JP2011214100A - 強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼およびその製造方法 - Google Patents

強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】Q−T材よりも優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する強度および低温靭性に優れた9%Ni鋼およびそれらを経済的かつ安定的に製造する方法を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.02〜0.40%、P:0.005%以下、S:0.005%以下、Mn:0.2〜1.0%、Ni:8.5〜9.5%、Al:0.01〜0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、体積%で2.0〜6.0%の残留オーステナイトを含み、鋼板表面から3mmの範囲においては、該鋼板表面に平行な面の{110}集合組織の集積度が1.2以上であり、該鋼板の板厚中心部においては、該鋼板表面に平行な面の{100}および{211}集合組織の集積度がそれぞれ1.2以上3.0以下であることを特徴とする強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼。
【選択図】なし

Description

本発明は、LNG貯蔵用タンク等に利用される強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼およびその製造方法に関するものである。
近年、世界的なエネルギー需要の増大とそれに伴う地球環境の悪化が問題となっており、クリーンなエネルギー源としての天然ガス(LNG)の需要が急増している。それにともない、近年、LNG貯蔵用タンクの建設が国内外で積極的に推進されており、タンク本体に使用される9%Ni鋼の需要も増加している。
同時に、敷地を有効利用するため、LNGタンクは大型化される傾向にあり、より降伏強度および引張強さの高い鋼板の製造が望まれている。このようなタンクでは、脆性破壊に対する安全性の確保から靭性を改善すべく多くの研究開発がなされてきた。
なかでも、万一、タンクに亀裂が発生した場合のタンクの事故の重大性を考慮し、脆性亀裂伝播停止特性が重要視される。特に、近年のLNGタンクの大型化による鋼板の厚肉化に伴い、さらなる脆性亀裂伝播停止特性の向上が求められる傾向にある。
一般的に、脆性亀裂伝播停止特性は靭性(脆性・延性破面遷移温度)と相関があることが知られており、低温用Ni含有鋼の靭性を改善することは脆性亀裂伝播停止特性の向上に有効な手段の一つであると考えられる。
9%Ni鋼の低温靭性の改善方法として、P、S等の不純物元素の低減が有効であることは、一般的に知られており、非特許文献1によればSの低減により、靭性が向上するとともに、脆性亀裂伝播停止特性が向上することが示されている。また、非特許文献2によれば、Pの低減により脆性亀裂伝播停止特性が向上することが示されている。
一方、強度を確保しつつ、より安定して優れた低温靭性を得ることができる製造法として、二段焼入焼戻(以下、Q−Q’−TプロセスまたはDQ−Q’−Tプロセスと呼ぶ)を行うことが一般的に知られており、必要に応じてこれらの方法が利用できることが示されている。
JIS G 3127:低温圧力容器用ニッケル鋼鋼板(降伏点または耐力が590
MPa以上)には焼入焼戻法(以下、Q−Tプロセスと呼ぶ)が指定されている。また、ASTM A844では、直接焼入焼戻(以下、DQ−Tプロセスと呼ぶ)が指定されている。
非特許文献3によるとQ−Q’−Tプロセスによる低温靭性改善の考え方は次のとおりである。1段目の焼入れ(Q)では、通常の焼入れと同様、オーステナイト域から急冷することでマルテンサイトを得る。2段目の焼入れ(Q’)はAc変態点以下の(γ+α)二相域から焼き入れる。Q’により組織が微細化されるとともに、合金元素の分配が起こるために、焼戻しマルテンサイトと合金元素の濃縮したマルテンサイトと、少量の残留オーステナイトが形成される。
この混合組織を、Ac変態点近傍で焼戻す(T)と、さらに合金元素の濃縮した安定オーステナイトが析出するとともに、焼戻しマルテンサイト中のC、Nのような靭性に有害な不純物は、オーステナイトに移行する。すなわち、最終組織は微細で、かつ靭性の極めて高い焼戻しマルテンサイトと、極低温でも安定性の高いオーステナイト相との混合組織となるため、Q−Q’−Tプロセスでは、低温靭性(−196℃における吸収エネルギー)が著しく向上する。
9%Ni鋼において、残留γの導入が脆性亀裂伝播停止特性に効果があるか必ずしも明確ではないが、非特許文献4には、結晶粒界に生じた逆変態γは、不純物の偏析界面面積を増大させ、亀裂の伝播経路をジグザグにすることを通じて粒界破壊の抵抗となることが示されている。
