しかしながら、掘削治具を用いる立設ポールの設置方法は、掘削治具によってガイド穴を形成した後、ガイド穴から掘削治具を取り除き、その後さらに、ガイド穴に立設ポールを差し込むというように、作業工程が多く、設置作業に時間がかかる。また、潮流などの影響を受けることによって、差込時に立設ポールがガイド穴からずれてしまったり、水の透明度が低いこと等によってガイド穴を目視できない場合には、立設ポールから受ける感触でガイド穴を探す必要があったりするため、ガイド穴と立設ポールとの位置合わせに手間取ってしまうという問題がある。つまり、立設ポールをガイド穴に差し込むことが難しいため、作業効率が悪くなる。
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、立設ポール、それに用いるドリルおよび立設ポールの設置方法を提供することである。
この発明の他の目的は、礫層や貝殻層などを含む硬い水底に対しても容易に設置できる、立設ポール、それに用いるドリルおよび立設ポールの設置方法を提供することである。
この発明は、上記の課題を解決するために、以下の構成を採用した。なお、括弧内の参照符号および補足説明などは、本発明の理解を助けるために後述する実施の形態との対応関係を示したものであって、この発明を何ら限定するものではない。
第1の発明は、先端部が水底に差し込まれて立設される立設ポールであって、筒状に形成されるポール本体、ポール本体内に挿通される通水管、通水管の後端に設けられて通水管と圧送ポンプの送水管とを着脱可能に接続する接続部、およびポール本体の先端に設けられて通水管と連接される水噴出用通路を備える、立設ポールである。
第1の発明では、立設ポール(10)は、筒状に形成されるポール本体(12,16,18)を備え、たとえば、小型船舶(104)などを係留するための船舶係留用ポールとして用いられる。たとえば、ポール本体は、合成樹脂製などのポール部材(20)を連結することによって形成され、その内部には通水管(42)が挿通される。通水管の後端には、圧送ポンプ(108)から延びる送水管(112)と着脱可能に接続するための接続部(52)が設けられる。また、ポール本体の先端には、たとえば、通水管の先端と連接されるノズル管(38)によって形成される、水噴出用通路(36)が設けられる。
このような立設ポールを水底に立設する場合には、圧送ポンプから通水管に供給される高圧水を、水噴出用通路を介して立設ポールの先端から噴射することによって、水底にガイド穴(116)を形成する。また、これと同時に、作業者が立設ポールを下方向に押し込むことによって、水底に形成されたガイド穴に立設ポールを差し込んでいく。つまり、高圧水の噴射によって水底を掘削しながら先端部を水底に差し込む。
第1の発明によれば、高圧水の噴射によるガイド穴の形成と立設ポールの水底への差し込みとを同時に行える。つまり、水底に形成されたガイド穴と立設ポールとの位置合わせを行う必要が無くなる。したがって、礫層や貝殻層などを含む硬い水底に対しても容易に設置でき、作業効率を高めることができる。
第2の発明は、第1の発明に従属し、ポール本体の先端に設けられるドリルを備え、水噴出用通路は、ドリルを回転軸方向に連通する。
第2の発明では、ポール本体(12,16,18)の先端には、ドリル(14)が設けられる。水噴出用通路(36)は、ドリルを回転軸方向に連通してドリルの先端まで延びる。このような立設ポール(10)では、ドリルの先端から高圧水を噴射することによって、水底(100)にガイド穴(116)を形成すると同時に、作業者が立設ポールを下方向に押しながら回転させることによって、ドリルの回転推進力を利用して水底に立設ポールを差し込んでいく。つまり、ドリルの回転推進力および高圧水の噴射の双方を利用して水底を掘削しながら先端部を水底に差し込む。
第2の発明によれば、先端にドリルを備えることによって、ドリルの回転推進力および高圧水の噴射の双方を利用して水底を掘削できるので、立設ポールの水底への差し込みを容易に実行できる。特に、ドリルの回転推進力を利用することによって、立設ポールの進行方向を制御し易くなるので、立設ポールを鉛直方向に容易に差し込むことができる。さらに、ドリルがアンカ機能を発揮するので、設置後の立設ポールの抜けや転倒を確実に防止できる。
第3の発明は、先端部が水底に差し込まれて立設される立設ポールの先端に取り付けられるドリルにおいて、回転軸方向に連通する水噴出用通路を形成したことを特徴とする、ドリルである。
