JP2011217662A - 改変型ルシフェラーゼを大量発現する葉緑体形質転換植物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】改変型ルシフェラーゼを発現する葉緑体形質転換植物、詳細には、特定のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、緑色または赤色ないし橙色に発光する活性を有するポリペプチドから選択される改変型ルシフェラーゼを発現する葉緑体形質転換植物。
【選択図】なし
Description
生物的な癒しの効果を発揮し得る植物を夜間就寝前など、照明を落とした状況下で利用することができれば、植物による癒しの効果を楽しむことができる。
このように、従来暗所の観賞用としては全く利用されなかった植物を暗所においても利用することができれば、栽培植物の新たな需要拡大を図ることができる。
例えば、非特許文献1には、Agrobacteriumによる植物細胞核への遺伝子導入技術を利用し、北米産ホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ蛋白質を発現する形質転換タバコが記載されている。しかしながら、かかる形質転換タバコでは茎などの維管束で発光が認められるものの、葉肉組織などの柔組織では目視できるほど発光しないことが判明している。
[1] 改変型ルシフェラーゼを葉緑体において発現する葉緑体形質転換植物;
[2] 改変型ルシフェラーゼが、高活性および/または安定型のルシフェラーゼである請求項1記載の葉緑体形質転換植物;
[3] 葉および茎の全体で発光する前記[1]または[2]記載の葉緑体形質転換植物;
[4] 緑色に発光する前記[1]ないし[3]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[5] 赤色ないし橙色に発光する前記[1]ないし[3]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[6] 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、配列番号:1のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドから選択される前記[1]ないし[4]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[7] 該改変型ルシフェラーゼが、前記[6]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる前記[1]ないし[4]または[6]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[8] 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:2のポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる前記[7]記載の葉緑体形質転換植物;
[9] 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、配列番号:3のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドから選択される前記[1]、[2]、[3]または[5]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[10] 該改変型ルシフェラーゼが、前記[9]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる前記[1]、[2]、[3]、[5]または[9]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[11] 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:4のポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる前記[10]記載の葉緑体形質転換植物;
[12] 該植物が、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida);イネ(Oryza sativa);ダイズ(Glycine max);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.);レタス(Lactuca sativa);ニンジン(Daucus carota);ワタ(Gossypium spp.);アオウキクサ(Spirodela perpusilla); ポプラ(Populus alba);テンサイ(Beta vulgaris L.);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens);およびクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)よりなる群から選択される前記[1]ないし[11]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[13] 前記[1]ないし[12]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物から得られる改変ルシフェラーゼ酵素;
[14] 改変型ルシフェラーゼを発現する葉緑体形質転換植物の作出方法であって、
(i)生物からルシフェラーゼをコードする野生型遺伝子をクローニングし、安定性および発光効率が向上するようにその遺伝子を改変し、または、発光色が変化するようにその遺伝子を改変し、
(ii)改変したルシフェラーゼ遺伝子を、該遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれて作動するように調製したベクターに組み込み、
(iii)該ベクターを植物の組織に導入し、
(iv)組換え体を選抜し、ついで
(v)選抜した植物組織を培養して葉緑体形質転換植物体を得る
工程を含む該作出方法;
[15] 工程(i)における遺伝子の改変が、配列番号:2で示されるポリヌクレオチドの作製である前記[14]記載の作出方法;
[16] 工程(i)における遺伝子の改変が、配列番号:4で示されるポリヌクレオチドの作製である前記[14]記載の作出方法;
[17] 工程(iii)における植物の組織への導入をパーティクルガンによって行う前記[14]ないし[16]のいずれか1に記載の作出方法;
