JP2011214180A - 積層防護服 - Google Patents

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順久 山口
Hirosuke Yamauchi
裕輔 山内
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Abstract

【課題】染色性が良好であるとともに、優れた環境安全性と耐酸性とをバランスよく満足する、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を少なくとも1層として含む積層防護服を提供する。
【解決手段】スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件を適宜調節し、特定倍率で可塑延伸し、かつ、洗浄工程を経た後、特定温度で乾熱処理を行うことにより得られるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いて形成した布帛を、少なくとも1層とする積層防護服とする。
【選択図】なし

Description

本発明は、積層布帛からなる防護服に関する。より詳しくは、染色性が良好であるとともに、環境安全性に優れ、かつ、耐酸性にも優れたメタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を含む積層防護服に関する。
ポリメタフェニレンテレフタルアミド繊維等のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、分子骨格のほとんどが芳香族環から構成されているため、優れた耐熱性と寸法安定性を発現する。これらの特性を活かして、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、消防士が消火作業中に着用する耐熱防護服を構成する繊維として、好適に使用されている。
そして、防護服の分野においては、耐熱性や寸法安定性以外に、視覚性や審美性等の美的観点での特性も必要とされており、特に、着色した繊維が求められていた。さらに、安全性の観点からは、より優れた環境安全性や耐酸性が求められていた。
しかしながら、メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、その剛直なポリマー分子鎖に起因して、通常の方法では染色が困難であるという問題点があった。
そこで、染色性を向上させる方法として、アルキルベンゼンスルホン酸オニウム塩を紡糸液に添加することにより、カチオン染料に対して易染色性なメタ型芳香族ポリアミド繊維を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。この方法によればカチオン染料に対しては、良好な染色性を有するメタ型芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
しかしながら、当該オニウム塩が添加された繊維は、コストが高いものとなっていた。また、製糸時や後加工時等に当該オニウム塩が繊維から脱落しないようにするため、繊維製造時の凝固条件を厳しくすることができず、その結果、繊維に残存する溶媒量が多くなり、環境安全性に劣るものとなっていた。
染色性を向上させる別の方法として、細孔を有する非晶質の繊維を形成し、水で膨潤した当該繊維を蒸気加熱し、染料を繊維の当該細孔中に拡散させることにより、繊維構造全体にわたって染料が含有した繊維を得て、引き続き、当該繊維をガラス転移温度より高い温度にて十分な時間をかけて蒸気加熱を行って当該細孔を潰し、これにより染料を不可逆的に繊維内に閉じ込めて、当該繊維を結晶化させる方法が提案されている(特許文献2参照)。
この方法によれば、良好な染色性を有し、かつ、残存溶媒量の少ない繊維を得ることができる。しかしながら、110℃ないし140℃の温度に加熱された蒸気を用いて当該細孔を潰す程度の加熱処理であるため、繊維結晶化が不十分となり、良好な耐酸性を得ることが困難であった。
したがって、易染色性を有するメタ型全芳香族ポリアミド繊維であって、繊維に残存する溶媒量が少なく、かつ、耐酸性を有する繊維は、いまだ得られていなかった。
ところで、近年、耐熱性防護服に関しては、遮熱性の評価方法についての標準化がなされ、輻射熱はもとより、伝導熱にも注目した評価方法が確立された(試験法番号:ISO9151)。この評価方法による基準が策定されるようになり、耐熱性防護服の要求特性は、より高度なものに変化している。
熱伝導を遅延させるにあたっては、防護服内に大量の空気層を作ることが効果的であり、表地層、透湿防水性を有する中間層、および遮熱性を有する裏地層からなる3層構造の防護服以外にも、表地層と裏地層との間に充分な量の空気を含有させることで中間層を簡略化した2層構造の防護服が提案されており、昨今では、2層または3層を重ねて縫製した耐熱性防護服が主流となっている(特許文献3参照)。
しかしながら、従来の技術では、染色性が良好であるとともに、優れた環境安全性と耐酸性とをバランスよく満足させた、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む易染色性布帛を少なくとも1層として含む積層防護服は、未だ存在していなかった。
特開平08−081827号公報 特開昭62−184127号公報 特開2006−016709号公報
本発明は、上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、染色性が良好であるとともに、優れた環境安全性と耐酸性とをバランスよく満足する、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を少なくとも1層として含む積層防護服を提供することにある。
本発明者らは、上記の課題に鑑み鋭意検討を重ねた。その結果、スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件を適宜調節し、特定倍率で可塑延伸し、洗浄工程を経た後、特定温度で乾熱処理を行って得られるメタ型全芳香族ポリアミド繊維を用いれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、積層布帛からなる防護服であって、前記積層布帛は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を少なくとも1層として含むものであり、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、原繊維の残存溶媒量が0.1質量%以下であり、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛は、50℃の20質量%硫酸水溶液に150時間浸漬した後の染色布帛の強度保持率が65%以上である積層防護服である。