第3の発明では、ドリル(14)は、先端部が水底(100)に差し込まれて立設される立設ポール(10)の先端に取り付けられる。ドリルには、水噴出用通路(36)が形成される。この水噴出用通路は、ドリルを回転軸方向に連通し、圧送ポンプ(108)からの高圧水を噴出するための通路として利用される。
第3の発明によれば、第2の発明と同様に、礫層や貝殻層などを含む硬い水底に対しても容易に設置でき、また、設置後の抜けや転倒を確実に防止できる立設ポールを提供できる。
第4の発明は、第3の発明に従属し、2枚の板を重ねて捻った形状を有し、両側縁が共に外側螺旋を形成する刃部を備える。
第4の発明では、ドリルの刃部(24)は、2枚重ねの板(28)を捻った形状を有しており、その両側縁(30)は共に外側螺旋を形成し、両側縁の間に形成される2つの面は螺旋面(32)を形成する。この立設ポール(10)を水底(100)に差し込む際には、ドリルが上向きと下向きとを交互に現出させる螺旋面を有することによって、泥、砂および貝殻などの入り込みおよび排出が効率良く行われる。
第4の発明によれば、ドリルの刃部を捻り形状としたので、水底に差し込む際の泥などの排除効果が大きくなり、回転推進力が増す。また、ドリルの刃部を2枚重ねの板によって形成したので、2枚の板が互いに補強し合い、水底への差し込みに耐え得る適度なドリル強度を保持できる。
第5の発明は、立設ポールの水底への設置方法であって、立設ポール先端からの高圧水の噴射によって水底を掘削しながら、立設ポールの先端部を水底に差し込み埋設する、立設ポールの設置方法である。
第5の発明では、圧送ポンプ(108)等から供給される高圧水を立設ポール(10)の先端から噴射することによって、水底(100)を掘削してガイド穴(116)を形成すると同時に、そのガイド穴に立設ポールの先端部分を差し込んでいくことによって、立設ポールを立設する。
第5の発明によれば、高圧水の噴射によるガイド穴の形成と立設ポールの水底への差し込みとを同時に行うので、礫層や貝殻層などを含む硬い水底に対しても設置作業を容易に行うことができ、作業効率を高めることができる。
第1の発明によれば、高圧水の噴射によるガイド穴の形成と立設ポールの水底への差し込みとを同時に行えるので、礫層や貝殻層などを含む硬い水底に対しても設置作業を容易に行うことができ、作業効率を高めることができる。
また、第2の発明によれば、先端にドリルを備えることによって、ドリルの回転推進力および高圧水の噴射の双方を利用して水底を掘削できるので、立設ポールの水底への差し込みを容易に実行できる。特に、ドリルの回転推進力を利用することによって、立設ポールの進行方向を制御し易くなるので、立設ポールを鉛直方向に容易に差し込むことができる。さらに、ドリルがアンカ機能を発揮するので、設置後の立設ポールの抜けや転倒を確実に防止できる。
この発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う後述の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
図1を参照して、この発明の一実施例である立設ポール10は、海、湖、池および河川などの水底100に先端部が差し込まれ、水面102から後端部が突出するように立設されるものである。立設ポール10は、たとえば、マリーナ(船舶の停泊所)等に設置される、小型船舶や漁船などの船104を係留するための船舶係留用ポールとして好適に用いられる。
図2に示すように、立設ポール10は、ポール本体12およびその先端に設けられるドリル14を備える。ポール本体12は、合成樹脂製の筒状体であり、設置時に主として水面下に位置する第1本体16、および主として水面上に位置する第2本体18を含む。なお、詳細は後述するように、立設ポール10を水底100に立設する際には、先ず第1本体16を含む立設ポール10の下部分(図6および10参照)が水底100に立設され、その後、第1本体16に第2本体18が接続される。
具体的には、ポール本体12は、複数のポール部材20を軸方向に連結することによって形成される。この実施例の場合、ポール本体12は、3つの円筒状のポール部材20を連結することによって形成されており、設置時に下方に位置する2本のポール部材20が第1本体16を構成し、最上部に位置するポール部材20が第2本体18を構成する。ポール部材20の軸方向の長さは、たとえば4mであり、ポール本体12全体としての長さは、たとえば12mに設定される。また、ポール部材20の外径は、たとえば50−150mmである。ポール部材20としては、たとえば、汎用のVU管(硬質塩化ビニル管)の外面にFRP(繊維強化プラスチック)をライニングしたものを用いるとよい。これにより、耐久性が高くかつ軽量のポール部材20(延いてはポール本体12)を低コストで製造できる。
