JP2011217662A - 改変型ルシフェラーゼを大量発現する葉緑体形質転換植物 - Google Patents

改変型ルシフェラーゼを大量発現する葉緑体形質転換植物 Download PDF

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洋一 中平
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Abstract

【課題】葉部や茎部など緑色組織などを含む植物全体が発光することによって暗所でも観賞したりその存在を認識したりすることができて、癒しの効果を期待することができる葉緑体形質転換植物を作出すること。
【解決手段】改変型ルシフェラーゼを発現する葉緑体形質転換植物、詳細には、特定のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、緑色または赤色ないし橙色に発光する活性を有するポリペプチドから選択される改変型ルシフェラーゼを発現する葉緑体形質転換植物。
【選択図】なし

Description

本発明は、高発光性の形質転換植物、特に、高発光性の観賞用植物に関する。より詳細には、本発明は、植物体の葉部や茎部など緑色組織が全体にわたって高い発光を示す形質転換植物、かかる形質転換植物から得られる改変型ルシフェラーゼ酵素、かかる形質転換植物を作出する方法ならびにかかる形質転換植物の発光方法に関する。
観葉植物、切り花、花壇栽培植物など種々の園芸植物が栽培され、市販されている。これらの園芸植物は、明るい環境下での観賞や室内装飾を主な目的として利用されるものである。他方、近年のストレス社会の生活の中にあっては、植物が有する生物的な癒しの効果も着目されている。
夜間、就寝前などリラックスした状態は、癒しの効果が最も発揮される状態と考えられる。就寝前の癒しの効果を目的としたものには、照明を落とした状況下で、植物ハーブを利用したアロマテラピーなど臭覚を介したものがあるが、このような暗い環境下で植物の存在を愉しむ視覚を介したものは存在しない。
生物的な癒しの効果を発揮し得る植物を夜間就寝前など、照明を落とした状況下で利用することができれば、植物による癒しの効果を楽しむことができる。
また、花壇や街路に植栽されている植物は通常は夜間観賞されるものではないが、このような植物を夜間に観賞したり、存在を認識したりすることができれば、関心が集まるとともに癒しの効果が期待され、街路に植栽することによって夜間交通の安全に資することも期待できる。
このように、従来暗所の観賞用としては全く利用されなかった植物を暗所においても利用することができれば、栽培植物の新たな需要拡大を図ることができる。
従来、ルシフェラーゼレポーター遺伝子を利用して、種々の発光植物が作出されている。
例えば、非特許文献1には、Agrobacteriumによる植物細胞核への遺伝子導入技術を利用し、北米産ホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼ蛋白質を発現する形質転換タバコが記載されている。しかしながら、かかる形質転換タバコでは茎などの維管束で発光が認められるものの、葉肉組織などの柔組織では目視できるほど発光しないことが判明している。
従って、茎などの維管束に限られることなく植物体全体の発光強度が向上し、暗所でも観賞可能で、その存在を認識することができる形質転換植物が必要とされている。
Mitsuharaら,Plant Cell Physiol.,37,45-59(1996)
本発明の課題は、葉部や茎部など緑色組織などの植物全体が発光することによって、暗所でも観賞可能で、その存在を認識することができる形質転換植物を作出することにある。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、ルシフェラーゼ遺伝子を改変し、かかる改変型ルシフェラーゼ遺伝子を用いて植物の核ではなく葉緑体を形質転換することにより、目的の効果を発揮し得る形質転換植物を作出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
[1] 改変型ルシフェラーゼを葉緑体において発現する葉緑体形質転換植物;
[2] 改変型ルシフェラーゼが、高活性および/または安定型のルシフェラーゼである請求項1記載の葉緑体形質転換植物;
[3] 葉および茎の全体で発光する前記[1]または[2]記載の葉緑体形質転換植物;
[4] 緑色に発光する前記[1]ないし[3]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[5] 赤色ないし橙色に発光する前記[1]ないし[3]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[6] 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、配列番号:1のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドから選択される前記[1]ないし[4]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[7] 該改変型ルシフェラーゼが、前記[6]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる前記[1]ないし[4]または[6]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[8] 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:2のポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる前記[7]記載の葉緑体形質転換植物;
[9] 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、配列番号:3のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドから選択される前記[1]、[2]、[3]または[5]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[10] 該改変型ルシフェラーゼが、前記[9]に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる前記[1]、[2]、[3]、[5]または[9]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[11] 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:4のポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる前記[10]記載の葉緑体形質転換植物;
[12] 該植物が、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida);イネ(Oryza sativa);ダイズ(Glycine max);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.);レタス(Lactuca sativa);ニンジン(Daucus carota);ワタ(Gossypium spp.);アオウキクサ(Spirodela perpusilla); ポプラ(Populus alba);テンサイ(Beta vulgaris L.);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens);およびクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)よりなる群から選択される前記[1]ないし[11]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物;
[13] 前記[1]ないし[12]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物から得られる改変ルシフェラーゼ酵素;
[14] 改変型ルシフェラーゼを発現する葉緑体形質転換植物の作出方法であって、
(i)生物からルシフェラーゼをコードする野生型遺伝子をクローニングし、安定性および発光効率が向上するようにその遺伝子を改変し、または、発光色が変化するようにその遺伝子を改変し、
(ii)改変したルシフェラーゼ遺伝子を、該遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれて作動するように調製したベクターに組み込み、
(iii)該ベクターを植物の組織に導入し、
(iv)組換え体を選抜し、ついで
(v)選抜した植物組織を培養して葉緑体形質転換植物体を得る
工程を含む該作出方法;
[15] 工程(i)における遺伝子の改変が、配列番号:2で示されるポリヌクレオチドの作製である前記[14]記載の作出方法;
[16] 工程(i)における遺伝子の改変が、配列番号:4で示されるポリヌクレオチドの作製である前記[14]記載の作出方法;
[17] 工程(iii)における植物の組織への導入をパーティクルガンによって行う前記[14]ないし[16]のいずれか1に記載の作出方法;
[18] 該植物が、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida);イネ(Oryza sativa);ダイズ(Glycine max);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.);レタス(Lactuca sativa);ニンジン(Daucus carota);ワタ(Gossypium spp.);アオウキクサ(Spirodela perpusilla);ポプラ(Populus alba);テンサイ(Beta vulgaris L.);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens);およびクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)よりなる群から選択される前記[14]ないし[17]のいずれか1に記載の作出方法;
[19] 前記[1]ないし[12]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物の葉、茎および/または根の切り口からルシフェリン水溶液を吸水させることにより発光させることを特徴とする、葉緑体形質転換植物の発光方法;
[20] 前記[1]ないし[12]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物の植物体表面にルシフェリン水溶液を噴霧することを含む葉緑体形質転換植物の発光方法;
[21] 植物体表面が植物の葉、茎および/または根の表面である前記[20]記載の発光方法;
[22] 前記[1]ないし[12]のいずれか1に記載の葉緑体形質転換植物の根からルシフェリン水溶液を吸水させることを含む葉緑体形質転換植物の発光方法、
を提供するものである。
本発明の葉緑体形質転換植物により、夜間や暗所においても観賞し、その存在を認識することができる植物を提供し、また、街路樹などとしての該植物を利用することにより交通の安全に資することができる。
形質転換タバコの作出に用いた遺伝子導入用ベクターの模式図である。 形質転換タバコ(El2::luc-SKL、NY01およびNY18系統)の生物発光像の比較写真に代わる図面代用写真である。 形質転換タバコ(NY18およびNY22系統)の生物発光像の比較写真に代わる図面代用写真である。 形質転換タバコ(El2::luc-SKL、NY01およびNY18系統)の葉から粗抽出した可溶性タンパク質に含まれるルシフェラーゼ活性の測定結果を示すグラフである。
第1の態様において、本発明は、改変型ルシフェラーゼ、すなわち、高活性型および/または安定型のルシフェラーゼを大量発現する葉緑体形質転換植物に関する。1細胞当たり最大1000コピーにものぼる膨大な量の葉緑体DNAの増幅が可能となる葉緑体特有の特徴を活かすことにより、葉緑体に導入したルシフェラーゼ遺伝子の大量増幅が可能となり、葉肉組織におけるルシフェラーゼ遺伝子にコードされるルシフェラーゼ蛋白質の発現量を向上させることが可能となる。さらに、ルシフェラーゼ遺伝子として高活性型および/または安定型のルシフェラーゼ蛋白質をコードする改変型ルシフェラーゼ遺伝子を使用することにより、植物全体で高発光を示す葉緑体形質転換植物を提供することができる。
高発光を示す葉緑体形質転換植物を作出するための要件の一つとして、発光酵素(ルシフェラーゼ)を葉緑体において大量蓄積させることが必要である。そこで、本発明者らは、安定性を強化したホタルルシフェラーゼに注目した。一般的に、安定性の高い酵素はさまざまな刺激(熱以外に酸・アルカリ、塩濃度など)に対して安定である場合が多く、宿主生物の細胞内で安定に大量蓄積させることができる。そのような観点から、本発明では、まず、安定性が増強されただけではなく、比活性が野生型酵素の130%にまで増加したと報告されているゲンジボタル(Luciola cruciata)由来ルシフェラーゼ(Lcr-T217I 野生型酵素のアミノ酸ポジション217位のトレオニンがイソロイシンに置換されていることを表し、以下、単に「Lcr-T217I」という。)に注目した(KajiyamaおよびNakano,Biochemistry,32,13795-13799(1993))。しかしながら、「Lcr-T217I」は、ATP消費量当たりの発光効率の点においては北米産ホタル(Photinus pyralis)由来のルシフェラーゼの半分以下であるという問題があった。
そこで、本発明では、「Lcr-T217I」遺伝子に突然変異を導入し、さらに北米産ホタル由来酵素とのキメラタンパク質を構築することで、北米産ホタル由来のルシフェラーゼと同等の発光効率をもち、かつ、安定性の高い改変型ルシフェラーゼ(ABcT219I,V239I 以下、単に「ABcT219I,V239I」という。)を作製し、さらにこの「ABcT219I,V239I」のC末端のペルオキシソーム局在シグナル配列を欠失させた緑色発光タイプの改変型ルシフェラーゼ(ABcT219I,V239I-IAV 以下、単に「ABcT219I,V239I-IAV」という。)およびそれにさらなるアミノ酸置換を加えた赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼ(ABcT219I,V239I,G326S-IAV IAV 以下、単に「ABcT219I,V239I,G326S-IAV」という。)を作製し、各々、植物の葉緑体で大量発現させた。
本発明の葉緑体形質転換植物の作出に用いる「ABcT219I,V239I-IAV」のアミノ酸配列を配列番号:1に、ポリヌクレオチド配列を配列番号:2に示す。
本発明の葉緑体形質転換植物の作出に用いる緑色発光タイプの改変型ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドは、具体的には、以下のようにして作製することができる。
「Lcr-T217I」をコードするポリヌクレオチドを含むベクターpTM1を鋳型として、以下に示す4組のプライマー対を用いて4種のDNA断片(H1〜H4)をPCR増幅する。
(H1断片の増幅に用いたプライマーセット)
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
GL-R1 ggtgtccagacattggtatcctcgataatc[配列番号:6]

