JP2011235829A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、金属板を折り畳んで長手方向両端部の開口を閉塞したチューブ状のエアバッグをインフレータが発生するガスで展開して衝撃を吸収するエアバッグ装置に関する。
自動車のフロントピラーの前面を覆うピラーガーニッシュの内側に折り畳んだ布製のエアバッグを収納し、歩行者との衝突時にインフレータが発生するガスをエアバッグに供給することで、ピラーガーニッシュが破断した隙間からエアバッグをフロントピラーの前面に沿って展開させて歩行者を保護する歩行者保護エアバッグ装置が、下記特許文献1により公知である。
また自動車のフロントピラーの前面を覆うピラーガーニッシュをピラー骨格部材にリンク式のピラー駆動機構を介して支持し、歩行者との衝突時にピラー駆動機構でピラーガーニッシュをピラー骨格部材から浮き上がらせることで、ピラーガーニッシュがストロークできるようにして衝突エネルギーを吸収する歩行者保護用衝撃吸収構造が、下記特許文献2により公知である。
しかしながら、上記特許文献1に記載された発明は、エアバッグが布製であるために展開状態を長時間に亙って維持することが難しく、歩行者がフロントピラーに衝突するタイミングによっては充分な衝撃吸収効果を発揮できない可能性があった。
また上記特許文献2に記載された発明は、ピラーガーニッシュをピラー骨格部材に移動可能に支持するリンク式のピラー駆動機構の構造が複雑であり、部品点数が増加してコストアップの要因となる問題があった。
そこで本出願人は、つづら折りした金属製のエアバッグをフロントウインドウガラスとフロントピラーとの間に配置し、歩行者との衝突時にエアバッグをフロントピラーに沿うようにチューブ状に展開するものを、特願2009−224380号により既に提案している。
しかしながら、上記特願2009−224380号で提案されたものは、折り畳まれたエアバッグの長手方向両端部がエンドキャップの開口部に圧入により固定されているので、エアバッグの長手方向両端部は長手方向中央部に比べて展開し難くなる。その結果、エアバッグの展開後も長手方向両端部は折り畳み状態が充分に解放されず、その断面形状が円形にならないために剛性が高くなり、歩行者が衝突したときの衝撃吸収性能が低下する可能性があった。
この問題を解決すべく、エアバッグを構成する金属板の板厚を薄くすると、エアバッグの長手方向両端部の剛性を低下させることができても、エアバッグの長手方向中央部の剛性が過度に低下してしまい、エアバッグの展開形状が不安定になったり、歩行者の衝突時に底付き(エアバッグが完全に潰れて内面どうしが接触してしまう状態)が発生して充分な衝撃吸収性能が得られなくなる懸念がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、金属製エアバッグの展開形状を安定させながら、長手方向全長に亙って均一な衝撃吸収性能を確保することを目的とする。
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、金属板を折り畳んで長手方向両端部の開口を閉塞したエアバッグをインフレータが発生するガスで展開して衝撃を吸収するエアバッグ装置であって、前記エアバッグの長手方向中央部の内面間を金属シートよりなる補強部材で接続したことを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、前記補強部材はつづら折りされて前記エアバッグの内部に収納されることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記エアバッグの板厚は0.4mm〜0.5mmであることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
また請求項4に記載された発明によれば、請求項1〜請求項3の何れか1項の構成に加えて、前記補強部材は、少なくとも前記エアバッグの長手方向両端部側に肉抜き孔を備えることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
また請求項5に記載された発明によれば、請求項4の構成に加えて、前記肉抜き孔は複数形成され、前記エアバッグの長手方向両端部に近い肉抜き孔ほど大径であることを特徴とするエアバッグ装置が提案される。
請求項1の構成によれば、金属板を折り畳んで長手方向両端部の開口を閉塞したエアバッグは一旦展開すると萎むことがなく、金属の塑性変形によって衝突の衝撃を吸収するので、容量の小さいインフレータを採用して重量やコストを削減できるだけでなく、衝突するタイミングのずれに関わらずに安定した衝撃吸収性能を発揮することができる。しかもエアバッグの長手方向中央部の内面間を金属シートよりなる補強部材で接続したので、エアバッグの板厚を薄くして長手方向両端部を展開し易くすることで衝撃吸収性能を高めながら、補強部材によりエアバッグの長手方向中央部を補強して剛性を高め、エアバッグの展開形状を安定させるとともに底付きを防止してエアバッグの長手方向全長に亙って均一な衝撃吸収性能を確保することができる。
また請求項2の構成によれば、補強部材はつづら折りされてエアバッグの内部に収納されるので、エアバッグを折り畳む際に補強部材が邪魔になることが防止される。
また請求項3の構成によれば、エアバッグの板厚は0.4mm〜0.5mmであるので、展開し難いエアバッグの長手方向両端部が確実に展開可能となり、かつ展開後は薄い板圧による剛性低減で衝撃吸収性能を確保することができる。
