分かってきており、その機能情報は例えば英国MRC(Mammalian Genetics Unit)のWWWサイトhttp://www.mgu.har.mrc.ac.uk/research/imprinting/function.htmlから入手できる。Marquesらは、乏精子症患者や正常精子を有する少数の不妊症患者の精子においてH19のインプリント異常が見出されたことを報告した(非特許文献4)。一方で、不妊症患者の精子ではインプリント遺伝子のメチル化は正常であったとの報告もあり(非特許文献6)、不妊症患者の精子におけるメチル化状態についてはまだ十分な解析はなされていないのが現状である。本発明者らはARTの際の過剰な排卵誘発が特定のインプリント遺伝子のメチル化に影響を及ぼすことも報告しており(非特許文献7)、生殖細胞においてインプリント異常が生じる原因は様々と考えられる。
本発明者らは、不妊症患者精子における母性インプリント遺伝子PEG1、LIT1、ZAC、PEG3及びSNRPN、並びに父性インプリント遺伝子H19及びGTL2のアレル特異的メチル化領域(DMR)のメチル化異常から、当該精子におけるインプリント異常発生リスクを判定する方法を開発している(特許文献1)。しかし、インプリント異常は精子のみで生じるものではないため、インプリント異常症の診断指標をより高精度にかつ簡便に検出できる臨床検査法の開発がなおも必要とされている。
特開2009−165409号公報
Kobayashi H., et al., Genomics (2009) 93:461-472 Manning M., et al, Urol. Int. (2001) 67:151-155 Kerjean A., et al., Hum. Mol. Genet. (2000) 9:2183-2187 Marques C.J., et al., Lancet (2004) 363:1700-1702 Paulsen M. and Ferguson-Smith A.C., J. Pathol. (2001) 195:97-110 Hartmann S., et al., Mol. Hum. Reprod. (2006) 12:407-411 Sato A., et al., Hum. Reprod. (2007) 22:26-35
本発明は、インプリント異常症の指標となる遺伝子異常の新たな検査方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ZDBF2遺伝子のメチル化異常がインプリント異常症と関連していることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下を包含する。
[1] ヒト生体試料由来のゲノムDNA抽出サンプルについて、ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域におけるメチル化状態を検出し、そのゲノムDNA抽出サンプル中のメチル化率をインプリント異常症指標の検査値として取得することを含む、インプリント異常症指標の検査方法。
この検査方法において、生体試料は、男性不妊症患者の精液であってよい。あるいは生体試料は、卵巣癌組織若しくは子宮体癌組織又はそれらの癌の疑いがある組織に由来する試料であってもよい。生体試料は、非癌性の体細胞組織由来の生体試料であってもよい。
この検査方法の好ましい実施形態では、ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域におけるメチル化状態の検出は、配列番号1の5270位〜5271位(CpG1部位)、5294位〜5295位(CpG2部位)、5303位〜5304位(CpG3部位)、5316位〜5317位(CpG4部位)、5348位〜5349位(CpG5部位)、5356位〜5357位(CpG6部位)、及び5363位〜5364位(CpG7部位)のCpG部位から選択される少なくとも1つについて行うことができる。
この検査方法では、メチル化状態の検出において、バイサルファイト処理したDNAを鋳型として前記アレル特異的メチル化領域を含む配列を核酸増幅する工程を含んでもよい。この核酸増幅は、一実施形態では、配列番号2及び配列番号3で示される塩基配列をそれぞれ含むプライマーからなるプライマー・セットを用いて行うことができる。
この検査方法の一つの実施形態では、メチル化状態の検出が、以下のa)〜c)の少なくとも1つのプローブ・セット:
a) 配列番号4及び配列番号5で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
b) 配列番号6及び配列番号7で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
c) 配列番号8及び配列番号9で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット
を用いて、増幅した核酸とハイブリダイゼーションさせる工程をさらに含むことも好ましい。
[2] 以下のa)〜c)のいずれかである、インプリント異常症指標の検査用プローブ・セット。
a) 配列番号4及び配列番号5で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
b) 配列番号6及び配列番号7で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
c) 配列番号8及び配列番号9で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット
[3] 以下のa)〜c)の少なくとも1つのプローブ・セットを含む、インプリント異常症指標の検査用キット。
a) 配列番号4及び配列番号5で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
b) 配列番号6及び配列番号7で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
c) 配列番号8及び配列番号9で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット
本発明の方法では、ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域におけるDNAメチル化率を取得することにより、インプリント異常症の良好な指標をもたらすことができる。
図1は、1人の正常男性患者の精子サンプル由来DNAにおけるZDBF2遺伝子のDMRについてのバイサルファイト-シークエンス法での解析結果を示す図である。正常精子由来DNAのZDBF2遺伝子のDMRについての解析結果を左パネルに示す。縦列は配列決定したクローン、横列は各CpG部位の位置を示す。コントロールとしては正常白血球由来DNAのZDBF2遺伝子のDMRについてのバイサルファイト-シークエンス法での解析結果を右パネルに示す。黒丸はメチル化CpG部位、白丸は非メチル化CpG部位を表す。 図2は、メチル化(-)検出プローブに対するメチル化(+)検出プローブの蛍光強度比率からメチル化率を算出するために作成した検量線を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、生体試料(通常はヒト生体試料)由来のゲノムDNA抽出サンプルについて、ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域におけるメチル化状態を検出し、そのゲノムDNA抽出サンプル中のDNAメチル化率をインプリント異常症指標の検査値として取得(算出)することを含む、インプリント異常症指標の検査(検出)方法に関する。
