JP2011208600A - 内燃機関の排気浄化装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】未燃炭化水素を吸着する吸着部を備え、優れた浄化性能を有する内燃機関の排気浄化装置を提供する。
【解決手段】内燃機関の排気浄化装置は、未燃炭化水素を放出温度未満では保持する吸着部と、吸着部に保持される炭素成分の保持量を推定する保持量推定手段とを備える。吸着部に保持される炭素成分には、吸着されたときの炭化水素の形態で保持されている非重合炭化水素と、非重合炭化水素に炭化水素が重合した重合炭化水素と、コーキングにより生成された炭素とが含まれている。保持量推定手段により重合炭化水素の保持量を推定し、重合炭化水素の保持量に基づいて吸着部を昇温し、少なくとも一部の炭素成分を吸着部から放出する。
【選択図】図9

Description

本発明は、内燃機関の排気浄化装置に関する。
ディーゼルエンジンやガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガスには、例えば、一酸化炭素(CO)、未燃炭化水素(HC)、窒素酸化物(NO)または粒子状物質(PM:Particulate Matter)などの成分が含まれている。内燃機関の排気浄化装置は、これらの成分を浄化するために排気処理装置を備える。
排気ガスに含まれる成分のうち、窒素酸化物は、窒素酸化物を還元する排気処理装置により浄化される。粒子状物質は、粒子状物質を捕集する排気処理装置により除去される。機関本体から排出された一酸化炭素および未燃炭化水素は、これらの物質を酸化するための排気処理装置により浄化される。例えば、機関排気通路には、酸化触媒または三元触媒が配置される。
特開平11−022449号公報においては、エンジンの低温時にエンジンより排出されるHCを吸着剤に吸着させるとともに、吸着剤から脱離してくるHCを二次空気を用いて活性化状態の触媒により酸化させるエンジンの排気浄化装置が開示されている。この排気浄化装置は、吸着剤へのコーキングHCの堆積量を推定手段が推定し、推定値が所定値以上となったときHCの燃焼可能温度にまで吸着剤を昇温させることが開示されている。
特開平11−022449号公報
酸化触媒は、所定の浄化率を達成できる活性化温度を有する。酸化触媒は、活性化温度未満では十分な酸化反応を示さずに、活性化温度以上になると十分な酸化反応を示す特性を有する。冷間始動時等の酸化触媒が活性化温度未満の場合には、流入する一酸化炭素や未燃炭化水素は、十分に酸化されずに酸化触媒をすり抜ける。このために、酸化触媒の上流側において、所定の温度未満では未燃炭化水素を吸着する吸着材を配置することが提案されている。
酸化触媒の上流側に吸着材が配置されている排気浄化装置では、酸化触媒の温度が活性化温度になるまでの低温域では、吸着材により未燃炭化水素を吸着することにより、排気ガス中から未燃炭化水素を除去する。一方で、吸着材および酸化触媒が高温になると、吸着材が吸着していた未燃炭化水素を放出すると共に、放出した未燃炭化水素を酸化触媒にて酸化することができる。
ところが、内燃機関の通常運転中には吸着材の温度が十分に上昇せずに、吸着材に保持されている炭化水素を十分に放出することができない場合があった。また、吸着材に吸着している炭化水素は、所定の温度以上で所定の時間が経過すると、コーキングが生じて炭素に変換される。すなわち、炭素の形態で吸着材に保持される場合がある。このような炭化水素が改質されて保持されている炭素の放出温度は、炭化水素の放出温度よりも高く、内燃機関の通常運転時には十分に放出することができない場合があった。
この結果、排気浄化装置の使用を継続すると、吸着材に炭化水素やコーキングにより生成された炭素が蓄積し、未燃炭化水素の吸着能力が低下していくという問題があった。すなわち、内燃機関の冷間始動時等の吸着材および酸化触媒が低温のときに、吸着材により排気ガスから十分に未燃炭化水素を除去できない虞があった。
上記の特開平11−022449号公報に開示されている排気浄化装置においては、コーキングHCの堆積量を推定し、推定値が所定値以上になったときにコーキングHCの燃焼可能な温度まで吸着材を昇温させている。しかしながら、この装置においては、コーキングHCの堆積量が所定値以上になるごとに、吸着部を600℃等の高温にするために再生処理を過剰に行っている虞がある。このために、温度上昇のために過剰な燃料を消費したり、熱劣化を伴ったりしている虞があった。
本発明は、未燃炭化水素を吸着する吸着部を備え、優れた浄化性能を有する内燃機関の排気浄化装置を提供することを目的とする。
本発明の内燃機関の排気浄化装置は、排気ガスに含まれる未燃炭化水素を放出温度未満では保持し、放出温度以上になると保持した炭化水素を放出する吸着部と、吸着部に保持される炭素成分の保持量を推定する保持量推定手段と、吸着部を昇温するための昇温手段とを備える。吸着部に保持される炭素成分には、吸着されたときの炭化水素の形態で保持されている非重合炭化水素と、非重合炭化水素に炭化水素が重合した重合炭化水素と、重合炭化水素からコーキングにより生成された炭素とが含まれており、保持量推定手段により重合炭化水素の保持量を推定し、重合炭化水素の保持量に基づいて昇温手段により吸着部を昇温し、少なくとも一部の炭素成分を吸着部から放出する。
上記発明においては、保持量推定手段により非重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量を推定し、重合炭化水素の保持量、非重合炭化水素の保持量またはコーキングにより生成された炭素の保持量に基づいて昇温手段により吸着部を昇温し、少なくとも一部の炭素成分を吸着部から放出することができる。
上記発明においては、保持量推定手段は、吸着部に流入する未燃炭化水素の量、吸着部をすり抜ける未燃炭化水素の量および吸着部の温度に基づいて、非重合炭化水素の保持量、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量のそれぞれを推定することができる。
上記発明においては、保持量推定手段は、前回の計算または前回よりも前の計算における非重合炭化水素の保持量に基づいて今回の重合炭化水素の保持増加量を推定し、前回の計算または前回より前の計算における重合炭化水素の保持量に基づいて今回の炭素の保持増加量を推定することができる。
上記発明においては、吸着部から非重合炭化水素が放出可能な第1の再生温度と、吸着部から重合炭化水素が放出可能であり第1の再生温度よりも高い第2の再生温度と、吸着部からコーキングにより生成された炭素が放出可能であり第2の再生温度よりも高い第3の再生温度とが予め定められており、非重合炭化水素の保持量が予め定められた第1の保持量判定値を超えた場合には、吸着部を第1の再生温度以上に昇温する第1の昇温制御を行い、重合炭化水素の保持量が予め定められた第2の保持量判定値を超えた場合には、吸着部を第2の再生温度以上に昇温する第2の昇温制御を行い、コーキングにより生成された炭素の保持量が予め定められた第3の保持量判定値を超えた場合には、吸着部を第3の再生温度以上に昇温する第3の昇温制御を行うことができる。
上記発明においては、コーキングにより生成された炭素、重合炭化水素および非重合炭化水素の順に、吸着部の保持量がそれぞれの保持量判定値を超えているか否かを判別し、コーキングにより生成された炭素の保持量、重合炭化水素の保持量または非重合炭化水素の保持量が、それぞれの炭素成分の保持量判定値を超えている場合には、それぞれの炭素成分に対応する再生温度以上に吸着部を昇温することができる。
本発明によれば、未燃炭化水素を吸着する吸着部を備え、優れた浄化性能を有する内燃機関の排気浄化装置を提供することができる。
実施の形態1における内燃機関の概略図である。 実施の形態1における第1の排気処理装置の概略断面図である。 実施の形態1における第1の排気処理装置の拡大概略断面図である。 吸着材に保持された炭化水素に重合およびコーキングが生じるときの状態を説明する拡大概略断面図である。 吸着部をすり抜けて酸化部に流入する未燃炭化水素の濃度と一酸化炭素の浄化率との関係を説明するグラフである。 吸着部の温度と吸着部からの放出成分の濃度との関係を説明するグラフである。 吸着部の温度と炭化水素の形態で放出される放出成分の放出量とを説明するグラフである。 実施の形態1における内燃機関を自動車に配置したときの運転例のグラフである。 実施の形態1における運転制御のフローチャートである。 実施の形態1の運転制御において、未燃炭化水素の保持増加量を推定するフローチャートである。 単位時間あたりに機関本体から排出される未燃炭化水素量のマップである。 単位時間あたりに吸着部をすり抜ける未燃炭化水素量のマップである。 実施の形態1における運転制御において、吸着部が保持している炭素成分の量を推定するフローチャートである。 吸着部の温度と、吸着する未燃炭化水素が重合炭化水素またはコーキングにより生成される炭素に変化するときの生成率のグラフである。 吸着部の温度と非重合炭化水素の脱離率との関係を説明するグラフである。 通常運転時における噴射パターンの説明図である。 吸着部を昇温するときの噴射パターンの説明図である。 実施の形態1における運転状態の例と炭化水素および炭素の保持量とを説明するグラフである。 実施の形態1における第2の排気処理装置の拡大概略断面図である。 実施の形態1における第3の排気処理装置の拡大概略断面図である。 実施の形態2における運転制御において、吸着部が保持している炭素成分の量を推定するフローチャートである。 実施の形態2における吸着部の温度と非重合炭化水素への変換率または炭素への変換率との関係を説明するグラフである。
