図1は、本発明の実施例に係る動力伝達装置20を搭載した車両である自動車10の概略構成図であり、図2は、動力伝達装置20の概略構成図である。これらの図面に示す自動車10は、ガソリンや軽油といった炭化水素系の燃料と空気との混合気の爆発燃焼により動力を出力する内燃機関である動力発生源としてのエンジン12と、エンジン12を運転制御するエンジン用電子制御ユニット(以下、「エンジンECU」という)14と、図示しない電子制御式油圧ブレーキユニットを制御するブレーキ用電子制御ユニット(以下、「ブレーキECU」という)15と、流体伝動装置(発進装置)23や有段の自動変速機30、これらに作動油(作動流体)を給排する油圧制御装置50、これらを制御する変速用電子制御ユニット(以下、「変速ECU」という)21等を有し、エンジン12のクランクシャフト16に接続されると共に動力発生源としてのエンジン12からの動力を左右の駆動輪DWに伝達する動力伝達装置20とを備える。
図1に示すように、エンジンECU14には、アクセルペダル91の踏み込み量(操作量)を検出するアクセルペダルポジションセンサ92からのアクセル開度Accや車速センサ99からの車速V、クランクシャフト16の回転を検出する図示しないクランクシャフトポジションセンサといった各種センサ等からの信号、ブレーキECU15や変速ECU21からの信号等が入力され、エンジンECU14は、これらの信号に基づいて何れも図示しない電子制御式スロットルバルブや燃料噴射弁、点火プラグ等を制御する。また、実施例のエンジン用電子制御ユニット14は、自動車10の停車に伴って通常エンジン12がアイドル運転されるときにエンジン12の運転を停止させると共にアクセルペダル91の踏み込みによる自動車10に対する発進要求に応じてエンジン12を再始動させる自動始動停止制御(アイドルストップ制御)を実行可能に構成されている。
ブレーキECU15には、ブレーキペダル93が踏み込まれたときにマスタシリンダ圧センサ94により検出されるマスタシリンダ圧や車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14や変速ECU21からの信号等が入力され、ブレーキECU15は、これらの信号に基づいて図示しないブレーキアクチュエータ(油圧アクチュエータ)等を制御する。動力伝達装置20の変速ECU21は、トランスミッションケース22の内部に収容される。変速ECU21には、複数のシフトレンジの中から所望のシフトレンジを選択するためのシフトレバー95の操作位置を検出するシフトレンジセンサ96からのシフトレンジSRや車速センサ99からの車速V、図示しない各種センサ等からの信号、エンジンECU14やブレーキECU15からの信号等が入力され、変速ECU21は、これらの信号に基づいて流体伝動装置23や自動変速機30等を制御する。なお、エンジンECU14、ブレーキECU15および変速ECU21は、図示しないCPUを中心とするマイクロプロセッサとして構成されており、CPUの他に処理プログラムを記憶するROM、データを一時的に記憶するRAM、入出力ポートおよび通信ポート(何れも図示せず)等を備える。そして、エンジンECU14、ブレーキECU15および変速ECU21は、バスライン等を介して相互に接続されており、これらのECU間では制御に必要なデータのやり取りが随時実行される。
動力伝達装置20は、トランスミッションケース22の内部に収容される流体伝動装置23や、オイルポンプ(機械式ポンプ)29、自動変速機30等を含む。流体伝動装置23は、ロックアップクラッチ付きの流体式トルクコンバータとして構成されており、図2に示すように、フロントカバー18を介してエンジン12のクランクシャフト16に接続されるポンプインペラ24や、タービンハブを介して自動変速機30のインプットシャフト(入力部材)31に固定されるタービンランナ25、ポンプインペラ24およびタービンランナ25の内側に配置されてタービンランナ25からポンプインペラ24への作動油(ATF)の流れを整流するステータ26、ステータ26の回転方向を一方向に制限するワンウェイクラッチ27、ダンパ機構を有するロックアップクラッチ28等を含む。流体伝動装置23は、ポンプインペラ24とタービンランナ25との回転速度差が大きいときにはステータ26の作用によりトルク増幅機として機能し、両者の回転速度差が小さくなると流体継手として機能する。ロックアップクラッチ28は、ポンプインペラ24(フロントカバー18)とタービンランナ25(タービンハブ)とを連結するロックアップと当該ロックアップの解除とを実行可能なものである。そして、自動車10の発進後、所定のロックアップオン条件が成立すると、ロックアップクラッチ28によりポンプインペラ24とタービンランナ25とがロック(直結)され、エンジン12からの動力がインプットシャフト31に機械的かつ直接的に伝達されるようになる。この際、インプットシャフト31に伝達されるトルクの変動は、ダンパ機構により吸収される。
油圧発生源としてのオイルポンプ29は、ポンプボディとポンプカバーとからなるポンプアッセンブリと、ハブを介して流体伝動装置23のポンプインペラ24に接続された外歯ギヤとを備えるギヤポンプとして構成されており、油圧制御装置50に接続される。エンジン12が運転されているときには、当該エンジン12からの動力により外歯ギヤが回転し、それによりオイルポンプ29によってストレーナを介してオイルパン(何れも図示省略)に貯留されている作動油が吸引されると共に当該オイルポンプ29から吐出される。従って、エンジン12の運転中には、オイルポンプ29により流体伝動装置23や自動変速機30により要求される油圧を発生させたり、各種軸受などの潤滑部分に作動油を供給したりすることができる。