なお、ポール本体12は、同径のポール部材20を接続して形成することもできるが、外径の異なるポール部材20を組み合わせて形成することもできる。この実施例では、第1本体16には、大径(外径が119mm)のポール部材20を用い、第2本体18には、小径(外径が95mm)のポール部材20を用いている。第2本体18を小径にすることによって、立設ポール10の上部が軽量化されると共に、風などの影響を受け難くなるので、設置後の立設ポール10の揺れが軽減される。また、立設ポール10を設置する際には、第1本体16を立設した後に第2本体18を接続するので、小径つまり軽量のポール部材20を第2本体18として用いることによって、第2本体18を持ち上げる等の作業を行い易くなり、立設ポール10の設置作業が容易となる。なお、異径のポール部材20を接続した場合でも、ポール本体12の外面が滑らかに接続されるように、たとえば、小径のポール部材20、この実施例では第2本体18の一方端部は拡径される。
また、ポール部材20の接続には、インナーソケット22を介した接着接合を用いるとよい。図3(A)に示すように、同径のポール部材20同士を接続する場合には、直管状のソケットが用いられ、図3(B)に示すように、径の異なるポール部材20を接続する場合には、異径ソケットが用いられる。インナーソケット22は、接続するポール部材20の内径に応じた外径を有し、その軸方向の長さは、たとえば400−500mmに設定される。ただし、ポール部材20の接続方法は、インナーソケット22を用いる方法に限定されない。たとえば、ポール部材20の一方端にねじ溝を形成し、他端にねじ山を形成して、これらの螺合によってポール部材20同士を接続することもできる。
また、ポール本体12の先端には、ドリル14が取り付けられる。図4および5に示すように、ドリル14は、平板を捻った形状を有する刃部24と、刃部24の後端から連続的に延びる円筒状の本体接続部26とを含み、これら刃部24および本体接続部26は、硬質ポリ塩化ビニル等の合成樹脂によって形成される。
具体的には、刃部24は、2枚の板28を密着させるように重ねて、その長手方向を軸にして捻った形状を有し、これら2枚の板28の側縁同士は連結されて一体となっている。刃部24を形成する2枚の板28のそれぞれは、一方が他方を互いに補強し合う機能を有する。
また、刃部24の両側縁30は共に外側螺旋を形成し、その両側縁30の間に形成される2つ(表裏)の面は、上向きとなったり下向きとなったりする螺旋面32を形成する。さらに、刃部24の両側縁部(2枚の板28の連結部)には、両側縁部の一部または全長に亘って延びる丸み部34が形成される。丸み部34は、略円形または略楕円形の断面形状を有し、その径は、刃部24の厚さよりも大きい。
刃部24の軸方向の長さは、たとえば250−400mmであり、その幅は、ポール本体12の内径または外径に応じて設定され、たとえば30−150mmである。刃部24の幅は、ポール本体12の外径より小さくてもよいが、ポール本体12の外径と同程度の大きさに設定しておくことが好ましい。これにより、刃部24(ドリル14)によってポール本体12の外径と同程度の大きさの孔を水底100に形成できる(泥を排除できる)ので、水底100に立設ポール10をより差し込み易くなる。また、刃部24の厚さは、たとえば5−20mmであり、刃部24の強度および成形性(加工性)などを考慮すると、10mm程度であることが好ましい。また、刃部24の捻りの程度は、全体で90−360°であることが好ましく、この実施例では、180°に設定されている。刃部24をこの程度の緩やかな捻り形状に形成することにより、設置作業の際にドリル14の回転に要する力を抑えつつ、1回転あたりに進む距離を大きくすることができる。