本発明の積層防護服は、染料に対する染色性が良好であり、かつ、優れた耐酸性、および環境安定性を兼ね備える。このため、これらの特性が必要とされる分野における工業的価値は極めて大きく、特に、消防士が消火作業中に着用する耐熱防護服として好適に用いることができる。
本発明の積層防護服は、以下に記載する易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む易染色性布帛を、少なくとも1層として含むものである。
<易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維>
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、以下の特定の物性を備える。本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性、構成、および、製造方法等について以下に説明する。
[易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の物性]
〔残存溶媒量〕
メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、通常、ポリマーをアミド系溶媒に溶解した紡糸原液から製造されるため、必然的に該繊維に溶媒が残存する。しかしながら、本発明のメタ型全芳香族ポリアミド繊維は、繊維中に残存する溶媒の量が、繊維質量に対して0.1質量%以下である。0.1質量%以下であることが必須であり、0.08質量%以下であることがより好ましい。
繊維質量に対して0.1質量%を超えて溶媒が繊維中に残存している場合には、200℃を超えるような高温雰囲気下での加工や使用の際に、残存溶媒が揮発するために環境安全性に劣る。また、分子構造が破壊されることにより、著しく強度が低下するため好ましくない。
原繊維の残存溶媒量を0.1質量%以下とするためには、繊維の製造工程において、スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件の調節し、かつ、特定倍率での可塑延伸を実施する。
なお、本発明における「原繊維の残存溶媒量」とは、以下の方法で得られる値をいう。
(残存溶媒量の測定方法)
原繊維を約8.0g採取し、105℃で120分間乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M1)を秤量する。続いて、この繊維について、メタノール中で1.5時間、ソックスレー抽出器を用いて還流抽出を行い、繊維中に含まれるアミド系溶媒の抽出を行う。抽出を終えた繊維を取り出して、150℃で60分間真空乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M2)を秤量する。繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、得られるM1およびM2を用いて、下記式により算出する。
N(%)=(M1−M2)/M1×100
〔原繊維の破断強度、破断伸度〕
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の原繊維(染色前の繊維)の破断強度は、2.5cN/dtex以上であることが好ましい。2.7cN/dtex以上であることがさらに好ましく、3.0cN/dtex以上であることが特に好ましい。破断強度が2.5cN/dtex未満である場合には、紡績等の後加工工程において繊維が破断し、通過性が悪化するため好ましくない。
また、本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の原繊維(染色前の繊維)の破断伸度は、30%以上であることが好ましい。35%以上であることがさらに好ましく、40%以上であることが特に好ましい。破断伸度が30%未満である場合には、布帛を作製する工程において、工程通過性が悪化するため好ましくない。
なお、ここでいう「破断強度」および「破断伸度」とは、JIS L 1015に基づき、上記した「破断強度」の測定条件で測定して得られる値をいう。
易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の「破断強度」は、後記する製造方法における可塑延伸浴延伸工程における延伸倍率、および、乾熱処理工程における熱処理温度を適正化することにより制御することができる。破断強度を2.5cN/dtex以上とするためには、延伸倍率を3.5〜5.0倍とし、さらに、乾熱処理温度を260〜330℃の範囲とすればよい。
易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の「破断伸度」は、後記する製造方法における凝固工程において、凝固浴条件を適正化することにより制御することができる。30%以上とするためには、凝固液成分をNMP濃度45〜60質量%の水溶液とし、浴液の温度10〜35℃とすればよい。
〔単糸繊度〕
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の単繊維繊度は、0.50〜6.0dtexであることが好ましく、さらに好ましくは0.8〜5.5dtexの範囲である。本発明においては、繊度が異なる2種以上の繊維を混合使用してもよい。
〔繊維長〕
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の繊維長は、目的とする易染色性布帛の形態に応じて適宜設定すればよく、長繊維、短繊維のいずれの場合であってもよい。布帛の形態を不織布とする場合には、予め捲縮が付与された短繊維を構成繊維として用いるが、当該短繊維の繊維長は31〜76mmの範囲とすることが好ましい。
[メタ型全芳香族ポリアミドの構成]
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を構成するメタ型全芳香族ポリアミドは、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸成分とから構成されるものであり、本発明の目的を損なわない範囲内で、パラ型等の他の共重合成分が共重合されていてもよい。
