JP2011225660A - 酸化亜鉛分散液とその製造方法およびプライマー層形成用塗布液と高耐久性uvカットプラスチック基材 - Google Patents

酸化亜鉛分散液とその製造方法およびプライマー層形成用塗布液と高耐久性uvカットプラスチック基材 Download PDF

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Abstract

【課題】紫外線吸収能に優れ、透明プラスチック基材やハードコート層との良好な密着性を維持して屋外耐久性を向上させかつ保存安定性に優れるプライマー層形成用塗布液とこの塗布液の調製に適用される酸化亜鉛分散液等を提供する。
【解決手段】酸化亜鉛分散液は、酸化亜鉛原料粉と溶媒から成るミルベースにシリコーンレジンで構成されるシラン化合物を投入し湿式媒体攪拌ミルを用いて酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を行なうと共に上記溶媒の除去を行わずに調製された一次粒子径が100nm以下である被覆処理酸化亜鉛微粒子と溶媒を含み、更にメトキシシラン化合物を含と上記酸化亜鉛分散液とアクリル系樹脂バインダーを含有することを特徴とするプライマー層形成用塗布液。
【選択図】なし

Description

本発明は、耐久性に優れた透明プラスチック基材と、透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層と、プライマー層上に形成されたハードコート層とを有する高耐久性UVカットプラスチック基材に係り、特に、プライマー層を形成するプライマー層形成用塗布液に用いられる酸化亜鉛分散液とその製造方法、この酸化亜鉛分散液を用いて調製されたプライマー層形成用塗布液、および、このプライマー層形成用塗布液を用いて形成されたプライマー層を有する高耐久性UVカットプラスチック基材に関するものである。
ポリカーボネート樹脂等をはじめとする透明プラスチック基材は、軽量、かつ、透明性、耐衝撃性等に優れることからガラスに代わる部材として車両や建築物の採光材として用いられる。しかし、ガラスと比較して耐擦傷性、耐候性等の実用特性に劣ることから、表面特性の改良が求められている。
透明プラスチック基材の耐候性を改良する手段としては、基材表面にポリオルガノシロキサン系(シリコーン系)、メラミン系等の熱硬化性樹脂をコーティングする方法や多官能アクリル系の光硬化性樹脂をコーティングする方法が提案されており、中でも、高い耐摩耗性が要求される車両向けグレージング用途等ではシリコーン系熱硬化性樹脂を用いたハードコート材が適用されている。
しかし、シリコーン系ハードコート材はプラスチック基材との密着性が悪いため、従来大きな問題となっていた。このため、一般的には、プラスチック基材とシリコーン系ハードコート層との間にアクリル系樹脂コーティング等のプライマー層を介在させて密着性の改善を図り、プラスチック基材の表面改質を行なう方法が採られている。
ところが、上記プライマー層を介してシリコーン系ハードコート層を被覆した物品は、長期間の屋外暴露の際、太陽光から照射される紫外線によりプライマー層が分解劣化し、プライマー層全体に体積収縮が生じることによって、上層のハードコートにマイクロクラックが発生したり、透明プラスチック基材/プライマー層/ハードコート層の内いずれかの界面での剥離が生じたりする等、耐久性に乏しいことが知られている。
そこで、耐候性および耐擦傷性を併せ持つ透明プラスチック基材を製造する方法として、特開昭56−92059号公報(特許文献1)、特開平1−149878号公報(特許文献2)および特開平3−6282号公報(特許文献3)等において、有機系紫外線吸収剤を上記プライマー層に添加する方法が提案されている。
しかしながら、有機系紫外線吸収剤をプライマー層に添加した場合、屋外での長期間曝露で、有機系紫外線吸収剤のブリードアウトに起因した膜白化や密着性の悪化等が起こる問題が存在した。
一方、有機系紫外線吸収剤をシリコーン系ハードコート層に含有させる方法もあるが、この場合は、耐擦傷性の面から紫外線吸収剤を多量に添加できないという問題がある。
このため、特開平11−58654号公報(特許文献4)においては、有機系紫外線吸収剤と光安定剤をハードコート層、プライマー層の両方に配分して含有させる方法が提案されている。しかし、プライマー層の劣化を完全に防止できる程度に多量の有機系紫外線吸収剤を含有させた場合、ハードコート層、プライマー層の各機械的強度は確実に低下してしまうという問題があった。
更に、有機系紫外線吸収剤は、有機樹脂や溶剤との相溶性に優れる反面、湿熱や紫外線により有機系紫外線吸収剤を構成する化合物自体が分解、劣化し易いため、各層に対し紫外線吸収(遮蔽)機能を長期間付与できないことが多く、表面被覆されたプラスチック基材自体の耐候性も屋外曝露で10年程度が限界とされている。また、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の一部等では、人体に対する安全性への懸念から使用制限規制が設けられている。
このような状況から、特に高耐久性が要求される建築・自動車分野においては、表面被覆された高性能のプラスチック基材、特に、上述した問題が発生し難い無機系紫外線吸収剤を用いた表面被覆のプラスチック基材が求められ、特許第3319326号公報(特許文献5)において、酸化亜鉛や酸化チタンの無機系紫外線吸収剤が配合されたプライマー組成物や透明被覆物品が提案されている。
ここで、可視光(およそ波長380〜780nmの範囲)に対して透明波長域を持つ無機系紫外線吸収剤としては、代表的なものとして、上記酸化亜鉛や酸化チタン、酸化セリウム等が広く知られている。しかし、紫外線照射に対するこれ等無機系紫外線吸収剤自体の寿命は半永久的である反面、多くは強い光触媒活性を示すことから、紫外線照射により接触する有機樹脂バインダーの酸化分解劣化を促進させ、チョーキング等の製品トラブルを起こす原因となる。このため、無機系紫外線吸収剤を表面被覆材に適用し実用化するには、別途、無機系紫外線吸収剤自体の表面処理等によって無機系紫外線吸収剤表面の光触媒作用の抑制を講じる必要がある。
そこで、無機系紫外線吸収剤表面の光触媒作用を抑制するため、シランカップリング剤をはじめとする加水分解性シランモノマーや、特開2002−362925号公報(特許文献6)に開示されるような反応性シリコーンオイルの一種であるメチルハイドロジェンポリシロキサン等を用い、酸化亜鉛等の酸化物粒子表面上にポリシロキサン被膜を形成する方法が提案されている。
例えば、化粧料等に用いられるポリシロキサン被膜を形成した酸化チタン粒子は、酸化チタン粒子粉末と反応性シリコーンオイルとを直接混合するか、または、一旦、酸化チタン粒子粉末を溶媒に分散し、この分散液と反応性シリコーンオイルとを混合し、溶媒を除去後、加熱乾燥することで得られる。また、化粧料用途等とは異なり、窓ガラス等の採光材用途に適用する場合では、製品基材に対して曇りのない高い透明性が要求される。すなわち、粒子が分散されるマトリクス中においては、粒子の分散性を非常に高いレベルに維持する必要があり、無機系紫外線吸収剤の表面処理技術には、無機系紫外線吸収剤粒子の凝集を抑え、同時に光触媒活性を十分に抑制するという二面が要求される。このため、一般的には、上述の方法等により得られたポリシロキサン被膜が形成された酸化亜鉛等の酸化物粒子を、更に媒体攪拌ミル等を用いて細かく解砕処理する等の方法が採られていた。
しかし、本発明者等の検討の結果、以下の問題点が明らかとなった。
加水分解性シランモノマーを用いて無機系紫外線吸収剤である酸化物粒子表面に被膜を形成する場合、ゾルゲル法により、加水分解性シランモノマーを加水分解、重縮合反応させることで、酸化物粒子表面にポリシロキサン被膜が形成される。ところが、加水分解反応を速やかに進行させるためには、塩酸や硝酸等の酸触媒、または、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等のアルカリ触媒と、水を必要とするため、反応過程でのpH変動により上記酸化物粒子が凝集し易く、凝集した酸化物粒子においては、個々の酸化物粒子に対してシランモノマーが均等に接触し難いという問題がある。
加えて、反応の過程で余剰のシランモノマー同士の縮合が起こり易く、生成オリゴマーが複数の酸化物粒子にまたがって反応するため、溶媒除去・乾燥時に、シリカ成分を介在した粗大かつ強固な凝結クラスターが形成され易いという問題が起こる。
また、酸化物粒子上に形成された被膜の機械的強度が低く、解砕・分散処理等の後工程における被膜ダメージが大きいため、結果として、酸化亜鉛等の酸化物粒子表面が部分的に露出する等し、再現性ある効果を得ることが困難な問題が明らかとなった。
一方、特許文献6に開示されるような反応性シリコーンオイルは、直鎖状のポリシロキサンを主鎖とし、その側鎖および両末端の一部が反応基に置換されている構造を有している。そして、反応性シリコーンオイルは高分子量体であるため、例えば、酸化亜鉛等の酸化物粒子表面に対して濡れ易く、Si−H等の高活性基を安定な状態で導入でき、個々の粒子表面に対する反応性が高いというメリットがある。しかし、反応性シリコーンオイルは、直列長鎖状であるが故に、立体因子の影響が大きく、分子内に存在する反応基の含有率が低いため自己縮合し難い。また、ポリマー同士の三次元的な接合を形成しにくいことから造膜性が低く、解砕処理時の被膜ダメージにより酸化亜鉛等の酸化物粒子表面が部分的に露出する等、得られる被膜の安定性や機械的強度が低い等の問題があった。
このような技術的背景の下、本出願人は、酸化亜鉛微粒子表面の光触媒作用が抑制された表面処理酸化亜鉛微粒子の製造方法を既に提案している(特許文献7)。
すなわち、この製造方法は、上述した反応性シリコーンオイルや加水分解性シランモノマーに代えてシリコーンレジンを用いるもので、酸化亜鉛微粒子を溶媒に分散した分散液と、ポリシロキサン結合を有し少なくとも1つ以上の珪素原子がシラノール基および/またはアルコキシシリル基を有しているシリコーンレジンとを混合して酸化亜鉛微粒子の表面にシリコーンレジンを吸着した表面処理酸化亜鉛微粒子前駆体と上記溶媒を含む混合液を得、かつこの混合液を加熱処理し乾固させて乾固体を製造する第一工程と、この乾固体を解砕して表面処理酸化亜鉛微粒子を製造する第二工程を備える方法である。
そして、この方法で用いるシリコーンレジンは、上記反応性シリコーンオイルよりもはるかに多くのアルコキシシリル基やシラノール基を分子内に含有しているため、自己縮合性が高くて造膜性に優れており、かつ、上記加水分解性シランモノマーのように加水分解・重縮合反応を促すための酸性(または塩基性)触媒や水を添加する必要がないため、表面処理過程において系のpH変動が小さく酸化亜鉛微粒子の分散性を損なうこともない。このため、個々の酸化亜鉛粒子表面に対して均一かつ再現性の高い被覆処理を施すことが可能となり、更に、シリコーンレジンは、分子内にメチル基やフェニル基を導入することにより硬化被膜に対し柔軟性が付与されるため、解砕・分散処理等の第二工程における被膜ダメージを抑制することも可能となる。従って、特許文献7に記載された方法により、酸化亜鉛微粒子表面に対して均一でダメージの少ない被覆処理ができ、光触媒作用が抑制された良好な表面処理酸化亜鉛微粒子を得ることが可能となった。
ところで、上記特許文献7に記載された表面処理酸化亜鉛微粒子の製造方法も含め、反応性シリコーンオイルや加水分解性シランモノマー等を用いた上述の湿式表面処理法は、(1)原料粉砕工程、(2)表面処理工程、(3)溶媒除去・乾燥工程、(4)再分散工程等の各工程を必要とし、処理工程が複雑で、製造コストや生産性に問題があった。
特に、安価な有機系紫外線吸収剤により市場相場が確立されている塗料・プラスチック業界においては、無機系紫外線吸収剤に対して上述した従来型の表面処理方法を適用することは工業的に困難といえる。
すなわち、透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコート層を有する透明プラスチック基材において、実用的な透明性と基材密着性を維持しつつ、長期の屋外暴露によってハードコート層のクラックや剥離を完全に抑制できるプライマー組成物は知られていない。特に、紫外線吸収剤をプライマー層に添加する方法において、安価かつ工業的な、無機系紫外線吸収剤に対する表面処理技術が確立されれば、プライマー層形成用組成物として安定した性能を確保することが容易となり、透明プラスチック基材自体の耐久性を向上させることが可能となる。
特開昭56−92059号公報 特開平1−149878号公報 特開平3−6282号公報 特開平11−58654号公報 特許第3319326号公報 特開2002−362925号公報 特開2009−120721号公報
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、紫外線吸収(遮蔽)能に優れると共に、透明プラスチック基材やハードコート層との良好な密着性を維持して、屋外での耐久性を飛躍的に向上させるプライマー層を形成できかつ長期の保存安定性に優れるプライマー層形成用塗布液(組成物)を提供し、この塗布液の調製に利用されかつ塗布液の保存安定性にも寄与できる酸化亜鉛分散液とその製造方法を提供し、更に、透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層を介しハードコート層が形成された高耐久性UVカットプラスチック基材を安価かつ工業的な製法により提供することにある。
そこで、上記課題を達成するため、本発明者等は鋭意検討を行った結果、酸化亜鉛原料粉と溶媒から成るミルベースにシラン化合物であるシリコーンレジンを投入し、湿式媒体攪拌ミルを用いて酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシリコーンレジンによる被覆処理を行なうと共に、上記溶媒の除去を行うことなく被覆処理酸化亜鉛微粒子と溶媒を含有しかつメトキシシラン化合物を含んだ長期の保存安定性に優れる酸化亜鉛分散液が調製され、更に、この酸化亜鉛分散液にアクリル系樹脂バインダーを混合させることにより長期の保存安定性に優れるプライマー層形成用塗布液(組成物)が簡便に得られることを見出した。また、このプライマー層形成用塗布液(組成物)を透明プラスチック基材上に塗布し、加熱硬化して形成されたプライマー層が優れた紫外線吸収(遮蔽)能と透明性を有していることを見出し、得られたプライマー層が、透明プラスチック基材やハードコート層との良好な密着性を維持して、屋外での耐久性に優れた高耐久性UVカットプラスチック基材を安価な製法で提供できることを見出すに至った。
すなわち、請求項1に係る発明は、
酸化亜鉛微粒子が溶媒中に分散され、プライマー層形成用塗布液を調製する際にアクリル系樹脂バインダーが添加される酸化亜鉛分散液において、
酸化亜鉛原料粉と溶媒から成るミルベースにシラン化合物を投入しかつ湿式媒体攪拌ミルを用いて上記酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を行なうと共に上記溶媒の除去を行わずに調製された一次粒子径が100nm以下である被覆処理酸化亜鉛微粒子と溶媒を含んでおり、上記シラン化合物が、シロキサン結合(Si−O−Si)の繰り返しからなるポリシロキサンを主鎖とし、一つ以上の分子末端がアルコキシシリル基(Si−OR)および/またはシラノール基(Si−OH)で封鎖され、炭素原子数1〜18の炭化水素基および/またはフェニル基を有機置換基として分子中に有するシリコーンレジンにより構成され、更に、メトキシシラン化合物を含むことを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係る酸化亜鉛分散液において、
上記メトキシシラン化合物が、一般式Rn−Si(OCH34-n(但し、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基の少なくとも1種若しくは2種以上の官能基である)で表記される化合物であることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る酸化亜鉛分散液において、