(実施の形態1)
図1から図20を参照して、実施の形態1における内燃機関の排気浄化装置について説明する。本実施の形態における内燃機関は、車両に配置されている。本実施の形態においては、圧縮着火式のディーゼルエンジンを例に取り上げて説明する。
図1に、本実施の形態における内燃機関の全体図を示す。内燃機関は、機関本体1を備える。また、内燃機関は、機関本体1から排出される排気ガスを浄化する排気浄化装置を備える。機関本体1は、各気筒としての燃焼室2と、それぞれの燃焼室2に燃料を噴射するための電子制御式の燃料噴射弁3と、吸気マニホールド4と、排気マニホールド5とを含む。
吸気マニホールド4は、吸気ダクト6を介して排気ターボチャージャ7のコンプレッサ7aの出口に連結されている。コンプレッサ7aの入口は、吸入空気量検出器8を介してエアクリーナ9に連結されている。吸気ダクト6内にはステップモータにより駆動されるスロットル弁10が配置されている。更に、吸気ダクト6には、吸気ダクト6内を流れる吸入空気を冷却するための冷却装置11が配置されている。図1に示される実施例では、機関冷却水が冷却装置11に導かれている。機関冷却水によって吸入空気が冷却される。
排気マニホールド5は、排気ターボチャージャ7の排気タービン7bの入口に連結されている。本実施の形態における排気浄化装置は、機関本体1から排出される未燃燃料(未燃炭化水素)および一酸化炭素等の酸化すべき物質を酸化するための排気処理装置13を備える。排気処理装置13は、排気タービン7bの出口に排気管12を介して連結されている。排気処理装置13の下流の機関排気通路内には排気ガス中の粒子状物質を捕集するためのパティキュレートフィルタ16が配置されている。排気ガスは、矢印200に示すように機関排気通路に沿って流れる。
排気マニホールド5と吸気マニホールド4との間には、排気ガス再循環(EGR)を行うためにEGR通路18が配置されている。EGR通路18には電子制御式のEGR制御弁19が配置されている。また、EGR通路18にはEGR通路18内を流れるEGRガスを冷却するための冷却装置20が配置されている。図1に示される実施例では機関冷却水が冷却装置20内に導かれている。機関冷却水によってEGRガスが冷却される。
それぞれの燃料噴射弁3は、燃料供給管21を介してコモンレール22に連結されている。コモンレール22は、電子制御式の吐出量可変な燃料ポンプ23を介して燃料タンク24に連結されている。燃料タンク24に貯蔵される燃料は、燃料ポンプ23によってコモンレール22内に供給される。コモンレール22内に供給された燃料は、それぞれの燃料供給管21を介して燃料噴射弁3に供給される。
電子制御ユニット30は、デジタルコンピュータを含む。本実施の形態における電子制御ユニット30は、排気浄化装置の制御装置として機能する。電子制御ユニット30は、双方性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を含む。
ROM32は、読み込み専用の記憶装置である。ROM32には、制御を行なうための必要なマップや判定値等の情報が予め記憶されている。CPU34は、任意の演算や判別を行なうことができる。RAM33は、読み書きが可能な記憶装置である。RAM33は、運転履歴などの情報を保存したり、演算結果を一時的に保存したりすることができる。
パティキュレートフィルタ16の下流には、パティキュレートフィルタ16の温度を検出するための温度センサ26が配置されている。パティキュレートフィルタ16には、パティキュレートフィルタ16の前後差圧を検出するための差圧センサ28が取付けられている。これらの温度センサ26、差圧センサ28および吸入空気量検出器8の出力信号は、それぞれ対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。
アクセルペダル40には、アクセルペダル40の踏込み量に比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続されている。負荷センサ41の出力電圧は、対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35には、クランクシャフトが例えば15°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続されている。クランク角センサ42の出力により、機関本体1の回転数を検出することができる。
一方、出力ポート36は、対応する駆動回路38を介して燃料噴射弁3、スロットル弁10の駆動用ステップモータ、EGR制御弁19および燃料ポンプ23に接続されている。この様に、燃料噴射弁3およびスロットル弁10等は、電子制御ユニット30により制御されている。
パティキュレートフィルタ16は、排気ガス中に含まれる炭素微粒子、サルフェート等のイオン系微粒子等の粒子状物質(パティキュレート)を除去するフィルタである。パティキュレートフィルタは、例えば、ハニカム構造を有し、ガスの流れ方向に伸びる複数の流路を有する。複数の流路において、下流端が封止された流路と上流端が封止された流路とが交互に形成されている。流路の隔壁は、コーディエライトのような多孔質材料で形成されている。この隔壁を排気ガスが通過するときにパティキュレートが捕捉される。パティキュレートフィルタ16に次第に堆積する粒子状物質は、空気過剰の雰囲気中で温度を上昇することにより酸化されて除去される。
本実施の形態における内燃機関の排気浄化装置は、排気処理装置13に加えて、パティキュレートフィルタ16を備えるが、この形態に限られず、パティキュレートフィルタが配置されていなくても構わない。または、内燃機関の排気浄化装置は、排気処理装置13に加えて他の排気処理装置が配置されていても構わない。たとえば、排気浄化装置は、排気ガスに含まれるNOを浄化するNO吸蔵還元触媒(NSR)を備えていても構わない。NO吸蔵還元触媒は、たとえば、排気処理装置13とパティキュレートフィルタ16との間に配置することができる。
NO吸蔵還元触媒は、機関本体から排出される排気ガスに含まれるNOを一時的に吸蔵して、吸蔵したNOを放出するときにNに変換する。NO吸蔵還元触媒は、基体上に例えば酸化アルミニウムを含む触媒担体が担持されている。触媒担体の表面上には貴金属で形成された触媒粒子が分散して担持されている。また、触媒担体の表面上にはNO吸収剤の層が形成されている。触媒粒子としては、例えば白金Ptが用いられる。NO吸収剤を構成する成分としては、例えばバリウムBaのようなアルカリ土類が用いられている。
本発明においては、機関吸気通路、燃焼室、または機関排気通路に供給された排気ガスの空気および燃料(炭化水素)の比を排気ガスの空燃比(A/F)と称する。排気ガスの空燃比がリーンのとき(理論空燃比より大きなとき)には、排気ガス中に含まれるNOが酸化されてNO吸収剤に吸蔵される。これに対して、排気ガスの空燃比がリッチのとき、または理論空燃比になると、NO吸収剤に吸蔵されているNOが放出される。放出されたNOは、排気ガスに含まれる未燃燃料や一酸化炭素等によってNに還元される。
図2に、本実施の形態における第1の排気処理装置の拡大概略断面図を示す。本実施の形態における第1の排気処理装置13は、排気ガスの流れ方向に沿った複数の通路を有する。第1の排気処理装置13は、排気ガスの流れ方向の途中で分割されている。第1の排気処理装置13は、未燃炭化水素を吸着するための吸着材13aと、未燃炭化水素および一酸化炭素を酸化するための酸化触媒13bとを含む。吸着材13aと酸化触媒13bとの間には、吸着材13aの温度を検出するための温度センサ29が配置されている。また、酸化触媒13bの下流には、酸化触媒13bの温度を検出するための温度センサ27が配置されている。これらの温度センサ27,29の出力信号は、それぞれが電子制御ユニット30のAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。
