JP2011231360A - 厚鋼板の誘導加熱方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】厚鋼板の製造ラインにおいて、加速冷却時の温度ばらつきが大きい際にも、安定して表面硬度を制御する事ができる厚鋼板の誘導加熱方法を提供する。
【解決手段】熱間圧延後に加速冷却された厚鋼板を1または複数のインダクタを備えた誘導加熱装置で加熱する際に、まず、加速冷却後の前記厚鋼板の温度を調整する予備加熱を行ってから、前記厚鋼板の表面温度の最小値が第1の目標温度以上、且つ、板厚中心位置における温度が第2の目標温度以下となるように予め演算された加熱設定条件にて1パス表層加熱を行うことを特徴とする、厚鋼板の誘導加熱方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、加速冷却後の厚鋼板の誘導加熱方法に関する。
厚鋼板の場合、輸送用鋼管、球形タンクおよび海洋構造物など特に優れた構造安全性が要求される用途に用いられるものでは、製品仕様に表面硬度の上限値が規定される場合がある。例えば、耐サワー溶接管では、SSCCを防止するため、表面硬度をHv238以下とする事が規定されている。
これに対し、一般に製造されている焼入れ、焼戻しの熱処理を施された鋼材は、主に表面から冷却を受けるため、表面硬度が内部に比べて高くなりがちである。このような板厚方向の硬度分布を持った鋼材は、腐食環境に弱く、石油、天然ガスのパイプライン等に使用されると硫化水素による応力腐食割れを起こしやすい事が分かっている。そこで、表層部を高温で加熱することにより軟化させ、表層部と内部の硬度差を少なくする処理が行われることもある。この熱処理方法を表層加熱という。
このような表層加熱を実施する方法として、例えば、特許文献1にて開示されるように、オフラインでの硬度測定結果、及び加熱温度と硬度低下量との関係から加熱条件を求めて加熱する方法がある。
また、特許文献2や特許文献3には、圧延ライン上に設置された複数台の誘導加熱装置を用いて表層加熱を行う際に、鋼材の誘導加熱による温度変化を精度良く予測する方法、及び、鋼材の加熱終了時における表面温度の最小値が第1の目標温度以上、且つ、鋼材厚み方向内部の所定位置における温度を第2の目標温度以下となるように加熱するための供給予定電力を演算する方法が開示されている。
特開2008−297583号公報 特開2005−068553号公報 特開2005−146393号公報
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、搬送ライン上の表面硬度計にて冷却後厚鋼板の表面硬度を測定する必要があるため、搬送ラインがタイトな操業条件下では実施困難である。また、誘導加熱方法自体について具体的な操業方法を規定していないため、誘導加熱時の加熱条件によって表層硬度の低減効果が変化する可能性もある。
一方、特許文献2や特許文献3に記載される方法にて表層加熱を行う場合、例えば歪硬化層や硬質層(マルテンサイト等)が軟化・分解される目標温度Ts(例えば550℃)を第1の目標温度とし、表面温度の最小値が第1の目標温度Ts以上となるまで急速加熱して表面硬度を低減する。また同時に、板厚中心の強度・靭性に影響を与えないための目標温度Tc(例えば450℃)を第2の目標温度とし、板厚中心位置における温度が第2の目標温度Tc以下となるような制約条件を設けて誘導加熱装置の加熱設定条件を予め演算し、該加熱設定条件にて加熱を行う。このような温度条件を厚鋼板全長で安定的に実現するためには、該表層加熱前の厚鋼板加速冷却終了時点における温度分布が、均一な温度分布であるのが望ましい。
