JP2017104127A - 釣糸ガイド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】魚の当たりに関して高い感度が得られる軽量な釣糸ガイド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1の製造方法は、当接部8aと該当接部から延びる竿保持部80とを有する平板状の前方側の繊維強化樹脂層5と、当接部8bと該当接部から延びるとともに竿杆の表面に載置固定されるようになっている平板状の固定部6aが先端に形成されて成る支脚部6bとを有する後方側の板状の繊維強化樹脂層6とを形成する工程と、これらの繊維強化樹脂層5,6をその当接部同士が当接するように金型にセットする工程と、金型を加熱することにより、当接部同士が加熱硬化により一体化されて成る板状体を成形する工程とを含む。
【選択図】 図6
【解決手段】本発明に係る釣糸ガイド1の製造方法は、当接部8aと該当接部から延びる竿保持部80とを有する平板状の前方側の繊維強化樹脂層5と、当接部8bと該当接部から延びるとともに竿杆の表面に載置固定されるようになっている平板状の固定部6aが先端に形成されて成る支脚部6bとを有する後方側の板状の繊維強化樹脂層6とを形成する工程と、これらの繊維強化樹脂層5,6をその当接部同士が当接するように金型にセットする工程と、金型を加熱することにより、当接部同士が加熱硬化により一体化されて成る板状体を成形する工程とを含む。
【選択図】 図6
Description
本発明は、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイド及びその製造方法に関し、詳細には、釣竿の穂先竿の先端に取り付けられるトップガイドの改良に関する。
従来から、釣竿に装着されて釣糸を案内する釣糸ガイドは、一般に、釣竿の外周面に直接に或いは支持脚を介して装着されるフレームと、フレームに止着されて実際に釣糸が挿通されるガイドリングとを備えた構成となっている。とりわけ、釣竿の穂先竿杆の先端に取り付けられる釣糸ガイドとしてのトップガイドは、前記フレーム側から突出するように延びて穂先竿杆の先端が挿入される竿挿入パイプを備えており、この竿挿入パイプを介して釣竿に例えば接着固定により装着されるようになっている(例えば、特許文献1参照)。
しかしながら、特許文献1等に開示されるような従来のトップガイドは、フレームから延びる前記竿挿入パイプがトップガイド全体の重量を大きく押し上げており、釣糸ガイドの軽量化を妨げている。また、前記竿挿入パイプを介して釣竿とフレームとが間接的に接続されるため、魚の当たりを竿の手元で感知する際の感度が鈍くなる可能性も指摘されている。
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、魚の当たりに関して高い感度が得られる軽量な釣糸ガイド及びその製造方法を提供することを目的とする。
上記した目的を達成するために、本発明は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドを製造する方法であって、当接部とこの当接部から延びる竿保持部とを有する平板状の前方側の繊維強化樹脂層と、当接部とこの当接部から延びるとともに竿杆の表面に載置固定されるようになっている平板状の固定部が先端に形成されて成る支脚部とを有する後方側の板状の繊維強化樹脂層とを形成する工程と、これらの前方側及び後方側の繊維強化樹脂層をその当接部同士が当接するように金型にセットする工程と、金型を加熱することにより、前方側及び後方側の繊維強化樹脂層の当接部同士が加熱硬化により一体化されて成る板状体を成形する工程と、前記板状体を金型から取り出して、前記板状体から所定の形状の少なくとも1つの前記フレームを切り出す工程と、釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられる開口を、加熱硬化により一体化された前記当接部に貫通形成して、リング保持部を構成するとともに、釣竿の穂先竿杆の先端に保持固定されるようになっている保持穴を前記竿保持部に貫通形成する工程とを含むことを特徴とする。
上記製造方法によって形成される釣糸ガイドでは、フレームが該フレームから延びる竿挿入パイプを介して間接的に穂先竿杆の先端に保持固定されるのではなく、フレームがその保持穴によって直接に穂先竿杆の先端に保持固定されるようになっている。すなわち、上記構成の釣糸ガイドでは、従来の竿挿入パイプが排除されているため、釣糸ガイド全体の重量を減少させることができ、釣糸ガイドの軽量化を飛躍的に促進させることができる。また、釣糸ガイドのフレームが竿挿入パイプを介すことなく直接に釣竿と接続されるため、魚の当たりを竿の手元で感知する際の感度を大きく高めることができる。
