JP2011238431A - 高温超電導線およびその製造方法 - Google Patents

高温超電導線およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Icとn値を独立に制御することが可能で、Ic、n値ともに大きな値を有するテープ状高温超電導線とその製造方法を提供する。
【解決手段】複数の芯線が配置されて構成されているテープ状高温超電導線の製造方法であって、所望のn値に対応して、芯線の数を増加させると共に、過剰な一次焼結の進行を防止してIcを増加させるように、一次焼結時間を調整する。また、所望のn値に対応して、芯線の数を増加させると共に、一次焼結後における単相度に対応して、一次焼結後の圧延工程における圧延圧下率を調整する。そして、芯線の数を、150本以上に増加させる。これらの製造方法を用いて製造され、ビスマス系高温超電導線であるテープ状高温超電導線。
【選択図】図1

Description

本発明は、テープ状高温超電導線およびその製造方法に関し、特に、Icとn値が共に高く、電磁石、発電機、送電線等の種々の用途に好適なテープ状高温超電導線およびその製造方法に関する。
Bi2223超電導線等の高温超電導線は、液体窒素温度での使用が可能であり、比較的高い臨界電流密度が得られること、また、長尺化が比較的容易であること等から、超電導コイルやケーブル等への開発が盛んに行われている。
このような高温超電導線につき、近年、臨界電流−磁場特性の向上などを目指して、Icを向上させる検討が行われると共に、より一層の長尺化、均質化、強度の向上等について様々な研究がなされている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
これらの検討を評価する指標の1つにn値がある。このn値は、超電導線の電流−電圧特性を示す式V∝Iにおける指数であり、超電導状態から抵抗状態への遷移の鋭さや、均質性を示す尺度とされている(特許文献1)。なお、Vは電圧であり、Iは電流である。
Icは1μV/cmで定義されるため、この式より、Icおよびn値が大きいと、通電時の発熱を抑えることができ、超電導機器の設計における制限が緩和されるため(特許文献1、非特許文献1)、高いIcとn値を有する超電導線が望まれていた。
特開2006−107843号公報
加藤武志他10名著、「革新的ビスマス系高温超電導線(DI−BSCCO)の開発」、SEIテクニカルレビュー、住友電気工業株式会社刊、2006年3月発行、第168号、19〜23ページ
しかしながら、従来の方法では、Icとn値の間に負の相関があり、Icの高い超電導線ではn値が低く、超電導機器の設計が制限されることが分かってきた。
このため、Icとn値を互いに独立して制御することが可能で、Ic、n値ともに大きな値を有するテープ状高温超電導線の製造技術の開発が望まれる。
本発明者は、上記の課題を解決することを目指して、鋭意検討を行い、以下に示す知見を得て、本発明を完成するに至った。
Bi2223高温超電導線は、一般に、以下の手順に従って製造される。即ち、最初に、超電導相となる原料粉末を銀などの金属パイプに充填する。次に、この金属パイプを伸線加工してクラッド線(芯線)とする。次いで、複数のクラッド線(芯線)を束ねて、銀などの金属パイプに挿入し、伸線加工して多芯線とする。その後、この多芯線を圧延加工(一次圧延)してテープ状線材とする。そして、テープ状線材に一次焼結の熱処理を施して目的の超電導相を生成させる。
続いて、このテープ状線材を再度圧延し(二次圧延)、さらに二次焼結の熱処理を施す。これにより、金属シース中に多数の超電導フィラメントが埋め込まれたテープ状の高温超電導線が製造される。
本発明者は、このようなテープ状の高温超電導線の製造に際し、最初に、前記したIcとn値における負の相関関係につき検討を行った。その結果、同じ構造の超電導線、即ち、同じサイズの芯線が同数配置された超電導線の場合には、前記した負の相関関係を示し、Icが高い超電導線ではn値が低くなる一方で、n値が高い超電導線ではIcが低くなる。しかし、芯線の断面積の合計が同じとなるようにして芯線数(以下、「芯数」と言う)を変化させた場合には、この関係が成立しないことが分かった。
そこで、次に、上記した芯数の変化と、Icおよびn値との関係につき検討を行った。その結果、特別な関係があるとは考えられていなかった芯数とn値との間に、相関関係が存在していることが分かった。このような相関関係は、業界において、従来知られていなかったことであり、同じBi2223超電導線を製造するメーカー各社が、それぞれ、37芯、55芯、121芯の少ない一種類の芯数しか採用していないことが、このことを伺わせている。
