図1は、本発明が適用される車両用駆動装置8を説明するための骨子図である。図1において、車両用駆動装置8は、例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン14と、そのエンジン14からの駆動力を駆動輪40に伝達する車両用動力伝達装置10(以下、「動力伝達装置10」という)とから構成されている。そして、動力伝達装置10は、車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスアクスル(T/A)ケース12(以下、「ケース12」という)内において、エンジン14側から順番に、そのエンジン14の出力軸(例えばクランク軸)に作動的に連結されてエンジン14からのトルク変動等による脈動を吸収するダンパー16、そのダンパー16を介してエンジン14によって回転駆動させられる入力軸18、第1電動機M1、動力分配機構として機能する第1遊星歯車装置20、減速装置として機能する第2遊星歯車装置22、および、駆動輪40(図4参照)に動力伝達可能に連結された第2電動機M2を備えている。
この動力伝達装置10は、例えば前輪駆動すなわちFF(フロントエンジン・フロントドライブ)型の車両6の前方に横置きされ、駆動輪40を駆動するために好適に用いられるものである。動力伝達装置10では、エンジン14の動力がカウンタギヤ対32の一方を構成する動力伝達装置10の出力回転部材としての出力歯車24からカウンタギヤ対32、ファイナルギヤ対34、差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸38等を順次介して一対の駆動輪40へ伝達される(図4参照)。このように、本実施例では、入力軸18とエンジン14とはダンパー16を介して作動的に連結されており、エンジン14の出力軸がエンジン14の出力回転部材であることはもちろんであるが、この入力軸18もエンジン14の出力回転部材に相当する。
入力軸18は、両端がボールベアリング26および28によって回転可能に支持されており、一端がダンパー16を介してエンジン14に連結されることでエンジン14により回転駆動させられる。また、他端には潤滑油供給装置としてのオイルポンプ30が連結されており入力軸18が回転駆動されることによりオイルポンプ30が回転駆動させられて、動力伝達装置10の各部例えば第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置22、ボールベアリング26、および28等に潤滑油が供給される。
第1遊星歯車装置20は、エンジン14と駆動輪40との間に連結された差動機構である。具体的に、第1遊星歯車装置20は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、第1サンギヤS1、第1ピニオンギヤP1、その第1ピニオンギヤP1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、および、第1ピニオンギヤP1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。なお、第1キャリヤCA1は本発明の第1回転要素に対応し、第1サンギヤS1は本発明の第2回転要素に対応し、第1リングギヤR1は本発明の第3回転要素に対応する。
そして、第1遊星歯車装置20は、入力軸18に伝達されたエンジン14の出力を機械的に分配する機械的な動力分配機構であって、エンジン14の出力を第1電動機M1および出力歯車24に分配する。つまり、この第1遊星歯車装置20においては、第1キャリヤCA1は入力軸18すなわちエンジン14に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は出力歯車24に連結されている。これより、第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1は、それぞれ相互に相対回転可能となることから、エンジン14の出力が第1電動機M1および出力歯車24に分配されると共に、第1電動機M1に分配されたエンジン14の出力で第1電動機M1が発電され、その発電された電気エネルギが蓄電されたりその電気エネルギで第2電動機M2が回転駆動されるので、動力伝達装置10は、例えば無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、第1遊星歯車装置20の差動状態が第1電動機M1により制御されることにより、エンジン14の所定回転に拘わらず出力歯車24の回転が連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。
第2遊星歯車装置22は、シングルピニオン型の遊星歯車装置であり、本発明の歯車装置に対応する。第2遊星歯車装置22は、第2サンギヤS2、第2ピニオンギヤP2、その第2ピニオンギヤP2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、および、第2ピニオンギヤP2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を回転要素として備えている。なお、第1遊星歯車装置20のリングギヤR1および第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は一体化された複合歯車となっており、その外周部に出力歯車24が設けられている。
この第2遊星歯車装置22においては、第2キャリヤCA2は非回転部材であるケース12に連結されることで回転が阻止され、第2サンギヤS2は第2電動機M2に連結され、第2リングギヤR2は出力歯車24に連結されている。すなわち、第2電動機M2は出力歯車24と第1遊星歯車装置20のリングギヤR1とに第2遊星歯車装置22を介して連結されている。これにより、例えば発進時などは第2電動機M2が回転駆動することにより、第2サンギヤS2が回転させられ、第2遊星歯車装置22によって減速させられて出力歯車24に回転が伝達される。
本実施例の第1電動機M1及び第2電動機M2は何れも、発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は車両6の駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。更に、第1電動機M1と第2電動機M2とは相互に電力授受可能に構成されている。
図2は、本実施例の車両用駆動装置8を制御するための制御装置である電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン14、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御等の車両制御を実行するものである。
電子制御装置80には、図2に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、エンジン14の回転速度であるエンジン回転速度Neを表すエンジン回転速度センサからの信号、出力歯車24の回転速度NOUT(以下、「出力回転速度NOUT」という)に対応する車速Vを表す車速センサからの信号、フットブレーキ操作を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを表す信号、車両6の前後加速度Gを表す信号、各車輪(すなわち駆動輪40に従動輪を加えた各車輪)の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、「第1電動機回転速度NM1」という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、「第2電動機回転速度NM2」という)を表す信号、蓄電装置56(図4参照)の温度である蓄電装置温度THBATを表す蓄電装置温度センサからの信号、蓄電装置56の充電または放電電流ICDを表す信号、蓄電装置56の電圧VBATを表す信号、蓄電装置56の充電残量(充電状態)SOCを表す信号、シフトレバー44の操作位置(操作ポジション)POPEを検出する為の位置センサであるレバー操作位置センサ48からの操作ポジションPOPEに応じたシフトレバー位置信号、運転者により操作されて動力伝達装置10のシフトポジションPSHをパーキングポジション(Pポジション)以外の非PポジションからPポジションへ切り替える為のPスイッチ46におけるスイッチ操作を表すPスイッチ信号等が、それぞれ供給される。