刃部24の後端には、円筒状の本体接続部26が一体的に連結される。すなわち、刃部24を形成する2枚の板28は、その後端側において離反して徐々に円筒状となり、本体接続部26を形成する。本体接続部26の長さは、たとえば30−150mmであり、その外径は、ポール本体12(具体的には第1本体16)の内径とほぼ同じに設定されて、たとえば40−140mmである。図6に示すように、本体接続部26は、ポール本体12の先端に差し込まれ、本体接続部26の外面とポール本体12の内面とが接合剤によって直接接着される。これにより、ポール本体12にドリル14が固定して取り付けられる。なお、図示は省略するが、本体接続部26の差し込み側の端部には、ポール本体12への差し込みが容易となるように、テーパ部(縮径部)を形成しておくこともできる。また、ポール本体12と本体接続部26との接続方法は、所定の強度を有するように固定できる方法であれば特に限定されず、上述の方法以外の接続方法を用いてもよい。もちろん、本体接続部26にポール本体12の一方端を差し込んで接続する、つまり本体接続部26を受口として、ポール本体12と本体接続部26とを接続することもできる。
また、ドリル14には、後述する圧送ポンプ108から供給される高圧水をその先端から噴出するための水噴出用通路36が形成される。水噴出用通路36は、たとえば、刃部24を形成する2枚の板28の間に挿通されるノズル管38によって形成され、ドリル14を回転軸方向に連通して、刃部24の先端から本体接続部26の後端まで延びる。ノズル管38としては、たとえばステンレス製の直管を用いることができる。ノズル管38の内径、つまり水噴出用通路36の径は、たとえば10−20mmに設定される。また、ノズル管38の後端部(上端部)には、後述する通水管42との接続部として利用されるネジ山40が形成される。
図2および6に示すように、ポール本体12の内部には、通水管42が挿通される。通水管42は、硬質塩化ビニル等の合成樹脂製の直管によって形成され、第1本体16の全長に亘って延び、第1本体16の内部を軸方向に連通する。通水管42の下端部には、たとえばバルブソケット44およびねじ込み式ソケット46を介して、上述のノズル管38が同軸的に接続される(図7参照)。通水管42の内径は、ノズル管38と同じ大きさに設定され、たとえば10−20mmに設定される。通水管42は、複数の管部材48をソケット50で連結することによって形成してもよいし(図3(A)および6参照)、1本の長尺の管で形成してもよい。なお、通水管42の材質は特に限定されず、硬質塩化ビニル管の代わりに、軟質塩化ビニル製のいわゆる軟質ホース、またはアルミニウム管、ステンレス管および鋼管等の金属管などを通水管42として用いることもできる。また、ポール本体12内に通水管42を設ける際には、適宜の固定具(図示せず)を用いて通水管42をポール本体12に固定するとよい。
また、通水管42の上端部には、圧送ポンプ108から延びる軟質ホース等の送水管112(図10参照)に対して、周方向に回転可能かつ着脱可能に接続するための送水管接続部52が設けられる。送水管接続部52としては、たとえば、一対のメス側カプラ54とオス側カプラ56とによって構成される回転カプラを利用することができる。図8に示すように、この実施例では、送水管112側には、ホースニップル58等を介して、回転機能を有するメス側カプラ54が設けられ、通水管42側には、バルブソケット60等を介して、オス側カプラ56が設けられる。このように、送水管接続部52として回転カプラを用いることによって、立設ポール10の設置作業時における圧力ポンプ108の送水管112と立設ポール10の通水管42との接続を簡単に行うことができる。また、送水管接続部52に回転機能を持たせることによって、設置作業時に立設ポール10を回転させたときの、送水管112の捻れを防止できる。
続いて、図9を参照して、ドリル14の製造方法について説明する。先ず、押出成形された長尺の汎用の硬質塩化ビニル管、たとえばφ100のVP管を用意する。そして、カッタ等を用いて管を所望の長さ、たとえば400−500mmの長さに切断して、短管70を得る(図9(A))。
次に、この短管70を加熱して軟化させると共に、短管70の管軸を通るように、一方端部にネジ山を形成したステンレス管72を配置する。そして、短管70の一端部分74を除いて、短管70の管軸を中心として側方から径方向に圧縮し、短管70を押し潰して平板部76を形成する。この際、短管70の圧縮する部分の内面には接着剤を塗布しておく。これにより、短管70の圧縮によって形成される2枚重ねの平板部76の内側面同士は、接着接合される。また、短管70を圧縮する際には、平板部76の中央部においてはステンレス管72の外側面に沿うように圧縮すると共に、両側縁部78には丸みを残すようにしておく。この両側縁部78が、上述の丸み部34となり、一端部分74が、本体接続部26となる。また、ステンレス管72がノズル管38となり、ステンレス管72の内部通路が水噴出用通路36となる(図9(B))。なお、ノズル管38の材質は、特に限定されず、たとえば、鋼管などの他の金属管を用いることもできるし、必要な強度を備えていれば、硬質合成樹脂製でもよい。