また請求項4の構成によれば、補強部材は少なくともエアバッグの長手方向両端部側に肉抜き孔を備えるので、補強部材が存在しない長手方向両端部と、補強部材が存在する長手方向中央部との境界でエアバッグの強度の急変を防止し、展開時および衝突時におけるエアバッグの破断を未然に防止することができる。
また請求項5の構成によれば、複数の肉抜き孔のうち、エアバッグの長手方向両端部に近い肉抜き孔ほど大径なので、長手方向両端部から長手方向中央部にかけてエアバッグの強度を滑らかに変化させることができる。
以下、図1〜図7に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
図1に示すように、自動車はボンネットフード11の後方にフロントウインドウガラス12を備えており、フロントウインドウガラス12の左右の縁部12a,12aおよびフロントドア13,13のドアガラス14,14間に挟まれるように、フロントピラー15,15が配置される。
図2に示すように、フロントピラー15は車体外側に位置するアウターパネル16と、車体内側に位置するインナーパネル17とを結合して閉断面に構成されており、アウターパネル16の前面16aにピラーガーニッシュを兼ねる金属製のエアバッグ18が折り畳み状態で設けられる。アウターパネル16およびインナーパネル17の結合部16c,17aの前面にフロントウインドウガラス12の縁部12aがダムラバー20を介して重ね合わされ、接着剤21で接着される。
折り畳んだ金属チューブよりなるエアバッグ18は、ガーニッシュ部18aと、ウインドウガラス側折り畳み部18bと、アウターパネル側折り畳み部18cと、インフレータ支持部18dとを備える。ガーニッシュ部18aは、フロントピラー15のアウターパネル16の側面16bからフロントウインドウガラス12に向かって滑らかに連なっており、アウターパネル16とフロントウインドウガラス12との間に配置されるピラーガーニッシュの機能を果たしている。
ウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cは、エアバッグ18が展開するときの伸び代を確保するために、ガーニッシュ部18aの裏面側(後方側)においてつづら折り状に折り畳まれる。
図2、図3および図6から明らかなように、エアバッグ18の長手方向両端部を除く長手方向中央部において、ガーニッシュ部18aとインフレータ支持部18dとが矩形状の金属板をつづら折り状に折り畳んだ補強部材34で接続される。補強部材34の長手方向に沿う側縁は、エアバッグ18の内面にスポット溶接w1される。補強部材34は、長手方向両端部に各複数個(実施の形態では各3個)の肉抜き孔34a…が形成されており、それらの肉抜き孔34a…は長手方向両端部側のものほど大径になるように異なる直径を有している。
折り畳まれた補強部材34はエアバッグ18のウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cと重ならないように配置されるので、補強部材34およびエアバッグ18の折り畳み作業が煩雑になるのが防止される。
一般的に金属製のエアバッグの板厚は0.7mm程度であるが、本実施の形態のエアバッグ18の板厚はそれよりも薄い0.4mm〜0.5mmとされ、展開し難いエアバッグ18の長手方向両端部が展開し易くなっている。また補強部材34の板厚は任意に設定可能である。
図3および図5から明らかなように、折り畳まれたエアバッグ18の両端部は細くプレス成形されており、そこにエンドキャップ24,24を嵌合して溶接することで、エアバッグ18の両端部が密封される。尚、エアバッグ18の両端部を配置するスペースを車体側に確保することができれば、両端部を細くプレス成形する必要はない。各々のエンドキャップ24は取付部24aを備えており、取付部24aのボルト孔24bおよび車体パネル25を貫通するボルト26にナット27を螺合することで、エアバッグ18がフロントピラー15に沿って固定される。
ウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cを挟んでガーニッシュ部18aに対向するインフレータ支持部18dの下端部には、エアバッグ18を展開させるガスを発生させるインフレータ19が取り付けられる。
図2〜図4から明らかなように、円筒状のインフレータ19は、断面U字状の取付ブラケット28の内面に2個の固定具29,29で固定されており、この取付ブラケット28がエアバッグ18のインフレータ支持部18dに形成した開口18eに外側から被せられてボルト30…およびナット31…で固定される。
図2から明らかなように、エアバッグ18のガーニッシュ部18aとアウターパネル側折り畳み部18cとの境目にアウターパネル側リップ32が設けられており、このアウターパネル側リップ32がアウターパネル16の前面16aに当接する。またウインドウガラス側折り畳み部18bとエアバッグ18のインフレータ支持部18dとの境目にウインドウガラス側リップ33が設けられており、このウインドウガラス側リップ33がフロントウインドウガラス12の縁部12aの前面に当接する。これらのアウターパネル側リップ32およびウインドウガラス側リップ33により雨水等がエアバッグ18のインフレータ支持部18d側に浸入するのを阻止し、インフレータ19を保護することができる。
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
エアバッグ18が展開しない通常時には、エアバッグ18のガーニッシュ部18aが、フロントピラー15のアウターパネル16の側面16bに滑らかに連なってピラーガーニッシュの機能を発揮するため、専用のピラーガーニッシュを廃止して部品点数を削減することができる。しかも、従来のピラーガーニッシュと置き換えることで、エアバッグ18はフロントピラー15およびフロントウインドウガラス12間にコンパクトに配置されるので、折り畳んだエアバッグ18を収納するケースやカバーを不要にしながら、フロントピラー15まわりの外観を良好に維持することができる。