図3に、本実施の形態における第1の排気処理装置の拡大概略断面図を示す。図3は、吸着材13aと酸化触媒13bとの境界の部分の拡大概略断面図である。吸着材13aおよび酸化触媒13bのそれぞれは基材55を備える。本実施の形態における基材55は、複数の流路を有し、ハニカム構造に形成されている。基材55は、例えば、コーディエライト、またはSiCなどのモノリス基材で形成されている。
吸着材13aの基材55の表面には、吸着部51が形成されている。吸着部51は、基材55の複数の流路に形成されている。吸着部51は、機関排気通路に沿って層状に形成されている。吸着部51は、未燃炭化水素を吸着する機能を有する。本実施の形態における吸着部51は、担持体60およびベータ(β)ゼオライト粒子61を含む。担持体60は、例えば酸化アルミニウム(アルミナ:Al)などの多孔質酸化物粉末を含む。担持体60およびベータゼオライト粒子61は、たとえばバインダーにより基材55に支持されている。吸着部51は、ゼオライトを含むことが好ましい。ゼオライトとしては、ベータゼオライトの他に、ZSM5およびモルデナイト(MOR)等の任意のゼオライトを用いることができる。なお、吸着部としては、この形態に限られず、未燃炭化水素を吸着可能なように形成されていれば構わない。
酸化触媒13bの基材55の表面には、酸化部52が形成されている。酸化部52は、基材55の複数の流路に形成されている。酸化部52は、機関排気通路に沿って層状に形成されている。酸化部52は、未燃炭化水素および一酸化炭素等を酸化する機能を有する。第1の排気処理装置13の酸化部52は、担持体60および触媒粒子62を含む。担持体60は、バインダーにより基材55に固定されている。触媒粒子62は、担持体60に担持されている。触媒粒子62は、排気ガスに含まれる酸化すべき物質を酸化するための金属粒子である。
本実施の形態における触媒粒子62は、貴金属から形成されている。触媒粒子62としては、白金系金属(PGM:Platinum group metals)を用いることができる。触媒粒子62は、たとえば、白金Pt、パラジウムPdおよびロジウムRhのうち少なくとも一つの貴金属を用いることができる。または、触媒粒子は、酸化能力を有する任意の金属を含むことができる。
本実施の形態における第1の排気処理装置は、機関排気通路において上流側に吸着材13aが配置され、下流側に酸化触媒13bが配置されている。吸着材13aおよび酸化触媒13bは、排気ガスが吸着部51に接触した後に、酸化部52に接触するように配置されている。本実施の形態においては、基材55が分割されて吸着材と酸化触媒とが形成されているが、この形態に限られず、基材は一体的に形成されていても構わない。すなわち、1つの基材の表面に、排気ガスの流れ方向に沿って上流側に吸着部が形成され、下流側に酸化部が形成されていても構わない。
本実施の形態における排気処理装置13は、排気ガスが低温のときには吸着部51にて未燃炭化水素を吸着する。たとえば、排気処理装置13の温度が炭化水素の放出温度未満の場合には、未燃炭化水素を吸着する。排気ガスの温度が上昇すると、吸着部51は、吸着していた炭化水素を放出する。たとえば、排気処理装置13の温度が炭化水素の放出温度以上になると炭化水素を放出する。一方で、酸化部52は、温度が上昇して、例えば活性化温度以上になると十分な酸化機能を発揮する。放出された炭化水素は、酸化部52において酸化されることにより浄化される。また、排気処理装置に流入する一酸化炭素は、酸化部52において酸化される。このように、排気ガスに含まれる一酸化炭素および未燃炭化水素は酸化されることにより、水や二酸化炭素に変換される。
図4に、吸着材に未燃炭化水素が保持されるときの形態を説明する拡大概略断面図を示す。吸着部が未燃炭化水素を吸着する低温領域において、未燃炭化水素が吸着部に流入すると、吸着部に炭化水素の形態で保持される。炭化水素は、例えば、ゼオライト64の酸点63に吸着される。または、未燃炭化水素は、ゼオライト64の表面に物理的に吸着する。
所定の温度で所定の時間の経過後には、酸点63で保持されている炭化水素に脱水素反応が生じる。すなわち、コーキングが生じて炭素に変化する。コーキングにより生成された炭素は、ゼオライト64の酸点63に保持されている。ところで、吸着部に保持されている炭化水素は、吸着されたときの炭化水素の形態から炭素の形態に移行する中間過程において、周りの炭化水素を取り込んで重合反応が生じている。すなわち、炭化水素の形態で保持された炭素成分は、重合反応が生じて分子量の大きな炭化水素に変化し、更にコーキングが生じて炭素に変化する。このために、吸着部に保持されている炭化水素には、保持されたときの炭化水素が不変の形態で保持されている炭素成分と、重合反応が生じて重合した形態で保持されている炭素成分とが含まれる。
本発明においては、排気ガスに含まれる炭化水素が吸着されたときの形態で吸着部に保持されている炭素成分を非重合炭化水素、吸着部に保持された炭化水素に重合反応が生じた炭素成分を重合炭化水素と称する。さらに、吸着部に保持されている炭素成分には、コーキングにより生成された炭素が含まれている。すなわち、吸着部に保持された非重合炭化水素は、所定の温度領域および所定の時間の経過後には重合反応が進行して重合炭化水素に変化し、さらに重合炭化水素は、所定の温度領域および所定の時間の経過後にはコーキングにより炭素に変化する。
吸着部に保持されている非重合炭化水素、重合炭化水素または炭素を放出させるためには、吸着部を所定の温度以上にする必要がある。概して、重合炭化水素が放出される温度は、非重合炭化水素が放出される温度よりも高い傾向があり、また、炭素が放出される温度は、重合炭化水素が放出される温度よりも高くなる。
ところで、従来の内燃機関の排気浄化装置では、通常運転時において吸着部に保持されている炭素成分が十分に放出されない場合があった。たとえば、内燃機関の駆動期間中に排気ガスの温度が、十分に炭素成分が放出される温度まで達しない場合があった。内燃機関が自動車に配置され、渋滞時の走行が長時間続いた場合には、内燃機関は低負荷での駆動が維持される。このために、排気ガスが低温である状態が続いて、吸着部の温度が炭化水素を放出可能な温度まで十分に上昇しない場合があった。または、燃費の向上を図るために燃料の供給量を抑制した内燃機関においては、排気ガスの温度が低くなって吸着部の温度が十分に上昇しない場合があった。
吸着部の温度が炭化水素を十分に放出する温度に達しない状態が続く場合には、吸着部に炭化水素が徐々に蓄積する。特に、重合炭化水素は非重合炭化水素よりも高い温度にしなければ吸着部から放出されないために蓄積され易い特性を有する。更に、コーキングにより生成された炭素は、重合炭化水素が放出される温度域よりも高温にしなければ放出されないために、吸着部に蓄積されやすい特性を有する。このために、吸着部には炭化水素およびコーキングにより生成された炭素が蓄積し、未燃炭化水素の吸着可能量や吸着率等が減少していく。すなわち、吸着部の吸着能力の低下が生じる。
吸着部における吸着能力が低下すると、吸着部および酸化部が低温のときに、吸着部をすり抜ける未燃炭化水素が多くなる。また、吸着部をすり抜ける未燃炭化水素が多くなると、酸化部をすり抜ける未燃炭化水素が多くなる。このように、機関本体から排出される未燃炭化水素の浄化率が悪化する。また、吸着部の吸着能力が低下すると、酸化触媒における一酸化炭素の浄化率にも悪影響を与える場合がある。
図5に、酸化触媒に流入する未燃炭化水素の濃度と一酸化炭素の浄化率との関係を説明するグラフを示す。横軸は、酸化触媒に流入する未燃炭化水素の濃度であり、本実施の形態においては吸着部をすり抜ける未燃炭化水素の濃度に相当する。縦軸は、酸化触媒における一酸化炭素の浄化率である。図5のグラフは、炭化水素の酸化は十分に行なえないが、一酸化炭素の酸化が可能な温度において試験を行なった結果である。酸化触媒に流入する炭化水素の濃度が大きくなるほど、すなわち、吸着部をすり抜ける未燃炭化水素の濃度が大きくなるほど、一酸化炭素の浄化率が小さくなることが分かる。
排気ガスに含まれる未燃炭化水素のうち、低級オレフィンは、酸化触媒において一酸化炭素の酸化反応を阻害する影響が強い特性を有する。たとえば、プロピレンなどは、酸化触媒において一酸化炭素の酸化反応を阻害する影響が強い。吸着部では、低級オレフィンは、ゼオライトの酸点に好適に吸着する。ところが、既に炭化水素が酸点で保持されていたり、コーキングにより生じた炭素が酸点で保持されていたりすると、吸着部で低級オレフィンを吸着する能力が小さくなる。この様に、吸着部に残存する炭素成分が多いと、吸着部をすり抜ける低級オレフィンが多くなり、酸化触媒における一酸化炭素の浄化率が低下してしまう。このために、排気浄化装置が優れた浄化性能を有するためには、吸着部の吸着能力が所定の能力以上に維持されることが好ましい。