また、電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図4参照)への制御信号例えばエンジン14の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン14の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン14の点火時期を指令する点火信号、各電動機M1,M2の作動を指令する指令信号、車両走行に関わる車両情報を運転者に明示するために車内の運転者が視認し易い位置に設置された車両情報表示装置52に現在の車速Vを表示するための車速表示制御指令信号、上記車両情報表示装置52にシフトポジションPSHの切替状態を表示するためのシフトポジション表示制御指令信号、Pロックの作動中(パーキングロック状態、Pロック状態)すなわちシフトポジションPSHがPポジションにあることを点灯により明示する為のロック表示ランプとしてのPポジションインジケータランプ50を作動させてPロック状態を表示する為のパーキングロック表示制御指令信号等が、それぞれ出力される。なお、Pポジションインジケータランプ50は、前記車両情報表示装置52の作動(点灯/消灯)とは連動せずに作動させられる表示ランプであって、例えばPスイッチ46に設けられている。
図3は、動力伝達装置10において複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置(操作装置)としてのシフト操作装置42の一例を示す図である。このシフト操作装置42は、例えば運転席の近傍に配設され、複数の操作ポジションPOPEへ操作されるモーメンタリ式の操作子すなわち操作力を解くと元位置(初期位置)へ自動的に復帰する自動復帰式の操作子としてのシフトレバー44と、レバー操作位置センサ48(図2参照)とを備えている。また、本実施例のシフト操作装置42は、動力伝達装置10のシフトポジションPSHをパーキングポジション(Pポジション)としてパーキングロックする為のモーメンタリ式の操作子としてのPスイッチ46をシフトレバー44の近傍に別スイッチとして備えている。
シフトレバー44は、図3に示すように車両6の前後方向または上下方向すなわち縦方向に配列された3つの操作ポジションPOPEであるR操作ポジション(R操作位置)、N操作ポジション(N操作位置)、D操作ポジション(D操作位置)と、それに平行に配列されたM操作ポジション(M操作位置)、B操作ポジション(B操作位置)とへそれぞれ操作されるようになっており、シフト操作装置42は、操作ポジションPOPEに応じたシフトレバー位置信号を電子制御装置80へ出力する。また、シフトレバー44は、R操作ポジションとN操作ポジションとD操作ポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、M操作ポジションとB操作ポジションとの相互間で縦方向に操作可能とされ、更に、N操作ポジションとM操作ポジションとの相互間で上記縦方向に直交する車両の横方向に操作可能とされている。
Pスイッチ46は、例えばモーメンタリ式の押しボタンスイッチであって、運転者等のユーザにより押込み操作される毎にPスイッチ信号を電子制御装置80へ出力する。例えば動力伝達装置10のシフトポジションPSHが非PポジションにあるときにPスイッチ46が押されると、車両6が略停止しているなどの所定の条件が満たされていれば、電子制御装置80によりシフトポジションPSHがPポジションとされる。このPポジションは、動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断され、且つ、よく知られたパーキングロック装置により駆動輪40の回転を機械的に阻止するパーキングロックが実行される駐車ポジションである。また、このPスイッチ46にはPポジションインジケータランプ50が内蔵されており、Pポジションインジケータランプ50はシフトポジションPSHがPポジションとされた場合に点灯される。
シフト操作装置42のM操作ポジションはシフトレバー44の初期位置(ホームポジション)であり、M操作ポジション以外の操作ポジションPOPE(R,N,D,B操作ポジション)へシフト操作されていたとしても、運転者がシフトレバー44を解放すればすなわちシフトレバー44に作用する外力が無くなれば、バネなどの機械的機構によりシフトレバー44はM操作ポジションへ戻るようになっている。シフト操作装置42が各操作ポジションPOPEへシフト操作された際には、電子制御装置80により操作ポジションPOPEに対応したシフトレバー位置信号に基づいてそのシフト操作後の操作ポジションPOPEに対応したシフトポジションPSHに切り替えられると共に、現在のシフトポジションPSHすなわち動力伝達装置10のシフトポジションPSHの状態が車両情報表示装置52に表示される。
各シフトポジションPSHについて説明すると、シフトレバー44がR操作ポジションへシフト操作されることにより選択されるRポジションは、車両を後進させる駆動力が駆動輪40に伝達される後進走行ポジションである。また、シフトレバー44がN操作ポジションへシフト操作されることにより選択されるニュートラルポジション(Nポジション)は、動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断されるニュートラル状態とするための中立ポジションである。また、シフトレバー44がD操作ポジションへシフト操作されることにより選択されるDポジションは、車両6を前進させる駆動力が駆動輪40に伝達される前進走行ポジションである。例えば、電子制御装置80は、シフトポジションPSHがPポジションであるときに、パーキングロックを解除する所定の操作ポジションPOPE(具体的には、R操作ポジション、N操作ポジション、又はD操作ポジション)へシフト操作されたと判断した場合には、ブレーキオン状態BONであるなどの所定の条件が満たされていれば、前記パーキングロック装置を作動させてパーキングロックを解除すると共に、上記シフト操作後の操作ポジションPOPEに対応したシフトポジションPSHへ切り換える。
また、シフトレバー44がB操作ポジションへシフト操作されることにより選択されるBポジションは、Dポジションにおいて例えば第2電動機M2に回生トルクを発生させる回生制動などによりエンジンブレーキ効果を発揮させ駆動輪40の回転を減速させる減速前進走行ポジション(エンジンブレーキレンジ)である。従って、電子制御装置80は、現在のシフトポジションPSHがDポジション以外のシフトポジションであるときにシフトレバー44がB操作ポジションへシフト操作されてもそのシフト操作を無効とし、DポジションであるときのみB操作ポジションへのシフト操作を有効とする。例えば、Pポジションであるときに運転者がB操作ポジションへシフト操作したとしてもシフトポジションPSHはPポジションのまま継続される。
本実施例のシフト操作装置42では、シフトレバー44に作用する外力が無くなればM操作ポジションへ戻されるので、シフトレバー44の操作ポジションPOPEを視認しただけでは選択中のシフトポジションPSHを認識することは出来ない。そのため、運転者の見易い位置に車両情報表示装置52が設けられており、選択中のシフトポジションPSHがPポジションである場合も含めて車両情報表示装置52に表示されるようになっている。
図4は、電子制御装置80に備えられた制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図4に示すように、電子制御装置80は、ハイブリッド制御部であるハイブリッド制御手段82と、動作曲線切替条件判断部である動作曲線切替条件判断手段90と、動作曲線切替制御部である動作曲線切替制御手段92と、エンジン動作制限条件判断部であるエンジン動作制限条件判断手段94と、目標エンジン回転速度制限制御部である目標エンジン回転速度制限制御手段96とを備えている。