上記メトキシシラン化合物が、酸化亜鉛微粒子100重量部に対して1重量部以上120重量部以下含有することを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1〜3のいずれかに記載の発明に係る酸化亜鉛分散液において、
上記シリコーンレジンが、酸化亜鉛微粒子100重量部に対して5重量部以上300重量部以下含有することを特徴とする。
次に、請求項5に係る発明は、
請求項1に記載の酸化亜鉛分散液の製造方法において、
上記湿式媒体攪拌ミルによる酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を、相対湿度50%RH以下および/またはドライガス若しくは不活性ガスの吹込条件下において行なうことを特徴とし、
請求項6に係る発明は、
請求項1に記載の酸化亜鉛分散液の製造方法において、
上記湿式媒体攪拌ミルによる酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を、密閉型湿式媒体攪拌ミルにより行なうことを特徴とし、
請求項7に係る発明は、
透明プラスチック基材と、透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層と、プライマー層上に形成されたハードコート層とを有する高耐久性UVカットプラスチック基材の上記プライマー層を形成するためのプライマー層形成用塗布液において、
請求項1〜4のいずれかに記載の酸化亜鉛分散液と、アクリル系樹脂バインダーとを含有することを特徴とする。
更に、請求項8に係る発明は、
透明プラスチック基材と、透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層と、プライマー層上に形成されたハードコート層とを有する高耐久性UVカットプラスチック基材において、
請求項7に記載のプライマー層形成用塗布液を透明プラスチック基材上に塗布し、この塗布膜を加熱して上記プライマー層が形成されており、透明プラスチック基材と上記プライマー層とハードコート層を具備する上記UVカットプラスチック基材の可視光透過率が85%以上、ヘイズ値が1.0%以下であり、100mW/cm2の紫外線が500時間照射された前後におけるUVカットプラスチック基材の可視光透過率の変化が2.0%以下、ヘイズの変化が1.0%以下であることを特徴とし、
請求項9に係る発明は、
請求項8に記載の発明に係る高耐久性UVカットプラスチック基材において、
上記ハードコート層がシリコーン系樹脂で形成されていることを特徴とし、
請求項10に係る発明は、
請求項8または9に記載の発明に係る高耐久性UVカットプラスチック基材において、
上記プライマー層の膜厚が、1μm以上5μm以下であることを特徴とし、
請求項11に係る発明は、
請求項8〜10のいずれかに記載の発明に係る高耐久性UVカットプラスチック基材において、
上記プライマー層中における酸化亜鉛微粒子の含有率が、1重量%以上40重量%以下であることを特徴とし、
請求項12に係る発明は、
請求項8〜11のいずれかに記載の発明に係る高耐久性UVカットプラスチック基材において、
上記透明プラスチック基材が、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、アセチルセルロース樹脂、含硫ウレタン樹脂または架橋(メタ)アクリル系樹脂のいずれかであることを特徴とする。
本発明に係る酸化亜鉛分散液は、酸化亜鉛原料粉と溶媒から成るミルベースにシラン化合物を投入しかつ湿式媒体攪拌ミルを用いて酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を行なうと共に上記溶媒の除去を行わずに調製された被覆処理酸化亜鉛微粒子と溶媒を含有し、更に、上記被覆処理酸化亜鉛微粒子の分散安定性に寄与するメトキシシラン化合物を含んでいる。
そして、本発明によれば、酸化亜鉛微粒子表面に対する従来型の湿式表面処理法と相違して、上述の(3)溶媒除去・乾燥工程や(4)再分散工程等を必要とせずに上記被覆処理酸化亜鉛微粒子を含有しかつこの微粒子の分散安定性に寄与するメトキシシラン化合物を含む酸化亜鉛分散液が簡便に得られ、かつ、この酸化亜鉛分散液にアクリル系樹脂バインダーを添加することにより長期の保存安定性に優れるプライマー層形成用塗布液(組成物)が簡便に得られるため、安価な有機系紫外線吸収剤により市場相場が確立されている塗料・プラスチック業界においても、無機系紫外線吸収剤を適用した安価なプライマー層形成用塗布液として利用することが可能となる。
更に、上記プライマー層形成用塗布液を用いて形成されたプライマー層は、優れた紫外線吸収(遮蔽)能と透明性を有し、かつ、透明プラスチック基材やハードコート層との良好な密着性も有しているため、屋外での耐久性に優れた高耐久性UVカットプラスチック基材を安価に提供することも可能となる。
次に、本発明に係る実施の形態について具体的に説明する。
まず、本発明に係る酸化亜鉛分散液は、酸化亜鉛原料粉と溶媒から成るミルベースにシラン化合物を投入しかつ湿式媒体攪拌ミルを用いて上記酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を行なうと共に上記溶媒の除去を行わずに調製された一次粒子径が100nm以下である被覆処理酸化亜鉛微粒子と溶媒を含んでおり、上記シラン化合物が、シロキサン結合(Si−O−Si)の繰り返しからなるポリシロキサンを主鎖とし、一つ以上の分子末端がアルコキシシリル基(Si−OR)および/またはシラノール基(Si−OH)で封鎖され、炭素原子数1〜18の炭化水素基および/またはフェニル基を有機置換基として分子中に有するシリコーンレジンにより構成され、更に、メトキシシラン化合物を含むことを特徴し、また、本発明に係るプライマー層形成用塗布液は、上記酸化亜鉛分散液とアクリル系樹脂バインダーとを含有することを特徴とする。
以下、(1)酸化亜鉛微粒子とその製造方法、(2)酸化亜鉛分散液とその製造方法、(3)プライマー層形成用塗布液、(4)プライマー層形成用塗布液を用いたプライマー層の形成方法、(5)ハードコート層、(6)透明プラスチック基材および高耐久性UVカットプラスチック基材の順で、各々について具体的に説明する。
(1)酸化亜鉛微粒子とその製造方法
紫外光は、波長領域別に、280nm以下のUVC光、280〜320nmのUVB光、320〜400nmのUVA光に分類される。そして、本発明に係る高耐久性UVカットプラスチック基材において遮蔽する対象となるのは、地上に到達する紫外光の90%を占める上記UVA光である。
そして、可視光(380〜780nm)に対して透明波長域を持ち、紫外光を吸収する無機材料としては、上記酸化亜鉛以外に、上述した酸化チタン、酸化セリウム等が知られている。その中で、酸化亜鉛は、酸化チタンや酸化セリウム等に較べて吸収端が長波長側にあるため、可視光透過率を大きく低減することなくUVA光を選択吸収することができるという特長を有している。
また、酸化亜鉛は、白色顔料としての隠ぺい力は酸化チタンに及ばないものの、紫外光吸収特性に対する可視光透明性に優れるため、透明基材の原料として用いる場合は特に好適である。酸化亜鉛微粒子の一次粒子径は、散乱による光の遮蔽現象を回避するため100nm以下であることを必要とし、50nm以下であることがより好ましい。この場合、可視光線の波長(380〜780nm)に対して粒子径が著しく小さく、光の散乱にはMieあるいはRayleigh散乱式が適用され、一般的には、材料の屈折率が小さいほど、また、粒子径が小さいほど、散乱強度は小さくなることが知られている。この点において、酸化亜鉛は酸化チタン等よりも屈折率が低いため、同一粒子径で比較した場合の散乱光強度は酸化チタン等のそれより小さくなる。すなわち、酸化亜鉛は、他の無機系透明紫外線吸収剤よりも入射光を散乱させる傾向が小さく、この結果、樹脂バインダーやプラスチック中に分散させたときには、より高い透明性を得ることができる。
次に、酸化亜鉛微粒子の製造法について、例を挙げて説明する。
まず、酸化亜鉛の結晶は六方晶系(ウルツ鉱型)で、亜鉛原子と酸素原子は互いに他の4個の原子により四面体配位され、これが種々の物性を発現させる枠組みとなっている。そして、酸化亜鉛の工業的製法は、溶融亜鉛を蒸気酸化させる乾式法と、硫酸(塩化)亜鉛水溶液にソーダ灰溶液を加えてできる塩基性炭酸亜鉛を焼成する湿式法に大別されるが、本発明においてはより粒子径が細かい結晶が得られる湿式粉を原料として用いることとしている。具体的には、亜鉛水溶液とアルカリ性水溶液とから沈殿物を生成させ、これを熟成かつ洗浄し、当該沈殿物をアルコールで湿潤させて乾燥を開始し酸化亜鉛微粒子前駆体を得た後、当該酸化亜鉛微粒子前駆体を焼成して酸化亜鉛微粒子とするものである。
ここで、亜鉛水溶液を調製するための亜鉛化合物は特に限定されるものでなく、例えば硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられるが、不純物除去の容易さから硝酸塩が好ましい。
一方、アルカリ性水溶液も、特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素アンモニウム、アンモニア等の水溶液が挙げられる。当該アルカリ性水溶液中における水酸化ナトリウム等のアルカリ濃度は、亜鉛化合物が水酸化物となるのに必要な化学当量の1.0〜1.5倍過剰量とするのが好ましい。化学当量以上のアルカリとすれば、投入した亜鉛化合物が反応できるためであり、1.5倍過剰量以下であれば、残留アルカリの除去の洗浄時間が長くならないからである。
次に、沈殿物の生成、熟成について説明する。
沈殿物の生成は、連続的に攪拌されているアルカリ性水溶液へ、亜鉛化合物の水溶液を滴下することで行う。アルカリ性水溶液へ、亜鉛化合物の水溶液を滴下することにより、瞬時に過飽和度に到達して沈殿が生成することから、均一な粒径の炭酸亜鉛および水酸化炭酸亜鉛の微粒子の沈殿物が得られる。亜鉛化合物の水溶液へ、アルカリ性溶液を滴下しても、亜鉛化合物の溶液とアルカリ性溶液とを並行滴下しても、上述のような粒子サイズが揃った炭酸亜鉛および水酸化炭酸亜鉛の微粒子の沈殿物を得ることは困難である。
沈殿物の生成時におけるアルカリ性水溶液温度は特に限定されないが、50℃以下、好ましくは室温である。アルカリ性水溶液の温度の下限は定められないが、低過ぎると新たに冷却装置等が必要になってくることからそのような装置を要しない温度とすることが好ましい。アルカリ性水溶液への亜鉛化合物水溶液の滴下時間は、生産性の観点から30分間未満、好ましくは20分間以下、更に好ましくは10分間以下とする。滴下完了後、系内の均一化を図るために、継続的に攪拌して熟成を行う。熟成の温度は沈殿生成時の温度と同温とする。また、継続的に撹拌する時間は特に限定されないが、生産性の観点から30分間以下、好ましくは15分間以下である。
上記熟成後に得られた沈澱物は、デカンテーションによって洗浄するが、洗浄液の導電率が1mS/cm以下になるまで十分洗浄する。これは、微粒子中に残留する塩素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、酢酸イオン等の不純物が少なければ、所望とする紫外線吸収(遮蔽)特性が得られるためである。従って、当該洗浄後の上澄み液の導電率が、1mS/cm以下(残留不純物量1.5%以下に相当する。)となるまで十分洗浄することが好ましい。
次に、洗浄した沈殿物をアルコール溶液で湿潤処理して湿潤処理物とし、その後、当該湿潤処理物を乾燥することによって酸化亜鉛微粒子前駆体を得る。当該湿潤処理を行うことで、乾燥後の酸化亜鉛微粒子前駆体の凝集を回避できる。
当該アルコール溶液のアルコール濃度は、50質量%以上であることが好ましい。アルコール濃度が50質量%以上であれば、酸化亜鉛微粒子が強凝集体となることを回避でき、優れた分散性を発揮するからである。
湿潤処理で用いられるアルコール溶液について説明する。当該アルコール溶液に用いられるアルコールは特に限定されないが、水に溶解し、沸点100℃以下のアルコールが好ましい。例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、tert−ブチルアルコールが挙げられる。
湿潤処理について説明する。当該湿潤処理は、濾過洗浄された沈殿物をアルコール溶液中へ投入して攪拌すればよく、このときの時間や攪拌速度は処理量に応じて適宜選択すればよい。当該沈殿物をアルコール溶液中に投入する際のアルコール溶液量は、当該沈殿物が容易に攪拌できて流動性を確保できる液量があれば良い。攪拌時間や攪拌速度は、上述した濾過洗浄時に一部凝集した部分を含む沈殿物が、アルコール溶液中において、当該凝集部分が解消するまで均一に混合されることを条件に適宜選択される。
また、湿潤処理の際、温度は通常室温下で行えば良いが、必要に応じて、アルコールが蒸発して失われない程度に加温しながら行うことも可能である。好ましくは、アルコールの沸点以下の温度で加熱することで、湿潤処理中におけるアルコールの消失を回避でき、湿潤処理の効果がなくなることを回避できる。湿潤処理中にアルコールの存在が保たれることで、湿潤処理の効果が得られ、乾燥後には沈殿物が強凝集体とならないので、好ましい。
当該湿潤処理物の乾燥について説明する。乾燥温度や時間の乾燥条件は、特に限定されるものではなく、湿潤処理物がアルコールに湿潤した状態で加熱乾燥を開始すればよい。当該湿潤処理後であれば、加熱乾燥を行っても、沈殿物が強凝集体となることはないので、湿潤処理物の処理量や処理装置等により乾燥条件を適宜選択すれば良い。
当該乾燥処理により、湿潤処理を受けた酸化亜鉛微粒子前駆体を得ることができる。当該前駆体は、例えば、ZnCO、Zn(CO(OH)、Zn4CO(OH)Oやこれらの混合相等がある。当該前駆体は焼成されて酸化亜鉛微粒子となればよい。
乾燥処理された酸化亜鉛前駆体には、紫外線吸収(遮蔽)特性や隠蔽力を向上させるために焼成を施す。当該焼成は、大気中、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス中、上記不活性ガスと水素等の還元性ガスとの混合ガス中、のいずれかの雰囲気下で行なう。このときの処理温度は、所望とする紫外線吸収(遮蔽)特性の観点から下限は350℃を超え、上限は500℃以下が好ましい。このときの処理時間は、酸化亜鉛前駆体の処理量や焼成温度に応じて適宜選択すればよい。
(2)酸化亜鉛分散液とその製造方法
本発明に係る酸化亜鉛分散液は、上述したように酸化亜鉛原料粉と溶媒から成るミルベースにシラン化合物を投入しかつ湿式媒体攪拌ミルを用いて上記酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を行なうと共に上記溶媒の除去を行わずに調製された被覆処理酸化亜鉛微粒子と溶媒を含んでおり、更に被覆処理酸化亜鉛微粒子の分散安定性に寄与するメトキシシラン化合物を含むことを特徴とする。
まず、上記酸化亜鉛微粒子は、粒子径が小さくなるほど強い光触媒活性作用を示すため、分散媒体となる塗料バインダーや樹脂基材の劣化を促進させ、チョーキング(Chalking、白亜化)等の製品トラブルを起こす原因となる。酸化亜鉛微粒子をプライマー層等のコーティング材に適用し実用化するためには、表面処理等によって酸化亜鉛微粒子における上記触媒作用の抑制を講じる必要がある。
すなわち、酸化亜鉛微粒子の表面処理技術には、上述したように酸化亜鉛微粒子の凝集を抑えると同時に、光触媒活性を十分に抑制するという二面が要求され、その表面改質レベルが酸化亜鉛微粒子の性能に大きな影響を与える。
