JP2011208655A - 油圧浮上台形ねじ - Google Patents

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Abstract

【課題】 台形ねじは、フランク面同士が金属接触するため摺動摩擦抵抗が大きく、回転トルクを推進力に変換するねじ効率が非常に悪い。また、ボールねじは、周速の制限があるため、高速かつ大きな力で機械装置を動作させるのには適さない。そこで、ねじ効率が高く高速大荷重の装置においても採用可能な、油圧浮上式の台形ねじを提供する。
【解決手段】 台形ねじの各フランク面間をシール材によって密閉し、軸方向荷重に対応した油圧を供給して浮かせ、フランク面同士を確実に非接触とすることで、ねじ効率を極めて高くでき、高速大荷重の装置においても利用可能となる。
【選択図】 図2

Description

モータの回転運動を効率良く直進運動に変換する台形ねじの構造およびその制御方法であり、ダイカストマシンや射出成形機、あるいは工作機械の駆動装置として利用できる。
古くから産業用機械などの駆動源として、電気モータが用いられてきた。その電気モータの回転運動を直進運動に変換する機構としてねじ機構が採用され、電気モータの回転速度や回転トルク制御を行なうことにより、直進運動部の速度制御および圧力(推進力)制御を行なう。ねじ機構には、特に台形ねじが多く利用されている。台形ねじは、加工が容易で安価に製作できるという利点があるが、ねじ面(フランク面)同士の金属接触による摺動摩擦抵抗が大きいため、入力した回転エネルギーに対し出力される直進エネルギーの割合が30%前後と、変換効率が非常に悪いという問題点があった。
そのような問題を解決するため、ねじ軸とナットのねじ山の間に鋼製のボールを嵌め込み、リターンチューブでボールを循環させる方式のボールねじが開発され、現在広く利用されている。ボールねじでは、ねじ軸とナットの間にボールの転がりが介在するため、摩擦抵抗が非常に小さく、90%を超える変換効率を達成している。そのため、例えば工作機械の送り機構や、電動射出成形機の駆動機構に一般的に利用されている。
しかし、ボールねじの場合、高速で動作するとボール同士の衝突による衝撃でボール自身が破損し、ボールねじおよび機械の故障を引き起こすという問題がある。そのため、ボールねじ軸の外径(Dmm)と回転速度(Nrpm)をかけ合わせた数値(D×N)である周速に限界値があり、ボールねじ軸の太さおよび回転速度が制限される。よって、高速かつ大荷重(ねじ軸が大径になる)の装置には適しておらず、大型機にはボールねじを採用できないという欠点があった。また、ボールねじの本数を複数にして1本当たりの荷重を低くして使用する場合も、軸同士の同調メカニズムあるいは制御が煩雑となり、コストアップの要因となって採用が困難であった。
他に、台形ねじのナットの内部から、フランク面間に流体を供給するきり孔加工を施し、空気や作動油など流体の圧力を適切に供給して、フランク面での金属接触力を少なくする静圧ねじが利用されている。
例えば、特許文献1には、外筒の内周部とナットの外周部の間に設けた周段部(絞りすきま)とナットに設けられた小孔を経由して、両フランク面に油圧を供給し、軸方向荷重の変動に対応した油圧をバランス良く発生させることにより、フランク面に一定の厚さの流体膜を生じさせることが可能な静圧ねじが開示されている。
次に、特許文献2には、ナット側からフランク面に供給した圧力空気を、ねじ軸の軸芯上に設けた長手方向排気孔から排出し、排出量を充分に確保することによって必要な空気膜を形成可能となる、静圧空気ねじが開示されている。
さらに、特許文献3では、軸方向の荷重を軸受け部分に設けた2個の圧力検出器によって検知し、検知信号を差動増幅器で増幅した後、直接サーボ弁へ信号入力して軸方向荷重に対応した油圧をナットの各フランク面に供給する静圧ねじ装置技術が開示されている。
特開昭57−15144号公報 特開昭58−166161号公報 特開昭59−190561号公報
しかしながら、特許文献1記載のねじでは、絞りすきまによってフランク面の圧力を調整するため、絞りすきまの高さの製作誤差や作動油温度の変動によって、発生圧力にバラ付きが生じ、常に適切な大きさの圧力を発生できるとは限らなかった。
また、特許文献2記載のねじでは、排気孔から圧力が抜けるため、高い圧力が必要な高荷重のねじ装置では圧力が立たず、適していなかった。
さらに、特許文献3記載のねじでは、圧力検出器から出てきた電気信号により直接サーボ弁を操作するため、低負荷から高負荷の範囲の荷重に対して、フランク面の圧力を適切に制御することが困難であった。