図6に、吸着部の温度と、吸着部からの放出成分の濃度との関係の例を説明するグラフを示す。吸着部に保持されている非重合炭化水素は、非重合炭化水素の放出温度以上になると炭化水素の形態で放出される。また、吸着部に保持されている重合炭化水素は、重合炭化水素の放出温度以上になると、炭化水素の形態で放出される。一方で、コーキングにより生成された炭素は、炭素の放出温度以上になると、排気ガスに含まれる酸素により酸化され、一酸化炭素(CO)または二酸化炭素(CO)の形態で放出される。
図6のグラフでは、実線で炭化水素の形態で保持された炭素成分が放出される時の炭化水素の濃度を示し、一点鎖線で炭素の形態で保持された炭素成分が放出される時の一酸化炭素および二酸化炭素を合わせた濃度を示している。この試験では、吸着部においてコーキングが十分に進行する条件下で排気浄化装置の使用を継続した後に、吸着部を排気浄化装置から取り出す。次に、酸素を十分に含む窒素雰囲気下で、吸着部の温度を徐々に上昇させたときの放出成分の濃度を計測している。
吸着部の温度を徐々に上昇していくと、始めに炭化水素が放出される。すなわち、炭化水素の形態で吸着部に吸着していた非重合炭化水素および重合炭化水素が放出される。炭化水素の放出量は、例えば、300℃以上500℃以下の範囲内で大きくなる。
さらに温度を上昇していくと、一酸化炭素および二酸化炭素の放出量が多くなる。すなわちコーキングにより生成された炭素が吸着部から放出されて、一酸化炭素または二酸化炭素の放出量が多くなる。コーキングにより生成された炭素の放出量は、例えば500℃以上700℃以下の範囲内で大きくなる。
図7に、吸着部の温度と炭化水素の放出量との関係を説明するグラフを示す。図7には、炭素原子数が10のデカンと、炭素原子数が11のウンデカンと、炭素原子数が15のペンタデカンとが示されている。図7は、吸着部の温度を徐々に上昇したときのそれぞれの炭化水素の放出量を示している。非重合炭化水素および重合炭化水素は、共に炭化水素であり、放出されるときには同様の特性を示す。吸着部に保持されている炭化水素の放出量は炭化水素の分子量に依存する。表1に、炭化水素の例およびその沸点を示す。
Figure 2011208600
表1により、炭化水素は、炭素原子数が大きくなるほど沸点が高くなることが分かり、分子量が大きくなるほど沸点が高くなることが分かる。また、図7により、炭素原子数が多くなるほど、すなわち炭化水素の分子量が大きくなるほど、温度を上昇しなければ脱離しないことが分かる。このため、概して吸着部に保持される重合炭化水素は、非重合炭化水素よりも放出温度が高くなる。また、温度が高いほどの多くの炭化水素が放出される。
図8は、本実施の形態における内燃機関が自動車に配置されたときの一つの運転例を示すグラフである。横軸は時刻であり、縦軸は吸着部の温度である。図8には、それぞれの温度帯域で生じやすい保持または放出の現象が記載されている。内燃機関の運転状態は、時間とともに変化する。図8の例においては、時間とともに吸着部の温度が上下に大きく変化している。
時刻t=0の初期状態では、内燃機関を冷間始動している。時刻t1まで吸着部の温度が徐々に上昇している。未燃炭化水素の吸着は、例えば略200℃未満の低温領域で生じる。内燃機関を長時間停止しておいて、冷間始動を行った直後においては、吸着部の温度が、例えば略100℃程度である。吸着部は、このような低温領域では高い吸着能力を有するために、排気ガスに含まれる未燃炭化水素を保持する。吸着部の非重合炭化水素の保持量が増加する。この低温領域では、重合反応がほとんど生じないために、重合炭化水素の保持量は、ほぼ一定である。また、炭化水素のコーキングも進行しないために、コーキングにより生成された炭素の保持量もほぼ一定である。
時刻t1から時刻t2までは、内燃機関の出力が所定の範囲に含まれている運転状態を示している。たとえば、ほぼ平坦な道路を走行しているときの運転状態を示している。吸着部の温度は、たとえば略200℃以上略250℃未満の第1の中温領域である。吸着部の温度は、重合が開始される温度に到達する。非重合炭化水素が重合して、重合炭化水素が生成される。さらに、重合炭化水素にコーキングが生じて炭素が生成されている。このために、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量が増加する。
この第1の中温領域においては、非重合炭化水素の脱離が生じて吸着部から放出されている。非重合炭化水素は、たとえば、例えば略200℃以上の温度で脱離が生じる。このために、時刻t1から時刻t2までの期間においては、非重合炭化水素の保持量が減少する場合もある。
時刻t2から時刻t3までは、たとえば、大きな加速時や登坂が継続する時の運転状態を示している。吸着部の温度は、たとえば略250℃以上略350℃未満の第2の中温領域まで上昇する。図8に示す運転例では、略300℃以上の温度領域で重合炭化水素が脱離している。吸着部の温度が上昇して略300℃以上になると、非重合炭化水素の放出に加えて重合炭化水素の放出が生じる。
時刻t2から時刻t3までの第2の中温領域においては、吸着部に流入する排気ガスに含まれる未燃炭化水素の多くは、保持されずに吸着部をすり抜ける。また、第2の中温領域においても、炭化水素の重合反応やコーキングが生じている。第2の中温領域においては、たとえば吸着部における非重合炭化水素の保持量は減少し、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量は増加する。
時刻t3から時刻t4までは、内燃機関の負荷が小さな運転状態が続く状態を示している。例えば、渋滞時の走行状態を示している。内燃機関の要求負荷が低い状態が維持される。機関本体から排出される排気ガスの温度が低下して、吸着部の温度も低下する。
例えば、吸着部の温度が低下して略100℃になった場合には、吸着部は、冷間始動を行った直後の状態と同様になる。すなわち、吸着部に保持される非重合炭化水素の保持量は増加し、重合およびコーキングはほとんど生じないために、重合炭化水素およびコーキングにより生成された炭素の保持量は不変でほぼ一定になる。
図8に示す運転例では、コーキングにより生成された炭素は、例えば略400℃以上の高温領域で吸着部から放出される。本実施の形態における内燃機関では、通常運転時には、このような高温領域には到達せずに、低温領域から第1の中温領域および第2の中温領域内で変化する。このために、通常運転時においては、コーキングにより生成された炭素は増加している。
このように、運転状態の変化により吸着部の温度が上昇したり下降したりする。更に、運転状態の変化により吸着部に流入する未燃炭化水素の量も変化する。このために、吸着部においては、内燃機関の運転状態に応じて、非重合炭化水素、重合炭化水素およびコーキングにより生成された炭素のそれぞれの保持量が時間とともに不規則に変化する。
本実施の形態における内燃機関の排気浄化装置は、吸着部に保持される炭素成分の保持量を推定する保持量推定手段を備える。また、排気浄化装置は、吸着部を昇温するための昇温手段を備える。本実施の形態における運転制御では、吸着部に保持されているそれぞれの炭素成分の保持量を個別に推定して、それぞれの炭素成分の保持量に応じて、吸着部の温度を上昇させる昇温制御を行なう。
図9に、本実施の形態における運転制御のフローチャートを示す。図9に示す運転制御は、通常運転の期間中に、例えば予め定められた時間間隔ごとに行うことができる。
ステップ71において、吸着部における今回の未燃炭化水素の保持増加量を推定する。吸着部には、機関本体から排出される排気ガスが流入し、運転状態に依存して新たに未燃炭化水素が保持される場合がある。ステップ71においては、新たに吸着部に保持される未燃炭化水素の量を推定する。
図10に、吸着部における今回の未燃炭化水素の保持増加量を推定するフローチャートを示す。図10は、図9のステップ71を詳細に記載したフローチャートである。ステップ81においては、今回の計算において吸着部に流入する未燃炭化水素の量を推定する。
図11に、単位時間あたりに機関本体から排出される排気ガスに含まれる未燃炭化水素量のマップを示す。単位時間あたりに機関本体から排出される未燃炭化水素量HCAは、機関回転数Nと燃料噴射量TAQから推定することができる。このマップを、たとえば、電子制御ユニット30のROM32に記憶させておく。本実施の形態における内燃機関では、機関本体から排出される未燃炭化水素量は、吸着部に流入する未燃炭化水素量と等しくなる。図12に示すマップを用いることにより、運転状態に応じて単位時間あたりに吸着部に流入する未燃炭化水素量を推定することができる。単位時間あたりに機関本体から排出される未燃炭化水素量HCAを積算することにより、任意の時間間隔における機関本体から排出され、吸着部に流入する未燃炭化水素量HCAを算出することができる。