そして、本発明においては、酸化亜鉛微粒子の被覆(表面)処理方法として非脱媒式インテグラルブレンド法を採用している。すなわち、酸化亜鉛原料粉と溶媒から成るミルベースにシラン化合物を投入し、かつ、湿式媒体攪拌ミル(例えば、湿式ボールミル、湿式ビーズミル、湿式ペイントシェーカー等が例示される)を用いて上記酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆(表面)処理を行なうと共に、上記溶媒の除去を行わずにシラン化合物(シリコーンレジン)でシリケート被覆処理された酸化亜鉛微粒子と溶媒を含み、更に、酸化亜鉛微粒子の被覆処理後に配合された上記メトキシシラン化合物を含んだ本発明に係る酸化亜鉛分散液が得られる。
ところで、後述のプライマー層形成用塗布液を調製する際、上記酸化亜鉛分散液に配合されるアクリル系樹脂バインダーは、水分との相溶性が非常に悪いため、本発明の酸化亜鉛分散液中に含まれる水分量を一定以下に抑えることが好ましい。そのためには、上記湿式媒体攪拌ミルを用いて酸化亜鉛原料粉の粉砕処理と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物(シリコーンレジン)による被覆処理をする際に、湿気や結露による水分混入を防ぐことが重要となる。すなわち、本発明の酸化亜鉛分散液に上記アクリル系樹脂バインダーを配合して得られるプライマー層形成用塗布液(組成物)中の水分含有率が1.5重量%以下となるように制御することが好ましい。
そして、プライマー層形成用塗布液中の水分含有率が1.5重量%以下とするには、湿式媒体攪拌ミルを用いて酸化亜鉛原料粉の粉砕処理と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物(シリコーンレジン)によるシリケート被覆処理を、相対湿度50%RH以下および/またはドライガス若しくは不活性ガスの吹込条件下において行なうか、あるいは、密閉型湿式媒体攪拌ミルにより行なえばよい。すなわち、密閉型湿式媒体攪拌ミルを用いれば湿気や結露の混入を完全に防ぐことができる。密閉型湿式媒体攪拌ミルの例としては、ウィリー・エ・バッコーフェン社製のダイノーミルKDL型0.3リットルグラインディングコンテナー(バッチ式の密閉型)等がある。また、粉砕媒体を入れた密閉容器を、公知のペイントシェーカーの様に往復運動並びに左右運動させて密閉容器内の粉砕媒体を攪拌させても同様の効果が得られる。粉砕と被覆処理を行う容器にはドライガス等を封入すればよい。
このように本発明の上記被覆(表面)処理法では、従来型の湿式表面処理法において必須工程であった溶媒を除去し乾燥(焼成)する脱媒処理[上述した(3)溶媒除去・乾燥工程]、および、被覆(表面)処理粉の分散(解砕)処理[上述した(4)再分散工程]を必要とせず、酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆(表面)処理が施されかつメトキシシラン化合物が配合される前の酸化亜鉛の分散液を上記1工程のみで得ることが可能となる。尚、上記ミルベースに係る溶媒は特に限定されるものではなく、例えば、アルコール、エーテル、エステル、ケトン、芳香族化合物等、一般的な溶媒、有機溶媒の各種が使用可能である。
[a]シリコーンレジン
次に、本発明の酸化亜鉛分散液において酸化亜鉛微粒子の被覆(表面)処理に適用されるシラン化合物は、ポリシロキサン結合を有するシリコーン重合体から成るシリコーンレジン(シランオリゴマー)であり、シロキサン結合(Si−O−Si)の繰り返しからなるポリシロキサンを主鎖とし、一つ以上の分子末端がアルコキシシリル基(Si−OR)および/またはアルコキシシリル基が加水分解して成るシラノール基(Si−OH)で封鎖され、炭素原子数1〜18の炭化水素基および/またはフェニル基を有機置換基として分子中に有する高分子量体であることを必要とし、以下に示す分子構造[1][2]を有するシリコーンレジンが例示される。
Figure 2011225660
[但し、Rは、炭素原子数1〜18のアルキル基またはフェニル基である。各末端基におけるRは、分子中内において全て同じ基であっても、異なった基であってもよい。]
そして、シリコーンレジンは、ジメチルポリシロキサン等をベースにした直鎖状構造の反応性シリコーンオイルとは異なり、分子内にアルコキシシリル基やシラノール基を有し、自己縮合性があるため造膜性が高い。また、予め3次元架橋したシロキサン骨格を有しているため急激な自己縮合も起き難く、かつ、加水分解性シランモノマーのように、加水分解・重縮合反応を促すための酸性(または塩基性)触媒や水を添加する必要がないことから、表面処理の過程で系のpH変動が小さく、酸化亜鉛微粒子の分散性を損なわないため、個々の酸化亜鉛微粒子表面に対し均一かつ再現性の高い被覆(表面)処理が可能となり、酸化亜鉛微粒子の光触媒活性の不活化において優れた被覆(表面)処理効果を得ることができる。また、分子量、および、分子内の有機置換基であるメチル基やフェニル基の導入率を変えることで、各種溶媒や樹脂媒体に対する相溶性を高めたり、極性を合わせたりすることが可能となり、酸化亜鉛微粒子に対して優れた高分子分散剤として機能させることも可能となる。
また、酸化亜鉛微粒子の被覆(表面)処理に用いるシリコーンレジンの総重量は、酸化亜鉛微粒子100重量部に対して、5重量部以上300重量部以下であることが望ましく、より望ましくは100重量部以下、更に望ましくは75重量部以下である。すなわち、シリコーンレジンが5重量部未満であると、酸化亜鉛微粒子表面に対してシリコーンレジンの被覆量が十分でない場合があり、酸化亜鉛微粒子が有する光触媒活性を十分に抑制することが困難となり、プライマー層内に含有させた際に有機樹脂バインダーや樹脂基材の酸化劣化を促してチョーキング等のトラブルを起こすことがあるからである。また、酸化亜鉛微粒子の分散安定性が低下し易く、得られるプライマー層に対して十分な透明性を付与することができない場合がある。一方、シリコーンレジンが300重量部を超えると、被覆(表面)処理の過程でシリコーンレジンが複数の酸化亜鉛微粒子にまたがって反応し、あるいは、余剰のシリコーンレジン同士の縮合や凝集が起こり易くなる場合があり、結果として酸化亜鉛微粒子を高分散させることができず、得られるプライマー層に対して十分な透明性を付与することが困難になることがある。
更に、上記シリコーンレジンの分子量は、好ましくは100〜100,000、より好ましくは500〜10000である。分子量が100以上あれば十分な造膜性が得られ、100,000以下であれば粘性が高くなり過ぎることがなく、被覆(表面)処理の過程における酸化亜鉛原料粉の粉砕効率や分散性の低下を回避することができる。
[b]メトキシシラン化合物
また、本発明の酸化亜鉛分散液において酸化亜鉛微粒子の被覆処理後に配合される上記メトキシシラン化合物は、酸化亜鉛分散液中におけるシリケート被覆処理酸化亜鉛微粒子の分散安定性に寄与する機能を有すると共に、酸化亜鉛分散液を用いて調製されるプライマー層形成用塗布液(組成物)のポットライフを改善する機能をも有する。
高耐久性なハードコート層を達成するためには、基板とプライマ−層との密着性も重要であるが、メトキシシラン化合物の添加は基板との密着性の改善にも有効である。
そして、上記メトキシシラン化合物は、一般式Rn−Si(OCH34-n(但し、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基の少なくとも1種若しくは2種以上の官能基である)で表記される有機物とケイ素とで構成される化合物であり、分子中に、無機質材料と化学的結合をする反応基と有機材料と化学的結合をする反応基を有している。このため、通常では非常に結びつきにくい有機材料と無機材料を結ぶ仲介役としての働きをするため、複合材料であるプライマー層形成用塗布液(組成物)の分散安定性を改善させることが可能となる。メトキシシラン化合物の具体例として、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、テトラメトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等が挙げられる。尚、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のエトキシシラン化合物では、無機質材料との反応性が低いため分散性を向上させることはできない。
また、上記メトキシシラン化合物の総重量は、酸化亜鉛微粒子100重量部に対し1重量部以上120重量部以下とすることが好ましい。1重量部未満であると、被覆処理された酸化亜鉛粒子に対するメトキシシラン化合物の量が不十分で被覆処理酸化亜鉛微粒子の分散安定性を向上させることが難しくなるため、本発明の酸化亜鉛分散液を用いて調製されるプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性を向上させることが困難となる場合がある。一方、120重量部を超えると、被覆処理された複数の酸化亜鉛粒子にメトキシシラン化合物がまたがって反応し、あるいは、余剰のメトキシシラン化合物同士の縮合や凝集が起こり易く、結果として上記酸化亜鉛微粒子を高分散させることが難しくなり、プライマー層形成用塗布液(組成物)を用いて形成されたプライマー層に対し十分な透明性を付与することが困難となる場合がある。
(3)プライマー層形成用塗布液(組成物)
本発明に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)は、一次粒子径が100nm以下であるシリケート被覆処理酸化亜鉛微粒子と溶媒およびメトキシシラン化合物を含む上述の酸化亜鉛分散液と、この酸化亜鉛分散液に配合されたアクリル系樹脂バインダーを含んでいる。
[a](メタ)アクリル系樹脂バインダー
本発明に係るプライマー層形成用塗布液は、上記シリケート被覆処理酸化亜鉛微粒子が液体媒質中に高分散しているものである。また、プライマー層形成用塗布液は、最終的にプラスチック基材上にて固体媒質であるプライマー層として成立させるため、造膜成分として上記液体媒質中に有機バインダー樹脂を含有している。そして、塗料用有機バインダー樹脂としては、一般的にスチレン樹脂、アクリル樹脂、セルロース誘導体、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂等が広く用いられ、適宜目的に応じて選択されるが、本発明に係るプライマー層形成用塗布液に含まれる有機バインダー樹脂としては、上記シリケート被覆処理酸化亜鉛微粒子の分散性やプラスチック基材および上層のハードコート材との密着性、材料自体の透明性や加工性等を考慮し、アクリル酸アルキルエステルモノマーまたはメタクリル酸アルキルエステルモノマーを重合させて得られる(メタ)アクリル系樹脂が適用される。
また、上記酸化亜鉛微粒子の配合量は、プライマー層の厚さや必要とされる光学特性、機械特性に応じて任意に設定可能であるが、プライマー層中における酸化亜鉛微粒子の含有率が1重量%以上40重量%以下の範囲とすることが好ましい。酸化亜鉛微粒子の含有率が上記範囲内であれば、所定のプライマー層の厚さ(1〜5μm)範囲内において、目的とする透明プラスチック基材の高耐久性を達成することができ、かつ、樹脂マトリクス中での酸化亜鉛微粒子同士の凝集を回避できるので良好な透明性を保つことが可能となる。
[b]その他の成分
本発明に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)は、上記成分に加えて、公知の添加剤、希釈剤、硬化触媒を配合することができる。
[b−1]有機系紫外線吸収材料
本発明に係るプライマー層形成用塗布液は、紫外線吸収剤として酸化亜鉛微粒子を使用するものであり、紫外線吸収剤としての寿命は半永久的であるから長期に亘って使用することができるものである。しかし、かかる紫外線吸収(遮蔽)能をより一層強化する目的で、プライマー層形成用塗布液中に、下記群より選択される有機系紫外線吸収材料を適宜配合することも可能である。尚、有機系紫外線吸収材料は、特に制限されるものではないが、入手の容易さ、コスト面から、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、トリアジン誘導体およびシアノアクリレート誘導体から選択される1種類以上であることが望ましい。
そして、上記有機系紫外線吸収材料として、具体的には、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、4−(2−アクリロキシエトキシ)−2−ヒドロキシベンゾフェノンの重合体、2−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−4,6−ジフェニルトリアジン等を例示することができるが、当然のことながらこれ等に限定されるものではない。
[b−2]ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)
本発明に係るプライマー層形成用塗布液は、紫外線吸収剤として酸化亜鉛微粒子を使用することにより、プライマー層中における有機バインダー樹脂等の有機成分の紫外線劣化を長期に亘って抑制するものであるが、かかる有機成分の寿命をより一層延ばす目的で、プライマー層形成用塗布液中にヒンダードアミン系光安定剤(HALS)を配合することも可能である。
上記ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)としては、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクトキシピペリジニル)セバケート、4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−ブチル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリデシル・トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリデシル・トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ジトリデシル・ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ジトリデシル・ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボニルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)−エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]ヘネイコサン−21−オン、2,4,6−トリス{N−シクロヘキシル−N−(2−オキソ−3,3,5,5−テトラメチルピペラジノ)エチル}−1,3,5−トリアジン等である。好ましくは、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−ブチル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)−エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]ヘネイコサン−21−オン、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリデシル・トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンであり、より好ましくは、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−オクチルオキシ−4−ピペリジニル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−ブチル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネート、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ[4.5]デカン−2,4−ジオン、2,2,4,4−テトラメチル−20−(β−ラウリルオキシカルボニル)−エチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5.1.11.2]ヘネイコサン−21−オン、トリデシル・トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、4−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン等が挙げられる。また、これ等は1種または2種以上を用いることができる。
