JP2011236411A - 土壌改良材の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有害重金属に対して優れた吸着能を発揮することのできる土壌改良材を容易かつ低コストで製造する方法を提供する。
【解決手段】動物の生の骨を水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液などのアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離するアルカリ処理工程と、アルカリ処理工程を終えた骨を焼成することによって骨に残存する脂質又は蛋白質を焼失させる焼成工程と、焼成工程を終えた骨を粉状又は顆粒状に破砕する粉砕工程とを経て、ハイドロキシアパタイトを成分に有する土壌改良材を製造する。
【選択図】図1

Description

本発明は、土壌へ散布することにより、土壌中に含まれるカドミウムなどの有害重金属が植物へ吸収されるのを抑制することのできる土壌改良材の製造方法に関する。
カドミウムを多量に摂取すると、腎機能が低下して骨軟化症などの疾患を発症しやすくなることが知られており、カドミウムを含有する農作物の流通は、世界各国で制限されている。例えば、日本では、カドミウム濃度が1.0ppm以上の玄米は、汚染米として焼却処分されることになっている。また、カドミウム濃度が1.0ppm未満の玄米であっても、0.4ppm以上のものは、準汚染米として食用に供することができない。
農作物のカドミウム汚染は、植物に吸収されやすい形態のカドミウムが田畑の土壌に多く含まれていることが原因で引き起こされることが知られている。農作物を汚染するカドミウムの多くは、鉱山や工場からの廃水に含まれるカドミウムが田畑に流入したものと考えられている。このような環境において農作物のカドミウム汚染を防ぐためには、表層の汚染土壌を取り除いて非汚染土壌を新たに入れる客土が最も有効であると云われている。
しかし、客土は、膨大な費用(水稲栽培の場合で水田1ha当たり約5千万円)を要する、土壌管理に要する労力が増大する、汚染土壌を取り除いた部分よりも下層が汚染されていた場合には一時的な効果しか得ることができない、除去した汚染土壌の処分が困難である、非汚染土壌を採取した地域の自然環境を悪化させるおそれがある、などの欠点を有しており、必ずしも容易に普及させることのできる技術とはなっていなかった。
このような実状に鑑みてか、近年には、重金属を優先的に吸着する性質を有することで知られるハイドロキシアパタイトを利用した土壌改良材も提案されるようになっている。このハイドロキシアパタイトは、カルシウムとリン酸を合成することによって人工的に製造できるものの、その合成にはコストが嵩んでしまう。このため、土壌改良材としては、ハイドロキシアパタイトが主成分である牛骨など、動物の骨を利用したものも提案されるようになっている。
例えば、特許文献1には、ブレーン比表面積が4000cm/g以上であるハイドロキシアパタイト含有物質の骨灰を土壌に添加することを特徴とする作物への重金属吸収抑制方法が提案されている。これにより、土壌への影響を最小限にとどめながら、作物への重金属の吸収を抑えることができるとされている。しかし、特許文献1の重金属吸収抑制方法は、動物の骨を高温で焼成した骨灰を使用するものであったため、天然ハイドロキシアパタイトを使用するとはいえ、必ずしもカドミウムなどの有害重金属に対して優れた吸着能を発揮できるものとはなっていなかった。「骨灰」は、一般的に、骨を空気の流通下で1000℃以上の温度で焼成したものと定義されているが、骨をそのような高温で焼成すると、それに含有されるハイドロキシアパタイトの結晶性が高まるおそれがあるからである。
また、特許文献2には、動物の骨などに含まれる動物由来の天然ハイドロキシアパタイトを酸溶液中で分解させ、これにより得られるカルシウム塩とリン酸塩を含む酸溶液にアルカリ溶液を加えてpHを所定の範囲に保ちつつ、前記カルシウム塩とリン酸塩を反応させ、これで得られる沈殿物を多数の細孔を有する多孔質基材(木炭やコークスや多孔質鉱物など)に含浸させることで非晶質のハイドロキシアパタイトを含有させた重金属用吸着剤が記載されている。これにより、多孔質基材に含浸されたハイドロキシアパタイトを非晶質として、得られる重金属用吸着剤の重金属に対する吸着能を高めることができるとされている。特許文献2には、動物由来の天然ハイドロキシアパタイトとして、骨灰を用いることが記載されている。
しかし、特許文献2の重金属用吸着剤は、結晶性の高い焼成後の骨(骨灰)を原料として使用することを想定したものとなっていたため、骨に含まれる天然ハイドロキシアパタイトをカルシウム塩とリン酸塩とに一旦分解した後、その分解したカルシウム塩とリン酸塩とを反応させて沈殿させるという非常に回りくどい工程を要するものとなっていた。また、非晶質のハイドロキシアパタイトを多孔質基材に含浸するためには、ジェリー状に沈殿したハイドロキシアパタイトの粘度などを適切な範囲に調節しなければならず、非常に煩わしかった。このため、特許文献2の重金属用吸着剤は、必ずしもその製造コストを抑えることができるものとは言えなかった。
さらに、特許文献3には、畜産物の加工処理過程で産出される家畜骨にオートクレーブ処理を施したものを原料とし、この原料の供給量と燃焼用かつ流動化用空気供給量の制御が可能な流動焼成炉にて、600〜900℃の一定温度で前記原料を自然燃焼することにより、天然ハイドロキシアパタイトを得る天然ハイドロキシアパタイトの製造方法が記載されている。これにより、粒子径や結晶性が均一な天然ハイドロキシアパタイトを、悪臭などを発生させることなく連続的に生産することが可能になるだけでなく、天然ハイドロキシアパタイトの製造コストを抑えることもが可能になるとされている。特許文献3には、得られた天然ハイドロキシアパタイトを、有害重金属などの吸着剤として利用することや、家畜骨として牛骨(焼成処理前の冷凍保存された牛大腿骨)を使用することについても記載されている。