しかし、一般的に加速冷却後の厚鋼板温度を完全に均一にする事は困難であり、ある程度の温度ばらつきが残存する事は避けられない。例えば、加速冷却時の目標温度をTaoとした場合、加速冷却終了時の実績温度TaがTa<Taoである厚鋼板位置では、実績温度Taが低いために、以降の表層加熱において加熱能力が不足して表面温度が目標温度Tsまで上昇せず、硬度低減効果を得られない。逆に、加速冷却終了時の実績温度TaがTa>Taoである厚鋼板位置では、表面温度は目標温度Tsまで上昇可能であるが、実績温度Taが高いために、板厚中心温度が目標温度Tcを超えてしまい、板厚中心の強度・靭性を保つ事が出来なくなる。
これに対し、特許文献2や特許文献3に記載されるように、温度検出器で検出された鋼材温度を元に、搬送速度及び各インダクタ供給電力を修正しながら加熱する方法もある。
しかしながら、温度ばらつきが上記特許文献の演算時に許容される温度ばらつきよりも大きい場合や、各インダクタの最大出力が小さく電力フィードフォワード制御可能範囲が狭い場合などは、温度ばらつきが十分に低減されずに残存し、結果として上述のような表層加熱時の温度狙い外れが生じてしまう。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、厚鋼板の製造ラインにおいて、加速冷却時の温度ばらつきが大きい際にも、安定して表面硬度を制御する事ができる厚鋼板の誘導加熱方法を提供することを目的とするものである。
上記課題を解決するために、本発明は以下の特徴を有している。
[1]熱間圧延後に加速冷却された厚鋼板を1または複数のインダクタを備えた誘導加熱装置で加熱する際に、まず、加速冷却後の前記厚鋼板の温度を調整する予備加熱を行ってから、前記厚鋼板の表面温度の最小値が第1の目標温度以上、且つ、板厚中心位置における温度が第2の目標温度以下となるように予め演算された加熱設定条件にて1パス表層加熱を行うことを特徴とする、厚鋼板の誘導加熱方法。
[2]前記予備加熱では、予備加熱時の目標温度Tq及び許容温度範囲±ΔTqを予め設定し、予備加熱後の厚鋼板温度TpがTq±ΔTqの温度範囲に入るように1パスないし複数パスの予備加熱を行うことを特徴とする、前記[1]に記載の厚鋼板の誘導加熱方法。
[3]前記予備加熱では、予備加熱時の目標温度Trを予め設定するとともに、前記1パス表層加熱時の予定搬送速度と前記厚鋼板の長さから前記1パス表層加熱時における搬送中の空冷温度低下量ΔTnを予測し、予備加熱後の厚鋼板温度Tpが長手方向でTrからTr+ΔTnまで連続的に変化する温度分布となるように予備加熱を行うことを特徴とする、前記[1]に記載の厚鋼板の誘導加熱方法。
本発明により、加速冷却時の温度ばらつきが大きい際にも、安定して厚鋼板の表面硬度を制御する事が可能となるため、特に表面硬度を規定されているラインパイプ材等の製造において非常に有用である。
本発明の実施形態1における厚鋼板の誘導加熱方法を示す図である。 本発明の実施形態1における表層加熱前の初期温度を示す図である。 本発明の実施形態1における比較例1での表層加熱時の厚鋼板先尾端温度履歴と各インダクタ出力バランスを示す図である。 本発明の実施形態1における本発明例1での表層加熱時の厚鋼板先尾端温度履歴と各インダクタ出力バランスを示す図である。 本発明の実施形態2における誘導加熱方法を示す図である。 本発明の実施形態2における表層加熱前の初期温度を示す図である。 本発明の実施形態2における比較例2での表層加熱時の厚鋼板先尾端温度履歴と各インダクタ出力バランスを示す図である。 本発明の実施形態2における本発明例2での表層加熱時の厚鋼板先尾端温度履歴と各インダクタ出力バランスを示す図である。