自動変速機30は、4段変速の有段変速機として構成されており、図2に示すように、ラビニヨ式遊星歯車機構32と、入力側から出力側までの動力伝達経路を変更するための3つのクラッチC1,C2およびC3と2つのブレーキB1およびB3とワンウェイクラッチF2とを含む。ラビニヨ式遊星歯車機構32は、外歯歯車である2つのサンギヤ33a,33bと、自動変速機30のアウトプットシャフト(出力部材)37に固定された内歯歯車であるリングギヤ34と、サンギヤ33aに噛合する複数のショートピニオンギヤ35aと、サンギヤ33bおよび複数のショートピニオンギヤ35aに噛合すると共にリングギヤ34に噛合する複数のロングピニオンギヤ35bと、互いに連結された複数のショートピニオンギヤ35aおよび複数のロングピニオンギヤ35bを自転かつ公転自在に保持すると共にワンウェイクラッチF2を介してトランスミッションケース22に支持されたキャリア36とを有する。そして、自動変速機30のアウトプットシャフト37は、ギヤ機構38および差動機構39を介して駆動輪DWに接続される。
第1油圧式摩擦係合要素としてのクラッチC1は、インプットシャフト31とラビニヨ式遊星歯車機構32のサンギヤ33aとを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。クラッチC2は、インプットシャフト31とラビニヨ式遊星歯車機構32のキャリア36とを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。クラッチC3は、インプットシャフト31とラビニヨ式遊星歯車機構32のサンギヤ33bとを締結すると共に両者の締結を解除することができる油圧クラッチである。第2油圧式摩擦係合要素としてのブレーキB1は、ラビニヨ式遊星歯車機構32のサンギヤ33bをトランスミッションケース22に固定すると共にサンギヤ33bのトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧クラッチである。ブレーキB3は、ラビニヨ式遊星歯車機構32のキャリア36をトランスミッションケース22に固定すると共にキャリア36のトランスミッションケース22に対する固定を解除することができる油圧クラッチである。これらのクラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB3は、油圧制御装置50による作動油の給排を受けて動作する。図3に、自動変速機30の各変速段とクラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB3ならびにワンウェイクラッチF2の作動状態との関係を表した作動表を示し、図4に自動変速機30を構成する回転要素間における回転数の関係を例示する共線図を示す。自動変速機30は、クラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB3を図3の作動表に示す状態とすることで前進1〜4速の変速段と後進1段の変速段とを提供する。
図5は、上述のロックアップクラッチ28を含む流体伝動装置23や自動変速機30に対して作動油を給排する油圧制御装置50を示す系統図である。油圧制御装置50は、エンジン12からの動力により駆動されてオイルパンから作動油を吸引・吐出する上述のオイルポンプ29に接続されるものであり、オイルポンプ29からの作動油を調圧してライン圧PLを生成するプライマリレギュレータバルブ51や、一定のモジュレータ圧Pmodを生成するモジュレータバルブ52、シフトレバー95の操作位置に応じてプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLの供給先を切り替えるマニュアルバルブ53、マニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLを調圧してクラッチC1へのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を生成するC1リニアソレノイドバルブSLC1、マニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLを調圧してクラッチC2へのC2ソレノイドバルブ圧Pslc2を生成するC2リニアソレノイドバルブSLC2、マニュアルバルブ53(プライマリレギュレータバルブ51)からのライン圧PLを調圧してブレーキB1へのB1ソレノイドバルブ圧Pslb1を生成するB1リニアソレノイドバルブSLB1、図示しない補機バッテリからの電力により駆動されると共にオイルパンから作動油を吸引して吐出する電磁ポンプ(電動ポンプ)60、クラッチC1にC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を供給可能とする第1状態とクラッチC1に電磁ポンプ60からの油圧Pemopを供給可能とする第2状態とを形成可能な切替バルブ70等を含む。なお、油圧制御装置50に含まれるリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2およびSLB1や電磁ポンプ60といった電子部品は、何れも変速ECU21により制御される。
実施例の油圧制御装置50は、図5に示すように、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2およびSLB1の出力ポートに接続されると共にC1ソレノイドバルブ圧Pslc1、C2ソレノイドバルブ圧Pslc2およびB1ソレノイドバルブ圧Pslb1の中の最大圧力Pmaxを出力するシャトルバルブ(最大圧選択バルブ)54を含む。そして、実施例のプライマリレギュレータバルブ51は、シャトルバルブ54からの最大圧力Pmaxを信号圧として入力し、当該最大圧力Pmaxに基づいてライン圧PLを設定する。ただし、プライマリレギュレータバルブ51は、オイルポンプ29側(例えばモジュレータバルブ52)からの作動油を調圧して出力するリニアソレノイドバルブにより駆動されるものであってもよい。また、実施例のモジュレータバルブ52は、スプリングの付勢力とフィードバック圧とによりプライマリレギュレータバルブ51からのライン圧PLを調圧して一定のモジュレータ圧Pmodを生成する調圧バルブである。
