JP2011205937A - 釣糸ガイド及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】軽量化が図れるとともに、撓み特性に優れ、屈曲部分の破損が防止できる釣糸ガイドを提供する。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグで形成した複数の強化繊維樹脂層5,6からなり、釣糸のガイドリング9の保持部を形成する前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6からそれぞれ延びる釣竿固定部5a,6aを形成したフレーム3を有することを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイドに関し、詳細には、釣糸が挿通されるガイドリングを保持するフレーム部分に特徴を有する釣糸ガイドに関する。
従来、上記した釣糸ガイドは、釣竿の外周面に装着されるフレームと、フレームに止着され、実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成となっている。前記フレームは、例えば、特許文献1に記載されているように、ステンレスやチタン等の金属製の板材料をプレス加工することで一体形成するのが一般的となっており、フレームには、釣糸を挿通させるガイドリングを保持するためのリング保持部と、釣竿の外表面に装着するための固定部が一体形成されている。
特開2006−340661号
上記した公知技術では、フレームが金属材料で構成されているため、重量が重いとともに、撓み性等の性能が悪く、釣竿の性能の向上を図る上でネックとなっている。例えば、より軽量化が要求される釣竿では、上記したような釣糸ガイドを軸長方向に沿って多数装着すると、所望の性能が発揮できなくなってしまう。
また、釣糸ガイドは、釣竿に安定して保持されて、釣糸を安定して案内することが必要である。
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、軽量化が図れ、撓み特性に優れるとともに、釣竿に安定して保持されて釣糸を安定して案内することができる釣糸ガイド及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣糸ガイドは、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグで形成した複数の強化繊維樹脂層からなり、釣糸のガイドリングの保持部を形成する前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層からそれぞれ延びる釣竿固定部を形成したフレームを有することを特徴とする。
上記した構成の釣糸ガイドは、そのフレーム部分が、繊維強化樹脂により構成されているため、軽量化が図れるとともに撓み性の向上が図れ、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は、本来の特性を発揮し易くなる。また、ガイドリングの保持部の前方側と後方側の両方に釣竿固定部が設けられるため、釣竿に安定して保持されて釣糸を安定して案内することが可能となる。
また、上記した目的を達成するために、本発明は、繊維強化プリプレグによって構成されるフレームを有する釣糸ガイドを製造する方法であって、一対の繊維強化プリプレグの一部を向かい合わせ状にして当接部とし、他部を非当接部として加熱硬化した一体の板状体を成型し、前記板状体の当接部に貫通孔を設けて該貫通孔に釣糸のガイドリングを嵌合し、前記板状体の前記非当接部に釣竿固定部を形成したことを特徴とする。
上記したように、本発明に係る釣糸ガイドのフレームは、一対の繊維強化プリプレグの一部を向かい合わせた状態で一体的に加熱硬化することで形成することが可能である。この場合、向かい合った部分に貫通孔を設け、この貫通孔にガイドリングを嵌合することで釣糸ガイドが形成される。
また、本発明に係る釣糸ガイドの製造方法は、繊維強化プリプレグを加熱硬化した一対の板状体の一部を向かい合わせ状にして接合部を形成したフレームの前記接合部に貫通孔を設けて該貫通孔に釣糸のガイドリングを嵌合したことを特徴とする。
上記したように、本発明に係る釣糸ガイドのフレームは、繊維強化プリプレグを加熱硬化した一対の板状体を準備しておき、その板状体の一部を向かい合わせて接合部とすることで形成することが可能である。この場合、接合部に貫通孔を設け、この貫通孔にガイドリングを嵌合することで釣糸ガイドが形成される。
本発明によれば、軽量化が図れ、撓み特性に優れるとともに、釣竿に安定して保持されて釣糸を安定して案内することができる釣糸ガイド及びその製造方法が得られるようになる。
