本発明の多段変速機(以下、変速機という)の車両に対する搭載姿勢は、変速機の軸線が車両の幅方向となるFF(フロントエンジン・フロントドライブ)車両などの横置き型でも、変速機の軸線が車両の前後方向となるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)車両などの縦置き型でも良い。
変速機は、アクセル操作量や車速などの運転状態に応じて自動的に変速段を切り換えるものでも良いが、運転者のスイッチ操作(アップダウン操作など)に従って変速段を切り換えるものでも良い。
前記クラッチ要素およびブレーキ要素としては、油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式や単板式、ベルト式などの油圧式摩擦係合装置が好適に用いられるが、電磁式等の他の形式の係合装置を採用することもできる。変速制御を容易にするため、それ等のブレーキやクラッチと並列または直列に一方向クラッチを設けることもできる。
第1変速部と第2変速部とは、同軸上に配置されてもよいが、第1変速部が第1軸上に配置されるとともに、第2変速部が第1軸と平行な第2軸上に配置され、第1軸と第2軸とがカウンタギヤ対により連結されてもよい。
前記前置歯車装置としては、遊星歯車装置を用いることもできるが、変速機に互いに平行な2本の軸心が備えられるとともに、その2本の軸心上にそれぞれ配設される1対のギヤから構成されるカウンタギヤ対を用いることもできる。また、前置歯車装置として遊星歯車装置を用いる場合には、その遊星歯車装置を切換不能に、すなわち、その遊星歯車装置を構成する各回転要素の入力回転部材に対する相対回転速度比が常に一定となるようにしてもよいし、その遊星歯車装置を構成する回転要素の少なくとも1つを選択的に所定の回転部材あるいは非回転部材と連結する係合装置を設けることにより、その遊星歯車装置を切換可能としてもよい。ただし、切換不能に構成すれば、係合装置を少なくすることができる点において、切換可能に構成するよりも好ましい。
駆動力源としては、エンジンが好適に用いられるが、エンジンに代えて、あるいは、エンジンに加えて電動モータ等の他の駆動力源を用いてもよい。また、好ましくは、エンジンなどの駆動力源の出力は、流体伝動装置を介して前記入力回転部材に入力される。このようにすれば、コンパクトな変速機の設計が可能となる。流体転動装置としては、トルクコンバータが好適に用いられるが、トルクコンバータに代えてフルードカップリングを用いてもよい。なお、流体伝動装置にはロックアップクラッチが備えられることが好ましいが、ロックアップクラッチが備えられていなくても良いし、また、流体伝動装置に代えて、磁粉式電磁クラッチ、多板或いは単板式の油圧クラッチが設けられていてもよい。
本発明の変速機は、第3発明、第4発明、第8発明乃至第13発明、第20発明乃至第28発明、および第34発明のいずれかに記載の変速段をそのまま用いて9段変速乃至第11変速段を可能とすることが好ましいが、必ずしもそれらの態様に限定されず、正回転方向である前進変速段を複数用いて変速が行われるものであればよい。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用された変速機10の構成を説明する骨子図である。図1において、変速機10は車体に取り付けられるトランスミッションケース(以下、単にケースという)12内において共通の軸心上に、流体伝動装置としてのロックアップクラッチ13付のトルクコンバータ14、このトルクコンバータ14に連結された入力軸16、第1遊星歯車装置18と第2遊星歯車装置20とを主体として構成されている第1変速部28、第3遊星歯車装置22と第4遊星歯車装置24とを主体として構成されている第2変速部30、および出力軸26が順次配設されている。この変速機10は、車両において縦置きされるFR用自動変速機として好適に用いられるものであり、エンジン8と図示しない駆動輪との間に設けられ、エンジン8の出力を駆動輪に伝達する。上記入力軸16はトルクコンバータ14のタービン軸であり、入力軸16は入力回転部材に相当する。また、出力軸26は出力回転部材に相当し、たとえば図示しない差動歯車装置等を介して左右の駆動輪を回転駆動する。また、ケース12は非回転部材に相当し、トルクコンバータ14はエンジン8のクランク軸9に連結されている。なお、変速機10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。
上記第1変速部28を構成している第1遊星歯車装置18および第2遊星歯車装置20はそれぞれシングルピニオン型およびダブルピニオン型である。第1遊星歯車装置18は、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を備えており、第2遊星歯車装置20は、第2サンギヤS2、互いに噛み合う複数対の第2ピニオンギヤP2、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えている。
上記第2遊星歯車装置20においては、第2サンギヤS2がケース12に連結されて常時回転停止させられ、第2キャリヤCA2が入力軸16に連結されて回転駆動させられている。また、第2リングギヤR2は出力要素または出力回転部材であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。このように構成された第2遊星歯車装置20が、本実施例では前置歯車装置として機能している。
一方、第1遊星歯車装置18おいては、第1キャリヤCA1が入力要素であり、第1遊星歯車装置18と第2遊星歯車装置20との間に配置された増速クラッチC0および第2キャリヤCA2を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第1サンギヤS1が固定要素であり、ケース12に連結されて常時回転停止させられている。そして、第1リングギヤR1が出力要素であり、増速クラッチC0が係合させられると第1遊星歯車装置18は増速状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転速度が増速されて第1リングギヤR1から第2変速部30へ伝達される。一方、増速クラッチC0が解放させられると第1遊星歯車装置18は空転状態となる。
上記第1変速部28は、さらに、第1遊星歯車装置18と第2遊星歯車装置20との間に第1クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備えており、第2遊星歯車装置20の出力要素である第2リングギヤR2は、この第1クラッチC1を介して後述する第3サンギヤS3と選択的に連結され、また、第1遊星歯車装置18の出力要素である第1リングギヤR1はこの第3サンギヤS3に連結されている。従って、この第3サンギヤS3が本実施例における特定回転要素RESであり、第1遊星歯車装置18が前置遊星歯車装置として機能する。
第2変速部30を構成している第3遊星歯車装置22および第4遊星歯車装置24はそれぞれダブルピニオン型およびシングルピニオン型であり、第3遊星歯車装置22は第1後置遊星歯車装置に相当し、第4遊星歯車装置24は第2後置遊星歯車装置に相当する。第3遊星歯車装置22は、第3サンギヤS3、互いに噛み合う複数対の第3ピニオンギヤP3、その第3ピニオンギヤP3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3ピニオンギヤP3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、第4遊星歯車装置24は、第4サンギヤS4、第4ピニオンギヤP4、その第4ピニオンギヤP4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4ピニオンギヤP4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えている。
上記第2変速部30においては、第3キャリヤCA3と第4サンギヤS4とが互いに連結されて第1回転要素RE1が構成され、第3リングギヤR3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第3サンギヤS3によって第4回転要素RE4が構成されている。なお、前述のように、第3サンギヤS3すなわち第4回転要素RE4は特定回転要素RESである。
また、第2変速部30は、第2クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチ要素として機能する第3クラッチC3、第4クラッチ要素として機能する第4クラッチC4、および第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えており、第2クラッチC2および第4クラッチC4は第4遊星歯車装置24よりも出力軸26側に配置され、第3クラッチC3および第1ブレーキB1は第3遊星歯車装置22よりも第1変速部28側に配置され、第2ブレーキB2は第3遊星歯車装置22と第4遊星歯車装置24との間に配置されている。なお、第1クラッチC1乃至第4クラッチC4、および第1、第2ブレーキB1、B2は、何れも油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式等の油圧式摩擦係合装置である。
第2クラッチC2は入力軸16と第2回転要素RE2(R3、CA4)とを選択的に連結し、第3クラッチC3は第2リングギヤR2と第1回転要素RE1(CA3、S4)とを選択的に連結し、第4クラッチC4は入力軸16と第1回転要素RE1(CA3、S4)とを選択的に連結している。また、第1ブレーキB1は第1回転要素RE1(CA3、S4)を選択的にケース12に連結して回転停止させ、第2ブレーキB2は第2回転要素RE2(R3、CA4)を選択的にケース12に連結して回転停止させる。また、第3回転要素RE3(R4)は出力軸26に連結されている。
上記構成の第2変速部30には、第2クラッチC2或いは第4クラッチC4の係合解放により入力軸16の回転が選択的に伝達され、第1クラッチC1或いは第3クラッチC3の係合解放により第2リングギヤR2(すなわち前置歯車装置の出力要素)の回転が選択的に伝達され、増速クラッチC0の係合解放により第1リングギヤR1(すなわち前置遊星歯車装置の出力要素)の回転が選択的に伝達される。
図2は、上記第1変速部28および第2変速部30の各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図であり、下の横線X1が回転速度「0」で、上の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸16と同じ回転速度である。また、第1変速部28の各縦線は、左側から順番に、第1サンギヤS1および第2サンギヤS2、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1および第2リングギヤR2、第2キャリヤCA2を表しており、前置歯車装置として機能する側の遊星歯車装置(すなわち第1実施例では第2遊星歯車装置20)の各要素の回転速度は直線L2と縦線との交点で示される一方、前置遊星歯車装置(すなわち第1実施例では第1遊星歯車装置18)の各要素の回転速度は、増速クラッチC0が係合させられた増速状態の回転速度が直線L1と縦線との交点で示され、第1クラッチC1が係合させられたときの回転速度が直線L2で示される。また、各縦線間の間隔は、サンギヤとキャリヤとの間を「1」とするとキャリヤとリングギヤとの間がρとなるように、第1遊星歯車装置18および第2遊星歯車装置20のギヤ比(=サンギヤの歯数/リングギヤの歯数)ρ1、ρ2に応じて定められる。
また、第2変速部30の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RE1(CA3、S4)、第2回転要素RE2(R3、CA4)、第3回転要素RE3(R4)、第4回転要素RE4すなわち特定回転要素RES(S3)を表しており、それ等の間隔は第3遊星歯車装置22のギヤ比ρ3および第4遊星歯車装置24のギヤ比ρ4に応じて定められる。また、第4回転要素RE4の回転速度は、増速クラッチC0が係合させられたときは横線XH(>1)となり、第1クラッチC1が係合させられたときは横線XL(<1)となる。なお、増速クラッチC0および第1クラッチC1は、常に少なくとも一方が解放状態とされる。
次に、この共線図に基づいて変速機10の変速段について説明する。まず、増速クラッチC0が解放されて第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、出力軸26に連結された第3回転要素RE3は「1st」で示す回転速度で回転し、最も大きい変速比(=入力軸16の回転速度/出力軸26の回転速度)の第1変速段「1st」が成立する。
また、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立する。
また、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられることにより、第4回転要素RE4および第1回転要素RE1がともに入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結されると、第3回転要素RE3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立する。
また、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第4クラッチC4が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立する。
また、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立する。
また、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられることにより、第1回転要素RE1および第2回転要素RE2がともに入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「6th」で示す回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立する。
また、増速クラッチC0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第4回転要素RE4が入力軸16に対して増速回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられて第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立する。
また、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結されると、第3回転要素RE3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立する。
また、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「9th」で示す回転速度で回転させられ、第8変速段「8th」よりも変速比が小さい第9変速段「9th」が成立する。
さらに、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結され、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」が成立する。
また、第1遊星歯車装置18が空転状態とされるとともに、第4クラッチC4が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に連結され、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比が小さい第2後進変速段「Rev2」が成立する。
図3は、上記各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表であり、「○」は係合を表しており、空欄は解放である。第1遊星歯車装置18、第2遊星歯車装置20、第3遊星歯車装置22、第4遊星歯車装置24の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図3に示す各変速段の変速比が得られる。この図3に示すものにあっては、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.652とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=5.195/0.652)も7.966程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第7変速段と第8変速段との間、および第8変速段と第9変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
図4は、本実施例の変速機10を制御するための電子制御装置40に入力される信号及びその電子制御装置40から出力される信号を例示している。この電子制御装置40は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことにより、エンジン8の出力制御や変速機10の変速制御を行う。
上記電子制御装置40には、図4に示す各センサやスイッチから、エンジン水温を示す信号、シフトポジションを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、エアコンの作動を示すエアコン信号、出力軸26の回転速度に対応する車速信号、変速機10の作動油温を示す油温信号、サイドブレーキ操作を示す信号、フットブレーキ操作を示す信号、触媒温度を示す触媒温度信号、アクセルペダルの操作量を示すアクセル開度信号、カム角信号、スノーモード設定を示すスノーモード設定信号、車両の前後加速度を示す加速度信号、オートクルーズ走行を示すオートクルーズ信号を表す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置40からは、スロットル弁の開度を操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、エンジン8の点火時期を指令する点火信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、変速機10の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、上記油圧制御回路の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
以上、説明した本実施例の変速機10は、第1変速部28において、第2遊星歯車装置20によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置18が増速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部30へ伝達されて、第2変速部30でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、本実施例の変速機10は、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機10の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第2実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と実質的に共通する部分には同一の符号を付して詳しい説明を省略する。
