JP2011208164A - ボロン鋼圧延焼鈍鋼板およびその製造法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.50%以下、Mn:0.20〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Cr:0.20〜1.00%、Al:0.005〜0.200%、Ti:0.01〜0.20%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0080%以下、残部Feおよび不可避的不純物、下記(1)式のX値が17.00以上、下記(2)式の炭素当量Ceqが0.500以下である化学組成を有し、圧延方向の全伸びT.Elが38.0%以上、切欠き引張試験片を用いた引張試験よる局部伸びElvが43.0%以上となる延性を有するボロン鋼圧延焼鈍鋼板。
X値=5.5C1/2(1+0.6Si)(1+4.1Mn)(1+2.3Cr) …(1)
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cr/5 …(2)
【選択図】なし
Description
(i)鋼板の製造段階、あるいは部品成形後の焼入れ時に施される高温加熱によって、鋼材表層部の固溶Bが減少する(脱B)。
(ii)脱Bによって表層部の焼入れ性が低下し、焼入れ品の表面硬さが低下することがある。
(iii)特に板厚が大きい場合、焼入れ時の冷却速度が低下するため、表面硬さの低下が助長されやすい。場合によっては板厚中心部付近の断面硬さも低下して素材そのものの強度が不足することもある。
X値=5.5C1/2(1+0.6Si)(1+4.1Mn)(1+2.3Cr) …(1)
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cr/5 …(2)
本発明のボロン鋼圧延焼鈍鋼板の板厚は例えば1.0〜12.0mmである。
スラブ加熱温度:1100〜1300℃、仕上温度:800〜900℃、仕上圧延パス終了時点から巻取までの平均冷却速度:30〜45℃/sec、巻取温度:500〜650℃の条件で熱間圧延を行い熱延板を得る工程、
必要に応じて、上記熱延板に対して、圧延率60%以下の冷間圧延を施し冷延板を得る工程、
上記熱延板または冷延板に対して、下記条件A、Bのいずれかのヒートパターンで熱処理を施す工程、
を有するボロン鋼圧延焼鈍鋼板の製造法が提供される。
(A1−30℃)以上A1未満のオーステナイト相未生成温度域で0.5h以上均熱保持し、昇温してA1以上(A1+50℃)以下のオーステナイト相生成温度域で0.5〜20h均熱保持し、その後、前記保持温度から少なくとも(A1−10℃)までを冷却速度5〜30℃/hで徐冷するヒートパターン。
〔条件B〕
(A1−30℃)以上A1未満のオーステナイト相未生成温度域で0.5h以上均熱保持した後、冷却するヒートパターン。
A1(℃)=723+29.1Si−10.7Mn+16.9Cr…(3)
以下、本明細書において鋼の化学組成における「%」は特に断らない限り「質量%」を意味する。
Cは、機械構造用部品としての芯部強度を確保するために必要な元素である。十分な強度を確保するためには0.15%以上のC含有量が必要となる。ただし、C含有量が多くなると焼鈍後の加工性が低下し、焼入れ焼戻し後の溶接性も低下する。本発明では、自動車部品をはじめとする各種機械部品に幅広く適用できる加工性および溶接性を持たせることを考慮して、C含有量は0.35%以下の範囲とする。
X値=5.5C1/2(1+0.6Si)(1+4.1Mn)(1+2.3Cr) …(1)
発明者らは詳細な検討の結果、このX値が17.00以上となる成分組成に調整したとき、通常の焼入れ処理を行って得られる焼入れ材において、表面硬さの低下が顕著に抑制できることを見出した。
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cr/5 …(2)
種々検討を行った結果、このCeqが0.500を超えると焼入れ後の材料において溶接割れの発生が認められる場合がある。したがって、溶接に供する焼入れ部品用途においては、Ceqが0.500以下に調整された化学組成とすることが重要となる。
以上の化学組成に調整された本発明対象鋼は、通常の焼入れ処理によって350HV以上の表面硬さが得られるものである。