マニュアルバルブ53は、シフトレバー95と連動して軸方向に摺動可能なスプールや、ライン圧PLが供給される入力ポート、C1リニアソレノイドバルブSLC1、C2リニアソレノイドバルブSLC2およびB1リニアソレノイドバルブSLB1の入力ポートと油路を介して連通するドライブレンジ出力ポート、クラッチC3の油圧入口と油路を介して連通するリバースレンジ出力ポート等を有する。運転者により前進走行シフトレンジであるドライブレンジやスポーツレンジ、2速エンジンブレーキレンジ等が選択されているときには、マニュアルバルブ53のスプールにより入力ポートがドライブレンジ出力ポートのみと連通され、これにより、C1リニアソレノイドバルブSLC1、C2リニアソレノイドバルブSLC2およびB1リニアソレノイドバルブSLB1にライン圧PL(Pd)が供給される。また、運転者によりリバース走行用のリバースレンジが選択されたときには、マニュアルバルブ53のスプールにより入力ポートがリバースレンジ出力ポートのみと連通され、これにより、クラッチC3にライン圧PL(Pr)が供給されて当該クラッチC3が係合する。そして、運転者によりパーキングレンジやニュートラルレンジが選択されたときには、マニュアルバルブ53のスプールにより入力ポートとドライブレンジ出力ポートおよびリバースレンジ出力ポートとの連通が遮断される。
C1リニアソレノイドバルブSLC1は、マニュアルバルブ53からのライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を生成する常開型リニアソレノイドバルブである。C2リニアソレノイドバルブSLC2は、マニュアルバルブ53からのライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してC2ソレノイドバルブ圧Pslc2を生成する常開型リニアソレノイドバルブである。実施例において、C2リニアソレノイドバルブSLC2により生成されたC2ソレノイドバルブ圧Pslc2は、油路を介してクラッチC2の油圧入口に直接供給される。B1リニアソレノイドバルブSLB1は、マニュアルバルブ53からのライン圧PLを図示しない補機バッテリから印加される電流値に応じて調圧してB1ソレノイドバルブ圧Pslb1を生成する常閉型リニアソレノイドバルブである。実施例において、B1リニアソレノイドバルブSLB1により生成されたB1ソレノイドバルブ圧Pslb1は、油路を介してブレーキB1の油圧入口に直接供給される。なお、実施例の油圧制御装置50は、運転者により1速エンジンブレーキレンジ(Lレンジ)が選択されたのに伴って自動変速機30の第1速が設定された状態でタービンランナ25(エンジン12)側からアウトプットシャフト37にフリクショントルクを伝達するとき(1速エンジンブレーキ時)、およびリバース走行時に係合されるブレーキB3に対する油圧の供給元を切り替えるアプライバルブ55を含む。アプライバルブ55は、C2リニアソレノイドバルブSLC2の出力ポートと連通する第1入力ポートと、マニュアルバルブ53のリバースレンジ出力ポートと連通する第2入力ポートと、ブレーキB3の油圧入口と連通する出力ポートとを有し、1速エンジンブレーキ時にはC2リニアソレノイドバルブSLC2からのC2ソレノイドバルブ圧Pslc2がブレーキB3に供給されるようにすると共に、リバース走行時には、マニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pr)がブレーキB3に供給されるようにする。
また、実施例では、コスト面や設計の容易さといった観点から、リニアソレノイドバルブSLC1,SLC2およびSLB1として、同一サイズかつ同一の最高出力圧を有するものが採用されている。更に、実施例の自動変速機30では、第2速および第4速の設定時に係合されるブレーキB1のトルク分担比が第2速の設定時に同時に係合されるクラッチC1や第4速の設定時に同時に係合されるクラッチC2のトルク分担比に比べて小さくなっている。従って、自動車10の走行中、ブレーキB1に対応したB1リニアソレノイドバルブSLB1に要求される出力圧は、クラッチC1に対応したC1リニアソレノイドバルブSLC1やクラッチC2に対応したC2リニアソレノイドバルブSLC2に要求される出力圧に比べて低くなる。これにより、自動車10の通常走行時にB1リニアソレノイドバルブSLB1に最高出力圧が要求されることはなく、B1リニアソレノイドバルブSLB1への要求出力圧は、最高出力圧よりも充分に低い値である常用上限圧を上限とする範囲内に収まる。
電磁ポンプ60は、図6に示すように、吸入ポート61や吐出ポート62を有するスリーブ63と、スリーブ63に接続されたソレノイド部64と、ソレノイド部64により軸方向に進退移動させられるシャフト65と、スリーブ63内に配置されると共にシャフト65の先端に接続された吸入用逆止弁66と、吸入用逆止弁66とエンドプレート63eとの間に位置するようにスリーブ63内に配置された吐出用逆止弁67と、スリーブ63内の吸入用逆止弁66と吐出用逆止弁67との間に画成されるポンプ室68と、吸入用逆止弁66と吐出用逆止弁67との間に介設されると共に吸入用逆止弁66の本体を介してシャフト65をソレノイド部64側に付勢するスプリング69とを含む。シャフト65は、ソレノイド部64のコイルへの通電がオフされているときに、スプリング69の付勢力によりエンドプレート63e側からソレノイド部64側へと移動し、ソレノイド部64のコイルへの通電がオンされると、スプリング69の付勢力に抗してソレノイド部64側からエンドプレート63e側へと移動する。また、吸入用逆止弁66は、ポンプ室68内の圧力が例えば負圧(あるいは吸入ポート61側の圧力よりも所定値だけ低い圧力)になると開弁して吸入ポート61からポンプ室68への作動油の流入を許容し、ポンプ室68内の圧力が例えば正圧であると(あるいは吸入ポート61側の圧力よりも所定値だけ高い圧力を上回ると)閉弁して吸入ポート61からポンプ室68への作動油の流入を規制する。吐出用逆止弁67は、ポンプ室68内の圧力が例えば正圧であると(あるいは吐出ポート62側の圧力よりも所定値だけ高い圧力を上回ると)開弁してポンプ室68から吐出ポート62への作動油の流出を許容し、ポンプ室68内の圧力が例えば負圧(あるいは吐出ポート62側の圧力よりも所定値だけ低い圧力)になると閉弁してポンプ室68から吐出ポート62への作動油の流出を規制する。