そして、一端部分74および平板部76の先端部分76aをバイス(万力)等で固定し、接着剤によって平板部76の内側面とステンレス管72の外側面とが固着する前に、平板部76に対して、短管70の管軸方向を軸にしてたとえば180°の捻りを加える捻り加工を行い、刃部24を形成する。この際、先端部分76aは、ステンレス管72が挿通される部分を除いて、バイスで挟まれることによって平板状となる。なお、捻る方向は、右巻きでもよいし、左巻きでもよい。また、捻り加工を行う前には、平板部76を再度加熱して軟化させ、捻り加工を実施し易いようにしてもよい。その後、冷却水槽に浸ける等して適宜冷却し、ドリル14を得る(図9(C))。
このような方法を用いれば、切削加工などによって螺旋溝を形成する従来の鋼製ドリルの製造方法と比較して、簡単かつ安価にドリル14を製造できる。
ただし、ドリル14の製造方法は上述の方法に限定されず、射出成形や切削加工などを利用してドリル14を製造することもできる。射出成形や切削加工によってドリル14を製造する場合には、水噴出用通路36を形成する部分(ノズル管38部分)も合成樹脂によって形成するとよい。
次に、図10を参照して、上述のような構成の立設ポール10をマリーナ等に設置する設置方法の一例について簡単に説明する。
先ず、水上(たとえば浮桟橋上や船上)106に圧送ポンプ108を用意し、圧送ポンプ108の取水管110を水中に浸けておく。圧送ポンプ108としては、市販のエンジン付きポンプ(たとえば、吐出量が600リットル/分程度のもの)を用いるとよい。
また、立設ポール10のうち、第2本体18を接続する前のものを用意する。つまり、この例の場合、2本のポール部材20からなる第1本体16の先端にドリル14を取り付け、第1本体16内に通水管42を挿通した、立設ポール10の下部分(図6参照)を用意する。この立設ポール10の下部分は、工場で予め接続したものを搬入して用いてもよいし、ポール部材20やドリル14等を、部品の状態或いは一部接続した状態で搬入し、設置現場で接続作業を行って用いてもよい。
続いて、立設ポール10の通水管42と圧送ポンプ108の送水管112とを送水管接続部52を介して接続する。そして、遠方の2方向から位置と角度とを指示しながら、立設ポール10の下部分を垂直に立てた状態で水中に沈めていく。ドリル14の先端が水底100に到達すると、圧送ポンプ108を作動させて、取水管110の取水口114から水を吸い上げ、送水管112を介して立設ポール10の通水管42に高圧水を供給する。通水管42に供給された高圧水は、ドリル14の水噴射用通路36(ノズル管38)を通ってドリル14の先端から噴射され、水底100に鉛直方向に延びるガイド穴116を形成する。一方、水上106では、水噴射によるガイド穴116の形成と同時に、作業者が立設ポール10を下方向に押しながら回転させることによって、ドリル14の回転推進力を利用して水底100に立設ポール10を差し込んでいく。つまり、ドリル14の回転推進力および高圧水の噴射の双方を利用して水底100を掘削しながら、立設ポール10を水底100に差し込んでいく。
この際、水底100に礫層や貝殻層などの固い層が存在する場合であっても、ドリル14の先端から高圧水を噴射することによって固い層を粉砕掘削できるので、立設ポール10を水底100に容易に差し込むことができる。また、先端に取り付けられたドリル14が、上向きと下向きとを交互に現出させる螺旋面30を有することによって、ガイド穴116内に残る泥、砂および貝殻などの入り込みおよび排出が効率良く行われ、立設ポール10はスムーズに水底100(ガイド穴116)に差し込まれていく。また、ドリル14が緩やかな捻り形状を有することによって、立設ポール10を1回転したときに進む距離が大きくなり、立設ポール10は素早く海底に差し込まれていく。
そして、立設ポール10の下部分が水底100にしっかりと固定されると(通常、2−3m程度差し込む)、圧送ポンプ108を停止し、送水管接続部52を切り離して通水管42から送水管112を取り外す。このとき、立設ポール10の第1本体16の上部は水面102から突出した状態になるので、これに第2本体18を接続し、立設ポール10の設置作業を終了する。なお、複数の立設ポール10を設置する場合には、これらの作業を繰り返す。