図5は本発明の第2実施例の変速機50の構成を説明する骨子図である。この変速機50も、第1実施例の変速機10と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部52および第2変速部54をその順に同軸上に備えている。
第1変速部52は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置56および第2遊星歯車装置58を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第2実施例においても第2遊星歯車装置58が前置歯車装置として機能しており、第2サンギヤS2が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第2キャリヤCA2は、第1キャリヤCA1に連結されており、この第1キャリヤCA1がケース12に連結されているので、第2キャリヤCA2は常時回転停止させられている。また、第2リングギヤR2は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。
一方、第1遊星歯車装置56おいては、第1リングギヤR1が入力要素であり、第1遊星歯車装置56とトルクコンバータ14との間に配置された増速クラッチC0を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第1キャリヤCA1が固定要素であり、ケース12に連結されて常時回転停止させられている。そして、第1サンギヤS1が出力要素であり、増速クラッチC0が係合させられると第1遊星歯車装置56は増速状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転速度が増速されて第1サンギヤS1から第2変速部54へ伝達される。一方、増速クラッチC0が解放させられると第1遊星歯車装置56は空転状態となる。
上記第1変速部52は、さらに、第2遊星歯車装置58よりも第2変速部54側に第1クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備えており、第2遊星歯車装置58の出力要素である第2リングギヤR2は、この第1クラッチC1を介して後述する第3遊星歯車装置60の第3サンギヤS3と選択的に連結され、また、第1遊星歯車装置56の出力要素である第1サンギヤS1はこの第3サンギヤS3に連結されている。従って、第2実施例においても第3サンギヤS3が特定回転要素RESであり、第1遊星歯車装置56が前置遊星歯車装置として機能する。
第2変速部54は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置60、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置62を主体として構成されており、第1実施例と同様に、第2乃至第4クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。上記第3遊星歯車装置60、第4遊星歯車装置62の各要素、およびクラッチC2〜C4、ブレーキB1、B2の相互の連結関係および相互の位置関係は第1実施例と同様であるので、説明を省略する。
図6は、第2実施例の変速機50における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図6において、第1変速部52の各縦線は、左側から順番に、第1キャリヤCA1および第2キャリヤCA2、第1リングギヤR1、第1サンギヤS1および第2リングギヤR2、第2サンギヤS2である。また、第2変速部54の4本の縦線は、それぞれ、第1実施例と同じ回転要素REを表している。
この図6に示される各変速段を、図2の共線図に示される各変速段と比較すると、第7変速段「7th」および第8変速段「8th」を除く変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。一方、第7変速段「7th」は、第1遊星歯車装置56が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結されることで成立し、第8変速段「8th」は、増速クラッチC0が係合させられて第4回転要素RE4が入力軸16に対して増速回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられて第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることで成立する。
図7は、第2実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置56、第2遊星歯車装置58、第3遊星歯車装置60、第4遊星歯車装置62の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図7に示す各変速段の変速比が得られる。この図7に示すものも、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.648とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=5.389/0.648)も8.311程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第7変速段と第8変速段との間、および第8変速段と第9変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
以上、説明したように、第2実施例でも、第1変速部52において、第2遊星歯車装置58によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置56が増速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部54へ伝達されて、第2変速部54でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第2実施例の変速機50も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機50の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第3実施例を説明する。図8は本発明の第3実施例の変速機70の構成を説明する骨子図である。第3実施例の変速機70は、第1変速部72および第2実施例と同一の構成を有する第2変速部54を備えており、それらが、前述の第1、第2実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間にその順に配置されている。
第1変速部72は、いずれもダブルピニオン型の第1遊星歯車装置74と第2遊星歯車装置76を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第3実施例においては、第1遊星歯車装置74が前置歯車装置として機能しており、第1サンギヤS1が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第1キャリヤCA1はケース12に連結されて常時回転停止させられている。また、第1リングギヤR1は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。
一方、第2遊星歯車装置76おいては、第2リングギヤR2が入力要素であり、第2遊星歯車装置76よりも第2変速部54側に配置された増速クラッチC0を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第2サンギヤS2が固定要素であり、第1キャリヤCA1を介してケース12に連結されて常時回転停止させられている。そして、第2キャリヤCA2が出力要素であり、増速クラッチC0が係合させられると第2遊星歯車装置76は増速状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転速度が増速されて第2キャリヤCA2から第2変速部54へ伝達される。一方、増速クラッチC0が解放させられると第2遊星歯車装置76は空転状態となる。
第1変速部72は、さらに、第2遊星歯車装置76よりも第2変速部54側に第1クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備えており、第1遊星歯車装置74(すなわち前置歯車装置)の出力要素である第1リングギヤR1は、この第1クラッチC1を介して第3サンギヤS3と選択的に連結され、また、第2遊星歯車装置76の出力要素である第2キャリヤCA2はこの第3サンギヤS3に連結されている。従って、第3実施例では、第3サンギヤS3が特定回転要素RESであり、第2遊星歯車装置76が前置遊星歯車装置として機能する。
図9は、第3実施例の変速機70における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図9において、第1変速部72の各縦線は、左側から順番に、第1キャリヤCA1および第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、第1リングギヤR1および第2キャリヤCA2、第1サンギヤS1を表している。この図9における第1変速部72部分は、回転要素を基準とすれば図6と同一である。また、前述のように第2変速部54は第2実施例と同一である。従って、共線図は回転要素に基づけば第2実施例と同一となる。また、共線図が同一となることから、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表は、前述の図7に示すものとなる。従って、第3実施例は第2実施例と同一の効果が得られる。
次に、本発明の第4実施例を説明する。図10は本発明の第4実施例の変速機80の構成を説明する骨子図である。第4実施例の変速機80は、第1変速部82および第2実施例と同一の構成を有する第2変速部54を備えており、それらが、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間にその順に配置されている。
第1変速部82は、いずれもダブルピニオン型の第1遊星歯車装置84と第2遊星歯車装置86を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第4実施例においては、第1遊星歯車装置84が前置歯車装置として機能しており、第1キャリヤCA1が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第1サンギヤS1は第2キャリヤCA2に連結されており、その第2キャリヤCA2がケース12に連結されているので、第1サンギヤS1は常時回転停止させられている。また、第1リングギヤR1は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。
一方、第2遊星歯車装置86おいては、第2リングギヤR2が入力要素であり、第1遊星歯車装置84と第2遊星歯車装置86との間に配置された増速クラッチC0を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第2キャリヤCA2が固定要素であり、ケース12に連結されて常時回転停止させられている。そして、第2サンギヤS2が出力要素であり、増速クラッチC0が係合させられると第2遊星歯車装置86は増速状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転速度が増速されて第2サンギヤS2から第2変速部54へ伝達される。一方、増速クラッチC0が解放させられると第2遊星歯車装置86は空転状態となる。
第1変速部82は、さらに、第2遊星歯車装置86よりも第2変速部54側に第1クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備えており、第1遊星歯車装置84(すなわち前置歯車装置)の出力要素である第1リングギヤR1は、この第1クラッチC1を介して第3サンギヤS3と選択的に連結され、また、第2遊星歯車装置86の出力要素である第2サンギヤS2はこの第3サンギヤS3に連結されている。従って、第4実施例では、第3サンギヤS3が特定回転要素RESであり、第2遊星歯車装置86が前置遊星歯車装置として機能する。
図11は、第4実施例の変速機80における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図11において、第1変速部82の各縦線は、左側から順番に、第1サンギヤS1および第2キャリヤCA2、第2リングギヤR2、第1リングギヤR1および第2サンギヤS2、第1キャリヤCA1を表している。この図11における第1変速部82部分は、回転要素を基準とすれば図6と同一である。また、前述のように第2変速部54は第2実施例と同一である。従って、共線図は回転要素に基づけば第2実施例と同一となる。また、共線図が同一となることから、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表は、前述の図7に示すものとなる。従って、第4実施例は第2実施例と同一の効果が得られる。
次に、本発明の第5実施例を説明する。図12は本発明の第5実施例の変速機90の構成を説明する骨子図である。この変速機90も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部92および第2変速部94をその順に同軸上に備えている。
第1変速部92は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置96および第2遊星歯車装置98を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第5実施例では、第2遊星歯車装置98が前置歯車装置として機能しており、第2サンギヤS2が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第2キャリヤCA2は第1キャリヤCA1に連結されており、この第1キャリヤCA1がケース12に連結されているので、第2キャリヤCA2は常時回転停止させられている。また、第2リングギヤR2は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。
一方、第1遊星歯車装置96おいては、第1リングギヤR1が入力要素であり、第1遊星歯車装置96とトルクコンバータ14との間に配置された増速クラッチC0を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第1キャリヤCA1が固定要素であり、ケース12に連結されて常時回転停止させられている。そして、第1サンギヤS1が出力要素であり、増速クラッチC0が係合させられると第1遊星歯車装置96は増速状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転速度が増速されて第1サンギヤS1から第2変速部94へ伝達される。一方、増速クラッチC0が解放させられると第1遊星歯車装置96は空転状態となる。
上記第1変速部92は、さらに、第2遊星歯車装置98よりも第2変速部94側に第1クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備えており、第2遊星歯車装置98の出力要素である第2リングギヤR2は、この第1クラッチC1を介して後述する第3遊星歯車装置100の第3サンギヤS3と選択的に連結され、また、第1遊星歯車装置96の出力要素である第1サンギヤS1はこの第3サンギヤS3に連結されている。従って、第5実施例においても第3サンギヤS3が特定回転要素RESであり、第1遊星歯車装置96が前置遊星歯車装置として機能する。
第2変速部94は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置100、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置102を主体として構成されており、第1実施例と同様に、第2乃至第4クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。上記第3遊星歯車装置100、第4遊星歯車装置102の各要素、およびクラッチC2〜C4、ブレーキB1、B2の相互の連結関係および相互の位置関係は第1実施例と同様であるので、説明を省略する。
図13は、第5実施例の変速機90における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図13において、第1変速部92および第2変速部94の各縦線は、いずれも、第2実施例の共線図(図6)と同じ回転要素REを表している。ただし、各縦線間の間隔は、図6と異なっている。
この図13に示される各変速段を、図6の共線図に示される各変速段と比較すると、第8変速段「8th」および第9変速段「9th」を除く変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。一方、第8変速段「8th」は、第1遊星歯車装置96が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられることにより成立し、第9変速段「9th」は、増速クラッチC0が係合させられて第4回転要素RE4が入力軸16に対して増速回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられて第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることで成立する。
図14は、第5実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置96、第2遊星歯車装置98、第3遊星歯車装置100、第4遊星歯車装置102の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図14に示す各変速段の変速比が得られる。この図14に示すものにおいても、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.611とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.709/0.611)も7.709程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第7変速段と第8変速段との間、および第8変速段と第9変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
以上、説明したように、第5実施例でも、第1変速部92において、第2遊星歯車装置98によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置96が増速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部94へ伝達されて、第2変速部94でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第5実施例の変速機90も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機90の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第6実施例を説明する。図15は本発明の第6実施例の変速機110の構成を説明する骨子図である。第6実施例の変速機110は、第1変速部112および第5実施例と同一の構成を有する第2変速部94を備えており、それらが、前述の第5実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間にその順に配置されている。