本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態を示す斜視図。 図1に示す釣糸ガイドの縦断面図。 図1のA−A線に沿った断面図。 図1に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。 図4の金型で成形された板状体からフレームを切り出す状態を示す斜視図。 本発明に係る釣糸ガイドの第2の実施形態を示す斜視図。 図6に示す釣糸ガイドの組み立てる状態を示す図。 図7に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図。 本発明に係る釣糸ガイドの第3の実施形態を示す斜視図。 図9に示す釣糸ガイドの縦断面図。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る釣糸ガイド及びその製造方法の実施形態について説明する。
最初に、図1から図3を参照して、本発明に係る釣糸ガイドの第1の実施形態について説明する。これらの図において、図1は釣糸ガイドの斜視図、図2は釣糸ガイドの縦断面図、そして、図3は、図1のA−A線に沿った断面図である。なお、図1及び図2の矢印D方向は、釣糸ガイドが釣竿に装着された際、釣竿の軸長方向と一致しており、前方側の固定部が穂先側で、後方側の固定部が元竿側となるように取り付けられている。以下において、前側(前方側)とは穂先側を意味し、後側(後方側)とは基端側(元竿側)を意味するものとする。
釣糸ガイド1は、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグ(以下、プリプレグと称する)を前後方向に積層した複数の繊維強化樹脂層を有する積層材によって形成されたフレーム3を備えている(プリプレグの構成、積層態様、及びフレームの詳細な製造方法については後述する)。
前記フレーム3は、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6によって構成されており、それぞれの繊維強化樹脂層は、後述するように、複数枚のプリプレグを積層して金型によって押圧成型することでさらにプリプレグごとに形成された複数の繊維強化樹脂層が積層されて一体化されている。この場合、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6は、後述する当接部8の軸線方向(図1の矢印D方向;前後方向)における厚みよりも左右方向の幅が大きい板状に形成されている。
本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5は、上方側に略円形の当接部8aを具備してD方向と直交する方向に延びており、その下端が前方側に向けて略直角に屈曲されて釣竿固定部5aを形成している。さらに、後方側の繊維強化樹脂層6は、上方側に略円形の当接部8bを具備してD方向と直交する方向に延びており、その中間領域で、前方側の繊維強化樹脂層5から次第に離反するように傾斜し、その下端が基端側に向けて屈曲されて釣竿固定部6aを形成している。
このため、本実施形態の釣糸ガイドは、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6の一部である上方領域(前記当接部8a,8b)が向かい合わさった状態となっており、この当接部8a,8bが保持部Hを形成し、釣糸が挿通されるガイドリング9が設けられている。また、釣竿固定部5a,6aは、それぞれ前方側の繊維強化樹脂層5及び後方側の繊維強化樹脂層6、詳細には、前記当接部8a,8bと一体化される連結部(支脚部)5b,6bの下方に屈曲形成されており、ガイドリング9と釣竿の外周との間には、連結部5b,6bによって所定の間隔が維持されるようにしている。
また、本実施形態において、当接部8a,8bには、それぞれガイドリング9を保持するための開口(貫通孔)5c,6cが形成されている。この開口は、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6の上方領域が向かい合わさった状態で一体化された後、切削等によって形成される。
前方側および後方側の釣竿固定部5a,6aは、釣竿の表面に固定される部位(足部とも称される)であり、釣糸ガイドの前後方向に延びる板状片でその裏側の当接面5d,6dが釣竿の表面に釣竿の長手方向に合わせて載置された状態で、例えば糸を巻き付けた後にその外側に接着剤を塗布することによって固定される。なお、固定部5a,6aについては、様々な形状をとることができる。