本発明の圧延鋼板は、350HV以上の表面硬さが得られる優れた焼入れ性を有しているとともに、種々の焼入れ部品形状への加工に対応できる良好な延性を有しているという特長を有する。具体的には、一般的な延性の指標である全伸びT.Elが38.0%以上であり、且つ局所的な延性を評価しうる局部伸びElv(前述)が43.0%以上であるという特性を有する。これら2種類の延性指標を同時に高い値に維持することは必ずしも容易ではない。局部伸びElvはファインブランキング打抜き加工などにおける寸法精度に大きく影響する指標である。本出願人は焼入れ後の表面硬さと板厚中心部硬さの差が少ないボロン鋼鋼板を製造する技術を特願2009−063921号に開示した。しかし、表面硬さが350HVとなるような成分系のボロン鋼において、全伸びT.Elと局部伸びElvを上記のような高い値に維持した鋼板は実現されていなかった。T.Elが38.0%以上、且つElvが43.0%以上という延性を有する本発明のボロン鋼圧延鋼板は、従来の材料と比べ、ファインブランキング打抜き加工などに供した場合の寸法精度の向上をもたらすものである。T.ElとElvは、主として上述した化学組成の限定と、熱間圧延条件の限定によってコントロールすることができる。
〔熱間圧延〕
熱延前のスラブ加熱温度は、一般的な炭素鋼と同様に1100〜1300℃とすればよい。仕上温度(熱延最終パスの温度)は800〜900℃とする。800℃を下回ると変形抵抗が大きくなり通板性が低下し、また後述の巻取温度を確保することが難しくなる。900℃を超えるとオーステナイト粒径が粗大化して熱延材の靱性が低下する。巻取温度は500〜650℃とする。500℃を下回ると熱延材が硬くなり製造性が低下する。650℃を上回ると初析フェライトの量が増加し、焼鈍後の炭化物の分布が不均一になることに加え、パーライトのラメラー間隔が大きくなるため焼鈍による炭化物の球状化が困難になり、焼鈍後の加工性が低下する。
上記の条件で得られた熱延板に対して、必要に応じて冷間圧延を施して板厚を調整することができる。冷間圧延率は60%以下の範囲とすることが望ましい。それより冷間圧延率が高くなるとコスト高となる。冷間圧延率の下限は特に制限されないが、良好な板厚精度を得ることを重視する場合は20%以上の冷間圧延率を確保することが有利となる。
熱間圧延を終え、必要に応じて冷間圧延が施された圧延鋼板は、焼鈍に供される。
焼鈍は、(a)前工程で得られた鋼板を(A1−30℃)以上A1未満の温度範囲で0.5h以上均熱保持したのち、(b)A1以上(A1+50℃)の温度範囲で0.5〜20h均熱保持し、(c)その保持温度から少なくとも(A1−10℃)までを冷却速度5〜30℃/hで徐冷するヒートパターンを採用することができる。
なお、この熱処理に供する前には、前述の熱延段階で適切な組織コントロールが行われている必要がある。
〔加工、焼入れ〕
上記のようにして得られた本発明の鋼板は、所定の機械部品に加工され、その後、焼入れ処理に供される。部品への加工に際しては良好な加工性を活かして、従来よりも厳しい加工条件を設定することも可能となりうる。焼入れ後には通常、焼戻し処理が行われる。このような調質熱処理を経た部品は、さらに必要に応じて溶接加工に供される。
(A)715℃で均熱保持20h→760℃で均熱保持10h→650℃まで10℃/hで冷却→炉冷
〔加工性評価〕
加工性の指標として、全伸びT.Elと局部伸びElvの2つを求めた。局部伸びElvの値が大きい材料ほど、ファインブランキング打抜き加工に好適な材料と考えてよい。
全伸びT.Elは、圧延方向のJIS5号試験片を用いて引張試験を行うことによって求めた。標点距離は50mmとした。
局部伸びElvは、前述のように圧延方向のJIS5号試験片に2mmのVノッチを平行部中央の両エッジに形成した切り欠き引張試験片を用いて引張試験を行うことにより求めた。この場合の標点距離は10mmである。
全伸びT.Elは38.0%以上を合格、局部伸びElvは43.0%以上を合格と判定した。
各供試材について900℃で15min均熱後、油浴中に焼き入れる焼入れ処理を施した。焼入れ材の表面硬さおよび板厚中心部の断面硬さをビッカース硬度計により荷重10kgにて測定した。表面硬さが350HV以上のものを焼入れ性良好と判定した。
上記焼入れ材について、JIS Z3158−1993に規定されるy形溶接割れ試験を実施した。溶接条件は、y形の試験片形状とし、電流:150A、電圧:20V、速度:20cm/minとした。溶接割れの検出は10倍のルーペを用い、割れ発生の有無により良否判定を行った。
これらの結果を表2に示す。
(A)715℃で均熱保持20h→760℃で均熱保持10h→650℃まで10℃/hで冷却→炉冷