第1変速部112は、いずれもダブルピニオン型の第1遊星歯車装置114と第2遊星歯車装置116を主体として構成されており、また、増速クラッチC0および第1クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備えている。上記第1、第2遊星歯車装置114、116、およびクラッチC0、C1の相互の連結関係および相互の位置関係は第3実施例と同様である。従って、第6実施例では、第1遊星歯車装置114が前置歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置116が前置遊星歯車装置として機能する。
図16は、第6実施例の変速機110における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図16において、第1変速部112の各縦線は、左側から順番に、第1キャリヤCA1および第2サンギヤS2、第2リングギヤR2、第1リングギヤR1および第2キャリヤCA2、第1サンギヤS1を表している。この図16における第1変速部112部分は、回転要素を基準とすれば第5実施例の共線図である図13と同一である。また、前述のように第2変速部94は第5実施例と同一である。従って、共線図は回転要素に基づけば第5実施例と同一となる。また、共線図が同一となることから、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表は、前述の図14に示すものとなる。従って、第6実施例は第5実施例と同一の効果が得られる。
次に、本発明の第7実施例を説明する。図17は本発明の第7実施例の変速機120の構成を説明する骨子図である。第7実施例の変速機120は、第1変速部122および第5実施例と同一の構成を有する第2変速部94を備えており、それらが、前述の第5実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間にその順に配置されている。
第1変速部122は、いずれもダブルピニオン型の第1遊星歯車装置124と第2遊星歯車装置126を主体として構成されており、また、増速クラッチC0および第1クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備えている。上記第1、第2遊星歯車装置124、126、およびクラッチC0、C1の相互の連結関係および相互の位置関係は第4実施例と同様である。従って、第7実施例では、第1遊星歯車装置124が前置歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置126が前置遊星歯車装置として機能する。
図18は、第7実施例の変速機120における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図18において、第1変速部122の各縦線は、左側から順番に、第1サンギヤS1および第2キャリヤCA2、第2リングギヤR2、第1リングギヤR1および第2サンギヤS2、第1キャリヤCA1を表している。この図18における第1変速部122部分は、回転要素を基準とすれば第5実施例の共線図である図13と同一である。また、前述のように第2変速部94は第5実施例と同一である。従って、共線図は回転要素に基づけば第5実施例と同一となる。また、共線図が同一となることから、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表は、前述の図14に示すものとなる。従って、第7実施例は第5実施例と同一の効果が得られる。
次に、本発明の第8実施例を説明する。図19は本発明の第8実施例の変速機130の構成を説明する骨子図である。この変速機130も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部132および第2変速部134をその順に同軸上に備えている。
第1変速部132は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置136およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置138を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第8実施例では、第1遊星歯車装置136が前置歯車装置として機能しており、第1サンギヤS1が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第1キャリヤCA1はケース12に連結されて常時回転停止させられている。また、第1リングギヤR1は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。
一方、第2遊星歯車装置138おいては、第2リングギヤR2が入力要素であり、第2遊星歯車装置138よりも第2変速部134側に配置された減速クラッチC0を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第2サンギヤS2が固定要素であり、第1キャリヤCA1を介してケース12に連結されて常時回転停止させられている。そして、第2キャリヤCA2が出力要素であり、減速クラッチC0が係合させられると第1遊星歯車装置136は減速状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転速度が第1遊星歯車装置136とは異なる減速比で減速されて第2キャリヤCA2から第2変速部134へ伝達される。一方、減速クラッチC0が解放させられると第2遊星歯車装置138は空転状態となる。
上記第1変速部132は、さらに、第1遊星歯車装置136と第2遊星歯車装置138との間に第1クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備えており、第1遊星歯車装置136の出力要素である第1リングギヤR1は、この第1クラッチC1を介して後述する第3遊星歯車装置140の第3サンギヤS3と選択的に連結され、また、第2遊星歯車装置138の出力要素である第2キャリヤCA2はこの第3サンギヤS3に連結されている。従って、第8実施例においても第3サンギヤS3が特定回転要素RESであり、第2遊星歯車装置138が前置遊星歯車装置として機能する。
第2変速部134は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置140、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置142を主体として構成されている。そして、第3キャリヤCA3と第4サンギヤS4とが互いに連結されて第1回転要素RE1が構成され、第3リングギヤR3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第3サンギヤS3によって第4回転要素RE4が構成されている。なお、前述のように、第3サンギヤS3すなわち第4回転要素RE4が特定回転要素RESである。
また、第2変速部134は、第2乃至第4クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチC3、第4クラッチC4、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。これらクラッチC2〜C4、およびブレーキB1、B2の第3遊星歯車装置140、第4遊星歯車装置142に対する位置関係、およびこれらクラッチC2〜C4、およびブレーキB1、B2回転要素REに対する連結関係は前述の第1実施例と同一であるので、説明を省略する。
図20は、第8実施例の変速機130における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図20において、第1変速部132の各縦線は、左側から順番に、第1キャリヤCA1および第2サンギヤS2、第1リングギヤR1および第2キャリヤCA2、第2リングギヤR2、第1サンギヤS1を表しており、前置歯車装置として機能する側の遊星歯車装置(すなわち第8実施例では第1遊星歯車装置136)の各要素の回転速度は直線L2と縦線との交点で示される一方、前置遊星歯車装置(すなわち第8実施例では第2遊星歯車装置138)の各要素の回転速度は、減速クラッチC0が係合させられた減速状態の回転速度が直線L1と縦線との交点で示され、第1クラッチC1が係合させられたときの回転速度が直線L2で示される。
また、第2変速部134の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RE1(CA3、S4)、第2回転要素RE2(R3、CA4)、第3回転要素RE3(R4)、第4回転要素RE4すなわち特定回転要素RES(S3)を表している。また、第4回転要素RE4の回転速度は、減速クラッチC0が係合させられたときは横線XL1(<1)となり、第1クラッチC1が係合させられたときは横線XL2(<XL1)となる。なお、減速クラッチC0および第1クラッチC1は、常に少なくとも一方が解放状態とされる。
次に、この共線図に基づいて変速機130の変速段について説明する。まず、減速クラッチC0が解放されて第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で減速回転させられている第1リングギヤR1に連結され、且つ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、出力軸26に連結された第3回転要素RE3は「1st」で示す回転速度で回転し、最も大きい変速比の第1変速段「1st」が成立する。
また、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で減速回転させられている第1リングギヤR1に連結され、且つ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立する。
また、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられることにより、第4回転要素RE4および第1回転要素RE1がともに横線XL2で示される第2減速回転速度で減速回転させられている第1リングギヤR1に連結されると、第3回転要素RE3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立する。
また、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で減速回転させられている第1リングギヤR1に連結され、且つ、第4クラッチC4が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立する。
また、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で減速回転させられている第1リングギヤR1に連結され、且つ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立する。
また、減速クラッチC0が係合させられて第2キャリヤCA2およびそれに連結された第4回転要素RE4が横線XL1で示される第1減速回転速度で減速回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられて第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「6th」で示す回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立する。
また、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられることにより第2回転要素RE2および第1回転要素RE1が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立する。
また、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が横線XL2で示される第2減速回転速度で減速回転させられると、第3回転要素RE3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立する。
また、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「9th」で示す回転速度で回転させられ、第8変速段「8th」よりも変速比が小さい第9変速段「9th」が成立する。
さらに、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が横線XL2で示される第2減速回転速度で減速回転させられ、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」が成立する。
また、第2遊星歯車装置138が空転状態とされるとともに、第4クラッチC4が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に連結され、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比が小さい第2後進変速段「Rev2」が成立する。
図21は、上記各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置136、第2遊星歯車装置138、第3遊星歯車装置140、第4遊星歯車装置142の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図21に示す各変速段の変速比が得られる。この図21に示すものにあっては、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.654とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.771/0.654)も7.299程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第8実施例でも、第1変速部132において、第1遊星歯車装置136によって減速回転が作られるとともに、第2遊星歯車装置138が減速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部134へ伝達されて、第2変速部134でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第8実施例の変速機130も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機130の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第9実施例を説明する。図22は本発明の第9実施例の変速機150の構成を説明する骨子図である。この変速機150も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部152および第2変速部154をその順に同軸上に備えている。
第1変速部152は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置156およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置158を主体として構成されており、さらに、減速クラッチC0および第1クラッチC1を備えている。また、第2変速部154は、ダブルピニオン型の第3遊星歯車装置160およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置162を主体として構成されており、さらに、第2乃至第4クラッチC2〜C4、および第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。
この変速機150は、骨子図としては、前述の第8実施例と同一である。従って、第1遊星歯車装置156が前置歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置158が前置遊星歯車装置として機能、第1クラッチC1が第1クラッチ要素として機能する。また、第3遊星歯車装置160、第4遊星歯車装置162がそれぞれ第1、第2後置遊星歯車装置であり、第3サンギヤS3が特定回転要素RESであり、第2乃至第4クラッチC2〜C4が第2乃至第4クラッチ要素であり、第1、第2ブレーキB1、B2が第1、第2ブレーキ要素である。
図23は、第9実施例の変速機150における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図23において、第1変速部152および第2変速部154の各縦線は、いずれも、第8実施例の共線図(図20)と同じ回転要素REを表している。この図23に示される各変速段を、図20の共線図に示される各変速段と比較すると、第2変速段乃至第5変速段を除く変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第2変速段「2nd」は、減速クラッチC0が係合させられて第2キャリヤCA2およびそれに連結された第4回転要素RE4が横線XL1で示される第1減速回転速度で減速回転させられるとともに、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
また、第3変速段「3rd」は、減速クラッチC0が係合させられて第2キャリヤCA2およびそれに連結された第4回転要素RE4が横線XL1で示される第1減速回転速度で減速回転させられるとともに、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられることにより成立する。
また、第4変速段「4th」は、減速クラッチC0が係合させられて第2キャリヤCA2およびそれに連結された第4回転要素RE4が横線XL1で示される第1減速回転速度で減速回転させられるとともに、第3クラッチC3が係合させられて第1回転要素RE1が横線XL2で示される第2回転速度で減速回転させられることにより成立する。
また、第5変速段「5th」は、減速クラッチC0が係合させられて第2キャリヤCA2およびそれに連結された第4回転要素RE4が横線XL1で示される第1減速回転速度で減速回転させられるとともに、第4クラッチC4が係合させられて第1回転要素RE1が入力軸16に連結されることで成立する。