よって本願発明は、台形ねじのフランク面に軸方向荷重に対応した油圧を供給して浮かせ、フランク面同士を確実に非接触とすることで、動力伝達効率が極めて高く、高速大荷重の装置においても採用可能な、油圧浮上式の台形ねじ及びその制御方法を提供するものである。
本願における第1の発明においては、ねじ軸とナットからなる台形ねじであって、ねじ軸の外径部とナットのねじ底部の間をシールする外径シール材と、ねじ軸の谷径部とナットの内径部をシールする内径シール材と、ナットの両端部においてねじ軸のフランク面とナットのフランク面の間をシールするフランク面シール材とによって封止され、ねじ軸のフランク面とナットのフランク面との間に形成される螺旋状のaグループ油室およびbグループ油室と、aグループ油室とおよび前記bグループ油室に、個別に圧力制御された作動油を供給する油圧制御装置と、aグループ油室およびbグループ油室と連通し、油圧制御装置からの油圧を供給するためにナットに施された流路孔と、ねじ軸とナットの軸方向の相対位置を測定するねじ位置センサーと、から構成される台形ねじとする。
また、第2の発明においては、ねじ軸は電気モータの回転軸と連結し、ナットは回転が拘束された状態で摺動運動可能とする。
さらに、第3の発明においては、モータの回転運動を直進運動に変換して駆動動作するダイカストマシンまたは射出成形機に用いる。
そして、第4の発明においては、上記台形ねじの動作を制御する制御方法であって、台形ねじの動作中にねじ位置センサーの測定値をフィードバックし、ねじ山の両側に形成されるフランク面の間の間隔が略同一になるよう、油圧制御装置によってaグループ油室およびbグループ油室に供給する作動油の圧力を制御する制御方法である。
(1)周速等の制限が無いので、高速移動が可能で且つ大きな推進力を発揮可能なねじ送り機構を実現できる。
(2)ねじのフランク面における金属摺動による摩擦抵抗が無くなるので、モータの回転トルクを効率的に直進運動力(推進力)に変換できる。
本願発明の実施例であり、台形ねじとその周辺部品を示す図である。 ねじ軸及びナットの断面と油圧回路の詳細を示す図である。 フランク面間をシールする部分の詳細を示す図である。 図3において、矢視Pから見た図である。
以下、図面にもとづいて、本発明に係る油圧浮上式台形ねじに関する実施例を詳細に説明する。
図1は、本願発明に係る台形ねじを、機械装置に組み込む際の構造の実施例を示したものである。
機械装置のフレーム18上に、軸受け固定部材23が固着されている。軸受け固定部材23には電気モータ20がモータ取付けブラケット22を介して固定されており、電気モータ20の回転軸はカップリング21によってねじ軸10と連結している。ねじ軸10の図1における左端部は、スラスト軸受け24、アンギュラ軸受け25、その間のスペーサ、軸受けナット26が組み付けられており、回転自在且つ軸方向には拘束された状態で、軸受け固定部材23に支持されている。ねじ軸10に左方向のスラスト荷重が作用するとスラスト軸受け24によって荷重を受け、右方向の力が作用するとアンギュラ軸受け25によって荷重を受けるようになっている。また、アンギュラ軸受け25は軸受け押さえ27によって、軸受け固定部材23に押さえ付けられている。
一方、ねじ軸10の右端部には押さえナット32によって軸受け31が取付けられており、フレーム18上に固着された軸受け支持部材30に回転自在に支持されている。
ねじ軸10と螺合するナット11には機械装置の移動部材13が取付けられており、電気モータ20の回転駆動が機械装置の直進運動として伝えられる。移動部材13には、スライドブロック34が取付けられており、フレーム18に取付けられているスライドレール33と組み合わされて摺動自在となるので、ナット11および移動部材13は、回転が拘束された状態でかつ直進運動が可能となっている。
図2は、ねじ軸10とナット11の螺合部の断面図及びねじのフランク面間に油圧を供給する油圧回路を示す図である。
ねじ軸10の外周部とナット11の内周部には、お互い螺合し合う台形ねじが形成されている。台形ねじは、フランク面の間に隙間があるあまねじなっており、軸方向でδmmづつの空間に作動油を導くことができる。隙間は、両側を合わせた2δが0.1mm程度であることが好ましい。ナット11の内径部11bには、内径シール材51を収納する溝が加工されており、ナット11の内径部11bとねじ軸10の谷径部10bの間をシールできるようになっている。また、ナット11のねじ底部11aには、外径シール材52を収納する溝が加工されており、ナット11のねじ底部11aとねじ軸10の外径部10aの間をシールできるようになっている。さらに、ナット11の両端部において、フランク面の間をシールするフランク面シール材70が2組装着されている。よって、フランク面間の隙間であるa1、a2、a3、a4、a5からなり周囲がシール(封止)された螺旋状のaグループ油室と、同様にb1、b2、b3、b4、b5からなるbグループ油室が形成される。aグループ油室はナット11が図の矢印A方向からの荷重を受けると油室が小さくなり、またbグループ油室は図の矢印B方向からの荷重を受けると油室が小さくなる。内径シール材51と外径シール材52は螺旋状になっている。aグループ油室とbグループ油室は1つのねじ山の両側に形成される。