具体的には、幅4.1mm×厚さ0.23mmのテープ状超電導線において、芯線の断面積の合計を一定に維持した状態で、芯数を55本、121本、211本、325本と変化させた超電導線をそれぞれ作製し、各々の超電導線におけるIcとn値を測定した。なお、これらの超電導線の作製における焼結は、全て同じ焼結条件(一次焼結:酸素分圧8kPa、840℃、30時間、圧延圧下率:8%、二次焼結:酸素分圧8kPa、820℃、50時間)に設定した。
結果を図1に示す。図1において、横軸は芯数であり、左の縦軸はIc(単位はA)であり、右の縦軸はn値である。図1に示すように、芯数の増加に伴いn値も向上しており、芯数とn値との間に正の相関関係があることが分かった。これに対して、Icは、芯数211本までは向上するものの、それを超えると低下していることが分かった。
即ち、芯数211本までは、Icの向上に合わせてn値も向上し、Icとn値との間に正の相関関係を示す一方、芯数が211本を超えると、n値は向上するものの、Icは低下しており、Icとn値との間に負の相関関係を示すことが分かった。
なお、本発明者は、本実験例に限らず、超電導線のサイズを変えて実験を行った場合にも、上記した芯数とn値との関係、およびIcとn値との関係における傾向が同様であることを確認している。
このように、ある芯数を超えると、Icとn値との間に負の相関関係が生じる原因につき、さらに検討を行ったところ、これらの超電導線を作製するに際して行われた一次焼結における単相度(Bi2201、Bi2212、およびBi2223全体に対するBi2223の体積分率)が影響していることが分かった。
図2を用いて詳しく説明する。図2は、前記実験における一次焼結後の単相度(%)と芯数との関係を示す図である。図2より、芯数211本までは一次焼結後の単相度は81%程度迄に止まっているのに対し、芯数325本の場合には85%にまで上昇していることが分かった。そして、このように一次焼結が進み過ぎて、85%にまで単相度が上昇しているために、却ってIcが低下していることが分かった。
また、本発明者の実験によれば、従来知られていなかった、一次焼結後の単相度により、Icがピークとなる二次圧延の圧延圧下率(以下、単に「圧下率」とも言う)が異なり、一次焼結後の単相度が大きくなると、Icがピークとなる圧下率が低い側にシフトしていることが分かった。
これを、図3を用いて詳しく説明する。図3は、各々の単相度(一次焼結後の単相度)における二次圧延の圧下率とIcとの関係を模式的に示す図である。図3において、(1)〜(3)は、それぞれ単相度70%、80%、90%の場合における圧下率とIcとの関係を示している。図3より、それぞれの単相度において、Icがピークとなる圧下率が存在し、単相度が大きくなるにつれて、Icがピークとなる圧下率が小さくなっていることが分かった。
以上の実験結果に基づき、検討を行った結果、Icおよびn値のそれぞれが大きな超電導線を得るためには、まず、芯数を多くしてn値の向上を図り、次いで、一次焼結における単相度が必要以上に高くなることを制御したり、圧下率を小さくしてIcの向上を図れば良いことが分かった。即ち、前記の方法により、所望の優れた特性の超電導線を、n値とIcを独立して制御して製造することができる。
請求項1〜3に記載の発明は、以上の知見に基づく発明である。即ち、請求項1に記載の発明は、
複数の芯線が配置されて構成されているテープ状高温超電導線の製造方法であって、
所望のn値に対応して、芯線の数を増加させると共に、
過剰な一次焼結の進行を防止してIcを増加させるように、一次焼結時間を調整して、
テープ状高温超電導線を製造することを特徴とするテープ状高温超電導線の製造方法である。
本請求項の発明においては、所望するn値に対応して、芯線断面積の合計が常に同じ面積となるように維持した状態で、芯線の数を増加させているため、前記の通り、大きなn値を得ることができる。
また、一次焼結時間を調整することにより、過剰な一次焼結の発生を防止している、即ち、過剰な一次焼結の発生が予測される場合には、一次焼結時間を短縮しているため、前記の通り、一次焼結における単相度が必要以上に向上せず、Icとn値との間に負の相関関係が発生することを防止して、高いIcを得ることができる。
この結果、Ic、n値ともに大きな値を有するテープ状高温超電導線を製造することができる。
請求項2に記載の発明は、
複数の芯線が配置されて構成されているテープ状高温超電導線の製造方法であって、
所望のn値に対応して、芯線の数を増加させると共に、
