JP2011237343A - 燃料集合体およびその設計方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】可燃性毒物としてエルビウムのみを用いた燃料集合体に比べて、臨界安全性を損なうことなく、その燃料集合体が装荷された炉心の運転サイクル末期での反応度損失を低減する。
【解決手段】ウランペレットを装填した燃料棒を束ねて原子炉に装荷可能な燃料集合体の設計方法では、まず、可燃性毒物としてエルビウムのみを用いて原子炉に装荷可能な仮想的な燃料集合体を設計する。次に、仮想的な燃料集合体とウランの濃縮度分布が同じでその燃料集合体よりも中性子増倍率の最大値が小さい燃料集合体を、仮想的な燃料集合体からエルビウムの濃度を減じかつガドリニウムを添加して設計する。
【選択図】図1
【解決手段】ウランペレットを装填した燃料棒を束ねて原子炉に装荷可能な燃料集合体の設計方法では、まず、可燃性毒物としてエルビウムのみを用いて原子炉に装荷可能な仮想的な燃料集合体を設計する。次に、仮想的な燃料集合体とウランの濃縮度分布が同じでその燃料集合体よりも中性子増倍率の最大値が小さい燃料集合体を、仮想的な燃料集合体からエルビウムの濃度を減じかつガドリニウムを添加して設計する。
【選択図】図1
Description
本発明は、原子炉に装荷される燃料集合体およびその設計方法に関する。
原子力発電プラントの出力の増加や運転サイクルの長期化を実現し、かつ使用済燃料集合体の発生数を抑制して経済性の向上を図るためには、燃料のウラン濃縮度を高めることが望ましい。ウランの高濃縮度化、すなわち、ウラン中でのウラン235の濃度を高めることは、同じ発電量を得るために必要な新燃料集合体の取替体数と使用済燃料集合体発生量を低減し、燃料サイクルコストの低減に大きく貢献する。一方、加圧水型原子炉(PWR)を例としてあげた場合、高濃縮度化に伴って炉心の初期余剰反応度が増大し、これを抑制するためにボロン水のボロン濃度も増す必要があるが、減速材温度係数がより正方向にシフトすることが知られている。また、燃料集合体の初期反応度が増大した分だけチャンネル出力ピーキングが増大して熱特性も悪化する。
これの対策として、エルビウム(Er)の酸化物であるエルビア(Er2O3)を可燃性毒物として燃料ペレットに添加して用いることにより、ボロン濃度を従来と同程度として減速材温度係数の悪化を防止することができる。Er−167は、特に中性子エネルギー0.3eV付近で熱中性子の吸収断面積のピークをもつために、高濃縮度化に伴って中性子スペクトルが硬くなるほど中性子吸収効率の低下が抑えられる。また、燃料集合体の燃焼初期の反応度が抑制されるため燃焼初期の熱特性の悪化も低減される。しかし、Er−167の熱中性子吸収の微視断面積はEr−167で640バーン程度と小さく、運転サイクル末期において可燃性毒物が残留して炉心の反応度損失が発生する。このため、高燃焼度化による燃料サイクルコスト低減効果が損なわれることは避けられない。
商業規模で実用化されている軽水炉用燃料集合体加工施設は、一般的に、ウラン濃縮度が5wt%を上限として、臨界安全性を確保できるように設計されている。このような施設の安全審査は「ウラン加工施設安全審査指針」に基づいて行われ、臨界安全性を確保できていることなどが審査によって確かめられて、その施設の設置が許可されることになる。一方、濃縮度が5wt%を超え、その上限を10wt%程度とするウランを用いてさらなる高燃焼度化を達成しようとする場合、取り扱う施設は、「特定のウラン加工施設のための安全審査指針」に基づいて、より厳格な規制を受けることになる。
したがって、濃縮度が5wt%を超えるウランを用いた燃料集合体を原子炉に用いるためには、臨界管理の観点から、ウラン燃料加工施設の大幅な設計変更や設備改造が必要になり、コストが上昇する可能性がある。また、濃縮度が5wt%を超えるウランを用いた場合には、新燃料輸送、新燃料貯蔵の各工程においても設計変更、設備改造などが必要になり、コストが上昇する可能性がある。そうすると、原子炉燃料の濃縮度上昇による燃料サイクルコスト低減効果が相殺される可能性がある。