図24は、第9実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置156、第2遊星歯車装置158、第3遊星歯車装置160、第4遊星歯車装置162の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図24に示す各変速段の変速比が得られる。この図24に示すものにおいても、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.685とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.797/0.685)も7.264程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第9実施例でも、第1変速部152において、第1遊星歯車装置156によって減速回転が作られるとともに、第2遊星歯車装置158が減速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部154へ伝達されて、第2変速部154でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第9実施例の変速機150も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機150の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第10実施例を説明する。図25は本発明の第10実施例の変速機170の構成を説明する骨子図である。この変速機170も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部172および第2変速部174をその順に同軸上に備えている。
第1変速部172は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置176およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置178を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第10実施例においては第2遊星歯車装置178が前置歯車装置として機能しており、第2キャリヤCA2が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第2サンギヤS2はケース12に連結されて常時回転停止させられている。また、第2リングギヤR2は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。
一方、第1遊星歯車装置176おいては、第1サンギヤS1が入力要素であり、第2キャリヤCA2を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第1リングギヤR1が固定要素であり、減速ブレーキB0を介してケース12に選択的に連結される。そして、第1キャリヤCA1が出力要素であり、減速ブレーキB0が係合させられると第1遊星歯車装置176は減速状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転速度が減速されて第1キャリヤCA1から第2変速部174へ伝達される。一方、減速ブレーキB0が解放させられると第1遊星歯車装置176は空転状態となる。
上記第1変速部172は、さらに、第2遊星歯車装置178よりも第2変速部174側に第1クラッチ要素として機能する第3クラッチC3を備えており、第2遊星歯車装置178の出力要素である第2リングギヤR2は、この第3クラッチC3を介して後述する第2変速部174の第1回転要素RE1と選択的に連結され、また、第1遊星歯車装置176の出力要素である第1キャリヤCA1はこの第1回転要素RE1に連結されている。従って、第10実施例においては、第1回転要素RE1が特定回転要素RESであり、第1遊星歯車装置176が前置遊星歯車装置として機能する。
第2変速部174は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置180、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置182を主体として構成されており、前述の実施例と同様に、第3キャリヤCA3と第4サンギヤS4とが互いに連結されて第1回転要素RE1が構成され、第3リングギヤR3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第3サンギヤS3によって第4回転要素RE4が構成されている。なお、前述のように、この第10実施例では第1回転要素RE1が特定回転要素RESである。
また、第2変速部174は、第2クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチ要素として機能する第1クラッチC1、第4クラッチ要素として機能する第4クラッチC4、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えており、第1クラッチC1は第3遊星歯車装置180よりも第1変速部172側に配置される一方、第2、第4クラッチC2、C4は第4遊星歯車装置182よりも出力軸26側に配置されている。
第1クラッチC1は第4回転要素RE4と第2リングギヤR2とを選択的に連結し、第2クラッチC2は入力軸16と第2回転要素RE2とを選択的に連結し、第4クラッチC4は入力軸16と第1回転要素RE1とを選択的に連結する。また、また、第1ブレーキB1は第1回転要素RE1を選択的にケース12に連結して回転停止させ、第2ブレーキB2は第2回転要素RE2を選択的にケース12に連結して回転停止させる。また、第3回転要素RE3は出力軸26に連結されている。
図26は、第10実施例の変速機170における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図26において、第1変速部172の各縦線は、左側から順番に、第2サンギヤS2、第1リングギヤR1、第1キャリヤCA1および第2リングギヤR2、第1サンギヤS1および第2キャリヤCA2であり、前置歯車装置として機能する側の遊星歯車装置(すなわち第10実施例では第2遊星歯車装置178)の各要素の回転速度は直線L2と縦線との交点で示される一方、前置遊星歯車装置(すなわち第10実施例では第1遊星歯車装置176)の各要素の回転速度は、減速ブレーキB0が係合させられた減速状態の回転速度が直線L1と縦線との交点で示され、第3クラッチC3が係合させられたときの回転速度が直線L2で示される。
また、第2変速部174の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RE1すなわち特定回転要素RES(CA3、S4)、第2回転要素RE2(R3、CA4)、第3回転要素RE3(R4)、第4回転要素RE4(S3)を表している。また、第1回転要素RE1の回転速度は、減速ブレーキB0が係合させられたときは横線XL2(<1)となり、第3クラッチC3が係合させられたときは横線XL1(>XL2)となる。なお、減速ブレーキB0および第3クラッチC3は、常に少なくとも一方が解放状態とされる。
次に、この共線図に基づいて変速機170の変速段について説明する。この図26に示される各変速段を、図20の共線図に示される各変速段と比較すると、第6変速段乃至第8変速段を除く前進変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第6変速段「6th」は、第1遊星歯車装置176が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられて第2回転要素RE2および第1回転要素RE1がともに入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第7変速段「7th」は、第1遊星歯車装置176が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が第2リングギヤR2に連結されて横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられることにより成立する。
また、第8変速段「8th」は、減速ブレーキB0が係合させられることにより第1キャリヤCA1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることで成立する。
また、本第10実施例では、3つの後進変速段が可能であり、最も変速比の大きい第1後進変速段「Rev1」は、減速ブレーキB0が係合させられることにより第1キャリヤCA1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられるとともに、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。また、第2後進変速段「Rev2」および第3後進変速段「Rev3」は、それぞれ、前述の第8実施例の第1後進変速段および第2後進変速段と同じ係合パターンにより成立する。
図27は、第10実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置176、第2遊星歯車装置178、第3遊星歯車装置180、第4遊星歯車装置182の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図27に示す各変速段の変速比が得られる。この図27に示すものも、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.630とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.457/0.630)も7.079程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第7変速段と第8変速段との間、および第8変速段と第9変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
以上、説明したように、第10実施例でも、第1変速部172において、第2遊星歯車装置178によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置176が増速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部174へ伝達されて、第2変速部174でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第10実施例の変速機170も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機170の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第11実施例を説明する。図28は本発明の第11実施例の変速機190の構成を説明する骨子図である。この変速機190も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部192および第2変速部194をその順に同軸上に備えている。
第1変速部192は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置196およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置198を主体として構成されており、さらに、減速ブレーキB0および第3クラッチC3を備えている。また、第2変速部194は、ダブルピニオン型の第3遊星歯車装置200およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置202を主体として構成されており、さらに、第1、第2、第4クラッチC1、C2、C4、および第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。
この変速機190は、骨子図としては、前述の第10実施例と同一である。従って、第1遊星歯車装置196が前置遊星歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置198が前置歯車装置として機能する。また、第3遊星歯車装置200、第4遊星歯車装置202がそれぞれ第1、第2後置遊星歯車装置であり、第1回転要素RE1(CA3、S4)が特定回転要素RESであり、第3クラッチC3が第1クラッチ要素であり、第2クラッチC2、第1クラッチC1、第4クラッチC4がそれぞれ第1、第2、第4クラッチ要素であり、第1、第2ブレーキB1、B2が第1、第2ブレーキ要素である。
図29は、第11実施例の変速機190における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図29において、第1変速部192および第2変速部194の各縦線は、いずれも、第10実施例の共線図(図26)と同じ回転要素REを表している。この図29に示される各変速段を、図26の共線図に示される各変速段と比較すると、第1、2、9変速段および第1乃至第3後進変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第3変速段「3rd」は、減速ブレーキB0が係合させられて第1キャリヤCA1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が第2リングギヤR2に連結されて横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられることにより成立する。
また、第4変速段「4th」は、第1遊星歯車装置196が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1および第3クラッチC3が係合させられることにより第4回転要素RE4および第1回転要素RE1がともに横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられることにより成立する。
また、第5変速段「5th」は、第1遊星歯車装置196が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられ、かつ、第4クラッチC4が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第6変速段「6th」は、第1遊星歯車装置196が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられ、かつ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第7変速段「7th」は、第1遊星歯車装置196が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられることにより第2回転要素RE2および第1回転要素RE1がともに入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第8変速段「8th」は、第1遊星歯車装置196が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されるとともに、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられることにより成立する。
図30は、第11実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置196、第2遊星歯車装置198、第3遊星歯車装置200、第4遊星歯車装置202の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図30に示す各変速段の変速比が得られる。この図30に示すものにおいても、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.625とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.996/0.625)も7.993程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第11実施例でも、第1変速部192において、第2遊星歯車装置198によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置196が減速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部194へ伝達されて、第2変速部194でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第11実施例の変速機190も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機190の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第12実施例を説明する。図31は本発明の第12実施例の変速機191の構成を説明する骨子図である。この変速機191も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部193および第2変速部195をその順に同軸上に備えている。
第1変速部193は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置197およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置199を主体として構成されており、さらに、減速ブレーキB0および第3クラッチC3を備えている。また、第2変速部195は、ダブルピニオン型の第3遊星歯車装置201およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置203を主体として構成されており、さらに、第1、第2、第4クラッチC1、C2、C4、および第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。
この変速機191は、骨子図としては、前述の第11実施例と同一である。従って、第1遊星歯車装置197が前置遊星歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置199が前置歯車装置として機能する。また、第3遊星歯車装置201、第4遊星歯車装置203がそれぞれ第1、第2後置遊星歯車装置であり、第1回転要素RE1(CA3、S4)が特定回転要素RESであり、第3クラッチC3が第1クラッチ要素であり、第2クラッチC2、第1クラッチC1、第4クラッチC4がそれぞれ第2、第3、第4クラッチ要素であり、第1、第2ブレーキB1、B2が第1、第2ブレーキ要素である。
図32は、第12実施例の変速機191における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図32において、第1変速部193および第2変速部195の各縦線は、いずれも、第11実施例の共線図(図29)と同じ回転要素REを表している。この図32に示される各変速段を、図29の共線図に示される各変速段と比較すると、第1乃至第8変速段および第1乃至第3後進変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第9変速段「9th」は、減速ブレーキB0が係合させられて第1キャリヤCA1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第10変速段「10th」は、第1遊星歯車装置197が空転状態とされ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されるとともに、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられることにより成立する。