前記一次焼結後における単相度に対応して、一次焼結後の圧延工程における圧延圧下率を調整して、
テープ状高温超電導線を製造することを特徴とするテープ状高温超電導線の製造方法である。
本請求項の発明においては、所望するn値に対応して、芯線断面積の合計が常に同じ面積となるように維持した状態で、芯線の数を増加させているため、前記の通り、大きなn値を得ることができる。
また、一次焼結後における単相度に対応して圧下率を調整しているため、高いIcを維持することができる。具体的には、前記したように、一次焼結後の単相度が大きいほど圧下率を下げて圧延し、特にIcが最大となるように圧下率を調整することが好ましい。
この結果、Ic、n値ともに大きな値を有するテープ状高温超電導線を製造することができる。
請求項3に記載の発明は、
複数の芯線が配置されて構成されているテープ状高温超電導線の製造方法であって、
所望のn値に対応して、芯線の数を増加させると共に、
過剰な一次焼結の進行を防止してIcを増加させるように、一次焼結時間を調整し、
さらに、前記一次焼結後における単相度に対応して、一次焼結後の圧延工程における圧延圧下率を調整して、
テープ状高温超電導線を製造することを特徴とするテープ状高温超電導線の製造方法である。
本請求項の発明においては、請求項1および請求項2に記載された一次焼結時間の調整および一次焼結後の圧下率の調整の両要件を備えているため、各請求項における効果が相乗され、より大きなIc、n値を有するテープ状高温超電導線を製造することができる。
請求項4に記載の発明は、
前記芯線の数を、150本以上に増加させて、テープ状高温超電導線を製造することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のテープ状高温超電導線の製造方法である。
芯線の数が150本以上の場合、顕著に本発明の効果が発揮され、極めて優れたテープ状超電導線を提供することができる。
請求項5に記載の発明は、
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のテープ状高温超電導線の製造方法を用いて製造されていることを特徴とするテープ状高温超電導線である。
これらのテープ状高温超電導線の製造方法を用いて得られたテープ状高温超電導線は、大きなIc、n値を有しているため、超電導機器の設計における制限を緩和することができ、電磁石、発電機、送電線等の種々の用途に好適なテープ状高温超電導線を提供することができる。
請求項6に記載の発明は、
ビスマス系高温超電導線であることを特徴とする請求項5に記載のテープ状高温超電導線である。
Bi2212やBi2223等のビスマス系高温超電導線は、液体窒素温度での使用が可能であり、比較的高い臨界電流密度が得られること、また、長尺化が比較的容易であり、本発明を適用することにより、従来にない、極めて優れたテープ状超電導線を提供することができる。
本発明によれば、Icとn値を独立に制御することが可能で、Ic、n値ともに大きな値を有するテープ状高温超電導線とその製造方法を提供することができ、超電導機器の設計における制限を緩和することができる。
芯数とIcおよびn値との関係を示す図である。 一次焼結後の単相度と芯数との関係を示す図である。 各々の単相度における圧下率とIcとの関係を模式的に示す図である。
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、以下の実施の形態においては、幅4.1mm、厚さ0.23mmのBi2223のテープ状高温超電導線を製造している。
1.従来例
(1)まず、芯数121本のBi2223超電導線を、従来、最も好ましいとされる以下の条件に基づいて、作製した。
(a)組成比; Bi:Sr:Ca:Cu=2:2:2:3
(b)一次圧延圧下率; 80%
(c)一次焼結; 酸素分圧8kPa、温度:840℃、時間:30時間
(d)二次圧延圧下率; 8%
(e)二次焼結; 酸素分圧8kPa、温度:820℃、時間:50時間
(2)上記条件により作製された超電導線のIcおよびn値は、184Aおよび18であった。また、一次焼結後の単相度は81%であった。
2.実施例に先立つ準備
実施例を行うに先立って、以下の準備を行った。
(1)n値、Ic、単相度についての準備
(イ)芯数を121本から、55本、211本、325本と変えた以外は、上記の従来例と同じ条件により得られた超電導線のIc、n値および一次焼結における単相度を測定し、芯数とIcおよびn値との関係を求め、さらに芯数と一次焼結後の単相度との関係を求めた。なお、各々における芯線の断面積の合計は、従来例と同じになるようにした。