(H2断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F1 gattatcgaggataccaatgtctggacacc[配列番号:7]
GL-R2 gcatgagaaaatctaatgactatattt[配列番号:8]

(H3断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F2 aaatatagtcattagattttctcatgc[配列番号:9]
GL-R3 gaacgacagttaaaatagcggtgcctggtg[配列番号:10]

(H4断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F3 caccaggcaccgctattttaactgtcgttc[配列番号:11]
GL-R4 gatatcctttgtatttgattaaagacttc[配列番号:12]
次に、得られたH1〜H4のDNA断片を回収・混合し、これらを鋳型としてプライマーを加えないでPCR増幅を行う(assembled reaction)。この反応により4種のDNA断片が連結されたH1-4断片が得られる。さらに、得られた断片にプライマーセット:
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
GL-R4 gatatcctttgtatttgattaaagacttc[配列番号:12]
を加えてPCR増幅を行い、H1-4断片を大量調製する。このPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングしてpGEM-H1-4を得る。
一方、pGL3-Basic(Promega社製)を鋳型として、プライマーセット:
PL-F1 gatatcaggtggctcccgctgaattggaa[配列番号:13]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
を用いてPCR増幅を行い、そのPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングしてpGEM-H5を得る。
前記したpGEM-H1-4を制限酵素NcoIおよびEcoRVで処理することでH1-4断片を切り出し、これを同じ制限酵素ペアで切断したpGEM-H5とライゲーションすることで、緑色発光タイプの改変型ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターpGEM-ABcT219I,V239I-IAVを得、適当な制限酵素を用いて「ABcT219I,V239I-IAV」を得る。
また、「ABcT219I,V239I,G326S-IAV」のアミノ酸配列を配列番号:3に、ポリヌクレオチド配列を配列番号:4に示す。
本発明の形質転換植物の作出に用いる赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドは、一つの具体例において、以下のようにして作製することができる。
「ABcT219I,V239I-IAV」をコードする遺伝子断片が挿入されたベクター、pGEM-ABcT219I,V239I-IAVを鋳型として、以下に示す2組のプライマー対を用いて2種のDNA断片(R1およびR2)をPCR増幅する。
(R1断片の増幅に用いたプライマーセット)
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
HlucR-Rv gcaacagcttcactaacttcttttg[配列番号:15]