また、上記製造方法によって形成される釣糸ガイドは、そのフレームが、繊維強化樹脂により構成されているため、軽量化が図れるとともに撓み性の向上が図れ、このような構造の釣糸ガイドを装着した釣竿は、本来の特性を発揮し易くなる。なお、繊維強化樹脂層がリング保持部の少なくとも一部から支脚部の少なくとも一部へとわたって連続していることが好ましい。そのようにすると、釣糸ガイドの高い強度を実現できる。
また、本発明は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドであって、前記フレームは、前方側の板状の繊維強化樹脂層と後方側の板状の繊維強化樹脂層とによって構成され、これらの前方側及び後方側の繊維強化樹脂層の当接部同士が当接して加熱硬化により一体化されることにより釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられるリング保持部が形成され、前方側の繊維強化樹脂層は、その当接部から延びる竿保持部と、竿保持部に貫通して形成されるとともに釣竿の穂先竿杆の先端に保持固定されるようになっている保持穴とを有し、後方側の繊維強化樹脂層は、その当接部から延びるとともに竿杆の表面に載置固定されるようになっている平板状の固定部が先端に形成されて成る支脚部を有し、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層との間にはこれらの全長にわたって連続する繊維強化樹脂層から成る補強片が設けられることを特徴とする釣糸ガイドも提供する。
このような釣糸ガイドは、前述した作用効果を奏するとともに、補強片によって繊維強化樹脂層同士の間の裂けを防止できる。
また、本発明は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドであって、前記フレームは、前方側の板状の繊維強化樹脂層と後方側の板状の繊維強化樹脂層とによって構成され、これらの前方側及び後方側の繊維強化樹脂層の当接部同士が当接して加熱硬化により一体化されることにより釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられるリング保持部が形成され、前方側の繊維強化樹脂層は、その当接部から延びる竿保持部と、竿保持部に貫通して形成されるとともに釣竿の穂先竿杆の先端に保持固定されるようになっている保持穴とを有し、後方側の繊維強化樹脂層は、その当接部から延びるとともに竿杆の表面に載置固定されるようになっている平板状の固定部が先端に形成されて成る支脚部を有し、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層との間にはこれらの全長にわたって連続する繊維強化樹脂層から成る補強片が設けられることを特徴とする釣糸ガイドも提供する。
このような釣糸ガイドは、前述した作用効果を奏するとともに、補強片によって繊維強化樹脂層同士の間の裂けを防止できる。
本発明によれば、魚の当たりに関して高い感度が得られる軽量な釣糸ガイド及びその製造方法を提供できる。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る釣糸ガイド及びその製造方法の実施形態について説明する。
最初に、図1〜図5を参照して、本発明に係る釣糸ガイドの一実施形態について説明する。これらの図において、図1は釣糸ガイドの斜視図、図2は釣糸ガイドを後側から見た正面図、図3は釣糸ガイドの側面図、図4はフレームに沿った釣糸ガイドの縦断面図、そして、図5は、図1のA−A線に沿った断面図である。なお、図1および図3の矢印D方向は、釣糸ガイドが釣竿の穂先竿杆に装着された際に、元竿側から見る方向であり、釣竿の軸長方向と一致している。以下において、前側(前方側)とは穂先側を意味し、後側(後方側)とは基端側(元竿側)を意味するものとする。
最初に、図1〜図5を参照して、本発明に係る釣糸ガイドの一実施形態について説明する。これらの図において、図1は釣糸ガイドの斜視図、図2は釣糸ガイドを後側から見た正面図、図3は釣糸ガイドの側面図、図4はフレームに沿った釣糸ガイドの縦断面図、そして、図5は、図1のA−A線に沿った断面図である。なお、図1および図3の矢印D方向は、釣糸ガイドが釣竿の穂先竿杆に装着された際に、元竿側から見る方向であり、釣竿の軸長方向と一致している。以下において、前側(前方側)とは穂先側を意味し、後側(後方側)とは基端側(元竿側)を意味するものとする。
