JP2011229427A - 抗酸化性組成物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
本発明は、抗酸化性物質である3−ヒドロキシアントラニル酸を含有する抗酸化性組成物の新規な製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明は、リゾプス(Rhizopus)属に属する菌を、トリプトファンを添加した培地で培養することにより、培養物中に3−ヒドロキシアントラニル酸を産生させることを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法を提供する。さらに、当該製造方法により得られる抗酸化性組成物は、食品、化粧品、医薬品等において極めて有効に用いることができる。
【選択図】 なし
Description
さらに、本発明は、その製造方法により得られる抗酸化性組成物を含有する食品、化粧品、医薬品等に関する。
また、例えば、大豆にリゾプス オリゴスポラスIFO32002又はリゾプス オリゴスポラスIFO32003を用いて発酵させたテンペから抗酸化性物質である3−ヒドロキシアントラニル酸を単離同定したこと、及び、3−ヒドロキシアントラニル酸の含有量は発酵2日目のテンペの凍結乾燥品について最大(約50mg/固形物100g)であったことが報告されている(例えば、非特許文献1参照)が、3−ヒドロキシアントラニル酸の含量が少ないという問題がある。
また、例えば、3−ヒドロキシアントラニル酸及びトコフェロールを豚脂に添加し180℃で5時間加熱後のAOM試験では、3−ヒドロキシアントラニル酸がトコフェロールよりも熱安定性が高いことが報告されている(例えば、非特許文献3参照)。
また、例えば、3−ヒドロキシアントラニル酸のチロシナーゼ活性の阻害が報告されており(例えば、非特許文献4参照)、3−ヒドロキシアントラニル酸の美白作用が期待されている。
また、大豆発酵物による抗酸化性については、大豆発酵食品そのものを食することにより付随的に抗酸化成分等の有効成分を利用するものであり、必ずしも十分な抗酸化性能を有するものではない。
また、3−ヒドロキシアントラニル酸は、強い抗酸化活性、チロシナーゼ阻害活性を有し、抗酸化物質、美白化粧品原料として注目されており、化学的合成によらない3−ヒドロキシアントラニル酸の製造方法が望まれている。
すなわち、本発明は、リゾプス(Rhizopus)属に属する菌を、トリプトファンを添加した培地に接種し、培養して得られる培養物中に3−ヒドロキシアントラニル酸を産生させ、その3−ヒドロキシアントラニル酸を含有する抗酸化性組成物の新規な製造方法を提供するものである。
さらに、本発明は、当該製造方法により得られる抗酸化性組成物を含有する、食品、化粧品、医薬品等を提供するものである。
項(1)
リゾプス(Rhizopus)属に属する菌を、トリプトファンを添加した培地で培養することにより、3−ヒドロキシアントラニル酸を産生させることを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
項(2)
リゾプス(Rhizopus)属に属する菌が、リゾプス オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、リゾプス オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス キネンシス(Rhizopus chinensis)、リゾプス ストロニファー(Rhizopus stolonifer)、リゾプス ニベウス(Rhizopus niveus)のうちから選ばれる1種以上であることを特徴とする項(1)に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
項(3)
培地に添加するトリプトファンの量が、少なくとも0.01重量%であることを特徴とする項(1)に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
項(4)
培地が、少なくとも有機窒素成分を含有する素材と炭水化物若しくは炭水化物を含有する素材とを配合した培地、又は、少なくとも有機窒素成分を含有する素材と油脂若しくは油脂を含有する素材とを配合した培地、のいずれかであることを特徴とする項(1)に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
項(5)
項(1)〜(4)のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物の製造方法により得られることを特徴とする抗酸化性組成物。
項(6)
項(5)に記載の抗酸化性組成物を含有することを特徴とする食品。
