JP2011215194A - 直視型の画像表示装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】直視型の画像表示装置において、観察者が表示画像にピントを合わせる作業を簡単化する。
【解決手段】直視型の画像表示装置において、画像信号に応じた画像光を形成する画像光形成部102と、その形成された画像光が当該画像表示装置から出射する出射部148との間における光路上に、瞳孔12の位置と光学的に共役な瞳孔共役位置を設定し、その瞳孔共役位置と実質的に同じ位置に、複数の透光部172を有する絞り160を設置する。これにより、表示画像を形成するための画像光の焦点深度が深くなるため、観察者は表示画像にピントを合わせ易くなる。
【選択図】図2

Description

本発明は、表示すべき画像を表す画像光を観察者の眼球の瞳孔内に入射し、それにより、観察者に対して前記画像を表示する直視型の画像表示装置に関するものであり、特に、その画像表示装置による表示画像に観察者がピントを合わせる作業を簡単化する技術に関するものである。
表示すべき画像を表す画像光を観察者の眼球の瞳孔内に入射し、それにより、観察者に対して前記画像を表示する直視型の画像表示装置が既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。この種の画像表示装置は、一般に、(a)画像信号に応じた画像光を形成する画像光形成部と、(b)その形成された画像光が当該画像表示装置から出射する出射部とを含むように構成される。この直視型の画像表示装置によれば、観察者は、画像が投影されるスクリーンを媒介にすることなく、画像を直接的に観察することができる。
直視型の画像表示装置を、画像光形成方式によって分類すると、空間変調型、すなわち、前記画像光形成部が、光源と、その光源からの入射光を用いて前記画像光を形成する液晶または有機ELであって前記画像信号に応じて作動するものとを含むように構成されたものと、走査型、すなわち、前記画像光形成部が、前記画像信号に応じた強度を有する光を出射する光源と、その光源からの入射光を走査することによって前記画像光を形成する光走査部とを含むように構成されたものとに分類される。
また、直視型の画像表示装置を、表示画像の観察方式によって分類すると、シースルー型、すなわち、観察者が、当該画像表示装置による表示画像に重ねて、現実外界を観察することが可能にするものと、密閉型、すなわち、現実外界からの入射光を遮断し、観察者が、表示画像のみを観察することを可能にするものとに分類される。
また、直視型の画像表示装置は、観察者への装着方式によって分類すると、ヘッドマウント型、すなわち、観察者の頭部に装着されてその頭部と一体的に移動するものと、覗き込み型、すなわち、観察者から独立して設置され、デジタルスチルカメラやデジタルビデオカムコーダなどの撮像装置用の電子ビューファイダに代表されるものとに分類される。
特開2006−98570号公報
いずれにしても、直視型の画像表示装置を用いて観察者が表示画像を観察するためには、一般に、観察者が、表示画像にピントを合わせる作業が簡単であることが、当該画像表示装置の使い勝手を向上させるために重要である。
しかし、従来の直視型の画像表示装置は、同じ画像が単一の焦点しか有しないように画像光を形成するように構成されていた。そのため、従来の直視型の画像表示装置では、観察者が表示画像にピントを合わせる作業が煩雑で、面倒であった。以下、さらに具体的に説明する。
まず、従来のシースルー型の画像表示装置を用いる場合について説明する。この場合、観察者は、現実外界にピントが合っている状態で、表示画像にもピントを合わせようとすると、偶然でないと、現実外界と表示画像とに一緒にピントが合わないし、合うことがあったとしても、その頻度は非常に低い。現実外界の奥行きと表示画像の奥行きとが常に互いに一致することは保証されていないからである。
その結果、観察者は、現実外界へのピント合わせ作業はさておき、表示画像にピントを合わせようとするが、同じ画像が単一の焦点しか有しないように画像光が形成されるうえに、観察者は、少なからず試行錯誤に依存しない限り、表示画像にピントを合わせることができない。そのため、従来のシースルー型の画像表示装置では、観察者が表示画像にピントを合わせる作業が煩雑で、面倒であった。
次に、従来の密閉型の画像表示装置である場合について説明する。この場合、観察者は、観察開始当初に、表示画像にピントを合わせようとするが、表示画像が全く見えていない状態でその表示画像にピントを合わせなければならない場合がある。この場合、観察者は、無意識に、眼を動作させ、表示画像にピントを合わせようと試行する。このときの最初のピント位置は、観察者の習慣や癖に基づくものであるから、観察者によってまちまちであり、それにもかかわらず、上述のように、同じ画像が単一の焦点しか有しないように画像光が形成される。