釣糸ガイド1は、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層の積層材によって形成されるフレーム3を備えている。ここで、「繊維強化樹脂層」とは、シート状のプリプレグを重ねて積層するほか、テープ状や糸状にしたものを重ねたり、束ねたり、テープや糸状やシート状のプリプレグを組み合わせたりした積層であっても良く、層の厚さや幅や断面形態等は釣糸ガイド1の各部分の形状等に合わせて任意に積層することができる。このようなフレーム3は、後述するように繊維強化プリプレグを板状に成形したものをフレーム形状に切り出しても良く、あるいは、金型の釣糸ガイドを形成する空間に繊維強化樹脂を配置して釣糸ガイド1を成形しても良く(この場合には、切り出しが不要となる)、任意の方法で製造できる。しかしながら、本実施形態では、便宜上、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化プリプレグ(以下、プリプレグと称する)を前後方向に積層した複数の繊維強化樹脂層を有する積層材によってフレーム3が形成されているものとして話を進める(プリプレグの構成、積層態様、および、フレームの詳細な製造方法については後述する)。
フレーム3は、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6とによって構成されており、それぞれの繊維強化樹脂層は、後述するように、複数枚のプリプレグを積層して金型によって押圧成型することでさらにプリプレグごとに形成された複数の繊維強化樹脂層が積層されて一体化されている。この場合、前方側の繊維強化樹脂層5と後方側の繊維強化樹脂層6は、後述する当接部8(8a,8b)の軸線方向(図1の矢印D方向;前後方向)における厚みよりも左右方向の幅が大きい板状に形成されている。
本実施形態では、前方側の繊維強化樹脂層5は、略円環形状の上方側の当接部8aと、図示しない釣竿の穂先竿杆に接着等により保持固定されるようになっている保持穴82を有する竿保持部80とを形成している。また、釣糸ガイド1が取り付けられる穂先竿杆の外径にもよるが、本実施形態では、竿保持部80の左右方向の幅が当接部8aのそれよりも狭く設定され、また、竿保持部80と当接部8aとが略同一平面内に形成されている。なお、保持穴82は、例えば、後述するようにフレーム3が成形された後にフレーム3に貫通して形成される。
また、後方側の繊維強化樹脂層6は、当接部8aと当接する上方側の略半円環形状の当接部8bと、当接部8bからD方向と略直交する方向で繊維強化樹脂層5から次第に離反するように傾斜して延びる一対の支脚部6bと、これらの支脚部6bの下端でこれらを一体化するように後方側へ向けて屈曲して延びる釣竿固定部6aとを形成している。
そして、本実施形態の釣糸ガイド1は、前方側の繊維強化樹脂層5を構成する当接部8aと後方側の繊維強化樹脂層6を構成する当接部8bとが向かい合わさった状態となっており、これらの当接部8a,8bがリング保持部Hを形成し、このリング保持部Hに釣糸が挿通されるガイドリング9が設けられる。また、この場合、各支脚部6bは、リング保持部Hの上下方向の略中間位置でリング保持部Hの後面hから該後面hの幅Wと同じ幅Wで突設された状態となっている。すなわち、本実施形態では、リング保持部Hの左右方向の幅の厚みWが前後方向の幅の厚みW’よりも大きくなっており、その条件下で、支脚部6bには、リング保持部Hの後面hから突設する分岐部6g(リング保持部Hから分岐する部分)が形成されている。つまり、分岐部6gは、リング保持部Hの左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち寸法の大きい側(厚みの大きいリング保持部Hの左右方向の幅)から形成されている。したがって、リング保持部Hの左右方向の幅の厚みWが前後方向の幅の厚みW’よりも小さい場合(本実施形態と逆の場合)には、分岐部6gがリング保持部Hの側面から突設する。
このように、リング保持部Hの後面hから分岐部6gを突出させると、強化繊維の方向を安定化でき、強度向上・安定化が可能となり、また、左右幅が大きくなることを防止でき、小型化、軽量化が可能になる。更に、釣糸の引っ掛かりを防止できるようになる。また、このように、リング保持部Hの左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち少なくとも寸法の大きい側から支脚部6bの分岐部6gが形成されていると、リング保持部Hと支脚部6bとの一体化範囲を拡大可能となり、強度の向上、小型化、および、軽量化を図ることができる。なお、本実施形態において、各支脚部6bは、リング保持部Hの後面hから該後面hの幅Wと同じ幅Wで突設されているが、支脚部6bの幅は、分岐部6gの部位で後面hの幅Wと同じであれば良く、分岐部6gを過ぎた位置から固定部6aに至るまでの幅は、分岐部よりも広く形成したり、小さく形成したり、方向を調整したりすることが可能である。