また、非特許文献5には、後述するように、脆性亀裂伝播停止特性の評価方法として表面切欠付二重引張試験の試験方法が示されている。
9%Ni鋼の脆性亀裂伝播停止特性を向上させる方法として、特許文献1が提案されている。特許文献1には、2.5〜10%のNiを含有する鋼に関して、900℃〜1000℃に加熱してから850℃以下の累積圧下率が40〜70%の圧延後直ちに冷却し、その後850℃以下のオーステナイト温度域での焼入れ処理を行い、焼戻し処理を行う製造方法(DQ−Q−Tプロセス)が開示されている。この方法は、制御圧延を通して得られた微細なマルテンサイト組織を再焼入れ処理することにより、より微細な結晶粒径を得る技術である。
特公平02−9649号公報
古君、中野著 「鋼材の破壊靭性に対する高靭化の影響」、日本鉄鋼協会材料研究委員会編、昭和60年、p28 斉藤、矢野:材料とプロセス、vol.7(1994)、p1771、日本鉄鋼協会 改訂4版金属便覧、日本金属学会編、丸善、p801 村上、柴田、藤田:鉄と鋼、72(1986)、p241、日本鉄鋼協会 田川、松井、伊沢、渡邊、鈴木、徳永:日本鋼管技報、No.111(1986)、p1
本発明は、LNGタンクの側板用途として、現状のQ−Tプロセスの9%Ni鋼板と同等以上の強度、靭性が得られ、なおかつ、Q−T材よりも優れた脆性亀裂伝播停止特性を有する強度および低温靭性に優れた主に板厚30mm以上の9%Ni鋼およびそれらを経済的かつ安定的に製造する方法を提供することを目的とする。
従来技術をまとめると、「(1)P、Sなどの不純物元素を低減する。(2)Q−Q’−TプロセスまたはDQ−Q’−Tプロセスの適用により、残留γを導入する。(3)DQ−Q−Tプロセスの適用により結晶粒径の微細化を図る。」の3通りである。
実際に使用されている9%Ni鋼は、現状の製鋼技術から、不純物元素は十分に低減されており、更なる清浄化を図るには製鋼コストの増大や製造能率を低下する。また、Q−Q’−TやDQ−Q’−Tプロセス、またはDQ−Q−Tプロセスを利用すると、強度を確保しつつ、より安定して優れた−196℃における吸収エネルギーを得ることができるが、熱処理プロセスが複雑で複数の段階があるためにコストがかかり、製造所要日数も長くかかるという問題がある。
発明者らは、従来技術とは異なる方法で、Ni含有量が8.5〜9.5%を基本成分とする9%Ni鋼について、十分な強度および低温靭性を確保した上で、脆性亀裂伝播停止特性を向上させる目的で詳細な検討を行い、鋼板の表面近傍では{110}集合組織を、鋼板板厚中心部では{100}および{211}集合組織を発達させた場合に脆性亀裂伝播停止特性が向上することを見出した。本発明の要旨は以下の通りである。
第一の発明は、質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.02〜0.40%、P:0.005%以下、S:0.005%以下、Mn:0.2〜1.0%、Ni:8.5〜9.5%、Al:0.01〜0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、体積%で2.0〜6.0%の残留オーステナイトを含み、鋼板表面から3mmの範囲においては、該鋼板表面に平行な面の{110}集合組織の集積度が1.2以上であり、該鋼板の板厚中心部においては、該鋼板表面に平行な面の{100}および{211}集合組織の集積度がそれぞれ1.2以上3.0以下であることを特徴とする強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼である。
第二の発明は、降伏強度が690MPa以上、引張強さが730MPa以上であることを特徴とする第一の発明に記載の強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼である。
第三の発明は、さらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Nb:0.05%以下、V:0.05%以下、Cr:0.5%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする第一の発明または第二の発明に記載の強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼である。
第四の発明は、さらに、質量%で、Ca:0.007%以下、REM:0.1%以下、Mg:0.07%以下、Ti:0.03%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする第一の発明から第三の発明のいずれかに記載の強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼である。