そのため、従来のシースルー型の画像表示装置と同様に、従来の密閉型の画像表示装置も、観察者が表示画像にピントを合わせる作業が煩雑で、面倒であった。
以上説明した事情を背景にして、本発明は、表示すべき画像を表す画像光を観察者の眼球の瞳孔内に入射し、それにより、観察者に対して前記画像を表示する直視型の画像表示装置において、観察者が表示画像にピントを合わせる作業を簡単化することを目的としてなされたものである。
本発明によって下記の各態様が得られる。各態様は、項に区分し、各項には番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載するが、このように、各項を他の項の番号を引用する形式で記載することにより、各項に記載の技術的特徴をその性質に応じて適宜独立させることが可能となる。
(1) 表示すべき画像を表す画像光を観察者の眼球の瞳孔内に入射し、それにより、観察者に対して前記画像を表示する直視型の画像表示装置であって、
画像信号に応じた画像光を形成する画像光形成部と、
その形成された画像光が当該画像表示装置から出射する出射部と
を含み、
前記画像光形成部と前記出射部との間における光路上に、前記瞳孔の位置と光学的に共役な瞳孔共役位置が存在し、
当該画像表示装置は、さらに、
前記瞳孔共役位置と実質的に同じ位置に設置された絞りを含み、
その絞りは、
前記画像形成部から入射する画像光を部分的に遮断する遮光部と、
前記画像形成部から入射する画像光を複数の部分光に分割する複数の透光部と
を含む画像表示装置。
ここに、「光路」は、例えば、前記画像形成部が光源を有する場合に、その光源と前記出射部との間における光路を意味するように解釈することが可能である。また、「瞳孔共役位置」および「瞳孔共役位置と実質的に同じ位置」は、前記画像光形成部が複数の光学部品の組合せである場合に、それら光学部品間の空間に存在することが可能であり、また、同様に、前記出射部が複数の光学部品の組合せである場合に、それら光学部品間の空間に存在することが可能である。また、「画像形成部から入射する画像光」なる用語は、その画像形成部が、前記光路上に並んだ複数の部品を有する場合に、それら部品のいずれかから入射する光を意味するように解釈することが可能である。
また、「絞り」は、前記画像形成部を構成する部品に一体的に形成したり別体的に装着することも、前記出射部を構成する部品に一体的に形成したり別体的に装着することも、それら部品から分離して設置することも可能である。
また、「複数の透光部」は、例えば、前記画像光を、各々、前記画像光の断面積(または直径)より小さい断面積(または直径もしくは内径)を有する複数の部分光に分割するように構成される。
(2) 前記各透光部は、各透光部から出射して前記瞳孔に入射する各部分光の射出瞳が前記瞳孔内に収まるように、構成されている(2)項に記載の画像表示装置。
この画像表示装置の一例においては、前記各透光部の直径(または内径)が、各透光部から出射して前記瞳孔に入射する各部分光の射出瞳の直径が前記瞳孔の直径より小さくなるように、設定される。
(3) さらに、前記複数の透光部から前記瞳孔に至る複数の光路間に光路長差を発生させる光路長差発生素子を含む(1)または(2)項に記載の画像表示装置。
(4) 前記光路長差発生素子は、前記複数の光路のうち、予め選択された少なくとも一つの光路上に設置された第1光学素子であって、それ自体、有限の焦点距離を有しないものを含む(3)項に記載の画像表示装置。
(5) 前記光路長差発生素子は、前記複数の光路のうち、予め選択された少なくとも一つの光路上に設置された第2光学素子であって、それ自体、有限の焦点距離を有するものを含む(3)項に記載の画像表示装置。
(6) 前記画像光形成部は、前記画像信号に応じた強度の光束を2次元方向にすることによって前記画像光を形成する(1)ないし(5)項のいずれかに記載の画像表示装置。
本発明によれば、前記複数の透光部を有する絞りにより、前記画像形成部から入射する画像光が、各々、その画像光の直径より小さい直径を有する複数の部分光に分割される。各部分光は、もとの画像光より小径であるため、もとの画像光より焦点深度が深い。したがって、本発明によれば、観察者が表示画像にピントを合わせる作業が、もとの画像光が分割されることなく瞳孔に入射する従来の画像表示装置より、簡単化される。
上述のように、各部分光は、もとの画像光より焦点深度が深いが、同時に、各部分光によって形成される射出瞳の直径も小径となる。その射出瞳径が小径化すると、眼球の回旋運動が原因で瞳孔の中心がその射出瞳の中心に対して移動すると、射出瞳が瞳孔から外れ易くなってしまう。