また、本実施形態において、当接部8a,8bには、それぞれガイドリング9を保持するための開口(貫通孔)5c,6cが形成されている。これらの開口5c,6cは、前方側の繊維強化樹脂層5および後方側の繊維強化樹脂層6の上方領域同士が向かい合わさった状態で一体化された後、切削等によって形成される。
釣竿固定部6aは、釣竿(穂先竿杆)の表面(上面または下面;本実施形態では上面)に固定される部位(足部とも称される)であり、釣糸ガイド1の後方向に延びる板状片でその裏側の当接面6dが釣竿(穂先竿杆)の表面に釣竿の長手方向に合わせて載置された状態で、例えば糸を巻き付けた後にその外側に接着剤を塗布することによって固定される。なお、固定部6aについては、様々な形状をとることができる。
当接部8a,8bに形成される開口5c,6cは、同一の形状であり、全体として略円形の外形状を備えている。これらの開口5c,6cに嵌入されるガイドリング9は、リング状に構成され、その内周面である釣糸案内面9a部分での摺動抵抗が小さい部材、例えば、チタン、アルミ、SUS、セラミックス等によって形成されている。このガイドリング9は、フレーム3が前記プリプレグによって一体形成された後、当接部8a,8bに形成された開口5c,6cに対して嵌入、固定される。
また、前方側の繊維強化樹脂層5および後方側の繊維強化樹脂層6には、少なくとも1つ以上の屈曲部を形成しておくことが好ましい。本実施形態においては、後方側の繊維強化樹脂層6に、支脚部6bの両側で釣竿固定部6aとの境界部分および当接部8bとの境界部分(前記突設部分)にそれぞれ、第1屈曲部6eと、第1屈曲部よりも緩やかに屈曲した第2屈曲部6fが形成されている。
フレーム3に上記したような屈曲部6e,6fを形成する場合、緩やかに屈曲する第2屈曲部6fを形成しておくことで、フレーム全体として、屈曲させることによる曲げ角度を段階的に設定することが可能となり、応力集中を分散させて強度を向上することが可能となる。特に、フレーム3に複数の屈曲部を形成するのであれば、釣竿固定部6aと支脚部6bとの間の境界部分またはその近傍に形成される屈曲部(図において第1屈曲部6eが対応する)よりも、当接部8b側に形成される屈曲部(図において第2屈曲部6fが対応する)の屈曲角度(屈曲した部分の前後において、接線同士が交差する角度)を小さく設定することが好ましい。
このように、当接部8b側の屈曲部の屈曲角度を小さく設定しておくことで、釣糸が掛かった場合など、負荷が大きくなる部分の応力集中を緩和することができ、強度の安定化が図れる。
なお、上記した支脚部6bについては、2つの屈曲部間は、図に示すように直線状に形成されていたが、2つの屈曲部間を、所定の曲面を有する湾曲状に形成しても良いし、支脚部全体を湾曲面で構成しても良い。
上記したようなフレーム3に形成される屈曲部6e,6fは、応力集中して破損等し易い領域となっているが、後述するような製造方法およびプリプレグの構成を用いることで、比強度、及び比剛性の向上が図られている。なお、屈曲部に補強層を設け、釣糸による負荷が作用しても損傷などがし難いように構成しても良い。ここで、補強層とは、釣糸ガイドを釣竿に取り付けたときに、フレーム3のその前後方向の曲げ剛性を高め、負荷により屈曲部が撓んだときの曲げ角度の変化が小さくなるよう補強する層であり、積層状態の繊維強化樹脂層を構成している複数のプリプレグの内、いずれかのプリプレグに、釣竿から立ち上がる方向に沿って延びる強化繊維が含まれた構成となっていれば良い。
具体的に、複数枚のプリプレグは、例えば、図5に示されるように、釣竿から立ち上がる方向(釣竿の軸長方向となる)に沿って強化繊維を引き揃えた軸長方向繊維樹脂層21と、釣竿の軸長方向に対して所定の角度を有する交差方向に強化繊維を引き揃えた斜向繊維樹脂層22a,22bと、強化繊維を編成した織布層23とを有している。これらの繊維強化樹脂の繊維(繊維強化樹脂層)は、リング保持部Hの少なくとも一部から支脚部6bの少なくとも一部へとわたって連続している。特に本実施形態では、図4に明確に示されるように、後方側の繊維強化樹脂層6の繊維が(繊維強化樹脂層6自体も)釣竿固定部6aから当接部8bへわたって(全長にわたって)連続して延びており、一方、前方側の繊維強化樹脂層5の繊維も(繊維強化樹脂層5自体も)全長にわたって連続して延びている。なお、図5では、後方側の繊維強化樹脂層6のプリプレグの積層構造(積層材6A)を示しているが、前方側の繊維強化樹脂層5(積層材5A)も同様な積層構造とされる。また、簡単のため、図5における7つの層は、図4および図6では4層でそれぞれ描かれている。