本発明において特に好ましく使用されるのは、力学特性、耐熱性、難燃性の観点から、メタフェニレンイソフタルアミド単位を主成分とするメタ型全芳香族ポリアミドである。メタフェニレンイソフタルアミド単位から構成されるメタ型全芳香族ポリアミドとしては、メタフェニレンイソフタルアミド単位が、全繰り返し単位の90モル%以上であることが好ましく、さらに好ましくは95モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
〔メタ型全芳香族ポリアミドの原料〕
(メタ型芳香族ジアミン成分)
メタ型全芳香族ポリアミドの原料となるメタ型芳香族ジアミン成分としては、メタフェニレンジアミン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン等、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルキル基等の置換基を有する誘導体、例えば、2,4−トルイレンジアミン、2,6−トルイレンジアミン、2,4−ジアミノクロロベンゼン、2,6−ジアミノクロロベンゼン等を例示することができる。なかでも、メタフェニレンジアミンのみ、または、メタフェニレンジアミンを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合ジアミンであることが好ましい。
(メタ型芳香族ジカルボン酸成分)
メタ型全芳香族ポリアミドを構成するメタ型芳香族ジカルボン酸成分の原料としては、例えば、メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドを挙げることができる。メタ型芳香族ジカルボン酸ハライドとしては、イソフタル酸クロライド、イソフタル酸ブロマイド等のイソフタル酸ハライド、および、これらの芳香環にハロゲン、炭素数1〜3のアルコキシ基等の置換基を有する誘導体、例えば3−クロロイソフタル酸クロライド等を例示することができる。なかでも、イソフタル酸クロライドそのもの、または、イソフタル酸クロライドを85モル%以上、好ましくは90モル%以上、特に好ましくは95モル%以上含有する混合カルボン酸ハライドであることが好ましい。
〔メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法〕
メタ型全芳香族ポリアミドの製造方法は、特に限定されるものではなく、例えば、メタ型芳香族ジアミン成分とメタ型芳香族ジカルボン酸クロライド成分とを原料とした溶液重合や界面重合等により製造することができる。
<メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造方法>
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、上記の製造方法によって得られた芳香族ポリアミドを用いて、例えば、以下に説明する紡糸液調製工程、紡糸・凝固工程、可塑延伸浴延伸工程、洗浄工程、弛緩処理工程、熱処理工程を経て製造される。
[紡糸液調製工程]
紡糸液調製工程においては、メタ型全芳香族ポリアミドをアミド系溶媒に溶解して、紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を調整する。紡糸液の調整にあたっては、通常、アミド系溶媒を用い、使用されるアミド系溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMAc)等を例示することができる。これらのなかでは溶解性と取扱い安全性の観点から、NMPまたはDMAcを用いることが好ましい。
溶液濃度としては、次工程である紡糸・凝固工程での凝固速度および重合体の溶解性の観点から、適当な濃度を適宜選択すればよく、例えば、ポリマーがポリメタフェニレンイソフタルアミドで溶媒がNMPの場合には、10〜30質量%の範囲とすることが好ましい。
[紡糸・凝固工程]
紡糸・凝固工程においては、上記で得られた紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)を凝固液中に紡出して凝固させる。
紡糸装置としては特に限定されるものではなく、従来公知の湿式紡糸装置を使用することができる。また、安定して湿式紡糸できるものであれば、紡糸口金の紡糸孔数、配列状態、孔形状等は特に制限する必要はなく、例えば、孔数が500〜30000個、紡糸孔径が0.05〜0.2mmのスフ用の多ホール紡糸口金等を用いてもよい。
また、紡糸口金から紡出する際の紡糸液(メタ型全芳香族ポリアミド重合体溶液)の温度は、10〜90℃の範囲が適当である。
本発明に用いられる繊維を得るために用いる凝固浴としては、無機塩を含まないNMP濃度45〜60質量%の水溶液を、浴液の温度10〜35℃の範囲で用いる。NMP濃度45質量%未満ではスキンが厚い構造となってしまい、洗浄工程における洗浄効率が低下し、原繊維の残存溶媒量を0.1質量%以下とすることが困難となる。また、NMP濃度60質量%を超える場合には、繊維内部に至るまで均一な凝固を行うことができず、このため、原繊維の残存溶媒量を0.1質量%以下とすることが困難となり、また、耐酸性も不十分となる。なお、凝固浴中への繊維の浸漬時間は、0.1〜30秒の範囲が適当である。
凝固浴の成分あるいは条件を上記の通りに設定することにより、繊維表面に形成されるスキンを薄くし、繊維内部まで均一な構造にすることができ、その結果、染色性、耐酸性をより向上させることができる。
[可塑延伸浴延伸工程]
可塑延伸浴延伸工程においては、凝固浴にて凝固して得られた繊維が可塑状態にあるうちに、可塑延伸浴中にて繊維を延伸処理する。
可塑延伸浴液としては特に限定されるものではなく、従来公知の浴液を採用することができる。
本発明に用いられる繊維を得るためには、可塑延伸浴中の延伸倍率を、3.5〜5.0倍の範囲とする必要があり、さらに好ましくは3.7〜4.5倍の範囲とする。可塑延伸浴中にて特定倍率の範囲で可塑延伸することにより、凝固糸中からの脱溶媒を促進することができ、原繊維の残存溶媒量を0.1質量%以下にすることができる。
可塑延伸浴中での延伸倍率が3.5倍未満である場合には、凝固糸中からの脱溶媒が不十分となり、原繊維の残存溶媒量を0.1質量%以下とすることが困難となる。また、破断強度が不十分となり、布帛に加工する際の取り扱いが困難となる。一方で、延伸倍率が5.0倍を超える場合には、単糸切れが発生するため、生産安定性が悪くなる。
可塑延伸浴の温度は、10〜90℃の範囲が好ましい。好ましくは温度20〜90℃の範囲にあると、工程調子がよい。
[洗浄工程]