[18] 該植物が、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida);イネ(Oryza sativa);ダイズ(Glycine max);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.);レタス(Lactuca sativa);ニンジン(Daucus carota);ワタ(Gossypium spp.);アオウキクサ(Spirodela perpusilla);ポプラ(Populus alba);テンサイ(Beta vulgaris L.);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens);およびクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)よりなる群から選択される前記[14]ないし[17]のいずれか1に記載の作出方法;
[19] 前記[1]ないし[12]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物の葉、茎および/または根の切り口からルシフェリン水溶液を吸水させることにより発光させることを特徴とする、葉緑体形質転換植物の発光方法;
[20] 前記[1]ないし[12]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物の植物体表面にルシフェリン水溶液を噴霧することを含む葉緑体形質転換植物の発光方法;
[21] 植物体表面が植物の葉、茎および/または根の表面である前記[20]記載の発光方法;
[22] 前記[1]ないし[12]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物の根からルシフェリン水溶液を吸水させることを含む葉緑体形質転換植物の発光方法、
を提供するものである。
高発光を示す葉緑体形質転換植物を作出するための要件の一つとして、発光酵素(ルシフェラーゼ)を葉緑体において大量蓄積させることが必要である。そこで、本発明者らは、安定性を強化したホタルルシフェラーゼに注目した。一般的に、安定性の高い酵素はさまざまな刺激(熱以外に酸・アルカリ、塩濃度など)に対して安定である場合が多く、宿主生物の細胞内で安定に大量蓄積させることができる。そのような観点から、本発明では、まず、安定性が増強されただけではなく、比活性が野生型酵素の130%にまで増加したと報告されているゲンジボタル(Luciola cruciata)由来ルシフェラーゼ(Lcr-T217I 野生型酵素のアミノ酸ポジション217位のトレオニンがイソロイシンに置換されていることを表し、以下、単に「Lcr-T217I」という。)に注目した(KajiyamaおよびNakano,Biochemistry,32,13795-13799(1993))。しかしながら、「Lcr-T217I」は、ATP消費量当たりの発光効率の点においては北米産ホタル(Photinus pyralis)由来のルシフェラーゼの半分以下であるという問題があった。
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
GL-R1 ggtgtccagacattggtatcctcgataatc[配列番号:6]
(H2断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F1 gattatcgaggataccaatgtctggacacc[配列番号:7]
GL-R2 gcatgagaaaatctaatgactatattt[配列番号:8]
(H3断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F2 aaatatagtcattagattttctcatgc[配列番号:9]
GL-R3 gaacgacagttaaaatagcggtgcctggtg[配列番号:10]
(H4断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F3 caccaggcaccgctattttaactgtcgttc[配列番号:11]
GL-R4 gatatcctttgtatttgattaaagacttc[配列番号:12]
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
GL-R4 gatatcctttgtatttgattaaagacttc[配列番号:12]
を加えてPCR増幅を行い、H1-4断片を大量調製する。このPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングしてpGEM-H1-4を得る。
PL-F1 gatatcaggtggctcccgctgaattggaa[配列番号:13]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
を用いてPCR増幅を行い、そのPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングしてpGEM-H5を得る。
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
HlucR-Rv gcaacagcttcactaacttcttttg[配列番号:15]
(R2断片の増幅に用いたプライマーセット)
HlucR-Fd caaaagaagttagtgaagctgttgc[配列番号:16]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
を加えてPCR増幅を行い、R1-R2断片を大量調製する。このPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングしてpGEM-ABcT291,V239I,G326S-IAVを得る。
改変型ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターから調製したコンストラクトは、公知の植物細胞の形質転換法によって植物葉緑体DNAに導入することができるが、好ましい形質転換法としてはパーティクルガンによる形質転換が挙げられる。
本発明の高活性型および/または安定型の葉緑体形質転換植物の作出方法は、
(i)生物からルシフェラーゼをコードする野生型遺伝子をクローニングし、安定性および発光効率が向上するようにその遺伝子を改変し、または、発光色が変化するようにその遺伝子を改変し、