本実施形態では、フレーム3の厚さの中間位置となる中立軸エリア(図5において、中立軸をXで示す)に、強化繊維を軸長方向に引き揃えたプリプレグによって軸長方向繊維樹脂層21が配設され、その外側(両側)に、軸長方向に対して所定の角度(傾斜角度は任意であるが15〜75度が好ましく、より好ましくは30〜60度)に強化繊維を引き揃えたプリプレグによって斜向繊維樹脂層22a,22bが配設され、さらに、最外層(両側の全面となっているが部分的に最外となる領域でも良い)に強化繊維を編成したプリプレグによって織布層23が配設されている。なお、軸長方向繊維樹脂層21は、複数層(1層〜4層)あっても良い。また、斜向繊維樹脂層22a,22bについては、それぞれの層における強化繊維の指向方向は異なっていても良い。
このように、繊維強化樹脂製の釣糸ガイド1を形成するに際しては、フレーム自体を正面視または平面視した際、少なくとも三方向に強化繊維が指向した状態となるようなプリプレグを選択し、積層することが好ましい。すなわち、強化繊維の指向方向を三方向以上とすることで、効率良く、軽量で強度的に優れた釣糸ガイドを形成することが可能となる。また、上記した構成のように、フレーム3の中間層領域に軸長方向繊維樹脂層21を配設することで、フレーム3に対し、軸長方向に沿って釣糸の張力等によって撓み力が作用しても、その方向の比剛性を、軽量化を図りながら効率良く高めておくことが可能となる。
さらに、上記したプリプレグの配置構成のように、フレーム3の最外層には、織布層23を配設することが好ましい。これは、フレーム3の表面は、他物が当たり易く、剥離などし易い部分であること、および、実釣時において、釣糸の張力によってフレームが撓む等、フレーム端部から強化繊維が剥離したり、破損する可能性があることから、この表面領域に強化繊維が編成された織布層を配設しておくことで、強化繊維の裂けや剥離が効果的に防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。
このような織布層23を配設することで、より確実に強化繊維が剥離、破損することを防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、屈曲部6e,6fについても相対的に強化することができ、軽量で強度バランスに優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。また、上記した織布層23の網目の幅については、釣竿固定部6aや当接部8a,8bの領域において、それらの部分での最小幅よりも小さくすることが好ましい。
次に、上記したような形態のフレーム3を形成する方法について、図6および図7を参照しながら説明する。
フレーム3は、図5に示したような積層構造を有する前方側の繊維強化樹脂層5を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)5Aと、後方側の繊維強化樹脂層6を構成する複数枚のプリプレグ(積層材)6Aによって形成される。この場合、各層を構成しているプリプレグは、上述したように、炭素繊維やガラス繊維などの強化繊維が所定の方向に引き揃えられた状態、あるいは、編成されたシート状に構成されており、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂)や熱可塑性樹脂(例えば、ナイロン)をマトリックス樹脂として含浸した構成となっている。なお、フレーム3は、複数の繊維強化樹脂層によって構成されるが、上記した屈曲部が補強されるよう、補強層を含んでいても良い。
最初、上記したようなプリプレグを所定形状に裁断し、これを複数層となるように重ね合わせる。重ね合わせるプリプレグの枚数(層数)や、個々のプリプレグの構成については特に限定されることはないが、上記したように、フレーム3に屈曲部6e,6fを形成すること、使用時においてフレーム3には負荷が加わること、装着される釣竿の特性や装着部分等を考慮し、プリプレグの種類や重ねる条件が任意に調整される。
このように複数枚積層された積層材5A,6Aは、図6に示すような金型50にセットされる。本実施形態の金型50は、上下に型割りされる上型51と下型(底部型)52によって構成されており、上型51については、更に、左右に型割りされる左右型(前部型および後部型)51a,51bによって構成されている。この場合、下型52には、一端面側がなだらかな湾曲傾斜面で他端面側が切り立った垂直面となる断面が略三角形状の山部52aが形成されており、山部52aの頂部52bを境にして左右型51a,51bが左右方向に開くように構成されている。なお、金型50は、少なくとも三方向金型(底部型52、前部型51a、後部型51b)を開いたり成形状態に閉じたりできる金型であり、したがって、金型50の各部分は、ピンやコマを利用しても良く、三方向以上に金型50の所定部分を開閉できればどのような構造であっても良い。三方向またはそれ以上に開閉するためのコマやピンの動きや構造は任意に設定可能である。