このように構成された電磁ポンプ60では、ソレノイド部64のコイルへの通電がオンされている状態で当該コイルの通電がオフされると、シャフト65がエンドプレート63e側からソレノイド部64側へと移動し、それに伴ってポンプ室68内の圧力が例えば負圧になる(低下する)ことから、吸入用逆止弁66が開弁すると共に吐出用逆止弁67が閉弁し、オイルパンから作動油が図示しないストレーナおよび吸入ポート61を介してポンプ室68内に吸入される。そして、この状態でソレノイド部64のコイルへの通電がオンされると、シャフト65がソレノイド部64側からエンドプレート63e側に移動し、それに伴ってポンプ室68内の圧力が例えば正圧になる(高まる)ことから、吸入用逆止弁66が閉弁すると共に吐出用逆止弁67が開弁し、ポンプ室68内に吸入された作動油すなわち油圧Pemopが吐出用逆止弁67を介して吐出ポート62から吐出されることになる。従って、ソレノイド部64のコイルに対して所定デューティ比の矩形波電流を印加すれば、電磁ポンプ60によりオイルパン側から作動油を吸引すると共に昇圧して吐出ポート62から吐出することが可能となる。
切替バルブ70は、バルブボディ内に摺動自在に配置されるスプール71と、スプール71を付勢するスプリング72と、C1リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートと油路を介して連通する第1入力ポート73と、電磁ポンプ60の吐出ポート62と油路Lepを介して連通する第2入力ポート74と、モジュレータバルブ52の出力ポートと油路を介して連通する第1信号圧入力ポート75と、B1リニアソレノイドバルブSLB1の出力ポートと油路を介して連通する第2信号圧入力ポート76と、マニュアルバルブ53のドライブレンジ出力ポートと油路Lpdを介して連通する第3信号圧入力ポート77と、クラッチC1の油圧入口と油路を介して連通する出力ポート78と、スプリング72が配置されるスプリング室に漏洩した作動油を排出するためのポート79とを含む。また、実施例では、電磁ポンプ60の吐出ポート62と切替バルブ70の第2入力ポート74とを結ぶ油路Lepと、マニュアルバルブ53のドライブレンジ出力ポート(オイルポンプ29)と切替バルブ70の第3信号圧入力ポート77とを結ぶ油路Lpdとが逆止弁56を介して接続されている。逆止弁56は、マニュアルバルブ53すなわち油路Lpdから油路Lepへの作動油の流入(油圧の供給)を許容すると共に、油路Lepから油路Lpdすなわちマニュアルバルブ53への作動油の流入(油圧の供給)を禁止するものである。
実施例において、切替バルブ70の取付状態は、クラッチC1に電磁ポンプ60からの油圧Pemopを供給可能とする第2状態(図5における左側半分の状態)とされている。すなわち、切替バルブ70の取付状態では、スプリング72の付勢力によってスプール71が図中上方に付勢され、電磁ポンプ60の吐出ポート62と油路Lepを介して連通する第2入力ポート74と出力ポート78とが連通される。また、切替バルブ70は、油圧制御装置50が正常であると共にオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されているときに、クラッチC1にC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を供給可能とする第1状態(図5における右側半分の状態)を形成するように構成されている。すなわち、油圧制御装置50が正常であってオイルポンプ29が油圧を発生しているときには、リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートと油路を介して連通する第1入力ポート73と出力ポート78とが連通される。
上述のように、切替バルブ70には、オイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されているときに、モジュレータバルブ52からのモジュレータ圧Pmodが第1信号圧入力ポート75に信号圧として供給され、ドライブレンジ等の前進走行シフトレンジが選択されているときには更にマニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)が第3信号圧入力ポート77に信号圧として供給され、B1リニアソレノイドバルブSLB1が作動していれば更にB1ソレノイドバルブ圧Pslb1が第2信号圧入力ポート76に信号圧として供給される。このため、切替バルブ70のスプリング72のバネ定数やスプール71のモジュレータ圧Pmodの受圧面、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1の受圧面、第3信号圧入力ポート77に臨むライン圧PL(Pd)の受圧面は、オイルポンプ29や油圧制御装置50等が正常であると共にオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されており、かつドライブレンジが選択されているときに(正常時)、モジュレータ圧Pmodの作用によりスプール71に付与される推力が、スプリング72による付勢力とB1ソレノイドバルブ圧Pslb1(例えば上述の常用上限圧より多少高い所定圧)の作用によりスプール71に付与される推力とマニュアルバルブ53から第3信号圧入力ポート77に供給されるライン圧PL(Pd:例えばB1ソレノイドバルブ圧Pslb1が上記所定圧であるときのライン圧)の作用によりスプール71に付与される推力とに打ち勝ち、それにより第1入力ポート73と出力ポート78とが連通されるように定められている。この結果、油圧制御装置50すなわちC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態が正常であるときに、ブレーキB1の係合に伴ってB1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイドバルブ圧Pslb1が信号圧として切替バルブ70に供給されても、切替バルブ70が第1状態から第2状態への切替を実行することはない。