(R2断片の増幅に用いたプライマーセット)
HlucR-Fd caaaagaagttagtgaagctgttgc[配列番号:16]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
次に、得られたR1-R2のDNA断片を回収・混合し、これらを鋳型としてプライマーを加えないでPCR増幅を行う(assembled reaction)。この反応により2種のDNA断片が連結されたR1-R2断片が得られる。さらに、得られた断片にプライマーセット:
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
を加えてPCR増幅を行い、R1-R2断片を大量調製する。このPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングしてpGEM-ABcT291,V239I,G326S-IAVを得る。
前記したpGEM-ABcT219I,V239I,G326S-IAVを制限酵素NcoIおよびXbaIで処理することで、「ABcT219I,V239I,G326S-IAV」を得る。
また、本発明の形質転換植物に用いる緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼには、上述のように作製したプラスミドベクターから適当な条件下で発現されるルシフェラーゼのほか、各々のルシフェラーゼのアミノ酸配列において、1ないし数個のアミノ酸残基が置換、欠失、付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、これらのルシフェラーゼと実質的に同等(発光強度または発光効率)・同質(発光色)の酵素活性を有するポリペプチドも含まれる。
また、配列番号:1および配列番号:3で示されるアミノ酸配列において1ないし数個、例えば1ないし50個、好ましくは1ないし30個、より好ましくは1ないし20個、よりさらに好ましくは1ないし15個、なおより好ましくは1ないし10個、なおよりさらに好ましくは1ないし7個、最も好ましくは1ないし5個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列を含み、かつ、これらのルシフェラーゼと実質的に同等・同質の酵素活性を有するポリペプチドも、本発明で用いる緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼに含まれる。
本発明で用いる緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼには、各々、配列番号:1および配列番号:3のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列をコードする一つの例である配列番号:2および配列番号:4のポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドのほか、配列番号:1および配列番号:3で示されるアミノ酸配列を縮重によりコードする全てのポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドも含まれる。また、配列番号:1および配列番号:3のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列をコードし、かつ、これらのルシフェラーゼと実質的に同等・同質の酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列によってコードされるポリペプチドも、本発明で用いる緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼに含まれる。
また、上述したポリヌクレオチド配列に相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、これらの緑色発光タイプおよび赤色発光タイプのルシフェラーゼと実質的に同等・同質の酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドも、本発明で用いる緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼに含まれる。
本発明で用いる緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼは、前記したようなアミノ酸配列を有するか、または前記したようなポリヌクレオチド配列、もしくはそのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、これらのルシフェラーゼと実質的に同等・同質の酵素活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列によりコードされるポリペプチドを含む。
本願明細書全体を通して、オリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションにおける「ストリンジェントな条件」とは、その条件下で、互いのヌクレオチドが互いにハイブリダイズしたままであるハイブリダイゼーションおよび洗浄の条件を示し、好ましくは、互いに少なくとも約70%、より好ましくは少なくとも約80%、なおより好ましくは少なくとも約85%、なおより好ましくは少なくとも約90%、なおより好ましくは少なくとも約95%、最も好ましくは少なくとも約97%同一である配列が互いにハイブリダイズしたままであるような条件である。かかるストリンジェントな条件の範囲は本願出願時において周知の技術として当業者に知られており、Current Protocols in Molecular Biology,Ausubelら編、John Wiley&Sons,Inc.(1995),セクション2、4および6に見出し得る。さらなるストリンジェントな条件は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Sambrookら,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,NY(1989),第7、9および11章に見出し得る。
好ましいストリンジェントな条件の例には、約65-70℃にて4×SSC(SSC;1×SSCは0.15M 塩化ナトリウム、0.015M クエン酸ナトリウム)中のハイブリダイゼーション(または約42-50℃にて4×SSCおよび50%ホルムアミド中のハイブリダイゼーション)につづく約65-70℃にて1×SSC中の1またはそれを超える洗浄が含まれる。非常にストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の好ましい例には、約65-70℃にて1×SSC中のハイブリダイゼーション(または約42-50℃にて1×SSCおよび50%ホルムアミド中のハイブリダイゼーション)につづく約65-70℃にて0.3×SSC中の1またはそれを超える洗浄が含まれる。一方、低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件の好ましい例には、約50-60℃にて4×SSC中のハイブリダイゼーション(または約40-45℃にて6×SSCおよび50%ホルムアミド中のハイブリダイゼーション)につづく約50-60℃にて2×SSC中の1またはそれを超える洗浄が含まれる。ハイブリダイゼーションおよび洗浄緩衝液には、SSCの代わりにSSPE(1×SSPEは0.15M 塩化ナトリウム、10mM リン酸水素一ナトリウム、および1.25mM EDTA、pH7.4)を用いることができ、ハイブリダイゼーションの後の洗浄は15分間行えばよい。
50塩基対長未満のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドに対するハイブリダイゼーション温度は、そのオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの融点(Tm)よりも5-10℃低い温度とすべきであり、ここにTmは以下の等式によって決まる。18塩基対長未満のオリゴヌクレオチドについては、Tm(℃)=2(A+Tの数)+4(G+C塩基の数)。18ないし49塩基対長のオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドについては、Tm(℃)=81.5+16.6(log10[Na+])+0.41(%G+C)-(600/N)である{式中のNはオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの塩基の数、[Na+]はハイブリダイゼーション緩衝液中のナトリウムイオンの濃度であり、1×SSCについては0.165Mである}。
本発明の葉緑体形質転換植物は、上述したような改変型ルシフェラーゼ遺伝子を植物の葉緑体DNAに作動可能に組み込むことにより作出される。ルシフェラーゼ遺伝子を植物の葉緑体DNAに導入して発現させることにより、導入した遺伝子は父性遺伝されず、該遺伝子が花粉を介して環境中へ飛散することによる遺伝子汚染のリスクを回避することができる。