第五の発明は、第一の発明から第四の発明のいずれかに記載の成分の鋼片を、950℃以上1150℃以下の温度に加熱し、850℃以下の累積圧下率が15%以上75%以下で、最終圧延終了温度を鋼板表面温度で830℃以下650℃以上とした熱間圧延を行い、鋼板とした後、該鋼板の板厚中心部の冷却速度を3℃/s以上、冷却停止温度を250℃以下とした直接焼入れを行なった後、530℃以上650℃以下の温度に焼戻すことを特徴とする強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼の製造方法である。
本発明により、熱処理を省略したDQ−Tプロセスにより、Q−Tプロセスの場合に比較して、高強度で、かつ、同等の低温靭性を有し、脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼板を安定的に製造できるようにしたので、生産性に優れ、かつ、強度および低温靭性、脆性亀裂伝播停止特性に優れた低温用Ni含有鋼の製造方法を提供することが可能になった。
以下に本発明の各構成要件の限定理由について説明する。
1.化学成分について
はじめに、本発明の鋼の化学成分を規定した理由を説明する。なお成分%は全て質量%を意味する。また、以下に記した元素以外の残部はFeおよび不可避不純物である。
C:0.03〜0.10%、
Cは、強度を付与するのに重要な元素であり、0.03%以上の添加が必要であるが、0.10%を超えて添加すると、低温靭性の低下を招くため、C量は0.03〜0.10%の範囲とする。
Si:0.02〜0.40%
Siは、強度向上あるいは脱酸材として添加されるが、多量に添加すると、焼戻し脆化感受性が高まることから、Si量は0.02〜0.40%の範囲とする。
P:0.005%以下、S:0.005%以下
P、Sは、いずれも不純物元素である。健全な母材および溶接継手を得るためには、可能な限り低く抑制するのが好ましい。従って、P量、S量はともに、0.005%以下とする。
Mn:0.2〜1.0%
Mnは、0.2%未満であると、熱間での延性が低下するため、0.2%以上の添加が必要である。一方、Mnは、強度の向上に寄与する元素であるが、1.0%を超えて添加しても、強度向上代が小さくなるうえ、逆に低温靭性が低下し、焼戻し脆化感受性も高くなることから、Mn量は0.2〜1.0%の範囲とする。
Ni:8.5〜9.5%
Niは、低温靭性を付与するとともに、残留オーステナイトの安定化に寄与する元素であり、8.5%以上の添加が必要であるが、9.5%を超えて添加しても、その効果が飽和するため、Ni量は8.5〜9.5%の範囲とする。
Al:0.01〜0.10%
Alは、脱酸元素として必要であるが、0.01%未満ではその効果が乏しく、一方、0.10%を超えると清浄性を損なうため、Al量は0.01〜0.10%の範囲とする。
上記成分に加えて、下記成分の中から選ばれる1種または2種以上を含有することができる。
Cu:0.5%以下
Cuは、焼入性向上により強度を得るのに有効な元素であるが、0.5%を超えて添加すると靭性が低下するため、添加する場合は、Cu量は0.5%以下とする。
Mo:0.5%以下
Moは、焼戻し脆化感受性を抑制するのに有効な元素であり、また、靭性を損なうことなく強度が得られる元素であるが、0.5%を超える添加は、靭性が低下するので、添加する場合は、Mo量は、0.5%以下とする。
Cr:0.5%以下
CrもMoと同様の効果が得られるが、0.5%を超える添加は、靭性が低下するので、添加する場合は、Cr量は0.5%以下とする。
Nb:0.05%以下、V:0.05%以下
Nb、Vはいずれも析出強化により強度の向上に有効であるが、両者とも過剰な添加は靭性が低下するので、添加する場合は、Nb量、V量はいずれも0.05%以下とする。
Ca:0.007%以下、REM:0.1%以下、Mg:0.07%以下
これらの元素は、介在物の形態制御により靭性を向上させる効果を有するが、過剰な添加は清浄性を損なうため、添加する場合は、Ca量は0.007%以下、REM量は0.1%以下、Mg量は0.07%以下とする。
Ti:0.03%以下
Tiは、母材の機械的特性には特に影響を及ぼさないが、溶接部の靭性を高めることから、添加する場合は、Tiは0.03%以下の範囲で添加してもよい。
2.集合組織について
鋼板表面から3mmの範囲においては、該鋼板表面に平行な面の{110}集合組織の集積度が1.2以上で、かつ該鋼板の板厚中心部においては、該鋼板表面に平行な面の{100}および{211}集合組織の集積度がそれぞれ1.2以上3.0以下とする