本発明の実施形態を述べる。
本発明の実施形態においては、熱間圧延後に加速冷却された厚鋼板を1個または複数個のインダクタを備えた誘導加熱装置で表層加熱を行う際に、まず、加速冷却後における厚鋼板の温度Taの長手方向の変動等を低減する予備加熱を行ってから、厚鋼板の表面温度Tsaが第1の目標温度Ts以上、且つ、厚鋼板の板厚中心温度Tcaが第2の目標温度Tc以下となるように予め演算された誘導加熱装置の加熱設定条件にて1パス加熱するようにしている。
すなわち、本発明の実施形態では、歪硬化層や硬質層(マルテンサイト等)が軟化・分解される目標温度Ts(例えば550℃)を第1の目標温度とし、表面温度Tsaの最小値が第1の目標温度Ts以上となるまで急速加熱して表面硬度を低減するとともに、板厚中心の強度・靭性に影響を与えないための目標温度Tc(例えば450℃)を第2の目標温度とし、板厚中心位置の温度Tcaが第2の目標温度Tc以下となるような制約条件を設けて誘導加熱装置の加熱設定条件を予め演算し、その加熱設定条件にて加熱を行う。このような表面温度と板厚中心温度を満足する表層加熱の実現のためには、厚鋼板を例えば20MW以上の高出力の誘導加熱条件にて1パス加熱する必要がある。
しかしながら、加速冷却後(表層加熱前)の厚鋼板の温度が全体的に低かったり、長手方向に大きくばらついていたりすると、誘導加熱装置の制御能力が不足して、所望の表層加熱を行うことができない場合が生じる。
そこで、本発明の実施形態では、誘導加熱装置を用いて、まず、加速冷却後の厚鋼板の温度を所定の温度に調整するための1パスまたは複数パスの予備加熱を行ってから、上記の加熱設定条件で1パス表層加熱を行うようにしている。
以下に、この予備加熱(予備誘導加熱)の具体的方法について、本発明の実施形態1、実施形態2として述べる。なお、以下の説明における厚鋼板の温度は、特に断らない限り、板厚平均温度を指すものとする。
[実施形態1]
本発明の実施形態1では、予備加熱を行う際に、予備加熱時の目標温度Tq及び許容温度範囲±ΔTqを予め設定しておき、予備加熱後の厚鋼板温度TpがTq±ΔTqの温度範囲に入るように予備加熱を行うようにしている。
すなわち、予備加熱時の目標温度Tqは、設備の温度制御性や処理能率を考慮して許容温度範囲ΔTqを設けておく。そして、厚鋼板温度Tpが、厚鋼板全長にて、目標温度Tq±ΔTqの範囲に入った時点で予備加熱完了とする。
ここで、目標温度Tq及び許容温度範囲ΔTqは、引き続いて行う表層加熱パスにおける各インダクタ出力変動が小さく安定製造が可能となる条件(例えば、400±10℃等)として予めシミュレーションで求め、このシミュレーション結果を元に目標温度Tq及び許容温度範囲ΔTqを決定し、予備加熱パスの目標値として設定しておく。
このような実施形態1に基づいて厚鋼板を誘導加熱する方法について、図1に示すような、加速冷却装置10の下流側に2台のインダクタ(#1インダクタ21、#2インダクタ22を有するソレノイド型誘導加熱装置20を設けた厚鋼板製造ラインによって説明する。なお、図1中の下向き矢印は温度計である。
(S1)先ず、図1(a)に示すように、加速冷却装置10による加速冷却終了後に温度計で厚鋼板1の実績温度Taの測定を行う。
(S2)次に、この実績温度Taに基づいて、図1(b)に示すように、2台のインダクタ21、22を用いて予備加熱を行う。その際に、実績温度Taが加速冷却時の狙い温度Taoよりも低めに外れている場合(Ta<Tao)には、各インダクタ近傍に設置された温度計による温度実績データTpが目標温度Tq±許容温度範囲ΔTqに入る(Tq−ΔTq≦Tp≦Tq+ΔTq)まで予備加熱を行う。逆に、実績温度Taが加速冷却時の狙い温度Taoよりも高めに外れている場合(Ta>Tao)には、予備加熱パスをインダクタ出力=0とした空冷パスにする事で温度低下を図る。