そこで、濃縮度が5wt%を超えるウランを取り扱う際に、炉心の反応度抑制効果が弱く、かつ長く持続する可燃性毒物であるエルビアをUO2粉末の段階において低濃度で混入する方法がある。これにより、ウラン燃料加工施設の臨界安全を確保し、さらに炉心の初期反応度を極端に抑制することなく、燃料の中性子増倍率の最大値を濃縮度5wt%の燃料の中性子増倍率の最大値以下に抑制し、更に燃料燃焼に伴う反応度変化も緩やかにすることができる。しかしながら、この場合も、運転サイクル末期において可燃性毒物が残留して炉心の反応度損失が発生することが予想され、高燃焼度化による燃料サイクルコスト低減効果が損なわれることは避けられない。
これに対して、濃縮度が5wt%を超えるウランを取り扱う際に、ガドリニウム(Gd)酸化物であるガドリニア(Gd2O3)をUO2粉末の段階で微量混入してウラン燃料加工施設の臨界安全を確保する方法がある。運転サイクル初期で微濃度のGdは消失するために、微濃度のガドリニアを含む燃料棒を用いることによって、運転サイクル末期における炉心の反応度損失は生じない。また、燃料棒内にエルビアとガドリニアの両方を添加し、ガドリニア濃度はエルビア濃度より小さくして、残留反応度ペナルティーを最小限とするという方法が考えられる。
科学技術庁原子力安全局核燃料規制課編、「臨界安全ハンドブック」、1988年10月31日、にっかん書房発行
軽水炉の高燃焼度化に際して、可燃性毒物であるエルビアを高濃縮度のUO2燃料に添加して用いることによって炉心反応度特性を改善する方法がある。しかし、エルビアの濃度によっては、運転サイクルの末期において可燃性毒物が残留して炉心の反応度損失が発生し、原子炉燃料の高濃度化による燃料サイクルのコスト低減効果を発揮することが困難となる。
また、将来においてウラン濃縮度5wt%超の原子炉燃料を採用するには臨界管理の観点からウラン燃料加工施設等における設計変更、設備改造などによるコストが増大し、原子炉燃料の濃縮度上昇による燃料サイクルコスト低減効果が相殺されるおそれがある。これに対応して低濃度のエルビアを燃料に添加して臨界安全管理を行うとともに、炉心反応度を制御することができるが、やはり運転サイクルの末期において可燃性毒物が残留して炉心の反応度損失が発生する。
そこで、本発明は、可燃性毒物としてエルビウムのみを用いた燃料集合体に比べて、臨界安全性を損なうことなく、その燃料集合体が装荷された炉心の運転サイクル末期での反応度損失を低減することを目的とする。
上述の目的を達成するため、本発明は、ウランペレットを装填した燃料棒を束ねて原子炉に装荷可能な燃料集合体の設計方法において、可燃性毒物としてエルビウムのみを用いて前記原子炉に装荷可能な仮想的な燃料集合体を設計する第1工程と、前記仮想的な燃料集合体とウランの濃縮度分布が同じでその燃料集合体よりも中性子増倍率の最大値が小さい燃料集合体を、前記仮想的な燃料集合体からエルビウムの濃度を減じかつガドリニウムを添加して設計する第2工程と、を有することを特徴とする。
また、本発明は、ウランペレットを装填した燃料棒を束ねて原子炉に装荷可能な燃料集合体において、可燃性毒物としてエルビアのみを用いて前記原子炉に装荷可能な仮想的な燃料集合体に対して、この仮想的な燃料集合体とウランの濃縮度分布が同じでその仮想的な燃料集合体よりも中性子増倍率の最大値が小さく、前記仮想的な燃料集合体からエルビアの濃度を減じかつガドリニアを添加したことを特徴とする。
本発明によれば、可燃性毒物としてエルビウムのみを用いた燃料集合体に比べて、臨界安全性を損なうことなく、その燃料集合体が装荷された炉心の運転サイクル末期での反応度損失を低減することができる。
本発明に係る燃料集合体の設計方法の一実施の形態を、図面を参照して説明する。なお、同一または類似の構成には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図4は、本発明に係る燃料集合体の設計方法の一実施の形態によって設計した燃料集合体の横断面図である。