これに対し、本発明によれば、前記絞りが、瞳孔共役位置と実質的に同じ位置に設置されており、しかも、その絞りからは複数の部分光が出射するため、それら部分光と同じものが、瞳孔に入射することになる。それら部分光のそれぞれによって射出瞳が形成されるため、結局、複数の射出瞳の束が形成されることになる。それら射出瞳のうちのいずれかでも瞳孔に照射される限り、観察者は、表示画像を安定して観察し続けることができる。よって、本発明によれば、瞳孔の移動に対する画像表示の安定性を擬制にすることなく、ピンホールの原理により、観察者が表示画像にピントを合わせる作業を簡単化することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に従うヘッドマウントディスプレイ装置(以下、「HMD」と略称する。)を示す系統図である。 図2は、図1に示すHMD内の光路のうちの要部を簡略的に示す光路図である。 図3(a)は、図1および図2に示す絞りのレイアウトの一例を示す側面図であり、図3(b)は、その絞りのレイアウトの別の例を示す側面図である。 図4(a)は、図1および図2に示す絞りを示す正面図であり、図4(b)は、その絞りを示す断面図である。 図5は、本発明の第2実施形態に従うヘッドマウントディスプレイ装置(以下、「HMD」と略称する。)を示す系統図である。 図6は、図5に示すHMD内の光路のうちの要部を簡略的に示す光路図である。 図7(a)は、図6に示すHMDに対する比較例における光路を示す光路図であり、図7(b)は、絞りを示す正面図であり、図7(c)は、図7(b)に示す絞りが図7(a)に示すHMD内の光路に設置された場合に、その絞りからの出射光が、正面を向いている観察者の眼に入射して結像する様子を示す光路図であり、図7(d)は、図7(b)に示す絞りが図7(a)に示すHMD内の光路に設置された場合に、その絞りからの出射光が、非正面位置にある観察者の眼に入射して結像する様子を示す光路図である。 図8は、本発明の第3実施形態に従うヘッドマウントディスプレイ装置(以下、「HMD」と略称する。)内の光路のうちの要部を簡略的に示す光路図である。 図9(a)は、図8に示す絞りに光路長差発生素子の一例が装着されて成る絞りユニットを示す正面図であり、図9(b)は、その絞りユニットを示す断面図であり、図9(c)は、図8に示す絞りに光路長差発生素子の別の例が装着されて成る絞りユニットを示す正面図であり、図9(d)は、その絞りユニットを示す断面図である。
以下、本発明のさらに具体的な実施の形態のうちのいくつかを図面に基づいて詳細に説明する。
図1には、本発明の第1実施形態に従うヘッドマウントディスプレイ装置(以下、「HMD」と略称する。)が系統的に表されている。このHMDは、観察者の頭部(図示しない)に装着された状態で使用される。
このHMDは、画像信号に応じた強度の光束としてのレーザビームを2次元的に走査し、その走査されたレーザビームを観察者の眼10の瞳孔12に入射させ、その眼10の網膜14上に画像を直接に投影表示する網膜走査型の画像表示装置の一例である。このHMDは、前記(1)項における「直視型の画像表示装置」の一例を構成している。
なお付言するに、本実施形態は、本発明をヘッドマウント型の画像表示装置に適用した場合の一例であるが、覗き込み型の画像表示装置に本発明を適用することも可能である。また、本実施形態は、本発明を密閉型の画像表示装置に適用した場合の一例であるが、シースルー型の画像表示装置に本発明を適用することも可能である。
光源ユニット20は、3原色(RGB)を有する3つのレーザビーム(すなわち、波長が互いに異なる3色の成分光)を1つのレーザビーム(合成光)に結合して任意色のレーザビームを生成するために、赤色のレーザビームを発するRレーザ30と、緑色のレーザビームを発するGレーザ32と、青色のレーザビームを発するBレーザ34とを備えている。
各レーザ30,32,34は、本実施形態においては、レーザダイオードとして構成されている。それらレーザ30,32,34から出射した複数本のレーザビームはそれぞれ、コリメート光学系40,42,44によって平行光化される。その後、各レーザビームは、波長依存性を有する各ダイクロイックミラー50,52,54に入射させられ、それにより、各レーザビームが波長に関して選択的に反射・透過させられ、それら3つのダイクロイックミラー50,52,54を代表する1つのダイクロイックミラー50に最終的に入射して1本のレーザビームに結合される。
その後、その1本のレーザビームは、結合光学系56によって集光され、光ファイバ82に入射する。光ファイバ82に入射したレーザビームは、光伝送媒体としての光ファイバ82中を伝送され、その光ファイバ82の後端から放射させられるレーザビームを平行光化するコリメート光学系84を経て光走査部24に入射する。本実施形態においては、その光走査部24と、光源としてのレーザ30,32,34とが互いに共同して、前記(1)項における「画像形成部」の一例を構成している。
以上、光源ユニット20のうち光学的な部分を説明したが、以下、電気的な部分を説明する。光源ユニット20は、コンピュータ(図示しない)を主体とする信号処理回路60を備えている。信号処理回路60は、外部から供給された映像信号(前記(1)項における「画像信号」の一例である)に基づき、各レーザ30,32,34を駆動するための信号処理と、レーザビームの走査を行うための信号処理とを行うように設計されている。