図4において、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン14と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて、動力伝達装置10の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力Pe*を算出し、その目標エンジン出力Pe*が得られるエンジン回転速度Neとエンジン14の出力トルクTe(エンジントルクTe)となるようにエンジン14を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。そして、それと共に、エンジン出力Peの目標値である上記目標エンジン出力Pe*が得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるように、動力伝達装置10の変速比γ0をその変速可能な変化範囲内で無段階に制御する。なお、ハイブリッド制御手段82は、上記のように目標エンジン出力Pe*が得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるようにエンジン14を制御するが、その詳細については後述する。
ハイブリッド制御手段82は、上記第1電動機M1の発電量を制御する際、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン14の動力の主要部は機械的に出力歯車24へ伝達されるが、エンジン14の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から出力歯車24へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン14の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。前記蓄電装置56は、例えば、鉛蓄電池などのバッテリ(二次電池)又はキャパシタなどであって、第1電動機M1及び第2電動機M2に電力を供給し且つそれらの各電動機M1,M2から電力の供給を受けることが可能な電気エネルギ源、すなわち、第1電動機M1と第2電動機M2とのそれぞれに対し電力授受可能な電気エネルギ源ある。
また、ハイブリッド制御手段82は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、動力伝達装置10の電気的CVT機能によって、例えば、第1電動機回転速度NM1を制御してエンジン回転速度Neを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御する。つまり、ハイブリッド制御手段82は、第1遊星歯車装置20を介して入力軸18(すなわちエンジン14の出力軸)に作動的に連結される第1電動機M1をその入力軸18に動力伝達可能な駆動装置として機能させることで、第1電動機M1にエンジン14を回転駆動させる。例えば、ハイブリッド制御手段82は車両走行中にエンジン回転速度Neを引き上げる場合には、車速V(駆動輪40)に拘束される出力回転速度NOUTを略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
また、ハイブリッド制御手段82は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64によって電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン14の出力制御を実行する。例えば、ハイブリッド制御手段82は、アクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ60を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、上記エンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段82による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
また、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14の運転を停止した状態で蓄電装置56からの電力により第2電動機M2を駆動してその第2電動機M2のみを車両6の駆動力源とするモータ走行(EV走行)を実行することができる。例えば、このハイブリッド制御手段82によるEV走行は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTe域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。
ハイブリッド制御手段82は、このEV走行時には、運転を停止しているエンジン14の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、動力伝達装置10の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度Neを零乃至略零に維持する。つまり、ハイブリッド制御手段82は、EV走行時には、エンジン14の運転を単に停止させるのではなく、エンジン14の回転も停止させる。ここで、本実施例で燃費とは、例えば、単位燃料消費量当たりの走行距離等であり、燃費の向上とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が長くなることであり、或いは、車両6全体としての燃料消費率(=燃料消費量/駆動輪出力)が小さくなることである。逆に、燃費の低下とはその単位燃料消費量当たりの走行距離が短くなることであり、或いは、車両6全体としての燃料消費率が大きくなることである。
また、ハイブリッド制御手段82は、車両停止中やEV走行中にエンジン14の始動を行うエンジン始動制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1に通電して第1電動機回転速度NM1を引き上げることで、すなわち、第1電動機M1をスタータとして機能させることで、エンジン回転速度Neを完爆可能な所定回転速度Ne’以上に引き上げると共に、所定回転速度Ne’以上にて例えばアイドル回転速度以上の自律回転可能なエンジン回転速度Neにて燃料噴射装置66により燃料を供給(噴射)し点火装置68により点火してエンジン14を始動する。
また、ハイブリッド制御手段82は、エンジン14を駆動力源とするエンジン走行中には、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪40にトルクを付与することにより、エンジン14の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。
また、ハイブリッド制御手段82は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、動力伝達装置10がトルクの伝達を不能な状態すなわち動力伝達装置10内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ第2電動機M2を無負荷状態として動力伝達装置10からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段82は、電動機M1、M2を無負荷状態とすることにより動力伝達装置10をニュートラル状態とすることが可能である。
また、ハイブリッド制御手段82は、アクセルオフの車両減速走行時や制動時には車両の運動エネルギ、すなわち、駆動輪40から第2電動機M2の側へ伝達される逆駆動力により、第2電動機M2を回転駆動させて発電機として作動させ、その第2電動機M2の発電による電気エネルギをインバータ54を介して蓄電装置56へ充電する所謂回生制動を実行する回生ブレーキ制御手段として機能する。