(ii)改変したルシフェラーゼ遺伝子を、該遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれて作動するように調製したベクターに組み込み、
(iii)該ベクターを植物の組織に導入し、
(iv)組換え体を選抜し、ついで
(v)選抜した植物組織を培養して形質転換植物体を得る
工程を含む。
葉緑体形質転換植物からのこれらの改変型ルシフェラーゼの抽出は、葉緑体形質転換植物の緑葉を抽出バッファー中で摩砕し、摩砕液を遠心分離してその上清を回収することにより行うことができる。
本発明の葉緑体形質転換植物を発光させる最も一般的な方法は、葉緑体形質転換植物の葉、茎および/または根の切り口から基質であるルシフェリンを吸収させて反応させることである。本発明の葉緑体形質転換植物においては、ルシフェリン水溶液の濃度は環境に合わせて適宜設定することができるため限定されるものではないが、通常0.2mM以上、好ましくは0.2−2mM、さらに好ましくは0.2−1mM濃度のルシフェリン水溶液を室温にて吸収させることにより発光させることができる。
(核形質転換用ベクターpE12::luc-SKLの作製)
核形質転換用ベクターpE12::luc-SKLは、Mitsuharaら,Plant Cell Physiol.,137,45-59(1996)に記載されているpBE2113-LUCの作製方法に準じて作製した。pBE2113-LUCではpT3/T7-Luc(Clontech社製)に含まれる北米産ホタル(Photinus pyralis)由来の野生型の塩基配列を有するルシフェラーゼ遺伝子を利用している。これに対し、pE12::luc-SKLの作製では、pGL3-Basic(Promega社製)に含まれる改良型北米産ホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc+)をベースとして用いた。両遺伝子の相違点は、コドンが改変されていることに加え、luc+では野生型のホタルルシフェラーゼのC末端に存在するペルオキシソーム局在シグナル(アミノ酸配列:-SKL)が-IVAに置換され、細胞質に局在するように改変されていることである。そこで、pGL3-Basicを鋳型として、プライマーセット
LC-F1 ccatggaagacgccaaaaacataaagaaag[配列番号:13]
LC-R1 ttacaatttggactttccgcccttcttggc[配列番号:14]
定法により、pEl2::luc-SKLを導入したAgrobacterium tumefaciens LBA4404を得た。この形質転換菌株は、まず、LB寒天培地(ストレプトマイシン300μg/mL、カナマイシン50μg/mLを含有)上、28℃にて2日間培養した。生成したシングルコロニーを3mLのLB培地(ストレプトマイシン300μg/mL、カナマイシン50μg/mL含有)に植菌し、28℃にて一晩、前培養した。この前培養菌200μLを20mLのLB培地(カナマイシン50μg/mL含有)に植菌し、28℃にて約20時間培養した後、タバコ葉への感染に用いた。
個体再生に成功したカナマイシン耐性系統から、細胞内の全DNAを調製した。その全DNAを鋳型として特異的プライマーセットを用いたPCRを行うことによって、目的遺伝子が導入されていることを確認した。さらに、RM寒天培地(カナマイシン100mg/L含有)上で無菌的に1ヶ月程度培養した後、頂端の生長点より数えて2−3枚目の若い葉から5mm角程度の葉切片を切り出し、RM液体培地で懸濁した1mM ルシフェリン溶液に浮かべた。30分後、ライトキャプチャー(AE-6971/2型 C/F,アトー社製)を用いて発光強度を測定した(露出時間30秒)。その結果、5系統で発光が確認された。本発明では、その中で最も発光が強かった系統(#6)の結果を示す(図2、El2::luc-SKL)。
(葉緑体形質転換用ベクターpNY01の作製)
pGL3-Basicベクター(Promega社製)を制限酵素NcoIおよびXbaIで処理することで、改変型北米産ホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc+)を切り出し、同じくNcoIおよびXbaIで処理したpMIK1ベクターにクローニングすることで、pA-Lucを得た。pMIK1はタバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanthi)由来の葉緑体psbA遺伝子のプロモーター領域および5'-UTR(PpsbA)と葉緑体rps16遺伝子の3'-UTR(Trps16)との間にMCSを有する葉緑体遺伝子発現カセットであり、目的遺伝子をMCSにin-frameで挿入することにより、葉緑体での標的遺伝子の発現が可能となる。
本発明では、優れた特性を合わせ持つ酵素を得るために、ゲンジボタル由来の改変型ルシフェラーゼ「Lcr-T217I」と北米産ホタル(Photinus pyralis)由来のルシフェラーゼとのキメラ酵素の遺伝子を以下のようにして作製した。
(H1断片の増幅に用いたプライマーセット)
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
GL-R1 ggtgtccagacattggtatcctcgataatc[配列番号:6]
(H2断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F1 gattatcgaggataccaatgtctggacacc[配列番号:7]
GL-R2 gcatgagaaaatctaatgactatattt[配列番号:8]
(H3断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F2 aaatatagtcattagattttctcatgc[配列番号:9]
GL-R3 gaacgacagttaaaatagcggtgcctggtg[配列番号:10]
(H4断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F3 caccaggcaccgctattttaactgtcgttc[配列番号:11]
GL-R4 gatatcctttgtatttgattaaagacttc[配列番号:12]
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
GL-R4 gatatcctttgtatttgattaaagacttc[配列番号:12]
を加えてPCR増幅を行い、H1-4断片を大量調製した。このPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングすることで、pGEM-H1-4を得た。