従来のQ−Tプロセスによる鋼では鋼板の板厚方向には集合組織は均一であり、いずれの集積度も1であるが、本発明の鋼板は、鋼板表面から3mmの範囲の該鋼板表面に平行な面の{110}の集積度が1.2以上、該鋼板の板厚中心部の鋼板表面に平行な面の{100}および{211}の集積度がそれぞれ1.2以上あり、このような集合組織とすることにより従来鋼に比べ脆性亀裂伝播停止特性が向上する。好ましくは、鋼板表面から3mmの範囲の鋼板表面に平行な面の{110}の集積度は1.5以上である。しかし、集合組織の著しい発達は低温靭性に悪影響をもたらすため、板厚中心部の鋼板表面に平行な面の{100}および{211}の集積度はそれぞれ3.0以下とする。好ましくは2.5以下である。
なお、この発明において{hkl}集合組織の集積度とは、ランダム試料の{hkl}面からの回折X線強度Iに対する被検体の{hkl}面からの回折X線強度Iの相対強度比I/Iで表される値である。
3.残留オーステナイトについて
残留オーステナイト量:2.0〜6.0%
残留オーステナイトは低温靭性および脆性亀裂伝播停止特性の向上に効果があり、2.0%以上であれば、従来のQ−T材と同等以上の低温靭性および脆性亀裂伝播停止特性が得られる。しかし、残留オーステナイトの析出量が多くなりすぎると強度が低下することから、残留オーステナイト量は2.0%以上、6.0%以下とする。ここで、残留オーステナイトは、−196℃でサブゼロ処理を行った後にX線回折により求めた値である。
4.製造方法について
製造方法は、所望の鋼板を得るために下記のように規定した。その理由を以下に述べる。
鋼片加熱温度:950℃〜1150℃
鋼片加熱温度が950℃未満の場合は、鋼片の鋳造段階で析出している粗大なAlNが固溶せず、靭性が低下する。また、添加元素が十分に均一に拡散せず、靭性が低下する。そのほか、以下に述べる圧延条件を実質的に満足できない。一方、1150℃を超える温度で加熱すると、オーステナイト粒が粗大化し靭性が低下する。また、スケールの生成量が増加し、圧延時の疵の発生原因となる。以上の理由から、鋼片加熱温度は950℃以上、1150℃以下とする。
850℃以下の累積圧下率:15〜75%
一般に、DQ−Tプロセス適用の利点は、オースフォーム効果を活用できる点にある。すなわち、DQ前の圧延によりオーステナイト粒を微細化するとともに多くの転位を導入することにある。このような、微細な加工オーステナイトからマルテンサイト変態することにより、有効結晶粒径であるパケットが微細なマルテンサイトが得られる。これにより、高強度かつ高靭性が達成されるものと考えられる。圧延による結晶粒径の微細化のためには、少なくとも850℃以下で15〜75%の圧下を加える必要がある。850℃を超える温度域の圧延条件を特に定めないのは、850℃を超える温度域では回復再結晶の進行が早いため、最終組織への影響が小さいためである。
熱間圧延終了温度(最終圧延終了温度):650℃〜830℃
熱間圧延終了温度が、鋼板表面温度で830℃を超えると、集合組織の発達が不十分であり、脆性亀裂伝播停止特性の向上は認められない。一方、650℃未満となると、鋼板中心部の集合組織が著しく発達するため、熱間圧延終了温度は鋼板表面温度で650℃以上、830℃以下、好ましくは800℃以下とする。
鋼板冷却速度:鋼板板厚中心部で3℃/s以上、鋼板冷却終了温度:鋼板板厚中心部温度が250℃以下の直接焼入れ
鋼板冷却速度が3℃未満では均一なマルテンサイト組織が得られないため鋼板の板厚中心部での冷却速度を3℃/s以上とする。また、250℃を超えた温度で冷却を停止すると、マルテンサイト変態が完了せず、均一なマルテンサイト組織が得られず強度および靭性が低下するため、鋼板板厚中心部温度が250℃以下まで冷却する直接焼入れとする。
焼戻し温度:530℃〜650℃
直接焼入れ(DQ)後焼戻し処理を行う。焼戻し処理は、Nb、V、Moの2次析出、残留オーステナイトの生成など組織の安定化による強度、靱性の確保を狙ったもので、焼戻し温度が530℃未満ではこれらの焼戻しの効果が十分に得られず、650℃超えでは過度の逆変態が起こり、焼戻し後に多量の焼入れままマルテンサイトや残留オーステナイトが生成するため、所望の強度、靭性が得られない。以上の理由から焼戻し温度範囲は、530℃以上、650℃以下とした。なお、焼戻し温度は鋼板の平均温度である。
表1に、供試鋼の化学成分を示す。鋼A〜Eは、本発明鋼であり、鋼F、GはそれぞれNi,Cが本発明の範囲外である比較例である。これらの成分のスラブを表2に示す条件で熱間圧延し、直接焼入れ後、焼戻しを行った。直接焼入れの条件は、鋼板の板厚中心部の冷却速度を30℃/s、鋼板板厚中心部の冷却終了温度を100℃とした。なお、No.1、2は、比較のために、通常の焼入焼戻処理を行った比較例である。
Figure 2011214100