ハイブリッド制御手段82が、目標エンジン出力Pe*が得られるエンジン回転速度NeとエンジントルクTeとなるようにエンジン14を制御することを前述したが、このエンジン制御について以下に詳述する。本実施例では、そのエンジン制御において、ハイブリッド制御手段82は、エンジン駆動制御部すなわちエンジン駆動制御手段として機能して、エンジン14の動作点(エンジン動作点)が予め定められたエンジン14の動作曲線(エンジン動作曲線)に沿うように目標エンジン出力Pe*に基づいて目標エンジン回転速度Ne*及び目標エンジントルクTe*を決定し、エンジン回転速度NeとエンジントルクTeとをそれぞれ、その決定した目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*とに一致させるようにエンジン14を動作させる。ハイブリッド制御手段82は、基本的には上記エンジン動作曲線として基準動作曲線L_STD(図5参照)を採用するが、低エンジン回転速度域では第2遊星歯車装置22から発生するギヤ音を抑えるため、基準動作曲線L_STDに替えて、ギヤ音抑制曲線L01を所定条件のもとで採用することがある。これらのエンジン14の動作曲線L_STD,L01の一例を示した図が図5である。
図5は、エンジン回転速度Neの目標値である目標エンジン回転速度Ne*とエンジントルクTeの目標値である目標エンジントルクTe*とで構成される二次元座標内に、基準動作曲線L_STD(実線)とギヤ音抑制曲線L01(破線)とを表した図であって、目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*とが共に低い領域を抜粋したものである。基準動作曲線L_STDは本発明の第2動作曲線に対応し、ギヤ音抑制曲線L01は本発明の第1動作曲線に対応する。例えば、ハイブリッド制御手段82が基準動作曲線L_STDから目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*とを決定する際には、目標エンジン出力Pe*を示す点を連ねた等パワー曲線と基準動作曲線L_STDとの交点が目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*とを示すことになる。図5の横軸の目盛に記載されたα,β,γは、何れも正の値であって「α<β<γ」の関係にある。
図5に示すように、基準動作曲線L_STDは、運転性能と燃費性能とを両立するように実験的に予め設定されたものであり、目標エンジン回転速度Ne*が大きくなるほど目標エンジントルクTe*が大きくなるように設定されており、目標エンジン回転速度Ne*の下限が1000rpm程度とされている。ギヤ音抑制曲線L01は、基本的には目標エンジン回転速度Ne*が大きくなるほど目標エンジントルクTe*が大きくなる予め設定された動作曲線であるが、目標エンジン回転速度Ne*が、1000+αrpm程度として図5で例示される境界値Cよりも低い範囲では、目標エンジントルクTe*が一定または略一定となる。すなわち、ギヤ音抑制曲線L01は、目標エンジン回転速度Ne*が境界値C未満では、目標エンジン回転速度Ne*に対する目標エンジントルクTe*の変化勾配が所定の変化勾配判定値LNTよりも小さく設定されている。このようなギヤ音抑制曲線L01(第1動作曲線L01)の設定から、上記境界値Cは本発明の下限ガード値に対応しており、目標エンジン回転速度Ne*が境界値C未満である範囲すなわち図5に示す範囲WNE01は本発明のエンジン動作制限範囲に対応する。上記変化勾配判定値LNTは、ギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*を決定する際に、目標エンジン回転速度Ne*と目標エンジントルクTe*との積である目標エンジン出力Pe*の変動に対する目標エンジン回転速度Ne*の変動が、運転者が違和感を覚える程度に大きくなるか否かを判断することができる閾値として実験的に設定されている。
また、基準動作曲線(第2動作曲線)L_STDは、ギヤ音抑制曲線(第1動作曲線)L01に対して同一の目標エンジン出力Pe*で比較すれば目標エンジン回転速度Ne*が低く決定されるエンジン動作曲線である。図5において1つの等パワー曲線LPE上の点PT01と点PT02とを例として説明すれば、基準動作曲線L_STDから決定される目標エンジン回転速度Ne*すなわち点PT02が示す目標エンジン回転速度Ne*は、ギヤ音抑制曲線L01から決定される目標エンジン回転速度Ne*すなわち点PT01が示す目標エンジン回転速度Ne*よりも低いということである。そして、図5のように、ギヤ音抑制曲線L01は、目標エンジン回転速度Ne*が前記境界値Cよりも高い回転速度域で、基準動作曲線L_STDとの交点を有し、その交点が示す目標エンジン回転速度Ne*以下の領域に設定されている。
ハイブリッド制御手段82は、図5に示すような基準動作曲線L_STDまたはギヤ音抑制曲線L01に前記エンジン動作点が沿うようにエンジン14を駆動するが、その前提として基準動作曲線L_STDとギヤ音抑制曲線L01との何れを採用するかを決定する必要があり、そのために動作曲線切替条件判断手段90と動作曲線切替制御手段92とが設けられている。図4に戻り、動作曲線切替条件判断手段90は、所定の動作曲線切替条件が成立したか否かを判断する。その動作曲線切替条件は、第2遊星歯車装置22からギヤ音が発生する可能性が高いと実験的に認められた所定の車両状態において成立するように予め設定されたものである。また、第2遊星歯車装置22からのギヤ音は、エンジン14のアイドリング中(無負荷運転中)よりもエンジン出力Peが高められている負荷運転中であり、且つ、第2電動機M2の出力トルクTM2(以下、「第2電動機トルクTM2」という)が略零であるときに発生し易い。従って、前記動作曲線切替条件の内容は以下の(i),(ii)に限定されるものではないが、本実施例では、前記動作曲線切替条件は、(i)エンジン14が上記負荷運転中であること、(ii)第2電動機トルクTM2が、トルクの零を含む略零である範囲として実験的に予め設定された所定トルク範囲内に入っていること、の2つの条件を何れも満たす場合に成立する。ここで、動作曲線切替条件判断手段90は、第2電動機M2の駆動電流から上記第2電動機トルクTM2を検出する。また、動作曲線切替条件判断手段90は、上記(i)の条件については、例えば、ハイブリッド制御手段82がアクセル開度Accや車速V等に基づいて算出した目標エンジン出力Pe*が、上記負荷運転中か否かを判断するために1kW程度に予め設定されている負荷運転判定値以上である場合に、エンジン14が上記負荷運転中であると判断する。なお、前記動作曲線切替条件は、第2遊星歯車装置22からギヤ音が発生する可能性が高い前記所定の車両状態において成立するように設定されているので、言い換えれば、その所定の車両状態では少なくとも上記動作曲線切替条件が成立する。また、その動作曲線切替条件が成立した場合には、後述するように、前記エンジン動作曲線としてギヤ音抑制曲線L01が選択されるが、そのようにする理由としては、ギヤ音抑制曲線L01が、上記動作曲線切替条件が少なくとも成立する上記所定の車両状態において、前記エンジン動作点が基準動作曲線L_STDに沿うようにエンジン14が動作させられる場合と比較して、第2遊星歯車装置22からのギヤ音が小さくなるように設定されているからである。
動作曲線切替制御手段92は、動作曲線切替条件判断手段90により前記動作曲線切替条件が成立したと判断された場合には、ハイブリッド制御手段82に対し、ギヤ音抑制曲線L01(第1動作曲線L01)から目標エンジン回転速度Ne*を決定するように指令する。具体的にその場合には、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmをONにする。一方で、前記動作曲線切替条件が成立しないと判断された場合には、ハイブリッド制御手段82に対し、基準動作曲線L_STD(第2動作曲線L_STD)から目標エンジン回転速度Ne*を決定するように指令する。具体的にその場合には、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmをOFFにする。