更に、実施例の切替バルブ70は、オイルポンプ29がエンジン12により駆動されているときに、常用上限圧が比較的低いB1リニアソレノイドバルブSLB1の出力圧を当該常用上限圧およびモジュレータ圧Pmodよりも高く、かつB1リニアソレノイドバルブSLB1の最高出力圧以下に定められた切替圧(例えば最高出力圧)に設定することで、第1入力ポート73と出力ポート78とを連通する第1状態から第2入力ポート74と出力ポート78とを連通する第2状態への切替を実行するように構成されている。すなわち、切替バルブ70のスプリング72のバネ定数やスプール71のモジュレータ圧Pmodの受圧面、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1の受圧面、第3信号圧入力ポート77に臨むライン圧PL(Pd)の受圧面は、上記正常時に要求される条件を満たすと共に、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイドバルブ圧Pslb1が切替圧に設定されたときに、スプリング72による付勢力とB1ソレノイドバルブ圧Pslb1(切替圧)の作用によりスプール71に付与される推力とマニュアルバルブ53から第3信号圧入力ポート77に供給されるライン圧PL(Pd:B1ソレノイドバルブ圧Pslb1が切替圧であるときのライン圧)の作用によりスプール71に付与される推力とがモジュレータ圧Pmodの作用によりスプール71に付与される推力に打ち勝ち、それにより第2入力ポート74と出力ポート78とが連通されるように定められている。このように、切替バルブ70は、オイルポンプ29の油圧の生成状態に応じて第1状態と第2状態との切り替えを実行すると共に、C1リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧の供給状態に異常が発生しているときにオイルポンプ29からの油圧を調圧して出力する第2ソレノイドバルブとしてのB1リニアソレノイドバルブSLB1からの油圧を信号圧として用いて第1状態から第2状態への切り替えを実行する。
次に、自動車10の運転者により前進走行シフトレンジが選択されているときの動力伝達装置20の動作について説明する。
運転者によりドライブレンジ等の前進走行シフトレンジが選択されているときには、エンジン12が運転されると共にオイルポンプ29がエンジン12からの動力により駆動されることから、プライマリレギュレータバルブ51によりライン圧PLが生成され、モジュレータバルブ52により一定のモジュレータ圧Pmodが生成され、更にリニアソレノイドバルブSLC1,SLC2およびSLB1の少なくとも何れか一つが油圧を生成する。そして、油圧制御装置50が正常であると共にエンジン12が運転されていれば、仮にB1リニアソレノイドバルブSLB1がB1ソレノイドバルブ圧Pslb1を生成していたとしても、モジュレータ圧Pmodの作用によりスプール71に付与される推力が、スプリング72による付勢力とB1ソレノイドバルブ圧Pslb1の作用によりスプール71に付与される推力と第3信号圧入力ポート77からのライン圧PL(Pd)の作用によりスプール71に付与される推力とに打ち勝つことから、切替バルブ70の第1入力ポート73と出力ポート78とが連通される。従って、C1リニアソレノイドバルブSLC1がC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を生成していれば、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1が第1状態にある切替バルブ70を介してクラッチC1へと供給され、それによりクラッチC1が係合される。
また、例えば信号待ちに伴う自動車10の停車時等には、エンジンECU14により自動始動停止処理が実行されてエンジン12の運転が停止される。この際、エンジン12の運転停止に伴ってオイルポンプ29の駆動が停止されることからライン圧PLが低下し、自動変速機30の第1速(および第2速)の設定時に係合される発進クラッチとしてのクラッチC1に対応したC1リニアソレノイドバルブSLC1も油圧(C1ソレノイドバルブ圧Pslc1)を生成し得なくなる。このため、実施例の切替バルブ70は、取付状態がクラッチC1に電磁ポンプ60からの油圧Pemopを供給可能とする第2状態となるように構成されている。すなわち、オイルポンプ29の駆動が停止されてライン圧PLが低下すると、モジュレータ圧PmodやB1リニアソレノイドバルブSLB1によるB1ソレノイドバルブ圧Pslb1も低下することから、切替バルブ70はスプリング72の付勢力により取付状態(第2状態)へと戻り、それにより、電磁ポンプ60の吐出ポート62と油路Lepを介して連通する第2入力ポート74と出力ポート78とが連通される。
そして、実施例では、オイルポンプ29の吐出圧が所定値以下になるときのエンジン12の回転数が閾値Nref(例えば1000〜1500rpm程度の値)として定められており、変速用電子制御ユニット21による制御のもと、エンジン12の回転数が閾値Nref以下になった段階から再始動後にエンジン12の回転数が閾値Nrefあるいはそれより若干高い所定値を上回るまで、電磁ポンプ60のソレノイド部64のコイルに対して所定デューティ比の矩形波電流が印加され、電磁ポンプ60によりオイルパンから作動油が吸引されて吐出ポート62や油路Lepを介して切替バルブ70の第2入力ポート74へと供給されることになる。これにより、電磁ポンプ60からの作動油(油圧Pemop)を切替バルブ70を介してクラッチC1へと供給可能となり、運転者によりドライブレンジ等の前進走行シフトレンジが選択されているときにエンジン12が運転停止されても、電磁ポンプ60からの油圧Pemopを発進クラッチであるクラッチC1に供給して自動変速機30を発進待機状態に保つことができる。なお、エンジン用電子制御ユニット14により自動始動停止処理が実行されてエンジン12の運転が停止されているときには、クラッチC1を完全な係合状態に維持しておく必要はない。このため、実施例では、電磁ポンプ60として、エンジン12の運転停止中にクラッチC1を係合直前(係合完了直前)の状態に設定し得る程度(油圧アクチュエータにおけるストロークを無くすことができる程度)の油圧を発生可能なものが用いられる。