本実施の形態の燃料集合体10は、燃料棒4、制御棒案内シンブル6および炉内計装用案内シンブル7を17行17列の正方格子状に配列して束ねたものである。炉内計装用案内シンブル7は、17行17列の中央に1本配置されている。制御棒案内シンブル6は、24本配列されている。燃料棒4は、残りの格子位置に264本配置されている。
燃料棒4は、ウランを焼結したペレットをジルコニウム合金製の被覆管に装填し、その両端を端栓で封じたものである。全ての燃料棒4に装填されるペレット中のウラン235の濃縮度は、5wt%以下とする。また、これらのペレットは、エルビアおよびガドリニアを含有している。
図1は、本実施の形態における燃料集合体の出力運転時における無限増倍率の燃焼変化を示すグラフである。図2は、図1の燃焼初期を拡大したグラフである。図3は、図1の燃焼途中を拡大したグラフである。
この燃料集合体は、次のように設計される。まず、ある仮想的な燃料集合体を設計する。この仮想的な燃料集合体は、可燃性毒物としてエルビアのみを用いる。仮想的な燃料集合体は、ある炉心に一体あるいは複数体装荷可能なように設計される。ここである炉心とは、取替炉心あるいは初装荷炉心である。装荷可能とは、所定の体数の仮想的な燃料集合体を当該炉心に装荷しても、所定の期間、安全に運転が可能であることを意味している。
この仮想的な燃料集合体は、たとえばウラン235の濃縮度が5.0wt%で一様であり、エルビウムがエルビアとして0.2wt%含有されている。図1ないし図3において、この仮想的な燃料集合体の無限増倍率は、一点鎖線で示されている。また、図1ないし図3には、同じ濃縮度で可燃性毒物を含有しない燃料集合体の無限増倍率を破線で示している。
次に、この仮想的な燃料集合体に対して、エルビウムの含有量を低減し、さらにガドリニウムを添加して、出力運転時の無限増倍率の最大値が仮想的な燃料集合体以下となる燃料集合体を設計する。この際、ウラン235の濃縮度の分布は、仮想的な燃料集合体と同じとする。設計された燃料集合体は、たとえばエルビウムをエルビアとして0.1wt%含有し、ガドリニウムをガドリニアとして0.01%含有する。設計された燃料集合体の無限増倍率は、図1ないし図3に実線で示している。
図2に拡大して示すように、中性子毒物としてエルビウムのみを含有する仮想的な燃料集合体の出力運転時の無限増倍率は、燃焼初期に最大値をとり、その後単調に減少している。これに対して、設計された燃料集合体の出力運転時の無限増倍率は、寿命のごく初期に増加して最大値をとった後単調に減少する。
このように、エルビアの含有量を1/2とする代わりに、微量のガドリニアを添加することにより、寿命を通じての出力運転時の無限増倍率の最大値が増大しないようにすることができるエルビアの含有量を低減させているが、ガドリニアを添加しているため、燃焼初期の出力運転時の無限増倍率を低減することができる。その結果、運転サイクル初期の余剰反応度を仮想的な燃料集合体を装荷した炉心と同程度以下に抑制することができる。
また、エルビアの含有量を低減しているため、たとえば運転サイクル末期など燃焼が進んだ時点での可燃性毒物であるエルビウムの残留量を低減することができ、図3に示すように燃焼が進んだ時点での出力運転時の無限増倍率を高めることができる。その結果、運転サイクル末期相当の燃焼度においては、炉心の反応度損失を低減することができる。
図5は、本実施の形態によって設計した燃料集合体の他の例の横断面図である。
この例では、半数の燃料棒4にエルビアおよびガドリニアを添加し、残りの燃料棒5には可燃性毒物を添加していない。この場合は、エルビアおよびガドリニアの濃度を上述の設計例の倍程度として、それぞれ0.2wt%および0.02wt%とすることによって同様な効果が得られる。