上記した積層材5A,6Aの金型に対するセット方法は特に限定されることはないが、例えば、山部52aの頂部52bから上方側の領域を互いに面接するようにセットし(両積層材の一部を向かい合わせ状にして当接部とする)、かつ、その下方で、そのまま両積層材を下型52の山部52aに沿ってセットする(これらの部分は釣竿固定部が形成される非当接部となる)。この場合、積層材5A,6Aについては、一度に全体を重ね合わせた状態でセットしても良いし、1枚ずつセットする等、複数回に分けて積層しても良い。このように複数回に分けることにより、強化繊維の動きを少なくして、精度良く所定位置にセットすることもできる。また、上型51の左右型51a,51bと下型52との間には、積層材5A,6Aがセットされる位置に応じて空洞部55が形成されており、その表面領域には、離型剤がコーティングされている。
空洞部55は、フレーム3の肉厚に対応しており、下型52には、積層材5A,6Aを載置した際、上記した屈曲部6e,6fに対応する位置に、屈曲形成凹部52eが形成されている。また、左型51aには、屈曲形成凹部52eに対応して屈曲形成凸部51eが形成されている。さらに、下型52と左型51aとの間には、釣竿固定部6aが形成されるように、前記空洞部55が形成されている。
なお、上記した金型については、一例を示したに過ぎず、型割りの方向については、左右方向としたり、傾斜方向にする等、任意の形態にすることが可能である。
上記したように、積層材5A,6Aを下型52の所定位置にセットした後、積層材を加圧し固定する。この加圧、固定については、上型51によって締め付けしても良いし、手や押圧具で押し付けても良い。この段階で、前記屈曲部を含め、成形後のフレーム形状に相当する形が保持され、これにより、成形後の内部残留応力の発生を防止でき、強度の向上、及び安定化が図れるようになる(この段階では、各プリプレグは未硬化状態(仮キュア後を含む)であり、屈曲部は加熱硬化前に形成されることとなる)。
その後、加熱工程を施し、マトリックス樹脂を硬化して成形した後、成形品(屈曲部を有する板状体30となっている)を金型50から取り出す。この板状体30は、図7に示されるように形成され、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層とが当接部8a,8bの領域で一体化された状態となっており、図1では、そのような両方の繊維強化樹脂層の中央部を表す部分が二点鎖線で示されている。
なお、上記した屈曲部を金型50で押えて加熱硬化するときに、その屈曲部は、その前後の領域よりも相対的に強く加圧することが好ましい。このように、屈曲部の領域を強く加圧することで、成形されたフレームの屈曲部6e,6fのボイドを防止することができ、強度の向上、及び安定化が図れるようになる。また、これに伴い、成形されたフレーム3の屈曲部6e,6fは、その前後の領域(固定部や支脚部)よりも繊維比率を高くすることができるので、破損等しやすい屈曲部を強化することが可能となる。あるいは、屈曲部6e,6fについては、その前後の領域よりも繊維比率を高くしておくことが好ましい。例えば、上記した工程で説明したように、加熱成形時に屈曲部の領域の押圧力を高くすることで、樹脂が流出して屈曲部の繊維比率を高くすることが可能であり、このように構成することで、負荷が作用してフレームが撓んでも破損し難い釣糸ガイドにすることが可能となる。
次に、板状体30から所定の形状となるようにフレーム3を切り出す。上記したように、プリプレグは、加熱硬化処理後に屈曲部が形成された板状体となっているため、プレス加工による切り出し、液体(ウォータージェット等)による切り出し、或いは刃具(エンドミル等)による切り出し、または、不要部分を削除または破壊する切り出し等、任意の方法を採用することで、図7に示すように、1枚の板状体30から複数のフレーム3を切り出すことが可能となり、軽量で高強度の釣糸ガイドを効率良く製造することが可能となる。
この加工時において、フレーム3の基本的な外形状、すなわち、開口5c,6cを有する当接部8a,8b、支脚部6bおよび釣竿固定部6a、保持穴82等を同時に形成することが好ましいが、これらを別々の工程で形成しても良い。また、板状体30に関しては、一枚の単純な平面形状に限らず、積層厚さを位置によって変化させたり、板状部分が複数方向に延びる形状(T字形状や逆Y字形状等)としたり、曲面形状を含んでいたり、更には、軽量化を図るために開口を形成しても良い。