洗浄工程においては、可塑延伸浴にて延伸された繊維を、十分に洗浄する。洗浄は、得られる繊維の品質面に影響を及ぼすことから、多段で行うことが好ましい。特に、洗浄工程における洗浄浴の温度および洗浄浴液中のアミド系溶媒の濃度は、繊維からのアミド系溶媒の抽出状態および洗浄浴からの水の繊維中への浸入状態に影響を与える。このため、これらを最適な状態とする目的においても、洗浄工程を多段とし、温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件を制御することが好ましい。
温度条件およびアミド系溶媒の濃度条件については、最終的に得られる繊維の品質を満足できるものであれば特に限定されるものではないが、最初の洗浄浴を60℃以上の高温とすると、水の繊維中への浸入が一気に起こるため、繊維中に巨大なボイドが生成し、品質の劣化を招く。このため、最初の洗浄浴は、30℃以下の低温とすることが好ましい。
繊維中に溶媒が残っている場合には、得られる布帛を用いた防護服の加工、および得られる防護服の使用における環境安全性が好ましくない。このため、本発明に用いられる繊維に含まれる溶媒量は、0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.08質量%以下である。
[乾熱処理工程]
乾熱処理工程においては、洗浄工程を経た繊維を、乾燥・熱処理する。乾熱処理の方法としては特に限定されるものではないが、例えば、熱ローラー、熱板等を用いる方法を挙げることができる。乾熱処理を経ることにより、最終的に、本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を得ることができる。
本発明に用いられる繊維を得るためには、乾熱処理工程における熱処理温度を、260〜330℃の範囲とする必要があり、270〜310℃の範囲とすることがさらに好ましい。熱処理温度が260℃未満の場合には、繊維の結晶化が不十分となり、目的とする耐酸性が不十分なものとなる。一方で、330℃を越える場合には、繊維の結晶化が大きくなりすぎるため、染色性が大きく低下してしまう。また、乾熱処理温度を260〜330℃の範囲とすることは、得られる繊維の破断強度の向上に寄与する。
[捲縮工程等]
乾熱処理が施された易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維には、必要に応じて、さらに捲縮加工を施してもよい。さらに、捲縮加工後は、適当な繊維長に切断し、次工程に提供してもよい。また、場合によっては、マルチフィラメントヤーンとして巻き取ってもよい。
<易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛>
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛は、後記する易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を主成分として含むものである。布帛における易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の含有量は、50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100%である。
なお、本発明に用いられる布帛において、易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維以外に含まれる成分としては、特に限定されるものではない。例えば、繊維状、パルプ状成分等を挙げることができる。繊維としては、例えば、ポリオレフィン繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、セルロース系繊維、セルロース系パルプ、PVA系繊維、ポリエステル繊維、アリレート繊維、液晶ポリエステル繊維、ポリエチレンナフタレート繊維等の有機繊維、ガラス繊維、ロックウール、アスベスト、ボロン繊維等の無機繊維ガラス繊維を挙げることができる。
[布帛の形態]
本発明に用いられる易染色性布帛の形態は特に限定されるものではなく、布帛に求められる目的、用途等により適宜選択すればよい。本発明において、易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛の形態は、織物、編物、不織布等、いずれの形態であってもよい。
布帛が易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維以外の繊維を含む場合には、例えば、メタ型全芳香族ポリアミド繊維と混合される繊維とを、常法により混合して紡績糸の形態とした後に、該紡績糸を用いて布帛を形成する方法が挙げられる。
易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛の目付は、150〜350g/mの範囲にあることが好ましい。目付が150g/m未満の場合には、充分な耐熱性能が得られないおそれがあり、一方で、該目付けが350g/mを越える場合には、防護服にした際に重くなり、着用感が阻害されるため好ましくない。
[易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛の物性]
〔染色布帛の強度保持率〕
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を染色した染色布帛は、50℃の20質量%硫酸水溶液に150時間浸漬した後の染色布帛の強度保持率が65%以上である。強度保持率は、65%以上であることが必須であり、70%以上であることが好ましく、75%以上であることはさらに好ましい。
染色布帛の強度保持率は、耐酸性の指標となり、強度保持率が65%を下回る場合には、布帛の耐酸性が不十分であり、安全性が低下するため好ましくない。
染色布帛の強度保持率を65%以上とするためには、布帛を構成する易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の製造工程において、スキンコアを有しない凝固形態となるよう凝固浴の成分あるいは条件の調節し、かつ、洗浄工程を経た後に特定温度で乾熱処理を実施する。
なお、本発明における「強度保持率」とは、以下の方法で得られる値をいう。
(強度保持率(耐酸性テスト)の求め方)
セパラブルフラスコへ20質量%の硫酸水溶液を入れ、大きさ幅5.5cm×長さ30cmの布帛を浸漬する。続いて、セパラブルフラスコを恒温水槽中に浸漬し、温度50℃に維持し、染色布帛を150時間浸漬する。浸漬前後の染色布帛につき、それぞれ、破断強度の測定を実施し、浸漬後の布帛の強度保持率を求める。