この実施例によれば、立設ポール10自体から高圧水を噴射できるので、高圧水の噴射によるガイド穴116の形成と立設ポール10の水底100への差し込みとを同時に行える。したがって、水底100に形成されたガイド穴116と立設ポール10との位置合わせを行う必要が無くなり、礫層や貝殻層などを含む硬い水底100に対しても設置作業を容易に行うことができる。
また、先端にドリル14を備えることによって、ドリル14の回転推進力および高圧水の噴射の双方を利用して水底を掘削できるので、立設ポール10の水底100への差し込みをより容易に実行できる。特に、高圧水の噴射によって形成されるガイド穴116の形状は、不定形状であるため、先端のドリル14が無い場合には、立設ポール10を鉛直方向に真っ直ぐ差し込むことは難しい。しかし、ドリル14の回転推進力、つまりドリル14によるガイド穴116内に残る泥や砂などの排除機能を利用することによって、立設ポール10の進行方向(差込方向)を制御し易くなるので、立設ポール10を鉛直方向に容易に差し込むことができる。
さらに、先端にドリル14を備えることによって、刃部24がアンカ機能を発揮するので、立設ポール10を水底100に設置した後の、波(水流)や風または係留綱などの影響による立設ポール10の抜けや転倒を確実に防止できる。また、刃部24の両側縁部に丸み部34を形成したので、アンカ機能がより高まり、立設ポール10の抜けや転倒をより確実に防止できる。
また、先端に設けるドリル14の刃部24の形状を平板を捻った形状とし、上向きと下向きとが交互に現出する螺旋面32を有するようにしたので、水底100に差し込む際の泥、砂および貝殻等の排除効果が大きくなり、回転推進力が増す。また、刃部24が緩やかな捻り形状を有することにより、ドリル14が1回転するときに進む距離が大きくなる。したがって、容易に立設ポール10を水底100に差し込むことができ、立設ポール10の設置作業を容易に行うことができる。
さらに、ドリル14の刃部24を2枚の板28を重ねるような形状に形成し、2枚の板28が互いに補強し合うようにしたので、ドリル14は、水底100への差し込みに適した強度を保持でき、破損し難くなる。また、ドリル14の先端は長線状に形成されて、鋭利になりすぎないので、取扱い時の安全性も高い。
また、ドリル14の刃部24の両側縁部に丸み部34を形成することによって、立設ポール10を水底100に差し込む際に、ドリル14の刃部24の両側縁部にかかる応力を分散できるので、ドリル14の破損を防止できる。また、丸み部34が刃部24の板捻り構造の柱または芯となるため、ドリル14自体の強度も強くなる。
また、ドリル14の大部分を合成樹脂で形成したことによって、原料コストが低減できる上、鋼製のドリルと比較して軽量化もできるので、手作業での扱いが容易となり、設置作業を行い易い。
なお、上述の実施例では、3本のポール部材20を連結することによってポール本体12を形成したが、これに限定されず、2本或いは4本以上のポール部材20を連結してポール本体12を形成してもよい。つまり、第1本体16および第2本体18のそれぞれを1本のポール部材20で形成することもできるし、第1本体16および第2本体18のそれぞれを複数のポール部材20で形成することもできる。また、ポール本体12を第1本体16と第2本体18とで分割せずに、ポール本体12を1本の長尺の管によって形成してもよい。1本の長尺のポール本体12を用いる場合には、ポール本体12内に挿通される通水管42は、ポール本体12の軸方向全長に亘って延びるように設けられる。なお、ポール本体12やポール部材20の長さ、およびポール部材20を接続する本数などは、水底100に差し込む長さや設置場所の水深などに応じて適宜設定される。
また、上述の実施例では、ドリル14(刃部24)の先端は、ポール本体12の端面と平行な方向に延びる長線状に形成したが(図4および6参照)、先端の形状はこれに限定されない。先端の形状は、たとえば、山型に形成することもできるし、ポール本体12の端面に対して斜め方向に延びる長線状に形成することもできる。また、ドリル14の先端に面取りを施して、先端を鋭角に形成することもできる。さらに、ドリル14の刃部24の両側縁部に丸み部34を形成したが、刃部24の側縁部の一方のみに丸み部34を形成することもできるし、丸み部34を形成しないこともできる。また、丸み部34を形成する代わりに、刃部24の側縁部の断面形状を矩形状および三角形状などに形成することによって、刃部24のアンカ効果を高めるようにしてもよい。