本発明の方法では、任意の生体試料由来のゲノムDNA抽出サンプルをこの検査(検出)に用いることができる。生体試料としては、限定するものではないが、精液等の精子サンプル(精子集団)や卵細胞等の生殖細胞試料;胎児又は胚由来細胞を含む羊水、へその緒等の胎児由来細胞試料;血液、腹水、唾液等の体液試料;癌組織(好適例としては、卵巣癌組織若しくは子宮体癌組織)又は癌の疑いがある組織に由来する試料;口腔粘膜細胞、毛髪、皮膚等の体細胞含有試料が例として挙げられる。生体試料は生殖細胞を含む試料(例えば検体)であってもよいし、体細胞を含む試料(例えば検体)であってもよい。生体試料は、癌組織又は癌の疑いがある検体組織に由来する試料であってもよいし、非癌性組織(例えば非癌性の体細胞組織)由来の試料であってもよい。本発明において、癌組織とは、癌(悪性腫瘍)であるか又はその可能性が濃厚と判定された組織をいう。また非癌性組織とは、癌(悪性腫瘍)でない組織又は癌である可能性が低い組織をいう。また体細胞組織由来の試料とは、精子若しくは卵子等の生殖細胞又はそれらの前駆細胞等の他の生殖系列細胞を含まない試料(例えば検体)をいう。生体試料は、男性又は女性のいずれの性別の被験者に由来するものであってもよい。生体試料は、胎児、新生児、乳児、幼児、若年者、青年、成人者、高齢者等の任意の年齢の被験者に由来するものであってよい。生体試料は、生体試料は、何らかの疾患、障害又は不調を有する患者由来であってもよいし、健康又は健常な被験者由来であってもよい。生体(好ましくはヒト生体)から採取した生体組織又は細胞集団それ自体であってもよいし、そこから特定の細胞集団等を濃縮、分離、単離、精製等したものであってもよい。
例えば、本発明の方法では、男性不妊症患者の精液等の精子サンプルからゲノムDNAを抽出し、そのDNA抽出物のサンプル(DNA抽出サンプル)を、インプリント遺伝子ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域(DMR)におけるメチル化状態の検出に用いることができる。精子からのDNAの抽出は、限定するものではないが、例えばBahnak B.R., et al., Nucleic Acids Res. (1988) 16:1208に記載の方法に従って行うことができる。DNAを抽出するための精子は、体細胞の混入を避けるため、精液中の運動性良好な精子のみをスイムアップ法等により選別したものを用いてもよい。抽出したDNAについては、常法によりさらに精製してもよい。
本発明の方法で被験対象となる男性不妊症患者とは、不妊症カップルを構成する男性患者である。本発明において不妊症カップルとは、1年間夫婦生活を営んでいても妊娠しないヒトの男女と定義される。本発明における男性不妊症患者には、不妊原因が男性にあることが示されている患者の他、不妊原因が不明の不妊症カップルの男性患者や、不妊原因が女性患者にあることが示されているが不妊治療が成功していない不妊症カップルの男性患者なども含まれる。本発明の方法は、男性不妊症患者の中でも乏精子症患者に適用する場合に、特に好適に使用することができる。乏精子症患者ではインプリント遺伝子ZDBF2のDMRにおいて、より高頻度にDNAメチル化異常(メチル化の低減)が生じるためである。本発明において乏精子症患者とは、顕微鏡下での精液検査で精子数(精子濃度)が20×106/ml未満であった患者を指し、ここではさらに重症乏精子症患者(5×106/ml未満)と中等度乏精子症患者(5〜20×106/ml)とに分けられる。
本発明の方法では、ヒト由来の生体試料(例えば癌組織又は体細胞組織由来の試料)から常法によりゲノムDNAを抽出し、そのDNA抽出物のサンプル(ゲノムDNA抽出サンプル)を、インプリント遺伝子ZDBF2のアレル特異的メチル化領域(DMR)におけるメチル化状態の検出に用いることもできる。
父性インプリント遺伝子であるZDBF2遺伝子では、父親由来遺伝子のDMRはメチル化されて遺伝子が不活化され、DMRがメチル化されていない母親由来遺伝子のみが発現される。従って、精液等の精子サンプル中に含まれる、ZDBF2のDMRがメチル化された精子細胞の割合は、正常であれば理論上は100%である。この割合に大幅に変化が認められる場合はメチル化異常が存在することになる。
父性インプリント遺伝子として知られるZDBF2のヒト由来の転写領域(mRNA領域)の配列及びDMRの塩基配列は、それぞれ、GenBankアクセッション番号NP_065974(又はNM_020923)及びAC007383で参照できる配列中に開示されている。AC007383はヒト第2染色体由来のBACクローンRP11-310K15の完全長塩基配列を示しており、ZDBF2遺伝子のエクソン1(NM_020923に示す配列の1〜148位の領域)はその213789〜213936位に当たる。
本発明の方法において検査対象となるZDBF2のDMRは、ヒト第2染色体上のZDBF2遺伝子の上流領域に存在し、GenBankアクセッション番号AC007383で示される配列(ゲノム配列)上では195223〜195432位の領域である。本明細書では、便宜上、GenBankアクセッション番号AC007383で示される配列の190001位以降の塩基配列(190001〜214978位の配列)を配列番号1で示す。本発明におけるZDBF2のDMRは、この配列番号1の5223〜5432位に当たる。またZDBF2遺伝子のエクソン1(AC007383の213789〜213936位)は配列番号1の23789〜23936位に当たる。
本発明の方法では、そのZDBF2のDMR内のメチル化を受ける7つのCpG部位から選択される少なくとも1つのCpG部位について、メチル化状態を検出することが好ましい。それらのCpG部位は、具体的には、CpG1部位:AC007383の塩基配列の195270位〜195271位(配列番号1の5270位〜5271位)、CpG2部位:AC007383の195294位〜195295位(配列番号1の5294〜5295位)、CpG3部位:AC007383の195303位〜195304位(配列番号1の5303〜5304位)、CpG4部位:AC007383の195316位〜195317位(配列番号1の5316〜5317位)、CpG5部位:AC007383の195348位〜195349位(配列番号1の5348〜5349位)、CpG6部位:AC007383の195356位〜195357位(配列番号1の5356〜5357位)、及びCpG7部位:AC007383の195363位〜195364位(配列番号1の5363〜5364位)である。
なお、本発明において配列番号"X"の「"Y"〜"Z"位」とは、配列番号"X"で示す塩基配列の1番目の塩基(又はアミノ酸残基)を1位としたときにY番目(Y位)からZ番目(Z位)までの塩基配列(又はアミノ酸配列)をいう。