本発明の葉緑体形質転換植物は、上述した改変型ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチド「ABcT219I,V239I-IAV」または「ABcT219I,V239I,V329I-IAV」を葉緑体形質転換用として公知の適当なベクターに組み込んだ後、植物を形質転換することによって作出する。
改変型ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドを含むベクターから調製したコンストラクトは、公知の植物細胞の形質転換法によって植物葉緑体DNAに導入することができるが、好ましい形質転換法としてはパーティクルガンによる形質転換が挙げられる。
本発明の緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼをコードするポリヌクレオチドが葉緑体DNAに組み込まれた際にその発現を調節する領域としては、葉緑体psbA遺伝子、rrn16-rrn23オペロン、rbcL遺伝子、psbEFLJオペロン、psbDCオペロン、psbB-Hオペロン、accD遺伝子およびatpB遺伝子などの葉緑体遺伝子由来のプロモーターおよびその改変型プロモーター、lacプロモーターなどの細菌由来の原核生物型プロモーター、psbA、rbcL、atpB、rps2およびpsbLなどの葉緑体遺伝子由来の5'-UTRまたはその改変配列、合成配列(ggagg:SDコンセンサス配列)、T7 gene10リーダー配列などのバクテリオファージまたは細菌由来の翻訳調節配列、psbA、rbcL、petD、rps16などの葉緑体遺伝子由来の3'-UTRまたはその改変配列などが挙げられる。
また、本発明の緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼ遺伝子を導入する植物葉緑体DNA中の領域は、葉緑体ゲノムに存在する遺伝子間領域であれば特に限定されるものではなく、例えば、trnV-rps12/7、trnI-trnA、rbcL-accD、rps7-ndhBなどの遺伝子間領域が挙げられる。また、遺伝子導入領域に対する目的遺伝子の発現カセットおよび選抜マーカーの方向は、発現効率等に応じて変更し得る。
葉緑体DNAの形質転換は緑藻以上の植物に適応可能であるが、例えば、タバコ(Nicotiana tabacum)のほか、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida)などのナス科植物(Solanaceae);イネ(Oryza sativa)などのイネ科植物(Poaceae);ダイズ(Glycine max)などのマメ科植物(Fabaceae);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.)などのアブラナ科植物(Brassicaceae);レタス(Lactuca sativa)などのキク科植物(Asteraceae);ニンジン(Daucus carota)などのセリ科植物(Apiaceae);ワタ(Gossypium spp.)などのアオイ科植物(Malvaceae);アオウキクサ(Spirodela perpusilla)などのウキクサ科植物(Lemnaceae);ポプラ(Populus alba)などのヤナギ科植物(Salicaceae);テンサイ(Beta vulgaris L.)などのアカザ科植物(Chenopodiaceae);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.)などのゼニゴケ科植物(Marchantiaceae);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens)などのヒョウタンゴケ科植物(Funariaceae);クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)などのクラミドモナス科緑藻(Chlamydomonadaceae)など現在の技術において葉緑体形質転換が可能である植物のほか、将来に葉緑体形質転換技術が確立された植物種に適用が可能である。
本発明の葉緑体形質転換植物は、pH6.5およびpH7.8で563nmの極大発光波長を示す緑色に発光する改変型ルシフェラーゼおよび/またはpH6.0で611nm、pH7.8で609nmの極大発光波長を示す赤色ないし橙色に発光する改変型ルシフェラーゼを発現する。
また、第2の態様において、本発明は、高活性型および/または安定型の改変型ルシフェラーゼを大量発現する高活性型および/または安定型の葉緑体形質転換植物の作出方法に関する。
本発明の高活性型および/または安定型の葉緑体形質転換植物の作出方法は、
(i)生物からルシフェラーゼをコードする野生型遺伝子をクローニングし、安定性および発光効率が向上するようにその遺伝子を改変し、または、発光色が変化するようにその遺伝子を改変し、
(ii)改変したルシフェラーゼ遺伝子を、該遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれて作動するように調製したベクターに組み込み、
(iii)該ベクターを植物の組織に導入し、
(iv)組換え体を選抜し、ついで
(v)選抜した植物組織を培養して形質転換植物体を得る
工程を含む。
本発明の作出法に用いる野生型ルシフェラーゼをクローニングする起源生物としては、ルシフェラーゼ遺伝子を保有している生物種であれば限定されるものではないが、例えばゲンジボタル(Luciola cruciata)、北米産ホタル(Photinus pyralis)、ヘイケボタル(Luciola lateralis)、ヒカリコメツキムシ(Pyrearinus termitilluminans)などが挙げられ、好ましくはゲンジボタル(Luciola cruciata)および北米産ホタル(Photinus pyralis)である。
また、野生型ルシフェラーゼの安定性および発光効率を向上させる遺伝子の改変には、安定性に優れた1のルシフェラーゼ遺伝子の領域と発光効率に優れたもう1のルシフェラーゼ遺伝子の領域とを連結したキメラ遺伝子の作製などが含まれる。本発明の1の形態において、本発明の作出法に用いる改変したルシフェラーゼ遺伝子として、前述した緑色発光タイプまたは赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼ遺伝子、「ABcT219I,V239I-IAV」または「ABcT219I,V239I,V329I-IAV」を用いることができる。
形質転換した植物の葉緑体DNAに改変型ルシフェラーゼ遺伝子が組み込まれていることの確認は、再生した植物体組織の葉緑体画分から全DNAのcDNAライブラリーを調製し、その全cDNAライブラリーを鋳型とし、葉緑体DNAに導入されルシフェラーゼ遺伝子に特異的なプライマーセットを用いたPCR増幅、あるいは、配列特異的なDNAプローブを用いたサザンブロッティングに付すことによって行うことができる。
また、葉緑体形質転換植物の葉緑体DNAに目的遺伝子が組み込まれていることの確認は、得られたトランスジェニック植物から葉緑体画分を調製し、その画分におけるルシフェラーゼ活性を測定することによっても行うことができる。
その他、本発明の作出法に用いるベクター、植物細胞または組織、形質転換植物細胞または組織の選抜方法としては、本発明の葉緑体形質転換植物で説明したベクター、植物細胞または組織や、当該技術分野で知られている手法を用いることができる。
また、第3の態様において、本発明は、前記した葉緑体形質転換植物から粗抽出した緑色発光タイプおよび赤色発光タイプの改変型ルシフェラーゼ酵素に関する。
葉緑体形質転換植物からのこれらの改変型ルシフェラーゼの抽出は、葉緑体形質転換植物の緑葉を抽出バッファー中で摩砕し、摩砕液を遠心分離してその上清を回収することにより行うことができる。
改変型ルシフェラーゼの活性は、上述のようにして得た抽出液または精製酵素を酵素基質としてのルシフェリンとともに適当な緩衝液に加えた後、公知の測定方法を用いて発光強度を測定することによって測定することができる。
さらに、第4の態様において、本発明は、前記した形質転換植物の発光方法に関する。
本発明の葉緑体形質転換植物を発光させる最も一般的な方法は、葉緑体形質転換植物の葉、茎および/または根の切り口から基質であるルシフェリンを吸収させて反応させることである。本発明の葉緑体形質転換植物においては、ルシフェリン水溶液の濃度は環境に合わせて適宜設定することができるため限定されるものではないが、通常0.2mM以上、好ましくは0.2−2mM、さらに好ましくは0.2−1mM濃度のルシフェリン水溶液を室温にて吸収させることにより発光させることができる。
