JP2011216299A - 燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コアシェル構造を有する触媒のシェル部の破壊を防止することができる燃料電池システムおよびその運転方法を提供する。
【解決手段】電解質膜と、電解質膜の一方の面側に備えられるアノード触媒層と、電解質膜の他方の面側に備えられるカソード触媒層と、を備える膜電極構造体、及び膜電極構造体を含む積層体を狭持する一対のセパレータ、を具備する燃料電池を備えた燃料電池システムであって、アノード触媒層及びカソード触媒層のうち少なくとも一方に、水素吸蔵能力を有するコア部と該コア部を被覆するシェル部とを含むコアシェル構造の触媒が備えられ、燃料電池の運転を停止する際にコアシェル構造の触媒にアルコールを供給できるアルコール供給手段を備える燃料電池システムおよびその運転方法とする。
【選択図】図2
【解決手段】電解質膜と、電解質膜の一方の面側に備えられるアノード触媒層と、電解質膜の他方の面側に備えられるカソード触媒層と、を備える膜電極構造体、及び膜電極構造体を含む積層体を狭持する一対のセパレータ、を具備する燃料電池を備えた燃料電池システムであって、アノード触媒層及びカソード触媒層のうち少なくとも一方に、水素吸蔵能力を有するコア部と該コア部を被覆するシェル部とを含むコアシェル構造の触媒が備えられ、燃料電池の運転を停止する際にコアシェル構造の触媒にアルコールを供給できるアルコール供給手段を備える燃料電池システムおよびその運転方法とする。
【選択図】図2
Description
本発明は、燃料電池を備える燃料電池システムおよびその運転方法に関する。
燃料電池は、電解質層(以下において、「電解質膜」という。)と、電解質膜の両面側にそれぞれ配設される電極(アノード触媒層及びカソード触媒層)とを備える膜電極構造体(以下において、「MEA」ということがある。)で電気化学反応を起こし、当該電気化学反応により発生した電気エネルギーを外部に取り出す装置である。燃料電池の中でも、家庭用コージェネレーション・システムや自動車等に使用される固体高分子型燃料電池(以下において、「PEFC」という。)は、低温領域で運転することができる。このPEFCは、高いエネルギー変換効率を示し、起動時間が短く、かつシステムが小型軽量であることから、電気自動車の動力源や携帯用電源として注目されている。
PEFCの単セルは、MEAと、当該MEAを含む積層体を狭持する一対の集電体(セパレータ)と、を備え、MEAには、プロトン伝導性能を発現するプロトン伝導性ポリマーが含有される。PEFCの運転時には、アノードに水素含有ガス(以下において、「水素」という。)が、カソードに酸素含有ガス(以下において、「空気」という。)が、それぞれ供給される。アノードへと供給された水素は、アノード触媒層に含まれる触媒の作用下でプロトンと電子に分離し、水素から生じたプロトンは、アノード触媒層及び電解質膜を通ってカソード触媒層へと達する。一方、電子は、外部回路を通ってカソード触媒層へと達し、かかる過程を経ることにより、電気エネルギーを取り出すことが可能になる。そして、カソード触媒層へと達したプロトン及び電子と、カソード触媒層へと供給された空気に含有されている酸素とが、カソード触媒層に含まれる触媒の作用下で反応することにより、水が生成される。
PEFCの性能を長期に亘って維持するためには、電極に含まれる触媒の性能を長期に亘って維持することが求められる。例えば特許文献1に、導電性担体に貴金属含有粒子を担持させた燃料電池用電極触媒であって、該貴金属含有粒子は、貴金属合金からなるコア部とその外周に形成された該コア部と組成が異なる貴金属含有層からなるシェル部とのコアシェル構造を有することを特徴とする、燃料電池用電極触媒が開示されている。かかる燃料電池用電極触媒は、添加元素の溶出を抑制し寿命特性に優れるとしている。
しかしながら、上記特許文献1に開示されているようなコアシェル構造の触媒を燃料電池に用いた場合、以下のような問題があった。コアシェル構造の触媒のコア部には、パラジウムなどの水素吸蔵能を有する金属が用いられることがある。パラジウムは、0.05V以下になると水素を吸蔵して格子が3%膨張するという特性を有する(他の水素吸蔵能を有するNiなどの金属も同様に膨張する。)。一方、燃料電池は、停止時に電圧が0Vになる。したがって、燃料電池の停止時において、コアシェル構造の触媒のコア部に水素が吸収され、コア部が膨張してコア部を被覆しているシェル部が破壊される虞があった。