本方法では、インプリント遺伝子ZDBF2のDMRにおけるメチル化状態を、公知のDNAメチル化解析法を用いて検出することができる。典型的には、本発明の方法においてメチル化状態の検出を行う際には、まず、バイサルファイト処理したDNA(ここでは、前記のゲノムDNA抽出サンプルをバイサルファイト処理したもの)を鋳型として用いて、ZDBF2のアレル特異的メチル化領域(DMR)を含む配列について核酸増幅(一般的にはPCR増幅)する工程を含むことが好ましい。DNAのバイサルファイト(亜硫酸水素塩)処理は、例えば、EZ DNA Methylation Kit(Zymo Research)を用い、添付の使用説明書に記載の手順に従ってバイサルファイト処理を行うこともできる。このキットを使用したバイサルファイト処理の手順の例としては、まず500pgのゲノムDNAにM-Dilution Buffer(同キットに同封されている)を加え37℃で15分間インキュベートし、ゲノムDNAの1本鎖化を行えばよい。次いで、CT Conversion Reagent(同キットに同封されている)を加え50℃で12〜16時間インキュベートし、ゲノムDNA中の非メチル化シトシンのウラシルへの塩基置換を誘起する。その後、4℃で10分間インキュベートし、反応を停止させる。反応停止後、M-Binding Buffer(同キットに同封されている)を添加・混合後、Zymo-Spin I Column(同キットに同封されている)に移し、遠心分離(10000 g、30秒間)により、ゲノムDNAをカラム中のメンブランに結合させる。M-Wash Buffer(同キットに同封されている)で1回洗浄後、M-Desulphonation Buffer(同キットに同封されている)を加え、室温(20〜30℃)で15分間インンキュベートし、脱スルホン化を行う。インキュベート終了後、M-Wash Buffer(同キットに同封されている)で2回洗浄し、M-Elution Buffer(同キットに同封されている)を加え、メンブランからバイサルファイト処理ゲノムDNAを溶出させればよい。
このバイサルファイト処理により、ゲノムDNA抽出サンプル中のZDBF2遺伝子のDMRにおいて非メチル化シトシン塩基がウラシル塩基に置換(変換)されるが、メチル化されたシトシン残基は置換されることなくシトシン残基のまま維持されることになる。そしてバイサルファイト処理したDNAを鋳型としたDNAポリメラーゼを用いた核酸増幅により、ゲノムDNA抽出サンプル中のZDBF2遺伝子のDMRに含まれていた非メチル化シトシン残基のみがチミン残基に変換された配列を有する増幅産物が得られる。このような増幅産物を解析すれば、個々のDMRにおけるメチル化状態を容易に調べることができる。本発明では、ゲノムDNA抽出サンプルをバイサルファイト処理した後、それを鋳型として用いて、メチル化されている可能性のある領域をPCR増幅して増幅産物を得る上記の方法を、バイサルファイト-PCRと称する。
バイサルファイト-PCRに用いるプライマーは、ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域(DMR)を、そのDMR内のメチル化を受けるCpG部位の少なくとも1つ(メチル化状態を調べる対象である1つ以上のCpG部位)を含む配列について増幅するように、当業者であれば容易に設計することができる。より具体的には、上述したCpG1〜CpG7部位の少なくとも1つ(例えば2つ又は3つ以上)、好ましくはCpG1〜CpG7部位全てを含む、DMRの全体又はその一部の領域を増幅するように設定する。簡単に説明すれば、バイサルファイト処理により、メチル化されたシトシン残基(典型的にはCpG部位のシトシン残基)以外のシトシン残基(非メチル化シトシン)のみがウラシル残基に置換されることを考慮して、父性アレルにおいて正常であればメチル化を受けるCpG部位のシトシン残基以外のシトシン残基(非メチル化シトシン残基)のみをチミン残基に置換した塩基配列を想定し、その塩基配列に基づいて増幅配列の両側にプライマー配列を設計すればよい。ここで本発明に係るプライマーを構成するオリゴヌクレオチドは、RNA又はDNA等の任意の核酸であってよいが、DNAが好ましい。プライマー長は、限定するものではないが、通常は15〜40bp、好ましくは18bp〜30bpである。限定するものではないが、配列番号2で示される塩基配列を含むプライマー及び配列番号3で示される塩基配列を含むプライマーからなるプライマー・セットをこの核酸増幅に好適に使用することができる。この増幅断片は、例えば、CpG1〜CpG7部位を含むDMR領域を解析する場合に好ましい。
このようにして得られた増幅断片について、Sanger法やマクサム・ギルバート法等の公知の塩基配列決定法により、例えば市販の自動シークエンサー(ABI Prism 3130x/Genetic Analyser(Applied Biosystems)等)を用いて、塩基配列決定してもよい。その場合、該増幅産物は、塩基配列決定の前に公知の組換えベクター等にクローニングすることが好ましいが、ダイレクトシークエンス法によって塩基配列を決定してもよい。増幅産物について決定した塩基配列を、増幅したDMRの元の塩基配列と比較したときに、シトシン残基、特にDMRのCpG部位に含まれているシトシン残基が増幅断片でチミン残基に塩基置換されているか否かを判定することにより、メチル化の有無を決定できる。所定のCpG部位のシトシン残基が増幅断片の配列においてチミン残基に塩基置換されている場合には、そのシトシン残基はDMRでメチル化されていなかったこと、逆に、シトシン残基が増幅断片の配列においてチミン残基に塩基置換されずに保持された場合には、そのシトシン残基はDMRでメチル化されていたことが示される。本発明では、このように、バイサルファイト-PCRによって得た核酸増幅断片について塩基配列決定(シークエンス)を行うことによるメチル化解析法を、バイサルファイト-シークエンス法と称する。バイサルファイト-シークエンス法により、DMR中の個々のシトシン残基(特に、各CpG部位のシトシン残基)についてのメチル化異常を検出できる。
本発明の方法では、バイサルファイト処理後のゲノムDNA抽出サンプル中のゲノムDNA、好ましくは、上記のバイサルファイト-PCRで得られたゲノムDNAからの増幅産物について、ZDBF2のDMRにおけるメチル化状態を検出し、ゲノムDNA抽出サンプル中のメチル化率を算出することが好ましい。
ZDBF2のDMRにおけるメチル化状態の検出は、好ましくは、ZDBF2のDMR内のメチル化を受けるCpG部位の少なくとも1つについて実施することができる。メチル化状態の検出は、好ましくは、各DNA分子の各CpG部位についてメチル化の有無を検出し、定量的測定を行うことによって実施する。このようなメチル化の定量的測定は、限定するものではないが、バイサルファイト処理後のメチル化CpG部位を含む配列(メチル化シトシン残基は置換されず非メチル化シトシン残基のみがチミン残基に置換された配列)に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(メチル化(+)検出プローブ)と、その同じ領域について当該CpG部位がメチル化を受けなかった場合の配列(上記メチル化シトシン残基もチミン残基に置換された配列)に特異的なオリゴヌクレオチドプローブ(メチル化(-)検出プローブ)との組み合わせ(プローブ・セット)を使用して、ハイブリダイゼーション法に基づいて行うことができる。例えば、バイサルファイト処理後のゲノムDNAを、メチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブのそれぞれと高ストリンジェンシー条件でハイブリダイゼーションさせて、そのハイブリッドDNAを定量的に検出すればよい。
メチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブを含むプローブ・セットは、バイサルファイト-PCRに用いるプライマーの設計と同様にバイサルファイト処理後のゲノムDNAのZDBF2遺伝子のDMRの塩基配列に基づいて、当業者であれば容易に設計することができる。ここで本発明に係るプローブを構成するオリゴヌクレオチドは、RNA又はDNA等の任意の核酸であってよいが、DNAが好ましく、また一本鎖又は二本鎖核酸であってよいが一本鎖核酸が好ましい。本発明に係るプローブを構成するオリゴヌクレオチドの長さは、限定するものではないが、通常は15〜100bp、好ましくは18bp〜30bpである。限定するものではないが、例えば、CpG1部位のメチル化状態を検出するためのプローブ・セットの好ましい例としては、メチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブとして、配列番号4で示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブと配列番号5で示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブを含むプローブ・セットが挙げられる。また、例えば、CpG4部位のメチル化状態を検出するためのプローブ・セットの好ましい例としては、メチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブとして、配列番号6で示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブと配列番号7で示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブを含むプローブ・セットが挙げられる。また、例えば、CpG5部位のメチル化状態を検出するためのプローブ・セットの好ましい例としては、メチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブとして、配列番号8で示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブと配列番号9で示される塩基配列を含むオリゴヌクレオチドプローブを含むプローブ・セットが挙げられる。なお本発明においてプローブ及びプライマーの合成は、常法により、例えばオリゴヌクレオチド合成装置等を用いて行うことができる。
バイサルファイト処理後のゲノムDNAと、メチル化(+)検出プローブ又はメチル化(-)検出プローブのそれぞれとから形成されるハイブリッドDNAの定量的検出は、任意の方法を用いて行えばよいが、蛍光検出技術を用いて好適に行うことができる。本発明の方法では、例えば、Luminex(登録商標)法を用いてハイブリッドDNAの定量的検出を行うことも好ましい。Luminex(登録商標)法を用いてハイブリッドDNAの定量的検出を行うことを含むメチル化状態の検出方法の好ましい例としては、例えば、ビオチン標識プライマーを用いたゲノムDNAからのPCR増幅産物を、蛍光標識マイクロビーズに固定したメチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブとハイブリダイゼーション反応させた後、ストレプトアビジンで標識した別の蛍光色素と反応させて、フローメトリー(フローサイトメトリー)を利用したマイクロビースアレイ技術により蛍光検出することに基づくPCR-Luminex(ルミネックス)(登録商標)法(Luminex corp.)を用いてメチル化状態の検出を行う方法が挙げられる。
Luminex(登録商標)法は、それぞれ異なる色に着色された最大100種類の微粒子を使用し、フローメトリー技術を利用して、1つの反応系で最大100項目の解析を同時に行えるLuminex(登録商標)システム(Luminex社)を用いて検体の測定を行う方法である。Luminex(登録商標)システムでは、2種類の蛍光色素の濃度をそれぞれ10段階に設定し、その濃度を組み合わせて2種類の蛍光色素でマイクロビーズを染色することにより、読み取りセンサで識別可能な100種類の色情報を有するマイクロビーズを作製してそれを担体として使用する。典型的には、2種類の蛍光色素の蛍光波長はそれぞれ657nmと720nmであり、ビーズ識別の際には635nmの赤色レーザで励起してそれぞれ657nmと720nmの励起蛍光を読み取り、その蛍光強度の比率の違いから100種類のビーズの識別を行うことになる。Luminex(登録商標)システムでは、フローメトリーによってビーズを1粒ずつ流しながら、ビーズを染色(標識)した2種類の蛍光色素の励起蛍光を赤色レーザと読み取りセンサを用いて測定してビーズの識別を行うと共に、反応の結果としてビーズ上に結合した別の蛍光色素の励起蛍光量を緑色レーザーと読み取りセンサ(読取波長580nm)を用いて測定することにより、同一反応系内で反応させた各ビーズの種類と反応量を同時に測定することができる。
本発明においてメチル化状態の検出にLuminex法を使用する場合にメチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブを結合させるビーズとしては、例えば直径1〜20μmのマイクロビーズを使用できる。このようなマイクロビーズとしては任意の球形又は略球形の不活性担体を使用でき、例えばガラス製、ポリスチレン製、ポリメチルメタクリレート製等のものが挙げられる。粒径1〜10μm(例えば5〜6μm)のポリスチレン製マイクロビーズは特に好適に使用できる。とりわけ好適に使用可能なビーズとして、直径(粒径)5.6μmのポリスチレン製マイクロビーズであるLuminex(登録商標)ビーズが市販されている。このLuminex(登録商標)ビーズとして、カルボキシル基を導入したタイプのものと、アビジンを結合させたタイプのものを入手することができる。これらを用いればプローブ等の物質を容易にビーズ上に結合することができる。カルボキシルコートビーズの場合、ビーズ表面のカルボシキル基と、末端をアミノ化したオリゴヌクレオチドプローブとを共有結合させることによりビーズ上にプローブを結合できる。
本発明において蛍光検出に用いる蛍光色素としては、公知のものを使用することができるが、PCR-Luminex法を利用する場合、反応量測定の対象となるプライマー結合用の蛍光色素としては、通常、Luminex(登録商標)システムの励起用緑色レーザーの励起波長532nmであって読取波長580nmの条件に適合する蛍光色素を用いる。PCR-Luminex法においてプライマーと結合して使用され得るこのような蛍光色素の例としては、例えばR-フィコエリスリン、Alexa532、Cy3等が挙げられる。