aグループ油室は、ナット11に施されたaライン流路孔47を介して、外部配管であるaラインを経由して、油圧装置と接続されている。また、bグループ油室もbライン流路孔48を介して油圧装置と接続している。aラインは、ポンプ用モータ45によって回転駆動を受けるaラインポンプ43と接続するとともに、途中で分岐してaライン電磁圧力制御弁41およびタンク46と接続している。よって、aラインポンプ43から吐出された作動油は、aライン電磁圧力制御弁41によって圧力制御され、所望の圧力の作動油をaグループ油室に供給できる。aライン電磁圧力制御弁41は、電気的に図示せぬ制御装置と接続しており、制御装置からの指令によって設定圧力を自由に変えることができる。
同様にbグループ油室も、bライン流路孔48及びbラインを介して、bラインポンプ44及びbライン電磁圧力制御弁42、タンク46と回路接続し、油圧を制御できるようになっている。
aラインポンプ43とbラインポンプ44は、ポンプ用モータ45によって回転し、タンク46から作動油を吸い上げて、aラインとbラインに吐出する。aグループ油室およびbグループ油室は、各シール材によってシール(封止、密閉)されているため圧力が確実に上がり、また高圧油の漏れがほとんど無い、aラインポンプ43とbラインポンプ44およびポンプ用モータ45の容量を小さくすることができる。従って、ポンプ用モータ45の消費電力は小さくなる。
ナット11の端面には、ねじ位置センサー60が取付けられており、ねじ軸10のねじ山との間の距離を測定することができる。それにより、ねじ軸10とナット11の軸方向の相対位置が測定できるようになっており、aグループ油室およびbグループ油室の各隙間を検知できる。ねじ位置センサー60も制御装置と電気的に接続しており、測定値を瞬時にかつ連続的に送信できるようになっている。
図3に、フランク面シール部分の詳細を示す。スリット溝73を持つ略円柱状のシールアダプター71が、ナット11に埋め込まれて固定されている。シールアダプター71のスリット溝73には板状のフランク面シール材70が摺動自在かつ隙間がほとんど無い状態で嵌め込まれており、ばね72によってねじ軸10のフランク面に押し当てられている。ねじ軸10の材質には鉄鋼が適しているので、フランク面シール70は銅製であることが好ましい。銅は鉄鋼より若干柔らかいので、ねじ軸10が回転した際フランク面シール70材とねじ軸10のフランク面は擦れ合うが、適度に馴染んでフランク面を傷付けることがなく、効果的にシールすることができる。
図4に、図3におけるシールアダプター71の中心線を矢視Pから見た断面を示す。シールアダプター71の下部は、スリット溝73が加工されており、そこにフランク面シール材70が挿入され支持されるとともに、上からばね72によって下方に押し付けられている。シールアダプター71は、ナット11に組み込まれた状態で内径部にねじ山加工を施せば、ナット11と連続的な台形ねじを形成することができる。その後シールアダプター71を取り出し、スリット溝73を加工すると良い。ここでは、フランク面シール材70をねじ軸10のフランク面に押し付けるためにばね72を利用したが、例えば、フランク面油室に供給される作動油をフランク面シール70の上側に導き、油圧の力によってフランク面に押し付ける構造にすることも可能である。
次に、上で述べた油圧浮上台形ねじの運転制御方法について説明する。
運転開始信号が制御装置に入力されると、まずポンプ用モータ45を回転駆動しaラインポンプ43およびbラインポンプ44から作動油を吐出する。この時、aライン電磁圧力制御弁41とbライン電磁圧力制御弁42は、低い圧力に設定しておく。このことにより、aグループ油室とbグループ油室には低い圧力が供給される。この状態でねじ位置センサー60によって、フランク面間の隙間を測定する。そして、それぞれの隙間が中間値のδmmとなるよう、隙間が小さい方のラインの圧力を少し上げて調整する。そして、ナット11および移動部材13を直進移動させるため電気モータ20を回転させる。この時、移動部材13に作用する力の変動によって隙間が変わるので、常時ねじ位置センサー60によって相対位置を監視し、適宜aライン電磁圧力制御弁41とbライン電磁圧力制御弁42の指令値を変更し、各ラインの圧力を増減させる。例えば、ねじ位置センサー60の測定値が小さくなった場合、矢印A方向の荷重を受けaグループ油室の隙間が小さくなり作動油がaライン電磁圧力制御弁41を介してタンク46に落ちていることになるので、aライン電磁圧力制御弁41の設定圧力を高くする。