そこで本発明は、コアシェル構造を有する触媒のシェル部の破壊を防止することができる燃料電池システムおよびその運転方法を提供することを課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成をとる。すなわち、
第1の本発明は、電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に備えられるアノード触媒層と、該電解質膜の他方の面側に備えられるカソード触媒層と、を備える膜電極構造体、及び該膜電極構造体を含む積層体を狭持する一対のセパレータ、を具備する燃料電池を備えた燃料電池システムであって、アノード触媒層及びカソード触媒層のうち少なくとも一方に、水素吸蔵能力を有するコア部と該コア部を被覆するシェル部とを含むコアシェル構造の触媒が備えられ、燃料電池の運転を停止する際にコアシェル構造の触媒にアルコールを供給できるアルコール供給手段を備える燃料電池システムである。
第1の本発明は、電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に備えられるアノード触媒層と、該電解質膜の他方の面側に備えられるカソード触媒層と、を備える膜電極構造体、及び該膜電極構造体を含む積層体を狭持する一対のセパレータ、を具備する燃料電池を備えた燃料電池システムであって、アノード触媒層及びカソード触媒層のうち少なくとも一方に、水素吸蔵能力を有するコア部と該コア部を被覆するシェル部とを含むコアシェル構造の触媒が備えられ、燃料電池の運転を停止する際にコアシェル構造の触媒にアルコールを供給できるアルコール供給手段を備える燃料電池システムである。
第1の本発明及び以下に示す本発明(以下、単に「本発明」という。)において、「膜電極構造体を含む積層体」とは、少なくとも膜電極構造体を含む積層体を意味する。すなわち、該積層体は、膜電極構造体に加えて、燃料電池に備えられるその他の要素を含んでいても良い。「その他の要素」としては、PEFCの単セルにおいて一対のセパレータに狭持されるMEAを除く公知の構成要素を例示することができ、具体的には、MEAとセパレータとの間に配設されるガス拡散層や撥水層等を例示することができる。また、「水素吸蔵能力を有するコア部と該コア部を被覆するシェル部とを含むコアシェル構造の触媒」とは、コアシェル構造を有しており、燃料電池の触媒として機能し得る粒子であって、コア部が水素吸蔵能力を有するものであれば特に限定されない。例えば、貴金属合金を含有するコア部と、コア部とは組成が異なる貴金属合金を含有するシェル部とを有しており、該貴金属合金が、貴金属と遷移金属とを含む合金であるものを例示できる。コア部に含まれる貴金属合金は水素吸蔵能を有していれば特に限定されず、そのような合金としては、パラジウム、ニッケルなどの金属を含む合金を挙げられる。さらに、「燃料電池の運転を停止する際」とは、燃料電池の運転を停止する直前または停止した後から所定の時間内を意味する。なお、「所定の時間」とは、アルコールの供給量や供給速度によって適宜決定される時間である。
第2の本発明は、電解質膜と、該電解質膜の一方の面側に備えられるアノード触媒層と、該電解質膜の他方の面側に備えられるカソード触媒層と、を備える膜電極構造体、及び該膜電極構造体を含む積層体を狭持する一対のセパレータ、を具備する燃料電池を備えた燃料電池システムの運転方法であって、アノード触媒層及びカソード触媒層のうち少なくとも一方に、水素吸蔵能力を有するコア部と該コア部を被覆するシェル部とを含むコアシェル構造の触媒が備えられ、燃料電池の運転を停止する際に、アルコール供給手段によってコアシェル構造の触媒にアルコールを供給する、燃料電池システムの運転方法である。
本発明によれば、コアシェル構造の触媒にアルコールを供給することによって、該アルコールが反応して微弱な電圧を発生させることができる。上記のように、水素吸蔵能を有するコア部は所定電圧以下になると水素を吸蔵して膨張するが、本発明によれば、燃料電池の運転が停止しているときでも上記のように微弱な電圧を発生させることができるため、コア部が水素を吸蔵して膨張することを抑制できる。したがって、本発明によれば、コアシェル構造の触媒のシェル部の破壊を防止することができる燃料電池システムおよびその運転方法を提供することができる。
以下、図面を参照しつつ、本発明の燃料電池システムおよびその運転方法について説明する。