前記当接部8a,8bに形成される開口5c,6cは、同一の形状であり、全体として略円形の外形状を備えている。この開口に嵌入されるガイドリング9は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面9a部分での摺動抵抗が小さい部材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックス等によって形成されている。このガイドリング9は、フレーム3が前記プリプレグによって一体形成された後、当接部8a,8bに形成された開口5c,6cに対して嵌入、固定される。
また、前方側の繊維強化樹脂層5、及び後方側の繊維強化樹脂層6には、少なくとも1つ以上の屈曲部を形成しておくことが好ましい。本実施形態においては、前方側の繊維強化樹脂層5には、釣竿固定部5aと連結部5bとの間の境界部分に、第1屈曲部5eと第1屈曲部よりも緩やかに屈曲した第2屈曲部5fが形成されており、後方側の繊維強化樹脂層6には、連結部6bの両側で釣竿固定部6aとの境界部分、及び当接部8との境界部分に、それぞれ第1屈曲部6eと、第1屈曲部よりも緩やかに屈曲した第2屈曲部6fが形成されている。この場合、いずれか一方の第1屈曲部5eまたは6eが、フレーム3の中で最も曲げ角度が急な屈曲部となる。
フレーム3に上記したような屈曲部を形成する場合、緩やかに屈曲する第2屈曲部5f,6fを形成しておくことで、フレーム全体として、屈曲させることによる曲げ角度を段階的に設定することが可能となり、応力集中を分散させて強度を向上することが可能となる。特に、フレーム3に複数の屈曲部を形成するのであれば、釣竿固定部5a,6aと連結部5b,6bとの間の境界部分、又はその近傍に形成される屈曲部(図において第1屈曲部5e,6eが対応する)よりも、当接部8側に形成される屈曲部(図において第2屈曲部5f,6fが対応する)の屈曲角度(屈曲した部分の前後において、接線同士が交差する角度)を小さく設定することが好ましい。
このように、当接部8a,8b側の屈曲部の屈曲角度を小さく設定しておくことで、釣糸が掛かった場合など、負荷が大きくなる部分の応力集中を緩和することができ、強度の安定化が図れる。
また、連結部(支脚部)5b,6bは、当接部8a,8b(保持部H)からわずかに突出していれば良い。
なお、上記した連結部5b,6bについては、2つの屈曲部間は、図に示すように直線状に形成されていたが、2つの屈曲部間を、所定の曲面を有する湾曲状に形成しても良いし、支脚部全体を湾曲面で構成しても良い。
上記したようなフレーム3に形成される屈曲部5e,5f及び6e,6fは、応力集中して破損等し易い領域となっているが、後述するような製造方法、及びプリプレグの構成を用いることで、比強度、及び比剛性の向上が図られている。なお、屈曲部に補強層を設け、釣糸による負荷が作用しても損傷などがし難いように構成しても良い。ここで、補強層とは、釣糸ガイドを釣竿に取り付けたときに、フレーム3のその前後方向の曲げ剛性を高め、負荷により屈曲部が撓んだときの曲げ角度の変化が小さくなるよう補強する層であり、積層状態の繊維強化樹脂層を構成している複数のプリプレグの内、いずれかのプリプレグに、釣竿から立ち上がる方向に沿って延びる強化繊維が含まれた構成となっていれば良い。
具体的に、複数枚のプリプレグは、例えば、図3に示すように、釣竿から立ち上がる方向(釣竿の軸長方向となる)に沿って強化繊維を引き揃えた軸長方向繊維樹脂層21と、釣竿の軸長方向に対して所定の角度を有する交差方向に強化繊維を引き揃えた斜向繊維樹脂層22a,22bと、強化繊維を編成した織布層23と、を有している。これらの繊維強化樹脂の繊維は、釣竿固定部5aから当接部8へわたって連続して延びている。なお、図3では、後方側の繊維強化樹脂層6のプリプレグの積層構造(積層材6A)を示しているが、前方側の繊維強化樹脂層5(積層材5A)も同様な積層構造とされる。
本実施形態では、フレーム3の厚さの中間位置となる中立軸エリア(図3において、中立軸をXで示す)に、強化繊維を軸長方向に引き揃えたプリプレグによって軸長方向繊維樹脂層21が配設され、その外側(両側)に、軸長方向に対して所定の角度(傾斜角度は任意であるが15〜75度が好ましく、より好ましくは30〜60度)に強化繊維を引き揃えたプリプレグによって斜向繊維樹脂層22a,22bが配設され、さらに、最外層(両側の全面となっているが部分的に最外となる領域でも良い)に強化繊維を編成したプリプレグによって織布層23が配設されている。なお、前記軸長方向繊維樹脂層21は、複数層(1層〜4層)あっても良い。また、前記斜向繊維樹脂層22a,22bについては、夫々の層における強化繊維の指向方向は異なっていても良い。
このように、繊維強化樹脂製の釣糸ガイドを形成するに際しては、フレーム自体を正面視または平面視した際、少なくとも三方向に強化繊維が指向した状態となるようなプリプレグを選択し、積層することが好ましい。すなわち、強化繊維の指向方向を三方向以上とすることで、効率良く、軽量で強度的に優れた釣糸ガイドを形成することが可能となる。また、上記した構成のように、フレーム3の中間層領域に軸長方向繊維樹脂層21を配設することで、フレーム3に対し、軸長方向に沿って釣糸の張力等によって撓み力が作用しても、その方向の比剛性を、軽量化を図りながら効率良く高めておくことが可能となる。