このようなことを、短いサンプリング間隔で繰り返し、両側の隙間が常にδmm近辺に維持できるように制御する。
ここで、機械装置の推進力(荷重)と油室の圧力との関係を述べる。
軸方向の推進力をQ、ねじ軸の外径をd、噛み合っているねじ山の高さをh、フランク面に圧力が供給されるねじ山数をZとすると、フランク面(油室)に供給する作動油の圧力qは、次の計算式となる。
q=Q÷{π・Z・h・(d−h)}
以上の計算式より、機械装置の最高推進力の仕様値より最大圧力を計算し、その最大圧力を供給できる油圧回路を設計する。
以上のようなの構成の台形ねじを作成し運転制御することにより、フランク面間に常に作動油が介在しフランク面同士の金属接触が無くなるので、滑らかに回転するねじ装置となる。また、ボールねじのようなボール同士の衝突を軽減するための周速制限が無く、高速かつ高荷重で動作する大型装置を駆動することが可能となる。さらに、ねじ部の油室がシール材により密封されているため高圧作動油の漏れが少なく、ポンプ用モータの消費電力を小さくすることができる。
このようなことから、ダイカストマシンや射出成形機の大型機(例えば型締力が500トン以上)の駆動装置としても利用でき、型締装置や射出装置を動かすことが可能となる。
上記の実施の形態は本発明の例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
サーボモータとねじの組み合わせにより駆動を行なう、ダイカストマシンや射出成形機に利用できる。
10 ねじ軸
10a 外径部
10b 谷径部
11 ナット
11a ねじ底部
11b 内径部
13 移動部材
18 フレーム
20 電気モータ
21 カップリング
22 モータ取付けブラケット
23 軸受け固定部材
24 スラスト軸受け
25 アンギュラ軸受け
26 軸受けナット
27 軸受け押さえ
30 軸受け支持部材
31 軸受け
32 押さえナット
33 スライドレール
34 スライドブロック
41 aライン電磁圧力制御弁
42 bライン電磁圧力制御弁
43 aラインポンプ
44 bラインポンプ
45 ポンプ用モータ
46 タンク
47 aライン流路孔
48 bライン流路孔
51 外径シール材
52 内径シール材
60 ねじ位置センサー
70 フランク面シール材
71 シールアダプター
72 ばね
73 スリット溝

Claims (4)

  1. ねじ軸とナットからなる台形ねじであって、
    前記ねじ軸の外径部と前記ナットのねじ底部の間をシールする外径シール材と、前記ねじ軸の谷径部と前記ナットの内径部をシールする内径シール材と、前記ナットの両端部において前記ねじ軸のフランク面と前記ナットのフランク面の間をシールするフランク面シール材と、によって封止され、前記ねじ軸のフランク面と前記ナットのフランク面との間に形成される螺旋状のaグループ油室およびbグループ油室と、
    前記aグループ油室とおよび前記bグループ油室に、個別に圧力制御された作動油を供給する油圧制御装置と、
    前記aグループ油室および前記bグループ油室と連通し、前記油圧制御装置からの油圧を供給するために前記ナットに施された流路孔と、
    前記ねじ軸と前記ナットの軸方向の相対位置を測定するねじ位置センサーと、
    から構成されることを特徴とする台形ねじ。
  2. 前記ねじ軸は電気モータの回転軸と連結し、前記ナットは回転が拘束された状態で摺動運動可能であることを特徴とする請求項1に記載の台形ねじ。
  3. モータの回転運動を直進運動に変換して駆動動作するダイカストマシンまたは射出成形機に用いられることを特徴とする請求項1または2に記載の台形ねじ。
  4. 請求項1から3に記載の台形ねじの動作を制御する制御方法であって、前記台形ねじの動作中に前記ねじ位置センサーの測定値をフィードバックし、ねじ山の両側に形成されるフランク面の間の間隔が略同一になるよう、前記油圧制御装置によって前記aグループ油室および前記bグループ油室に供給する作動油の圧力を制御することを特徴とする台形ねじの制御方法。
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