ここで、上述の油圧制御装置50において、C1リニアソレノイドバルブSLC1の故障やC1リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートと切替バルブ70の第1入力ポート73との間の油路の閉塞といったC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生すると、クラッチC1にC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を供給し得なくなる。この際、何ら対策を施さなければ、クラッチC1を係合させることができなくなり、自動車10の発進・走行に支障をきたすおそれがある。このため、実施例の変速ECU21は、自動車10のイグニッションスイッチがオンされている間、図示しない圧力センサの検出値等に基づいてC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生したか否かを判定しており、C1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生していると判断した場合、エンジン12が運転されていること、すなわちオイルポンプ29が駆動されていることを条件に、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1が上述の切替圧になるようにB1リニアソレノイドバルブSLB1を制御する。こうして、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1が切替圧に設定されると、シャトルバルブ54からB1ソレノイドバルブ圧Pslb1が最大圧力Pmaxとしてプライマリレギュレータバルブ51に供給されるので、当該プライマリレギュレータバルブ51により生成されるライン圧PL自体も高まることになる。
これにより、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1が切替圧に設定されると、スプリング72による付勢力とB1ソレノイドバルブ圧Pslb1すなわち上記切替圧の作用によりスプール71に付与される推力とマニュアルバルブ53から第3信号圧入力ポート77に供給されるライン圧PL(B1ソレノイドバルブ圧Pslb1が上記切替圧であるときのライン圧)の作用によりスプール71に付与される推力とがモジュレータ圧Pmodの作用によりスプール71に付与される推力に打ち勝ち、それにより切替バルブ70は第2入力ポート74と出力ポート78とを連通する第2状態を形成する。そして、エンジン12が運転されると共にドライブレンジ等の前進走行シフトレンジが選択されているときには、電磁ポンプ60により油圧が発生されることはないが、マニュアルバルブ53からのライン圧PLが逆止弁56および油路Lepの一部を介して切替バルブ70の第2入力ポート74に供給されることから、C1リニアソレノイドバルブSLC1およびB1リニアソレノイドバルブSLB1の油圧の生成状態に依存しないオイルポンプ29からの油圧に基づく油圧であるライン圧PL(Pd)がクラッチC1へと供給されることになる。
この結果、動力伝達装置20を搭載した自動車10では、万が一、C1リニアソレノイドバルブSLC1が故障したり、C1リニアソレノイドバルブSLC1の出力ポートと切替バルブ70の第1入力ポート73との間の油路が閉塞したりしても、切替バルブ70を介してクラッチC1にC1リニアソレノイドバルブSLC1およびB1リニアソレノイドバルブSLB1の油圧の生成状態に依存しないオイルポンプ29からの油圧に基づくライン圧PL(Pd)が供給されるので、クラッチC1の係合を維持することが可能となる。そして、この際には、クラッチC1が係合されると共に、B1リニアソレノイドバルブSLB1からのB1ソレノイドバルブ圧Pslb1が上記切替圧になるのに伴ってB1リニアソレノイドバルブSLB1に対応したブレーキB1が係合される。従って、実施例の動力伝達装置20では、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生し、当該異常によりC1リニアソレノイドバルブSLC1からクラッチC1にC1ソレノイドバルブ圧Pslc1を供給し得なくなっても、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1の昇圧に伴って切替バルブ70が第2状態を形成することにより自動変速機30の第2速が設定されるので(図3参照)、自動車10の発進および前進走行を充分に保障することができる。
以上説明したように、実施例の動力伝達装置20では、電磁ポンプ60と切替バルブ70とを結ぶ油路Lepと、C1リニアソレノイドバルブSLC1の油圧の生成状態に依存しない機械式のオイルポンプ29からの油圧に基づく油圧であるライン圧PL(Pd)の供給元としてのマニュアルバルブ53とが、当該マニュアルバルブ53から油路Lepへの油圧の供給を許容すると共に油路Lepからマニュアルバルブ53への油圧の供給を禁止することができる逆止弁56を介して接続されており、切替バルブ70は、オイルポンプ29がエンジン12により駆動されると共にC1リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧の供給状態に異常が発生しているときに、油路Lepと連通する第2入力ポート74と出力ポート78とが連通される第2状態を形成する。これにより、エンジン12によりオイルポンプ29が駆動されると共にC1リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧の供給状態に異常が発生しているときには、切替バルブ70により第2状態が形成されてC1リニアソレノイドバルブSLC1の油圧の生成状態に依存しないオイルポンプ29からの油圧に基づくライン圧PL(Pd)がマニュアルバルブ53からクラッチC1へと供給されることになり、それによりC1リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧の供給状態に異常が発生していてもクラッチC1の係合を維持することが可能となる。