各レーザ30,32,34を駆動するため、信号処理回路60は、外部から供給された映像信号に基づき、網膜14上に投影すべき画像上の各画素ごとに、レーザビームにとって必要な色と強度とを実現するために必要な駆動信号(前記映像信号を反映する信号)を、各レーザドライバ70,72,74を介して各レーザ30,32,34に供給する。
光走査部24は、HSスキャナ(高速スキャナ、主スキャナの一例)100とLSスキャナ(低速スキャナ、副スキャナの一例)102とを備えている。HSスキャナ100は、表示すべき画像の1フレームごとに、レーザビームを主走査方向に相対的に高速で走査する光学系である。これに対し、LSスキャナ102は、表示すべき画像の1フレームごとに、レーザビームを、主走査方向とは直交する副走査方向に相対的に低速で走査する光学系である。
具体的に説明するに、HSスキャナ100は、本実施形態においては、機械的偏向を行うミラー120を備えた弾性体124のねじり共振によってそのミラー120を揺動させ、それにより、入射したレーザビームを主走査方向に走査する。このHSスキャナ100は、駆動回路126を有しており、この駆動回路126は、信号処理回路60から供給される駆動信号により、ミラー120を駆動する。
図1に示すように、HSスキャナ100によって走査されたレーザビームは、第1リレー光学系130によってLSスキャナ102に伝送される。第1リレー光学系130は、前段の光学系であるレンズ132と、後段の光学系であるレンズ134とを備えている。
LSスキャナ102は、機械的偏向を行う揺動ミラーとしてのガルバノミラー140を非共振モードで強制的に電磁駆動し、それにより、入射したレーザビームを副走査方向に走査する。ガルバノミラー140には、HSスキャナ100から走査されて出射したレーザビームがリレー光学系130によって集光されて入射するようになっている。LSスキャナ102は、駆動回路142を有しており、その駆動回路142は、信号処理回路60から供給される駆動信号(または同期信号)により、ガルバノミラー140を駆動する。
以上説明したHSスキャナ100とLSスキャナ102との共同により、レーザビームが2次元的に走査される。その走査されたレーザビームによって表現される画像光は、第2リレー光学系150を経て、かつ、このHMDのハウジング(図示しない)に透光部として形成された出射部148(図2参照)から出射して、観察者の眼10に照射される。第2リレー光学系150は、前段の光学系であるレンズ152と、後段の光学系であるレンズ154とを備えている。
図2には、図1に示すHMDにおける光路が簡略化されて示されている。具体的に説明するに、主走査系であるHSスキャナ100と副走査系であるLSスキャナ102との間に第1リレー光学系130が存在する。この第1リレー光学系130においては、レンズ132とレンズ134とが同一光軸上において並んでいる。それらレンズ132と134との間に中間像面IP1が存在する。
LSスキャナ102と眼10との間に第2リレー光学系150が存在する。この第2リレー光学系150においては、レンズ152とレンズ154とが同一光軸上において並んでいる。それらレンズ152と154との間に中間像面IP2が存在する。
第1リレー光学系130と第2リレー光学系150との間に、LSスキャナ102のガルバノミラー140が配置されており、このガルバノミラー140は、瞳孔12と光学的に共役な瞳孔共役位置に設置されている。図1、図2および図3(a)に示すように、本実施形態においては、この瞳孔共役位置と実質的に同じ位置(例えば、ガルバノミラー140の可及的近傍位置)に、複数のピンホールが形成された絞り160が設置されている。
具体的には、図3(a)に示すように、絞り160は、ガルバノミラー140の下流側の位置であって、そのガルバノミラー140にできる限り近い位置に設置されている。さらに具体的には、絞り160は、ガルバノミラー140の揺動軌跡から逃げた位置に設置されており、ガルバノミラー140の揺動を阻害しない。
本実施形態においては、図3(a)に示すように、絞り160が、ガルバノミラー140から独立した部品として構成されているが、図3(b)に示すように、ガルバノミラー140に一体的に形成することが可能である。例えば、ガルバノミラー140への入射光のうち一部は反射するが、一部は反射しないような反射面をガルバノミラー140に形成することが可能である。この場合には、絞り160を前記瞳孔共役位置と同じ位置に設置することが可能となる。
また、本実施形態においては、絞り160がこのHMDに着脱不能に設置されているが、着脱可能に設置することが可能である。この場合には、観察者の意思に応じ、表示画像を複数の部分光によって形成することによってそれの焦点深度を深くし、ピントの合わせ易さを優先させたい場合には、絞り160を図示の作用位置に位置決めするが、表示画像をもとの画像光によって形成することによって画像の鮮明さを優先させたい場合には、絞り160を図示の作用位置から退避させることが可能である。