本発明の方法の好ましい実施形態では、ZDBF2のDMRにおけるメチル化状態を、上記のように好ましくは定量的に測定し、その定量結果に基づいて、ゲノムDNA抽出サンプル中のメチル化率を算出する。メチル化率は、通常はCpG部位毎に算出すればよい。メチル化率の算出は、例えば、メチル化配列に対応するバイサルファイト処理後配列のDNAと非メチル化配列に対応するバイサルファイト処理後配列のDNAとを人工的に作製して各種混合比で混合した鋳型サンプルを調製し、それらをメチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブをそれぞれ用いたハイブリダイゼーションさせ、ハイブリッドDNAを定量して得られた測定値に基づいて作成した検量線に、生体試料由来のゲノムDNA抽出サンプルについて同様に測定したメチル化(+)検出プローブ及びメチル化(-)検出プローブをそれぞれ用いて得た定量値を外挿することにより行うことができる。検量線の作成等の詳細については後述の実施例を参照することができる。このようにしてゲノムDNA抽出サンプル中のメチル化率を検査値として取得することができる。ここで得られるメチル化率は、各生体試料中に含まれる、ZDBF2遺伝子のDMRについてメチル化されたDNAの割合を示す。
本発明では、このようにして得たメチル化率の検査値を、インプリント異常症の指標とすることができる。例えば、ZDBF2遺伝子のDMRは父性アレルがメチル化されることから、正常精子ではZDBF2遺伝子のDMRは理論値では100%メチル化される。本発明の方法では、精子サンプルにおけるZDBF2遺伝子のDMRでのメチル化率の低下を、精子のインプリント異常の高頻度発生を示す指標とすることができる。例えば、精子サンプル(生体試料)から抽出したゲノムDNAにおけるメチル化率が80%以下に低下した場合、その精子サンプル由来の患者では精子に高頻度なインプリント異常が生じており、子孫にインプリント異常症が発症するリスクが高いと判定することができる。精子サンプルに対するこの検査は、限定するものではないが、特に、ZDBF2遺伝子のDMRにおけるメチル化率の低下がより高頻度に認められる男性不妊症患者(とりわけ乏精子症患者)に適している。調べたCpG部位の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、さらに好ましくは調べたCpG部位の全て、最も好ましくはCpG1〜7の全てにおいて検出されたメチル化率の低下を、精子のインプリント異常の高頻度発生を示す指標として用いることができる。
ZDBF2遺伝子のDMRは父性アレルがメチル化されることから、正常な体細胞ではZDBF2遺伝子のDMRは理論値では50%メチル化される。そこで本発明の方法では、癌組織(例えば、卵巣癌組織若しくは子宮体癌組織)又はそれらの癌の疑いがある組織(生体試料)から抽出したゲノムDNAにおけるメチル化率の低下を、癌細胞でのインプリント異常(すなわちインプリント異常症に属する癌)を示す指標とすることができる。例えば、癌組織(例えば、卵巣癌組織若しくは子宮体癌組織)又はそれらの癌の疑いがある組織由来のゲノムDNA抽出サンプルでのメチル化率が80%以上に上昇した場合、インプリント異常が生じており、インプリント異常症に属する癌を発症している可能性が高いと判定することができる。調べたCpG部位の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、さらに好ましくは調べたCpG部位の全て、最も好ましくはCpG1〜7の全てにおいて検出されたメチル化率の低下を、癌細胞でのインプリント異常を示す指標として用いることができる。
本発明の方法はまた、非癌性の体細胞組織(生体試料)から抽出したゲノムDNAにおけるメチル化率の低下を、インプリント異常症を示す指標とすることもできる。例えば、非癌性の体細胞組織由来のゲノムDNA抽出サンプルでのメチル化率が80%以上に上昇した場合、インプリント異常症を発症している可能性が高いと判定することができる。父性インプリント遺伝子であるZDBR2のDMRにおけるメチル化率の異常は、その患者等の被験者がインプリントの獲得機構に関わる異常を有している可能性を示す。すなわち、当該メチル化率の異常は、その被験者がインプリント異常症、例えば、インプリント異常を伴う癌、ベックウィズ・ウィーデマン症候群、アンジェルマン症候群などを発症リスクが高いと判断する上でのよい指標となる。調べたCpG部位の少なくとも1つ、好ましくは2つ以上、より好ましくは3つ以上、さらに好ましくは調べたCpG部位の全て、最も好ましくはCpG1〜7の全てにおいて検出されたメチル化率の低下を、非癌性体細胞でのインプリント異常を示す指標として用いることができる。
本発明は、さらに、上記のインプリント異常症の指標を検査する方法において好適に使用できる、インプリント異常症指標の検査用プローブ・セットも提供する。このプローブ・セットの好ましい例は、以下のa)〜c)のいずれかのプローブ・セットである:
a) 配列番号4及び配列番号5で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
b) 配列番号6及び配列番号7で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
c) 配列番号8及び配列番号9で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット。
本発明はさらに、上記プローブ・セット(例えば上記のa)〜c)の少なくとも1つ、好ましくはa)〜c)の全てのプローブセット)を含むインプリント異常症指標の検査用キットも提供する。このキットは、さらに、ZDBR2遺伝子のDMRの少なくとも一部を含む配列の増幅用として、配列番号2及び配列番号3で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのプライマーからなるプライマー・セットを含んでもよい。
これらのインプリント異常症指標の検査用のプローブ・セットやキットは、上記のインプリント異常症指標の検査方法において、便利に使用することができる。しかしながら、本発明の方法において上記以外のプローブ・セットやキットも使用できることは言うまでもない。
なお本発明の方法を実施する上で、DNAの抽出及び精製、mRNAの調製、cDNAの作製、PCR、RT-PCR、ライブラリーの作製、ベクター中へのライゲーション、細胞の形質転換、DNAの塩基配列の決定、核酸化学合成、タンパク質のN末端側のアミノ酸配列決定、突然変異誘発、タンパク質の抽出等の実験は、必要に応じて、通常の実験書に記載の方法によって行うことができる。そのような実験書としては、例えば、SambrookらのMolecular Cloning, A laboratory manual, (2001) 3rd Ed., Sambrook, J. & Russell, DW. Cold Spring Harbor Laboratory Pressを挙げることができる。
以下、実施例を用いて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれら実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
1.バイサルファイト-シークエンス法による正常精子のDMRの解析
不妊クリニックに通院している不妊症夫婦の男性患者97名から、精子サンプルを採取した。本研究は、患者の同意のもと、倫理委員会の承認を受けて行った。