さらに、上記したプリプレグの配置構成のように、フレーム3の最外層には、織布層23を配設することが好ましい。これは、フレーム3の表面は、他物が当たり易く、剥離などし易い部分であること、及び、実釣時において、釣糸の張力によってフレームが撓む等、フレーム端部から強化繊維が剥離したり、破損する可能性があることから、この表面領域に強化繊維が編成された織布層を配設しておくことで、強化繊維の裂けや剥離が効果的に防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。
このような織布層23を配設することで、より確実に強化繊維が剥離、破損することを防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、屈曲部5e,5f及び6e,6fについても相対的に強化することができ、軽量で強度バランスに優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。また、上記した織布層23の網目の幅については、釣竿固定部5a,6aや当接部8a,8bの領域において、それらの部分での最小幅よりも小さくすることが好ましい。
次に、上記したような形態のフレーム3を形成する方法について、図4及び図5を参照しながら説明する。
前記フレーム3は、図3に示したような積層構造を有する前方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)5Aと、後方側の繊維強化樹脂層を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)6Aによって形成される。この場合、各層を構成しているプリプレグは、上述したように、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維が所定の方向に引き揃えられた状態、或いは編成されたシート状に構成されており、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。なお、フレーム3は、複数の繊維強化樹脂層によって構成されるが、上記した屈曲部が補強されるよう、補強層を含んでいても良い。
最初、上記したようなプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせる。重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、上記したように、フレーム3に屈曲部5e,5f及び6e,6fを形成すること、使用時においてフレーム3には負荷が加わること、装着される釣竿の特性や装着部分等を考慮し、プリプレグの種類や重ねる条件が任意に調整される。
このように複数枚積層された積層材5A,6Aは、図4に示すような金型50にセットされる。本実施形態の金型50は、上下に型割りされる上型51と下型52によって構成されており、上型51については、更に、左右に型割りされる左右型51a,51bによって構成されている。この場合、下型52には、一端面側がなだらかな湾曲傾斜面で他端面側が切り立った垂直面となる断面が略三角形状の山部52aが形成されており、山部52aの頂部52bを境にして左右型51a,51bが左右方向に開くように構成されている。
上記した積層材5A,6Aの金型に対するセット方法は特に限定されることはないが、例えば、山部52aの頂部52bから上方側の領域を互いに面接するようにセットし(両積層材の一部を向かい合わせ状にして当接部とする)、かつ、その下方で、そのまま両積層材を下型52の山部52aに沿ってセットする(これらの部分は釣竿固定部が形成される非当接部となる)。この場合、積層材5A,6Aについては、一度に全体を重ね合わせた状態でセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く所定位置にセットすることもできる。また、上型51の左右型51a,51bと下型52との間には、積層材5A,6Aがセットされる位置に応じて空洞部55が形成されており、その表面領域には、離型剤がコーティングされている。
前記空洞部55は、フレーム3の肉厚に対応しており、下型52には、前記積層材5A,6Aを載置した際、上記した屈曲部5e,5f及び6e,6fに対応する位置に、屈曲形成凹部52d,52eが形成されている。また、右型51bには、屈曲形成凹部52dに対応して屈曲形成凸部51dが、左型51aには、屈曲形成凹部52eに対応して屈曲形成凸部51eが、それぞれ形成されている。さらに、下型52と左右型51a,51bとの間には、釣竿固定部5a,6aが形成されるように、前記空洞部55が形成されている。