図33は、第12実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置197、第2遊星歯車装置199、第3遊星歯車装置201、第4遊星歯車装置203の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図33に示す各変速段の変速比が得られる。この図33に示すものにおいても、第10変速段のギヤ比(変速比)が0.630とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.767/0.630)も7.571程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第12実施例でも、第1変速部193において、第2遊星歯車装置199によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置197が減速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部195へ伝達されて、第2変速部195でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ10段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第12実施例の変速機191も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機191の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第13実施例を説明する。図34は本発明の第13実施例の変速機205の構成を説明する骨子図である。この変速機205も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部207および第2変速部209をその順に同軸上に備えている。
第1変速部207は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置211およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置213を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第13実施例においては第2遊星歯車装置213が前置歯車装置として機能しており、第2キャリヤCA2が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第2サンギヤS2はケース12に連結されて常時回転停止させられている。また、第2リングギヤR2は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。
一方、第1遊星歯車装置211においては、第1リングギヤR1が入力要素であり、第2キャリヤCA2を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第1サンギヤS1が固定要素であり、減速ブレーキB0を介してケース12に選択的に連結される。そして、第1キャリヤCA1が出力要素であり、減速ブレーキB0が係合させられると第1遊星歯車装置211は減速状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転速度が減速されて第1キャリヤCA1から第2変速部209へ伝達される。一方、減速ブレーキB0が解放させられると第1遊星歯車装置211は空転状態となる。
上記第1変速部207は、さらに、第2遊星歯車装置213よりも第2変速部209側に第1クラッチ要素として機能する第3クラッチC3を備えており、第2遊星歯車装置213の出力要素である第2リングギヤR2は、この第3クラッチC3を介して後述する第2変速部209の第1回転要素RE1と選択的に連結され、また、第1遊星歯車装置211の出力要素である第1キャリヤCA1はこの第1回転要素RE1に連結されている。従って、第13実施例においては、第1回転要素RE1が特定回転要素RESであり、第1遊星歯車装置211が前置遊星歯車装置として機能する。
第2変速部209は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置215、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置217を主体として構成されており、前述の実施例と同様に、第3キャリヤCA3と第4サンギヤS4とが互いに連結されて第1回転要素RE1が構成され、第3リングギヤR3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第3サンギヤS3によって第4回転要素RE4が構成されている。なお、前述のように、この第13実施例では第1回転要素RE1が特定回転要素RESである。
また、第2変速部209は、第2クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチ要素として機能する第1クラッチC1、第4クラッチ要素として機能する第4クラッチC4、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えており、第1クラッチC1は第3遊星歯車装置215よりも第1変速部207側に配置される一方、第2、第4クラッチC2、C4は第4遊星歯車装置217よりも出力軸26側に配置されている。
第1クラッチC1は第4回転要素RE4と第2リングギヤR2とを選択的に連結し、第2クラッチC2は入力軸16と第2回転要素RE2とを選択的に連結し、第4クラッチC4は入力軸16と第1回転要素RE1とを選択的に連結する。また、第1ブレーキB1は第1回転要素RE1を選択的にケース12に連結して回転停止させ、第2ブレーキB2は第2回転要素RE2を選択的にケース12に連結して回転停止させる。また、第3回転要素RE3は出力軸26に連結されている。
図35は、第13実施例の変速機205における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図35において、第1変速部207の各縦線は、左側から順番に、第1サンギヤS1、第2サンギヤS2、第1キャリヤCA1および第2リングギヤR2、第1リングギヤR1および第2キャリヤCA2であり、前置歯車装置として機能する側の遊星歯車装置(すなわち第13実施例では第2遊星歯車装置213)の各要素の回転速度は直線L2と縦線との交点で示される一方、前置遊星歯車装置(すなわち第13実施例では第1遊星歯車装置211)の各要素の回転速度は、減速ブレーキB0が係合させられた減速状態の回転速度が直線L1と縦線との交点で示され、第3クラッチC3が係合させられたときの回転速度が直線L2で示される。
また、第2変速部209の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RE1すなわち特定回転要素RES(CA3、S4)、第2回転要素RE2(R3、CA4)、第3回転要素RE3(R4)、第4回転要素RE4(S3)を表している。また、第1回転要素RE1の回転速度は、減速ブレーキB0が係合させられたときは横線XL1(<1)となり、第3クラッチC3が係合させられたときは横線XL2(<XL1)となる。なお、減速ブレーキB0および第3クラッチC3は、常に少なくとも一方が解放状態とされる。
次に、この共線図に基づいて変速機205の変速段について説明する。この図35に示される各変速段を、図32の共線図に示される各変速段と比較すると、第3変速段および第4変速段、第8変速段および第9変速段、並びに第1後進ギヤ段および第2後進ギヤ段を除く変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第3変速段「3th」は、第1遊星歯車装置211が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合されることにより第4回転要素RE4が第2リングギヤR2に連結されて横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられるとともに、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が第2リングギヤR2に連結されて横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられることにより成立する。
また、第4変速段「4th」は、減速ブレーキB0が係合させられることにより第1キャリヤCA1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が第2リングギヤR2に連結されて横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられることにより成立する。
また、第8変速段「8th」は、減速ブレーキB0が係合させられることにより第1キャリヤCA1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第9変速段「9th」は、第1遊星歯車装置211が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されるとともに、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が第2リングギヤR2に連結されて横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられることにより成立する。
また、第1後進変速段「Rev1」は、第3クラッチC3が係合させられることにより第1回転要素RE1が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられるとともに、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
また、第2後進変速段「Rev2」は、減速ブレーキB0が係合させられることにより第1キャリヤCA1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられるとともに、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
図36は、第13実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置211、第2遊星歯車装置213、第3遊星歯車装置215、第4遊星歯車装置217の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図36に示す各変速段の変速比が得られる。この図36に示すものも、第10変速段のギヤ比(変速比)が0.658とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=5.123/0.658)も7.787程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第8変速段と第9変速段との間、および第9変速段と第10変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
以上、説明したように、第13実施例でも、第1変速部207において、第2遊星歯車装置213によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置211が減速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部209へ伝達されて、第2変速部209でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ10段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第13実施例の変速機205も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機205の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第14実施例を説明する。図37は本発明の第14実施例の変速機210の構成を説明する骨子図である。この変速機210も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部212および第2変速部214をその順に同軸上に備えている。
第1変速部212は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置216およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置218を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。さらに、第1変速部212は、第2遊星歯車装置218よりも第2変速部214側に減速クラッチC0を備えるとともに、第1遊星歯車装置216と第2遊星歯車装置218との間に第3クラッチC3を備えている。この第1変速部212を、第8実施例の第1変速部132と比較すると、第1クラッチC1が第3クラッチC3に置き換えられているのみであり、その他は同一の構成を有している。従って、第1遊星歯車装置216が前置歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置218が前置遊星歯車装置として機能し、第3クラッチC3が第1クラッチ要素として機能する。
第2変速部214は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置220、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置222を主体として構成されており、前述の実施例と同様に、第3キャリヤCA3と第4サンギヤS4とが互いに連結されて第1回転要素RE1が構成され、第3リングギヤR3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第3サンギヤS3によって第4回転要素RE4が構成されている。また、この第12実施例では第1回転要素RE1が特定回転要素RESであり、第1回転要素RE1は第2遊星歯車装置218の出力要素である第2キャリヤCA2に連結されている。また、第3回転要素RE3(R4)は出力軸26に連結されている。
また、第2変速部214は、第3遊星歯車装置220よりも第1変速部212側に第3クラッチ要素として機能する第1クラッチC1を備え、第4遊星歯車装置222よりも出力軸26側に第2、第4クラッチ要素として機能する第2、第4クラッチC2、C4を備えている。さらに、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。第2、第4クラッチC2、C4、および第1、第2ブレーキB1、B2の回転要素REに対する連結関係は前述の第8実施例と同様である。また、第1クラッチC1は第4回転要素RE4(S3)と第1リングギヤR1を選択的に連結する。
図38は、第14実施例の変速機210における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図38において、第1変速部212および第2変速部214の各縦線は、いずれも、第8実施例の共線図(図20)と同じ回転要素REを表している。この図32に示される各変速段を、図20の共線図に示される各変速段と比較すると、第4変速段乃至第6変速段を除く変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第4変速段「4th」は、減速クラッチC0が係合させられて第2キャリヤCA2およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL1で示される第1減速回転速度で減速回転させられるとともに、第1クラッチC1が係合させられて第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられている第1リングギヤR1に連結されることにより成立する。
また、第5変速段「5th」は、第2遊星歯車装置218が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられて第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられている第1リングギヤR1に連結され、かつ、第4クラッチC4が係合させられて第1回転要素RE1が入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第6変速段「6th」は、第2遊星歯車装置218が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられて第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられている第1リングギヤR1に連結され、かつ、第2クラッチC2が係合させられて第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることにより成立する。
図39は、第14実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置216、第2遊星歯車装置218、第3遊星歯車装置220、第4遊星歯車装置222の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図39に示す各変速段の変速比が得られる。この図39に示すものにおいても、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.658とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=5.780/0.658)も8.786程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第14実施例でも、第1変速部212において、第1遊星歯車装置216によって減速回転が作られるとともに、第2遊星歯車装置218が減速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部214へ伝達されて、第2変速部214でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第14実施例の変速機210も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機210の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第15実施例を説明する。図40は本発明の第15実施例の変速機219の構成を説明する骨子図である。この変速機219も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部221および第2変速部223をその順に同軸上に備えている。
第1変速部221は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置225およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置227を主体として構成されており、さらに、減速クラッチC0および第3クラッチC3を備えている。また、第2変速部223は、ダブルピニオン型の第3遊星歯車装置229およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置231を主体として構成されており、さらに、第1、第2、第4クラッチC1、C2、C4、および第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。