また、ガドリニウムおよびエルビウムは、それぞれ単独の酸化物としてウランに添加してもよいが、複合酸化物として添加することが好ましい。ここで複合酸化物とは、二種類以上の金属酸化物であって、ミクロ構造においても化学量論的な組成を維持している酸化物のことを言う。本実施の形態において、複合酸化物とはガドリニウムおよびエルビウムの酸化物であって、Erの原子数に対するGdの割合をXとした場合の化学式が、Er1−XGdXO1.5で表わされる酸化物である。この際、ガドリニウムおよびエルビウムは、上述の説明の場合と等価ガドリニア濃度および等価エルビア濃度が等しくなるようにする。等価ガドリニア濃度とは、複合酸化物中のGdが単独のガドリニアとして存在した場合の濃度である。同様に等価エルビア濃度とは、複合酸化物中のErが単独のエルビアとして存在した場合の濃度である。
このような可燃性毒物入燃料棒は、たとえば次のように製造することができる。まず、ガドリニウムおよびエルビウムを、それぞれの硝酸塩水溶液の混合溶液に炭酸アンモニウムを加えて共沈させたものを加熱分解させる。これにより、ガドリニウムとエルビウムとの複合酸化物の粉末が得られる。このガドリニウムとエルビウムとの複合酸化物の粉末を、所定の量の二酸化ウラン粉末と希釈混合することによって均一に混合された酸化物粉末が得られる。
ごく微量のガドリニアを二酸化ウランに含有させる場合、二酸化ウラン粉末中あるいはペレット内の中性子毒物の濃度分布が不均一となるおそれがある。しかし、ガドリニウムを、物性が類似した希土類元素であるエルビウムに希釈させた複合酸化物粒子を用いると、その複合酸化物粒子内のガドリニウム分布の均質性が高まる。さらに、同一のガドリニウム濃度を得るための粉末粒子の数が多くなり、ガドリニウムを含有する粒子を均一に分散させることが容易にできる。
また、ガドリニウムは中性子吸収微視断面積が非常に大きいため、ガドリニアのみの粒子では、ガドリニウムを含有する粒子が大きいほど中性子吸収の自己遮へい効果が増して中性子吸収効率が低下する。このため、ガドリニウムを含有する粒子の径はできるだけ小さい方が好ましい。しかし、ガドリニウムをエルビウムに希釈させた複合酸化物粒子を用いると、ガドリニウムを含有する粒子中のガドリニウムの密度が小さくなるため、自己遮へい効果を低減して中性子吸収効率の低下を抑制できる。
本実施の形態の燃料集合体の設計方法は、ウラン235の濃縮度が5wt%を超える場合についても適用可能である。この場合、中性子毒物としてエルビウムのみを用いた仮想的な燃料集合体に添加されるエルビウムの濃度は、ウラン235の濃縮度が5wt%で中性子毒物を添加しない燃料集合体の燃焼初期の無限増倍率、すなわち、燃焼初期の無限増倍率以下に抑制できるような値とする。このようなエルビウムの濃度は、たとえば特許文献2にエルビアの濃度として記載されている。
このように仮想的な燃料集合体に添加されるエルビウムの濃度を、ウラン235の濃縮度が5wt%で中性子毒物を添加しない燃料集合体の燃焼初期の無限増倍率以下とすることにより、本実施の形態の方法で設計された燃料集合体の無限増倍率がウラン235の濃縮度が5wt%で中性子毒物を添加しない燃料集合体よりも小さいことが担保される。その結果、本実施の形態の方法で設計された燃料集合体を、ウラン235の濃縮度が5wt%以下の場合に未臨界性が担保されている機器・施設で取り扱っても未臨界性が担保されることになる。
図6は、本実施の形態と同じ形状でウラン235の濃縮度が6.5wt%の燃料集合体において、すべての燃料棒にある濃度のエルビアを添加した燃料集合体の無限増倍率燃焼変化の例を示すグラフである。
図6に示すように、エルビアの濃度増加に伴って、無限増倍率の燃焼変化はより緩やかになる。微量の中性子毒物を添加するのは、未臨界性を担保することであるから、仮想的な燃料集合体の設計において添加されるエルビアの濃度は、無限増倍率の燃焼変化が単調減少となる、0.5wt以下とする。
図7は、未臨界性を担保するために必要なガドリニアの濃度とウラン235の濃縮度との関係を示すグラフである。
図7に示すガドリニア濃度は、微量のガドリニア単独で臨界安全を確保するための最小限のガドリニア濃度である。このガドリニア濃度は、非特許文献1に記載された臨界管理法のうち最も保守的な質量管理条件のもとで計算評価された、5wt%超濃縮度におけるUO2粉末に添加する最低限必要なガドリニアの濃度と濃縮度の関係である。