特許文献3の天然ハイドロキシアパタイトの製造方法は、動物の骨を1000℃以上の高温で焼成することを要さないものであったため、得られた天然ハイドロキシアパタイトは、カドミウムなどの有害重金属の吸着能も大きく低下していないと思われる。しかし、特許文献3の天然ハイドロキシアパタイトの製造方法は、原料となる家畜骨にオートクレーブ処理を施すものであったため、高価で大掛かりな装置が必要になるという欠点があった。また、オートクレーブ処理を施した家畜骨は、シャワー洗浄によってそれに付着するコラーゲン成分などを抽出除去してから流動焼成炉にて燃焼しなければ、その後燃焼を行う流動焼成炉に脂分などが多量に付着して流動焼成炉が壊れるおそれもあった。したがって、特許文献3の天然ハイドロキシアパタイトの製造方法も、必ずしも製造コストを抑えることができるものとは言えなかった。
特開2004−051762号公報(請求項1、段落0029) 特開平09−192481号公報(請求項3、段落0003〜0007,0010,0012) 特開平07−277712号公報(請求項1、段落0001,0006,0008)
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、カドミウムなどの有害重金属に対して優れた吸着能を発揮することのできる土壌改良材を容易かつ低コストで製造することのできる土壌改良材の製造方法を提供するものである。また、食肉の生産・流通過程で出る動物の骨を有効に利用することも本発明の目的である。
上記課題は、動物の生の骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離するアルカリ処理工程と、アルカリ処理工程を終えた骨を焼成することによって骨に残存する脂質又は蛋白質を焼失させる焼成工程と、焼成工程を終えた骨を粉状又は顆粒状に破砕する粉砕工程とを経て、ハイドロキシアパタイトを成分に有する土壌改良材を製造することを特徴とする土壌改良材の製造方法を提供することによって解決される。アルカリ処理工程で用いるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液などが挙げられる。
このように、アルカリ処理工程を行うことにより、骨に付着する脂質や蛋白質の大部分を取り除くことができるようになる。したがって、焼成工程で骨から脂が落ちないようにすることができるので、骨を焼成する装置(電気炉など)がそれにこびり付いた脂などで故障しないようにすることが可能になる。また、焼成工程における焼成温度を低く抑えたり、焼成時間を短く抑えたりすることもできるので、得られる土壌改良材に含まれるハイドロキシアパタイトの結晶化を抑えることができ、カドミウムなどの重金属に対する土壌改良材の吸着能の低下を抑えることが可能になる。また、焼成工程の省エネルギー化を促進することも可能になる。加えて、アルカリ処理工程でアルカリ溶液として水酸化ナトリウム溶液を用いた場合には、骨から分離した脂質を通常の石鹸原料として利用することもできるので、資源の有効利用を図ることも可能になる。
ここで、「動物」とは、牛や豚などの家畜、鶏などの家禽だけでなく、魚をも含む概念である。また、「生の骨」とは、焼成などの加熱処理が施されていない骨のことを云う。「生の骨」には、脂質や蛋白質が付着した状態となっている。動物の身体から取り外された後に加熱処理が施されていないのであれば、冷凍処理など、他の処理を経た骨であっても、「生の骨」の範疇に含まれるものとする。動物が牛や豚などの家畜である場合、「生の骨」は、と蓄場や食肉加工場や精肉店など、食肉の生産過程・加工家庭・流通過程・販売過程において入手することができる。
また、本発明の土壌改良材の製造方法において、アルカリ処理工程は、動物の骨を水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液などのアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理を少なくとも1度行うものであれば、特に限定されないが、このアルカリ処理を多段階で行うものであると好ましい。例えば、アルカリ処理工程を、動物の生の骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離する第一次アルカリ処理工程と、第一次アルカリ処理工程を終えた骨を破砕する破砕工程と、破砕工程を終えて当初よりも小さくなった骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離する第二次アルカリ処理工程とを経るものとすると好ましい。
このような構成を採用することにより、第一次アルカリ処理工程では分離しきれなかった脂質や蛋白室を第二次アルカリ処理工程で除去することが可能になる。加えて、骨を破砕してから焼成工程で焼成することも可能になる。したがって、焼成工程における焼成温度をさらに低く抑えたり、焼成時間をさらに短く抑えたりすることも可能になるので、得られる土壌改良材に含まれるハイドロキシアパタイトの結晶化をさらに抑えることもできる。
以上のように、本発明によって、カドミウムなどの有害重金属に対して優れた吸着能を発揮することのできる土壌改良材を容易かつ低コストで製造することのできる土壌改良材の製造方法を提供することが可能になる。また、食肉の生産・流通過程で出る動物の骨を有効に利用することも可能になる。