図1(a)は、本発明の燃料電池システムに備えられる燃料電池の単セルの一例について、概略的に示す断面図である。図1(a)において、上下方向がセルの積層方向である。また、図1(b)は、図1(a)に示した単セルのアノード触媒層及び/又はカソード触媒層に含まれるコアシェル構造の触媒について概略的に示す断面図である。
本発明の燃料電池システムに備えられる燃料電池は、電解質膜1と、電解質膜1の一方の面側に備えられるアノード触媒層2と、電解質膜1の他方の面側に備えられるカソード触媒層3と、を備える膜電極構造体4、及び膜電極構造体4を含む積層体を狭持する一対のセパレータ5、6を具備する単セル10を備えている。以下、アノード触媒層2とカソード触媒層3とを区別する必要がない場合は、単に「触媒層」という場合がある。さらに、本発明の燃料電池システムは、アルコール供給手段(不図示)を備えている。アルコール供給手段については、後に詳述する。
電解質膜1は、燃料電池の電解質膜として用いられるものであれば特に限定されない。具体的には、含水状態下でプロトン伝導性能を発現するプロトン伝導性ポリマーを含有する固体高分子膜であれば良い。プロトン伝導性ポリマーとしては、含フッ素高分子を骨格として少なくともスルホン酸基、ホスホン酸基、及びリン酸基のうち一種を有するフッ素系のポリマー(例えば、Nafion等)のほか、ポリオレフィンのような炭化水素を骨格とする炭化水素系のポリマー等を挙げることができる。
アノード触媒層2及びカソード触媒層3は、単セル10の運転時に電気化学反応を生じさせる際の触媒として機能する物質(以下、「触媒」という。)と、プロトン伝導性物質とを含有している。プロトン伝導性物質としては、上述したプロトン伝導性ポリマー等を例示することができる。また、アノード触媒層2及びカソード触媒層3のうち少なくとも一方に含まれる触媒は、図1(b)に示したような、コア部21とコア部21を被覆するシェル部22とを有するコアシェル構造の触媒20(以下、コアシェル構造の触媒を単に「触媒20」ということがある。)である。アノード触媒層2及びカソード触媒層3の一方にのみ触媒20が含まれる場合、他方の触媒層には、燃料電池の触媒として用いられるものを特に限定することなく用いることができる。このような触媒の具体例としては、白金や白金合金等を例示することができる。
触媒20は、コアシェル構造を有しており、燃料電池の触媒として機能し得る粒子であって、コア部21が水素吸蔵能力を有するものであれば特に限定されない。例えば、貴金属合金を含有するコア部21と、コア部21とは組成が異なる貴金属合金を含有するシェル部22とを有しており、該貴金属合金が、貴金属と遷移金属とを含む合金であるものを例示できる。コア部に含まれる貴金属合金は水素吸蔵能を有していれば特に限定されず、そのような合金としては、パラジウム、ニッケルなど金属を含む合金を挙げられる。
セパレータ5、6は、燃料電池のセパレータとして用いられるものであれば特に限定されない。セパレータ5、6が導電性を有する場合はセパレータ5、6を集電体として機能させることが可能であり、セパレータ5、6が導電性を有さない場合は、集電部材を別に設ける必要がある。
単セル10の運転時には、セパレータ5に設けられた溝(不図示)を介して水素がアノード触媒層2に供給されるとともに、セパレータ6に設けられた溝(不図示)を介して空気がカソード触媒層3に供給される。セパレータ5の溝を介して供給されることにより、アノード触媒層2へと達した水素は、アノード触媒層2に含有される触媒の作用下でプロトン及び電子に分離する。すなわち、アノード触媒層2では下記式1に示す反応が進行する。
H2 → 2H++2e− (式1)
アノード触媒層2で生じたプロトンは、アノード触媒層2、電解質膜1、及び、カソード触媒層3に含有されるプロトン伝導性ポリマーを伝って、カソード触媒層3へと達し、アノード触媒層2で生じた電子は、外部回路(不図示)を経由してカソード触媒層3へと達する。そして、セパレータ6に設けられた溝を介して供給されることにより、カソード触媒層3へと達した空気に含有される酸素と、アノード触媒層2からカソード触媒層3へと移動してきたプロトン及び電子とが、カソード触媒層3に含有される触媒の作用下で反応することにより、カソード触媒層3で水が生成される。すなわち、カソード触媒層3では下記式2に示す反応が進行する。
2H++2e−+(1/2)O2 → H2O (式2)