また、別法として、本発明の葉緑体形質転換植物は、植物体表面、好ましくは植物体の葉、茎および/または根の表面に通常0.2mM以上、好ましくは0.2−2mM、さらに好ましくは0.2−1mM濃度のルシフェリン水溶液を直接噴霧することによっても発光させることができる。
さらに、別法として、本発明の葉緑体形質転換植物は、通常の養水分と同様に、ルシフェリン水溶液を根から吸収させることによっても発光させることができる。
次に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明をこれらに限定することを意図するものではない。
1.核形質転換タバコ(E12::luc-SKL)の作出
(核形質転換用ベクターpE12::luc-SKLの作製)
核形質転換用ベクターpE12::luc-SKLは、Mitsuharaら,Plant Cell Physiol.,137,45-59(1996)に記載されているpBE2113-LUCの作製方法に準じて作製した。pBE2113-LUCではpT3/T7-Luc(Clontech社製)に含まれる北米産ホタル(Photinus pyralis)由来の野生型の塩基配列を有するルシフェラーゼ遺伝子を利用している。これに対し、pE12::luc-SKLの作製では、pGL3-Basic(Promega社製)に含まれる改良型北米産ホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc+)をベースとして用いた。両遺伝子の相違点は、コドンが改変されていることに加え、luc+では野生型のホタルルシフェラーゼのC末端に存在するペルオキシソーム局在シグナル(アミノ酸配列:-SKL)が-IVAに置換され、細胞質に局在するように改変されていることである。そこで、pGL3-Basicを鋳型として、プライマーセット
LC-F1 ccatggaagacgccaaaaacataaagaaag[配列番号:13]
LC-R1 ttacaatttggactttccgcccttcttggc[配列番号:14]
を用いてPCR増幅を行い、そのPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングして、pGEM-luc+-SKLを得た。luc+-SKLがコードするタンパク質は、C末端に-SKL配列を有する。
次に、制限酵素NcoIおよびNotIを用いてluc+-SKL DNA断片をpGEM-luc+-SKLから切り出し、同じ制限酵素で切断したpE12-Tnosに挿入してpEl2-luc+-SKL-Tnosを得た。pEl2-Tnosは、非特許文献1に記載されたpBE2113-LUCベクターにおいて、ルシフェラーゼ遺伝子を発現させるための遺伝子発現調節領域(El2:改変型35Sプロモーター、Ω配列:翻訳増強配列、Tnos:nosターミネーター)と同様の塩基配列を有する。
さらに、pEl2-luc+-SKL-Tnosを制限酵素HindIIIおよびEcoRIで切断して得られるルシフェラーゼ発現カセットを、同じ制限酵素で切断したバイナリーベクターpBI121(Clontech社製)とライゲーションすることによってpEl2::luc-SKLを得た(図1)。
(アグロバクテリウムを用いた形質転換)
定法により、pEl2::luc-SKLを導入したAgrobacterium tumefaciens LBA4404を得た。この形質転換菌株は、まず、LB寒天培地(ストレプトマイシン300μg/mL、カナマイシン50μg/mLを含有)上、28℃にて2日間培養した。生成したシングルコロニーを3mLのLB培地(ストレプトマイシン300μg/mL、カナマイシン50μg/mL含有)に植菌し、28℃にて一晩、前培養した。この前培養菌200μLを20mLのLB培地(カナマイシン50μg/mL含有)に植菌し、28℃にて約20時間培養した後、タバコ葉への感染に用いた。
タバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanthi)は25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期にて、RM寒天培地(SvabおよびMaliga,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90,913-917(1993))上で無菌的に生育させた。播種後1ヶ月程度のタバコから緑葉(第5〜9葉)を切除し、滅菌水で湿らせた濾紙を敷いたペトリ皿の上に置き、メスを用いて5mm角程度の切片に切り分けた。別のペトリ皿に前記した感染用のアグロバクテリウム菌液10mLを加え、ここに葉切片を浸漬した。2分間放置した後、葉切片を取り出し、滅菌したキムワイプ上に置いて付着した余分な菌液を除去した。
上記処理後の葉切片を、RMOP寒天培地(SvabおよびMaliga,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87,8526-8530(1993))上に葉の裏面を上にして置き、28℃暗所にて培養した。さらに、RMOP寒天培地(カルベニシリン500mg/L、カナマイシン100mg/L含有)に植え替え、25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期にて条件下で培養した。その後、2週間毎に新しいRMOP寒天培地(カルベニシリン500mg/L、カナマイシン100mg/L含有)に植え替え、カナマイシン耐性を示すカルスあるいはシュートを選抜した。得られたシュートをRM寒天培地(カナマイシン100mg/L含有)に移し、発根を誘導した。
(発光系統の選抜)
個体再生に成功したカナマイシン耐性系統から、細胞内の全DNAを調製した。その全DNAを鋳型として特異的プライマーセットを用いたPCRを行うことによって、目的遺伝子が導入されていることを確認した。さらに、RM寒天培地(カナマイシン100mg/L含有)上で無菌的に1ヶ月程度培養した後、頂端の生長点より数えて2−3枚目の若い葉から5mm角程度の葉切片を切り出し、RM液体培地で懸濁した1mM ルシフェリン溶液に浮かべた。30分後、ライトキャプチャー(AE-6971/2型 C/F,アトー社製)を用いて発光強度を測定した(露出時間30秒)。その結果、5系統で発光が確認された。本発明では、その中で最も発光が強かった系統(#6)の結果を示す(図2、El2::luc-SKL)。
2.緑色発光タイプ(NY01およびNY18系統)および赤色発光タイプ(NY22系統)葉緑体形質転換タバコの作出
(葉緑体形質転換用ベクターpNY01の作製)
pGL3-Basicベクター(Promega社製)を制限酵素NcoIおよびXbaIで処理することで、改変型北米産ホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc+)を切り出し、同じくNcoIおよびXbaIで処理したpMIK1ベクターにクローニングすることで、pA-Lucを得た。pMIK1はタバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanthi)由来の葉緑体psbA遺伝子のプロモーター領域および5'-UTR(PpsbA)と葉緑体rps16遺伝子の3'-UTR(Trps16)との間にMCSを有する葉緑体遺伝子発現カセットであり、目的遺伝子をMCSにin-frameで挿入することにより、葉緑体での標的遺伝子の発現が可能となる。
次に、pA-Lucを制限酵素SacIおよびKpnIで処理することでPpsbA-Luc-Trps16断片を切り出し、同じ制限酵素ペアで処理したpRV112A'(Hayashiら,Plant Cell Physiol.,44,334-341(2003))とライゲーションすることによってpNY01を得た(図1)。pRV112A'には葉緑体DNAと相同な領域(trnV、rrn16、rps12/7など)の間に、選択マーカーとして16S rRNA遺伝子のプロモーターによって発現するaadA(アミノグリコシド3''-アデニリルトランスフェラーゼ)遺伝子が挿入されている。さらに、目的遺伝子を挿入するためのMCSがaadA発現カセットに隣接している。
(葉緑体形質転換用ベクターpNY18の作製)
本発明では、優れた特性を合わせ持つ酵素を得るために、ゲンジボタル由来の改変型ルシフェラーゼ「Lcr-T217I」と北米産ホタル(Photinus pyralis)由来のルシフェラーゼとのキメラ酵素の遺伝子を以下のようにして作製した。
T219IとV239Iのアミノ酸置換を導入するために、「Lcr-T217I」遺伝子を含むベクターpTM1(KajiyamaおよびNakano,Biochemistry,32,13795-13799(1993))を鋳型として、4種のDNA断片(H1〜H4)をPCR増幅した。各DNA断片を得るために使用したプライマーセットは以下のとおりである。
(H1断片の増幅に用いたプライマーセット)
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
GL-R1 ggtgtccagacattggtatcctcgataatc[配列番号:6]