項(7)
項(5)に記載の抗酸化性組成物を含有することを特徴とする化粧品。
さらに、本発明による抗酸化性組成物は、優れた抗酸化性能と美白作用等の機能性とを有し、食品、化粧品、医薬品等において極めて有効に用いることができる。
本発明において、トリプトファンを培地に添加することにより、リゾプス(Rhizopus)属に属する菌が遊離アミノ酸としてのトリプトファンを資化し、培養物中に3−ヒドロキシアントラニル酸を産生せしめる。
リゾプス アジゴスポルス(Rhizopus azygosporus)、
リゾプス オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、
リゾプス オリゼ(Rhizopus oryzae)、
リゾプス カエスピトサス(Rhizopus caespitosus)、
リゾプス キネンシス(Rhizopus chinensis)
リゾプス サーシナンス(Rhizopus circinans)、
リゾプス ジャバニカス(Rhizopus javanicus)、
リゾプス ジャポニカス(Rhizopus japonicus)、
リゾプス ストロニファー(Rhizopus stolonifer)、
リゾプス ニグリカンス(Rhizopus nigricans)、
リゾプス ニベウス(Rhizopus niveus)、
リゾプス ミクロスポラス(Rhizopus microsporus)、
リゾプス リゾポジホルミス(Rhizopus rhizopodiformis)、
等が挙げられ、好ましくは、リゾプス オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、リゾプス オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス キネンシス(Rhizopus chinensis)、リゾプス ストロニファー(Rhizopus stolonifer)、リゾプス ニベウス(Rhizopus niveus)のうちから選ばれる1種以上である。
具体的には、リゾプス オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)NBRC32003、リゾプス オリゼ(Rhizopus oryzae)NBRC4706、リゾプス キネンシス(Rhizopus chinensis)NBRC4737、リゾプス ストロニファー(Rhizopus stolonifer)NBRC6188、リゾプス ニベウス(Rhizopus niveus)NBRC4759、等が挙げられる。
また、本発明において、用いるトリプトファンは、各種タンパク質加水分解物に含まれるトリプトファンであってもよい。
本発明において、培地に添加するトリプトファンの量は、少なくとも0.01重量%であり、好ましくは、0.02〜5.0重量%、より好ましくは、0.05〜3.0重量%、特に好ましくは、0.1〜1.0重量%である。なお、培地へのトリプトファンの添加量が多量となると、トリプトファンが培地に溶けにくい、資化効率が低下する、コスト高となる等の不都合が生じることもある。
本発明において、用いる培地は、窒素源、炭素源、無機物質、及び必要に応じてビタミン等を含む常法で用いられるものであればよい。
本発明において、培地中に配合する有機窒素成分を含有する素材の量は、0.01〜80重量%、好ましくは、0.05〜60重量%、より好ましくは、0.5〜50重量%、である。
本発明において、培地中に配合する炭水化物若しくは炭水化物を含有する素材の量は、0.1〜80重量%、好ましくは、0.5〜60重量%、より好ましくは、2〜50重量%、である。
また、本発明において、培地中に配合する油脂若しくは油脂を含有する素材の量は、0.1〜80重量%、好ましくは、0.5〜60重量%、より好ましくは、2〜50重量%、である。
また、本発明において、有機窒素成分と油脂との両方を含有する素材について、大豆、トウモロコシ、ごま等の種実類、小麦フスマや米ヌカ等の糠類、油糧素材等が挙げることができ、これらを用いてもよい。
固液分離工程としては、遠心分離やろ過等が挙げられ、適宜設定することができ、液部として得られた抗酸化性組成物は、そのまま用いてもよいし、常法により濃縮機等で処理して濃縮物として用いてもよいし、後述するように乾燥して用いてもよい。
活性炭による精製処理は、処理原料に活性炭を加え、その後固液分離して活性炭を除去することにより行う。活性炭の使用量は処理原料重量に対して、0.1〜10重量%であり、好ましくは、0.5〜5重量%である。
また、本発明において、上記の培養工程、殺菌工程、固液分離工程を経た抗酸化性組成物をそのまま、又は、常法により濃縮機等で処理して濃縮物として用いてもよく、乾燥して用いてもよい。