すなわち、各インダクタ近傍に設置された温度計による温度実績データを用いたフィードフォワード制御によって、厚鋼板温度に応じてインダクタ出力を可変制御しながら長手方向温度差を解消する。
(S3)そして、予備加熱パス終了後に、図1(c)に示すように、表面温度Tsa≧第1目標温度Ts、且つ、板厚中心温度Tca≦第2目標温度Tcの温度設定条件で1パス表層加熱を行う。
なお、上記において、加速冷却終了後に1パスの予備加熱で目標温度Tq±ΔTqに加熱された場合には、そのまま逆転パスにて1パス表層加熱を行う。
また、2台のインダクタ21、22が同じ出力を有する場合は、正転パス,逆転パス何れも表層加熱が可能なので、予備加熱を複数パス実施した場合には、予備加熱終了後の次パスにて1パス表層加熱を行う。
以下、本発明の実施形態1を具体的計算例によって説明する。
図1に示した厚鋼板の製造ラインにおいて、板厚30.9mm、加速冷却終了温度340℃狙いの厚鋼板について、加速冷却装置10による加速冷却終了後に、2台のインダクタ(#1インダクタ21、#2インダクタ22)を有するソレノイド型誘導加熱装置20を用いて、表面温度Tsa≧560℃及び板厚中心温度Tca≦430℃となる条件にて1パス表層加熱を行うことにする。
その際に、加速冷却後の温度条件として、図2のCase1に示すように、加速冷却終了温度が狙い温度340℃より25℃低め外れで、尚且つ長手方向の温度ばらつき(先端温度−尾端温度)も25℃生じているものとした。
その上で、比較例1として、上記の温度条件のままで、1パス表層加熱を行った。一方、本発明例1として、図2のCase2に示すように、加速冷却後に予備加熱を行う事で厚鋼板温度を340℃均一としてから、1パス表層加熱を行った。
そして、図3(a)、(b)に、比較例1における厚鋼板先尾端それぞれの温度履歴計算結果と、各インダクタ出力バランス計算結果を示し、図4(a)、(b)に、本発明例1における厚鋼板先尾端それぞれの温度履歴計算結果と、各インダクタ出力バランス計算結果を示す。
ここで、表層と板厚中心位置の温度差を大きくするため、#2インダクタの出力は厚鋼板の先端から尾端までほぼ最大出力(20MW以上)を採ることとし、厚鋼板温度の長手方向分布に応じて#1インダクタの出力を調整するものとする。
ちなみに、厚鋼板先端とは表層加熱パスにおける進入側、厚鋼板後端とは表層加熱パスにおける尻抜け側を表すものとする。
その結果、比較例1では、図3に示すように、加速冷却時の温度ばらつき影響で表層加熱開始温度が低めに外れているため、先端は#1インダクタ出力に余裕があるものの、尾端は#1インダクタ出力の余裕が無く、更に温度差が拡大した場合には#1インダクタの加熱能力が不足となる。#1インダクタの加熱能力が不足すると、#1インダクタによる温度フィードフォワード制御が機能しなくなるため、厚鋼板温度ばらつきを補償する事が出来なくなり、目標温度まで加熱する事が出来なくなる。
一方、本発明例1では、図4に示すように、加速冷却後に予備加熱を行って厚鋼板の温度を340℃均一としている。厚鋼板の搬送に伴う空冷影響のため、予備加熱後に行う表層加熱の開始温度自体は先端と尾端で若干差が生じるものの、予備加熱の効果により、先端・尾端共に#1インダクタ出力に余裕があり、厚鋼板全長にわたって安定製造が可能である事が分かる。