濃縮度5、7、8および10wt%におけるUO2粉末でのガドリニア濃度はそれぞれ0、53、110、170および305ppmである。これらの点を結ぶと、図7に示すように、濃縮度が5wt%を超えるウラン濃縮度の5wt%からの増分と添加すべき等価ガドリニアの濃度との関係はほぼ比例する。
そこで、この関係が比例であるとすると、濃縮度が5wt%を超えるUO2粉末のウラン濃縮度の5wt%からの増分に対する比例定数は、ウランの濃縮度が10wt%の場合の添加すべきガドリニアの濃度である305×10−4wt%(=305ppm)をウランの濃縮度10wt%の5wt%からの増分、すなわち、5wt%で除して、61×10−4となる。
すなわち、濃縮度が5wt%を超えるUO2粉末のウラン濃縮度の5wt%からの増分(wt%)に61×10−4を乗ずることにより、容易に添加すべきガドリニア濃度(wt%)の下限値を設定することができる。ガドリニア濃度をここで求めた下限値以上の値とすることによって、エルビアの濃度に関係なく臨界安全が確保される。一方、このガドリニア濃度が過大の場合、炉心の初期余剰反応度が低下して出力運転時に未臨界となるおそれがある。
図8は、本実施の形態と同じ形状でウラン235の濃縮度が6.5wt%の燃料集合体において、すべての燃料棒にある濃度のガドリニアを添加した燃料集合体の無限増倍率燃焼変化の例を示すグラフである。
図8に示すように、ガドリニア濃度の増加に伴って、無限増倍率は燃焼初期で小さくなるが、燃焼とともに急激に増大する。燃焼初期の無限増倍率が過度に小さくなると、その燃料集合体を装荷した炉心で臨界を達成できない可能性がある。そこで、本実施の形態の方法で設計した燃料集合体を装荷した炉心の運転サイクル初期における余剰反応度を十分確保し、かつ、急な反応度変化を避ける観点から反応度変化は0.15程度以内にするため、燃焼初期の無限増倍率は1.15より大きくするのが好ましく、これに対応して燃料集合体平均のガドリニア濃度は0.05wt%以下とするのが好ましい。
図9は、本実施の形態におけるウラン濃縮度が6.5wt%の燃料集合体の出力運転時における無限増倍率の燃焼変化を示すグラフである。図10は、図9の燃焼初期を拡大したグラフである。図11は、図9の燃焼途中を拡大したグラフである。
この場合の仮想的な燃料集合体は、ウラン235の濃縮度が6.5wt%で一様であり、全ての燃料棒4にエルビウムがエルビアとして0.4wt%含有されている。図9ないし図11において、この仮想的な燃料集合体の無限増倍率は、一点鎖線で示されている。また、図9ないし図11には、同じ濃縮度で可燃性毒物を含有しない燃料集合体の無限増倍率を破線で示している。
この仮想的な燃料集合体に対して、エルビウムの含有量を低減し、さらにガドリニウムを添加して、出力運転時の無限増倍率の最大値が仮想的な燃料集合体以下となる燃料集合体を設計した場合、全ての燃料棒4に、たとえばエルビウムをエルビアとして0.3wt%含有し、ガドリニウムをガドリニアとして0.02wt%含有する。設計された燃料集合体の無限増倍率は、図9ないし図11に実線で示している。
このように、ウラン235の濃縮度が5wt%を超える場合であっても、ウラン235の濃縮度が概ね10wt%以下であれば、エルビアの含有量を少なくする代わりに、微量のガドリニアを添加することにより、寿命を通じての出力運転時の無限増倍率の最大値が増大しないようにすることができる。その結果、可燃性毒物としてエルビウムのみを用いた燃料集合体に比べて、臨界安全性を損なうことがない。エルビアの含有量を低減させているが、ガドリニアを添加しているため、燃焼初期の出力運転時の無限増倍率を低減することができる。その結果、運転サイクル初期の余剰反応度を仮想的な燃料集合体を装荷した炉心と同程度以下に抑制することができる。
また、エルビアの含有量を低減しているため、たとえば運転サイクル末期など燃焼が進んだ時点での可燃性毒物であるエルビウムの残留量を低減することができ、図11に示すように燃焼が進んだ時点での出力運転時の無限増倍率を高めることができる。その結果、運転サイクル末期相当の燃焼度においては、炉心の反応度損失を低減することができる。これによって、原子炉燃料の濃縮度上昇による燃料サイクルコスト低減効果を有効に活用して経済性向上が図られる。