PL-F1 gatatcaggtggctcccgctgaattggaa[配列番号:13]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
を用いてPCR増幅を行い、そのPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングして、pGEM-H5を得た。
pNY18におけるT219IおよびV239Iに加えてさらなるアミノ酸置換を導入するために、前述した緑色発光タイプの改変型ルシフェラーゼ遺伝子「ABcT219I,V239I-IAV」をコードする遺伝子断片が挿入されたベクターpGEM-ABcT219I,V239I-IAVを鋳型として、以下に示す2組のプライマー対を用いて2種のDNA断片(R1およびR2)をPCR増幅した。
(R1断片の増幅に用いたプライマーセット)
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
HlucR-Rv gcaacagcttcactaacttcttttg[配列番号:15]
(R2断片の増幅に用いたプライマーセット)
HlucR-Fd caaaagaagttagtgaagctgttgc[配列番号:16]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
を加えてPCR増幅を行い、R1-R2断片を大量調製した。このPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングしてpGEM-ABcT291,V239I,G326S-IAVを得た。
タバコ葉緑体の形質転換は、基本的に、Svab,Z.およびMaliga,P.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90,913-917(1993)およびDaniell,H.,Ruiz,O.N.およびDhingra A.,Methods in Molecular Biology,Vol.286:Transgenic Plants,111-137の方法に従って行った。タバコは25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期でRM寒天培地(前掲、Svabら(1993))上で無菌的に生育させた。
RM寒天培地上で無菌的に生育させた形質転換タバコ(El2::luc-SKL、NY01、NY18およびNY22系統)より、生長点(腋芽)を含む茎を切り出し、新しいRM寒天培地(El2::luc-SKL用はカナマイシン100mg/Lを含有、NY01、NY18およびNY22用はスペクチノマイシン500mg/Lを含有)に植え継いだ。25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期で、約1ヶ月間、組織培養用ポット(アグリポット)にて無菌培養した。同程度の大きさ(丈10cm程度)に生育した形質転換タバコを、特許第3044006号明細書に開示されている筒状微多孔質焼成体(外形2.8cm、内径2.0cm、長さ8.0cm)に移植し、室温、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光条件で、3日間馴化させた。急激な湿度低下に伴う植物へのダメージを軽減するために、馴化1日目は植物をラップで完全に覆い、2日目にはラップを一部外し、3日目にラップを取り除いた。なお、馴化過程では、筒状微多孔質焼成体とともに、液肥としてはRM液体培地(ショ糖および抗生物質を含まない)を用いた。
・発光持続時間
上記の方法(0.2mMルシフェリン水溶液を茎の切り口から浸透させる)でのNY18およびNY22系統の発光は、肉眼で少なくとも6時間以上確認できた。24時間後の発光は目視できるレベルではないが、新たに調製したルシフェリン水溶液に浸けると、再び発光が目視できた。
・発光の濃度依存性
NY18およびNY22に高濃度のルシフェリン水溶液(1mM)を投与した場合は、濃度に比例して発光強度も増加する傾向が見られるが、それに反して、発光持続時間が短くなった(非常に強い発光が確認できるのは1時間程度で、それ以降は急速に発光が減衰した)。
・ルシフェリンの投与法
茎あるいは葉の切り口からルシフェリンを吸収させる方法が最も効果的な方法ではあるが、高濃度のルシフェリン(1mM程度)を葉や茎に直接噴霧することでも、肉眼で確認できるレベルの発光が観察できた。また、根からルシフェリンを吸収させることも可能で、その発光はライトキャプチャー等の高感度検出装置により確認できた。
作出した形質転換タバコの発光能力について、より再現性の高い方法で比較するために、各形質転換体の葉から細胞内の全可溶性タンパク質(TSP)を粗抽出して、ルシフェラーゼ活性をin vitroで測定した。
RM寒天培地上で無菌的に生育させた形質転換タバコ(El2::luc-SKL、NY01およびNY18系統)より、生長点(腋芽)を含む茎を切り出し、新しいRM寒天培地(El2::luc-SKL用はカナマイシン100mg/Lを含有、NY01およびNY18用はスペクチノマイシン500mg/Lを含有)に植え継いだ。25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期で、約1ヶ月間、組織培養用ポット(アグリポット)にて無菌培養した。同程度の大きさ(丈10cm程度)に生育した形質転換タバコから、頂端の生長点より数えて2〜4枚目の若い葉を2または3枚(合計新鮮重量:0.3〜0.4g)切り出し、液体窒素で凍結させた。各サンプルを液体窒素で冷却した乳鉢および乳棒によって粉砕し、その粉末を葉の新鮮重量0.1g当たり200μLの1X Luciferase Cell Culture Lysis Reagent(Luciferase Assay system:Promega社製)に懸濁し、30秒間撹拌した。その後1分間氷上に静置した後、4℃、20,000×gにて10分間の遠心分離を行い、上清を回収した。この遠心分離作業を2回繰り返して得られた上清画分について、Bradford法によりタンパク質濃度を定量し、細胞内の全可溶性タンパク質(TSP)とした。
従って、本発明の改変型ルシフェラーゼで葉緑体を形質転換したNY18系統は、同遺伝子で核を形質転換したEl2::luc-SKL系統よりも約150倍高いルシフェラーゼ活性を発現していることが明らかになった。
Amino acid sequence of modified firefly luciferase.