そして、より好ましくは、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン誘導体、または、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジン誘導体から選択されるヒンダードアミン系光安定剤(HALS)であることがよい。特に、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、または、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケートが、(メタ)アクリル系樹脂バインダーに対する溶解性やラジカル酸化による劣化抑制効果に優れる点において好適である。
[b−3]希釈剤
本発明に係るプライマー層形成用塗布液は、上述したシリケート被覆処理酸化亜鉛微粒子、アクリル系樹脂バインダー、有機系紫外線吸収材料、および、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)に加えて、希釈剤を配合することも可能である。例えば、上記希釈剤として、有機溶剤が使用でき、有機溶剤としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類等を挙げることができ、具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸イソブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族化合物およびこれ等の混合溶媒等を挙げることができる。
(4)プライマー層形成用塗布液を用いたプライマー層の形成方法
本発明に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)は、透明プラスチック基材にシリコーン系コーティング剤によるコーティング層(ハードコート層)を形成する場合のプライマー処理に用いられるものである。
そして、本発明に係るプライマー層形成用塗布液を用いて透明プラスチック基材上にプライマー層を形成する場合、透明プラスチック基材上に上記プライマー層形成用塗布液をスプレーコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング等適宜な方法で塗布すればよい。
本発明に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を塗布する場合は、塗布時の湿気による白濁を抑止するため、塗布する環境雰囲気を50%RH以下とし、プライマー層中に水分が含まれないように塗布することが好ましい。
その後、塗布膜を室温で10分間レベリングし、110〜130℃で10分〜1時間加熱し、上記バインダー樹脂を硬化させる方法を採用することができる。下限温度、加熱時間、加熱雰囲気(真空を含む)は、溶媒が蒸発し、塗布層(塗膜)が硬化する条件であればよく、特に限定されない。また、この場合、プライマー層の膜厚は1〜5μmとする。上記膜厚が1μm未満であると、所定の耐UV性光を得るために上記樹脂バインダーに対する酸化亜鉛微粒子の配合量が過剰となり、結果として十分な密着強度を得ることができない場合がある。一方、膜厚が5μmを越えると、プライマー層の硬化収縮により上層のハードコート層の割れや剥がれが生じ易くなる場合がある。
(5)ハードコート層
本発明に係る高耐久性UVカットプラスチック基材は、透明プラスチック基材と、この透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコート層とで構成され、上記ハードコート層としては、シリコーン系樹脂で構成されることが好ましい。シリコーン系樹脂は、ポリシロキサン結合を有するケイ素化合物であり、例えば、無機シラン系化合物および/またはポリオルガノシロキサン系化合物を主成分とするハードコート層を挙げることができる。
この無機シラン系化合物やポリオルガノシロキサン系化合物、あるいはこれ等の混合系は、以下のような様々な方法によって製造することができる。例えば、下記一般式[3]
1 nSi(OR24-n [3]
[但し、上記一般式中のR1は非加水分解性基であって、アルキル基、置換アルキル基(置換基:ハロゲン原子、エポキシ基、(メタ)アクリロイルオキシ基等)、アルケニル基、アリール基またはアラルキル基、R2は低級アルキル基であり、nは0または1〜3の整数である。R1およびOR2がそれぞれ複数ある場合、複数のR1は同一でも異なっていてもよく、また複数のOR2は同一でも異なっていてもよい]で表されるアルコキシシラン化合物を、塩酸や硫酸、硝酸、酢酸等の触媒を用いて加水分解し、重縮合させる方法が用いられる。この場合、n=0の化合物、すなわちテトラアルコキシシランを加水分解すれば無機シラン系のバインダーが得られ、部分加水分解すれば、ポリオルガノシロキサン系バインダーまたは無機シラン系とポリオルガノシロキサン系との混合系バインダーが得られる。一方、n=1〜3の化合物では、非加水分解性基を有するため、部分または完全加水分解により、ポリオルガノシロキサン系バインダーが得られる。上記の際、加水分解反応を制御する目的で適当な有機溶媒を用いてもよい。
上記一般式[3]で表されるアルコキシシラン化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン等が挙げられる。これ等は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、ハードコート層においては、ハードコート性能が重要視されることから、必要な密着性が維持される範囲で、できるだけ無機シラン系化合物を多く含む層が好適である。また、このハードコート層には、耐擦傷性が損なわれない範囲で、所望により上記プライマー層と同様の有機系紫外線吸収剤やヒンダードアミン系光安定剤等を含有させることも可能である。
このハードコート層は、ハードコート剤含有塗工液を、公知の方法、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を用いて、上記プライマー層上に塗工し、10分間室温でレベリングさせ、110〜130℃で30分〜2時間加熱して硬化させることにより形成することができる。
このようにして形成されたハードコート層の厚さは、均質な塗布性および密着性、膜強度等の点から、1〜20μmの範囲が好ましく、特に1〜10μmの範囲が好ましく、更には2〜5μmの範囲がより好ましい。
(6)透明プラスチック基材および高耐久性UVカットプラスチック基材
本発明に係る透明プラスチック基材は、特に制限されるものではないが、透明な有機樹脂成形体であることが、本発明に係る高耐久性UVカットプラスチック基材を得る点から好ましい。
そして、透明プラスチック基材の母体樹脂は特に限定されず、用途に合わせて適宜選択可能である。具体的には、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、アセチルセルロース樹脂、含硫ウレタン樹脂または架橋(メタ)アクリル系樹脂等が挙げられるが、特に、強度や断熱性、耐久性に優れる点からポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
また、本発明に係る高耐久性UVカットプラスチック基材は、上述したように透明プラスチック基材と、この透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層と、このプライマー層上に形成されたハードコート層とで構成され、透明性や紫外線吸収(遮蔽)能に優れ、かつ、プライマー層に含まれる紫外線吸収(遮蔽)能の寿命が半永久的であるため、黄変や剥離等、各層および基材の劣化を可及的に防止でき、長期に亘って使用することができるものである。
次に、本発明の実施例について比較例を挙げて詳細に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
また、一連の作業は、23℃で相対湿度40%RHに空調された雰囲気で行った。可視光透過率の測定は、JIS R3106に従った。ヘイズ値の測定は、JIS K7105に従った。
更に、ZnO(酸化亜鉛)微粒子の平均粒子径は、動的光散乱法を用いた測定装置(日機装株式会社製 Nanotrac150)により測定した。
[実施例1]
70mlのガラス容器に、ZnO微粒子(比表面積75m/g)を4.0g、メチルイソブチルケトンを12.67g、および、シリコーンレジン(信越化学工業株式会社製の「KR−311」、有効成分60wt%)を3.33g、それぞれ投入し、かつ、混合して20gの原料液を調製し、更に、直径0.3mmのジルコニアビーズ(東レ株式会社製)を80g加えた後、上記ガラス容器を密閉した。
次に、密閉された上記ガラス容器を、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製、振動数640rpm)により18時間攪拌させ、ガラス容器内のZnO微粒子を粉砕しかつ粉砕されたZnO微粒子表面のシリコーンレジンによる被覆処理を行なうと共に、溶媒(メチルイソブチルケトン)の除去を行うことなくZnO微粒子が分散された分散液(A液)を調製した。尚、この分散液(A液)内に分散されたZnO微粒子の平均粒子径を測定したところ80nmと小さく、良好な分散液であることが確認された。
次に、上記分散液(A液)15.0gと、メチルトリメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「TSL−8113」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(メチルトリメトキシシラン)を含んだ実施例1に係る酸化亜鉛分散液(B液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(B液)を31.8wt%と、下記のバインダー製品内に有機系紫外線吸収剤が含まれているアクリル系樹脂バインダー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」、固形分11wt%)を68.20wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物(メチルトリメトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた実施例1に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た。
そして、実施例1に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を、有機系紫外線吸収剤入りのポリカーボネートプレート(SABIC社製の「レキサン」)にフローコートし、室温で10分間レベリングした後、125℃で20分間熱硬化させて「プライマー層」を形成した。次に、この「プライマー層」上に、ポリアルキルシロキサン系ハードコート液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「AS−4700F」)をフローコートし、室温で10分間レベリングした後、125℃で30分間熱硬化させて「ハードコート層」を形成し、実施例1に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた実施例1に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.2%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。
更に、実施例1に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「耐久性評価」を行なった。すなわち、紫外線照射装置[岩崎電気(株)社製の「SUV−W131」]を用い、100mW/cm2の条件で紫外線を500時間照射して行なった。
そして、紫外線照射後における上記高耐久性UVカットプラスチック基材の光学特性について上述した方法と同様に測定したところ、可視光透過率は88.4%で、100mW/cm2の紫外線を500時間照射したことによる可視光透過率の変化(すなわちΔ可視光透過率)は「89.2−88.4=0.8%」と小さいことが確認された。また、ヘイズ値は0.7%であり、紫外線を500時間照射したことによるヘイズ値の変化(Δヘイズ)も「0.7−0.3=0.4%」と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例1に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例1に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性が良好であることが確認された。
尚、各実施例と比較例に係る「被覆処理ZnO微粒子の平均粒径(nm)」「メトキシシラン化合物」「シラン化合物含有量(重量部)」「シリコーンレジン含有量(重量部)」「バインダー」「可視光透過率(%)」「ヘイズ(%)」「紫外線照射後におけるΔ可視光透過率(%)」「紫外線照射後におけるΔヘイズ(%)」および「25℃×60日後ヘイズ(%)」(すなわち、25℃で60日間保存後のプライマー層形成用塗布液を用いて得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ)を以下の表1と表2に示す。ここで、上記「シラン化合物含有量(重量部)」と「シリコーンレジン含有量(重量部)」の各数値はZnO微粒子100重量部に対する重量部をそれぞれ示している。
[実施例2]
上記分散液(A液)15.0gと、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製の「KBM−1003」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(ビニルトリメトキシシラン)を含んだ実施例2に係る酸化亜鉛分散液(C液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(C液)を31.8wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を68.20wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物(ビニルトリメトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた実施例2に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、実施例2に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により実施例2に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「初期特性」と「耐久性評価」をそれぞれ行なったところ、「初期特性」としての可視光線透過率が89.0%、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、100mW/cm2の条件で紫外線を500時間照射した後における「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.0%であり、可視光透過率の変化(すなわちΔ可視光透過率)は1.0%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例2に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例2に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例3]