図4(a)には、絞り160が正面図で示され、また、図4(b)には、絞り160が断面図で示されている。絞り160は、遮光部170と、複数の透光部172とを有するように構成されている。
遮光部170は、LSスキャナ102のガルバノミラー140(または、それより上流の、HSスキャナ100のミラー120)から入射する画像光を部分的に遮断する。この遮光部170は、例えば、概して円板状を成しており、また、不透明体によって構成される。この遮光部170は、遮光性を高めるため、必要に応じ、黒塗り塗装やアルマイト処理が施される。
複数の透光部172は、それぞれ、遮光部170をそれの厚さ方向に貫通する空気開口部(透明体でも可)として形成されている。それら透光部172は、絞り160に入射したもとの画像光を、各々、その画像光の直径より小さい直径を有する複数の部分光に分割する。すなわち、複数の透光部172は、1本の画像光を、複数本の部分光の束に変換するのである。各透光部172は、ピンホールとして機能し、各透光部172から出射する光は、もとの画像光より小径であるから、もとの画像光より深い焦点深度を有する。
図4(a)に示すように、複数の透光部172は、本実施形態においては,それぞれ、互いに等しい直径を有しているが、そのような寸法構成は本発明を実施する上において不可欠なことではない。例えば、中央の透光部172を大径にする一方、周辺の透光部172を小径にすることが可能である。
また、本実施形態においては、複数の透光部172が、遮光部170上に、それの中心点から放射状に延びる複数の直線に沿って配置されているが、このような放射状配置も本発明を実施する上において不可欠なことではない。例えば、複数本の同心円上に複数の透光部172が、同じ同心円上において等間隔であるのみならず、異なる同心円間においても等間隔であるように、配置することが可能である。
本実施形態においては、複数の透光部172が、絞り160をそれの光軸方向に投影した場合に、互いにオーバラップしないように、遮光部170上に配置されている。また、複数の透光部172に外接する一円周(以下、「外接円」という。)の直径は、LSスキャナ102から絞り160への入射ビームの直径と実質的に等しいか、または、入射ビームの直径より小さい。
遮光部170内における透光部172の個数、各透光部172の大きさおよび複数の透光部172間の相対位置関係の設計に際し、種々の観点があるが、例えば、瞳孔12が、複数の射出瞳の束に対して移動する際に、瞳孔12に入射する光量の変動を抑制したいという観点がある。具体的には、瞳孔12が、複数の射出瞳の束に対して移動すると、複数の射出瞳のうち、瞳孔12内に存在する部分の合計面積が変化し、これは、観察者によって視認される画像の明るさの変化につながる。したがって、複数の透光部172を設計する際に、複数の射出瞳のうち、瞳孔12内に存在する部分の合計面積が、瞳孔12の移動につれてできる限り緩やかに変化するように、複数の透光部172の幾何学的特徴を設計することが望ましい。
本実施形態によれば、複数の透光部172を有する絞り160により、LSスキャナ102から入射する画像光が、各々、その画像光の直径より小さい直径を有する複数の部分光に分割される。各部分光は、もとの画像光より小径であるため、もとの画像光より焦点深度が深い。また、各透光部172の直径は、各透光部172から出射して瞳孔12に入射する各部分光の射出瞳の直径が瞳孔12の直径より小さくなるように、設定されている。したがって、本実施形態によれば、観察者が表示画像にピントを合わせる作業が、もとの画像光が分割されることなく瞳孔12に入射する従来の画像表示装置より、簡単化される。
上述のように、各部分光は、もとの画像光より焦点深度が深いが、同時に、各部分光によって形成される射出瞳の直径も小径となる。しかし、その射出瞳径が小径化すると、眼球の回旋運動が原因で瞳孔12の中心が前記光路の光軸に対して移動すると、射出瞳が瞳孔12から外れ易くなってしまう。
これに対し、本実施形態によれば、絞り160が、瞳孔共役位置と実質的に同じ位置に設置されており、しかも、その絞り160からは複数の部分光が出射するため、それら部分光と同じものが、瞳孔12に入射することになる。それら部分光のそれぞれによって射出瞳が形成されるため、結局、複数の射出瞳の束(ピンホールの集合体)が形成されることになる。それら射出瞳のうちのいずれかでも瞳孔12に照射される限り、観察者は、表示画像を安定して観察し続けることができる。よって、本実施形態によれば、瞳孔12の移動に対する画像表示の安定性を擬制にすることなく、ピンホールの原理により、観察者が表示画像にピントを合わせる作業を簡単化することができる。