本発明の土壌改良材の製造方法における処理の流れの一例を示したフロー図である。 試料1〜6に含まれるカドミウムを形態別(交換態、無機結合態、有機結合態、遊離酸化物吸蔵態、残渣画分)に測定した結果を示したグラフである。 試料10,20〜24,30〜34に含まれるカドミウムを形態別(交換態、無機結合態、有機結合態、遊離酸化物吸蔵態、残渣画分)に測定した結果を示したグラフである。
本発明の土壌改良材の製造方法の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。図1は、本発明の土壌改良材の製造方法における処理の流れの一例を示したフロー図である。本発明の土壌改良材の製造方法の具体的な実施態様は、以下で説明するものに限定されず、適宜変更を加えることができる。
1.0 土壌改良材の製造方法の概要
本実施態様の土壌改良材の製造方法は、図1に示すように、
(A)動物の生の骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離するアルカリ処理工程Aと、
(C)アルカリ処理工程Aを終えた骨を乾燥する乾燥工程Cと、
(D)乾燥工程Cを終えた骨を焼成することによって骨に残存する脂質又は蛋白質を焼失させる焼成工程Dと、
(E)焼成工程Dを終えた骨を粉状又は顆粒状に破砕する粉砕工程Eと、
を経ることにより、土壌改良材を製造するものとなっている。得られた土壌改良材は、カドミウムなどの重金属を吸着するハイドロキシアパタイトを成分に有するものとなっている。
1.1 動物の骨
本実施態様の土壌改良材の製造方法において、原料として使用する骨は、加熱処理が施されていない動物の生の骨であれば特に限定されない。具体的には、牛骨、豚骨、鶏骨、魚骨などが例示される。なかでも、牛骨や豚骨は、と蓄場で大量に安定して入手できるため、本発明の土壌改良材の原料として好適に使用できる。特に、牛骨を使用すると好ましい。というのも、牛海綿状脳症(BSE:Bovine Spongiform Encephalopathy)などが問題視されるようになってからは、飼料用の肉骨粉の使用が制限されるようになっており、近年、牛骨の廃棄処理方法が問題となっているからである。本実施態様の土壌改良材の製造方法においても、原料(動物の生の骨)として、と蓄された牛を解体する際に出た牛骨(加熱処理が施されておらず、脂質や蛋白質などを含む屑肉が付いた状態の牛骨)を使用している。
1.2 アルカリ処理工程A
アルカリ処理工程Aは、動物の骨をアルカリ溶液と接触させるアルカリ処理を少なくとも1度行うものであれば、特に限定されない。しかし、本実施態様の土壌改良材の製造方法において、アルカリ処理工程Aは、図1に示すように、
(A1)動物の生の骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離する第一次アルカリ処理工程A1と、
(A2)第一次アルカリ処理工程A1を終えた骨を水で洗浄し、骨に付着するアルカリ溶液を洗い流す洗浄工程A2と、
(A3)洗浄工程A2で洗浄された骨を乾燥させる乾燥工程A3と、
(A4)乾燥工程A3を終えた骨を破砕(粗破砕)する破砕工程(粗破砕工程)A4と、
(A5)破砕工程A4を終えて当初よりも小さくなった骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離する第二次アルカリ処理工程A5と、
(A6)第二次アルカリ処理工程A5を終えた骨を水で洗浄し、骨に付着するアルカリ溶液を洗い流す洗浄工程A6とで構成している。
このように、第一次アルカリ処理工程A1を行った骨を破砕工程A4で粗く破砕して骨の表面積を増大させ、第二次アルカリ処理工程A5を行うことにより、第一次アルカリ処理工程A1で分離しきれなかった脂質や蛋白質を除去することが可能になり、アルカリ処理工程Aを終えた骨に残存する脂質や蛋白質の量を低減することが可能になる。特に、骨の内部に残存する脂質や蛋白質を効果的に除去することが可能になる。本実施態様の土壌改良材の製造方法において、アルカリ処理は、第一次アルカリ処理工程A1と、第二次アルカリ処理肯定A5との2度行い、骨の破砕処理は、破砕工程A4の1度行っているが、要求されるレベルに応じて、アルカリ処理を3度以上行ってもよいし、破砕処理を2度以上行ってもよい。
アルカリ処理工程Aにおける各工程について、より詳しく説明する。本実施態様の土壌改良材の製造方法において、第一次アルカリ処理工程A1は、処理槽に貯めたアルカリ溶液に骨を浸漬して、アルカリ溶液を加熱し、骨を煮沸することによって行われる。第一次アルカリ処理工程A1に用いる処理槽に骨が入りきらない場合は、処理槽に収容できる寸法に骨を切断するとよい。第一次アルカリ処理工程A1で処理槽に投入する骨の量は、特に限定されないが、少なくしすぎると第一次アルカリ処理工程A1が非効率的なものとなるし、多くしすぎると第一次アルカリ処理工程A1で所望の洗浄効果が得られなくなるおそれがある。このため、骨は、通常、アルカリ溶液1m当たり10〜300kg投入される。アルカリ溶液1m当たりの骨の投入量は、50〜200kgであると好ましく、80〜100kgであるとより好ましい。
アルカリ処理工程Aで用いるアルカリ溶液としては、水酸化ナトリウム溶液(苛性ソーダ)や、水酸化カリウム溶液が好適である。なかでも、水酸化カリウム溶液を用いると、短時間で骨を脱脂することが可能になるだけでなく、洗浄工程A6を省略又は短縮することも可能になるために好ましい。第一次アルカリ処理工程A1で使用するアルカリ溶液の濃度(アルカリ濃度のこと。以下同じ。)は、骨の状態や種類、アルカリ溶液の種類、アルカリ溶液への浸漬時間などによっても異なり、特に限定されないが、低すぎると骨の脱脂が不十分となるおそれがあるし、高すぎるとハイドロキシアパタイトの結晶化を抑制できなくなるおそれがある。このため、水酸化ナトリウム溶液や水酸化カリウム溶液をアルカリ溶液として用いる場合には、第一次アルカリ処理工程A1で使用するアルカリ溶液の濃度は、通常、1〜15%(重量%のこと。以下同じ。)とされ、好ましくは、2〜10%、より好ましくは3〜7%とされる。本実施態様の土壌改良材の製造方法において、第一次アルカリ処理工程A1で使用するアルカリ溶液の濃度は5%となっている。また、第一次アルカリ処理工程A1における浸漬時間(煮沸時間)は、通常、30〜180分、好ましくは、90〜150分とされる。本実施態様の土壌改良材の製造方法において、第一次アルカリ処理工程A1における浸漬時間は、120分となっている。