各精子サンプル中の運動性良好な精子を、スイムアップ(swim-up)法(Ushijima C. et al., Hum. Reprod. (2000) 15:1107-1111)により、リンパ球、未成熟生殖細胞、上皮細胞等を精子サンプルから除去し、精製した。得られた精子はPBS(phosphate-buffered saline)液で繰り返し洗浄した。得られた精子からは、0.1mM 2-メルカプトエタノールを添加する精子由来DNAの標準的抽出法(Bahnak B.R. et al., Nucleic Acids Res. (1988) 16:1208)によりゲノムDNAを抽出した。具体的には、スイムアップ法にて体細胞の混入をなくし、精子細胞のみを選別したサンプルに1%SDS、100mg/mlプロテイナーゼK、1%βメルカプトエタノールを加え65℃で一晩インキュベートし、次いでフェノール、フェノール:CIAA(1:1;CIAAはクロロホルム:イソアミルアルコール、24:1)抽出によるタンパク質除去の後、DNAをエタノール精製した。コントロールとしては、ヒト正常血液白血球由来DNAを用いた。この白血球DNAは非特定正常成人男性及び女性由来白血球から抽出した。
上記で得られた精子由来DNAを、EZ DNA Methylation Kit(Zymo Research)を用いてバイサルファイト(亜硫酸水素塩)処理し、非メチル化シトシン塩基をウラシル塩基に置換した。次いで、バイサルファイト処理した精子由来DNAを鋳型として、次の条件でZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域(DMR;differentially methylated region;父性アレルと母性アレルとの間でメチル化に差が生じる領域)をPCR増幅した。PCR反応液は、1ng鋳型バイサルファイト処理DNA、0.5μM各プライマー(表1)、200μM dNTP、1×PCRバッファー、1.25U EX Taq Hot Start DNA Polymerase(TaKaRa Bio)を含む総量20μLとして調製した。PCRプログラムは以下の通りである:94℃で1分間の熱変性後、94℃で30秒間、57℃で30秒間、72℃で30秒間を40サイクル、さらに72℃で5分間の最終伸長。
Figure 2011239750
得られたPCR産物は、常法によりpGEM-T Easyベクター(Promega)中にクローニングした。得られた各クローンは、自動シークエンサーABI Prism 3130xl Genetic Analyser(Applied Biosystems)を用いて、M13リバースプライマーを使用してシークエンス反応及び配列決定を行った。各PCRについて20クローンの配列決定を行った。決定した各クローンのインサートDNAの配列を、対応する既知配列と比較した。その既知配列中に含まれるCpG部位(CG配列)のシトシン残基がインサートDNAの配列においてチミン残基に変換されていなかった場合、そのシトシン残基は、既知配列においてメチル化されている(メチルシトシン残基)ものと判断した。このバイサルファイト-シークエンス法での解析結果の例を図1に示す。図1に示すように、正常男性精子では7つのCpG部位がメチル化されていた。これに対し、コントロールの正常白血球では、7つのCpG部位について一方のアレルのみがメチル化されていた(図1)。
なお、ここで試験対象としたZDBF2遺伝子のDMRを含む塩基配列(ゲノム配列)を配列番号1に示す。また上記解析において、正常男性精子においてメチル化を受けることが示されたCpG部位の位置を表2に示す。表2中のCpG部位の位置はGenBankアクセッション番号AC007383の塩基配列上の塩基番号(括弧内は配列番号1の塩基番号)に基づいている。
Figure 2011239750
2.男性不妊症患者由来の精子からのDNAサンプルの調製
男性不妊症患者153名から精子サンプル(精液)を採取した。得られた各精子サンプルについて通常の精液検査(精液量、精子数、精子運動率、精細胞占有率)を行い、正常精子数(>20×106/ml)、重症乏精子症(精子数5〜20×106/ml)、及び中等度乏精子症(精子数5×106/ml未満)にサンプルを分類した。分類は、WHO分類(WHO 4th ed;WHO laboratory manual for the examination of human semen and sperm-cervical mucus interaction. 4th ed. World Health Organization. Cambridge,1999.)に従って行った。本研究は、患者の同意のもと、倫理委員会の承認を受けて行った。
各精子サンプル中の運動性良好な精子を、スイムアップ(swim-up)法(Ushijima C. et al., Hum. Reprod. (2000) 15:1107-1111)により、リンパ球、未成熟生殖細胞、上皮細胞等を除去し、精製した。得られた精子はPBS(phosphate-buffered saline)液で繰り返し洗浄した。得られた精子からは、0.1mM 2-メルカプトエタノールを添加する精子由来DNAの標準的抽出法(Bahnak B.R. et al., Nucleic Acids Res. (1988) 16:1208)によりゲノムDNAを抽出した。具体的には、スイムアップ法にて体細胞の混入をなくし、精子細胞のみを選別したサンプルに1%SDS、100mg/mlプロテイナーゼK、1%βメルカプトエタノールを加え65℃で一晩インキュベートし、次いでフェノール、フェノール:CIAA(1:1;CIAAはクロロホルム:イソアミルアルコール、24:1)抽出によるタンパク質除去の後、DNAをエタノール精製した。
3.バイサルファイト-PCR法及びそのPCR産物を用いたDNAメチル化の解析
上記2.で得られた各男性不妊症患者精子由来DNAについて、以下の通り、バイサルファイト処理を行ったDNAを鋳型とするPCRとLuminex(登録商標)システム(Luminex corp.)を使用したPCR-Luminex法にて、インプリント遺伝子ZDBF2のアレル特異的メチル化領域(DMR;differentially methylated region;父性アレルと母性アレルとの間でメチル化に差が生じる領域)内のCpG部位について、DNAメチル化解析を行った。その結果、ZDBF2遺伝子のDMR中のCpG部位のDNAメチル化に高頻度に異常が認められた。
具体的には、まず、上記2.で調製された精子由来DNAを、EZ DNA Methylation Kit(Zymo Research)を用いてバイサルファイト(亜硫酸水素塩)処理し、非メチル化シトシン塩基をウラシル塩基に置換した。次いで、バイサルファイト処理した精子由来DNAを鋳型とし、次の条件で、DMRを含む領域をビオチン標識プライマーにてPCR増幅した。PCR反応液は、1〜5μLのバイサルファイト処理済み精子由来DNA、0.2μM 各プライマー(上記表1に示したものと同一のプライマー・セットを使用)、200μM dNTPs、1×PCRバッファー(10 mM Tris-HCl (pH8.3), 50 mM KCl, 3 mM MgCl2)、0.625U Taq DNA Polymerase(Roche)を含む総量25μLとして調製した。PCRプログラムは、以下の通りである:95℃で2分の熱変性後、95℃で20秒、60℃で30秒、72℃で30秒を50サイクル、さらに72℃で7分の最終伸長。