動作曲線切替制御手段92は、上記のように上記動作曲線切替条件に基づいてギヤ音抑制フラグsxnetagtmをONまたはOFFに設定することを、例えば極めて短い周期で逐次行うが、前回のサイクルにおけるギヤ音抑制フラグsxnetagtmの値をそのまま継続する判断条件があってもよい。例えば、動作曲線切替制御手段92は、エンジン14が前記負荷運転中ではないが第2電動機トルクTM2が前記所定トルク範囲内(TM2≒0)であることにより前記動作曲線切替条件が不成立であると判断された場合には、蓄電装置56に対する充電電力(単位は例えばkW)を制限する充電側制限値Winが所定の第1充電制限判定値SKWINTLGLOよりも零に近いか否かを判断し、充電側制限値Winが上記第1充電制限判定値SKWINTLGLOよりも零に近い場合には、前回のサイクルにおけるギヤ音抑制フラグsxnetagtmの値がONであればOFFに切り替えずにONのまま継続してもよい。ここで、充電側制限値Winは充電残量SOCや蓄電装置温度THBAT等に応じて変化し、その充電側制限値Winが零ということは蓄電装置56に対して充電できないことを意味しており、例えば、充電側制限値Winは、充電残量SOCが蓄電装置56の満充電に近い充電状態である場合や蓄電装置56が極低温である場合等に、第1充電制限判定値SKWINTLGLOよりも零に近くなる。また、充電側制限値Winが零に近い場合には上記充電電力を余り充電側に大きくできないためエンジン出力Peを抑える必要があり、目標エンジン出力Pe*が脈動して第2遊星歯車装置22からギヤ音が発生する可能性が高まるので、第1充電制限判定値SKWINTLGLOは、充電側制限値Winが第2遊星歯車装置22からギヤ音が発生する可能性を高める程度に零に近いか否かを判断できるように実験的に予め設定されている。
ハイブリッド制御手段82は、動作曲線切替制御手段92が設定したギヤ音抑制フラグsxnetagtmに従って、エンジン動作点を沿わせるエンジン動作曲線として基準動作曲線L_STDまたはギヤ音抑制曲線L01を選択する。すなわち、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがONである場合には、ギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*を決定しエンジン回転速度Neをその目標エンジン回転速度Ne*に一致させるようにエンジン14を動作させる。その一方で、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがOFFである場合には、基準動作曲線L_STDから目標エンジン回転速度Ne*を決定しエンジン回転速度Neをその目標エンジン回転速度Ne*に一致させるようにエンジン14を動作させる。具体的には、ハイブリッド制御手段82は、以下のようにして目標エンジン回転速度Ne*を逐次決定する。
先ず、ハイブリッド制御手段82は、基準動作曲線L_STDとギヤ音抑制曲線L01とのそれぞれから暫定的に目標エンジン回転速度Ne*を求める。すなわち、ハイブリッド制御手段82は、基準動作曲線L_STD上で目標エンジン出力Pe*を実現するエンジン動作点を求め、そのエンジン動作点が示す目標エンジン回転速度Ne*をベース回転速度snetlgとして逐次決定する。また、ハイブリッド制御手段82は、予め設定されているギヤ音抑制曲線L01上で目標エンジン出力Pe*を実現するエンジン動作点を求め、そのエンジン動作点が示す目標エンジン回転速度Ne*をギヤ音抑制回転速度t_mnettmとして逐次決定する。例えば図5において目標エンジン出力Pe*を示す等パワー曲線が一点鎖線LPEであるとすれば、基準動作曲線L_STD上で目標エンジン出力Pe*を実現するエンジン動作点は点PT02であり、ギヤ音抑制曲線L01上で目標エンジン出力Pe*を実現するエンジン動作点は点PT01であるので、点PT02が示す目標エンジン回転速度Ne*がベース回転速度snetlgであり、点PT01が示す目標エンジン回転速度Ne*がギヤ音抑制回転速度t_mnettmである。
また、ハイブリッド制御手段82は、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがONである場合には回転速度加算値t_netagtmpを時間経過に対する所定の増加割合で増加させる。一方、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがOFFである場合には回転速度加算値t_netagtmpを時間経過に対する所定の減少割合で減少させる。このとき、回転速度加算値t_netagtmpの最小値は零とされており、ハイブリッド制御手段82は、回転速度加算値t_netagtmpを減少させた結果その回転速度加算値t_netagtmpがマイナス値になる場合には零に設定する。また、回転速度加算値t_netagtmpはそれの初期値が零であり、例えばエンジン14が停止する毎に初期化されてもよいし、或いは、イグニッションオフにされる毎に初期化されてもよい。上記所定の増加割合および上記所定の減少割合は、回転速度加算値t_netagtmpを用いて算出される後述の目標エンジン回転速度Ne*が早期且つ滑らかに変化するように実験的に予め定められている。
ハイブリッド制御手段82は、ベース回転速度snetlgに回転速度加算値t_netagtmpを加算して算出目標値CAL1を逐次算出する。上記のように回転速度加算値t_netagtmpを増加させ又は減少させている途中にも、例えば数十msec程度の極めて短い演算周期で上記算出目標値CAL1を逐次算出する。そして、ハイブリッド制御手段82は、その算出目標値CAL1がギヤ音抑制回転速度t_mnettm以下である場合には、その算出目標値CAL1をそのまま目標エンジン回転速度Ne*として逐次決定する。その一方で、上記算出目標値CAL1がギヤ音抑制回転速度t_mnettmよりも大きい場合には、ギヤ音抑制回転速度t_mnettmを目標エンジン回転速度Ne*として逐次決定する。すなわち、ギヤ音抑制回転速度t_mnettmを目標エンジン回転速度Ne*の回転速度上限値として機能させる上限ガードを行う。このギヤ音抑制回転速度t_mnettmを上限とし且つベース回転速度snetlgを下限として算出目標値CAL1から決定された目標エンジン回転速度Ne*が最終的なものであり、この目標エンジン回転速度Ne*にエンジン回転速度Neが一致するようにエンジン14が動作させられる。
以上のようにして、目標エンジン回転速度Ne*はギヤ音抑制フラグsxnetagtmに従ってベース回転速度snetlgまたはギヤ音抑制回転速度t_mnettmに収束させられるので、結果的に、ハイブリッド制御手段82は、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmに従って基準動作曲線L_STDまたはギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*を決定すると言える。
ここで、上述のように、ハイブリッド制御手段82は、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmに従って基準動作曲線L_STDまたはギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*を決定するが、動力伝達装置10のシフトポジションPSHが非走行ポジションすなわちNまたはPポジションである場合には、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmに拘わらず、基準動作曲線L_STDから目標エンジン回転速度Ne*を決定するのが好ましい。基準動作曲線L_STDから目標エンジン回転速度Ne*を決定することとは、言い換えれば、ベース回転速度snetlgをそのまま目標エンジン回転速度Ne*として決定することである。