なお、上記した金型については、一例を示したに過ぎず、型割りの方向については、左右方向としたり、傾斜方向にする等、任意の形態にすることが可能である。
上記したように、積層材5A,6Aを下型52の所定位置にセットした後、積層材を加圧し固定する。この加圧、固定については、上型51によって締め付けしても良いし、手や押圧具で押し付けても良い。この段階で、前記屈曲部を含め、成形後のフレーム形状に相当する形が保持され、これにより、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる(この段階では、各プリプレグは未硬化状態(仮キュア後を含む)であり、屈曲部は加熱硬化前に形成されることとなる)。
その後、加熱工程を施し、マトリックス樹脂を硬化して成形した後、成形品(屈曲部を有する板状体30となっている)を金型50から取り出す。この板状体30は、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層が接合部8a,8bの領域で一体化された状態となっており、図1では、そのような両方の繊維強化樹脂層の中央部を表す部分が二点鎖線で示されている。
なお、上記した屈曲部を金型50で押えて加熱硬化するときに、その屈曲部は、その前後の領域よりも相対的に強く加圧することが好ましい。このように、屈曲部の領域を強く加圧することで、成形されたフレームの屈曲部5e,5f及び6e,6fのボイドを防止することができ、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、これに伴い、成形されたフレーム3の屈曲部5e,5f及び6e,6fは、その前後の領域(固定部や支脚部)よりも繊維比率を高くすることができるので、破損等しやすい屈曲部を強化することが可能となる。或いは、屈曲部5e,5f及び6e,6fについては、その前後の領域よりも繊維比率を高くしておくことが好ましい。例えば、上記した工程で説明したように、加熱成形時に屈曲部の領域の押圧力を高くすることで、樹脂が流出して屈曲部の繊維比率を高くすることが可能であり、このように構成することで、負荷が作用してフレームが撓んでも破損し難い釣糸ガイドにすることが可能となる。
次に、板状体30から所定の形状となるようにフレーム3を切り出す(板状体30から不要部分を削除(破壊)してフレーム3を取り出す(残す))。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に屈曲部が形成された板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し等、任意の方法を採用することで、図5に示すように、1枚の板状体30から複数のフレーム3を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。
この加工時において、フレーム3の基本的な外形状、すなわち、開口5c,6cを有する当接部8a,8b、連結部5b,6bおよび釣竿固定部5a,6a等を同時に形成することが好ましいが、これらを別々の工程で形成しても良い。また、前記板状体30に関しては、一枚の単純な平面形状に限らず、積層厚さを位置によって変化させたり、板状部分が複数方向に延びる形状(T字形状や逆Y字形状等)としたり、曲面形状を含んでいたり、更には、軽量化を図るために開口を形成しても良い。
次に、必要に応じて細部加工を施す。この細部加工は、例えば、釣竿固定部5a,6aの形状を釣竿に載置し易いように曲面状に形成したり、糸巻き・糸止めし易いように、固定部の端部を研磨等することが該当する。
次に、フレーム3の表面処理を施す。例えば、バレル加工を施すことで、表面のバリを除去すると共に、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイド1のサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このようなバレル加工を施すことにより、強化繊維を切断することなく、フレーム3を研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。
なお、このような研磨工程を施すに際しては、フレーム3の表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。また、フレーム3の側面は複数の繊維強化樹脂層が面一になるように研磨する。
次に、必要に応じて、フレーム3の全体又は一部分に被膜を形成する。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等することも可能である。