この変速機219は、骨子図としては、前述の第14実施例と同一である。従って、第1遊星歯車装置225が前置歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置227が前置遊星歯車装置として機能する。また、第3遊星歯車装置229、第4遊星歯車装置231がそれぞれ第1、第2後置遊星歯車装置であり、第1回転要素RE1(CA3、S4)が特定回転要素RESであり、第3クラッチC3が第1クラッチ要素であり、第2クラッチC2、第1クラッチC1、第4クラッチC4がそれぞれ第2、第3、第4クラッチ要素であり、第1、第2ブレーキB1、B2が第1、第2ブレーキ要素である。
図41は、第15実施例の変速機219における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図41において、第1変速部221および第2変速部223の各縦線は、いずれも、第14実施例の共線図(図38)と同じ回転要素REを表している。この図41に示される各変速段を、図38の共線図に示される各変速段と比較すると、第8乃至第10変速段、並びに第2後進ギヤ段および第3後進ギヤ段を除く変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第8変速段「8th」は、減速クラッチC0が係合させられて第2キャリヤCA2およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第9変速段「9th」は、第2遊星歯車装置227が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられて第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、第3クラッチC3が係合させられて第1回転要素が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられることにより成立する。
また、第10変速段「10th」は、第2遊星歯車装置227が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられることにより成立する。
また、第2後進変速段「Rev2」は、減速クラッチC0が係合させられることにより第2キャリヤCA2およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられるとともに、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
また、第3後進変速段「Rev3」は、第4クラッチC4が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に連結され、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
図42は、第15実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置225、第2遊星歯車装置227、第3遊星歯車装置229、第4遊星歯車装置231の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図42に示す各変速段の変速比が得られる。この図42に示すものにおいても、第10変速段のギヤ比(変速比)が0.658とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.738/0.658)も7.202程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第15実施例でも、第1変速部221において、第1遊星歯車装置225によって減速回転が作られるとともに、第2遊星歯車装置227が減速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部223へ伝達されて、第2変速部223でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ10段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第15実施例の変速機219も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機219の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第16実施例を説明する。図43は本発明の第16実施例の変速機230の構成を説明する骨子図である。この変速機230も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部232および第2変速部234をその順に同軸上に備えている。
第1変速部232は、ダブルピニオン型の第1遊星歯車装置236およびシングルピニオン型の第2遊星歯車装置238を主体として構成されており、さらに、減速クラッチC0および第3クラッチC3を備えている。また、第2変速部234は、ダブルピニオン型の第3遊星歯車装置240およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置242を主体として構成されており、さらに、第1、第2、第4クラッチC1、C2、C4、および第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。
この変速機230は、骨子図としては、前述の第14実施例と同一である。従って、第1遊星歯車装置236が前置歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置238が前置遊星歯車装置として機能する。また、第3遊星歯車装置240、第4遊星歯車装置242がそれぞれ第1、第2後置遊星歯車装置であり、第1回転要素RE1(CA3、S4)が特定回転要素RESであり、第3クラッチC3が第1クラッチ要素であり、第2クラッチC2、第1クラッチC1、第4クラッチC4がそれぞれ第2、第3、第4クラッチ要素であり、第1、第2ブレーキB1、B2が第1、第2ブレーキ要素である。
図44は、第116実施例の変速機230における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図44において、第1変速部232および第2変速部234の各縦線は、いずれも、第14実施例の共線図(図38)と同じ回転要素REを表している。この図38に示される各変速段を、図44の共線図に示される各変速段と比較すると、第4乃至第7変速段を除く変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第4変速段「4th」は、第1遊星歯車装置236が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられて第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられている第1リングギヤR1に連結され、かつ、第4クラッチC4が係合させられて第1回転要素RE1が入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第5変速段「5th」は、第1遊星歯車装置236が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられて第4回転要素RE4が横線XL2で示される第2減速回転速度で回転させられている第1リングギヤR1に連結され、かつ、第2クラッチC2が係合させられて第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第6変速段「6th」は、第1遊星歯車装置236が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられることにより第2回転要素RE2および第1回転要素RE1がともに入力軸16に連結されることにより成立する。
また、第7変速段「7th」は、減速クラッチC0が係合させられて第2キャリヤCA2およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XL1で示される第1減速回転速度で回転させられるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されることにより成立する。
図45は、第16実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置236、第2遊星歯車装置238、第3遊星歯車装置240、第4遊星歯車装置242の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図36に示す各変速段の変速比が得られる。この図36に示すものにおいても、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.658とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.816/0.658)も7.321程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第16実施例でも、第1変速部232において、第1遊星歯車装置236によって減速回転が作られるとともに、第2遊星歯車装置238が減速状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部234へ伝達されて、第2変速部234でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第16実施例の変速機230も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機230の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
次に、本発明の第17実施例を説明する。図46は本発明の第17実施例の変速機250の構成を説明する骨子図である。この変速機250も、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部252および第2変速部254をその順に同軸上に備えている。
第1変速部252は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置256およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置258を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第17実施例では、第2遊星歯車装置258が前置歯車装置として機能しており、第2キャリヤCA2が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第2サンギヤS2はケース12に連結されて常時回転停止させられている。また、第2リングギヤR2は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転させられる。
一方、第1遊星歯車装置256おいては、前記第2キャリヤCA2に連結された第1サンギヤS1が入力要素であり、その第2キャリヤCA2を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第1キャリヤCA1が固定要素であり、逆転ブレーキB0を介してケース12に選択的に連結される。そして、第1リングギヤR1が出力要素であり、逆転ブレーキB0が係合させられると第1遊星歯車装置256はその出力要素である第1リングギヤR1が入力軸16に対して逆回転させられる逆転状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転が逆転させられて第1リングギヤR1から第2変速部254へ伝達される。一方、逆転ブレーキB0が解放させられると第1遊星歯車装置256は空転状態となる。
上記第1変速部252は、さらに、第2遊星歯車装置258よりも第2変速部254側に第1クラッチ要素として機能する減速クラッチC0を備えており、第2遊星歯車装置258の出力要素であって入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2は、この減速クラッチC0を介して後述する第2変速部254の第1回転要素RE1と選択的に連結され、また、第1遊星歯車装置256の出力要素である第1リングギヤR1はその第1回転要素RE1に連結されている。従って、第17実施例においては第1回転要素RE1が特定回転要素RESであり、第1遊星歯車装置256が前置遊星歯車装置として機能する。
第2変速部254は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置260、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置262を主体として構成されている。そして、第3キャリヤCA3と第4サンギヤS4とが互いに連結されて第1回転要素RE1が構成され、第3リングギヤR3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第3サンギヤS3によって第4回転要素RE4が構成されている。なお、前述のように、本実施例では第1回転要素RE1が特定回転要素RESである。
また、第2変速部254は、第2クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチ要素として機能する第1クラッチC1、第4クラッチ要素として機能する第4クラッチC4、および第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えており、第2クラッチC2および第4クラッチC4は第4遊星歯車装置262よりも出力軸26側に配置され、第1クラッチC1および第1ブレーキB1は第3遊星歯車装置260よりも第1変速部252側に配置され、第2ブレーキB2は第3遊星歯車装置260と第4遊星歯車装置262との間に配置されている。
第2クラッチC2は入力軸16と第2回転要素RE2(R3、CA4)とを選択的に連結し、第1クラッチC1は第2リングギヤR2と第4回転要素RE4(S3)とを選択的に連結し、第4クラッチC4は入力軸16と第1回転要素RE1(CA3、S4)とを選択的に連結している。また、第1ブレーキB1は第1回転要素RE1(CA3、S4)を選択的にケース12に連結して回転停止させ、第2ブレーキB2は第2回転要素RE2(R3、CA4)を選択的にケース12に連結して回転停止させる。また、第3回転要素RE3(R4)は出力軸26に連結されている。
図47は、第17実施例の変速機250における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図47において、第1変速部252の各縦線は、左側から順番に、第2サンギヤS2、第1リングギヤR1および第2リングギヤR2、第1キャリヤCA1、第1サンギヤS1および第2キャリヤCA2を表しており、前置歯車装置として機能する側の遊星歯車装置(すなわち第17実施例では第2遊星歯車装置258)の各要素の回転速度は直線L2と縦線との交点で示される一方、前置遊星歯車装置(すなわち第17実施例では第1遊星歯車装置256)の各要素の回転速度は、逆転ブレーキB0が係合させられた逆転状態の回転速度が直線L1と縦線との交点で示され、減速クラッチC0が係合させられたときの回転速度が直線L2で示される。
また、第2変速部254の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RE1すなわち特定回転要素RES(CA3、S4)、第2回転要素RE2(R3、CA4)、第3回転要素RE3(R4)、第4回転要素RE4(S3)を表している。また、第1回転要素RE1の回転速度は、逆転ブレーキB0が係合させられたときは横線XR(<0)となり、減速クラッチC0が係合させられたときは横線XL(<1)となる。なお、逆転ブレーキB0および減速クラッチC0は、常に少なくとも一方が解放状態とされる。
次に、この共線図に基づいて変速機250の変速段について説明する。まず、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、出力軸26に連結された第3回転要素RE3は「1st」で示す回転速度で回転し、最も大きい変速比の第1変速段「1st」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、減速クラッチC0および第1クラッチC1が係合させられることにより第1回転要素RE1および第4回転要素RE4がともに横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結されると、第3回転要素RE3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第4クラッチC4が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2および第4クラッチC4が係合させられることにより第2回転要素RE2および第1回転要素RE1がともに入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「6th」で示す回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、減速クラッチC0が係合させられて第1回転要素RE1が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、かつ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられ、かつ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「9th」で示す回転速度で回転させられ、第8変速段「8th」よりも変速比が小さい第9変速段「9th」が成立する。
さらに、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、減速クラッチC0が係合させられて第1回転要素RE1が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「Rev1」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置256が空転状態とされるとともに、第4クラッチC4が係合させられることにより第1回転要素RE1が入力軸16に連結され、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「Rev2」で示す回転速度で逆回転させられ、第1後進変速段「Rev1」よりも変速比が小さい第2後進変速段「Rev2」が成立する。
図48は、上記各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置256、第2遊星歯車装置258、第3遊星歯車装置260、第4遊星歯車装置262の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図48に示す各変速段の変速比が得られる。この図48に示すものにあっては、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.588とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.776/0.588)も8.119程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第17実施例でも、第1変速部252において、第2遊星歯車装置258によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置256が逆転状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部254へ伝達されて、第2変速部254でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第17実施例の変速機250も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機250の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