なお、前記計算例における本発明例1は、予備加熱時の目標温度Tqを340℃、許容温度範囲ΔTqを0℃とした例であるが、ΔTqとして10℃程度の許容幅を設ける事によっても、厚鋼板全長にわたって問題なく安定製造が可能となる。
[実施形態2]
本発明の実施形態2では、予備加熱を行う際に、その後の1パス表層加熱時において生じる、誘導加熱装置に進入する際の厚鋼板の長手方向での時間差(空冷温度差)を考慮して、厚鋼板の長手方向に適切な温度分布を付与するように予備加熱を行うことで、1パス表層加熱パスにおける初期温度が一定になるようにしている。
すなわち、予備加熱時の目標温度Trを予め設定するとともに、1パス表層加熱時の予定搬送速度と厚鋼板長さから1パス表層加熱時における搬送中の空冷温度低下量(すなわち、先端が誘導加熱装置に進入してから尾端が誘導加熱装置に進入するまでの尾端の空冷温度低下量)ΔTnを予測し、予備加熱後の厚鋼板温度Tpが長手方向でTrからTr+ΔTnまで連続的に変化する温度分布となるように予備加熱を行うようにしている。
ここで、予備加熱時の目標温度Trとしては、例えば予備加熱後の復熱効果を考慮した板厚平均温度とし、この板厚平均温度の目標温度Trを、引き続いて行う表層加熱パスにて各インダクタ出力に余裕がある範囲で狙えるように予めシミュレーション計算により求め、予備加熱パスの目標値として設定しておく。
また、空冷温度低下量ΔTnについては、表層加熱パスにおける予定搬送速度と厚鋼板長さから空冷時間が算出されるため、一般的な空冷温度計算モデルを用いてΔTnを予測する事が出来る。
このような実施形態2に基づいて厚鋼板を誘導加熱する方法について、図5に示すような、加速冷却装置10の下流側に2台のインダクタ(#1インダクタ21、#2インダクタ22を有するソレノイド型誘導加熱装置20を設けた厚鋼板製造ラインによって説明する。なお、図5中の下向き矢印は温度計である。
(P1)先ず、図5(a)に示すように、加速冷却装置10による加速冷却終了後に温度計で厚鋼板1の実績温度Taの測定を行う。
(P2)次に、この実績温度Taに基づいて、図5(b)に示すように、2台のインダクタ21、22を用いて予備加熱を行う。その際に、各インダクタ近傍に設置された温度計による温度実績データを確認しながら、フィードフォワード制御によって厚鋼板温度に応じてインダクタ出力を可変制御して、厚鋼板温度Tpが長手方向でTrからTr+ΔTnの連続的な温度分布となるように予備加熱を行う。
なお、ここでは、予備加熱後の逆転パスで表層加熱を行う事を想定しているため、予備加熱時の先端(表層加熱時の尾端)がTr+ΔTn、予備加熱時の尾端(表層加熱時の先端)がTrとなるような温度分布を付与する。
(P3)そして、予備加熱パス終了後の逆転パスにおいて、図5(c)に示すように、表面温度Tsa≧第1目標温度Ts、且つ、板厚中心温度Tca≦第2目標温度Tcの温度設定条件で1パス表層加熱を行う。
これによって、表層加熱パスにおける初期温度が厚鋼板全長にわたって一定値Trとなり、2台のインダクタ21、22の出力変動を抑えながら表層加熱を行う事が可能となる。
なお、2台のインダクタ21、22が同じ出力を有する場合、正転パス,逆転パス何れも表層加熱が可能なので、予備加熱を複数パス実施した場合、予備加熱終了後の次パスを表層加熱パスとして1パス表層加熱を行う。
以下、本発明の実施形態2を具体的計算例によって説明する。
図5に示した厚鋼板の製造ラインにおいて、板厚30.9mm、加速冷却終了温度340℃狙いの厚鋼板について、加速冷却装置10による加速冷却終了後に、2台のインダクタ(#1インダクタ21、#2インダクタ22)を有するソレノイド型誘導加熱装置20を用いて、表面温度Tsa≧560℃及び板厚中心温度Tca≦430℃となる条件にて1パス表層加熱を行うことにする。