さて車両が歩行者に衝突したことが検知されるとインフレータ19が作動し、インフレータ19が発生するガスでエアバッグ18の内圧が増加する。この内圧の増加により、図7に示すように、エアバッグ18のつづら折り状に折り畳まれたウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cが先ず車体外側に向けて膨張した後に、フロントピラー15のアウターパネル16の前面16aおよび側面16bを覆うように左右方向に展開する。
このとき、エアバッグ18がウインドウガラス側折り畳み部18bおよびアウターパネル側折り畳み部18cを備えることで、展開後のエアバッグ18の周長を大きく確保し、フロントピラー15の広い領域を覆って衝撃吸収性能を高めることができる。
また歩行者用のエアバッグ装置では、歩行者の体格や衝突時の車速に応じて、歩行者がフロントピラー15に衝突するまでの時間に比較的に大きな差が発生し易いという特性がある。従って、従来の布製のエアバッグは、展開状態を所定時間に亙って維持するために、ガスを継続的に発生する大容量のインフレータが必要になるという問題がある。それに対して本実施の形態では、金属製のエアバッグ18を採用したことで、一旦展開したエアバッグ18はガスの供給を停止した後も展開状態が維持され、その塑性変形によって歩行者との衝突の衝撃を吸収するので、インフレータ19の容量を小さくしながら、歩行者がフロントピラー15に衝突するタイミングによらずに有効な衝撃吸収性能を発揮することができる。
ところで、エアバッグ18が展開するとき、その長手方向両端部は折り畳み状態で閉塞部材24,24に結合されているため、長手方向中央部に比べて展開し難くなる。その結果、エアバッグ18の長手方向中央部は略円形断面に展開するのに対し、長手方向両端部は折り畳みが完全に解放されないために凹凸を有する形状に展開し、その凹凸が補強リブとして機能することで、乗員が衝突したときの剛性が高くなり過ぎて有効な衝撃吸収性能を発揮できない可能性がある。
しかしながら本実施の形態では、エアバッグ18の板厚が通常の0.7mmよりも薄い0.4mm〜0.5mmであるため、エアバッグ18の長手方向両端部を充分に展開して剛性が局部的に高くなるのを防止し、歩行者がエアバッグ18の長手方向両端部に衝突した場合でも有効な衝撃吸収性能を発揮させることができる。
一方、エアバッグ18の長手方向中央部は通常よりも板厚が薄いために展開形状が不安定になったり、歩行者との衝突時に底付き(エアバッグ18が完全に潰れて内面どうしが接触してしまう状態)が発生したりする可能性があるが、エアバッグ18の長手方向中央部を補強部材34で補強したので、エアバッグ18の内面間の距離を規制して展開形状を安定させるとともに、歩行者との衝突時に補強部材34を座屈させることで剛性を高め、底付きを防止して充分な衝撃吸収性能を発揮させることができる。これにより、エアバッグ18の長手方向全長に亙って衝撃吸収性能を均一化することが可能となる。
また補強部材34はエアバッグ18の長手方向中央部だけに設けられているため、展開時に補強部材34の長手方向両端部とエアバッグ18とが接続する部分に応力が集中してしまい、エアバッグ18が破断する可能性があるが、補強部材34の長手方向両端部に肉抜き孔34a…を形成して強度を低下させたことにより、応力集中を防止してエアバッグ18の破断を回避することができる。このとき、肉抜き孔34a…は長手方向両端部側のものほど大径になるように異なる直径を有しているので、補強部材34の強度を長手方向に沿って緩やかに変化させて応力集中を更に効果的に防止することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、エアバッグ18の折り畳み方は実施の形態に限定されず、任意の折り畳み方を採用することができる。
また補強部材34の肉抜き孔34a…の個数や形状は実施の形態に限定されるものではない。
18 エアバッグ
19 インフレータ
34 補強部材
34a 肉抜き孔
19 インフレータ
34 補強部材
34a 肉抜き孔
Claims (5)
- 金属板を折り畳んで長手方向両端部の開口を閉塞したチューブ状のエアバッグ(18)をインフレータ(19)が発生するガスで展開して衝撃を吸収するエアバッグ装置であって、
前記エアバッグ(18)の長手方向中央部の内面間を金属シートよりなる補強部材(34)で接続したことを特徴とするエアバッグ装置。 - 前記補強部材(34)はつづら折りされて前記エアバッグ(18)の内部に収納されることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ装置。
- 前記エアバッグ(18)の板厚は0.4mm〜0.5mmであることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のエアバッグ装置。
- 前記補強部材は(34)、少なくとも前記エアバッグ(18)の長手方向両端部側に肉抜き孔(34a)を備えることを特徴とする、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のエアバッグ装置。
- 前記肉抜き孔(34a)は複数形成され、前記エアバッグ(18)の長手方向両端部に近い肉抜き孔(34a)ほど大径であることを特徴とする、請求項4に記載のエアバッグ装置。
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