ここで、変速機250は、図49に示される共線図に基づいて前進9速、後進2速の変速段を成立させることができる。この図49に示される共線図を前述の共線図(図47)と比較すると、第2変速段乃至第9変速段、並びに第1後進変速段および第2後進変速段は、同一のクラッチおよびブレーキの係合によって成立する。
一方、第1変速段「1st」は、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられ、かつ、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結されることで成立する。
図50は、図49の共線図に基づいて、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置256、第2遊星歯車装置258、第3遊星歯車装置260、第4遊星歯車装置262の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図50に示す各変速段の変速比が得られる。この図50に示すものも、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.599と比較的ハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.262/0.599)も7.120程度と比較的大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第7変速段と第8変速段との間、および第8変速段と第9変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
これより、上述したような係合の組合せ、並びに各遊星歯車装置のギヤ比を適宜定めることによっても、第1変速部252において、第2遊星歯車装置258によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置256が逆転状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部254へ伝達されて、第2変速部254でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
次に、本発明の第18実施例を説明する。図51は本発明の第18実施例の変速機270の構成を説明する骨子図である。この変速機270も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部272および第2変速部274をその順に同軸上に備えている。
第1変速部272は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置276およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置278を主体として構成されており、さらに、減速ブレーキB0および第3クラッチC3を備えている。また、第2変速部274は、ダブルピニオン型の第3遊星歯車装置280およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置282を主体として構成されており、さらに、減速クラッチC0、第1、第2、第4クラッチC1、C2、C4、および、逆転ブレーキB0、第1、第2ブレーキB1、B2を備えている。
この変速機270は、骨子図としては、前述の第17実施例と同一である。従って、第1遊星歯車装置276が前置遊星歯車装置として機能し、第2遊星歯車装置278が前置歯車装置として機能する。また、第3遊星歯車装置280、第4遊星歯車装置282がそれぞれ第1、第2後置遊星歯車装置であり、第1回転要素RE1(CA3、S4)が特定回転要素RESであり、減速クラッチC0が第1クラッチ要素であり、第2クラッチC2、第1クラッチC1、第4クラッチC4がそれぞれ第2、第3、第4クラッチ要素であり、第1、第2ブレーキB1、B2が第1、第2ブレーキ要素である。
図52は、第18実施例の変速機270における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図52において、第1変速部272および第2変速部274の各縦線は、いずれも、第17実施例の共線図(図47)と同じ回転要素REを表している。この図52に示される各変速段を、図47の共線図に示される各変速段と比較すると、第1、第2後進変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。また、第2変速段乃至第9変速段は、それぞれ、第14実施例の第1変速段乃至第8変速段と同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第1変速段「1st」は、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XRで示される速度で入力軸16に対して逆回転させられるとともに、第2ブレーキB2が係合させられて第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
図53は、第18実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置276、第2遊星歯車装置278、第3遊星歯車装置280、第4遊星歯車装置282の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図53に示す各変速段の変速比が得られる。この図53に示すものにおいても、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.649とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.971/0.649)も7.656程度と大きく、全体として適切な変速比特性となっている。
以上、説明したように、第18実施例でも、第1変速部272において、第2遊星歯車装置278によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置276が逆転状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部274へ伝達されて、第2変速部274でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第18実施例の変速機270も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機270の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
また、第18実施例の変速機270において、更にハイギヤな変速比である第10変速段を成立させることもできる。図54に示される共線図は、第18実施例の共線図(図52)に第10変速段を加えたものである。
第10変速段「10th」は、第2クラッチC2が係合させられて、第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられることにより成立する。
図55は、上記第10変速段を加えた係合作動表である。第1変速段乃至第9変速段の係合および変速比は図51と同様である。第10変速段にあっては、ギヤ比が0.574と更にハイギヤとなっており、それに伴うトータルの変速比幅(=4.971/0.574)も8.656程度と更に大きく、しかも、第9変速段および第10変速段の間のギヤ比ステップは1.131程度と小さいことから全体として適切な変速比特性となっている。
次に、本発明の第19実施例を説明する。図56は本発明の第19実施例の変速機290の構成を説明する骨子図である。この変速機290も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部292および第2変速部294をその順に同軸上に備えている。
第1変速部292は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置296およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置298を主体として構成されており、それらがトルクコンバータ14側から順に配置されている。第19実施例においては第2遊星歯車装置298が前置歯車装置として機能しており、第2キャリヤCA2が入力軸16に連結されて回転駆動させられ、第2サンギヤS2はケース12に連結されて常時回転停止させられている。また、第2リングギヤR2は出力要素であり、入力軸16に対して常に一定の減速比で回転駆動させられる。
一方、第1遊星歯車装置296おいては、第1サンギヤS1が入力要素であり、第2キャリヤCA2を介して入力軸16の回転がそのままの速度で選択的に入力され、第1キャリヤCA1が固定要素であり、逆転ブレーキB0を介してケース12に選択的に連結される。そして、第1リングギヤR1が出力要素であり、逆転ブレーキB0が係合させられると第1遊星歯車装置296はその出力要素である第1リングギヤR1が入力軸16に対して逆回転させられる逆転状態すなわち変速状態となり、入力軸16の回転が逆転させられて第1リングギヤR1から第2変速部294へ伝達される。一方、逆転ブレーキB0が解放させられると第1遊星歯車装置296は空転状態となる。
上記第1変速部292は、さらに、第2遊星歯車装置298よりも第2変速部294側に第1クラッチ要素として機能する減速クラッチC0を備えており、第2遊星歯車装置298の出力要素である第2リングギヤR2は、この減速クラッチC0を介して第2変速部294の第1回転要素RE1と選択的に連結され、また、第1遊星歯車装置296の出力要素である第1リングギヤR1はこの第1回転要素RE1に連結されている。従って、第16実施例においては、第1回転要素RE1が特定回転要素RESであり、第1遊星歯車装置296が前置遊星歯車装置として機能する。
さらに、第1変速部292には、第1遊星歯車装置296と第2遊星歯車装置298との間に第4クラッチ要素として機能する第4クラッチC4を備えている。ただし、第4クラッチC4は機能的には、第2変速部294に含まれる。この第4クラッチC4は、第2キャリヤCA2と第1回転要素RE1とを選択的に連結しており、第2キャリヤCA2は入力軸16に連結されていることから、第4クラッチC4により第1回転要素RE1は入力軸16と選択的に連結される。
第2変速部294は、第1後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第3遊星歯車装置300、および第2後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第4遊星歯車装置302を主体として構成されている。そして、第3サンギヤS3により第1回転要素RE1が構成され、第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが互いに連結されて第4回転要素RE4が構成されている。
また、第2変速部294は、第2クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチ要素として機能する第1クラッチC1、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えており、第1クラッチC1は第3遊星歯車装置300よりも第1変速部292側に配置される一方、第2クラッチC2は第4遊星歯車装置302よりも出力軸26側に配置されている。
第1クラッチC1は第4回転要素RE4と第2リングギヤR2とを選択的に連結し、第2クラッチC2は入力軸16と第2回転要素RE2とを選択的に連結する。また、第1ブレーキB1は第1回転要素RE1を選択的にケース12に連結して回転停止させ、第2ブレーキB2は第2回転要素RE2を選択的にケース12に連結して回転停止させる。また、第3回転要素RE3は出力軸26に連結されている。
図57は、第19実施例の変速機290における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図57において、第1変速部292の各縦線は、左側から順番に、第2サンギヤS2、第1リングギヤR1および第2リングギヤR2、第1キャリヤCA1、第1サンギヤS1および第2キャリヤCA2であり、前置歯車装置として機能する側の遊星歯車装置(すなわち第19実施例では第2遊星歯車装置298)の各要素の回転速度は直線L2と縦線との交点で示される一方、前置遊星歯車装置(すなわち第19実施例では第1遊星歯車装置296)の各要素の回転速度は、逆転ブレーキB0が係合させられた逆転状態の回転速度が直線L1と縦線との交点で示され、減速クラッチC0が係合させられたときの回転速度が直線L2で示される。
また、第2変速部294の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RE1すなわち特定回転要素RES(S3)、第2回転要素RE2(CA3、CA4)、第3回転要素RE3(R4)、第4回転要素RE4(R3、S4)を表している。また、第1回転要素RE1の回転速度は、逆転ブレーキB0が係合させられたときは横線XR(<0)となり、減速クラッチC0が係合させられたときは横線XL(0<XL<1)となる。なお、逆転ブレーキB0および減速クラッチC0は、常に少なくとも一方が解放状態とされる。
次に、この共線図に基づいて変速機290の変速段について説明する。この図57に示される各変速段を、第17実施例の共線図(図47)に示される各変速段と比較すると、第1変速段は、同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。また、第3変速段乃至第9変速段は、それぞれ、第18実施例の第2変速段乃至第8変速段と同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。また、後進変速段「Rev」は、第18実施例の第2後進変速段と同一のクラッチC、ブレーキBの係合によって成立する。
一方、第2変速段「2nd」は、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が横線XRで示される速度で入力軸16に対して逆回転させられるとともに、第1クラッチC1が係合させられて第4回転要素RE4が入力軸16に対して減速回転させられている第2リングギヤR2に連結されることで成立する。
図58は、第19実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置296、第2遊星歯車装置298、第3遊星歯車装置300、第4遊星歯車装置302の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図58に示す各変速段の変速比が得られる。この図58に示すものも、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.843と比較的ハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=5.690/0.843)も6.748程度と比較的大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第7変速段と第8変速段との間、および第8変速段と第9変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
以上、説明したように、第19実施例でも、第1変速部292において、第2遊星歯車装置298によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置296が逆転状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部294へ伝達されて、第2変速部294でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第19実施例の変速機290も、クラッチCの数とブレーキBの数とのバランスがよく、しかもそれらの位置が変速機290の軸心方向において比較的分散しているので、それらクラッチCおよびブレーキBへの油路配策も容易となる。
また、第19実施例の変速機290において、更にハイギヤな変速比である第10変速段を成立させることもできる。図59に示される共線図は、前述の共線図(図57)に第10変速段を加えたものである。
第10変速段「10th」は、第2クラッチC2が係合させられて、第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられることにより成立する。
図60は、上記第10変速段を加えた係合作動表である。第1変速段乃至第9変速段の係合および変速比は図56と同様である。第10変速段にあっては、ギヤ比が0.777と更にハイギヤとなっており、それに伴うトータルの変速比幅(=5.690/0.777)も7.326程度と更に大きく、しかも、第9変速段および第10変速段の間のギヤ比ステップは1.086程度と小さいことから全体として適切な変速比特性となっている。
ここで、変速機290は、図61に示される共線図に基づいて前進9速、後進2速の変速段を成立させることができる。この図61に示される共線図を前述の第19実施例の共線図(図57)と比較すると、第2変速段乃至第9変速段、並びに第1後進変速段および第2後進変速段は、同一のクラッチおよびブレーキの係合によって成立する。
一方、第1変速段「1st」は、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられ、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
図62は、図61の共線図に基づいて、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置296、第2遊星歯車装置298、第3遊星歯車装置300、第4遊星歯車装置302の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図62に示す各変速段の変速比が得られる。この図62に示すものも、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.848と比較的ハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=9.584/0.848)も11.299程度と比較的大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第7変速段と第8変速段との間、および第8変速段と第9変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