なお、本発明における「布帛」の「破断強度」とは、JIS L 1015に基づき、以下の条件で測定して得られる値をいう。
(布帛の破断強度)
JIS L1096の引張強さA法(ストリップ法:ラベルドストリップ法)に基づき、インストロン社製、型番1122を用いて、以下の測定条件にて、布帛について測定を実施した。
{測定条件}
切断採取時の試験片の大きさ :幅5.5cm×長さ30cm
試験片の幅 :5.0cm
試験片の枚数 :3枚
測定回数 :各試験片につき、たて方向およびよこ方向それぞれ3回
つかみ間隔 :20cm
初荷重 :50g
引張速度 :20mm/分
また、本発明における「布帛」の「染色」とは、特に指定されない場合には、以下の染色方法による染色を意味する。
(布帛の染色方法)
カチオン染料(日本化薬社製、商品名:Kayacryl Blue GSL−ED(B−54))6%owf、酢酸0.3mL/L、硝酸ナトリウム20g/L、キャリア剤としてベンジルアルコール70g/L、分散剤として染色助剤(明成化学工業社製、商品名:ディスパーTL)0.5g/Lを含む染色液を用意する。引き続き、布帛と当該染色液の浴比を1:40として、120℃下60分間の染色処理を実施する。
〔染色布帛の染着率〕
本発明に用いられる易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛は、上記の染色方法で染色した染色布帛の染着率が90%以上であることが好ましい。染色布帛の染着率は、90%以上であることが好ましく、92%以上であることがより好ましい。染色繊維の染着率が90%未満の場合には、得られる布帛の審美性が好ましく、所望の色相に染色することができない。
なお、本発明における「染着率」とは、以下の方法によって得られる値をいう。
(染着率)
布帛を染色した染色残液に、この染色残液と同容積のジクロロメタンを加え、残染料を抽出する。引き続き、抽出液について、波長670nm、540nm、530nmの吸光度をそれぞれ測定し、あらかじめ染料濃度が既知のジクロロメタン溶液から作成した上記3波長の検量線から抽出液の染料濃度をそれぞれ求め、上記3波長における濃度の平均値を抽出液の染料濃度(C)とする。染色前の染料濃度(Co)を用いて、以下の式にて得られる値を染着率(U)とする。
染着率(U)=(Co−C)/Co×100
本発明において、易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の染色繊維の染着率は、後記する製造方法における凝固工程においてスキンコア構造、熱処理工程において結晶化度を適正化することにより制御することができる。染色繊維の染着率を90%以上とするためには、凝固液をNMP濃度45〜60質量%の水溶液とし、浴液の温度10〜35℃とし、乾熱処理温度を繊維のガラス転移温度(Tg)以上となる260〜330℃の範囲とすればよい。
<積層防護服>
本発明の積層防護服は、易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を、少なくとも1層として含むものである。
積層防護服の構成としては、特に限定されるものではないが、易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を、表地層とすることが好ましい。また、例えば、表地層と内層のみからなる二層構造とする場合には、上記の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を表地層とし、内層を、全芳香族ポリアミド繊維を含む耐熱性布帛とすることが好ましい。
特に、本発明の積層防護服としては、表地層と内層のみからなる二層構造であり、該表地層として、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を用い、該内層として、透湿防水性フィルムの両面に全芳香族ポリアミド繊維からなる織編布が貼り合わされた複合体を用いる構成とすることが好ましい。
なお、本発明の積層防護服は、表地層と内層等から構成される複合構造を有するが、各層は相互に接合されている必要はなく、重ね合わせて縫合したものであってもよい。また、内層を、ファスナー等を使用して表地層から取り外し可能となるようにし、洗濯が簡単に出来るような構造とすることもできる。
[表地層]
本発明の積層防護服の表地層は、上記の易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛であることが好ましい。易染色性メタ型全芳香族ポリアミド繊維の含有量は、染色性や風合いの観点から繊維の全質量に対して50質量%以上であり、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、特に好ましくは100%である。
表地層には、撥水性加工を施し、耐水性の高い布帛とすることが好ましい。撥水加工は、表地層の両面に施してもよいが、少なくとも、積層防護服の表側面に施されていることが好ましい。撥水性加工を施した布帛を用いてなる防護服は、消火作業の際に空隙部に水が浸入してくるのを防止することができるため、防護服の着用性能を向上させることができる。
撥水加工としては特に限定されるものではなく、例えば、フッ素系の撥水性樹脂を用いて、公知の方法に従い、コーティング法、スプレー法、あるいは浸漬法等の加工方法によって加工を行うことができる。
[内層]
内層としては、全芳香族ポリアミド繊維を含む耐熱性布帛を用いることが好ましい。より好ましくは、透湿防水性を有する薄膜フィルムの両面に全芳香族ポリアミド繊維からなる織編布が貼り合わされた複合体とする。
ここで用いる透湿防水性を有する薄膜フィルムとしては、透湿防水性を有するものであればいずれも使用可能であるが、耐薬品性を兼ね備えたポリテトラフルオロエチレン製の薄膜フィルムを用いることが特に好ましい。
また、透湿防水性を有するフィルムに全芳香族ポリアミド繊維からなる織編布を貼り合わせる方法としては、ラミネート加工が最適に例示される。
全芳香族ポリアミド繊維からなる織編布の目付としては、50〜200g/mの範囲とすることが好ましい。織編物の目付が50g/m未満の場合には、織編物の強度が低く、また所望の遮熱性が得られないおそれがあり、一方で、該目付が200g/mを超える場合には、防護服の重量を増加させ、着用者の動きを阻害するため好ましくない。
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例等によって限定されるものではない。