(ロ)また、一次焼結後の単相度毎に、二次圧延圧下率を変化させて得られた超電導線のIcを測定し、各単相度におけるIcと二次圧延圧下率との関係を求めた。
(2)n値、一次焼結時間および二次圧延圧下率の決定方法
(イ)所望するn値および芯数の決定
まず、所望するn値を決定し、上記で求めた芯数とIcおよびn値との関係から、所望するn値に対応する芯数を決定した。
(ロ)一次焼結時間の決定
上記で求めた芯数と一次焼結後の単相度との関係から、上記芯数に対応する単相度を求め、この単相度に対応する一次焼結時間を決定した。
ここで、求められた単相度が85%を超えている場合には、過剰な一次焼結の発生が予測されるため、適宜一次焼結時間を短縮して、単相度が85%を超えないように調整した。
(ハ)二次圧延圧下率の決定
上記で決定された単相度におけるIcと二次圧延圧下率との関係から、Icがピークとなる二次圧延圧下率を求めた。
3.実施例
(1)実施例1
所望するn値は20とし、これに対応して芯数を325本、一次焼結時間を24時間とした以外は、従来例と同じ条件で超電導線を製造し、実施例1の超電導線を得た。
得られた超電導線のIcは184Aであり、n値は20であった。また、一次焼結の単相度は80%であった。
この結果より、従来例により得られた超電導線に比べ、Ic、n値がともに大きな値を有するテープ状高温超電導線が得られることが確認できた。
(2)実施例2
所望するn値は19とし、これに対応して芯数を211本とし、さらに前記芯数に対応する一次焼結の単相度に基づき二次圧延圧下率を5%とした以外は、従来例と同じ条件で超電導線を製造し、実施例2の超電導線を得た。
得られた超電導線のIcは195Aであり、n値は19であった。また、一次焼結の単相度は81%であった。
この結果より、従来例により得られた超電導線に比べ、Ic、n値がともに大きな値を有するテープ状高温超電導線が得られることが確認できた。
(3)実施例3
所望するn値は20とし、これに対応して芯数を325本、一次焼結時間を24時間とし、さらにこの一次焼結時間により得られる単相度に基づいて、二次圧延圧下率を5%とした以外は、従来例と同じ条件で超電導線を製造し、実施例3の超電導線を得た。
得られた超電導線のIcは195Aであり、n値は20であった。また、一次焼結の単相度は80%であった。
この結果より、従来例、実施例1および実施例2により得られたそれぞれの超電導線に比べ、Ic、n値がともに大きな値を有するテープ状高温超電導線が得られることが確認できた。
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。

Claims (6)

  1. 複数の芯線が配置されて構成されているテープ状高温超電導線の製造方法であって、
    所望のn値に対応して、芯線の数を増加させると共に、
    過剰な一次焼結の進行を防止してIcを増加させるように、一次焼結時間を調整して、
    テープ状高温超電導線を製造することを特徴とするテープ状高温超電導線の製造方法。
  2. 複数の芯線が配置されて構成されているテープ状高温超電導線の製造方法であって、
    所望のn値に対応して、芯線の数を増加させると共に、
    前記一次焼結後における単相度に対応して、一次焼結後の圧延工程における圧延圧下率を調整して、
    テープ状高温超電導線を製造することを特徴とするテープ状高温超電導線の製造方法。
  3. 複数の芯線が配置されて構成されているテープ状高温超電導線の製造方法であって、
    所望のn値に対応して、芯線の数を増加させると共に、
    過剰な一次焼結の進行を防止してIcを増加させるように、一次焼結時間を調整し、
    さらに、前記一次焼結後における単相度に対応して、一次焼結後の圧延工程における圧延圧下率を調整して、
    テープ状高温超電導線を製造することを特徴とするテープ状高温超電導線の製造方法。
  4. 前記芯線の数を、150本以上に増加させて、テープ状高温超電導線を製造することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のテープ状高温超電導線の製造方法。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のテープ状高温超電導線の製造方法を用いて製造されていることを特徴とするテープ状高温超電導線。
  6. ビスマス系高温超電導線であることを特徴とする請求項5に記載のテープ状高温超電導線。
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