また、上記の培養工程、殺菌工程、固液分離工程、精製処理工程を経た抗酸化性組成物を用いてもよく、さらに、これを常法により濃縮機等で処理して濃縮物として用いてもよく、乾燥して用いてもよい。
また、抗酸化性組成物の安定化等のために溶剤を適宜用いてもよく、デキストリン等の賦形剤を適宜用いてもよい。
本発明において、抗酸化性組成物の固形物当たりの3−ヒドロキシアントラニル酸の含有量は、好ましくは、0.05重量%(500μg/g)以上であり、より好ましくは、0.1重量%(1000μg/g)以上であり、さらに好ましくは、0.3重量%(3000μg/g)以上であり、特に好ましくは、0.5重量%(5000μg/g)以上である。
[培地A(対照区)]
有機窒素成分として酵母エキス(ベクトン&ディッキンソン社製)0.5g(1.0%)と、油脂成分として大豆油(加藤製油株式会社製「大豆白絞油」)1g(2.0%)と、無機物質としてリン酸一カリウム0.05g(0.1%)と、リン酸二カリウム0.1g(0.2%)と、硫酸マグネシウム0.025g(0.05%)と、硫酸第一鉄0.0025g(0.005%)と、水とを配合して、全体を50g(100%)とし、121℃、15分加熱滅菌した培地。
[培地Aのトリプトファン添加区]
有機窒素成分として酵母エキス(ベクトン&ディッキンソン社製)0.5g(1.0%)と、油脂成分として大豆油(加藤製油株式会社製「大豆白絞油」)1g(2.0%)と、無機物質としてリン酸一カリウム0.05g(0.1%)と、リン酸二カリウム0.1g(0.2%)と、硫酸マグネシウム0.025g(0.05%)と、硫酸第一鉄0.0025g(0.005%)と、L−トリプトファン0.2g(0.4%)と、水とを配合して、全体を50g(100%)とし、121℃、15分加熱滅菌した培地。
[培地B(対照区)]
有機窒素成分として酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)0.025g(0.05%)と、大豆粉5g(10.0%)と、水とを配合して、全体を50g(100%)とし、121℃、15分加熱滅菌した培地。
[培地Bのトリプトファン添加区]
有機窒素成分として酵母エキス(アサヒフードアンドヘルスケア社製)0.025g(0.05%)と、大豆粉5g(10.0%)と、L−トリプトファン0.1g(0.2%)と、水とを配合して、全体を50g(100%)とし、121℃、15分加熱滅菌した培地。
検出器:蛍光検出器(励起波長325nm、蛍光波長420nm)
カラム:Inertsil C18(内径4.6mm、長さ25cm)
移動相:5mmol 臭化ブチルテトラアンモニウム、0.1mmol EDTA、30mmol リン酸カリウム緩衝液(pH6.0):アセトニトリル=1000:70
流速:0.9ml/分
カラム温度:40℃
標品:試薬の3−HAA(東京化成工業株式会社製)を30mmol リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)に溶解して、検量線を作成した。
検液:30mmol リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で希釈した。
さらに、この液重量に対して3.5重量%のデキストリンを加えて、凍結乾燥し、本発明の抗酸化性組成物1.7gを得た。実施例1と同様の測定条件でHPLC測定したところ、3−HAA含有量は20300μg/g(2.03%)であった。得られた本発明品は、色は淡黄色であり、また、異味異臭がなく、官能面において良好なものであった。
さらに、ろ過による固液分離を行った後、ろ液を減圧濃縮して濃縮液90g(固形分24.5%)を得た。この濃縮液重量に対して5重量%のデキストリンを加えて、凍結乾燥し、本発明の抗酸化性組成物25gを得た。このものについて、実施例1と同様の測定条件でHPLC測定したところ、3−HAA含有量は17200μg/g(1.72%)であった。
市販テンペ(固形分42.0%)及びテンペ菌により大豆を発酵した大豆発酵物(固形分36.6%)について、3−HAAの含有量を測定した。検体に30mmol リン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を加え、粉砕後遠心分離し、上清液を得た。それぞれの上清液について、固形物当たりの3−HAA含有量を求めた。HPLCの測定条件は、実施例1と同様とした。分析結果を、表3に示す。比較として実施例3及び実施例4の固形物当たりの3−HAA含有量を示す。
なお、テンペ菌により大豆を発酵した大豆発酵物は、下記に示す国際公開第01/093696号公報(発明の名称「γ−アミノ酪酸及び遊離アミノ酸高含有発酵食品の製造方法」)<実施例8>記載の方法に従って、調製した。