<測定方法>
実施例および比較例における各物性値は、下記の方法で測定した。
[繊度]
JIS L 1015に基づき、正量繊度のA法に準拠した測定を実施し、見掛繊度にて表記した。
[原繊維の破断強度、破断伸度]
JIS L 1015に基づき、インストロン社製、型番5565を用いて、以下の条件で測定した。
(測定条件)
つかみ間隔 :20mm
初荷重 :0.044cN(1/20g)/dtex
引張速度 :20mm/分
[原繊維の残存溶媒量]
原繊維を約8.0g採取し、105℃で120分間乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M1)を秤量した。続いて、この繊維について、メタノール中で1.5時間、ソックスレー抽出器を用いて還流抽出を行い、繊維中に含まれるアミド系溶媒の抽出を行った。抽出を終えた繊維を取り出して、150℃で60分間真空乾燥させた後にデシケーター内で放冷し、繊維質量(M2)を秤量した。繊維中に残存する溶媒量(アミド系溶媒質量)N(%)は、得られたM1およびM2を用いて、下記式により算出した。
N(%)=(M1−M2)/M1×100
[布帛の破断強度]
JIS L1096の引張強さA法(ストリップ法:ラベルドストリップ法)に基づき、インストロン社製、型番1122を用いて、以下の測定条件にて、布帛について測定を実施した。
(測定条件)
切断採取時の試験片の大きさ :幅5.5cm×長さ30cm
試験片の幅 :5.0cm
試験片の枚数 :3枚
測定回数 :各試験片につき、たて方向およびよこ方向それぞれ3回
つかみ間隔 :20cm
初荷重 :50g
引張速度 :20mm/分
[染色布帛の強度保持率(耐酸性テスト)]
セパラブルフラスコへ20質量%の硫酸水溶液を入れ、幅5.5cm×長さ30cmの大きさの染色布帛を浸漬した。続いて、セパラブルフラスコを恒温水槽中に浸漬し、温度50℃に維持し、染色布帛を150時間浸漬した。浸漬前後の布帛につき、それぞれ、上記の測定方法によって布帛の破断強度の測定を実施し、浸漬後の布帛の強度保持率を求めた。
[布帛の染着率]
上記の方法で染色した布帛の染色残液に、この染色残液と同容積のジクロロメタンを加え、残染料を抽出する。引き続き、抽出液について、波長670nm、540nm、530nmの吸光度をそれぞれ測定し、あらかじめ染料濃度が既知のジクロロメタン溶液から作成した上記3波長の検量線から抽出液の染料濃度をそれぞれ求め、上記3波長における濃度の平均値を抽出液の染料濃度(C)とした。染色前の染料濃度(Co)を用いて、以下の式にて得られる値を染着率(U)とした。
染着率(U)=(Co−C)/Co×100
[炎に対する遮熱性]
ISO 9151に準拠した方法により、24℃温度上昇試験を行った。具体的には、試験用積層防護服を規定の火炎に暴露し、該積層防護服内の温度上昇が24℃に達するまでの時間を測定し、炎に対する遮熱性の評価とした。
[放射熱に対する遮熱性]
ISO 6942;1992に準拠した方法により、測定を実施した。具体的には、試験用積層防護服を規定の火炎に暴露し、該積層防護服内の温度上昇が二度火傷に達するまでの時間を測定し、放射熱に対する遮熱性の評価とした。
<実施例1>
[紡糸液調整工程]
特公昭47−10863号公報記載の方法に準じた界面重合法により製造した、固有粘度(I.V.)が1.9のポリメタフェニレンイソフタルアミド粉末20.0質量部を、−10℃に冷却したN−メチル−2−ピロリドン(NMP)80.0質量部中に懸濁させ、スラリー状にした。引き続き、懸濁液を60℃まで昇温して溶解させ、透明なポリマー溶液Aを得た。
[紡糸・凝固工程]
上記ポリマー溶液Aを紡糸原液として、孔径0.07mm、孔数500の紡糸口金から、浴温度40℃の凝固浴中に吐出して紡糸した。凝固液の組成は、水/NMP=45/55(質量部)であり、凝固浴中に糸速7m/分で吐出して紡糸した。
[可塑延伸浴延伸工程]
引き続き、温度40℃の水/NMP=40/60の組成の可塑延伸浴中にて、3.7倍の延伸倍率で延伸を行った。
[洗浄工程]
延伸後、20℃の水/NMP=70/30の浴(浸漬長1.8m)、続いて20℃の水浴(浸漬長3.6m)で洗浄し、さらに60℃の温水浴(浸漬長5.4m)に通して十分に洗浄を行った。
[乾熱処理工程]
洗浄後の繊維について、表面温度280℃の熱ローラーにて乾熱処理を施し、メタ型全芳香族アラミド繊維を得た。
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.70dtex、破断強度2.8cN/dtex、破断伸度51.0%、残存溶媒量0.08質量%であり、良好な力学特性を示した。
[布帛の作製]
得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維のトウに押込捲縮を付与した後、2インチにカットし、通常の紡績工程を通して紡績糸(20/2)を作製し、当該紡績糸から綾織に織成した織物(目付:250g/m、厚み:0.5mm)作製した。
[布帛の物性]
得られた布帛の破断強度は、1292N/5cmであった。
[布帛の染色工程]
カチオン染料(日本化薬社製、商品名:Kayacryl Blue GSL−ED(B−54))6%owf、酢酸0.3mL/L、硝酸ナトリウム20g/L、キャリア剤としてベンジルアルコール70g/L、分散剤として染色助剤(明成化学工業社製、商品名:ディスパーTL)0.5g/Lを含む染色液を用意した。引き続き、布帛と当該染色液の浴比を1:40として、120℃下60分間の染色処理を実施した。
[染色布帛の物性]
染色布帛の染着率は92.4%であり、破断強度は853N/5cmであり、強度保持率は66%と良好な結果を示した。
[積層防護服の作製]
(表地層)
上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維のトウに、押込捲縮を付与した後、2インチにカットした。引き続き、コポリパラフェニレン・3、4’−オキシジフェニレンテレフタルアミド繊維(帝人テクノプロダクツ(株)製、商標名:テクノーラ)と、混合比率が90:10となる割合で混紡した紡績糸(番手:20/2)を作製した。得られた紡績糸を用いて、2/1の綾織に織成した織物(目付:280g/m、厚み:0.8mm)作製し、これを表地層とした。
(内層)