本実施例では、ハイブリッド制御手段82がギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*を決定する際に、目標エンジン出力Pe*の変動に対して目標エンジン回転速度Ne*が大きく変動することを抑制するため、エンジン動作制限条件判断手段94と目標エンジン回転速度制限制御手段96とが設けられている。エンジン動作制限条件判断手段94は、予め定められたエンジン動作制限条件が成立したか否かを判断する。そのエンジン動作制限条件は、エンジン動作点を沿わせるエンジン動作曲線としてギヤ音抑制曲線L01が採用されたときに運転者に違和感を覚えさせる程にエンジン回転速度Neの変動が大きくなる可能性が高いと実験的に認められた車両状態において成立するように予め設定されている。例えば、その実験的に認められた車両状態に基づいて、車速Vについての低車速判定値Aおよび充電側制限値Winについての第2充電制限判定値Bが予め定められており、上記エンジン動作制限条件は、(i)エンジン14が負荷運転中であること、(ii)車速Vが上記低車速判定値Aよりも低いこと、(iii)充電側制限値Winが上記第2充電制限判定値Bよりも零に近いこと、の3つの条件を何れも満たす場合に成立する。ここで、上記エンジン動作制限条件における上記負荷運転中か否かの判断方法は、前記動作曲線切替条件における上記負荷運転中か否かの判断方法と同じである。また、上記第2充電制限判定値Bは、前記第1充電制限判定値SKWINTLGLOと異なる値であっても同一の値であっても差し支えない。また、上記エンジン動作制限条件の内容は上記(i)〜(iii)に限定されるものではない。
目標エンジン回転速度制限制御手段96は、ハイブリッド制御手段82がギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*を決定する際に、予め定められたエンジン動作制限範囲WNE01(図5参照)内への目標エンジン回転速度Ne*の変化を制限する目標エンジン回転速度制限制御を実行する。本実施例では、この目標エンジン回転速度制限制御を、エンジン動作制限条件判断手段94によって前記エンジン動作制限条件が成立したと判断された場合に実行する。
具体的に、目標エンジン回転速度制限制御手段96は、その目標エンジン回転速度制限制御では、ハイブリッド制御手段82がギヤ音抑制曲線L01から逐次決定するギヤ音抑制回転速度t_mnettmがエンジン動作制限範囲WNE01の上限値である前記境界値C未満とならないように下限ガードする。すなわち、目標エンジン回転速度制限制御手段96は、ハイブリッド制御手段82がギヤ音抑制曲線L01から決定したギヤ音抑制回転速度t_mnettmが境界値C未満であれば、そのギヤ音抑制回転速度t_mnettmを上記境界値Cに設定変更するように、ハイブリッド制御手段82に対して指示する。そして、ハイブリッド制御手段82は、その指示を受けると、上記ギヤ音抑制回転速度t_mnettmの値を境界値Cに設定変更した上で、その境界値Cに設定変更したギヤ音抑制回転速度t_mnettmを目標エンジン回転速度Ne*の回転速度上限値として前記上限ガードを行う。
このように、ハイブリッド制御手段82が、目標エンジン回転速度制限制御手段96からの上記指示に従ってギヤ音抑制回転速度t_mnettmを境界値Cに設定変更した場合においては、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがONである場合に、ハイブリッド制御手段82が逐次決定する目標エンジン回転速度Ne*は上記境界値Cに収束させられるので、目標エンジン回転速度Ne*がエンジン動作制限範囲WNE01内へ変化することが、前記目標エンジン回転速度制限制御の実行により制限されることになる。また、このような上記目標エンジン回転速度制限制御の内容からすれば、上記境界値Cはその目標エンジン回転速度制限制御における目標エンジン回転速度Ne*の下限ガード値であると呼ぶことができ、更に、上記エンジン動作制限範囲WNE01は、上記目標エンジン回転速度制限制御により目標エンジン回転速度Ne*が上記境界値C(下限ガード値C)未満に変化しないように制限される目標エンジン回転速度Ne*の範囲であると言える。
図6は、電子制御装置80の制御作動の第1の要部、すなわち、エンジン動作点を沿わせるエンジン動作曲線として基準動作曲線L_STDとギヤ音抑制曲線L01とのうち何れを選択するかを決定する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。この図6に示す制御作動は、他の制御作動と並列的に実行されるものであり、例えば、後述する図7または図8に示す制御作動と並列的に実行される。
先ず、動作曲線切替条件判断手段90に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1においては、第2電動機トルクTM2が検出される。例えば、第2電動機トルクTM2は第2電動機M2の駆動電流から検出される。SA1の次はSA2に移る。
動作曲線切替条件判断手段90に対応するSA2においては、前記動作曲線切替条件における前記(ii)の条件が満たされているか否か、すなわち、第2電動機トルクTM2が、トルクの零を含む略零である範囲として実験的に予め設定された所定トルク範囲内に入っているか否かが判断される。要するに、第2電動機トルクTM2が零または略零であるか否かが判断される。このとき、第2電動機トルクTM2が上記所定トルク範囲の上限値または下限値付近で脈動することに起因してSA2の判断が頻繁に肯定と否定とを繰り返すことを回避するため、一般的に知られたヒステリシス処理が為された上で、第2電動機トルクTM2が上記所定トルク範囲内に入っているか否かが判断される。このSA2の判断が肯定された場合、すなわち、第2電動機トルクTM2が上記所定トルク範囲内に入っている場合には、SA3に移る。一方、このSA2の判断が否定された場合には、SA7に移る。
動作曲線切替条件判断手段90に対応するSA3においては、前記動作曲線切替条件における前記(i)の条件が満たされているか否か、すなわち、エンジン14が前記負荷運転中であるか否かが判断される。このSA3の判断が肯定された場合、すなわち、エンジン14が上記負荷運転中である場合には、SA5に移る。一方、このSA3の判断が否定された場合には、SA4に移る。
動作曲線切替制御手段92に対応するSA4においては、充電側制限値Winが第1充電制限判定値SKWINTLGLOよりも零に近いか否かが判断される。ここで、本実施例では、蓄電装置56の入出力電力は、蓄電装置56から放電する方向が正方向とされ蓄電装置56へ充電する方向が負方向とされており、上記充電側制限値Winおよび第1充電制限判定値SKWINTLGLOは何れもマイナス値である。従って、充電側制限値Winが第1充電制限判定値SKWINTLGLOよりも零に近いということは、それらの値の正負を考慮すれば、充電側制限値Winが第1充電制限判定値SKWINTLGLOよりも大きいということである。このSA4の判断が肯定された場合、すなわち、充電側制限値Winが第1充電制限判定値SKWINTLGLOよりも零に近い場合には、SA6に移る。一方、このSA4の判断が否定された場合には、SA7に移る。
動作曲線切替制御手段92に対応するSA5においては、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがONにされる。
動作曲線切替制御手段92に対応するSA6においては、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmは変更されず、本フローチャートの前回の実行サイクルにおけるギヤ音抑制フラグsxnetagtmの設定値すなわち前回値がそのまま継続する。
動作曲線切替制御手段92に対応するSA7においては、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがOFFにされる。