上記分散液(A液)15.0gと、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製の「KBM−303」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]を含んだ実施例3に係る酸化亜鉛分散液(D液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(D液)を31.8wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を68.20wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]および有機系紫外線吸収剤が含まれた実施例3に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、実施例3に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により実施例3に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「初期特性」と「耐久性評価」をそれぞれ行なったところ、「初期特性」としての可視光線透過率が89.4%、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.3%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.1%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例3に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例3に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例4]
上記分散液(A液)15.0gと、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製の「KBM−5103」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)を含んだ実施例4に係る酸化亜鉛分散液(E液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(E液)を31.8wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を68.20wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物(3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた実施例4に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、実施例4に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により実施例4に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「初期特性」と「耐久性評価」をそれぞれ行なったところ、「初期特性」としての可視光線透過率が89.1%、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.2%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は0.9%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.7%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.4%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例4に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例4に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例5]
上記分散液(A液)15.0gと、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製の「KBM−573」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を含んだ実施例5に係る酸化亜鉛分散液(F液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(F液)を31.8wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を68.20wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた実施例5に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、実施例5に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により実施例5に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「初期特性」と「耐久性評価」をそれぞれ行なったところ、「初期特性」としての可視光線透過率が89.0%、ヘイズ値が0.4%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は87.9%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.1%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.7%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例5に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例5に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例6]
上記分散液(A液)15.0gと、テトラメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「TSL−8114」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)を含んだ実施例6に係る酸化亜鉛分散液(G液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(G液)を31.8wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を68.20wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた実施例6に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、実施例6に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により実施例6に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「初期特性」と「耐久性評価」をそれぞれ行なったところ、「初期特性」としての可視光線透過率が89.0%、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.0%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.0%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.5%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.2%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例6に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例6に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例7]
70mlのガラス容器に、ZnO微粒子(比表面積75m/g)を4.0g、メチルイソブチルケトンを15.33g、および、シリコーンレジン(信越化学工業株式会社製の「KR−311」、有効成分60wt%)を0.67g、それぞれ投入し、かつ、混合して20gの原料液を調製し、更に、直径0.3mmのジルコニアビーズ(東レ株式会社製)を80g加えた後、上記ガラス容器を密閉した。
次に、密閉された上記ガラス容器を、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製、振動数640rpm)により18時間攪拌させ、ガラス容器内のZnO微粒子を粉砕しかつ粉砕されたZnO微粒子表面のシリコーンレジンによる被覆処理を行なうと共に、溶媒(メチルイソブチルケトン)の除去を行うことなくZnO微粒子が分散された分散液(H液)を調製した。尚、この分散液(H液)内に分散されたZnO微粒子の平均粒子径を測定したところ61nmと小さく、良好な分散液であることが確認された。
次に、上記分散液(H液)15.0gと、テトラメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「TSL−8114」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)を含んだ実施例7に係る酸化亜鉛分散液(I液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(I液)を26.50wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を73.50wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子とアクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた実施例7に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た後、実施例1と同様にして、実施例7に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により実施例7に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「初期特性」と「耐久性評価」をそれぞれ行なったところ、「初期特性」としての可視光線透過率が89.1%、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.2%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は0.9%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例7に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例7に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例8]
上記分散液(A液)15.0gと、テトラメトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「TSL−8114」、有効成分100wt%)0.15gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)を含んだ実施例8に係る酸化亜鉛分散液(J液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(J液)を27.27wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を72.73wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた実施例8に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、実施例8に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、実施例1と同様の方法により実施例8に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「初期特性」と「耐久性評価」をそれぞれ行なったところ、「初期特性」としての可視光線透過率が89.6%、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.7%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は0.9%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.5%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.2%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例8に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例8に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例9]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(メチルトリメトキシシラン)を含んだ実施例1に係る酸化亜鉛分散液(B液)を21.00wt%と、下記のバインダー製品内に有機系紫外線吸収剤が含まれていないアクリル系樹脂バインダー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」、固形分4wt%)を79.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよびメトキシシラン化合物(メチルトリメトキシシラン)が含まれた実施例9に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た。