本実施態様の土壌改良材の製造方法において、破砕工程A4は、ハンマで骨を打撃することによって行っているが、破砕機を使用して行ってもよい。これにより、土壌改良材の製造方法をより大量生産に適したものとすることができる。破砕工程A4で骨をどの程度の寸法まで破砕するかは、動物の種類などによっても異なる。破砕工程A4は、第一次アルカリ処理工程A1を終えた直後よりも骨を小さくできるのであれば特に限定されない。しかし、破砕工程A4で骨を小さくしすぎると、骨が粉末状となり、後の工程を行いにくくなるおそれがある。このため、破砕工程A4を終えた後の骨は、その長径の平均値が、通常、5mm以上、好ましくは1cm以上、より好ましくは2cm以上となるようにされる。一方、破砕工程A4を終えた後も骨が大きいままであると、第二次アルカリ処理工程を設ける意義が低下してしまう。このため、破砕工程A4を終えた後の骨は、その長径の平均値が、通常、20cm以下、好ましくは、15cm以下、より好ましくは10cm以下となるようにされる。本実施態様の土壌改良材の製造方法においては、骨の長径の平均値が7〜8cm程度となるまで、破砕工程A4で骨を破砕している。
本実施態様の土壌改良材の製造方法において、第二次アルカリ処理工程A5は、第一次アルカリ処理工程A1と同様、処理槽に貯めたアルカリ溶液に骨を浸漬して、アルカリ溶液を加熱し、骨を煮沸することによって行われる。第二次アルカリ処理工程A5で処理槽に投入する骨の量は、特に限定されないが、上述した第一次アルカリ処理工程A1と同様とされる。第二次アルカリ処理工程A5で使用するアルカリ溶液の濃度も、骨の状態や種類、アルカリ溶液への浸漬時間などによっても異なり、特に限定されないが、通常、第一次アルカリ処理工程A1におけるアルカリ溶液の濃度と同じか、やや低めとされる。本実施態様の土壌改良材の製造方法においては、第二次アルカリ処理工程A1で使用するアルカリ溶液の濃度を第一次アルカリ処理工程A1と同じ5%としている。また、第二次アルカリ処理工程A5における浸漬時間(煮沸時間)は、通常、30〜150分、好ましくは、60〜120分とされる。本実施態様の土壌改良材の製造方法において、第二次アルカリ処理工程A5における浸漬時間は、90分となっている。
アルカリ処理工程Aを終えた後には、動物の骨は、その表面及び内部に付着する大部分の脂質や蛋白質が除去された状態となっている。骨は、アルカリ処理工程Aを終えた後も、破砕工程A4で破砕された後の形を維持している。第一次アルカリ処理工程A1又は第二次アルカリ処理工程A5で骨から分離された脂質は、ゼリー状となってアルカリ溶液中に沈殿する。アルカリ溶液として水酸化ナトリウム溶液を用いた場合には、この沈殿物は、石鹸として、あるいは石鹸の原料として利用することができる。
1.3 乾燥工程C
本実施態様の土壌改良材の製造方法において、乾燥工程Cは、骨を乾燥できるものであれば特に限定されず、自然乾燥により骨の乾燥を行う方法や、骨に熱風などを当てることにより骨の乾燥を行う方法など、各種の乾燥方法を採用することができる。本実施態様の土壌改良材の製造方法においては、骨を75℃に設定された乾燥庫で5〜6時間乾燥することにより、乾燥工程Cを行っている。上述した乾燥工程A3についても同様の乾燥方法を採用することができる。
1.4 焼成工程
本実施態様の土壌改良材の製造方法において、焼成工程Dは、アルカリ処理工程Aで得られた動物の骨を、電気炉などの焼成装置を用いて焼成することによって行われる。この焼成工程Dにより、骨に残存する脂質や蛋白質を完全に焼失させることができる。焼成工程Dは、通常、空気の雰囲気下において行われるが、コスト的に採算が採れるなら、アルゴンガス(焼成温度を高くしてもハイドロキシアパタイトの結晶化を抑えることができる。)など、他のガスの雰囲気下で行ってもよい。
焼成工程Dにおける焼成温度は、骨の状態や種類、あるいは焼成工程Dにおける焼成時間などによっても異なり、特に限定されないが、低すぎると、骨の表面の凹部に詰まった状態の脂質や蛋白質が完全には除去されず、骨の実質的な比表面積を広く確保できなくなり、得られる土壌改良材の吸着能が低下するおそれがある。また、焼成時に煙や臭いが発生するおそれもある。このため、焼成工程Dにおける焼成温度は、通常、400℃以上、好ましくは、450℃以上、より好ましくは500℃以上とされる。一方、焼成工程Dにおける焼成温度が高すぎると、骨に含まれるハイドロキシアパタイトの結晶性が向上してしまい、土壌中の重金属との反応が起こりにくくなるおそれがある。結果として、得られる土壌改良材の重金属の吸着能が低下するおそれがある。また、骨が灰になってしまい、その後の処理を行いにくくなるおそれもある。このため、焼成工程Dにおける焼成温度は、通常、800℃以下、好ましくは、700℃以下、より好ましくは、600℃以下とされる。焼成工程Cにおける焼成温度は、550〜560℃であると最適である。
焼成工程Dにおける昇温時間(目的の焼成温度までにかかる時間)や、焼成時間(目的の焼成温度を維持する時間)は、骨の状態や種類、あるいは焼成温度などによっても異なり、特に限定されない。土壌改良材に必要な重金属の吸着能や、大量生産に必要な処理時間などを考慮して適宜決定する。昇温時間や焼成時間は、様々な条件に応じて幅があるが、通常、昇温時間については、0.5〜5時間程度とされ、焼成時間については、0〜7時間程度(昇温時間があるため、0時間をも含んでいる。)とされる。本実施態様の土壌改良材の製造方法においては、あくまで一例ではあるが、昇温時間を2時間、焼成時間を3時間としている。動物の骨は、焼成工程Dを終えた後でも、破砕工程A4直後の形態を概ね維持している。