(H2断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F1 gattatcgaggataccaatgtctggacacc[配列番号:7]
GL-R2 gcatgagaaaatctaatgactatattt[配列番号:8]

(H3断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F2 aaatatagtcattagattttctcatgc[配列番号:9]
GL-R3 gaacgacagttaaaatagcggtgcctggtg[配列番号:10]

(H4断片の増幅に用いたプライマーセット)
GL-F3 caccaggcaccgctattttaactgtcgttc[配列番号:11]
GL-R4 gatatcctttgtatttgattaaagacttc[配列番号:12]
得られた上記4種のDNA断片を回収・混合し、これらを鋳型としてプライマーを加えないPCRを4サイクル行い、4種のDNA断片が連結されたH1-4断片を得た。さらに、プライマーセット
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
GL-R4 gatatcctttgtatttgattaaagacttc[配列番号:12]
を加えてPCR増幅を行い、H1-4断片を大量調製した。このPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングすることで、pGEM-H1-4を得た。
一方、pGL3-Basic(Promega社製)を鋳型として、プライマーセット
PL-F1 gatatcaggtggctcccgctgaattggaa[配列番号:13]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
を用いてPCR増幅を行い、そのPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングして、pGEM-H5を得た。
pGEM-H1-4を制限酵素NcoIおよびEcoRVで処理することでH1-4断片を切り出し、これを同じ制限酵素ペアで切断したpGEM-H5とライゲーションすることで、pGEM-ABcT219I,V239I-IAVを得た。上記のベクターに含まれる「ABcT219I,V239I-IAV」遺伝子と「ABcT219I,V239I」遺伝子との違いは、ルシフェラーゼのC末端側に相当する塩基配列として、「ABcT219I,V239I」では北米産ホタル(Photinus pyralis)ルシフェラーゼの野生型配列を使用しているのに対し、「ABcT219I,V239I-IAV」では改変型北米産ホタルルシフェラーゼ(luc+)を基にしていることである。その結果、アミノ酸では、「ABcT219I,V239I」のC末端は-SKLであるのに対し、「ABcT219I,V239I-IAV」では-IAVとなる。
pGEM-ABcT219I,V239I-IAVを制限酵素NcoIおよびXbaIで処理することで、「ABcT219I,V239I-IAV」を切り出し、同じ制限酵素NcoIおよびXbaIで処理したpMIK1ベクターにクローニングすることで、pA-ABcT219I,V239I-IAVを得た。pMIK1はタバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanthi)由来の葉緑体psbA遺伝子のプロモーター領域および5'-UTR(PpsbA)と葉緑体rps16遺伝子の3'-UTR(Trps16)との間にMCSを有する葉緑体遺伝子発現カセットであり、目的遺伝子をMCSにin-frameで挿入することにより、葉緑体での標的遺伝子の発現が可能となる。
次に、pA-ABcT219I,V239I-IAVを制限酵素SacIおよびKpnIで処理することでPpsbA-ABcT219I,V239I-IAV-Trps16断片を切り出し、同じく制限酵素SacIおよびKpnIで処理したpRV112A'(Hayashiら,Plant Cell Physiol.,44,334-341(2003))とライゲーションすることによってpNY18を得た(図1)。pRV112A'には葉緑体DNAと相同な領域(trnV、rrn16、rps12/7など)の間に、選択マーカーとして16S rRNA遺伝子のプロモーターによって発現するaadA(アミノグリコシド3''-アデニリルトランスフェラーゼ)遺伝子が挿入されている。さらに、目的遺伝子を挿入するためのMCSがaadA発現カセットに隣接している(図1)。
(葉緑体形質転換用ベクターpNY22の作製)
pNY18におけるT219IおよびV239Iに加えてさらなるアミノ酸置換を導入するために、前述した緑色発光タイプの改変型ルシフェラーゼ遺伝子「ABcT219I,V239I-IAV」をコードする遺伝子断片が挿入されたベクターpGEM-ABcT219I,V239I-IAVを鋳型として、以下に示す2組のプライマー対を用いて2種のDNA断片(R1およびR2)をPCR増幅した。

(R1断片の増幅に用いたプライマーセット)
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
HlucR-Rv gcaacagcttcactaacttcttttg[配列番号:15]