そして、実施例9に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を、有機系紫外線吸収剤入りのポリカーボネートプレート(SABIC社製の「レキサン」)にフローコートし、室温で10分間レベリングした後、125℃で20分間熱硬化させて「プライマー層」を形成した。次に、この「プライマー層」上に、ポリアルキルシロキサン系ハードコート液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「トスガード510」)をフローコートし、室温で10分間レベリングした後、125℃で30分間熱硬化させて「ハードコート層」を形成し、実施例9に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた実施例9に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.4%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.3%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.1%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例9に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例9に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例10]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(ビニルトリメトキシシラン)を含んだ実施例2に係る酸化亜鉛分散液(C液)を21.00wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上述のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を79.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよびメトキシシラン化合物(ビニルトリメトキシシラン)が含まれた実施例10に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、実施例10に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた実施例10に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.6%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.4%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.2%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例10に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例10に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例11]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]を含んだ実施例3に係る酸化亜鉛分散液(D液)を21.00wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上記モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を79.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよびメトキシシラン化合物[2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン]が含まれた実施例11に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、実施例11に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた実施例11に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.2%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.2%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.0%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.7%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.4%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例11に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例11に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例12]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を含んだ実施例5に係る酸化亜鉛分散液(F液)を21.00wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上記モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を79.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよびメトキシシラン化合物(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)が含まれた実施例12に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、実施例12に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた実施例12に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.2%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.1%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.1%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例12に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例12に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例13]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)を含んだ実施例6に係る酸化亜鉛分散液(G液)を21.00wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上記モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を79.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよびメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)が含まれた実施例13に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、実施例13に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた実施例13に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.5%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.5%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.0%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例13に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例13に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例14]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)を含んだ実施例7に係る酸化亜鉛分散液(I液)を15.00wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上記モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を85.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよびメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)が含まれた実施例14に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、実施例14に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた実施例14に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.3%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.4%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は0.9%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.7%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.4%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例14に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例14に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[実施例15]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)を含んだ実施例8に係る酸化亜鉛分散液(J液)を16.00wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上記モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を84.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよびメトキシシラン化合物(テトラメトキシシラン)が含まれた実施例15に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、実施例15に係る高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた実施例15に係る高耐久性UVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.0%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は87.8%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.2%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
次に、実施例15に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にして高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られた高耐久性UVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.3%で透明性が極めて高く、実施例15に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)の保存安定性も良好であることが確認された。
[比較例1]
バインダー製品内に有機系紫外線吸収剤が含まれているアクリル系樹脂バインダー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」)を比較例1のプライマー層形成用塗布液(組成物)として適用し、この塗布液を、有機系紫外線吸収剤入りのポリカーボネートプレート(SABIC社製の「レキサン」)にフローコートし、室温で10分間レベリングした後、125℃で20分間熱硬化させて「プライマー層」を形成した。次に、この「プライマー層」上に、ポリアルキルシロキサン系ハードコート液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「トスガード510」)をフローコートし、室温で10分間レベリングした後、125℃で30分間熱硬化させて「ハードコート層」を形成し、比較例1に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例1に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を実施例1と同様にして測定したところ、可視光線透過率が90.0%、および、ヘイズ値が0.2%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は74.3%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は15.7%と大きいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは2.1%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も1.9%と大きいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、黄色に変色し、かつ、白濁して透明性も悪化しており、更に、クラックも発生していることが確認された。
また、上記「プライマーSHP−470」で構成される比較例1のプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にしてUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られたUVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.2%で透明性が極めて高いことが確認された。
[比較例2]
70mlのガラス容器に、ZnO微粒子(比表面積75m/g)を4.0g、メチルイソブチルケトンを14.0g、および、アクリル系高分子分散剤を2.0g、それぞれ投入し、かつ、混合して20gの原料液を調製し、更に、直径0.3mmのジルコニアビーズ(東レ株式会社製)を80g加えた後、上記ガラス容器を密閉した。
次に、密閉された上記ガラス容器を、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製、振動数640rpm)により18時間攪拌させ、ガラス容器内のZnO微粒子を粉砕して上記微粒子が分散された分散液(K液)を調製した。尚、この分散液(K液)内に分散されたZnO微粒子の平均粒子径を測定したところ90nmと小さく、良好な分散液であることが確認された。