H2 → 2H++2e− (式1)
アノード触媒層2で生じたプロトンは、アノード触媒層2、電解質膜1、及び、カソード触媒層3に含有されるプロトン伝導性ポリマーを伝って、カソード触媒層3へと達し、アノード触媒層2で生じた電子は、外部回路(不図示)を経由してカソード触媒層3へと達する。そして、セパレータ6に設けられた溝を介して供給されることにより、カソード触媒層3へと達した空気に含有される酸素と、アノード触媒層2からカソード触媒層3へと移動してきたプロトン及び電子とが、カソード触媒層3に含有される触媒の作用下で反応することにより、カソード触媒層3で水が生成される。すなわち、カソード触媒層3では下記式2に示す反応が進行する。
2H++2e−+(1/2)O2 → H2O (式2)
さらに、本発明の燃料電池システムは、アルコール供給手段を備えている。アルコール供給手段は、単セル10の運転を停止する際に、触媒20にアルコールを供給することができる手段である。また、後に説明するように、アルコール供給手段は、単セル10を起動する際に、アノード触媒層2にアルコールを供給することもできる手段であることが好ましい。
本発明の燃料電池システムに備えられるアルコール供給手段は、アノード触媒層2及び/又はカソード触媒層3にアルコールを供給できる手段であれば特に限定されない。アルコールを供給する具体例な方法としては、例えば、アノード触媒層2に水素を供給するための流路及び/又はカソード触媒層3に空気を供給するための流路(以下、これらの流路を「ガス供給ライン」という。)に、液体のアルコールを霧状にして注入する方法が考えられる。また、液体のアルコールを貯留するタンクを設けるとともに、該タンクとガス供給ラインとの間にバルブを設け、該バルブを適宜開放することによって、アルコールを適切に供給する方法が考えられる。なお、全体にできるだけ均一にアルコールを分布させるためには、ガス供給ラインに液体のアルコールを霧状にして注入することが好ましい。また、残留している酸素との急激な反応を防ぎながらアルコールを供給するためには、アノード触媒層2側にアルコールを供給することが好ましい。
また、本発明に用いることができるアルコールは、メタノール(沸点65度)、エタノール(沸点78度)、プロパノール(沸点97度)等があるが、還元反応の速度の点より、メタノールが好ましい。
次に、図2及び図3を参照しつつ、本発明の燃料電池システムに備えられた燃料電池を停止する際、及び起動する際の方法について説明する。図2は、図1に示した単セル10を停止する際のアノード触媒層2及びカソード触媒層3に存在するガス並びに標準電位を示す図である。図3は、図1に示した単セル10を起動する際のアノード触媒層2及びカソード触媒層3に存在するガス並びに標準電位を示す図である。図2(a)〜(d)及び図3(a)〜(c)において、カソード触媒層3の入口側にあるガスとその標準電位を四角形の左上に記載し、カソード触媒層3の出口側にあるガスとその標準電位を四角形の右上に記載し、アノード触媒層2の入口側にあるガスとその標準電位を四角形の左下に記載し、アノード触媒層2の出口側にあるガスとその標準電位を四角形の右下に記載している。「入口側」とは、触媒層での電気化学反応に供されるガス(以下、「反応ガス」という場合がある。)が供給される側を意味し、「出口側」とは、触媒層での電気化学反応で生成されたガスや反応ガスのうち該電気化学反応で消費されなかったガスなどが排出される側を意味する。なお、図2及び図3は、単セル10の運転を停止する際及び起動する際に、アルコール供給手段によってメタノールがアノード触媒層2に供給される形態について説明している。
まず、燃料電池を停止する際の方法について説明する。
単セル10の通常運転時においては、アノード触媒層2に十分な水素が供給されるとともに、カソード触媒層3に十分な空気が供給されることによって、上記式1及び式2の反応が進行する。この状態から、単セル10の運転を停止する際、まず、アノード触媒層2に供給していた水素の供給を止め、アルコール供給手段によってアノード触媒層2に所定量のメタノールを供給する。かかる過程を経ると、図2(a)に示すように、カソード触媒層3には空気が行き渡っており、アノード触媒層2では、入口側にメタノールが存在し、出口側に水素が残留した状態となる。このとき、単セル10の開回路電圧は、約0.5Vとなる。単セル10の運転を停止する際に供給するメタノールの供給量は、アノード触媒層2側の水素を十分に置換できる量が望ましい。