透湿防水性のポリテトラフルオロエチレン製フィルム(ジャパンゴアテックス(株)製、目付:35g/m)の片面に、上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維からなる織布(目付:75g/m)を貼り合わせた。フィルムのもう一方の面には、遮熱性を持たせるために、上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の丸編物(目付:180g/m、ハニカムメッシュ構造)を貼り合せ、内層となる複合体を得た。
(積層工程)
上記で得られた表地層、および内層の2層を重ねて縫合することにより、本発明の積層防護服を得た。
[積層防護服の遮熱性]
得られた積層防護服の遮熱性評価を実施した。結果を表1に示す。
<実施例2>
[紡糸液調整工程]
撹拌装置および原料投入口を備えた反応容器に、N−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略す)854.8部を入れ、このNMP中にメタフェニレンジアミン(以下、MPDAと略す)83.4部を溶解した。さらに、該溶液にイソフタル酸クロライド(以下、IPCと略す)156.9部を撹拌しながら徐々に添加し、反応を実施した。反応開始から40分間攪拌を継続した後、水酸化カルシウム粉末を57.1部添加し、さらに40分間撹拌した後に反応を終了させた。反応容器から重合溶液を取り出したところ、重合溶液は透明であり、ポリマー濃度は16%であった。
[紡糸・凝固工程、可塑延伸浴延伸工程、洗浄工程、水蒸気弛緩熱処理工程、乾熱処理工程]
得られた重合溶液を紡糸原液とし、可塑延伸浴中延伸倍率を3.5倍、乾熱処理工程の表面温度310℃とした以外は、実施例1と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.70dtex、破断強度3.2cN/dtex、破断伸度45.3%、残存溶媒量0.10質量%であった。
[布帛の製造]
得られた原繊維を用いて、実施例1と同様にして布帛を作製した。
[布帛の物性]
得られた布帛の破断強度は、1477N/5cmであった。
[布帛の染色]
布帛に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
[染色布帛の物性]
染色布帛の染着率は91.0%、破断強度は1108N/5cmであり、強度保持率75%と良好な耐酸性を示した。
[積層防護服の作製]
(表地層)
上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を用いて、実施例1と同様に、表地層となる織物を作製した。
(積層工程)
実施例1と同一の方法で内層となる複合体を作製し、実施例1と同一の方法により積層防護服を得た。
[積層防護服の遮熱性]
得られた積層防護服の遮熱性評価を実施した。結果を表1に示す。
<実施例3>
[原繊維の製造]
可塑延伸浴中延伸倍率を4.5倍、乾熱処理工程での表面温度を280℃とした以外は、実施例2と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.70dtex、破断強度3.6cN/dtex、破断伸度36.1%、残存溶媒量0.06質量%であった。
[布帛の作製]
得られた原繊維に押込捲縮を付与した後、2インチにカットした。開綿後、針密度150本/cm、針深さ14mmの条件で、ニードルパンチ加工を行い、目付480g/m、厚み0.8mmのメタ型アラミド短繊維からなる不織布を作製した。
[布帛の物性]
得られた布帛の破断強度は、985N/5cmであった。
[布帛の染色工程]
布帛に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
[染色布帛の物性]
染色布帛の染着率は91.5%、破断強度は699N/5cmであり、強度保持率71%と良好な耐酸性を示した。
[積層防護服の作製]
(表地層)
上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を用いて、実施例1と同様に、表地層となる織物を作製した。
(積層工程)
実施例1と同一の方法で内層となる複合体を作製し、実施例1と同一の方法により積層防護服を得た。
[積層防護服の遮熱性]
得られた積層防護服の遮熱性評価を実施した。結果を表1に示す。
<実施例4>
[原繊維の製造]
紡糸・凝固工程において凝固液組成を水/NMP=55/45とした以外は、実施例3と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.7dtex、破断強度3.7cN/dtex、破断伸度32.0%、残存溶媒量0.05質量%であった。
[布帛の作製]
得られた原繊維を用いて、実施例3と同様にして布帛を作製した。
[布帛の物性]
得られた布帛の破断強度は、1012N/5cmであった。
[布帛の染色工程]
布帛に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
[染色布帛の物性]
染色布帛の染着率は90.4%、破断強度は739N/5cmであり、強度保持率73%と良好な耐酸性を示した。
[積層防護服の作製]
(表地層)
上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を用いて、実施例1と同様に、表地層となる織物を作製した。
(積層工程)
実施例1と同一の方法で内層となる複合体を作製し、実施例1と同一の方法により積層防護服を得た。
[積層防護服の遮熱性]
得られた積層防護服の遮熱性評価を実施した。結果を表1に示す。
<比較例1>
[原繊維の製造]
紡糸・凝固工程において凝固液組成を水/NMP=70/30とし、可塑延伸浴中延伸倍率を3.7倍、乾熱処理工程での表面温度を280℃とした以外は実施例2と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.7dtex、破断強度2.5cN/dtex、破断伸度25.0%、残存溶媒量0.30質量%であった。得られた繊維の物性を表1に示す。
[布帛の作成]
得られた原繊維を用いて、実施例1と同様にして布帛を作製した。
[布帛の物性]
得られた布帛の破断強度は、1154N/5cmであった。
[布帛の染色工程]
布帛に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
[染色布帛の物性]
染色布帛の染着率は85.3%、破断強度は796N/5cmであり、強度保持率69%と良好な耐酸性を示した。
[積層防護服の作製]
(表地層)
上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を用いて、実施例1と同様に、表地層となる織物を作製した。
(積層工程)