(B)710℃で均熱保持20h→650℃まで10℃/hで冷却→炉冷
結果を表3に示す。
これに対し、試験No.(3)は仕上温度、巻取温度は本発明の範囲内であるが、仕上圧延パス終了時点から巻取までの平均冷却速度が小さいことに起因して焼鈍後の炭化物の分布が不均一で球状化率が低くなり、その結果、加工性に劣った。試験No.(7)は巻取温度が本発明の範囲より高いことに起因して焼鈍後の炭化物の分布が不均一で球状化率が低くなり、その結果、加工性に劣った。
Claims (5)
- 質量%で、C:0.15〜0.35%、Si:0.50%以下、Mn:0.20〜1.00%、P:0.030%以下、S:0.020%以下、Cr:0.20〜1.00%、Al:0.005〜0.200%、Ti:0.01〜0.20%、B:0.0005〜0.0050%、N:0.0080%以下、残部Feおよび不可避的不純物、下記(1)式により定まるX値が17.00以上、下記(2)式により定まる炭素当量Ceqが0.500以下である化学組成を有し、圧延方向の全伸びT.Elが38.0%以上、圧延方向JIS5号引張試験片の平行部中央の両エッジに2mmVノッチを形成した切欠き引張試験片を用いた標点距離10mmの引張試験よる局部伸びElvが43.0%以上となる延性を有するボロン鋼圧延焼鈍鋼板。
X値=5.5C1/2(1+0.6Si)(1+4.1Mn)(1+2.3Cr) …(1)
Ceq=C+Si/24+Mn/6+Cr/5 …(2) - スラブ加熱温度:1100〜1300℃、仕上温度:800〜900℃、仕上圧延パス終了時点から巻取までの平均冷却速度:30〜45℃/sec、巻取温度:500〜650℃の条件で熱間圧延を行う工程、
熱延板に対して、(A1−30℃)以上A1未満のオーステナイト相未生成温度域で0.5h以上均熱保持し、昇温してA1以上(A1+50℃)以下のオーステナイト相生成温度域で0.5〜20h均熱保持し、その後、前記保持温度から少なくとも(A1−10℃)までを冷却速度5〜30℃/hで徐冷するヒートパターンで焼鈍を施す工程、
を有する請求項1に記載のボロン鋼圧延焼鈍鋼板の製造法。
ただし、上記A1は下記(3)式により定まる値を採用する。
A1(℃)=723+29.1Si−10.7Mn+16.9Cr…(3) - スラブ加熱温度:1100〜1300℃、仕上温度:800〜900℃、仕上圧延パス終了時点から巻取までの平均冷却速度:30〜45℃/sec、巻取温度:500〜650℃の条件で熱間圧延を行う工程、
熱延板に対して、圧延率60%以下の冷間圧延を施す工程、
冷延板に対して、(A1−30℃)以上A1未満のオーステナイト相未生成温度域で0.5h以上均熱保持し、昇温してA1以上(A1+50℃)以下のオーステナイト相生成温度域で0.5〜20h均熱保持し、その後、前記保持温度から少なくとも(A1−10℃)までを冷却速度5〜30℃/hで徐冷するヒートパターンで焼鈍を施す工程、
を有する請求項1に記載のボロン鋼圧延焼鈍鋼板の製造法。
ただし、上記A1は下記(3)式により定まる値を採用する。
A1(℃)=723+29.1Si−10.7Mn+16.9Cr…(3) - スラブ加熱温度:1100〜1300℃、仕上温度:800〜900℃、仕上圧延パス終了時点から巻取までの平均冷却速度:30〜45℃/sec、巻取温度:500〜650℃の条件で熱間圧延を行う工程、
熱延板に対して、(A1−30℃)以上A1未満のオーステナイト相未生成温度域で0.5h以上均熱保持した後、冷却するヒートパターンで焼鈍を施す工程、
を有する請求項1に記載のボロン鋼圧延焼鈍鋼板の製造法。
ただし、上記A1は下記(3)式により定まる値を採用する。
A1(℃)=723+29.1Si−10.7Mn+16.9Cr…(3) - スラブ加熱温度:1100〜1300℃、仕上温度:800〜900℃、仕上圧延パス終了時点から巻取までの平均冷却速度:30〜45℃/sec、巻取温度:500〜650℃の条件で熱間圧延を行う工程、
熱延板に対して、圧延率60%以下の冷間圧延を施す工程、
冷延板に対して、(A1−30℃)以上A1未満のオーステナイト相未生成温度域で0.5h以上均熱保持した後、冷却するヒートパターンで焼鈍を施す工程、
を有する請求項1に記載のボロン鋼圧延焼鈍鋼板の製造法。
ただし、上記A1は下記(3)式により定まる値を採用する。
A1(℃)=723+29.1Si−10.7Mn+16.9Cr…(3)
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