次に、この分散液(K液)を27.00wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を73.00wt%の割合で十分に混合し、ZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよび有機系紫外線吸収剤が含まれた比較例2に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、比較例2に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例2に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を実施例1と同様にして測定したところ、可視光線透過率が89.5%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は84.8%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は4.7%と大きいことが確認され、「耐久性評価」としてのヘイズは15.4%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も15.1%と非常に大きいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、白濁して透明性が大きく悪化していた。白濁した原因は、ZnO微粒子の光触媒活性によりアクリル系樹脂バインダーが劣化したためである。
また、比較例2に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、沈降が発生し、保存安定性が極めて悪いことが確認された。
[比較例3]
シリコーンレジンの被覆処理を施したZnO微粒子が分散された実施例1に係る分散液(A液)を26.50wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を73.50wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーおよび有機系紫外線吸収剤が含まれた比較例3に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、比較例3に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例3に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を実施例1と同様にして測定したところ、可視光線透過率が89.3%、および、ヘイズ値が0.4%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.2%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.1%と小さいことが確認され、「耐久性評価」としてのヘイズは0.7%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
また、比較例3のプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、若干の白濁が確認された。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にしてUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られたUVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ1.2%で、透明性が悪くなっていることから、プライマー層形成用塗布液の保存安定性が悪いことが確認された。
[比較例4]
70mlのガラス容器に、ZnO微粒子(比表面積75m/g)を4.0g、メチルイソブチルケトンを12.67g、および、シリコーンレジン(信越化学工業株式会社製の「KR−311」、有効成分60wt%)を3.33g、それぞれ投入し、かつ、混合して20gの原料液を調製し、更に、直径0.3mmのジルコニアビーズ(東レ株式会社製)を80g加えた後、上記ガラス容器を密閉した。
次に、密閉された上記ガラス容器を、ペイントシェーカー(浅田鉄工株式会社製、振動数640rpm)により9時間攪拌させ、ガラス容器内のZnO微粒子を粉砕しかつ粉砕されたZnO微粒子表面のシリコーンレジンによる被覆処理を行なうと共に、溶媒(メチルイソブチルケトン)の除去を行うことなくZnO微粒子が分散された分散液(L液)を調製した。尚、この分散液(L液)内に分散されたZnO微粒子の平均粒子径を測定したところ、150nmと大きいことが確認された。
上記分散液(L液)15.0gと、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製の「KBM−573」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を含んだ比較例4に係る酸化亜鉛分散液(M液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(M液)を31.8wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を68.20wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、メトキシシラン化合物(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた比較例4に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、比較例4に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例4に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を実施例1と同様にして測定したところ、可視光線透過率が88.7%、および、ヘイズ値が2.0%であり、可視光領域の光を十分透過するが、透明性が低く白濁していることを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は85.7%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は3.0%と大きいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは5.0%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も3.0%と大きいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、更に白濁して透明性が悪化していた。
また、比較例4に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、沈降が発生し、保存安定性が悪いことが確認された。
[比較例5]
シリコーンレジンの被覆処理を施したZnO微粒子が分散された実施例1に係る分散液(A液)を15gと、テトラエトキシシラン(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「TSL−8124」、有効成分100wt%)0.9gを十分に混合して、被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつエトキシシラン化合物(テトラエトキシシラン)を含んだ比較例5に係る酸化亜鉛分散液(N液)を調製した。
次に、この酸化亜鉛分散液(N液)を31.8wt%と、上述したモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーSHP−470」を68.20wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、アクリル系樹脂バインダーと、エトキシシラン化合物(テトラエトキシシラン)および有機系紫外線吸収剤が含まれた比較例5に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例1と同様にして、比較例5に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例5に係るUVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.2%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.4%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は0.8%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.7%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.4%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
また、比較例5のプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、若干の白濁が確認された。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にしてUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られたUVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ1.1%で、透明性が悪くなっていることから、プライマー層形成用塗布液の保存安定性が悪いことが確認された。
[比較例6]
バインダー製品内に有機系紫外線吸収剤が含まれていないアクリル系樹脂バインダー(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」)を比較例6のプライマー層形成用塗布液(組成物)として適用し、この塗布液を、有機系紫外線吸収剤入りのポリカーボネートプレート(SABIC社製の「レキサン」)にフローコートし、室温で10分間レベリングした後、125℃で20分間熱硬化させて「プライマー層」を形成した。次に、この「プライマー層」上に、ポリアルキルシロキサン系ハードコート液(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「トスガード510」)をフローコートし、室温で10分間レベリングした後、125℃で30分間熱硬化させて「ハードコート層」を形成し、比較例6に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例6に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を実施例1と同様にして測定したところ、可視光線透過率が89.7%、および、ヘイズ値が0.2%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は64.6%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は25.1%と大きいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは3.0%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も2.8%と大きいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、黄色に変色し、かつ、白濁して透明性も悪化しており、更に、クラックも発生していることが確認された。
また、上記プライマーPH−91」で構成される比較例6のプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、白濁や沈降等は見られず、その保存安定性は良好であった。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にしてUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られたUVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ、0.2%で透明性が極めて高いことが確認された。
[比較例7]
ZnO微粒子が分散された比較例2に係る分散液(K液)を15.50wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上述のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を84.50wt%の割合で十分に混合し、ZnO微粒子とアクリル系樹脂バインダーが含まれた比較例7に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、比較例7に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例7に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を実施例1と同様にして測定したところ、可視光線透過率が89.5%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は83.3%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は6.2%と大きいことが確認され、「耐久性評価」としてのヘイズは14.5%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も14.2%と非常に大きいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、白濁して透明性が大きく悪化していた。白濁した原因は、ZnO微粒子の光触媒活性によりアクリル系樹脂バインダーが劣化したためである。
また、比較例7に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、沈降が発生し、保存安定性が極めて悪いことが確認された。
[比較例8]
シリコーンレジンの被覆処理を施したZnO微粒子が分散された実施例1に係る分散液(A液)を15.50wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上述のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を84.50wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子とアクリル系樹脂バインダーが含まれた比較例8に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、比較例8に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例8に係るUVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が89.6%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は88.4%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.2%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
また、比較例8のプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、若干の白濁が確認された。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にしてUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られたUVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ1.4%で、透明性が悪くなっていることから、プライマー層形成用塗布液の保存安定性が悪いことが確認された。