図10を参照して、次に、ステップ82において、今回の計算において吸着部をすり抜ける未燃炭化水素の量を推定する。
図12に、単位時間あたりに吸着部をすり抜ける未燃炭化水素量のマップを示す。単位時間あたりに吸着部をすり抜ける未燃炭化水素量HCSは、機関回転数Nと燃料噴射量TAQから推定することができる。機関本体から排出される未燃炭化水素のマップと同様に、このマップは、例えば電子制御ユニット30のROM32に記憶させておく。このマップを用いることにより、運転状態に応じて単位時間当りに吸着部をすり抜ける未燃炭化水素量を推定することができる。単位時間あたりに吸着部をすり抜ける未燃炭化水素量HCSを積算することにより、任意の時間間隔の間に吸着部をすり抜ける未燃炭化水素量HCSを算出することができる。
図10を参照して、次に、ステップ83において、今回の計算において吸着部に新たに保持される未燃炭化水素の保持増加量HCADDを算出する。未燃炭化水素の今回の保持増加量HCADDは、次式で表すことができる。
(今回の未燃炭化水素の保持増加量HCADD)=(吸着部に流入する未燃炭化水素量HCA)−(吸着部をすり抜ける未燃炭化水素量HCS)
このように、図9のステップ71において、吸着部の未燃炭化水素の保持増加量を算出することができる。未燃炭化水素の保持増加量は、上記の形態に限られず、任意の方法および装置により推定することができる。
例えば、上記の吸着部に流入する未燃炭化水素量および吸着部をすり抜ける未燃炭化水素量は、共に機関回転数と燃料噴射量との関数で表すことができるために、この2つのマップを併合して、1つのマップを用いても構わない。または、温度を関数とした未燃炭化水素の吸着率を予め設定しておいて、流入する未燃炭化水素量に吸着率を乗じて、今回の計算における未燃炭化水素の保持増加量を算出しても構わない。
図9を参照して、次に、ステップ72において、吸着部にそれぞれの形態で保持されている炭素成分の保持量を推定する。すなわち、今回の計算における非重合炭化水素の保持量、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量を推定する。
図13に、吸着部に保持されているそれぞれの炭素成分の保持量を推定するフローチャートを示す。図13は、図9におけるステップ72を詳細に記載したフローチャートである。本実施の形態においては、今回の吸着部の未燃炭化水素の保持増加量(炭素成分の保持増加量)に、重合炭化水素の生成率およびコーキングにより形成される炭素の生成率を乗じて、それぞれの炭素成分の保持増加量を算出する。
ステップ91においては、今回の重合炭化水素の増加量を算出する。今回の重合炭化水素の増加量は、次式で表すことができる。
(今回の重合炭化水素の増加量PHCADD)=(未燃炭化水素の保持増加量HCADD)×(重合炭化水素の生成率αPHC
図14に、本実施の形態における重合炭化水素の生成率およびコーキングにより形成される炭素の生成率のグラフを示す。横軸が吸着部の温度であり、縦軸が重合炭化水素またはコーキングにより生成された炭素の生成率である。それぞれの炭素成分の生成率は、未燃炭化水素の保持増加量に対して生成される比率を表している。
本実施の形態の排気浄化装置においては、略200℃以上略300℃未満の温度領域において、重合反応による重合炭化水素の生成率およびコーキングによる炭素の生成率が大きくなっている。このような生成率は、たとえば電子制御ユニット30のROM32に記憶させておくことができる。吸着部の温度を検出することにより、今回の計算におけるそれぞれの炭素成分の生成率を推定することができる。
図13を参照して、次に、ステップ92において、今回の計算における吸着部の重合炭化水素の保持量を、次式により算出することができる。
(今回の重合炭化水素の保持量PHC)=(前回の重合炭化水素の保持量PHCn−1)+(今回の重合炭化水素の増加量PHCADD)
次に、図13および図14を参照して、重合炭化水素の保持量の算出と同様に、今回の計算におけるコーキングにより生成された炭素の保持量を算出する。ステップ93において、今回のコーキングにより生成された炭素の増加量CADDを次式により算出する。コーキングにより生成される炭素の生成率は、図14に示すグラフの関係により推定することができる。
(今回の炭素の増加量CADD)=(未燃炭化水素の保持増加量HCADD)×(コーキングにより生成される炭素の生成率α
次に、ステップ94において、今回の計算におけるコーキングにより生成された炭素の保持量を、次式により算出する。
(今回の炭素の保持量C)=(前回の炭素の保持量Cn−1)+(今回の炭素の増加量CADD)
次に、ステップ95において、今回の計算における非重合炭化水素の増加量を算出する。非重合炭化水素の増加量は、未燃炭化水素の保持増加量から重合炭化水素の増加量およびコーキングにより生成された炭素の増加量を減算することにより算出することができる。今回の非重合炭化水素の増加量は、次式により算出することができる。
(今回の非重合炭化水素の増加量NPHCADD)=(未燃炭化水素の保持増加量HCADD)−(今回の重合炭化水素の増加量PHCADD)−(今回の炭素の増加量CADD)
次に、ステップ96において、今回の計算における非重合炭化水素の脱離量(放出量)を算出する。今回の非重合炭化水素の脱離量は、次式のように前回の計算における非重合炭化水素の保持量に、脱離率を乗じることにより算出することができる。
(今回の非重合炭化水素の脱離量NPHCDE)=(前回の非重合炭化水素の保持量NPHCn−1)×(非重合炭化水素の脱離率βNPHC
図15に、吸着部の温度と吸着部から脱離する非重合炭化水素の脱離率の関係を説明するグラフを示す。吸着部の温度が高くなるほど非重合炭化水素の脱離率が高くなることが分かる。それぞれの吸着部の温度に対する脱離率を、例えば電子制御ユニット30のROM32に記憶しておく。吸着部の温度を検出することにより非重合炭化水素の脱離率を推定することができる。
図13を参照して、ステップ97において、上記の計算結果を用いて今回の計算における非重合炭化水素の保持量を次式により算出することができる。
(今回の非重合炭化水素の保持量NPHC)=(前回の非重合炭化水素の保持量NPHCn−1)+(今回の非重合炭化水素の増加量NPHCADD)−(今回の非重合炭化水素の脱離量NPHCDE
このように、任意の時刻におけるそれぞれの炭素成分の保持量を算出することができる。なお、それぞれの計算においては、炭素成分の重量を用いて計算を行なうことができる。または、それぞれの炭素成分の平均的な炭素原子数や平均的な分子量を予め定めておいて、これらの炭素原子数や分子量を用いることにより、それぞれの炭素成分の計算を行なっても構わない。
図13に示す保持量推定手段の制御例においては、炭素成分の脱離のうち非重合炭化水素の脱離のみを算出しているが、この形態に限られず、重合炭化水素の脱離およびコーキングにより生成された炭素の脱離についても、非重合炭化水素と同様の方法により算出しても構わない。すなわち、それぞれの炭素成分の今回の脱離量を推定し、今回の炭素成分の保持量から減算しても構わない。重合炭化水素の脱離量およびコーキングにより生成された炭素の脱離量は、非重合炭化水素の脱離量と同様に、温度を関数にするそれぞれの脱離率を前回の計算における保持量に乗じて算出することができる。
例えば、吸着部に保持されている重合炭化水素は、内燃機関の構成、排気浄化装置の構成および吸着部の構成等に依存し、通常運転時の温度領域でも脱離が生じ得る。例えば、高負荷の状態を長時間保った場合には、通常運転時においても重合炭化水素の脱離が生じる。このために、重合炭化水素の脱離量を推定し、重合炭化水素の保持量から減算しても構わない。
また、同様に、コーキングにより生成された炭素の保持量の算出においても、脱離量を算出しても構わない。例えば、排気浄化装置がパティキュレートフィルタを備える場合には、通常運転における排気ガスの温度領域から逸脱して排気ガスの温度を上昇させることにより、パティキュレートフィルタの再生を行う場合がある。このような場合には、吸着部からコーキングにより生成された炭素が放出される。このために、今回の計算における炭素の保持量を算出する場合に、脱離量を減算する計算を行なっても構わない。