このHMDを起動させると、観察者は、このHMDによる表示画像を観察するために、本能的な動作として、何かにピントを合わせようとする。本実施形態によれば、従来より焦点深度が深い画像光によって表示画像が形成されるため、観察者は、その表示画像にピントを合わせるための動作が簡単化される。その結果、このHMDの使い勝手が向上する。
次に、本発明の第2実施形態に従うヘッドマウントディスプレイ装置(以下、「HMD」と略称する。)を説明する。
まず概略的に説明するに、このHMDは、光源から一斉に入射した面状の光を、空間変調素子を用いて、各画素ごとに空間的に変調し、そのようにして形成された画像光を観察者の瞳孔を経て直接的に観察者の網膜上に投影し、それにより、観察者が画像を虚像として観察することを可能にするように構成されている。すなわち、このHMDは、空間変調型なのである。
具体的には、このHMDは、図5に示すように、光源部312と、画像光形成部314と、リレー光学系316と、接眼光学系318とを、それらの順に、互いに直列に並ぶように備えている。本実施形態においては、光源部312と画像光形成部314とが互いに共同して、前記(1)項における「画像光形成部」の一例を構成している。
光源部312は、光源としての白色LED320と、その白色LED320からの白色光をコリメートするコリメートレンズ322とを含むように構成されている。白色LED320は、LEDドライバ324によって駆動され、それにより、白色光を発光する。本実施形態においては、光源部312が、白色LED320とコリメートレンズ322とを含むように構成されているが、これに代えて、例えば、バックライトを主体として構成することが可能である。
画像光形成部314は、フラットパネルディスプレイ(空間変調素子の一例)としてのLCD(液晶ディスプレイ)330を含むように構成されている。LCD330は、コリメートレンズ322からの白色光を、各画素ごとに、3色の成分光(RGB)に分解するカラーフィルタ(RGBフィルタ。図示しない)と、各成分光の透過度を制御する液晶パネル(図示しない)とを含むように構成されている。その液晶パネルは、複数の画素を有しており、各画素ごとに、各成分光の透過度を制御する。LCD330は、LCDドライバ332によって駆動され、それにより、白色LED320から出射した白色光に対して空間変調を施す。
本実施形態においては、フラットパネルディスプレイの一例としてLCD330が採用されているが、これに限定されることなく、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(EL)としたり、デジタルマイクロミラーデバイスとすることが可能である。
リレー光学系316は、前段リレーレンズ340と後段リレーレンズ342とを含むように構成されている。前段リレーレンズ340の前側焦点位置にLCD330が、その後側焦点位置に絞り350がそれぞれ配置され、また、後段リレーレンズ342の前側焦点位置に絞り350が配置されている。
絞り350は、図7(b)に正面図で示すように、遮光部352と、複数の透光部354とを有するように構成されているが、第1実施形態における絞り160と基本的な構成を共通にしているため、重複した説明を省略する。
図5に示すように、接眼光学系318は、接眼レンズ360と、その接眼レンズ360からの画像光をユーザの瞳孔に誘導する光ガイドとしてのハーフミラー362とを含むように構成されている。本実施形態においては、その光ガイドがハーフミラー362として構成されているため、ユーザは、ハーフミラー362を通して現実外界を観察すると同時に、接眼レンズ360からの画像光を、ハーフミラー362の反射によって受光して表示画像を観察することが可能である。すなわち、このHMDは、現実外界に重ねて表示画像を観察可能なシースルー型なのである。
図6には、このHMD内における光路が光路図で示されている。絞り350は、リレー光学系316内の瞳孔共役位置とちょうど同じ位置、すなわち、前段リレーレンズ340の後側焦点位置と一致し、かつ、後段リレーレンズ342の前側焦点位置と一致する位置に設置されている。なお、図6においては、ハーフミラー362が省略されている。
図7(a)には、このHMD内の光路(図6参照)に絞り350が設置されていない比較例における光路が光路図で示されている。この比較例においては、図6と同様に、LCD330、リレー光学系316(前段リレーレンズ340および後段リレーレンズ342を含む)および接眼レンズ360がそれらの順に並んでいる。
さらに、この比較例においては、リレー光学系316の瞳孔共役位置とちょうど同じ位置に、絞り350に代えて、従来の絞り370が設置されている。この絞り370は、1個の透光部を、この絞り370を厚さ方向に貫通する1個の空気開口部として有している。その透光部の直径は、図7(b)に示す絞り350における複数の透光部354に外接する一円周の直径と実質的に同じである。