SEQ ID NO: 2
Nucleotide sequence of modified firefly luciferase.
SEQ ID NO: 3
Amino acid sequence of modified firefly luciferase.
SEQ ID NO: 4
Nucleotide sequence of modified firefly luciferase.
SEQ ID NO: 5
Forward primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 6
Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 7
Forward primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 8
Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 9
Forward primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 10
Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 11
Forward primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 12
Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 13
Forward primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 14
Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 15
Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
SEQ ID NO: 16
Forward primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
Claims (22)
- 改変型ルシフェラーゼを葉緑体において発現する葉緑体形質転換植物。
- 改変型ルシフェラーゼが、高活性および/または安定型のルシフェラーゼである請求項1記載の葉緑体形質転換植物。
- 葉および茎の全体で発光する請求項1または2記載の葉緑体形質転換植物。
- 緑色に発光する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
- 赤色ないし橙色に発光する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
- 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、配列番号:1のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドから選択される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
- 該改変ルシフェラーゼが、請求項6に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる請求項1ないし4または6のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
- 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:2のポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる請求項7記載の葉緑体形質転換植物。
- 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、配列番号:3のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドから選択される請求項1、2、3または5のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
- 該改変型ルシフェラーゼが、請求項9に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる請求項1、2、3、5または9のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
- 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:4のポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる請求項10記載の葉緑体形質転換植物。
- 該植物が、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida);イネ(Oryza sativa);ダイズ(Glycine max);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.);レタス(Lactuca sativa);ニンジン(Daucus carota);ワタ(Gossypium spp.);アオウキクサ(Spirodela perpusilla); ポプラ(Populus alba);テンサイ(Beta vulgaris L.);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens);およびクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)よりなる群から選択される請求項1ないし11のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
- 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物から得られる改変ルシフェラーゼ酵素。
- 改変型ルシフェラーゼを発現する葉緑体形質転換植物の作出方法であって、
(i)生物からルシフェラーゼをコードする野生型遺伝子をクローニングし、安定性および発光効率が向上するようにその遺伝子を改変し、または、発光色が変化するようにその遺伝子を改変し、
(ii)改変したルシフェラーゼ遺伝子を、該遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれて作動するように調製したベクターに組み込み、
(iii)該ベクターを植物の組織に導入し、
(iv)組換え体を選抜し、ついで
(v)選抜した植物組織を培養して葉緑体形質転換植物体を得る
工程を含む該作出方法。 - 工程(i)における遺伝子の改変が、配列番号:2で示されるポリヌクレオチドの作製である請求項14記載の作出方法。
- 工程(i)における遺伝子の改変が、配列番号:4で示されるポリヌクレオチドの作製である請求項14記載の作出方法。
- 工程(iii)における植物の組織への導入をパーティクルガンによって行う請求項14ないし16のいずれか1項に記載の作出方法。
- 該植物が、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida);イネ(Oryza sativa);ダイズ(Glycine max);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.);レタス(Lactuca sativa);ニンジン(Daucus carota);ワタ(Gossypium spp.);アオウキクサ(Spirodela perpusilla); ポプラ(Populus alba);テンサイ(Beta vulgaris L.);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens);およびクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)よりなる群から選択される請求項14ないし17のいずれか1項に記載の作出方法。
- 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物の葉、茎および/または根の切り口からルシフェリン水溶液を吸水させることにより発光させることを特徴とする、葉緑体形質転換植物の発光方法。
- 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物の植物体表面にルシフェリン水溶液を噴霧することを含む葉緑体形質転換植物の発光方法。
- 植物体表面が植物の葉、茎および/または根の表面である請求項20記載の発光方法。
- 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物の根からルシフェリン水溶液を吸水させることを含む葉緑体形質転換植物の発光方法。
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