そして、上記したように形成されたフレームの開口5c,6cの部分にガイドリング9を取り付ける。ガイドリング9の取り付け方法は、圧入や接着、カーリング、その他、任意の固定方法を採用することが可能である。
上記したような製造方法によって形成される釣糸ガイド1によれば、金属製のものと比較して、重量が軽くなり、更には、比強度、比剛性、及び撓み性に優れた構成とすることが可能となる。このため、そのような釣糸ガイドを多数個装着しても釣竿全体が重量化することはなく、釣竿の性能が向上する。特に、穂先竿のような部分では、より軽量化が図れることから、繊細な当たりを感知し易くなり、より釣竿の性能の向上を図ることが可能となる。更に、当接部8a,8bの前方側と後方側の両方に釣竿固定部5a,6aが設けられるため、釣竿に安定して保持されて釣糸を安定して案内することが可能となる。
図6から図8は、本発明の第2の実施形態を示す図であり、図6は、釣糸ガイドの構成を示す斜視図、図7は、図6に示す釣糸ガイドの組み立てる状態を示す図、そして、図8は、図7に示す釣糸ガイドを構成するフレームを成形するための金型の構成例(積層プリプレグシートを挟み込んだ状態)を示す断面図である。なお、以下に説明する実施形態では、上記した実施形態と同一の構成部分については、同一の参照符号を付して、その詳細な説明については省略する。
本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5と、後方側の繊維強化樹脂層6は、略同一形状で別体として形成されており、それぞれの繊維強化樹脂層5,6は、例えば、図8に示すような金型60によって、予め板状体として一体成形されている。この場合、各繊維強化樹脂層を構成する積層材5A(6A)については、図3と同様な構造のものを用いることができ、各積層材5A(6A)を下型62の所定位置にセットした後、上型61で押圧することで、図6及び図7に示すような前方側フレーム体5Fと後方側フレーム体6Fを形成することが可能である。
板状体として形成された各フレーム体5F,6Fは、上記した第1の実施形態における当接部となっている領域が、それぞれ接合部5H,6H(ガイドリングを保持する保持部Hを構成する)となっており、この部分を向かい合わせ状にして接着剤等によって接合(当接)されている。この場合、各フレーム体5F,6Fには、図7に示すように、接合部5H,6Hに、ガイドリング9が嵌合される開口(貫通孔)5C,6Cが形成されている。このため、両フレーム体5F,6Fの接合部5H,6Hを接着剤等によって接合し、かつガイドリング9を開口に嵌合することで両フレーム体の接合状態が維持されるようになっている。なお、両フレーム体の接合は、加熱して一体化しても良いし、前記開口については、両フレーム体5F,6Fを接合した後に形成しても良い。
このような構成の釣糸ガイドによれば、上記した実施形態と同様な効果が得られると共に、前方側と後方側のフレーム体を同一形状にすることが可能となるため、製造を簡略化することが可能となる。また、それぞれのフレーム体5F,6Fについては、接合部5H,6Hで接合しなければ、そのまま片足ガイドとして利用することも可能となる。
図9及び図10は、本発明の第3の実施形態を示す図であり、図9は、釣糸ガイドの構成を示す斜視図、図10は、図9に示す釣糸ガイドの縦断面図である。
本実施形態では、前方側フレーム体5F´と後方側フレーム体6F´を異なる形状にした例を示している。この実施形態では、前方側フレーム体5F´に後方側に延びる釣竿固定部25aを形成すると共に、後方側フレーム体6F´に前方側に延びる釣竿固定部26aを形成している。
両フレーム体は接合部5H´,6H´で接合され、保持部H´にてガイドリング9が保持されている。
前方側フレーム体5F´の接合部5H´の下方には、後方側に向けて屈曲し、前記釣竿固定部25aと連結される連結部(支脚部)25bが形成されている。この場合、前記連結部25bには、開口25cが形成されており、連結部25bは、2本支脚として構成されている。一方、後方側フレーム体6F´の接合部6H´の下方には、前方側に向けて屈曲し、前記釣竿固定部26aと連結される連結部(支脚部)26bが形成されている。この連結部26bは、前記連結部25bに形成された開口25cを挿通した1本支脚として構成されている。