これより、上述したような係合の組合せ、並びに各遊星歯車装置のギヤ比を適宜定めることによっても、第1変速部292において、第2遊星歯車装置298によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置296が逆転状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部294へ伝達されて、第2変速部294でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
また、第19実施例の変速機290において、更にハイギヤな変速比である第10変速段を成立させることもできる。図63に示される共線図は、前述の共線図(図61)に第10変速段を加えたものである。
第10変速段「10th」は、第2クラッチC2が係合させられて、第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられることにより成立する。
図64は、上記第10変速段を加えた係合作動表である。第1変速段乃至第9変速段の係合および変速比は図62と同様である。第10変速段にあっては、ギヤ比が0.779と更にハイギヤとなっており、それに伴うトータルの変速比幅(=9.584/0.779)も12.299程度と更に大きく、しかも、第9変速段および第10変速段の間のギヤ比ステップは1.089程度と小さいことから全体として適切な変速比特性となっている。
ここで、変速機290は、図65に示される共線図に基づいて前進11速、後進2速の変速段を成立させることができる。この図65に示される共線図を前述の共線図(図63)と比較すると、第3変速段乃至第11変速段は、図63の共線図に示される第2変速段乃至第10変速段に対応し、第1後進変速段および第2後進変速段は、同一のクラッチおよびブレーキの係合によって成立する。
一方、第1変速段「1st」は、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられ、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
第2変速段「2nd」は、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置296が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられることにより成立する。
図66は、図65の共線図に基づいて、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置296、第2遊星歯車装置298、第3遊星歯車装置300、第4遊星歯車装置302の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図66に示す各変速段の変速比が得られる。この図66に示すものも、第11変速段のギヤ比(変速比)が0.777と比較的ハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=9.854/0.777)も12.688程度と比較的大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第9変速段と第10変速段との間、および第10変速段と第11変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
さらに、本実施例の変速機290では、第1変速段のギヤ比が「9.854」と非常にローギヤな設定とすることが可能になる。これにより、例えば、従来の4WD車両などではトランスファー内においてローギヤまたはハイギヤの切替え機構を備え、悪路走破やぬかるみからの脱出の際に「1st」よりも低いローギヤが使用され、この切替え機構のためトランスファーが大型化し、車両重量増加や搭載性の悪化に繋がっていたが、本実施例の変速機290では、第1変速段を非常にローギヤな設定とすることができるため、このトランスファーの切替え機構をなくすことができ、トランスファーの簡素化及び軽量化が可能となる。
次に、本発明の第20実施例を説明する。図67は本発明の第20実施例の変速機310の構成を説明する骨子図である。この変速機310も、前述の実施例と同様に、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、第1変速部312および第2変速部314をその順に同軸上に備えている。
第1変速部312は、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置316およびダブルピニオン型の第2遊星歯車装置318を主体として構成されており、第4クラッチC4が備えられていないこと以外は、前述の第19実施例と同一の構成を有している。従って、第1遊星歯車装置316が前置遊星歯車装置であり、第2遊星歯車装置318が前置歯車装置であり、減速クラッチC0が第1クラッチ要素として機能する。
第2変速部314は、第1後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第3遊星歯車装置320、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置322を主体として構成されている。そして、第3サンギヤS3により第1回転要素RE1が構成され、第3キャリヤCA3と第4リングギヤR4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第3リングギヤR3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第3回転要素RE3が構成され、第4サンギヤS4によって第4回転要素RE4が構成されている。なお、本実施例では、第1回転要素RE1が特定回転要素RESである。
また、第2変速部314は、第2クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチ要素として機能する第1クラッチC1、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えており、第1、第2クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は第3遊星歯車装置320よりも第1変速部312側に配置されている。
第1クラッチC1は第4回転要素RE4と入力軸16とを選択的に連結し、第2クラッチC2は第2回転要素RE2と入力軸16とを選択的に連結する。また、また、第1ブレーキB1は第1回転要素RE1を選択的にケース12に連結して回転停止させ、第2ブレーキB2は第2回転要素RE2を選択的にケース12に連結して回転停止させる。また、第3回転要素RE3は出力軸26に連結されており、第1回転要素RE1は第1リングギヤR1に連結されるとともに、減速クラッチC0を介して第2リングギヤR2に連結されている。
図68は、第20実施例の変速機310における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図68において、第1変速部312は、縦線間の間隔を除いて第19実施例の共線図(図57)の第1変速部292と同一である。
また、第2変速部314の4本の縦線は、左側から順番に第1回転要素RE1すなわち特定回転要素RES(S3)、第2回転要素RE2(CA3、R4)、第3回転要素RE3(R3、CA4)、第4回転要素RE4(S4)を表している。また、第1回転要素RE1の回転速度は、逆転ブレーキB0が係合させられたときは横線XR(<0)となり、減速クラッチC0が係合させられたときは横線XL(0<XL<1)となる。なお、逆転ブレーキB0および減速クラッチC0は、常に少なくとも一方が解放状態とされる。
次に、この共線図に基づいて変速機310の変速段について説明する。まず、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられるとともに、第2ブレーキB2が係合させられて第2回転要素RE2が回転停止させられると、出力軸26に連結された第3回転要素RE3は「1st」で示す回転速度で回転し、最も大きい変速比の第1変速段「1st」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置316が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が入力軸16に連結され、且つ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「2nd」で示す回転速度で回転させられ、第1変速段「1st」よりも変速比が小さい第2変速段「2nd」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「3rd」で示す回転速度で回転させられ、第2変速段「2nd」よりも変速比が小さい第3変速段「3rd」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置316が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が入力軸16に連結され、且つ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「4th」で示す回転速度で回転させられ、第3変速段「3rd」よりも変速比が小さい第4変速段「4th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置316が空転状態とされるとともに、減速クラッチC0が係合させられることにより第1回転要素RE1が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、且つ、第1クラッチC1が係合させられることにより第4回転要素RE4が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「5th」で示す回転速度で回転させられ、第4変速段「4th」よりも変速比が小さい第5変速段「5th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置316が空転状態とされるとともに、第1クラッチC1および第2クラッチC2が係合させられることにより第4回転要素RE4および第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「6th」で示す回転速度で回転させられ、第5変速段「5th」よりも変速比が小さい第6変速段「6th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置316が空転状態とされるとともに、減速クラッチC0が係合させられて第1回転要素RE1が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、かつ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「7th」で示す回転速度で回転させられ、第6変速段「6th」よりも変速比が小さい第7変速段「7th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置316が空転状態とされるとともに、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結され、かつ、第1ブレーキB1が係合させられることにより第1回転要素RE1が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「8th」で示す回転速度で回転させられ、第7変速段「7th」よりも変速比が小さい第8変速段「8th」が成立する。
また、逆転ブレーキB0が係合させられて第1リングギヤR1およびそれに連結された第1回転要素RE1が入力軸16に対して逆回転させられ、かつ、第2クラッチC2が係合させられることにより第2回転要素RE2が入力軸16に連結されると、第3回転要素RE3は「9th」で示す回転速度で回転させられ、第8変速段「8th」よりも変速比が小さい第9変速段「9th」が成立する。
さらに、逆転ブレーキB0が解放されて第1遊星歯車装置316が空転状態とされるとともに、減速クラッチC0が係合させられて第1回転要素RE1が横線XLで示される減速回転速度で回転させられている第2リングギヤR2に連結され、かつ、第2ブレーキB2が係合させられることにより第2回転要素RE2が回転停止させられると、第3回転要素RE3は「Rev」で示す回転速度で逆回転させられ、後進変速段「Rev」が成立する。
図69は、第20実施例における、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表である。第1遊星歯車装置316、第2遊星歯車装置318、第3遊星歯車装置320、第4遊星歯車装置322の各ギヤ比ρ1〜ρ4を適宜定めることにより、図69に示す各変速段の変速比が得られる。この図69に示すものも、第9変速段のギヤ比(変速比)が0.597とハイギヤ比となっており、その他の変速段の変速比やギヤ比ステップ(各変速段間の変速比の比)の値も略適切であり、トータルの変速比幅(=4.822/0.597)も8.075程度と比較的大きく、全体として適切な変速比特性となっている。また、オーバードライブ変速段間(すなわち第7変速段と第8変速段との間、および第8変速段と第9変速段との間)のギヤ比ステップが比較的小さくなる。
以上、説明したように、第20実施例でも、第1変速部312において、第2遊星歯車装置318によって減速回転が作られるとともに、第1遊星歯車装置316が逆転状態とされることによってそれとは別の回転速度が作られ、それら2つの回転速度と入力軸16の回転速度がいずれも選択的に第2変速部314へ伝達されて、第2変速部314でさらに変速させられることによって、バランスの取れたギヤ比を得つつ9段変速が可能となり、且つ、ハイギヤ比が達成できる。
次に、本発明の第21実施例を説明する。図70は本発明の第21実施例の変速機330の構成を説明する骨子図である。この変速機330は、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、前述の第20実施例と同一の第1変速部312、および第2変速部332をその順に同軸上に備えている。
第2変速部332は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置334、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置336を主体として構成されている。そして、第3キャリヤCA3と第4サンギヤS4とが互いに連結されて第1回転要素RE1が構成され、第3リングギヤR3と第4キャリヤCA4とが互いに連結されて第2回転要素RE2が構成され、第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第3サンギヤS3によって第4回転要素RE4が構成されている。なお、本実施例では、第1回転要素RE1が特定回転要素RESである。
また、第2変速部332は、第2クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチ要素として機能する第1クラッチC1、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えており、第1、第2クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は第3遊星歯車装置334よりも第1変速部312側に配置されている。これら第1、第2クラッチC1、C2および第1、第2ブレーキB1の回転要素REに対する連結関係は前述の第20実施例と同一である。
図71は、第21実施例の変速機330における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図71において、第1変速部312部分は前述の第20実施例の共線図(図68)と同一であり、また、第2変速部332部分も回転要素を基準とすれば図68と同一である。従って、共線図は回転要素に基づけば第20実施例と同一となる。また、共線図が同一となることから、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表は、前述の図69に示すものとなる。従って、第21実施例は第20実施例と同一の効果が得られる。
次に、本発明の第22実施例を説明する。図72は本発明の第22実施例の変速機340の構成を説明する骨子図である。この変速機340は、トルクコンバータ14と出力軸26との間に、前述の第20実施例と同一の第1変速部312、および第2変速部342をその順に同軸上に備えている。
第2変速部342は、第1後置遊星歯車装置としてのダブルピニオン型の第3遊星歯車装置344、および第2後置遊星歯車装置としてのシングルピニオン型の第4遊星歯車装置346を主体として構成されている。この第3遊星歯車装置344および第4遊星歯車装置346は、キャリヤ同士、リングギヤ同士が互いに連結されて共用化されている所謂ラビニヨ型となっている。すなわち、第4遊星歯車装置346は、第4サンギヤS4、互いに噛み合う複数対の第4ピニオンギヤP4、その第4ピニオンギヤP4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4ピニオンギヤP4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、第3遊星歯車装置344は、上記第4サンギヤS4よりも大径の第3サンギヤS3、第4遊星歯車P4のいずれか一つと共通の第3遊星歯車P3、第4キャリヤCA4と共通の第3キャリヤCA3、第4遊星歯車P4を介して第3サンギヤS3と噛み合う第4リングギヤR4と共通の第3リングギヤR3を備えている。このように、第3遊星歯車装置344および第4遊星歯車装置346がラビニヨ式遊星歯車列とされていることから、第2変速部342がコンパクトになる。
上記第2変速部342においては、第3サンギヤS3によって第1回転要素RE1が構成され、共用化された第3キャリヤCA3および第4キャリヤCA4によって第2回転要素RE2が構成され、共用化された第3リングギヤR3および第4リングギヤR4によって第3回転要素RE3が構成され、第4サンギヤS4によって第4回転要素RE4が構成されている。なお、本実施例では、第1回転要素RE1が特定回転要素RESである。
また、第2変速部342は、第2クラッチ要素として機能する第2クラッチC2、第3クラッチ要素として機能する第1クラッチC1、および、第1、第2ブレーキ要素として機能する第1、第2ブレーキB1、B2を備えており、第1、第2クラッチC1、C2および第1ブレーキB1は第3遊星歯車装置344よりも第1変速部312側に配置されている。これら第1、第2クラッチC1、C2および第1、第2ブレーキB1の回転要素REに対する連結関係は前述の第20実施例と同一である。
図73は、第22実施例の変速機340における、各回転要素の回転速度を直線で表すことができる共線図である。図73において、第1変速部312部分は前述の第20実施例の共線図(図68)と同一であり、また、第2変速部342部分も回転要素を基準とすれば図68と同一である。従って、共線図は回転要素に基づけば第20実施例と同一となる。また、共線図が同一となることから、各変速段を成立させる際の係合要素および変速比を説明する作動表は、前述の図69に示すものとなる。従って、第22実施例は第20実施例と同一の効果が得られる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、上述したのはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。