そして、このようにオイルポンプ29がエンジン12により駆動されると共にC1リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧の供給状態に異常が発生しているときにC1リニアソレノイドバルブSLC1の油圧の生成状態に依存しないライン圧PL(Pd)をクラッチC1へと供給することで、電磁ポンプ60からの油圧PemopによりクラッチC1を係合させるべく当該電磁ポンプ60の圧送能力を高める必要がなくなり、それによりコストアップや装置の大型化を抑制することができる。また、電磁ポンプ60と切替バルブ70とを結ぶ油路Lepの一部を利用してC1リニアソレノイドバルブSLC1の油圧の生成状態に依存しないマニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)をクラッチC1へと供給可能にすることで、油路の増加ひいてはコストアップや装置の大型化を抑制することができる。なお、C1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生しているときにクラッチC1に供給する油圧は、マニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)に限られるものではなく、C1リニアソレノイドバルブSLC1の油圧の生成状態に依存しないオイルポンプ29からの油圧に基づくものであれば、例えばモジュレータ圧Pmodといった他の圧力であってもよい。
更に、切替バルブ70は、オイルポンプ29がエンジン12により駆動されないときに第2状態を形成するようにスプリング72によって付勢されるスプール71を有すると共に、モジュレータ圧PmodとB1ソレノイドバルブ圧Pslb1とマニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)とが信号圧として供給されるスプールバルブである。そして、動力伝達装置20の油圧制御装置50は、エンジン12が運転されてオイルポンプ29が駆動されると共にC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態が正常であるときに、モジュレータ圧Pmodの作用によりスプール71に付与される推力がスプリング72による付勢力とB1ソレノイドバルブ圧Pslb1の作用によりスプール71に付与される推力とマニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)の作用によりスプール71に付与される推力とに打ち勝つことで切替バルブ70が第1状態を形成するように構成されている。また、油圧制御装置50は、エンジン12が運転されてオイルポンプ29が駆動されると共にC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生しているときに、変速ECU21によるB1リニアソレノイドバルブSLB1の制御に伴ってライン圧PLおよびB1ソレノイドバルブ圧Pslb1が高められてスプリング72による付勢力とB1ソレノイドバルブ圧Pslb1の作用によりスプール71に付与される推力とマニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)の作用によりスプール71に付与される推力とがモジュレータ圧Pmodの作用によりスプール71に付与される推力に打ち勝つことで切替バルブ70が第2状態を形成するようにも構成されている。
これにより、B1リニアソレノイドバルブSLB1からブレーキB1へのB1ソレノイドバルブ圧Pslb1の供給の有無(B1ソレノイドバルブ圧Pslb1の生成状態)に拘わらず、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態が正常であるときに第1状態を形成すると共に、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生しているときに第2状態を形成することが可能となる。また、切替バルブ70にマニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)を信号圧として供給することにより、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生しているときに、第2状態をより確実に形成することが可能となる。なお、例えばプライマリレギュレータバルブ51がオイルポンプ29側からの作動油を調圧して出力するリニアソレノイドバルブからの油圧により駆動される油圧制御装置では、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1が上述の切替圧になるようにB1リニアソレノイドバルブSLB1を制御するときに、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1と共にライン圧PLが高まるように当該リニアソレノイドバルブを制御するとよい(ただし、B1ソレノイドバルブ圧Pslb1のみを昇圧して、ライン圧PLの昇圧を省略してもよい)。また、信号圧としてのB1ソレノイドバルブ圧Pslb1を第1状態から第2状態への切替を実行するのに充分高く設定可能である場合には、切替バルブ70に対する信号圧としてのライン圧PL(Pd)の供給を省略してもよい。更に、切替バルブ70の第3信号圧入力ポート77への信号圧は、ライン圧PL(Pd)以外の圧力であってもよい。
また、上述のクラッチC1は、自動変速機30の第1速の設定時すなわち自動車10の発進時に係合されるものである。すなわち、クラッチC1は、自動変速機30の第1速および第2速が設定されるときに係合されるものであり、ブレーキB1は、自動変速機30の第2速が設定されるときに係合されるものである。従って、動力伝達装置20を搭載した自動車10では、C1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態の異常により当該C1リニアソレノイドバルブSLC1からクラッチC1に油圧を供給し得なくなっても、マニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)によりクラッチC1の係合を維持すると共にブレーキB1を係合させて第2速での発進・前進走行を保障することができる。