このように、図9のステップ72において、今回の計算における非重合炭化水素の保持量、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量をそれぞれ推定する。
次に、推定された重合炭素の保持量、非重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量に基づいて吸着部を昇温し、少なくとも一部の炭素成分を吸着部から放出させる。本実施の形態においては、吸着部を昇温するための昇温手段により昇温制御を行う。それぞれの昇温制御においては、吸着部に流入する排気ガスの空燃比がリーンの状態で昇温する。すなわち、排気ガスに含まれる酸素が炭素成分の酸化のために十分な量の状態にして温度を上昇する。
本実施の形態の排気浄化装置においては、吸着部に保持されている非重合炭化水素の保持量が再生を行うべき量に達しているか否かを判別する第1の保持量判定値が予め定められている。また、吸着部に保持される重合炭化水素の保持量が再生を行うべき量に達しているか否かを判別する第2の保持量判定値が予め定められている。また、吸着部に保持されているコーキングにより生成された炭素の保持量が再生を行うべき量に達しているか否かを判別する第3の保持量判定値が予め定められている。本実施の形態においては、非重合炭化水素の第1の保持量判定値が最も大きく、次に、重合炭化水素の第2の保持量判定値、コーキングにより生成された炭素の第3の保持量判定値の順に徐々に小さくなっている。それぞれの保持量判定値の大きさは、この形態に限られず、任意の大きさで設定することができる。
本実施の形態の排気浄化装置においては、吸着部から非重合炭化水素を放出させる第1の再生温度が予め定められている。第1の再生温度は、例えば略250℃以上略350℃以下を採用することができる。本実施の形態においては略300℃を採用している。また、吸着部から重合炭化水素を放出させる第2の再生温度が予め定められている。第2の再生温度は、第1の再生温度よりも高く設定されている。第2の再生温度としては、例えば略350℃以上略450℃以下を採用することができる。本実施の形態においては略400℃を採用している。また、吸着部からコーキングにより生成された炭素が放出可能な第3の再生温度が予め定められている。第3の再生温度は、第2の再生温度よりも高く設定されている。第3の再生温度としては、例えば略500℃以上略700℃以下を採用することができる。本実施の形態においては略600℃を採用している。
図9を参照して、本実施の形態では、ステップ73において、始めにコーキングにより生成された炭素の保持量が、第3の保持量判定値よりも大きいか否かを判別する。コーキングにより生成された炭素の保持量が、第3の保持量判定値よりも大きい場合には、ステップ74に移行する。ステップ74においては第3の昇温制御を行う。
本実施の形態における昇温手段は、内燃機関の噴射パターンを変更することにより排気ガスの温度を上昇させている。排気ガスの温度が上昇することにより、吸着部の温度を上昇させることができる。
図16に、本実施の形態における内燃機関の通常運転時の噴射パターンの説明図を示す。噴射パターンAは、通常運転時における燃料の噴射パターンである。通常運転時においては、略圧縮上死点TDCで主噴射FMが行なわれる。クランク角が略0°において主噴射FMが行なわれる。また、主噴射FMの燃焼を安定化させるために、主噴射FMの前にパイロット噴射FPが行なわれている。通常運転時においては、パイロット噴射FPが行なわれていなくても構わない。通常運転において噴射パターンAで運転されているときには、排気ガスの空燃比はリーンである。
図17に、昇温制御において排気ガスの温度を上昇させるときの噴射パターンの説明図を示す。本実施の形態の昇温制御においては、燃焼室における噴射パターンを変更することにより、排気ガスの温度を上昇させている。噴射パターンBでは、主噴射FMの噴射時期を遅角させることにより、排気ガスの温度を上昇させることができる。更に、噴射パターンBでは、主噴射FMの後の燃焼可能な時期に補助噴射を行っている。この補助噴射は、アフター噴射FAと言われる。補助噴射FAは、例えば圧縮上死点後のクランク角が略40°までの範囲で行なわれる。補助噴射FAを行なうことにより、後燃え期間が長くなり、排気ガスの温度を上昇させることができる。
図9を参照して、ステップ74の第3の昇温制御においては、吸着部を第3の再生温度以上に昇温させる制御を行う。本実施の形態における第3の昇温制御は、予め定められた長さの時間で吸着部の温度が第3の再生温度以上になるように制御を行なっている。本実施の形態においては、吸着部の温度が略600℃以上になるように制御を行っている。第3の昇温制御を行うことにより、コーキングにより生成された炭素を吸着部から放出させることができる。さらに、第3の昇温制御での第3の再生温度は、非重合炭化水素および重合炭化水素の放出温度以上であるために、吸着部から非重合炭化水素および重合炭化水素を放出させることができる。吸着部から放出された炭化水素は、酸化部により酸化することができる。
ステップ73において、コーキングにより生成された炭素の保持量が、第3の保持量判定値以下の場合にはステップ75に移行する。ステップ75においては、重合炭化水素の保持量が第2の保持量判定値よりも大きいか否かを判別する。ステップ75において、重合炭化水素の保持量が、第2の保持量判定値よりも大きい場合には、ステップ76に移行する。
ステップ76においては、第2の昇温制御を行う。本実施の形態における第2の昇温制御は、予め定められた時間の間、吸着部が第2の再生温度以上になるように制御を行なっている。本実施の形態においては、吸着部の温度が略400℃以上になるように制御を行っている。第2の昇温制御を行うことにより、吸着部に保持されている重合炭化水素を放出させることができる。また、第2の昇温制御での第2の再生温度は、非重合炭化水素の放出温度以上であるために、吸着部から非重合炭化水素を放出させることができる。吸着部から放出された炭化水素は、酸化部により酸化することができる。
ステップ75において、吸着部に保持されている重合炭化水素の保持量が、第2の保持量判定値以下である場合にはステップ77に移行する。ステップ77においては、非重合炭化水素の保持量が、第1の保持量判定値よりも大きいか否かを判別する。ステップ77において、非重合炭化水素の保持量が第1の保持量判定値よりも大きい場合には、ステップ78に移行する。
ステップ78においては、第1の昇温制御を行う。本実施の形態における第1の昇温制御は、予め定められた時間の間、吸着部が第1の再生温度以上になるように制御を行なっている。本実施の形態においては、吸着部の温度が略300℃以上になるように制御を行っている。第1の昇温制御を行うことにより、吸着部に保持されている非重合炭化水素を放出させることができる。吸着部から放出された非重合炭化水素は、酸化部により酸化することができる。
本実施の形態においては、第1の昇温制御、第2の昇温制御または第3の昇温制御を行うことにより、それぞれの再生温度に応じて放出された炭素成分については、保持量推定手段に記憶されているそれぞれの炭素成分の保持量が零にリセットされる。
図18に、本実施の形態における運転制御を行うときの運転状態を説明する概略図を示す。前述のとおり、吸着部に保持される炭素成分の量は、内燃機関の運転状態に応じて変化する。
運転状態Aは、非重合炭化水素が多く保持されて、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量が少ない状態である。運転状態Aにおいては、非重合炭化水素の保持量が第1の保持量判定値を超え、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量は、それぞれの保持量判定値未満である。図9を参照して、運転状態Aでは、第1の昇温制御が実行される。第1の昇温制御を行うことにより、非重合炭化水素が吸着部から放出されて吸着能力が回復する。
運転状態Bでは、重合炭化水素の保持量が第2の保持量判定値を超えている。非重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量は、それぞれの保持量判定値よりも小さくなっている。運転状態Bでは、第2の昇温制御が行なわれる。第2の昇温制御が行なわれることにより、重合炭化水素に加えて非重合炭化水素が放出される。吸着部の吸着能力が回復する。
運転状態Cでは、コーキングにより生成された炭素の保持量が、第3の保持量判定値を超えている。非重合炭化水素の保持量および重合炭化水素の保持量は、それぞれの保持量判定値未満である。運転状態Cにおいては、第3の昇温制御が行なわれる。第3の昇温制御が行なわれることにより、コーキングにより生成された炭素に加えて、非重合炭化水素および重合炭化水素が吸着部から放出される。吸着部の吸着能力が回復する。