この比較例においては、図7(a)に示すように、LCD330から絞り370に入射した1本の画像光は、その絞り370によって分割されることなく、その絞り370を通過して瞳孔12に入射する。したがって、絞り370への入射光と絞り370からの出射光とは、同じ焦点深度を有する。
これに対し、本実施形態においては、図7(c)に示すように、LCD330から絞り350に入射した1本の画像光は、その絞り350によって複数本の部分光に分割され、それら部分光が一緒に瞳孔12に入射する。絞り350から出射する各部分光は、上記比較例において絞り370から出射する1本の画像光より小径であるから、焦点深度が深い。したがって、本実施形態によれば、上記比較例より、観察者は、表示画像にピントを合わせ易い。
さらに、本実施形態においては、絞り350が瞳孔共役位置と同じ位置に設置されており、よって、この絞り350から、互いに分離して出射した複数本の部分光は、やがて瞳孔12に、絞り350の出射時と同じ形態で、すなわち、互いに結合することなく、複数本の部分光として入射する。その結果、それら部分光によって複数の射出瞳が、互いに重なり合うことなく、瞳孔12に入射する。
すなわち、本実施形態によれば、複数の射出瞳の集まりが瞳孔12に入射するのであり、その結果、各部分光単独では、1個の小径の射出瞳しか形成されないが、複数本の部分光全体では、互いにオーバラップしない複数の射出瞳の集まりが形成される。よって、本実施形態によれば、図7(d)に示すように、眼10の眼球が回旋中心RCまわりに回旋した結果、前記光路の光軸に対して瞳孔12の中心位置が移動することがあっても、その移動量がそれほど大きくない限り、いずれかの射出瞳は瞳孔12から外れたとしても、いずれかの射出瞳は瞳孔12内に位置することになる。よって、本実施形態によれば、眼10の回旋運動の有無にかかわらず安定した画像表示が実現される。
したがって、本実施形態によれば、空間変調型のHMDにおいて、第1実施形態に従う走査型のHMDと共通する効果、すなわち、眼10の回旋運動に対する画像表示の安定化という機能を犠牲にすることなく、画像光の焦点深度を深くし、それにより、観察者が表示画像にピントを容易に合わせることができるという効果が得られる。
ただし、第1実施形態とは異なり、本実施形態に従うHMDは、シースルー型である。この場合、観察者は、現実外界にピントが合っている状態で、表示画像にもピントを合わせようとする。しかし、現実外界の奥行きと表示画像の奥行きとが常に互いに一致することは保証されていない。これに対し、本実施形態によれば、参照画像が、複数の焦点距離を有しているため、観察者は参照画像にピントを合わせ易くなる。また、観察者は、参照画像を、参照画像にも現実外界にもピントが合った状態で観察するが容易となる。その結果、このHMDの使い勝手が向上する。
次に、本発明の第3実施形態に従うヘッドマウントディスプレイ装置(以下、「HMD」と略称する。)を説明する。ただし、本実施形態は、第2実施形態に対し、絞りに関する要素のみが異なり、他の要素については、共通するため、共通する要素については、同一の符号または名称を使用して引用することにより、重複した説明を省略し、異なる要素についてのみ、詳細に説明する。
図8には、このHMD内の光路のうちの要部が簡略的に示されている。図8は、図7(c)と基本的に共通する光路図であるが、本実施形態においては、絞り350における複数の透光部354から瞳孔12に至る複数の光路間に光路長差を発生させる光路長差発生素子378が追加されている。光路長差発生素子378も、瞳孔共役位置と実質的に同じ位置に設置されている。
図9(a)には、絞り350に、その光路長差発生素子378の一例であるレンズ380が装着されて成る絞りユニット382が正面図で示され、図9(b)には、その絞りユニット382が断面図で示されている。レンズ380は、絞り350における複数の透光部354にそれぞれ、各透光部354を覆う姿勢で装着されている。ただし、図9(b)には、複数の透光部354を代表する1個の透光部354のみが、それにレンズ380が装着されている状態で示されている。各レンズ380は、それ自体、有限の焦点距離を有する光学素子であり、よって、前記(5)項における「第2光学素子」の一例を構成している。
それらレンズ380はそれぞれ、互いに異なる屈折力(レンズパワー)を有している。よって、絞り350における複数の透光部354から瞳孔12に至る複数の光路間に光路長差が発生し、その結果、複数の透光部354から出射する複数の部分光は、互いに異なる複数の結像位置(透光部354と同数の結像位置)を有することになる。
このことを図8を参照してさらに具体的に説明するに、図8には、絞り350における複数の透光部354のうち、中央のものから出射した第1部分光L1と、最も下側のものから出射した第2部分光L2とが、それぞれ、瞳孔12に入射する様子が示されている。それら2本の部分光L1およびL2は、いずれも、LCD330上の同じ画素から出射したものである。図8に示すように、第1部分光L1は、眼10内において、位置P1において結像するのに対し、第2部分光L2は、位置P1より手前の位置P2において結像する。このように、本実施形態によれば、同じ画像が複数の焦点を有するように、複数の部分光が形成される。