図7は、電子制御装置80の制御作動の第2の要部、すなわち、図6のフローチャートにおいて設定されるギヤ音抑制フラグsxnetagtmに応じて目標エンジン出力Pe*に基づき目標エンジン回転速度Ne*を決定する制御作動を説明するためのフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
SB1においては、基準動作曲線L_STD上で目標エンジン出力Pe*を実現するエンジン動作点が求められ、そのエンジン動作点が示す目標エンジン回転速度Ne*がベース回転速度snetlgとして決定される。そのベース回転速度snetlgは、エンジン14のノッキングやエンジン音などを加味して補正されてもよい。SB1の次はSB2に移る。
SB2においては、動力伝達装置10のシフトポジション(シフトレンジ)PSHがNまたはPポジション(レンジ)であるか否かが判断される。このSB2の判断が肯定された場合、すなわち、シフトレンジPSHがNまたはPレンジである場合には、SB3に移る。一方、このSB2の判断が否定された場合、すなわち、シフトレンジPSHがD、B、またはRレンジである場合には、SB4に移る。
SB3においては、ベース回転速度snetlgがそのまま目標エンジン回転速度Ne*として決定される。
SB4においては、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがONであるか否かが判断される。このギヤ音抑制フラグsxnetagtmは図6のフローチャートの実行により逐次決定されるものである。このSB4の判断が肯定された場合、すなわち、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがONである場合には、SB5に移る。一方、このSB4の判断が否定された場合、すなわち、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがOFFである場合には、SB6に移る。
SB5においては、回転速度加算値t_netagtmpが所定の加算側定数SKNETTMUだけ増加させられる。一方で、SB6においては、回転速度加算値t_netagtmpが所定の減算側定数SKNETTMDだけ減少させられる。すなわち、本フローチャートの前回の実行サイクルにおける回転速度加算値t_netagtmpの設定値を前回値snetagtmpとすれば、回転速度加算値t_netagtmpは、SB5では本フローチャートの1サイクル毎に下記式(1)によって更新され、SB6では本フローチャートの1サイクル毎に下記式(2)によって更新される。上記加算側定数SKNETTMUは、正の値であって、回転速度加算値t_netagtmpを時間経過に従って増加させるときの前記所定の増加割合に対応して定まる定数であり、本フローチャートの前記サイクルタイムと上記所定の増加割合との積である。また、上記減算側定数SKNETTMDは、正の値であって、回転速度加算値t_netagtmpを時間経過に従って減少させるときの前記所定の減少割合に対応して定まる定数であり、本フローチャートの前記サイクルタイムと上記所定の減少割合との積である。SB5またはSB6の次はSB7に移る。
t_netagtmp=snetagtmp+SKNETTMU ・・・(1)
t_netagtmp=snetagtmp−SKNETTMD ・・・(2)
SB7においては、回転速度加算値t_netagtmpが零よりも小さいか否か、すなわち、回転速度加算値t_netagtmpがマイナス値であるか否かが判断される。このSB7の判断が肯定された場合、すなわち、回転速度加算値t_netagtmpが零よりも小さい場合には、SB8で回転速度加算値t_netagtmpが零に設定変更されてからSB9に移る。一方、このSB7の判断が否定された場合には、SB9に移る。
SB9においては、図8のフローチャートに示す制御作動が実行される。図8は、このSB9において実行される制御作動を説明するためのフローチャートである。
図8において、ハイブリッド制御手段82に対応するSC1では、ギヤ音抑制曲線L01上で目標エンジン出力Pe*を実現するエンジン動作点が求められ、そのエンジン動作点が示す目標エンジン回転速度Ne*がギヤ音抑制回転速度t_mnettmとして決定される。SC1の次はSC2に移る。
エンジン動作制限条件判断手段94に対応するSC2においては、前記エンジン動作制限条件が成立したか否かが判断される。そのエンジン動作制限条件は、(i)エンジン14が負荷運転中であること、(ii)車速Vが低車速判定値Aよりも低いこと、(iii)充電側制限値Winが第2充電制限判定値Bよりも零に近いこと、の3つの条件を何れも満たす場合に成立する。ここで、上記第2充電制限判定値Bは、充電側制限値Winや第1充電制限判定値SKWINTLGLOと同様にマイナス値であり、充電側制限値Winが第2充電制限判定値Bよりも零に近いということは、それらの値の正負を考慮すれば、充電側制限値Winが第2充電制限判定値Bよりも大きいということである。このSC2の判断が肯定された場合、すなわち、前記エンジン動作制限条件が成立した場合には、SC3に移る。一方、このSC2の判断が否定された場合には、図8のフローチャートは終了する。
目標エンジン回転速度制限制御手段96に対応するSC3においては、前記SC1で決定されたギヤ音抑制回転速度t_mnettmが境界値(下限ガード値)C未満であるか否かが判断される。このSC3の判断が肯定された場合、すなわち、そのギヤ音抑制回転速度t_mnettmが下限ガード値C未満である場合には、ハイブリッド制御手段82及び目標エンジン回転速度制限制御手段96に対応するSC4でギヤ音抑制回転速度t_mnettmが下限ガード値Cに設定変更されてから、図8のフローチャートは終了する。一方、このSC3の判断が否定された場合には、ギヤ音抑制回転速度t_mnettmは特に設定変更されずに図8のフローチャートは終了する。この図8のフローチャートが終了すると、図7のSB9に戻りその次のステップであるSB10に移る。
図7に戻り、SB10においては、算出目標値CAL1が、下記式(3)に示すようにして、ベース回転速度snetlgに回転速度加算値t_netagtmpを加算して算出される。そして、算出目標値CAL1が目標エンジン回転速度Ne*として決定される。但し、目標エンジン回転速度Ne*は、ギヤ音抑制回転速度t_mnettmで前記上限ガードがなされる。すなわち、算出目標値CAL1がギヤ音抑制回転速度t_mnettm以下である場合には算出目標値CAL1はそのまま目標エンジン回転速度Ne*になるが、算出目標値CAL1がギヤ音抑制回転速度t_mnettmよりも大きい場合にはギヤ音抑制回転速度t_mnettmが目標エンジン回転速度Ne*になる。なお、図7のSB1〜SB8、及びSB10は、ハイブリッド制御手段82に対応する。
CAL1=snetlg+t_netagtmp ・・・(3)
本実施例によれば、目標エンジン回転速度制限制御手段96は、ハイブリッド制御手段82がギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*を決定する際に、予め定められたエンジン動作制限範囲WNE01(図5参照)内への目標エンジン回転速度Ne*の変化を制限する前記目標エンジン回転速度制限制御を実行する。そして、図5に示すように、エンジン動作制限範囲WNE01では、目標エンジントルクTe*が一定または略一定となっているので、ギヤ音抑制曲線L01から決定される目標エンジン回転速度Ne*は、目標エンジン出力Pe*の変化が僅かであっても大きく変動することになる。例えば、目標エンジン出力Pe*は、充電側制限値Winが零に近く蓄電装置56に対する充電電力の変動を許容する許容幅が極めて狭い場合、または、目標エンジン出力Pe*が実際のエンジン出力Peにより変動させられ易い場合等に、脈動などの変動を生じ易くなる。従って、目標エンジン回転速度Ne*がギヤ音抑制曲線L01から決定される際には、その目標エンジン回転速度Ne*はエンジン動作制限範囲WNE01から外れて決定されるので、目標エンジン回転速度Ne*に一致するように制御されるエンジン回転速度Neが目標エンジン出力Pe*に連れて大きく変動することを抑えることが可能である。つまり、そのようなエンジン回転速度Neの変動に起因して運転者に違和感を生じさせることを抑えることが可能である。