次に、必要に応じて細部加工を施す。この細部加工は、例えば、釣竿固定部6aの形状を釣竿に載置し易いように曲面状に形成したり、糸巻き・糸止めし易いように、固定部の端部を研磨等することが該当する。
次に、フレーム3の表面処理を施す。例えば、バレル加工を施すことで、表面のバリを除去すると共に、表面の光沢が得られる程度に仕上げ研磨を施す。この研磨の程度については、釣糸ガイド1のサイズや形状、材質特性などによって研磨剤や研磨時間などを任意に調整することが可能である。このようなバレル加工を施すことにより、強化繊維を傷付けることなく、フレーム3を研磨することが可能となり、強度の安定化が図れると共に、外観の優れた釣糸ガイドとすることが可能となる。
なお、このような研磨工程を施すに際しては、フレーム3の表面に強化繊維が一部露出しマトリックス樹脂が一部残るように研磨することが好ましい。こうすることで、研磨表面の光沢をより一層向上することが可能となる。また、フレーム3の側面は複数の繊維強化樹脂層が面一になるように研磨する。
次に、必要に応じて、フレーム3の全体又は一部分に被膜を形成する。例えば、外観向上やフレーム本体の保護のために塗装を行なうことや、金属やセラミックスを蒸着等することも可能である。
そして、上記したように形成されたフレームの開口5c,6cの部分にガイドリング9を取り付ける。ガイドリング9の取り付け方法は、圧入や接着、カーリング、その他、任意の固定方法を採用することが可能である。
以上説明したように、本実施形態の釣糸ガイド1では、フレームが該フレームから延びる竿挿入パイプを介して間接的に穂先竿杆の先端に保持固定されるのではなく、フレーム3がその保持穴82によって直接に穂先竿杆の先端に保持固定されるようになっている。すなわち、本実施形態の釣糸ガイド1では、従来の竿挿入パイプが排除されているため、釣糸ガイド1全体の重量を減少させることができ、釣糸ガイド1の軽量化を飛躍的に促進させることができる。また、釣糸ガイド1のフレーム3が竿挿入パイプを介すことなく直接に釣竿と接続されるため、魚の当たりを竿の手元で感知する際の感度を大きく高めることができる。
また、上記したような製造方法によって形成される釣糸ガイド1によれば、強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるため、金属製のものと比較して、重量が軽くなり、更には、比強度、比剛性、及び撓み性に優れた構成とすることが可能となる。特に、穂先竿のような部分では、より軽量化が図れることから、繊細な当たりを感知し易くなり、より釣竿の性能の向上を図ることが可能となる。更に、繊維強化樹脂層(および、この層を形成する繊維)がリング保持部の少なくとも一部から支脚部の少なくとも一部へとわたって連続している(本実施形態では、後方側の繊維強化樹脂層6の繊維が(繊維強化樹脂層6自体も)釣竿固定部5aから当接部8bへわたって(全長にわたって)連続して延びており、一方、前方側の繊維強化樹脂層5の繊維も(繊維強化樹脂層5自体も)全長にわたって連続して延びている)ため、釣糸ガイド1の高い強度を実現できる。
図8および図9は前述した実施形態の変形例を示している。図8に示されるように、本変形例では、後方側の繊維強化樹脂層6(固定部6aおよび支脚部6bを含む)と前方側の繊維強化樹脂層5(当接部8a(前方側保持部)および竿保持部80を含む)との間に、これらの全長にわたって連続する繊維強化樹脂層(少なくとも2つの繊維強化プリプレグ(例えば、一方が軸長方向繊維樹脂層、他方が斜向繊維樹脂層)を積層して成る繊維強化樹脂層)から成る補強片100が設けられている。この補強片100は、その層を形成する繊維が補強片100の全長にわたって(後方側の繊維強化樹脂層6から前方側の繊維強化樹脂層5に至る全長にわたって連続して)延在しており、それにより、繊維強化樹脂層5,6同士の間の裂けを防止する。
したがって、本変形例では、フレーム3を成形するに際して、積層材5A,6Aを金型50にセットするときに、図9に示されるように、補強片100を後方側の繊維強化樹脂層6と前方側の繊維強化樹脂層5との間にこれらの全長にわたって配する。
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施できる。例えば、釣竿の穂先竿杆の先端に保持固定されるようになっている保持穴の形状および寸法等は限定されない。また、釣糸ガイドを構成するフレームの積層形態や材料等も任意に設定できる。更に、支脚部の形態も前述した実施形態に限定されず、様々な形態を成すことができる。