(R2断片の増幅に用いたプライマーセット)
HlucR-Fd caaaagaagttagtgaagctgttgc[配列番号:16]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
次に、得られたR1およびR2のDNA断片を回収・混合し、これらを鋳型としてプライマーを加えないでPCR増幅を行った(assembled reaction)。この反応により2種のDNA断片が連結されたR1-R2断片を得た。さらに、得られた断片にプライマーセット:
Gluc-Fd1 ccatggaaaacatggaaaacgatgaaaa[配列番号:5]
PL-R1 tctagaattacacggcgatctttcc[配列番号:14]
を加えてPCR増幅を行い、R1-R2断片を大量調製した。このPCR産物をpGEM-Tベクター(Promega社製)にクローニングしてpGEM-ABcT291,V239I,G326S-IAVを得た。
pGEM-ABcT219I,V239I,G326S-IAVを制限酵素NcoIおよびXbaIで処理することで、「ABcT219I,V239I,G326S-IAV」を切り出し、同じ制限酵素NcoIおよびXbaIで処理したpMIK1ベクターにクローニングすることで、pA-ABcT219I,V239I,G326S-IAVを得た。
次に、pA-ABcT219I,V239I,G326S-IAVを制限酵素SacIおよびKpnIで処理することでPpsbA-ABcT219I,V239I,G326S-IAV-Trps16断片を切り出し、同じく制限酵素SacIおよびKpnIで処理したpRV112A'とライゲーションすることによってpNY22を得た(図1)。
(葉緑体形質転換タバコの作出)
タバコ葉緑体の形質転換は、基本的に、Svab,Z.およびMaliga,P.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,90,913-917(1993)およびDaniell,H.,Ruiz,O.N.およびDhingra A.,Methods in Molecular Biology,Vol.286:Transgenic Plants,111-137の方法に従って行った。タバコは25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期でRM寒天培地(前掲、Svabら(1993))上で無菌的に生育させた。
詳細には、播種後1ヶ月程度の野生型タバコ(Nicotiana tabacum cv.Xanthi)から緑葉(第5〜9葉)を切除し、パーティクルガン(BIO-RAD社製:PDS1000He)を用いて遺伝子導入を行った。詳細には以下のとおりである。マクロキャリアおよびストッピングスクリーンは、PDS1000Heのチャンバー内の上から1段目に設置した。切除したタバコの葉は、寒天培地に敷いた濾紙上に葉の裏側を上向きにして置き、ターゲット台に載せてチャンバー内の3段目に設置した。その結果、金粒子の射出距離は約9cmとなる。PDS1000Heを27-28 in Hgに減圧した後、1100psiのrupture discを使用して金粒子を射出した。また、葉緑体形質転換用ベクター(pNY01、pNY18およびpNY22)を導入するための粒子として、金粒子(粒径0.6μm)を用いた。
パーティクルガンにより葉緑体形質転換用ベクターを導入したタバコ葉は、暗所下、25℃にて3日間インキュベートした後、葉を3mm角程度に切片化して、スペクチノマイシン(200mg/L)を含有するRMOP寒天培地(Svab,Z.およびMaliga,P.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,87,8526-8530(1990))に移した。その後、25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期で培養した。4〜6週間後に、スペクチノマイシン耐性のシュートまたはカルスが得られた。
得られたスペクチノマイシン耐性シュート/カルスを、スペクチノマイシン(500mg/L)を含有するRMOP寒天培地に植え継ぎ、一定の段階まで生育したシュート/カルスから一部組織を採取し、細胞内の全DNAを調製した。その全DNAを鋳型として特異的プライマーセットを用いたPCRを行うことによって、葉緑体DNAの所定の領域に目的遺伝子が導入されていることを確認した。
目的遺伝子の導入が確認された形質転換体系統のシュートを、スペクチノマイシン(500mg/L)を含有するRM寒天培地に移植することにより、発根ならびに植物体への分化を誘導した。再生した植物体の緑葉から全DNAを調製し、サザンブロッティングにより遺伝子導入型葉緑体DNAのホモプラズミシティーを調べた。その結果、ほぼ全ての葉緑体DNAが組換え型に置換された緑色発光タイプのNY01で2系統、NY18で3系統、及び赤色発光タイプのNY22で2系統を得た。
3.形質転換タバコの発光像の撮影
RM寒天培地上で無菌的に生育させた形質転換タバコ(El2::luc-SKL、NY01、NY18およびNY22系統)より、生長点(腋芽)を含む茎を切り出し、新しいRM寒天培地(El2::luc-SKL用はカナマイシン100mg/Lを含有、NY01、NY18およびNY22用はスペクチノマイシン500mg/Lを含有)に植え継いだ。25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期で、約1ヶ月間、組織培養用ポット(アグリポット)にて無菌培養した。同程度の大きさ(丈10cm程度)に生育した形質転換タバコを、特許第3044006号明細書に開示されている筒状微多孔質焼成体(外形2.8cm、内径2.0cm、長さ8.0cm)に移植し、室温、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光条件で、3日間馴化させた。急激な湿度低下に伴う植物へのダメージを軽減するために、馴化1日目は植物をラップで完全に覆い、2日目にはラップを一部外し、3日目にラップを取り除いた。なお、馴化過程では、筒状微多孔質焼成体とともに、液肥としてはRM液体培地(ショ糖および抗生物質を含まない)を用いた。
馴化後の植物の地上部を切除し、生け花の要領で、茎を0.2mMルシフェリン水溶液(RM液体培地で懸濁)5.0mLに浸した。これにより、茎の切り口からルシフェリンが浸透し、維管束を通してルシフェリンが植物全体に行きわたる。ルシフェリンを投与してから35分後、ライトキャプチャー(AE-6971/2型 C/F,アトー株式会社製)を用いて発光像を撮影した(露出時間2分)。その結果を図2および図3に示す。
図2および図3の写真から明らかなように、核形質転換タバコ(El2::luc-SKL系統)は茎および葉の維管束で強い発光を示すが、葉の柔組織(葉肉細胞等)での発光は弱い。また、NY01系統では葉全体で発光が確認できるが、茎や葉の維管束での発光強度はEl2::luc-SKLに及ばない。一方で、NY18およびNY22系統の発光は葉や茎など全ての部分での発光が強く、NY01系統と比較すると特に茎での発光強度が向上している。
また、NY01とNY18およびNY22系統との植物体全体としての発光強度を比較すると以下の特性が認められた。
・発光持続時間
上記の方法(0.2mMルシフェリン水溶液を茎の切り口から浸透させる)でのNY18およびNY22系統の発光は、肉眼で少なくとも6時間以上確認できた。24時間後の発光は目視できるレベルではないが、新たに調製したルシフェリン水溶液に浸けると、再び発光が目視できた。
・発光の濃度依存性
NY18およびNY22に高濃度のルシフェリン水溶液(1mM)を投与した場合は、濃度に比例して発光強度も増加する傾向が見られるが、それに反して、発光持続時間が短くなった(非常に強い発光が確認できるのは1時間程度で、それ以降は急速に発光が減衰した)。
・ルシフェリンの投与法
茎あるいは葉の切り口からルシフェリンを吸収させる方法が最も効果的な方法ではあるが、高濃度のルシフェリン(1mM程度)を葉や茎に直接噴霧することでも、肉眼で確認できるレベルの発光が観察できた。また、根からルシフェリンを吸収させることも可能で、その発光はライトキャプチャー等の高感度検出装置により確認できた。
4.形質転換タバコの発光能力(ルシフェラーゼ活性)の測定
作出した形質転換タバコの発光能力について、より再現性の高い方法で比較するために、各形質転換体の葉から細胞内の全可溶性タンパク質(TSP)を粗抽出して、ルシフェラーゼ活性をin vitroで測定した。
RM寒天培地上で無菌的に生育させた形質転換タバコ(El2::luc-SKL、NY01およびNY18系統)より、生長点(腋芽)を含む茎を切り出し、新しいRM寒天培地(El2::luc-SKL用はカナマイシン100mg/Lを含有、NY01およびNY18用はスペクチノマイシン500mg/Lを含有)に植え継いだ。25℃、16時間明(50μmolm-2sec-1)/8時間暗の光周期で、約1ヶ月間、組織培養用ポット(アグリポット)にて無菌培養した。同程度の大きさ(丈10cm程度)に生育した形質転換タバコから、頂端の生長点より数えて2〜4枚目の若い葉を2または3枚(合計新鮮重量:0.3〜0.4g)切り出し、液体窒素で凍結させた。各サンプルを液体窒素で冷却した乳鉢および乳棒によって粉砕し、その粉末を葉の新鮮重量0.1g当たり200μLの1X Luciferase Cell Culture Lysis Reagent(Luciferase Assay system:Promega社製)に懸濁し、30秒間撹拌した。その後1分間氷上に静置した後、4℃、20,000×gにて10分間の遠心分離を行い、上清を回収した。この遠心分離作業を2回繰り返して得られた上清画分について、Bradford法によりタンパク質濃度を定量し、細胞内の全可溶性タンパク質(TSP)とした。
ルシフェラーゼ活性の測定には、1μg/μLのBSAを含有する1X Luciferase Cell Culture Lysis ReagentでTSPを希釈して用いた(希釈濃度:TSP当量1ng/μL)。TSP希釈液10μLをLuciferase Assay Reagent(Luciferase Assay system:Promega社製)100μLと混合し、ルミノメーター(MiniLumat LB9506:EG&G BERTHOLD社製)にセットした。1分間静置した後、5秒間の発光測定を行った。各TSP希釈液について相対発光単位を5回測定し、その平均値をグラフ化した(図4)。葉全体のルシフェラーゼ活性は、NY01系統がEl2::luc-SKL系統の32倍以上高く、さらにNY18系統はNY01系統よりも4.5倍以上高い。
従って、本発明の改変型ルシフェラーゼで葉緑体を形質転換したNY18系統は、同遺伝子で核を形質転換したEl2::luc-SKL系統よりも約150倍高いルシフェラーゼ活性を発現していることが明らかになった。
本発明の葉緑体形質転換植物により、夜間や暗所においても観賞したりその存在を認識したりすることができ、関心をひく癒しの対象となる植物を提供することができる。したがって、本発明は林業、園芸業、農業、室内装飾の産業分野において応用することができる。
SEQ ID NO: 1
Amino acid sequence of modified firefly luciferase.
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Nucleotide sequence of modified firefly luciferase.
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Amino acid sequence of modified firefly luciferase.
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Nucleotide sequence of modified firefly luciferase.
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Forward primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
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Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
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Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
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Reverse primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.
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Forward primer for PCR-amplifying polynucleotide encoding modified firefly luciferase fragment.