その際に、加速冷却後の温度条件として、図6のCase1に示すように、加速冷却終了温度が狙い温度340℃より25℃低め外れで、尚且つ長手方向の温度ばらつき(先端温度−尾端温度)も25℃生じているものとした。
その上で、比較例2として、上記の温度条件のままで、1パス表層加熱を行った。一方、本発明例2として、図6のCase2に示すように、予備加熱時の目標温度Trを340℃とするとともに、表層加熱時の搬送による空冷温度低下量ΔTnを17℃と予測し、厚鋼板温度Tpが長手方向で340℃(Tr)から357℃(Tt+ΔTn)まで連続的に変化する温度分布になるよう予備加熱を行ってから、1パス表層加熱を行った。
そして、図7(a)、(b)に、比較例2における厚鋼板先尾端それぞれの温度履歴計算結果と、各インダクタ出力バランス計算結果を示し、図8(a)、(b)に、本発明例2における厚鋼板先尾端それぞれの温度履歴計算結果と、各インダクタ出力バランス計算結果を示す。
ちなみに、厚鋼板先端とは表層加熱パスにおける進入側、厚鋼板後端とは表層加熱パスにおける尻抜け側を表すものとする。
その結果、比較例2では、図7に示すように、加速冷却時の長手方向温度ばらつきと搬送時の空冷温度低下の影響により、表層加熱前の初期温度が先端と尾端で40℃くらいの差がある。そのため、先端は#1インダクタ出力に余裕があるものの、尾端は#1インダクタ出力の余裕が無く、更に温度差が拡大した場合には#1インダクタの加熱能力が不足となる。#1インダクタの加熱能力が不足すると、#1インダクタによる温度フィードフォワード制御が機能しなくなるため、厚鋼板温度ばらつきを補償する事が出来なくなり、目標温度まで加熱する事が出来なくなる。
一方、本発明例2では、図8に示すように、加速冷却後に表層加熱開始の厚鋼板長手方向の時間差を考慮した予備加熱を行う事で、以降の表層加熱パスにおける初期温度が一定となり、表層加熱時の温度履歴及び各インダクタ出力バランスが先端と尾端でほぼ同一となっている。先端・尾端共に#1インダクタ出力に余裕があり、厚鋼板全長にわたって安定製造が可能である事が分かる。
1 厚鋼板
10 加速冷却装置
20 ソレノイド型誘導加熱装置
21 #1インダクタ
22 #2インダクタ

Claims (3)

  1. 熱間圧延後に加速冷却された厚鋼板を1または複数のインダクタを備えた誘導加熱装置で加熱する際に、まず、加速冷却後の前記厚鋼板の温度を調整する予備加熱を行ってから、前記厚鋼板の表面温度の最小値が第1の目標温度以上、且つ、板厚中心位置における温度が第2の目標温度以下となるように予め演算された加熱設定条件にて1パス表層加熱を行うことを特徴とする、厚鋼板の誘導加熱方法。
  2. 前記予備加熱では、予備加熱時の目標温度Tq及び許容温度範囲±ΔTqを予め設定し、予備加熱後の厚鋼板温度TpがTq±ΔTqの温度範囲に入るように1パスないし複数パスの予備加熱を行うことを特徴とする、請求項1に記載の厚鋼板の誘導加熱方法。
  3. 前記予備加熱では、予備加熱時の目標温度Trを予め設定するとともに、前記1パス表層加熱時の予定搬送速度と前記厚鋼板の長さから前記1パス表層加熱時における搬送中の空冷温度低下量ΔTnを予測し、予備加熱後の厚鋼板温度Tpが長手方向でTrからTr+ΔTnまで連続的に変化する温度分布となるように予備加熱を行うことを特徴とする、請求項1に記載の厚鋼板の誘導加熱方法。
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