また、本実施例によれば、目標エンジン回転速度制限制御手段96は、エンジン動作制限条件判断手段94によって前記エンジン動作制限条件が成立したと判断された場合に、前記目標エンジン回転速度制限制御を実行する。ここで、上記目標エンジン回転速度制限制御を実行することはギヤ音抑制曲線L01で実現しようとするエンジン14の動作状態を制限することにつながるところ、上記目標エンジン回転速度制限制御を実行する必要がないときは、上記エンジン動作制限条件の成立または不成立の判断により、ギヤ音抑制曲線L01で実現しようとするエンジン14の動作状態に過剰な制限が加わらないようにすることが可能である。例えば、図5に示すようなギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*が決定される場合において、前記目標エンジン回転速度制限制御が実行されない場合には、その目標エンジン回転速度制限制御が実行される場合と比較して、エンジン回転速度Neの最低回転速度がより下がるので、燃費向上が期待できる。
また、本実施例によれば、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmは前記動作曲線切替条件の成立または不成立に基づいて切り替えられ、目標エンジン回転速度Ne*は、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがONである場合にはギヤ音抑制曲線(第1動作曲線)L01から決定される一方で、ギヤ音抑制フラグsxnetagtmがOFFである場合には基準動作曲線(第2動作曲線)L_STDから決定される。ここで、車両状態が変わればエンジン制御において例えば燃費や快適性や応答性等の重視すべき事項も変わるところ、ギヤ音抑制曲線L01と基準動作曲線L_STDとを前記動作曲線切替条件が成立したか否かを判断して使い分けることで、エンジン制御において重視すべき事項に応じてエンジン14を動作させることが可能である。また、第2遊星歯車装置22からのギヤ音を抑えることの重要性が低いときには、基準動作曲線L_STDから目標エンジン回転速度Ne*を決定するようにして、上記ギヤ音の抑制以外の他の性能たとえば燃費や快適性や応答性等を重視した走行を実現することが可能である。
また、本実施例によれば、ギヤ音抑制曲線L01は、前記動作曲線切替条件が少なくとも成立する所定の車両状態において、エンジン動作点が基準動作曲線L_STDに沿うようにエンジン14が動作させられる場合と比較して、第2遊星歯車装置22から発生するギヤ音が小さくなるように定められている。従って、前記動作曲線切替条件が成立した場合には、エンジン動作点がギヤ音抑制曲線L01に沿うようにエンジン14を動作させることで、第2遊星歯車装置22から発生するギヤ音を抑制することが可能である。
また、本実施例によれば、図5に示すように、ギヤ音抑制曲線L01は、目標エンジン回転速度Ne*が所定の境界値(下限ガード値)C未満では、目標エンジン回転速度Ne*に対する目標エンジントルクTe*の変化勾配が前記変化勾配判定値LNTよりも小さく設定されている。また、エンジン動作制限範囲WNE01は、前記目標エンジン回転速度制限制御により目標エンジン回転速度Ne*が上記境界値C未満に変化しないように制限される目標エンジン回転速度Ne*の範囲である。従って、ギヤ音抑制曲線L01は、低回転速度域で目標エンジン回転速度Ne*に対して目標エンジントルクTe*が殆ど変化しないので、ギヤ音抑制曲線L01から目標エンジン回転速度Ne*を決定する場合に、エンジン回転速度Neを低下させてもエンジントルクTeがあまり低下しないようにエンジン14を制御できる。例えば、図5に示すようなギヤ音抑制曲線L01は、エンジントルクTeをある下限値以下に下げるべきではない場合に有用である。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、前述の実施例の図5には、1つの基準動作曲線L_STDが表されているが、基準動作曲線L_STDは、エンジン14の排気再循環(EGR、Exhaust Gas Recirculation)のオンまたはオフやアクセル開度Acc等に応じて変更されても差し支えない。
また、前述の実施例において、エンジン動作点を沿わせるエンジン動作曲線として、基準動作曲線L_STDとギヤ音抑制曲線L01との何れかがギヤ音抑制フラグsxnetagtmに従って選択されるが、ギヤ音抑制曲線L01が基準動作曲線L_STDよりも目標エンジントルクTe*の低い範囲に存在する領域では、ハイブリッド制御手段82は、基準動作曲線L_STDを用いずにギヤ音抑制曲線L01だけから目標エンジン回転速度Ne*を決定しても差し支えない。
また、前述の実施例の第1遊星歯車装置20において、第1キャリヤCA1はエンジン14に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は出力歯車24に連結されているが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン14、第1電動機M1、出力歯車24は、それぞれ第1遊星歯車装置20の3つの回転要素CA1、S1、R1のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、第2遊星歯車装置22のリングギヤR2は第1遊星歯車装置20のリングギヤR1に対し一体的に連結されているが、上記リングギヤR2の連結先は、上記リングギヤR1に限定されるものではなく、例えば第1遊星歯車装置20の第1キャリヤCA1に連結されていても差し支えない。また、上記リングギヤR2は、上記リングギヤR1ではなく第1遊星歯車装置20と駆動輪40との間の動力伝達経路のどこかに連結されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、車両用駆動装置8は第2電動機M2と駆動輪40との間の動力伝達経路の一部に第2遊星歯車装置22を備えているが、その第2遊星歯車装置22は、遊星歯車装置ではない1対の歯車から構成された歯車装置に置き換えられていても差し支えない。
また、前述の実施例において、ギヤ音抑制曲線L01は、前記動作曲線切替条件が少なくとも成立する所定の車両状態において、エンジン動作点が基準動作曲線L_STDに沿うようにエンジン14が動作させられる場合と比較して、第2遊星歯車装置22からのギヤ音が小さくなるように設定されているが、そのギヤ音抑制以外の目的をもって設定されていても差し支えない。
また、前述の実施例において、図5では、目標エンジン回転速度Ne*の変化を制限するエンジン動作制限範囲WNE01はエンジン回転速度Neの制御範囲内で低速度側に存在するが、そのように低速度側に限定されるものではない。
また、前述の実施例において、出力歯車24と駆動輪40との間の動力伝達経路に変速機は設けられていないが、その動力伝達経路に、手動変速機もしくは自動変速機が設けられていても差し支えない。
また、前述の実施例において、車両用駆動装置8はエンジン14と電動機M1,M2とから構成されたハイブリッド駆動力源を有するが、電動機M1,M2を備えずエンジン14だけを走行用の駆動力源として備えるものであっても差し支えない。
また、前述の実施例において、動力伝達装置10は第1遊星歯車装置20と第2遊星歯車装置22と第1電動機M1とを備えているがこれらは必須ではなく、例えば、第1遊星歯車装置20、第2遊星歯車装置22、及び第1電動機M1を備えてはおらず、エンジン14とクラッチと第2電動機M2と駆動輪40とが直列に連結された所謂パラレルハイブリッド車両であってもよい。このようなパラレルハイブリッド車両では、第2電動機M2の正回転方向はエンジン14の正回転方向と等しくなるので、第2電動機M2の正回転方向は図1の構成に対して逆方向となる。なお、エンジン14と第2電動機M2との間の上記クラッチは必要に応じて設けられるものであるので、上記パラレルハイブリッド車両がそのクラッチを備えていない構成も考え得る。