1.5 粉砕工程
本実施態様の土壌改良材の製造方法において、粉砕工程(本破砕工程)Eは、既に述べた破砕工程A4と同様、ハンマで骨を打撃することによって行っているが、破砕機を使用して行ってもよい。これにより、土壌改良材の製造方法をより大量生産に適したものとすることができる。粉砕工程Eで骨をどの程度の寸法まで破砕するかは、得られる土壌改良材に要求される重金属の吸着能や、その使用態様などによっても異なり、特に限定されない。土壌改良材を、田畑などの土壌に直接散布して使用するカドミウム吸着材(土壌から農作物へカドミウムが吸収されるのを抑制するカドミウム吸収抑制材)として使用する場合には、粉砕工程Eを終えた後の骨の粒径(長径)の平均値は、通常、30mm以下、好ましくは、20mm以下、より好ましくは、10mm以下とされる。カドミウムの植物への吸収を抑制するという観点から、骨の比表面積は大きい方が有利であり、骨の粒径は、小さければ小さいほど好ましい。このため、前記平均値は、その下限に特に限定はないが、通常、0.1mm以上である。粉砕工程Cを終えた後には、動物の骨は、粉状又は顆粒状となっている。
1.6 その他
上記の本実施態様の土壌改良材の製造方法で得られた土壌改良材は、それ(動物の骨)単独で使用してもよいが、副資材を添加することも好ましい。これにより、カドミウムなどの重金属に対する土壌改良材の吸着能をより高めることも可能になる。土壌改良材に添加する副資材は、そのような効果を奏するものであれば特に限定されない。副資材としては、珪酸や石灰(カルシウム)や苦土(マグネシウム)やカオリンやバーミキュライトやモンモリロナイトなどが例示される。
2.0 土壌改良材の使用方法
続いて、上述した本実施態様の土壌改良材の製造方法によって得られた土壌改良材の使用方法(農作物の製造方法)について説明する。本実施態様の土壌改良材の製造方法によって得られた土壌改良材は、田畑などの土壌に直接散布して使用するカドミウム吸着材として好適に使用することができる。これにより、土壌から農作物へカドミウムが吸収されるのを抑制することができる。土壌改良材を散布する田畑で生産する農作物の種類は、特に限定されないが、農作物が稲である場合に好適に採用することができる。土壌改良材の散布量は、土壌におけるカドミウムの濃度や、農作物の種類に応じて個別具体的に検討する。
3.0 実験1
3.1 試料
上記実施態様の土壌改良材の製造方法のアルカリ処理工程Aにおけるアルカリ溶液として水酸化ナトリウム溶液(アルカリ濃度5重量%)を用いて実際に土壌改良材を製造し、得られた土壌改良材の吸着能について調べてみた(実験1)。カドミウムに対する土壌改良材の吸着能を評価するため、6種類の試料1〜6を作製した。試料1〜6のそれぞれの配合割合(重量比)は、下記表1に示す通りである。下記表1における単位は、全て「グラム(g)」である。すなわち、試料1〜6の総重量は、全て3.00gである。それぞれの試料1〜6は、下記表1に示す配合とした後、RO水(RO膜(逆浸透膜)を通した水のこと。以下同じ。)を30mLずつ添加して24時間振とう(振とう幅4〜5cm、振とう回数80rpm)し、上澄み液を取り除いてから風乾させたものを用いた。
Figure 2011236411
上記表1において、「Cd汚染土壌」は、水稲栽培後の秋田県の田から採取した、カドミウムに汚染された土壌である。Cd汚染土壌は、試料1〜6において全て共通のものを使用し、その初期カドミウム濃度は4.97mg/kgであり、その初期pH(1:2.5法)は、5.54であった。試料1には、Cd汚染土壌のみが配合されており、試料1は、Cd汚染土壌そのもの(土壌改良材を何ら添加していないCd汚染土壌)を意味している。また、上記表1における「HAp/NaOH」は、動物の骨を水酸化ナトリウム溶液(HAp/NaOHのNaOHは水酸化ナトリウムを意味する。)に接触させるアルカリ処理工程Aを経る上記実施態様の土壌改良材の製造方法によって得られた土壌改良材(HAp:ハイドロキシアパタイト)を意味する。HAp/NaOHは、試料2〜6において全て共通のものを使用し、全て牛骨を原料としたものを使用した。HAp/NaOHは、その焼成工程Dの昇温時間が60分、焼成温度が650℃、焼成時間が180分のものを使用した。試料2〜6には、全てHAp/NaOHが添加されており、試料2〜6は、上記実施態様の土壌改良材の製造方法によって得られた土壌改良材をCd汚染土壌に添加したものを意味する。このうち、試料2は、HAp/NaOH単体をCd汚染土壌に添加したものであるが、試料3〜6は、それぞれ副資材として、マグアース、苦土石灰、水酸化マグネシウム(Mg(OH))、水酸化カルシウム(Ca(OH))を混ぜたものである。
また、上記表1において、「マグアース」は、く溶性苦土53%、内水溶性苦土3%を保障成分量とする市販の肥料であり、該肥料の含有成分(分析例)は、珪酸3%、石灰1%、鉄0.3%、マンガン0.02%、硼素0.07%、亜鉛10ppm、アルカリ度78%となっている。さらに、上記表1において、「苦土石灰」には、千成産業株式会社製の高級苦土石灰「カルミット」を使用した。さらにまた、「Mg(OH)」と「Ca(OH)」には、和光純薬工業株式会社製の特級試薬を使用した。
3.2 測定方法及び測定結果