このように、本実施の形態における内燃機関の排気浄化装置は、保持量推定手段により少なくとも重合炭化水素の保持量を推定し、重合炭化水素の保持量に基づいて、昇温手段により吸着部を昇温し、少なくとも一部の炭素成分を吸着部から放出している。この制御を行うことにより、非重合炭化水素およびコーキングにより生成された炭素のみではなく、重合炭化水素の保持量を推定して昇温制御を行うことができる。このために、昇温制御において到達する再生温度が過剰に高くなることを回避できる。
全ての昇温制御において吸着部の温度を非常に高くすると、ほぼ全ての炭素成分を吸着部から放出させることができる。しかしながら、吸着部の温度を上昇させるために、新たな燃料噴射が必要であるために燃料消費量が増大する。また、排気処理装置が熱劣化を生じる場合には、熱劣化の進行が早くなってしまう。本実施の形態の内燃機関の排気浄化装置は、燃料消費を抑制したり、熱劣化の進行を抑制したりしながら、吸着部の浄化性能を高性能に維持することができる。
本実施の形態においては、それぞれの炭素成分に応じた保持量判定値を設けて、それぞれの炭素成分の保持量が対応する保持量判定値を超えた場合に、昇温制御を行なっているが、この形態に限られず、少なくとも重合炭化水素の保持量を推定し、重合炭化水素の保持量に基づいて吸着部を昇温することができる。例えば、非重合炭化水素が第1の保持量判定値を超えており、重合炭化水素が第2の保持量判定値を超えていないが、第2の保持量判定値の近傍まで上昇している場合には、非重合炭化水素を放出させる第1の昇温制御を行わずに、重合炭化水素が放出可能な第2の昇温制御を行なっても構わない。第2の昇温制御を行うことにより、非重合炭化水素および重合炭化水素を放出させることができる。このために、第1の昇温制御を行なった直後に第2の昇温制御を行うことを回避できる。
本実施の形態における保持量推定手段は、吸着部に流入する未然炭化水素の量、吸着部をすり抜ける未燃炭化水素の量および吸着部の温度に基づいて、それぞれの炭素成分の保持量を個別に推定している。すなわち、吸着部に流入する未然炭化水素の量および吸着部をすり抜ける未燃炭化水素の量から吸着部における未燃炭化水素の保持増加量を算出し、吸着部の温度に基づいて、それぞれの炭素成分に変換される量を算出している。この制御を行うことにより、それぞれの炭素成分の保持量を個別に推定することができる。保持量推定手段は、上記の形態に限られず、任意の手段により、それぞれの炭素成分の保持量を推定することができる。
また、本実施の形態においては、重合炭化水素の保持量、非重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量を個別に推定して、それぞれの保持量判定値に基づいて吸着部を昇温している。本実施の形態においては、非重合炭化水素の保持量が第1の保持量判定値を超えた場合には第1の昇温制御を行い、重合炭化水素の保持量が第2の保持量判定値を超えた場合には第2の昇温制御を行い、コーキングにより生成された炭素の保持量が第3の保持量判定値を超えた場合には第3の昇温制御を行なっている。この制御を行うことにより、それぞれの炭素成分に応じて、適切な温度まで吸着部を上昇させることができる。吸着部を過度に昇温したり、または、昇温が不足して吸着部に多くの炭素成分が残存したりすることを回避することができる。この結果、吸着部の高い吸着能力を維持することができる。
また、本実施の形態における排気浄化装置は、コーキングにより生成された炭素、重合炭化水素および非重合炭化水素の順に、吸着部の保持量がそれぞれの保持量判定値を超えているか否かを判別し、保持量判定値を超えている場合には、それぞれの炭素成分に対応する再生温度まで昇温して、所定の時間の経過後に昇温制御を終了している。すなわち、本実施の形態における排気浄化装置は、昇温制御の再生温度が高い順に、それぞれの炭素成分の保持量が保持量判定値よりも大きいか否かを検出し、それぞれの炭素成分の保持量が対応する保持量判定値を超えている場合には、それぞれの炭素成分に対応する再生温度以上に吸着部を昇温している。この制御を行うことにより、昇温制御の回数が多くなることを回避できる。たとえば、コーキングにより生成された炭素を放出させる第3の昇温制御を行うことにより、非重合炭化水素および重合炭化水素を放出させることができる。このために、非重合炭化水素を放出させる第1の昇温制御を行なったすぐ後に、炭素を放出させる第3の昇温制御が行われるような運転を回避できる。
それぞれの炭素成分の保持量が保持量判定値よりも大きいか否かを判別する順序については、この形態に限られず任意の順序を採用することができる。
本実施の形態における内燃機関の排気浄化装置は、排ガスに含まれる粒子状物質を除去するパティキュレートフィルタを備える。パティキュレートフィルタの再生を行うために、機関本体から排出される排気ガスの空燃比がリーンの状態で排気ガスを高温にする場合がある。この場合には、吸着部に保持されている炭化水素およびコーキングにより生成された炭素を吸着部から放出させることができる。しかしながら、パティキュレートフィルタの再生は、非常に長期間ごとに行われる。このために、パティキュレートフィルタの再生を待っていると、吸着部の吸着能力は大きく低下してしまう。本実施の形態においては、パティキュレートフィルタの再生とは別に昇温制御を行うことにより、吸着部の優れた吸着能力を維持することができる。
本実施の形態の排気浄化装置においては、上流側に吸着部が配置され、吸着部の下流側に酸化部が配置されているが、この形態に限られず、吸着部および酸化部は、排気ガスが吸着部を通過した後に酸化部に流入するように形成されていれば構わない。または、吸着部および酸化部が一体的に形成されていても構わない。
図19に、本実施の形態における第2の排気処理装置の拡大概略断面図を示す。第2の排気処理装置は、コーディエライト等で形成された基材55の表面に、吸着部51および酸化部52が層状に形成されている。基材55の表面に酸化部52が配置され、酸化部52の表面に吸着部51が配置されている。第2の排気処理装置においては、排気ガスが吸着部51を通過した後に酸化部52に流入する。この排気処理装置では、吸着部51の温度と酸化部52の温度とは略同じになる。このように、吸着部および酸化部が積層されていても構わない。
図20に、本実施の形態における第3の排気処理装置の拡大概略断面図を示す。第3の排気処理装置は、コーディエライト等で形成された基材55の表面に、酸化アルミニウムで形成された担持体60およびベータゼオライト粒子61を含むコート層が形成されている。担持体60およびベータゼオライト粒子61の層には、触媒粒子62が配置されている。この排気処理装置では、吸着部の温度と酸化部の温度とは略同じになる。このように、吸着部と酸化部とが一体的に形成されていても構わない。
本実施の形態においては、吸着部と酸化部とが隣接している排気処理装置を例示しているが、この形態に限られず、吸着部と酸化部とが互いに離れていても構わない。また、吸着部と酸化部との間に他の部材が配置されていても構わない。
本実施の形態における昇温手段は、燃料噴射パターンの変更により排気ガスの温度を上昇させて吸着部を昇温しているが、この形態に限られず、吸着部の温度を上昇させる任意の手段を採用することができる。例えば、吸着部の上流側に小型の酸化触媒を配置して、小型の酸化触媒に対して未燃炭化水素を供給して、酸化反応を生じさせることにより、排気ガスの温度を上昇させても構わない。
また、昇温制御において再生温度に到達している時間は、任意の時間を採用することができる。たとえば、内燃機関の運転状態に応じてそれぞれの炭素成分が全て放出される時間を予め推定して、推定した時間に基づいて昇温制御を行っても構わない。
本実施の形態においては、内燃機関のうちディーゼルエンジンを例に取り上げて説明したが、この形態に限られず、未燃炭化水素を排出する任意の内燃機関の排気浄化装置に適用することができる。
(実施の形態2)
図21および図22を参照して、実施の形態2における内燃機関の排気浄化装置について説明する。本実施の形態における内燃機関の排気浄化装置が吸着部および酸化部を備えることは、実施の形態1と同様である(図1および図2参照)。
本実施の形態においては、実施の形態1の図9に示す運転制御を行う。本実施の形態においては、炭素成分の保持量を推定する保持量推定手段が実施の形態1と異なる。すなわち、図9を参照して、ステップ72におけるそれぞれの炭素成分を推定する制御が異なる。
図21に、本実施の形態の運転制御において、それぞれの炭素成分の保持量を推定するフローチャートを示す。図21は、図9のステップ72を詳細に記載したフローチャートである。図9の運転制御のステップ71において、今回の吸着部の未燃炭化水素の保持増加量を推定することは、実施の形態1と同様である。