更に、上述の切替バルブ70は、それ1体で、機械式ポンプとしてのオイルポンプ29が動力発生源としてのエンジン12により駆動されるときに第1ソレノイドバルブとしてのC1リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧を第1油圧式摩擦係合要素としてのクラッチC1に供給可能とし、オイルポンプ29がエンジン12により駆動されないときに電動ポンプとしての電磁ポンプ60からの油圧PemopをクラッチC1に供給可能とし、かつオイルポンプ29がエンジン12により駆動されると共にクラッチC1からの油圧の供給状態に異常が発生しているときにC1リニアソレノイドバルブSLC1およびB1リニアソレノイドバルブSLB1の油圧の生成状態に依存しないオイルポンプ29からの油圧に基づくライン圧PL(Pd)をクラッチC1に供給可能とするものである。従って、切替バルブ70を採用することにより、油圧制御装置50ひいては動力伝達装置20の全体をより小型化することが可能となる。
また、上記実施例では、電磁ポンプ60として、発進クラッチとしてのクラッチC1を係合直前の状態に設定し得る程度の油圧を発生可能なものが採用されている。このような性能をもった電磁ポンプ60を採用すれば、エンジン12が運転停止されてから再始動されるまでの間に自動変速機30を発進待機状態により適正に保つことが可能となり、電磁ポンプ60に要求される性能(ポンプ容量)を低下させることで当該電磁ポンプ60ひいては動力伝達装置20の全体を小型化することができる。なお、上記実施例のように電磁ポンプ60を用いることにより、油圧制御装置50ひいては動力伝達装置20の全体をより小型化することが可能となるが、電磁ポンプ60の代わりに電動ポンプを採用してもよいことはいうまでもない。また、実施例の油圧制御装置50では、油路Lepと油路Lpdとが逆止弁56を介して接続されているが、逆止弁56の代わりに、例えばC1リニアソレノイドバルブSLC1からのC1ソレノイドバルブ圧Pslc1の供給状態に異常が発生したと判断されたときに開とされる開閉弁を油路Lepと油路Lpdとの間に配置してもよい。
更に、上述の切替バルブ70は、ドライブレンジ等の前進走行シフトレンジが選択されているときには信号圧としてマニュアルバルブ53からのライン圧PL(Pd)が第3信号圧入力ポート77に供給され、B1リニアソレノイドバルブSLB1が作動していれば信号圧としてB1ソレノイドバルブ圧Pslb1が第2信号圧入力ポート76に供給されるものであるが、切替バルブ70の構成はこれに限られるものではない。すなわち、切替バルブ70は、例えばライン圧PLあるいはモジュレータ圧Pmod等を調圧して信号圧としての第2ソレノイドバルブ圧を生成するオンオフソレノイドバルブ(デューティソレノイドバルブ)からの油圧を例えばポート79を介して信号圧として入力するものであってもよい。この場合には、当該オンオフソレノイドバルブからの油圧を高めて、スプリング72による付勢力と当該オンオフソレノイドバルブからの油圧の作用によりスプール71に付与される推力とがモジュレータ圧Pmodの作用によりスプール71に付与される推力に打ち勝つようにすれば、第2入力ポート74と出力ポート78とを連通させることが可能となる。
なお、上記実施例では、変速装置として複数の摩擦係合要素(クラッチC1〜C3、ブレーキB1およびB3)の係脱により変速比を複数段に変更して出力可能な自動変速機30を例示したが、変速装置は、少なくとも一つの摩擦係合要素を含む前後進切替機構を介して原動機と連結される無段変速機であってもよい。
ここで、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載した発明の主要な要素との対応関係について説明する。すなわち、上記実施例では、自動車10に搭載された原動機としてのエンジン12からの動力をクラッチC1等の係脱により出力可能な自動変速機30と、エンジン12により駆動されて油圧を発生する機械式ポンプとしてのオイルポンプ29と、電力により駆動されて油圧を発生する電動ポンプとしての電磁ポンプ60と、オイルポンプ29からの油圧を調圧して出力するソレノイドバルブであるC1リニアソレノイドバルブSLC1と、クラッチC1にC1リニアソレノイドバルブSLC1からの油圧を供給可能とする第1状態とクラッチC1に電磁ポンプ60からの油圧を供給可能とする第2状態とを形成可能な第1切替バルブとしての切替バルブ70とを備えた動力伝達装置20が「動力伝達装置」に相当し、電磁ポンプ60と切替バルブ70とを結ぶ油路Lepが「第1油路」に相当し、オイルポンプ29と切替バルブ70とを結ぶ油路Lpdが「第2油路」に相当し、油路Lpdから油路Lepへの油圧の供給を許容すると共に油路Lepから油路Lpdへの油圧の供給を禁止することができる逆止弁56が「第2切替バルブ」に相当する。ただし、実施例の主要な要素と課題を解決するための手段の欄に記載された発明の主要な要素との対応関係は、実施例が課題を解決するための手段の欄に記載された発明を実施するための形態を具体的に説明するための一例であることから、課題を解決するための手段の欄に記載した発明の要素を限定するものではない。すなわち、実施例はあくまで課題を解決するための手段の欄に記載された発明の具体的な一例に過ぎず、課題を解決するための手段の欄に記載された発明の解釈は、その欄の記載に基づいて行なわれるべきものである。
以上、実施例を用いて本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記実施例に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な変更をなし得ることはいうまでもない。