1 釣糸ガイド
3 フレーム
5 前方側の繊維強化樹脂層
5c 開口
6 後方側の繊維強化樹脂層
6a 釣竿固定部
6b,6b 支脚部
6c 開口
6e,6f 屈曲部
6g 分岐部
8a,8b 当接部
9 ガイドリング
30 板状体
80 竿保持部
82 保持穴
100 補強片
H リング保持部
3 フレーム
5 前方側の繊維強化樹脂層
5c 開口
6 後方側の繊維強化樹脂層
6a 釣竿固定部
6b,6b 支脚部
6c 開口
6e,6f 屈曲部
6g 分岐部
8a,8b 当接部
9 ガイドリング
30 板状体
80 竿保持部
82 保持穴
100 補強片
H リング保持部
Claims (7)
- 強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドを製造する方法であって、
当接部とこの当接部から延びる竿保持部とを有する平板状の前方側の繊維強化樹脂層と、当接部とこの当接部から延びるとともに竿杆の表面に載置固定されるようになっている平板状の固定部が先端に形成されて成る支脚部とを有する後方側の板状の繊維強化樹脂層とを形成する工程と、
これらの前方側及び後方側の繊維強化樹脂層をその当接部同士が当接するように金型にセットする工程と、
金型を加熱することにより、前方側及び後方側の繊維強化樹脂層の当接部同士が加熱硬化により一体化されて成る板状体を成形する工程と、
前記板状体を金型から取り出して、前記板状体から所定の形状の少なくとも1つの前記フレームを切り出す工程と、
釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられる開口を、加熱硬化により一体化された前記当接部に貫通形成して、リング保持部を構成するとともに、釣竿の穂先竿杆の先端に保持固定されるようになっている保持穴を前記竿保持部に貫通形成する工程と、
を含むことを特徴とする方法。 - 前方側及び後方側の繊維強化樹脂層をその当接部同士が当接するように金型にセットする前記工程は、前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層との間にこれらの全長にわたって連続する繊維強化樹脂層から成る補強片をセットすることを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
- 後方側の繊維強化樹脂層を形成する繊維が前記リング保持部の少なくとも一部から前記支脚部の少なくとも一部へとわたって連続していることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の方法。
- 前記支脚部には、前記リング保持部の後面から突設する分岐部が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
- 前記支脚部には、前記リング保持部の左右方向の幅と前後方向の幅の厚みのうち少なくとも寸法の大きい側から分岐部が形成されていることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
- 前記フレームには、前記リング保持部から前記支脚部にわたって少なくとも1つの屈曲部が形成されることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
- 強化繊維に合成樹脂を含浸して成る繊維強化樹脂層によって形成されるフレームを有する釣糸ガイドであって、
前記フレームは、前方側の板状の繊維強化樹脂層と後方側の板状の繊維強化樹脂層とによって構成され、これらの前方側及び後方側の繊維強化樹脂層の当接部同士が当接して加熱硬化により一体化されることにより釣糸が挿通されるガイドリングが取り付けられるリング保持部が形成され、
前方側の繊維強化樹脂層は、その当接部から延びる竿保持部と、竿保持部に貫通して形成されるとともに釣竿の穂先竿杆の先端に保持固定されるようになっている保持穴とを有し、
後方側の繊維強化樹脂層は、その当接部から延びるとともに竿杆の表面に載置固定されるようになっている平板状の固定部が先端に形成されて成る支脚部を有し、
前方側の繊維強化樹脂層と後方側の繊維強化樹脂層との間にはこれらの全長にわたって連続する繊維強化樹脂層から成る補強片が設けられることを特徴とする釣糸ガイド。
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Citations (4)
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-
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