[比較例9]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつメトキシシラン化合物(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)を含んだ比較例4に係る酸化亜鉛分散液(M液)を21.00wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上述のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を79.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、メトキシシラン化合物(N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン)およびアクリル系樹脂バインダーが含まれた比較例9に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、比較例9に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例9に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を実施例1と同様にして測定したところ、可視光線透過率が88.5%、および、ヘイズ値が1.8%であり、可視光領域の光を十分透過するが、透明性が低く白濁していることを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は85.0%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は3.5%と大きいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは5.4%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も3.6%と大きいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、更に白濁して透明性が悪化していた。
また、比較例9に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、沈降が発生し、保存安定性が悪いことが確認された。
[比較例10]
被覆処理されたZnO微粒子が分散されかつエトキシシラン化合物(テトラエトキシシラン)を含んだ比較例5に係る酸化亜鉛分散液(N液)を21.00wt%と、有機系紫外線吸収剤が含まれていない上述のモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製の「プライマーPH−91」を79.00wt%の割合で十分に混合し、被覆処理されたZnO微粒子と、エトキシシラン化合物(テトラエトキシシラン)およびアクリル系樹脂バインダーが含まれた比較例10に係るプライマー層形成用塗布液(組成物)を得た以外は実施例9と同様にして、比較例10に係るUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造した。
そして、得られた比較例10に係るUVカットプラスチック基材の「可視光線透過率」と「ヘイズ値」を測定したところ、可視光線透過率が88.9%、および、ヘイズ値が0.3%であり、可視光領域の光を十分透過し、かつ、透明性が極めて高いことを確認することができた。また、紫外線を500時間照射した後における上記「耐久性評価」としての可視光線透過率は87.9%であり、可視光透過率の変化(Δ可視光透過率)は1.0%と小さいことが確認され、上記「耐久性評価」としてのヘイズは0.6%で、ヘイズ値の変化(Δヘイズ)も0.3%と小さいことが確認された。更に、紫外線照射後における膜外観を観察したところ、変色、白濁、クラック等は無く、膜外観の変化は観察されなかった。
また、比較例10のプライマー層形成用塗布液(組成物)を25℃で60日間保存し、保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)の外観を観察したところ、若干の白濁が確認された。
更に、保存後の上記プライマー層形成用塗布液(組成物)を用い、上述した方法と同様にしてUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)を製造し、得られたUVカットプラスチック基材のヘイズ値を測定したところ1.5%で、透明性が悪くなっていることから、プライマー層形成用塗布液の保存安定性が悪いことが確認された。
Figure 2011225660
Figure 2011225660
「評 価」
(1)実施例1〜実施例15では、シリコーンレジンで被覆処理された平均粒径100nm以下の酸化亜鉛微粒子、メトキシシラン化合物およびアクリル系樹脂バインダーを含有するプライマー層形成用塗布液(組成物)が適用されているため、表1の「初期特性」欄から分かるように製造された高耐久性UVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)の可視光透過率が89.0%以上と可視光領域の光を十分透過し、ヘイズが0.4%以下と透明性が極めて高いことが確認される。
また、表1の「SUV−500時間照射後」欄から分かるように、紫外線照射500時間前後におけるΔ可視光透過率は0.8%〜1.2%、Δヘイズは0.2%〜0.4%と変化の割合が小さいことも確認される。
更に、25℃で60日間保存後におけるプライマー層形成用塗布液(組成物)を用いても、表1の「保存安定性」欄から分かるようにヘイズが0.3%と透明性が高く、実施例1〜実施例15に係るプライマー層形成用塗布液の保存安定性が良好であることが確認される。
(2)他方、比較例1と比較例6では、上記アクリル系樹脂バインダーを含有し、酸化亜鉛微粒子、メトキシシラン化合物およびシリコーンレジンを含有しないプライマー層形成用塗布液(組成物)を適用してUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)が製造されているため、表2の「SUV−500時間照射後」欄から分かるように、紫外線照射500時間前後におけるΔ可視光透過率は15.7%〜25.1%、Δヘイズは1.9%〜2.8%と実施例1〜15と比較して変化の割合が著しく大きいことが確認される。
また、紫外線照射後における膜外観は、黄色に変色し、かつ、白濁して透明性も悪く、クラックの発生も確認されている。
(3)また、比較例2と比較例7では、シリコーンレジンで被覆処理されていない酸化亜鉛微粒子と上記アクリル系樹脂バインダーを含有し、メトキシシラン化合物を含有しないプライマー層形成用塗布液(組成物)を適用してUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)が製造されている例である。
そして、比較例2と比較例7では酸化亜鉛微粒子の光触媒活性が不活性化されていないため、表2の「SUV−500時間照射後」欄から分かるように紫外線照射500時間前後におけるΔ可視光透過率は4.7%〜6.2%、Δヘイズは14.2%〜15.1%と実施例1〜15と比較して変化の割合が著しく大きいことが確認される。
また、紫外線照射後における膜外観には白濁が確認され、更に、25℃で60日間保存された後のプライマー層形成用塗布液には沈降が発生しており、保存安定性も悪いことが確認される。
(4)比較例3と比較例8では、シリコーンレジンで被覆処理された酸化亜鉛微粒子と上記アクリル系樹脂バインダーを含有し、メトキシシラン化合物を含有しないプライマー層形成用塗布液(組成物)を適用してUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)が製造されている例である。
そして、表2の「初期特性」欄から分かるように可視光透過率が89.3%〜89.6%と可視光領域の光を十分透過し、かつ、ヘイズが0.3%〜0.4%と透明性が極めて高いことが確認される。
更に、比較例3と比較例8では酸化亜鉛微粒子の光触媒活性が不活性化されているため、表2の「SUV−500時間照射後」欄から分かるように紫外線照射500時間前後におけるΔ可視光透過率は1.1%〜1.2%、Δヘイズは0.3であり、実施例1〜15と同様に小さいことが確認される。
しかし、プライマー層形成用塗布液にメトキシシラン化合物が含まれていないため、表2の「保存安定性」欄から分かるように25℃で60日間保存された後のプライマー層形成用塗布液を用いて製造されたUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)のヘイズが1.2%〜1.4%であり、実施例1〜15と比較して著しく高く、プライマー層形成用塗布液の分散(保存)安定性が悪いことが確認される。
(5)比較例4と比較例9では、シリコーンレジンで被覆処理された平均粒径が150nmの酸化亜鉛微粒子、メトキシシラン化合物およびアクリル系樹脂バインダーを含有するプライマー層形成用塗布液(組成物)を適用してUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)が製造されている例である。
そして、酸化亜鉛微粒子の平均粒径が150nmと大きいため、表2の「初期特性」欄から分かるように初期のヘイズが1.8%〜2.0%と実施例1〜15と較べて高く、透明性が低く白濁していることが確認される。
また、表2の「SUV−500時間照射後」欄から分かるように紫外線照射500時間前後におけるΔ可視光透過率は3.0%〜3.5%、Δヘイズは3.0%〜3.6%であり、実施例1〜15と比較して著しく大きい。
更に、紫外線照射後における膜外観は更に強い白濁が確認され、また、25℃で60日間保存された後のプライマー層形成用塗布液には沈降が発生し、実施例1〜15と比較し保存安定性も悪いことが確認される。
(6)比較例5と比較例10では、メトキシシラン化合物に替えてテトラエトキシシランが適用されている以外は実施例1〜15と同様の例である。
従って、表2の「初期特性」欄から分かるように可視光透過率が88.9%〜89.2%と可視光領域の光を十分透過し、かつ、ヘイズが0.3%と透明性が極めて高いことが確認される。
更に、表2の「SUV−500時間照射後」欄から分かるように、紫外線照射500時間前後におけるΔ可視光透過率は0.8%〜1.0%、Δヘイズは0.3%〜0.4%であり、実施例1〜15と同様に小さいことが確認される。
しかし、メトキシシラン化合物に替えてテトラエトキシシランが適用されているため、表2の「保存安定性」欄から分かるように、25℃で60日間保存された後のプライマー層形成用塗布液を用いて製造されたUVカットプラスチック基材(被覆ポリカーボネートプレート)のヘイズが1.1%〜1.5%であり、実施例1〜15と比較して高く、プライマー層形成用塗布液の分散(保存)安定性が悪いことが確認される。
本発明によれば、酸化亜鉛微粒子表面に対する従来型の湿式表面処理法と異なり、溶媒除去・乾燥工程や再分散工程等を要さずに無機系紫外線吸収剤が適用された保存安定性に優れるプライマー層形成用塗布液を提供できるため、安価な有機系紫外線吸収剤により市場相場が確立されている塗料・プラスチック業界においても無機系紫外線吸収剤を適用した安価なプライマー層形成用塗布液として利用される産業上の利用可能性を有している。

Claims (12)

  1. 酸化亜鉛微粒子が溶媒中に分散され、プライマー層形成用塗布液を調製する際にアクリル系樹脂バインダーが添加される酸化亜鉛分散液において、
    酸化亜鉛原料粉と溶媒から成るミルベースにシラン化合物を投入しかつ湿式媒体攪拌ミルを用いて上記酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を行なうと共に上記溶媒の除去を行わずに調製された一次粒子径が100nm以下である被覆処理酸化亜鉛微粒子と溶媒を含んでおり、上記シラン化合物が、シロキサン結合(Si−O−Si)の繰り返しからなるポリシロキサンを主鎖とし、一つ以上の分子末端がアルコキシシリル基(Si−OR)および/またはシラノール基(Si−OH)で封鎖され、炭素原子数1〜18の炭化水素基および/またはフェニル基を有機置換基として分子中に有するシリコーンレジンにより構成され、更に、メトキシシラン化合物を含むことを特徴とする酸化亜鉛分散液。
  2. 上記メトキシシラン化合物が、一般式Rn−Si(OCH34-n(但し、Rはアルキル基、フェニル基、ビニル基、アミノ基、エポキシ基の少なくとも1種若しくは2種以上の官能基である)で表記される化合物であることを特徴とする請求項1に記載の酸化亜鉛分散液。
  3. 上記メトキシシラン化合物が、酸化亜鉛微粒子100重量部に対して1重量部以上120重量部以下含有することを特徴とする請求項1または2に記載の酸化亜鉛分散液。
  4. 上記シリコーンレジンが、酸化亜鉛微粒子100重量部に対して5重量部以上300重量部以下含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酸化亜鉛分散液。
  5. 請求項1に記載の酸化亜鉛分散液の製造方法において、
    上記湿式媒体攪拌ミルによる酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を、相対湿度50%RH以下および/またはドライガス若しくは不活性ガスの吹込条件下において行なうことを特徴とする酸化亜鉛分散液の製造方法。
  6. 請求項1に記載の酸化亜鉛分散液の製造方法において、
    上記湿式媒体攪拌ミルによる酸化亜鉛原料粉の粉砕と粉砕された酸化亜鉛微粒子表面のシラン化合物による被覆処理を、密閉型湿式媒体攪拌ミルにより行なうことを特徴とする酸化亜鉛分散液の製造方法。
  7. 透明プラスチック基材と、透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層と、プライマー層上に形成されたハードコート層とを有する高耐久性UVカットプラスチック基材の上記プライマー層を形成するためのプライマー層形成用塗布液において、
    請求項1〜4のいずれかに記載の酸化亜鉛分散液と、アクリル系樹脂バインダーとを含有することを特徴とするプライマー層形成用塗布液。
  8. 透明プラスチック基材と、透明プラスチック基材上に形成されたプライマー層と、プライマー層上に形成されたハードコート層とを有する高耐久性UVカットプラスチック基材において、
    請求項7に記載のプライマー層形成用塗布液を透明プラスチック基材上に塗布し、この塗布膜を加熱して上記プライマー層が形成されており、透明プラスチック基材と上記プライマー層とハードコート層を具備する上記UVカットプラスチック基材の可視光透過率が85%以上、ヘイズ値が1.0%以下であり、100mW/cm2の紫外線が500時間照射された前後におけるUVカットプラスチック基材の可視光透過率の変化が2.0%以下、ヘイズの変化が1.0%以下であることを特徴とする高耐久性UVカットプラスチック基材。
  9. 上記ハードコート層がシリコーン系樹脂で形成されていることを特徴とする請求項8に記載の高耐久性UVカットプラスチック基材。
  10. 上記プライマー層の膜厚が、1μm以上5μm以下であることを特徴とする請求項8または9に記載の高耐久性UVカットプラスチック基材。
  11. 上記プライマー層中における酸化亜鉛微粒子の含有率が、1重量%以上40重量%以下であることを特徴とする請求項8〜10のいずれかに記載の高耐久性UVカットプラスチック基材。
  12. 上記透明プラスチック基材が、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスルフォン樹脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂、アセチルセルロース樹脂、含硫ウレタン樹脂または架橋(メタ)アクリル系樹脂のいずれかであることを特徴とする請求項8〜11のいずれかに記載の高耐久性UVカットプラスチック基材。
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