すなわち、アノード触媒層2に水素を供給する流路(以下、「水素供給ライン」という。)における、単セル10に最も近い地点で閉じられているバルブの単セル10側において、気化した際にアノード触媒層2側の水素供給ライン内を置換する体積以上となるメタノールを霧状にして注入することが望ましい。なお、過剰にメタノールを注入した場合は、単セル10の起動時に残留したメタノールを水素によって置換することが困難になり、単セル10起動時の電圧の立ち上がりが遅延することになる。したがって、単セル10の運転を停止する際に供給するメタノールの供給量は、上記の置換に必要な量とカソード触媒層3に残留した空気中の酸素との反応で消費される量(酸素の体積の2/3)の合計量以下が望ましい。酸素と反応するメタノールの体積は、下記式3から求めることができ、存在する酸素の体積の2/3に相当する体積となる。
アノード触媒層2への水素の供給及びカソード触媒層3へ空気の供給を停止して単セル10の運転を停止し、アノード触媒層2にメタノールを供給して所定の時間が経過すると、メタノールはアノード触媒層2中に行き渡る。さらに、アノード触媒層2から電解質膜1を通ってカソード触媒層3側に透過したメタノールによって、カソード触媒層3に存在していた空気中の酸素が下記式3の反応によって消費され、図2(b)に示したように、系内全体にメタノールが行き渡る。
2CH3OH+3O2 → 2CO2↑+4H2O (式3)
2CH3OH+3O2 → 2CO2↑+4H2O (式3)
その後、カソード触媒層3の出口側が開放されている場合は、図2(c)に示したように、カソード触媒層3の出口側から空気が流入する。
さらにその後、図2(d)に示したように、カソード触媒層3の出口側から流入した空気中の酸素によって、カソード触媒層3に存在していたメタノールが上記式3の反応によって消費される。また、カソード触媒層3から電解質膜1を通ってアノード触媒層2側に透過した酸素によって、アノード触媒層2に存在していたメタノールの一部も上記式3の反応によって消費される。
このように、本発明の燃料電池システムは、アルコール供給手段を備えることによって、触媒層にアルコールを供給することができる。触媒層にコアシェル構造の触媒が含まれていた場合、供給されたアルコールが反応することによって微弱な電圧が発生する。水素吸蔵能を有するコア部は所定電圧以下になると水素を吸蔵して膨張するが、本発明によれば微弱な電圧を発生させることができるため、コア部が水素を吸蔵して膨張することを防止できる。したがって、本発明によれば、燃料電池の運転停止時にコアシェル構造の触媒のシェル部の破壊を防止することができる燃料電池システムおよびその運転方法を提供することができる。
また、アノード触媒層2にメタノールを供給することによって、カソード触媒層3の一部が高電位状態に曝されることを抑制できる。メタノール酸化の活性化過電圧が大きいことと、カソード触媒層3の一部が高電位状態に曝されることを抑制できることとによって、カソード触媒層3に含まれる触媒の担体やカソード触媒層3側のガス拡散層(不図示)の構成材料等として用いられるカーボンの酸化(劣化)を防ぐことができる。この理由については、後に詳細に説明する。
次に、単セル10を起動する際の方法について説明する。
単セル10を起動する際、まず、アノード触媒層2に所定量のメタノールを供給する。このとき、図3(a)に示すように、カソード触媒層3には空気が行き渡っており、アノード触媒層2の入口側にはメタノールが存在し、アノード触媒層2の出口側には空気が残留した状態となる。単セル10を起動する際に供給するメタノールの量は、アノード触媒層2に残留した空気中の酸素を完全に除去する量以上が望ましい。すなわち、単セル10の水素供給ラインにおける単セル10に最も近い地点で閉じられているバルブの単セル10側において、アノード触媒層2側の水素供給ライン内を空気が充満していると考え、その空気中の酸素との反応で消費される量(空気中の酸素の体積の2/3)の合計以上となるアルコールを霧状にして注入することが望ましい。酸素と反応するメタノールの体積は、上記式3から求めることができ、存在する酸素の体積の2/3に相当する体積となる。なお、過剰にメタノールを注入した場合は、単セル10の起動時に残留したメタノールを水素によって置換することが困難になり、単セル10起動時の電圧の立ち上がりが遅延することになる。したがって、単セル10を起動する際に供給するメタノールの量は、アノード触媒層2側が完全に空気に置換されていたとして、その空気を十分に置換できる量以下が望ましい。すなわち、単セル10の水素供給ラインにおける単セル10に最も近い地点で閉じられているバルブの単セル10側において、気化した際に水素供給ライン内を置換できる体積と、アノード触媒層2側の空気中に存在する酸素と反応するメタノールの体積の合計以下となるメタノールを霧状にして注入することが望ましい。