上記表1における試料1〜6について、それぞれに含まれるカドミウムを形態別(交換態、無機結合態、有機結合態、遊離酸化物吸蔵態、残渣画分)に測定した結果を図2に示す。カドミウムなどの重金属は、土壌中において、交換態、無機結合態(無機態)、有機結合態(有機態)、遊離酸化物吸蔵態(吸蔵態)及び残渣画分(残渣)のいずれかの形態で存在している。図2における「交換態」、「無機態」、「有機態」、「吸蔵態」及び「残渣」で示される領域は、それぞれ、土壌中のカドミウムにおける、交換態、無機結合態、有機結合態、遊離酸化物吸蔵態及び残渣画分の重量割合を示している。
交換態、無機結合態、有機結合態、遊離酸化物吸蔵態及び残渣画分として試料1〜6に存在するカドミウムの量の測定は、定本裕明らの方法(「土壌中重金属の形態分別法の検討」,日本土壌肥料学雑誌,1994年,第65巻,第6号,p.645−653)に準拠して試料1〜6を各形態に分別することにより行った。具体的には、以下の通りである。
(a) 交換態のカドミウム量の測定
a1: 風乾後の試料3.00gに対して30mLの0.05M硝酸カルシウム溶液を加え、混合液(「混合液L1」とする。)を作製する。
a2: 上記a1で作製した混合液L1を24時間振とうする。
a3: 上記a2で振とうされた混合液L1を3000rpmで10分間遠心分離する。
a4: 上記a3で遠心分離された混合液L1の上澄み液(「上澄み液L2」とする。)を容器に注ぐ。
a5: 上記a4で混合液L1から上澄み液L2を取り除いた後の残渣(「残渣S1」とする。)に、15mLのRO水を加え、残渣S1とRO水とが混合された混合液(「混合液L3」とする。)を作製し、混合液L3を軽く攪拌する。
a6: 上記a5で撹拌された混合液L3を3000rpmで10分間遠心分離する。
a7: 上記a6で遠心分離された混合液L3の上澄み液(「上澄み液L4」とする。)を上記a4の容器に注ぐ。
a8: 上記a4,a7で上澄み液L2,L4が注がれた容器に、適量の硝酸とRO水を加えて定容にし、軽く撹拌して試験液(「試験液L5」とする。)とする。
a9: 上記a8で得られた試験液L5を原子吸光光度計(株式会社日立製作所製のZ−2300型偏向ゼーマン原子吸光光度計。以下同じ。)を用いて測定し、得られたカドミウム量を交換態のカドミウム量とする。
(b) 無機結合態(無機態)のカドミウム量の測定
b1: 交換態残渣(上記a7で混合液L3から上澄み液L4を取り除いた後の残渣。「残渣S2」とする。)に30mLの2.5%酢酸を加え、混合液(「混合液L6」とする。)を作製する。
b2: 上記b1で作製した混合液L6を24時間振とうする。
b3: 上記b2で振とうされた混合液L6を3500rpmで15分間遠心分離する。
b4: 上記b3で遠心分離された混合液L6の上澄み液(「上澄み液L7」とする。)を容器に注ぐ。
b5: 上記b4で混合液L6から上澄み液L7を取り除いた後の残渣(「残渣S3」とする。)に、15mLのRO水を加え、残渣S3とRO水とが混合された混合液(「混合液L8」とする。)を作製し、混合液L8を軽く攪拌する。
b6: 上記b5で撹拌された混合液L8を3500rpmで15分間遠心分離する。
b7: 上記6で遠心分離された混合液L8の上澄み液(「上澄み液L9」とする。)を上記b4の容器に注ぐ。
b8: 上記b4,b7で上澄み液L7,L9が注がれた容器に、適量の硝酸とRO水を加えて定容にし、軽く撹拌して試験液(「試験液L10」とする。)とする。
b9: 上記b8で得られた試験液L10を原子吸光光度計を用いて測定し、得られたカドミウム量を無機結合態(無機態)のカドミウム量とする。
(c) 有機結合態(有機態)のカドミウム量の測定
c1: 無機結合態残渣(上記b7で混合液L8から上澄み液L9を取り除いた後の残渣。「残渣S4」とする。)に50mLの6%過酸化水素水を加え、混合液(「混合液L11」とする。)を作製する。
c2: 上記c1で作製した混合液L11を加熱して水分を蒸発させる。
c3: 上記c2で乾固直前まで蒸発濃縮された残渣(「残渣S5」とする。)に30mLの2.5%酢酸を加え、混合液(「混合液L12」とする。)を作製する。
c4: 上記c3で作製した混合液L12を24時間振とうする。
c5: 上記c4で振とうされた混合液L12を3500rpmで20分間遠心分離する。
c6: 上記c5で遠心分離された混合液L12の上澄み液(「上澄み液L13」とする。)を容器に注ぐ。
c7: 上記c6で混合液L12から上澄み液L13を取り除いた後の残渣(「残渣S6」とする。)に、15mLのRO水を加え、残渣S6とRO水とが混合された混合液(「混合液L14」とする。)を作製し、混合液L14を軽く撹拌する。
c8: 上記c7で撹拌された混合液L14を3500rpmで20分間遠心分離する。
c9: 上記c8で遠心分離された混合液L14の上澄み液(「上澄み液L15」とする。)を上記c6の容器に注ぐ。
c10: 上記c6,c9で上澄み液L13,L15が注がれた容器に、適量の硝酸とRO水を加えて定容にし、軽く撹拌して試験液(「試験液L16」とする。)とする。
c11: 上記c10で得られた試験液L16を原子吸光光度計を用いて測定し、得られたカドミウム量を有機結合態(有機態)のカドミウム量とする。
(d)遊離酸化物吸蔵態(吸蔵態)のカドミウム量の測定
d1: 有機結合態残渣(上記c9で混合液L14から上澄み液L15を取り除いた後の残渣。「残渣S7」とする。)に、90mLのシュウ酸アンモニウム液と3gのアスコルビン酸を加え、混合液(「混合液L17」とする。)を作製する。
d2: 上記d1で作製した混合液L17を沸騰水浴中で時々撹拌しながら1時間抽出する。
d3: 上記d2で抽出された混合液L17を15000rpmで10分間遠心分離する。
d4: 上記d3で遠心分離された混合液L17の上澄み液(「上澄み液L18」とする。)を容器に注ぐ。
d5: 上記d4で混合液L17から上澄み液L18を取り除いた後の残渣(「残渣S8」とする。)に、15mLのRO水を加え、残渣S8とRO水とが混合された混合液(「混合液L19」とする。)を作製し、混合液L19を軽く撹拌する。