※国際公開01/093696号公報<実施例8>記載の方法:脱皮大豆100gを0.2%酢酸溶液300mlに12時間浸漬し、120℃、5分間蒸煮し、蒸煮大豆を調製した。続いて蒸煮大豆にリゾプス オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)NBRC32003の菌株の胞子懸濁液1重量%を添加し、混合した。これを、表面に穴をあけたポリ袋に蒸煮大豆が厚さ1.5cm程度となるように充填した後に、30℃にて20〜22時間発酵後、20時間嫌気処理を行い、大豆発酵物を調製した。
なお、溶媒は80%メタノールとし、抗酸化物質としてブチルヒドロキシアニソール(以下、「BHA」とする。)を用い、ブランクとして試料溶液の代わりに80%メタノールを用い、試料の処理前(0分)、50℃加熱処理45分、50℃加熱処理60分、のそれぞれについて、470nmの吸光度を測定し、次式から各試験溶液の退色抑制率を求めた。その結果を表4に示す。
(60分経過)退色抑制率(%)=100×[1−(Abs60−Abs0)/B0]
B0 :ブランクの0分の吸光度
Abs0 :試料の処理前(0分)の吸光度
Abs45:処理45分後の吸光度
Abs60:処理60分後の吸光度
[配合例1]
次の処方で、イワシをミキサーで粉砕後、食塩、残余の配合成分を加えてすり鉢にて十分擂った後、沸騰浴中で3〜4分間加熱してイワシのつみれを調製し、透明パウチに入れて冷蔵保管した。
(材料) (重量%)
イワシ 61.8
馬鈴薯澱粉 12.4
砂糖 3.1
食塩 1.8
グリシン 1.5
グルタミン酸ナトリウム 0.4
水 18.85
本発明品(実施例3) 0.15
ゼラチンカプセルに本発明品(実施例4)200mgを充填し、キャップ部を結合し、抗酸化性組成物を含有するカプセル食品を調製した。
次の処方で常法により、湿式造粒し、打錠して錠剤を得た。
(成分) (重量%)
本発明品(実施例4) 35.0
乳糖 47.0
結晶セルロース 14.0
ヒドロキシプロピルセルロース 3.0
ステアリン酸マグネシウム 0.1
タルク 0.9
次の処方で常法により、化粧水を製造した。
(成分) (重量%)
本発明品(実施例3) 0.2
グリセリン 5.0
オレイルアルコール 0.1
ポリエキシエチレン(20)
ソルビタンモノラウリル酸エステル 0.5
エチルアルコール 10.0
香料 0.2
精製水 84.0
次の処方で常法により、クリームを製造した。
(成分) (重量%)
本発明品(実施例3) 3.0
ステアリン酸 8.0
ステアリルアルコール 4.0
ステアリン酸ブチル 6.0
プロピレングリコール 5.0
モノステアリン酸グリセリン 2.0
水酸化カリウム 0.4
防腐剤 適 量
酸化防止剤 適 量
香料 適 量
精製水 71.6
次の処方で常法により、ローションを製造した。
(成分) (重量%)
本発明品(実施例3) 3.0
エチルアルコール 15.0
ヒドロキシエチルセルロース 0.1
防腐剤 0.1
精製水 81.8
Claims (7)
- リゾプス(Rhizopus)属に属する菌を、トリプトファンを添加した培地で培養することにより、3−ヒドロキシアントラニル酸を産生させることを特徴とする抗酸化性組成物の製造方法。
- リゾプス(Rhizopus)属に属する菌が、リゾプス オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)、リゾプス オリゼ(Rhizopus oryzae)、リゾプス キネンシス(Rhizopus chinensis)、リゾプス ストロニファー(Rhizopus stolonifer)、リゾプス ニベウス(Rhizopus niveus)のうちから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
- 培地に添加するトリプトファンの量が、少なくとも0.01重量%であることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
- 培地が、少なくとも有機窒素成分を含有する素材と炭水化物若しくは炭水化物を含有する素材とを配合した培地、又は、少なくとも有機窒素成分を含有する素材と油脂若しくは油脂を含有する素材とを配合した培地、のいずれかであることを特徴とする請求項1に記載の抗酸化性組成物の製造方法。
- 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の抗酸化性組成物の製造方法により得られることを特徴とする抗酸化性組成物。
- 請求項5に記載の抗酸化性組成物を含有することを特徴とする食品。
- 請求項5に記載の抗酸化性組成物を含有することを特徴とする化粧品。
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