因みに、図7(c)および(d)は、いずれも、絞り350にレンズ380が装着されていない場合の光路を示している。この場合、図7(c)に示すように、第1部分光L1は、位置P1において結像し、また、図7(d)に示すように、第2部分光L2も、位置P1において結像する。このように、絞り350にレンズ380が装着されていない場合には、同じ画素から延び出て、絞り350における複数の透光部354を経て瞳孔12に至る複数の光路間に光路長差が発生せず、よって、それら光路が同じ結像位置を共有する。
次に、光路長差発生素子378の別の例を説明する。図9(c)には、絞り350に、光路長差発生素子378の別の例である直方体状の透明体の一例であるガラスブロック390が装着されて成る絞りユニット392が正面図で示され、図9(d)には、その絞りユニット392が断面図で示されている。ガラスブロック390は、絞り350における複数の透光部354にそれぞれ、各透光部354を覆う姿勢で装着されている。ただし、図9(d)には、複数の透光部354を代表する1個の透光部354のみが、それにガラスブロック390が装着されている状態で示されている。各ガラスブロック390は、それ自体、有限の焦点距離を有しない光学素子であり、よって、前記(4)項における「第1光学素子」の一例を構成している。
それらガラスブロック390はそれぞれ、互いに異なる厚みを有している。したがって、みかけ上、それらガラスブロック390はそれぞれ、互いに異なるパワーを有することになる。よって、レンズ380の場合と同様に、同じ画素から延び出て、絞り350における複数の透光部354を経て瞳孔12に至る複数の光路間に光路長差が発生し、その結果、複数の透光部354から出射する複数の部分光は、それぞれ、互いに異なる複数の焦点を有する。
いずれにしても、複数の透光部354から出射する複数の部分光間に焦点距離差が発生するのであるが、このことは、同じ画像が複数の焦点を有するように、最終的な画像光が形成されることを意味する。よって、本実施形態によれば、各部分光によって形成される画像の焦点深度が従来より深いことに加えて、各々、同じ画像を形成する複数の部分光が複数の焦点を有することにより、観察者が表示画像にピントを合わせるための作業が簡単化される。
なお付言するに、本実施形態においては、レンズ380もガラスブロック390も、複数の透光部354のすべてにそれぞれ装着されているが、それら透光部354のうちの一部のみに装着される態様で本発明を実施することが可能である。
以上、本発明の実施の形態のいくつかを図面に基づいて詳細に説明したが、これらは例示であり、前記[発明の開示]の欄に記載の態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変形、改良を施した他の形態で本発明を実施することが可能である。

Claims (6)

  1. 表示すべき画像を表す画像光を観察者の眼球の瞳孔内に入射し、それにより、観察者に対して前記画像を表示する直視型の画像表示装置であって、
    画像信号に応じた画像光を形成する画像光形成部と、
    その形成された画像光が当該画像表示装置から出射する出射部と
    を含み、
    前記画像光形成部と前記出射部との間における光路上に、前記瞳孔の位置と光学的に共役な瞳孔共役位置が存在し、
    当該画像表示装置は、さらに、
    前記瞳孔共役位置と実質的に同じ位置に設置された絞りを含み、
    その絞りは、
    前記画像形成部から入射する画像光を部分的に遮断する遮光部と、
    前記画像形成部から入射する画像光を複数の部分光に分割する複数の透光部と
    を含む画像表示装置。
  2. 前記各透光部は、各透光部から出射して前記瞳孔に入射する各部分光の射出瞳が前記瞳孔内に収まるように、構成されている請求項1に記載の画像表示装置。
  3. さらに、前記複数の透光部から前記瞳孔に至る複数の光路間に光路長差を発生させる光路長差発生素子を含む請求項1または2に記載の画像表示装置。
  4. 前記光路長差発生素子は、前記複数の光路のうち、予め選択された少なくとも一つの光路上に設置された第1光学素子であって、それ自体、有限の焦点距離を有しないものを含む請求項3に記載の画像表示装置。
  5. 前記光路長差発生素子は、前記複数の光路のうち、予め選択された少なくとも一つの光路上に設置された第2光学素子であって、それ自体、有限の焦点距離を有するものを含む請求項3に記載の画像表示装置。
  6. 前記画像光形成部は、前記画像信号に応じた強度の光束を2次元方向にすることによって前記画像光を形成する請求項1ないし5のいずれかに記載の画像表示装置。
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