d6: 上記d5で撹拌された混合液L19を15000rpmで10分間遠心分離する。
d7: 上記d6で遠心分離された混合液L19の上澄み液(「上澄み液L20」とする。)を上記d4の容器に注ぐ。
d8: 上記d4,d7で上澄み液L18,L20が注がれた容器に、適量の硝酸とRO水を加えて定容にし、軽く撹拌して試験液(「試験液L21」とする。)を作製する。
d9: 上記d8で得られた試験液L21を原子吸光光度計を用いて測定し、得られたカドミウム量を遊離酸化物吸蔵態(吸蔵態)のカドミウム量とする。
(e)残渣画分(残渣)のカドミウム量の測定
e1: 遊離酸化物吸蔵態残渣(上記d7で混合液L19から上澄み液L20を取り除いた後の残渣。「残渣S9」とする。)を容器(ビーカーなど)に入れて適量のRO水を流し込み、混合液(「混合液L22」とする。)を作製する。
e2: 上記e1で作製した混合液L22を加熱して水分を蒸発させ、乾固させる。
e3: 上記e2で乾固された残渣(「残渣S10」とする。)に12mLの6N塩酸を加え、混合液(「混合液L23」とする。)を作製し、混合液L23を軽く撹拌する。
e4: 上記e3で撹拌された混合液L23の入った容器(上記e1の容器)に蓋をした状態で該容器を加熱し、1時間静かに沸騰させる。
e5: 上記e4で沸騰された混合液L23を放冷する。
e6: 上記e5で放冷された混合液L23を濾紙(東洋濾紙株式会社製の定量濾紙No.5B)で濾過した後、適量の0.1N塩酸で洗浄しながら濾過し、濾液(「濾液L24」とする。)とする。
e7: 上記e6で得られた濾液L24を上記e1で用いた容器とは別の容器に注ぎ、適量の硝酸とRO水を加えて定容とし、軽く撹拌して試験液(「試験液L25」とする。)とする。
e8: 上記e7で得られた試験液L25を原子吸光光度計を用いて測定し、得られたカドミウム量を残渣画分(残渣)のカドミウム量とする。
3.3 測定結果についての考察
試料1は、Cd汚染土壌そのものであるが、それに含まれるカドミウム全量は、図2に示すように、4.97mg/kgと高い値を示した。試料1において、交換態として存在するカドミウムは、全体の37.6%と非常に多かった。また、試料1の特徴として、無機結合態の割合が32.7%と高く、残渣画分の割合が5.7%と低いことが挙げられる。このように、試料1においては、土壌中へ溶出しやすい交換態や無機結合態として多くのカドミウムが存在し、土壌中へ溶出しにくい残渣画分として存在するカドミウムの割合が少ないことが分かった。
試料2は、本発明の上記実施態様の土壌改良材の製造方法によって得た土壌改良材(副資材無し)を2%の割合で添加したCd汚染土壌であるが、図2に示すように、交換態として存在するカドミウムの割合が20.7%と、試料1と比較して半分近くまで減少していることが分かる。また、試料2において、無機結合態(34.9%)や有機結合態(15.3%)や遊離酸化物吸蔵態(8.1%)として存在するカドミウムの量は、試料1と比較して微増又は微減しているものの、殆ど大差がないことも分かった。すなわち、上記実施態様の土壌改良材の製造方法で得た土壌改良材(副資材無し)によって、Cd汚染土壌では交換態として存在していたカドミウムの半分近くが、土壌中へ溶出しにくい残渣画分として固定されたことが分かる。したがって、上記実施態様の土壌改良材の製造方法で得た土壌改良材(副資材無し)が、植物へのカドミウムの吸収を抑制するのに優れた効果を奏しうるということが分かった。
試料3は、本発明の本実施態様の土壌改良材の製造方法によって得た土壌改良材(副資材としてマグアースを添加)を2%の割合で添加したCd汚染土壌であり、試料4は、上記実施態様の土壌改良材の製造方法によって得た土壌改良材(副資材として苦土石灰を添加)を2%の割合で添加したCd汚染土壌であり、試料5は、上記実施態様の土壌改良材の製造方法によって得た土壌改良材(副資材として水酸化マグネシウムを添加)を2%の割合で添加したCd汚染土壌であり、試料6は、上記実施態様の土壌改良材の製造方法によって得た土壌改良材(副資材として水酸化カルシウムを添加)を2%の割合で添加したCd汚染土壌である。
図2を見ると、残渣画分においては、試料3〜6と試料2とで大差は認められないものの、交換態においては、試料3〜6が試料2よりも大幅に減少していることが分かる。一方、有機結合態においては、試料3〜6が試料2よりも増加していることが認められる。このことから、試料3〜6のように土壌改良材として副資材を添加したものを使用することによって、副資材を添加していない土壌改良材を使用した試料2では交換態として存在したカドミウムを、交換態よりも土壌中へ溶出しにくい無機結合態へと変化させることができるということが分かった。したがって、土壌改良材として副資材を添加したものを使用することにより、副資材を添加しない土壌改良材を使用した場合よりも、植物へのカドミウムの吸収をさらに抑制しうるということが分かった。
以上より、本発明の土壌改良材の製造方法により得た土壌改良材が、植物へのカドミウムの吸収を抑制するのに非常に有用であるということが分かった。
4.0 実験2
4.1 試料
上記実験1で用いた試料2〜6の焼成温度は650℃で一定であったが、焼成工程Dでの焼成温度が有害重金属に対する吸着能に対してどのように影響を及ぼすのかについて調べるために、焼成工程Dでの焼成温度の異なる試料を作成し、その吸着能を調べてみた(実験2)。アルカリ溶液として水酸化ナトリウム溶液(アルカリ濃度5重量%)を用いた場合と水酸化カリウム溶液(アルカリ濃度5重量%)を用いた場合の双方の場合について調べるため、下記表2に示す11種類の試料10,20〜24,30〜34を作製した。試料20〜24,30〜34はいずれも、第一次アルカリ処理工程A1における浸漬時間(煮沸時間)が1時間で、第二次アルカリ処理工程A5における浸漬時間(煮沸時間)が1時間であるものを用いた。試料10,20,30は、下記表2に示す配合した後、試料21〜24,31〜34は、下記表2に示す配合として下記表2に示す焼成温度で焼成工程Dを行った後、RO水を30mLずつ添加して24時間振とう(振とう幅4〜5cm、振とう回数80rpm)し、上澄み液を取り除いてから風乾させたものを用いた。