次いで、上記増幅後のPCR産物を、蛍光標識したビーズに固相結合したCpG部位特異的プローブとハイブリダイゼーション反応させた。ハイブリダイゼーション反応液は、5μL PCR産物、1×ハイブリダイゼーションバッファー(60mM Tris-HCl (pH8.0)、0.5mM EDTA (pH8.0)、0.5M NaCl、0.1% 界面活性剤、1.5M 塩化テトラメチルアンモニウム)40μL、5μL プローブ結合ビーズを含む総量50μLとして調製した。ハイブリダイゼーション反応は、95℃で2分の後、48℃で30分インキュベートすることにより行った。続いて、75μLのPBS-Tweenを添加して2,000 g×1分で遠心して上清を廃棄し、さらに100μLのPBS-Tweenを添加して2,000 g×1分で遠心して上清を廃棄することにより洗浄を行った。
上記CpG部位特異的プローブとしては、この例では、ZDBF2遺伝子においてメチル化を受ける3つのCpG部位(CpG1、CpG4、CpG5と称する)のそれぞれについて、メチル化配列に対応したプローブ(メチル化(+)検出プローブ)と非メチル化配列に対応したプローブ(メチル化(-)検出プローブ)の2種類を用意した(表3)。メチル化配列に対応したプローブは、当該CpG部位がメチル化されている配列をバイサルファイト処理した後の配列(すなわち、メチル化されていないシトシン残基のみがチミン残基に置換された配列)に対して相補的な配列を有するように設計した一本鎖DNAである。また非メチル化配列に対応したプローブは、当該CpG部位がメチル化されていない配列をバイサルファイト処理した後の配列(すなわち、シトシン残基が全てチミン残基に置換された配列)に対して相補的な配列を有するように設計した一本鎖DNAである。各プローブを、Luminex(登録商標)技術に基づき、様々な濃度で組み合わせた2色の蛍光色素で染色したマイクロビーズに、コーティングしたカルボキシル基を介して結合させた。それらを混合し、同一チューブ内でハイブリダイゼーション反応に用いた。
Figure 2011239750
ハイブリダイゼーション反応後、ストレプトアビジン標識フィコエリスリン(SA-PE)を反応液に加え、48℃で15分インキュベートすることによって、二次標識した。得られた反応液は、Luminex(登録商標)システム(Luminex corp.)に基づき、フローメトリーを利用したマイクロビースアレイ技術により、メチル化(+)検出プローブとメチル化(-)検出プローブの各々を使用した場合について蛍光値を検出した。
次に、メチル化(+)検出プローブとメチル化(-)検出プローブを用いて得られた蛍光値に基づいて以下のようにして各サンプルのメチル化率を算出した。本発明でいうサンプルのメチル化率とは、ZDBF2遺伝子のDMR内の指定した1つのCpG部位におけるDNAの総量を1とした場合の、メチル化されたDNAの比率を意味する。ここで、メチル化(+)検出プローブを用いて得られた蛍光値は、メチル化されたDNAの相対量、すなわちZDBF2のDMR内のCpG部位がメチル化されている精子の相対量と相関する。またメチル化(-)検出プローブを用いて得られた蛍光値は、メチル化されていないDNAの相対量、すなわちZDBF2のDMR内のCpG部位がメチル化されていない精子の相対量と相関する。
そこでまず、メチル化率の算出に用いる検量線を作成した。メチル化を受けるCpG部位をシトシン残基のままとしたZDBF2のDMR配列をインサートとしてクローニングしたプラスミド(メチル化プラスミド)と、メチル化を受けるCpG部位のシトシン残基をチミン残基に置換したZDBF2のDMR配列をクローニングしたプラスミド(非メチル化プラスミド)を作製し、これらを、メチル化プラスミドが100%、80%、60%、50%、40%、20%、0%の割合[すなわち、メチル化プラスミド/(メチル化プラスミド+非メチル化プラスミド)=1.0、0.8、0.6、0.5、0.4、0.2、0.0の混合比率]になるよう混合したものを鋳型として、上記と同様の方法にて、配列番号2及び3のプライマー・セットでPCR増幅した。さらに、上記と同様にして、得られたPCR産物をCpG1、CpG4、CpG5のそれぞれのCpG部位特異的プローブとハイブリダイゼーションさせ、そしてフローメトリーを利用したマイクロビースアレイ技術により、メチル化(+)検出プローブとメチル化(-)検出プローブの各々を用いて蛍光値を検出した。得られた結果に基づき、メチル化(+)検出プローブによる蛍光値とメチル化(-)検出プローブによる蛍光値の比率(蛍光強度比率)をx 、メチル化プラスミドの混合比率(メチル化率に対応)をyとして、回帰式[シグモイド曲線;y=a/(1+exp(-(x1-b)/c);係数a:1.014361, 係数b:0.5696506, 係数c:0.09091164]を作成し、これを検量線とした(図2)。
作成した検量線に、各DNAサンプルについて測定したメチル化(+)検出プローブによる蛍光値とメチル化(-)検出プローブによる蛍光値から算出した蛍光強度比率を投入し、メチル化率を算出した。ZDBF2遺伝子のDMRは父性アレルがメチル化されることから、正常精子ではZDBF2遺伝子のDMRはメチル化される。従ってここで得られるメチル化率は、各精液中に含まれる、正常にメチル化された精子の割合を示す。メチル化率の低下はメチル化されていない異常な精子の割合が増加したことを意味する。
153名の男性不妊症患者由来精子サンプルのDNAについてのメチル化率の算出結果を表4に示す。
Figure 2011239750
表4に示す通り、3人の男性不妊症患者由来精子サンプルのDNAで、CpG1、CpG4、CpG5部位の全てについて80%未満のメチル化率が示された(表4中、*で示す)。正常精子では理論値で100%のメチル化率を示すことから、これらの精子サンプルでのメチル化状態は明らかに顕著に異常であった。本実施例により、男性不妊症患者はZDBF2遺伝子のインプリント異常を高頻度に有していることが示された。すなわち、少なくとも一部の男性不妊症患者は精子においてZDBF2遺伝子のDMRのインプリント異常を有することが判明した。このようなZDBF2遺伝子のDMRのインプリント異常を有する精子に由来する胎児では、そのインプリント異常が維持されることから、インプリント異常症を発症する可能性がより高いと考えられた。
なお、試験した男性不妊症患者において重症乏精子症患者61名のうち2名、中等度乏精子症患者67名のうち1名が上記の精子におけるZDBF2遺伝子でのメチル化異常を示した患者に該当した。一方、正常精子数のサンプル(209名;WHO分類による)ではZDBF2遺伝子でのメチル化異常は検出されなかった。このように、乏精子症患者のZDBF2遺伝子でのメチル化異常の発生率は特に高頻度であった。
[実施例2]
本実施例では、卵巣癌組織サンプル、子宮体癌組織サンプル、及び培養細胞について、実施例1と同様の方法により、ZDBF2遺伝子でのメチル化異常の有無を検出した。なお本研究は、患者の同意のもと、倫理委員会の承認を受けて行った。
1.サンプルの調製
東北大学病院及び関連病院で手術により摘出された癌組織をサンプルとし、常法によりDNAを抽出した。
