JP2011235359A - 小径電縫鋼管の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】矯正割れを有利に防止できる小径電縫鋼管の製造方法を提供する。
【解決手段】帯鋼を連続的に払出しながら帯幅を丸めて管状に成形し、該管状成形体を電縫溶接して管11となし、該管を所定の長さに切断後、矯正する小径電縫鋼管の製造方法において、切断に用いる回転刃5の厚みを3.0mm以下とする、あるいはさらに、電縫溶接の条件を、該溶接部のHAZ幅が(0.4t+1.83)mm以下(t:帯鋼板厚(mm))となるように設定する。
【選択図】図5

Description

本発明は、小径電縫鋼管の製造方法に関し、特に、造管後の矯正時にシーム部に割れが発生するのを防止しうる小径電縫鋼管の製造方法に関する。ここでいう小径電縫鋼管とは、外径が168.3mm以下、肉厚が2.0〜12.7mmの電縫鋼管である。
電縫鋼管は、通常、図2に示すような造管ラインを用い、帯鋼10をアンコイラー1で連続的に払出しながら、複数の成形ロールを配置してなるロール成形機2により徐々に帯幅を丸めていき、丸めた帯幅の両端部を電縫溶接して管11にし、これを所定の管長さに切断後、曲がり等の形状不具合を矯正するという工程で製造される。電縫溶接は、例えば高周波加熱用コイル3で加熱後スクイズロール4で圧接する方法で行なわれる。切断には例えば砥石製の回転刃5を有する切断機(非特許文献1:p.1206)が用いられる。矯正には例えば傾斜ロール式(なかでも多ロール式)の矯正機6(非特許文献1:p.1198-1200)が用いられる。
社団法人日本鉄鋼協会編「第3版鉄鋼便覧第III巻(2) 条鋼・鋼管・圧延共通設備」、昭和55年11月20日発行(丸善)
上記工程で製造される電縫鋼管のうち、例えば機械構造用鋼の高張力素材のような、高強度(引張強さが490MPa以上)の小径電縫鋼管において、矯正割れが発生する場合がある。矯正割れとは、管の矯正時に、管の長手方向先端(先に矯正される側の端)からシーム部のボンドに沿って数mm〜200mm程度の長さで発生する割れのことである(図3参照)。かかる矯正割れの発生に対しては、その管を捨てるか、あるいは割れた長さ部分を切り捨てるしかないので、矯正割れが多数発生すると、歩留り低下の主原因となる問題や、切り捨て工程の追加による生産能率の低下につながる問題がある。
本発明は上述の問題を解決し、矯正割れを有利に防止できる小径電縫鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討し、次の知見を得た。
(a)従来は、外気温がある温度以下になると、矯正割れ発生率が急激に高くなる傾向にある(図4参照)。
(b)矯正前の管先端部をある温度以上に加熱すると、矯正割れが起こりにくくなる(図1参照)。
(c)切断機の回転刃の厚みを薄くすると、矯正割れが起こりにくくなる(図5参照)。
(d)シーム部のHAZ(溶接熱影響部)幅を狭めると、矯正割れが起こりにくくなる(図6参照)。
(e)従来は、帯鋼のMn含有量が高いと、矯正割れの発生傾向が強い(図7参照)。
本発明は、上記の知見に基き、さらに検討を加えてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
1.帯鋼を連続的に払出しながら帯幅を丸めて管状に成形し、該管状成形体を電縫溶接して管となし、該管を所定の長さに切断後、矯正する小径電縫鋼管の製造方法において、矯正割れを抑制するために、前記切断に用いる回転刃の厚みを3.0mm以下とすることを特徴とする小径電縫鋼管の製造方法。
2.前記電縫溶接の条件を、該溶接部のHAZ幅が(0.4t+1.83)mm以下(t:帯鋼板厚(mm))となるように設定することを特徴とする前項1に記載の小径電縫鋼管の製造方法。
3.矯正前の管先端への温風吹付け加熱により、矯正前後の管先端部温度を25℃以上に確保することを特徴とする前項1又は2に記載の小径電縫鋼管の製造方法。
本発明によれば、高強度の小径電縫鋼管の製造中(特に冬季)の矯正割れ発生傾向を大幅に軽減することができ、電縫鋼管の歩留り及び生産性が向上する。
管端温度(管先端部の温度)と矯正割れ発生率の関係を示すグラフである。 電縫鋼管製造用の造管ラインの1例を示す模式図である。 矯正割れの様相を示す模式図である。 従来の矯正割れ発生傾向に及ぼす外気温の影響を示すグラフである。 矯正割れ発生傾向に及ぼす回転刃厚みの影響を示す模式図である。 矯正割れ発生傾向に及ぼすHAZ幅の影響を示すグラフである。 従来の矯正割れ発生傾向に及ぼす帯鋼の鋼中Mn量と季節の影響を示すグラフである。