アノード触媒層2にメタノールが供給されると、アノード触媒層2に残留していた空気中の酸素は上記式3の反応によって消費され、図3(b)に示すように、アノード触媒層2中にメタノールが行き渡った状態となる。
その後、カソード触媒層3に十分な空気を供給するとともに、アノード触媒層2へ十分な水素を供給すると、図3(c)に示したように、アノード触媒層2側には水素、カソード触媒層3側には空気が行き渡った状態となり、上記式1及び式2の反応が進行する。
なお、アノード触媒層2への水素の供給と、カソード触媒層3への空気の供給とは、どちらが先に開始されても良く、同時に開始されてもよい。ただし、アノード触媒層2への水素の供給を開始する前に、アノード触媒層2へメタノールを供給しておくことが好ましい。以下に説明するように、従来の燃料電池システムに比べてカソード触媒層3に含まれる触媒の担体やカソード触媒層3側のガス拡散層の構成材料等として用いられるカーボンの酸化(劣化)を防ぐことができるからである。
図4は、従来の燃料電池システムに備えられる燃料電池の単セルの一例について、概略的に示す断面図である。図4に示した単セル50は、アルコールが供給されない以外は単セル10と同様である。
アノード触媒層2に十分な量の水素が供給されるとともに、カソード触媒層3に十分な量の空気が供給されている間は、アノード触媒層2内で上記式1の反応が、カソード触媒層3内で上記式2の反応が、それぞれ生じ、単セル10、50から電気エネルギーを取り出すことができる。
一方、燃料電池の運転の停止時や起動する際には、アノード触媒層2の入口側以外が空気(酸素)で満たされた状態となることがある。このとき、単セル10ではメタノールが供給されるため、アノード触媒層2の入口側にはメタノールが存在しているが(図2(d)、図3(a)参照)、単セル50では水素が存在する。すなわち、運転停止時や起動する際において単セル50では、アノード触媒層2の入口側(以下、「アノード触媒層2x」という。)には水素が存在するが、アノード触媒層2の出口側(以下、「アノード触媒層2y」という。)には水素が行き渡っていない状態になっている場合がある。かかる状態の単セル50では、水素が存在するアノード触媒層2xで上記式1の反応が生じる。当該反応で生じたプロトンは電解質膜1を経て、電解質膜1に対してアノード触媒層2xと反対側に位置するカソード触媒層3xへと達し、上記式1の反応で生じた電子はアノード触媒層2yへと達する。そして、空気が供給されているカソード触媒層3xにおいて、酸素と、アノード触媒層2xより到達したプロトンと、電解質膜1に対してアノード触媒層2yと反対側に位置するカソード触媒層3yより到達した電子と、が反応することにより、上記式2の反応が生じる。
これに対し、水素が行き渡っていないアノード触媒層2yでは、酸素が存在しており、上記式1の反応ではなく、残留酸素と、アノード触媒層2xにおける上記式1の反応で生じた電子と、カソード触媒層3yから到達するプロトンと、が反応することで水が生成される。アノード触媒層2x及びカソード触媒層3x、並びに、アノード触媒層2y及びカソード触媒層3yでこのような反応が生じると、カソード触媒層3yが最大約2.0Vの高電位状態に曝されると考えられる。高電位状態に曝されたカソード触媒層3yでは、以下の反応も生じる。
(1/2)C+H2O → (1/2)CO2+2H++2e− (式4)
(1/2)C+H2O → (1/2)CO2+2H++2e− (式4)
ここで、上記式4は、カーボンの酸化反応であり、この反応が進むと、カソード触媒層3に含まれる触媒を担持しているカーボンや、カソード触媒層3側のガス拡散層を構成するカーボン等が劣化する。
一方、単セル10では、水素ではなくメタノールが供給されることによって、カソード触媒層3yは最大1.5V程度までしか上昇せず、カソード触媒層3に含まれる触媒を担持しているカーボンや、カソード触媒層3側のガス拡散層を構成するカーボン等が劣化することを抑制できる。また、メタノールが酸化する際の活性化過電圧が大きいことからもカーボンが酸化することを抑制できる。したがって、本発明によれば、燃料電池の停止時及び起動する際にカーボンが酸化することを抑制できる。