図12は、本実施の形態の方法で設計した燃料集合体に添加するエルビア濃度およびガドリニア濃度を仮想的な燃料集合体のエルビア濃度とともに示す表である。
図12に示すように、仮想的な燃料集合体に対する設計された燃料集合体のエルビア濃度の低減割合が大きくなると、設計された燃料集合体に添加すべきガドリニア濃度は大きくなる。
図13は、本実施の形態の方法における仮想的な燃料集合体のエルビア濃度と設計された燃料集合体に添加すべきガドリニア濃度との関係を示すグラフである。
図12および図13に示すように、設計された燃料集合体に添加すべきガドリニア濃度Wgd(wt%)は、仮想的な燃料集合体のエルビア濃度Wer(wt%)と仮想的な燃料集合体からのエルビア濃度の低減割合fを用いて、Wgd=0.04×Wer 2×(1+f)5X+4と表わすことができる。
なお、以上の説明は単なる例示であり、本発明は上述の実施の形態に限定されず、様々な形態で実施することができる。たとえば上述の実施の形態は、加圧水型原子炉用燃料集合体を例として説明しているが、沸騰水型原子炉用燃料集合体についても同様である。
4,5…燃料棒、6…制御棒案内シンブル、7…炉内計装用案内シンブル、10…燃料集合体
Claims (7)
- ウランペレットを装填した燃料棒を束ねて原子炉に装荷可能な燃料集合体の設計方法において、
可燃性毒物としてエルビウムのみを用いて前記原子炉に装荷可能な仮想的な燃料集合体を設計する第1工程と、
前記仮想的な燃料集合体とウランの濃縮度分布が同じでその燃料集合体よりも中性子増倍率の最大値が小さい燃料集合体を、前記仮想的な燃料集合体からエルビウムの濃度を減じかつガドリニウムを添加して設計する第2工程と、
を有することを特徴とする燃料集合体の設計方法。 - 前記燃料集合体中のウラン235の濃縮度は5wt%よりも大きくかつ10wt%以下であって、前記第2工程で設計される燃料集合体中の前記燃料ペレット中のガドリニアの含有割合はその燃料ペレット中のウランの濃縮度の5wt%からの増分に61×10−4を乗じた値以上であることを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体の設計方法。
- 前記第2工程で設計される燃料集合体中の前記燃料ペレット中のガドリニアの含有割合は0.05wt%以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の燃料集合体の設計方法。
- 前記仮想的な燃料集合体の平均のエルビアの濃度は0.5wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の燃料集合体の設計方法。
- 前記第2工程で設計される燃料集合体の平均のガドリニア濃度Wgd(wt%)は、前記仮想的な燃料集合体の平均のエルビア濃度Wer(wt%)、および、前記第2工程でエルビア濃度を減じる割合fを用いて、Wgd=0.04×Wer 2×(1+f)5X+4で表されることを特徴とする請求項4に記載の燃料集合体の設計方法。
- 前記第2工程で設計される燃料集合体に添加されるエルビウムおよびガドリニウムは、エルビウムの原子数に対するガドリニウムの割合Xに対する化学式Er1−XGdXO1.5で表わされる複合酸化物であることを特徴とする請求項1ないし請求項5に記載の燃料集合体の設計方法。
- ウランペレットを装填した燃料棒を束ねて原子炉に装荷可能な燃料集合体において、可燃性毒物としてエルビアのみを用いて前記原子炉に装荷可能な仮想的な燃料集合体に対して、この仮想的な燃料集合体とウランの濃縮度分布が同じでその仮想的な燃料集合体よりも中性子増倍率の最大値が小さく、前記仮想的な燃料集合体からエルビアの濃度を減じかつガドリニアを添加したことを特徴とする燃料集合体。
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