Figure 2011236411
上記表2における「Cd汚染土壌」と「HAp/NaOH」の意味は、実験1で説明した内容と同じである。また、上記表2における「HAp/KOH」は、動物の骨を水酸化カリウム溶液(HAp/KOHのKOHは水酸化カリウムを意味する。)に接触させるアルカリ処理工程Aを経る本実施態様の土壌改良材の製造方法によって得られた土壌改良材(HAp:ハイドロキシアパタイト)を意味する。Cd汚染土壌は、試料10,20〜24,30〜34において全て共通のものを使用し、その初期カドミウム濃度は5.26mg/kgであった。試料10には、Cd汚染土壌のみが配合されており、試料10は、Cd汚染土壌そのもの(土壌改良材を何ら添加していないCd汚染土壌)を意味している。焼成工程Dを経る試料21〜24,31〜34は、焼成工程Dではいずれも昇温速度10℃/分で目標の焼成温度まで上昇させ、焼成工程Dにおける焼成時間(目標の焼成温度を維持する時間)は1時間とした。
4.2 測定方法及び測定結果
上記表2における試料10,20〜24,30〜34について、それぞれに含まれるカドミウムを形態別(交換態、無機結合態、有機結合態、遊離酸化物吸蔵態、残渣画分)に測定した結果を図3に示す。図3における「交換態」、「無機態」、「有機態」、「吸蔵態」及び「残渣」で示される領域が、それぞれ、土壌中のカドミウムにおける、交換態、無機結合態、有機結合態、遊離酸化物吸蔵態及び残渣画分の重量割合を示していることについては、上記実験1と同様である。また、交換態、無機結合態、有機結合態、遊離酸化物吸蔵態及び残渣画分として試料10,20〜24,30〜34に存在するカドミウムの量の測定方法についても上記実験1と同様である。
4.3 測定結果についての考察
試料10は、Cd汚染土壌そのものであるが、それに含まれるカドミウム全量は、図3に示すように、5.26mg/kgであり、このうち、土壌中へ溶出しにくい残渣画分として固定されたものは0.65mg/kgに過ぎなかった。これに対し、上記実施態様の土壌改良材の製造方法により得た土壌改良材を配合した試料21〜24,31〜34においては、カドミウム全量が4.84〜5.10mg/kgといずれも試料10よりも減少しており、残渣画分として固定されたものは0.85〜1.39mg/kgといずれも試料10よりも増加していた。
以上のことから、アルカリ処理工程Aにおけるアルカリ溶液として水酸化ナトリウム溶液を用いたか水酸化カリウム溶液を用いたかにかかわらず、本発明の土壌改良材の製造方法により得た土壌改良材が、植物へのカドミウムの吸収を抑制するのに非常に有用であるということが分かった。
また、アルカリ処理工程Aにおけるアルカリ溶液として水酸化ナトリウム溶液を用いた土壌改良材を配合した試料20〜24に含まれるカドミウム全量は、未焼成の試料20で5.03mg/kg、焼成温度250℃の試料21で5.01mg/kg、焼成温度500℃の試料22で4.88mg/kgと、焼成温度が500℃程度となるまでは減少した。しかし、焼成温度が600℃の試料23では4.96mg/kg、焼成温度が700℃の試料24では5.04mg/kgと、焼成温度が500℃である場合よりも増加した。
一方、アルカリ処理工程Aにおけるアルカリ溶液として水酸化カリウム溶液を用いた土壌改良材を配合した試料30〜34に含まれるカドミウム全量は、未焼成の試料30で4.95mg/kg、焼成温度250℃の試料31で4.88mg/kg、焼成温度500℃の試料32で4.84mg/kgと、焼成温度が500℃程度となるまでは減少した。しかし、焼成温度が600℃の試料33では5.10mg/kg、焼成温度が700℃の試料34では5.04mg/kgと、焼成温度が500℃である場合よりも増加した。
以上のことから、カドミウムに対する土壌改良材の吸着能は、アルカリ処理工程Aにおけるアルカリ溶液として水酸化ナトリウム溶液を用いたか水酸化カリウム溶液を用いたかにかかわらず、焼成温度が500℃付近で最大となることが分かった。

Claims (4)

  1. 動物の生の骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離するアルカリ処理工程と、
    アルカリ処理工程を終えた骨を焼成することによって骨に残存する脂質又は蛋白質を焼失させる焼成工程と、
    焼成工程を終えた骨を粉状又は顆粒状に破砕する粉砕工程と、
    を経て、ハイドロキシアパタイトを成分に有する土壌改良材を製造することを特徴とする土壌改良材の製造方法。
  2. アルカリ溶液が水酸化ナトリウム溶液である請求項1記載の土壌改良材の製造方法。
  3. アルカリ溶液が水酸化カリウム溶液である請求項1記載の土壌改良材の製造方法。
  4. アルカリ処理工程が、
    動物の生の骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離する第一次アルカリ処理工程と、
    第一次アルカリ処理工程を終えた骨を破砕する破砕工程と、
    破砕工程を終えて当初よりも小さくなった骨をアルカリ溶液に接触させることによって骨に付着する脂質又は蛋白質を分離する第二次アルカリ処理工程と、
    を経る請求項1〜3いずれか記載の土壌改良材の製造方法。
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