実施例1と同一の方法で内層となる複合体を作製し、実施例1と同一の方法により積層防護服を得た。
[積層防護服の遮熱性]
得られた積層防護服の遮熱性評価を実施した。結果を表1に示す。
<比較例2>
[原繊維の製造]
紡糸・凝固工程において凝固液組成を水/NMP=30/70とし、可塑延伸浴中延伸倍率を3.7倍、乾熱処理工程での表面温度を280℃とした以外は、実施例2と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.7dtex、破断強度2.4cN/dtex、破断伸度28.0%、残存溶媒量0.60質量%であった。
[布帛の作成]
得られた原繊維を用いて、実施例1と同様にして布帛を作製した。
[布帛の物性]
得られた布帛の破断強度は、1080N/5cmであった。
[布帛の染色工程]
布帛に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
[染色布帛の物性]
染色布帛の染着率は94.0%、破断強度は540N/5cmであり、強度保持率50%と耐酸性は不十分であった。
[積層防護服の作製]
(表地層)
上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を用いて、実施例1と同様に、表地層となる織物を作製した。
(積層工程)
実施例1と同一の方法で内層となる複合体を作製し、実施例1と同一の方法により積層防護服を得た。
[積層防護服の遮熱性]
得られた積層防護服の遮熱性評価を実施した。結果を表1に示す。
<比較例3>
[原繊維の製造]
実施例2と同様にして紡糸原液を作製し、可塑延伸浴中延伸倍率を3.0倍、乾熱処理工程での表面温度を280℃とした以外は、実施例2と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.7dtex、破断強度2.2cN/dtex、破断伸度55.3%、残存溶媒量0.60重量%であった。
[布帛の作成]
得られた原繊維を用いて、実施例1と同様にして布帛を作製した。
[布帛の物性]
得られた布帛の破断強度は、620N/5cmであった。
[布帛の染色工程]
布帛に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
[染色布帛の物性]
染着布帛の染着率は93.8%、破断強度は341N/5cmであり、強度保持率55%と耐酸性は不十分であった。
[積層防護服の作製]
(表地層)
上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を用いて、実施例1と同様に、表地層となる織物を作製した。
(積層工程)
実施例1と同一の方法で内層となる複合体を作製し、実施例1と同一の方法により積層防護服を得た。
[積層防護服の遮熱性]
得られた積層防護服の遮熱性評価を実施した。結果を表1に示す。
<比較例4>
[原繊維の製造]
可塑延伸浴中延伸倍率を5.5倍、乾熱処理工程での表面温度を280℃とした以外は、実施例2と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維の製造を試みた。しかしながら、可塑延伸浴中での繊維の糸切れが多く、工程調子が不良であったため、長時間安定して原繊維を採取することが困難な結果となった。
<比較例5>
[原繊維の製造]
可塑延伸浴延伸倍率を3.7倍、乾熱処理工程での表面温度を220℃とした以外は、実施例2と同様にしてポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を得た。
[原繊維の物性]
得られた繊維の物性は、繊度1.7dtex、破断強度2.6cN/dtex、破断伸度53.0%、残存溶媒量0.08重量%であった。
[布帛の製造]
得られた原繊維を用いて、実施例1と同様にして布帛を作製した。
[布帛の作成]
得られた布帛の破断強度は、1100N/5cmであった。
[布帛の染色工程]
布帛に対し、実施例1と同様に染色工程を実施した。
[染色布帛の物性]
染色布帛の染着率は94.8%、破断強度は484N/5cmであり、強度保持率44%と耐酸性は不十分であった。
[積層防護服の作製]
(表地層)
上記で得られたポリメタフェニレンイソフタルアミド繊維を用いて、実施例1と同様に、表地層となる織物を作製した。
(積層工程)
実施例1と同一の方法で内層となる複合体を作製し、実施例1と同一の方法により積層防護服を得た。
[積層防護服の遮熱性]
得られた積層防護服の遮熱性評価を実施した。結果を表1に示す。
Figure 2011214180
本発明の積層防護服は、染色性、耐酸性に優れ、かつ、原繊維の残存溶媒量が極めて少ない、環境安全性に優れた繊維である。このため、これらの特性が必要とされる分野において、本繊維の工業的価値は極めて大きく、特に、消防士が消火作業中に着用する耐熱防護服として好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 積層布帛からなる防護服であって、
    前記積層布帛は、メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛を少なくとも1層として含むものであり、
    前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維は、原繊維の残存溶媒量が0.1質量%以下であり、
    前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛は、50℃の20質量%硫酸水溶液に150時間浸漬した後の染色布帛の強度保持率が65%以上である積層防護服。
  2. 染色布帛の染着率が90%以上である請求項1記載の積層防護服。
  3. 前記積層防護服は、表地層と内層のみからなる二層構造であり、
    前記表地層は、前記メタ型全芳香族ポリアミド繊維を含む布帛であり、
    該内層は、透湿防水性フィルムの両面に全芳香族ポリアミド繊維からなる織編布が貼り合わされた複合体である請求項1または2記載の積層防護服。
  4. 前記表地層は、撥水加工されている請求項1〜3いずれか記載の積層防護服。
  5. 前記透湿防水性フィルムは、ポリテトラフルオロエチレンからなるフィルムである請求項1〜4いずれか記載の積層防護服。
  6. 前記全芳香族ポリアミド繊維からなる織編布の目付が、50〜200g/mである請求項1〜5いずれか記載の積層防護服。
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