Claims (22)

  1. 改変型ルシフェラーゼを葉緑体において発現する葉緑体形質転換植物。
  2. 改変型ルシフェラーゼが、高活性および/または安定型のルシフェラーゼである請求項1記載の葉緑体形質転換植物。
  3. 葉および茎の全体で発光する請求項1または2記載の葉緑体形質転換植物。
  4. 緑色に発光する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
  5. 赤色ないし橙色に発光する請求項1ないし3のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
  6. 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:1のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、配列番号:1のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドから選択される請求項1ないし4のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
  7. 該改変ルシフェラーゼが、請求項6に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる請求項1ないし4または6のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
  8. 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:2のポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる請求項7記載の葉緑体形質転換植物。
  9. 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:3のアミノ酸配列からなるポリペプチド、または、配列番号:3のアミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸残基が欠失、置換および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドから選択される請求項1、2、3または5のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
  10. 該改変型ルシフェラーゼが、請求項9に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる請求項1、2、3、5または9のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
  11. 該改変型ルシフェラーゼが、配列表の配列番号:4のポリヌクレオチド、または、そのポリヌクレオチドに相補的な配列を有するポリヌクレオチドにストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ、ルシフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドによりコードされる請求項10記載の葉緑体形質転換植物。
  12. 該植物が、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida);イネ(Oryza sativa);ダイズ(Glycine max);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.);レタス(Lactuca sativa);ニンジン(Daucus carota);ワタ(Gossypium spp.);アオウキクサ(Spirodela perpusilla); ポプラ(Populus alba);テンサイ(Beta vulgaris L.);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens);およびクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)よりなる群から選択される請求項1ないし11のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物。
  13. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物から得られる改変ルシフェラーゼ酵素。
  14. 改変型ルシフェラーゼを発現する葉緑体形質転換植物の作出方法であって、
    (i)生物からルシフェラーゼをコードする野生型遺伝子をクローニングし、安定性および発光効率が向上するようにその遺伝子を改変し、または、発光色が変化するようにその遺伝子を改変し、
    (ii)改変したルシフェラーゼ遺伝子を、該遺伝子が植物の葉緑体DNAに組み込まれて作動するように調製したベクターに組み込み、
    (iii)該ベクターを植物の組織に導入し、
    (iv)組換え体を選抜し、ついで
    (v)選抜した植物組織を培養して葉緑体形質転換植物体を得る
    工程を含む該作出方法。
  15. 工程(i)における遺伝子の改変が、配列番号:2で示されるポリヌクレオチドの作製である請求項14記載の作出方法。
  16. 工程(i)における遺伝子の改変が、配列番号:4で示されるポリヌクレオチドの作製である請求項14記載の作出方法。
  17. 工程(iii)における植物の組織への導入をパーティクルガンによって行う請求項14ないし16のいずれか1項に記載の作出方法。
  18. 該植物が、タバコ(Nicotiana tabacum)、ジャガイモ(Solanum tuberosum)、トマト(Solanum lycopersicum)、ナス(Solanum melongena L.)、ペチュニア(Petunia hybrida);イネ(Oryza sativa);ダイズ(Glycine max);シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)、キャベツ(Brassica oleracea L.);レタス(Lactuca sativa);ニンジン(Daucus carota);ワタ(Gossypium spp.);アオウキクサ(Spirodela perpusilla); ポプラ(Populus alba);テンサイ(Beta vulgaris L.);ゼニゴケ(Marchantia polymorpha L.);ヒメツリガネゴケ(Physcomitrella patens);およびクラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)よりなる群から選択される請求項14ないし17のいずれか1項に記載の作出方法。
  19. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物の葉、茎および/または根の切り口からルシフェリン水溶液を吸水させることにより発光させることを特徴とする、葉緑体形質転換植物の発光方法。
  20. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物の植物体表面にルシフェリン水溶液を噴霧することを含む葉緑体形質転換植物の発光方法。
  21. 植物体表面が植物の葉、茎および/または根の表面である請求項20記載の発光方法。
  22. 請求項1ないし12のいずれか1項に記載の葉緑体形質転換植物の根からルシフェリン水溶液を吸水させることを含む葉緑体形質転換植物の発光方法。
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