本発明に則って、矯正前後の管先端部温度を25℃以上に確保すると、図1に示すように矯正割れ発生率が大幅に低減する。これは、管先端部温度を25℃以上に確保すると矯正割れに耐えるに十分な変形能をもつようになるためと考えられる。なお、管先端部温度25℃以上を確保するためには、矯正機入側の管先端部を、同部の温度が50℃以上、好ましくは60℃以上、となるように加熱するのがよい。この加熱を有利に行なうには、温風吹付け加熱方式によるのが好ましい。温風吹き付け加熱方式では、矯正機の入側に、管先端に吐出口を向けた簡単な温風吐出手段(例えば温風吐出ダクト)を設置し、その吐出口から温風(例えば約90〜120℃)を管先端に吹付けることにより、管先端温度を1分足らずで約10℃から約60℃に上昇させることができる。この他、インジェクションヒータなどの方式も可能である。
また、図5に示すように、切断機の回転刃5の厚みを薄くすることによって、矯正割れの発生傾向を低減させることができる。これは、回転刃の厚みが薄くなると切断抵抗が減少し、切断時のせん断加工硬化による切口面の硬度増分が小さくなって、切口面付近の延性が向上するためと考えられる。これによる矯正割れ抑制効果は、回転刃の厚みが3.0mm以下で顕著になるから、切断機においては厚みが3.0mm以下の回転刃を用いることとする。
また、図6に示すように、電縫溶接の溶接条件を、溶接部(シーム部)のHAZ幅(HAZ硬化域の管周方向幅(中央部のボンドも含めた幅))が小さくなるように設定することによって、矯正割れの発生傾向を低減させることができる。これは、HAZ幅が小さくなると、HAZが管周方向の引張応力に対して変形しやすくなり、比較的低硬度のボンドへの歪集中が緩和されるためであると考えられる。これによる矯正割れ抑制効果は、帯鋼板厚(肉厚)t(mm)との関係から、HAZ幅が(0.4t+1.83)mm以下で顕著になるから、HAZ幅がこの値以下になるように電縫溶接条件を設定するのが好ましい。それには、次式で定義されるヒート係数の値が2.8以下になる電縫溶接条件とするのが好ましい。
ヒート係数=消費電圧[kV]×消費電流[A]÷造管速度[m/分]÷肉厚[mm]
また、上述した、矯正前後の管先端部温度を25℃以上に確保する方法、切断機の回転刃を薄くする方法、および電縫溶接シーム部のHAZ幅を狭くする方法、の3つは、それぞれ単独で実施してもよく、また、2つ以上を組合わせて実施してもよい。なお、これらの方法の矯正割れ抑制効果の大きさを互いに比べると、矯正前後の管先端部温度を25℃以上に確保する方法の効果が最も大きいので、これらを組合わせる際には、矯正前後の管先端部温度を25℃以上に確保する方法を優先的に採用するのが好ましい。
本発明に用いる帯鋼の鋼種は、特に限定されないが、好ましくは、JISのSTKM18A、STKM20Aのいずれかに該当する鋼種である。もっとも、図7に示すように、帯鋼のMn含有量が1.3mass%未満である場合、従来においても矯正割れ発生傾向はごく小さいから、本発明では、効果顕現性の観点から、Mn含有量が1.25mass%以上である帯鋼に対して用いるのが好ましい。より好ましくはMn含有量が1.35mass%以上の帯鋼である。
JIS STKM18A相当の鋼種(ただしMn:1.35〜1.45mass%)の帯鋼を素材として、図2に示した造管ラインにより、外径89.1mm×肉厚2.9mmの小径電縫鋼管を製造した。このとき、製造条件は表1に示す種々の条件とした。なお、外気温は9℃であった。それぞれの条件で製造した際の矯正割れ発生率(本数率)を表1に示す。なお、表1のNo.2,No.5では、矯正後の管先端部温度25℃以上が確保された。表1より、本発明例では、比較例に比べ、矯正割れ発生傾向が格段に軽減されていることがわかる。
また、本実施例で使用した温風加熱方式の他に、インジェクションヒータなどの加熱装置を使用してもよい。
Figure 2011235359
1 アンコイラー
2 ロール成形機
3 高周波加熱用コイル
4 スクイズロール
5 回転刃
6 矯正機
10 帯鋼
11 管(電縫鋼管)

Claims (3)

  1. 帯鋼を連続的に払出しながら帯幅を丸めて管状に成形し、該管状成形体を電縫溶接して管となし、該管を所定の長さに切断後、矯正する小径電縫鋼管の製造方法において、矯正割れを抑制するために、前記切断に用いる回転刃の厚みを3.0mm以下とすることを特徴とする小径電縫鋼管の製造方法。
  2. 前記電縫溶接の条件を、該溶接部のHAZ幅が(0.4t+1.83)mm以下(t:帯鋼板厚(mm))となるように設定することを特徴とする請求項1に記載の小径電縫鋼管の製造方法。
  3. 矯正前の管先端への温風吹付け加熱により、矯正前後の管先端部温度を25℃以上に確保することを特徴とする請求項1又は2に記載の小径電縫鋼管の製造方法。
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