このように、本発明では、釣糸ガイドを構成するフレームに関しては、前方側の繊維強化樹脂層に対して後方側に延びる釣竿固定部を形成し、後方側の繊維強化樹脂層に対して前方側に延びる釣竿固定部を形成することも可能である。すなわち、釣糸ガイド9が嵌合される開口がそれぞれ形成され、向かい合わせ状に接合される接合部を備えていれば、釣竿に固定される釣竿固定部については、釣竿の穂先側、元竿側のいずれに向けて延出した構成であっても良い。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した構成に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、釣糸ガイド1を構成するフレーム部分を、繊維強化プリプレグで構成すると共に、比強度、比剛性等を高め、特に、屈曲部の領域で破損等が生じないように、上述したような製造方法、及びプリプレグの配置態様を用いたことに特徴がある。上記したフレームを構成するプリプレグについては、強化繊維の種類や弾性率、樹脂含浸量、肉厚などの構成、及び積層状態等については、実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
また、釣糸ガイド1は、釣竿に対して糸止め等によって固定される構成を説明したが、例えば、釣竿に対して摺動可能に外嵌される遊動ガイドとして構成されていても良い。このような遊動ガイドであれば、上記したフレーム3に屈曲部を形成しない構成であっても良い。さらに、上記した実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層に連結部を介して釣竿固定部を形成したが、このような連結部を設けることなく、直接、当接部(接合部)から釣竿固定部を形成する構成であっても良い。
また、上記したように、フレームを構成するプリプレグは、積層した状態において、平面視した際に強化繊維の指向方向が三方向以上となっていれば、軽量化を図りつつ、効率的に強度を向上することが可能となるが、各層を構成するプリプレグの強化繊維の指向方向や、その積層位置については特に限定されることはなく、適宜変形することが可能である。この場合、上述したように、フレームの最外層については、破損などが効果的に防止できるように、織布層を配設しておくことが好ましい。
また、フレームは、繊維強化樹脂層の中央に対する両側の繊維強化樹脂層が外層に向かって繊維方向が互いに対称方向となるように積層されてもよい。また、フレームは、繊維強化樹脂層の中央に対して一方向側と他方向側に、フレームの長手軸(フレームの延設方向)に対して互いに反対方向に強化繊維が傾斜した斜向繊維強化樹脂層を備えても良い。更に、フレームは、該フレームの厚さ方向(前後方向)における中間位置となる中立軸領域に、強化繊維を軸長方向(フレームの延設方向)に配設し、前記中立軸領域の外側に、強化繊維を前記軸長方向に対して交差する方向に配設しても良い。また、フレームの側面は、該側面に現れる複数の繊維強化樹脂層を面一に形成しても良い。
1 釣糸ガイド
3 フレーム
5 前方側の繊維強化樹脂層
6 後方側の繊維強化樹脂層
5a,6a 釣竿固定部
5b,6b 連結部
5H,6H 接合部
5H´,6H´ 接合部
5F,6F フレーム体
8a,8b 当接部
9 ガイドリング

Claims (5)

  1. 強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグで形成した複数の強化繊維樹脂層からなり、釣糸のガイドリングの保持部を形成する前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層からそれぞれ延びる釣竿固定部を形成したフレームを有することを特徴とする釣糸ガイド。
  2. 前方側に延びる釣竿固定部と後方側に延びる釣竿固定部は、それぞれ前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層の下方に設けた連結部を介して形成したことを特徴とする請求項1に記載の釣糸ガイド。
  3. 前記釣糸のガイドリングの保持部を形成する前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層は別体に形成され、向かい合わせ状に当接されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣糸ガイド。
  4. 繊維強化プリプレグによって構成されるフレームを有する釣糸ガイドを製造する方法であって、
    一対の繊維強化プリプレグの一部を向かい合わせ状にして当接部とし、他部を非当接部として加熱硬化した一体の板状体を成形し、前記板状体の当接部に貫通孔を設けて該貫通孔に釣糸のガイドリングを嵌合し、
    前記板状体の前記非当接部に釣竿固定部を形成したことを特徴とする釣糸ガイドの製造方法。
  5. 繊維強化プリプレグを加熱硬化した一対の板状体の一部を向かい合わせ状にして接合部を形成したフレームの前記接合部に貫通孔を設けて該貫通孔に釣糸のガイドリングを嵌合したことを特徴とする釣糸ガイドの製造方法。
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