これまでの本発明の説明では、単セル10の運転を停止する際及び起動する際に、アルコール供給手段によってメタノールがアノード触媒層2に供給される形態について説明したが、本発明はかかる形態に限定されない。コアシェル構造の触媒の破壊を防ぐという観点からは、コアシェル構造の触媒にアルコールが供給されれば良く、アノード触媒層とカソード触媒層のどちらにアルコールを供給しても良い。ただし、カソード触媒層が高電位状態に曝されてカソード触媒層などを構成するカーボンが酸化することを防ぐという観点からは、アノード触媒層にアルコールが供給されることが好ましい。
また、図1に示した単セル10では、電解質膜1、アノード触媒層2、及びカソード触媒層3からなる膜電極構造体4と該膜電極構造体を挟持する一対のセパレータ5、6とを備える形態を例示したが、本発明はかかる形態に限定されない。例えば、反応ガスを触媒層へと均一に供給させやすくする等の目的で、カーボンペーパー、カーボンクロス等からなるガス拡散層や撥水層が、セパレータと触媒層との間に備えられても良い。さらに、本発明の燃料電池システムに備えられる単セルは、図1に例示したような平板型に限定されず、チューブ型等であっても良い。
以上、現時点において最も実践的で好ましいと思われる実施形態に関連して本発明を説明したが、本発明は本願明細書中に開示された実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲および明細書全体から読み取れる発明の要旨或いは思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴う燃料電池システムおよびその運転方法もまた本発明の技術的範囲に包含されるものとして理解されなければならない。
本発明の燃料電池システムおよびその運転方法は、携帯機器、電気自動車、ハイブリッド車等の電源として好適に用いることができる。
1 電解質膜
2 アノード触媒層
3 カソード触媒層
4 膜電極構造体
5、6 セパレータ
2 アノード触媒層
3 カソード触媒層
4 膜電極構造体
5、6 セパレータ
Claims (2)
- 電解質膜と、前記電解質膜の一方の面側に備えられるアノード触媒層と、前記電解質膜の他方の面側に備えられるカソード触媒層と、を備える膜電極構造体、及び前記膜電極構造体を含む積層体を狭持する一対のセパレータ、を具備する燃料電池を備えた燃料電池システムであって、
前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層のうち少なくとも一方に、水素吸蔵能力を有するコア部と該コア部を被覆するシェル部とを含むコアシェル構造の触媒が備えられ、
前記燃料電池の運転を停止する際に前記コアシェル構造の触媒にアルコールを供給できるアルコール供給手段を備える燃料電池システム。 - 電解質膜と、前記電解質膜の一方の面側に備えられるアノード触媒層と、前記電解質膜の他方の面側に備えられるカソード触媒層と、を備える膜電極構造体、及び前記膜電極構造体を含む積層体を狭持する一対のセパレータ、を具備する燃料電池を備えた燃料電池システムの運転方法であって、
前記アノード触媒層及び前記カソード触媒層のうち少なくとも一方に、水素吸蔵能力を有するコア部と該コア部を被覆するシェル部とを含むコアシェル構造の触媒が備えられ、
前記燃料電池の運転を停止する際にアルコール供給手段によって前記コアシェル構造の触媒にアルコールを供給する、燃料電池システムの運転方法。
Priority Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2010082786A JP2011216299A (ja) | 2010-03-31 | 2010-03-31 | 燃料電池システム及び燃料電池システムの運転方法 |
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- 2010-03-31 JP JP2010082786A patent/JP2011216299A/ja active Pending
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