鋼板の1/2t部から圧延方向と垂直な方向(C方向)に平行部径14φの引張試験片およびVノッチシャルピー試験片を採取し、それぞれ常温引張試験および−196℃でのシャルピー衝撃試験を実施した。衝撃試験では、3回の測定を実施して、吸収エネルギーを測定し、その平均値を求めた。−196℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーは150J以上を本発明の範囲と判断した。引張試験は、0.2%耐力または下降伏応力(YS)は690MPa以上を、引張強さ(TS)は730MPa以上を本発明の範囲と判断した。
脆性亀裂伝播停止特性は、表面切欠付二重引張試験により評価した。表面切欠付二重引張試験の試験方法は、前述の非特許文献5に示された方法に準じ、試験温度−196℃で実施した。試験結果は、−196℃における負荷応力294MPaでの表面切欠付二重引張試験にて、亀裂が停止する場合を本発明の範囲と判断した。
集合組織の測定は、鋼板の表面下1mmおよび1/2t部(板厚中心部)より板面に平行な面を切り出し、機械研磨後、エッチングによりサンプル表面の加工組織を除去した後、インバース法により測定した。
表2に、実施例の機械的特性を示す。
Figure 2011214100
No.1、2は、比較のため、通常の焼入焼戻(Q−T)により得られた比較例である。−196℃におけるシャルピー吸収エネルギーは十分な値が得られているが、集合組織の集積度、引張試験値、残留オーステナイト量が本発明の範囲外であり、表面切欠付二重引張試験においても、亀裂が停止していない。
No.3〜11、No.18〜24は、本発明の化学成分、圧延条件、集合組織を満たしており、本発明の強度と−196℃おいて十分な吸収エネルギーが得られている。
また、No.1、2の従来Q−T材の表面切欠付二重引張試験では、亀裂が停止していないのに対して、本発明例では、亀裂が停止しており、優れた脆性亀裂伝播停止特性を有している。
No.12は焼戻し温度が本発明の範囲外であるため、残留オーステナイトの析出量が多いため、YSが低下している。
No.13〜17は加熱、圧延条件が本発明の条件を満たしておらず、No.13、No.15〜17は、シャルピー吸収エネルギーが低い値であり、また、No.14、No.16では表面切欠付二重引張試験において亀裂が停止していない。
No.25、26は本発明の成分範囲を満たしておらず、No.25は引張強度が不足ししており、No.26はシャルピー吸収エネルギーが著しく低い値であり、表面切欠付二重引張試験においても亀裂が停止ししていない。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.03〜0.10%、Si:0.02〜0.40%、P:0.005%以下、S:0.005%以下、Mn:0.2〜1.0%、Ni:8.5〜9.5%、Al:0.01〜0.10%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、体積%で2.0〜6.0%の残留オーステナイトを含み、鋼板表面から3mmの範囲においては、該鋼板表面に平行な面の{110}集合組織の集積度が1.2以上であり、該鋼板の板厚中心部においては、該鋼板表面に平行な面の{100}および{211}集合組織の集積度がそれぞれ1.2以上3.0以下であることを特徴とする強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼。
  2. 降伏強度が690MPa以上、引張強さが730MPa以上であることを特徴とする請求項1記載の強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼。
  3. さらに、質量%で、Cu:0.5%以下、Mo:0.5%以下、Nb:0.05%以下、V:0.05%以下、Cr:0.5%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または請求項2記載の強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼。
  4. さらに、質量%で、Ca:0.007%以下、REM:0.1%以下、Mg:0.07%以下、Ti:0.03%以下の中から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼。
  5. 請求項1から請求項4のいずれかに記載の成分の鋼片を、950℃以上1150℃以下の温度に加熱し、850℃以下の累積圧下率が15%以上75%以下で、最終圧延終了温度を鋼板表面温度で830℃以下650℃以上とした熱間圧延を行い、鋼板とした後、該鋼板の板厚中心部の冷却速度を3℃/s以上、冷却停止温度を250℃以下とした直接焼入れを行なった後、530℃以上650℃以下の温度に焼戻すことを特徴とする強度および低温靭性と脆性亀裂伝播停止特性に優れた9%Ni鋼の製造方法。
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