卵巣癌組織サンプルは、56症例の卵巣癌患者由来であり、そのうち漿液性腺癌(serious adenocarcinoma)が22症例、粘液性腺癌(mucinous adenocarcinoma)が7症例、類内膜癌(endometrioid adenocarcinoma)が7症例、明細胞癌(clear cell adenocarcinoma)が15症例であった。組織学的分類はthe International Federation of Gynecologists and Obstetricians criteria(FIGO)分類で行った。正常卵巣組織サンプルも6検体用意して用いた。
子宮体癌組織サンプルは、126症例の子宮体癌患者由来であり、その組織型は全て類内膜腺癌であった。組織学的分類はthe International Federation of Gynecologists and Obstetricians criteria(FIGO)分類で行った。
さらに卵巣癌由来培養細胞(17系統)及び子宮体癌由来培養細胞(7系統)からも、系統毎に、常法によりDNAを抽出した。17系統の卵巣癌由来培養細胞のうち、6系統(JHOS2、SKOV、OV90、JHOS4、KF、MH)が漿液性腺癌、2系統(OMC3、MCAS)が粘液性腺癌、6系統が明細胞癌(ES2、JHOC5、JHOC7、JHOC8、KM、HAC)、分類不能な3系統(RMG、PA-1、TYK-nn)に由来する細胞株であった。7系統の子宮体癌由来培養細胞は全て類内膜腺癌に由来する細胞株であった。
2.バイサルファイト-PCR法及びそのPCR産物を用いたDNAメチル化の解析
バイサルファイト-PCR法及びDNAメチル化解析を、実施例1と同様の手順及び同じ試薬を使用して行った。得られた蛍光値から、実施例1と同様に、検量線を使用して各サンプルのメチル化率を算出した。卵巣癌組織サンプル及び正常卵巣組織サンプルでの結果を表5、子宮体癌組織サンプルでの結果を表6、卵巣癌由来培養細胞及び子宮体癌由来培養細胞での結果を表7に示す。
表5に示されるように、正常卵巣組織では、メチル化率は約50%又はそれ以下であった。この結果は、ZDBF2遺伝子が父性メチル化インプリンティングを受けることから正常な体細胞では理論上50%のメチル化率を示すことと一致する。一方、卵巣癌組織では、7症例/56症例(10.7%)が80%以上のメチル化率を示し、異常な高メチル化状態にあることが示された(表5の*)。通常、癌組織には正常細胞も混在していることを考慮すれば、この卵巣癌におけるZDBF2遺伝子のメチル化異常(高メチル化)の頻度はかなり高いといえる。事実、卵巣癌由来培養細胞では、14系統/17系統(82.4%)でメチル化率80%以上の高メチル化状態が確認された(表7の*)。この結果は、卵巣癌患者がZDBF2遺伝子のメチル化異常(特に高メチル化)を高頻度に有していることを示す。本実施例から、少なくとも一部の卵巣癌がZDBF2遺伝子のインプリント異常を伴うインプリント異常症であることが示された。
また、表6に示されるように、子宮体癌組織では、30症例/126症例(判定不能検体を除く)(23.8%)が80%以上のメチル化率を示し、異常な高メチル化状態にあることが示された(表6の*)。卵巣癌組織の場合と同様に、子宮体癌組織における高メチル化異常の頻度もかなり高いと考えられた。事実、子宮体癌由来培養細胞では、7系統/7系統(100%)でメチル化率80%以上の高メチル化状態が確認された(表7の*)。この結果は、子宮体癌患者がZDBF2遺伝子のメチル化異常(特に高メチル化)を高頻度に有していることを示す。本実施例から、少なくとも一部の子宮体癌がZDBF2遺伝子のインプリント異常を伴うインプリント異常症であることが示された。
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本発明の検査方法は、インプリント異常症の診断に有用な指標を提供することができる。
配列番号2〜9の配列はプライマーである。

Claims (10)

  1. ヒト生体試料由来のゲノムDNA抽出サンプルについて、ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域におけるメチル化状態を検出し、そのゲノムDNA抽出サンプル中のメチル化率をインプリント異常症指標の検査値として取得することを含む、インプリント異常症指標の検査方法。
  2. 生体試料が男性不妊症患者の精液である、請求項1に記載の方法。
  3. 生体試料が卵巣癌組織若しくは子宮体癌組織又はそれらの癌の疑いがある組織に由来する試料である、請求項1に記載の方法。
  4. 生体試料が非癌性の体細胞組織由来の生体試料である、請求項1に記載の方法。
  5. ZDBF2遺伝子のアレル特異的メチル化領域におけるメチル化状態の検出を、配列番号1の5270位〜5271位、5294位〜5295位、5303位〜5304位、5316位〜5317位、5348位〜5349位、5356位〜5357位、及び5363位〜5364位のCpG部位から選択される少なくとも1つについて行う、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
  6. メチル化状態の検出が、バイサルファイト処理したDNAを鋳型として前記アレル特異的メチル化領域を含む配列を核酸増幅する工程を含む、請求項1〜5のいずれか1項記載の方法。
  7. 配列番号2及び配列番号3で示される塩基配列をそれぞれ含むプライマーからなるプライマー・セットを用いて核酸増幅を行う、請求項6に記載の方法。
  8. メチル化状態の検出が、以下のa)〜c)の少なくとも1つのプローブ・セットを用いて、増幅した核酸とハイブリダイゼーションさせる工程をさらに含む、請求項6又は7に記載の方法。
    a) 配列番号4及び配列番号5で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
    b) 配列番号6及び配列番号7で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
    c) 配列番号8及び配列番号9で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット
  9. 以下のa)〜c)のいずれかである、インプリント異常症指標の検査用プローブ・セット。
    a) 配列番号4及び配列番号5で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
    b) 配列番号6及び配列番号7で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
    c) 配列番号8及び配列番号9で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット
  10. 以下のa)〜c)の少なくとも1つのプローブ・セットを含む、インプリント異常症指標の検査用キット。
    a) 配列番号4及び配列番号5で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
    b) 配列番号6及び配列番号7で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット、
    c) 配列番号8及び配列番号9で示される塩基配列をそれぞれ含む2つのオリゴヌクレオチドプローブからなるプローブ・セット
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