本実施の形態においては、今回の重合炭化水素の増加量を、前回の計算において算出した非重合炭化水素の保持量を用いて算出する。また、今回のコーキングにより生成される炭素の増加量を、前回の計算において算出した重合炭化水素の保持量を用いて算出する。
ステップ101において、今回の重合炭化水素の増加量を算出する。本実施の形態においては、前回の計算における非重合炭化水素の保持量に、重合炭化水素への変換率を乗じることによって、今回の重合炭化水素の増加量を算出する。
図22に、本実施の形態における吸着部の温度と、それぞれの炭素成分が変化する時の変換率との関係を説明するグラフを示す。実線は、非重合炭化水素が重合炭化水素に変化する時の変換率ηPHCを示し、一点鎖線は重合炭化水素がコーティングにより炭素に変換する時の変換率ηを示している。図22に示す吸着部の温度と変換率の関係を、例えば予め電子制御ユニット30のROM32に記憶しておく。吸着部の温度を検出することにより、それぞれの炭素成分の変換率を推定することができる。
図21を参照して、ステップ101において、非重合炭化水素から重合炭化水素への変換率を用いて、今回の重合炭化水素の増加量を次式で推定することができる。
(今回の重合炭化水素の増加量PHCADD)=(前回の非重合炭化水素の保持量NPHCn−1)×(重合炭化水素への変換率ηPHC
次に、ステップ102において、今回の重合炭化水素の保持量を推定する。ステップ102は、実施の形態1における図13のステップ92と同様である。
次に、コーキングにより生成された炭素の保持量を算出する。ステップ103において、今回のコーキングにより生成された炭素の増加量を推定する。今回の重合炭化水素の増加量の推定と同様に、今回の炭素の増加量は、前回の計算における重合炭化水素の保持量に、炭素への変換率ηを乗じることにより推定することができる。重合炭化水素から炭素への変換率は、吸着部の温度を検出し、図22に示すグラフの関係により推定することができる。今回の炭素の増加量は、次式で推定することができる。
(今回の炭素の増加量CADD)=(前回の重合炭化水素の保持量PHCn−1)×(炭素への変換率η
次に、ステップ104において、今回の計算におけるコーキングにより生成された炭素の保持量を推定する。ステップ104は、実施の形態1における図13のステップ94と同様である。
次に、ステップ105において、今回の非重合炭化水素の増加量を算出する。ステップ106において、今回の非重合炭化水素の脱離量を推定する。ステップ107において、今回の非重合炭化水素の保持量を推定する。ステップ105からステップ107は、実施の形態1における図13のステップ95からステップ97と同様である。
このように、本実施の形態においては、排気ガスに含まれる未然炭化水素が、炭化水素の形態で保持され、その後に炭化水素の重合が生じ、更に、コーキングが生じて炭素が生成される過程に基づいて、それぞれの炭素成分の保持量を算出することができる。
本実施の形態の保持量推定手段においても、吸着部に流入する未燃炭化水素の量、吸着部をすり抜ける未燃炭化水素の量および吸着部の温度に基づいて、非重合炭化水素の保持量、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量のそれぞれを推定している。特に、本実施の形態においては、吸着部の温度に基づいて、重合炭化水素への変換率および炭素への変換率を推定し、それぞれの炭素成分の保持量を推定している。
本実施の形態においては、前回の非重合炭化水素の保持量または前回の重合炭化水素の保持量に基づいて、今回の重合炭化水素の増加量または今回の炭素の増加量を推定しているが、この形態に限られず、今回より前の任意の回の非重合炭化水素の保持量または今回より前の任意の回の重合炭化水素の保持量の計算結果に基づいて、重合炭化水素の増加量または炭素の増加量を推定することができる。また、吸着部からの炭素成分の脱離に関しては、非重合炭化水素の脱離のみではなく、重合炭化水素の脱離および炭素の脱離のうち少なくとも一方を推定しても構わないことは、実施の形態1と同様である。
その他の構成、作用および効果については、実施の形態1と同様であるので、ここでは説明を繰り返さない。
上記の実施の形態は、適宜組み合わせることができる。上述のそれぞれの図において、同一または相当する部分には同一の符号を付している。なお、上記の実施の形態は例示であり発明を限定するものではない。また、実施の形態においては、特許請求の範囲に含まれる変更が意図されている。
1 機関本体
2 燃焼室
3 燃料噴射弁
12 排気管
13 排気処理装置
13a 吸着材
13b 酸化触媒
16 パティキュレートフィルタ
26 温度センサ
27,29 温度センサ
28 差圧センサ
30 電子制御ユニット
51 吸着部
52 酸化部
55 基材
60 担持体
61 ベータゼオライト粒子
62 触媒粒子
63 酸点
64 ゼオライト

Claims (6)

  1. 排気ガスに含まれる未燃炭化水素を放出温度未満では保持し、放出温度以上になると保持した炭化水素を放出する吸着部と、
    吸着部に保持される炭素成分の保持量を推定する保持量推定手段と、
    吸着部を昇温するための昇温手段とを備え、
    吸着部に保持される炭素成分には、吸着されたときの炭化水素の形態で保持されている非重合炭化水素と、非重合炭化水素に炭化水素が重合した重合炭化水素と、重合炭化水素からコーキングにより生成された炭素とが含まれており、
    保持量推定手段により重合炭化水素の保持量を推定し、重合炭化水素の保持量に基づいて昇温手段により吸着部を昇温し、少なくとも一部の炭素成分を吸着部から放出することを特徴とする、内燃機関の排気浄化装置。
  2. 保持量推定手段により非重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量を推定し、
    重合炭化水素の保持量、非重合炭化水素の保持量またはコーキングにより生成された炭素の保持量に基づいて昇温手段により吸着部を昇温し、少なくとも一部の炭素成分を吸着部から放出することを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  3. 保持量推定手段は、吸着部に流入する未燃炭化水素の量、吸着部をすり抜ける未燃炭化水素の量および吸着部の温度に基づいて、非重合炭化水素の保持量、重合炭化水素の保持量およびコーキングにより生成された炭素の保持量のそれぞれを推定することを特徴とする、請求項1または2に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  4. 保持量推定手段は、前回の計算または前回よりも前の計算における非重合炭化水素の保持量に基づいて今回の重合炭化水素の保持増加量を推定し、前回の計算または前回より前の計算における重合炭化水素の保持量に基づいて今回の炭素の保持増加量を推定することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  5. 吸着部から非重合炭化水素が放出可能な第1の再生温度と、吸着部から重合炭化水素が放出可能であり第1の再生温度よりも高い第2の再生温度と、吸着部からコーキングにより生成された炭素が放出可能であり第2の再生温度よりも高い第3の再生温度とが予め定められており、
    非重合炭化水素の保持量が予め定められた第1の保持量判定値を超えた場合には、吸着部を第1の再生温度以上に昇温する第1の昇温制御を行い、重合炭化水素の保持量が予め定められた第2の保持量判定値を超えた場合には、吸着部を第2の再生温度以上に昇温する第2の昇温制御を行い、コーキングにより生成された炭素の保持量が予め定められた第3の保持量判定値を超えた場合には、吸着部を第3の再生温度以上に昇温する第3の昇温制御を行うことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の内燃機関の排気浄化装置。
  6. コーキングにより生成された炭素、重合炭化水素および非重合炭化水素の順に、吸着部の保持量がそれぞれの保持量判定値を超えているか否かを判別し、
    コーキングにより生成された炭素の保持量、重合炭化水素の保持量または非重合炭化水素の保持量が、それぞれの炭素成分の保持量判定値を超えている場合には、それぞれの炭素成分に対応する再生温度以上に吸着部を昇温することを特徴とする、請求項5に記載の内燃機関の排気浄化装置。
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