また、上述の実施例では、ドリル14に設けるノズル管38として直管を用いたが、ノズル管38の内壁(水噴出用通路36)をその先端に向かって縮径するテーパ状に形成することもできる。これにより、ノズル管38を通過する水は加速されて、ドリル14の先端から水をより強力に噴射させることができる。また、通水管42とノズル管38との接続部分をテーパ状に形成し、通水管42よりノズル管38を縮径させるようにしてもよい。
また、上述の実施例では、ドリル14として平板を捻った形状の刃部24を有するものを用いたが、ドリル14の形状はこれに限定されない。たとえば、図11に示すように、ノズル管38の外側面に螺旋状の刃部24を形成したドリル14を用いることもできる。なお、図11に示すドリル14では、たとえば、ノズル管38の上端部には、通水管42との接続部として利用されるネジ山40と、ポール本体12との接続部として利用される円柱状または円筒状の本体接続部26とが形成される。図11に示すようなドリル14を用いても、図4に示すドリル14と同様に、ドリル14の回転推進力および高圧水の噴射の双方を利用して水底100を掘削でき、かつ、立設ポール10の設置後には、刃部24がアンカ機能を発揮して水底100からの抜けや転倒を防止できる。
また、上述の実施例では、ドリル14の大部分を合成樹脂によって形成したが、ドリル14の材質は特に限定されず、たとえば、刃部24や本体接続部26などをアルミニウムやステンレス等の金属によって形成してもよい。ただし、作業性や製造コスト等を考慮すると、ドリル14は、軽量化でき、かつ低コストで製造できる合成樹脂をより多く用いて形成することが好ましい。ポール本体12や通水管42についても同様である。
また、上述の実施例では、立設ポール10を設置した状態で、通水管42をポール本体12内に挿通したままにしているが、これに限定されず、立設ポール10は、通水管42を回収できる構造としてもよい。たとえば、通水管42とノズル管38との接続部に、所定の押力などを加えることによってロックが解除される着脱機能を備えるようにし、第1本体16の設置後にノズル管32から通水管42を取り外して回収するようにするとよい。
また、上述の実施例では、立設ポール10の先端に水噴出用通路36を有するドリル14を取り付けるようにしたが、ドリル14を取り付ける代わりに、立設ポール10(ポール本体12)の先端部に碇形状や楔形状などのアンカ部を形成するようにしてもよい。たとえば、合成樹脂製の円筒状のポール本体の後端に、圧送ポンプ108の送水管112に対して着脱可能な接続部を設け、ポール本体の先端に、ポール本体より縮径されたノズル管を接続する。そして、ノズル管の外面には、斜め後端方向に向かって突出する爪部を形成して、この部分をアンカ部とする。この立設ポール10では、ポール本体の内部通路が通水管として機能し、ノズル管の先端から高圧水が噴射される。もちろん、通水管として小径の管をポール本体内に別途設けることもできる。このような立設ポール10であっても、水噴射によって水底100にガイド穴116を形成できるので、礫層や貝殻層などを含む硬い水底100に対しても差し込みが可能となる。すなわち、高圧水の噴射によるガイド穴116の形成と立設ポール10の水底100への差し込みとを同時に行える。また、水底100に埋設される先端部に形成されたアンカ部がアンカ効果を発揮するので、立設ポール10の抜けや転倒が防止される。なお、ドリル14は、アンカ部に回転推進機能を付加したものであるとも言える。
立設ポール10の先端にドリル14を設けない場合には、水底100への差込時に立設ポール10を回転させる必要はないので、圧送ポンプ108の送水管112との接続部に回転機能を設ける必要がなくなる。したがって、立設ポール10の構造をシンプルにでき、製造コストも低減できる。ただし、上述のように、先端にドリル14を設けない場合には、ドリル14による掘削機能、つまりガイド穴116内に残る泥、砂および貝殻等の排除効果が利用できなくなるので、立設ポール10を鉛直方向に真っ直ぐ差し込むことが難しくなり、設置作業性が悪くなる。したがって、立設ポール10の先端には、ドリル14を設ける方が好ましい。
また、上述の実施例では、立設ポール10を船舶係留用ポールとして用いたが、これに限定されない。たとえば、水中或いは水上において船104以外の物体を支持するために用いることもできるし、水中或いは水上における指標(澪木)として用いることもできる。