以下図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、プリントシステムの全体構成図である。
この図1に示すプリントシステム1Aは、プリンタ10と、用紙搬送装置20と、後処理装置30とで構成されている。
プリンタ10は、図示しない上位装置等から画像信号を受信してその画像信号に基づく画像を用紙上に形成する、電子写真方式のプリンタである。概要を説明する。
このプリンタ10には、4台の用紙収容部111が設けられており、各用紙収容部111には、それぞれ紙種や寸法や向き(縦置き、横置き)の異なる用紙PPが収容されている。各用紙収容部111に収容されている用紙の紙種や寸法や向きの情報はあらかじめ設定され、本体制御部120に記憶されている。上位装置からプリント指令を受け取ると、その指令に応じた用紙が収容されている用紙収容部111から取出しロール112により用紙PPが取り出され、その取り出された用紙PPは供給ロール113、搬送ロール114により搬送されてその用紙先端が調整ロール115に至る。
一方、露光器121は、C,M,Y,Kの各色ごとに配置された各感光体122を露光し、各感光体122上に静電潜像を形成する。各感光体122上に形成された静電潜像は図示しない現像器により各色トナーで現像されてトナー像が形成され、各色のトナー像は、転写ロール125の作用により、張架ロール124により張架された状態で印A方向に循環する中間転写ベルト123上に各色のトナー像が互いに重なるように転写される。
先端が調整ロール115にまで達している用紙PPは、中間転写ベルト123上のトナー像と時機を合わせて二次転写位置Tに送り出され、二次転写ロール116の作用により中間転写ベルト123上のトナー像が用紙PPに転写される。トナー像の転写を受けた用紙PPはさらに搬送され、定着ロール117による加熱加圧を受けて用紙上のトナー像がその用紙PPに定着され、その用紙PP上に定着画像が形成される。定着後の用紙PPは搬送ロール118によりさらに搬送され、用紙搬送装置20が存在しないときは、そのプリンタ10の用紙排出台119上に排出される。
このプリントシステム1Aでは、その用紙排出台119上に用紙搬送装置20が設置されているため、プリンタ10から排出された用紙PPは用紙搬送装置20に受け継がれてその用紙搬送装置20内の搬送ロール21によりさらに搬送され、後処理装置30に受け継がれる。後処理措置30については後述する。
プリンタ10には、上位装置から、1つのジョブ単位の指令が入力される。具体的には、一例として、10枚分の画像信号と、各画像信号に基づく画像が形成された用紙をそれぞれ1〜10ページとしたとき、1〜10ページの用紙を1つの用紙束とし、用紙束ごとにステープル針でとじて、その用紙束を10束作成するように、といった指示がなされる。例えばこの例の場合、その画像の寸法等に応じた用紙が収容されている用紙収容部111から用紙PPが順次取り出され、順に取り出された各用紙PPに、1ページ目の画像,2ページ目の画像,…,10ページ目の画像,1ページ目の画像,2ページ目の画像,…,10ページ目の画像の順に、合計10束分(用紙100枚分)のプリントが順次に行なわれる。プリント後の用紙は、用紙搬送装置20を経由して後処理装置30に順次に送り込まれる。
後処理装置30には、パンチャ31とステープラ32と、それらの動作の制御およびプリンタ10との間の通信を担う用紙処理制御部35が備えられている。後処理装置30に取り込まれた用紙は、搬送ロール131により搬送され、用紙の縁にパンチ穴を形成することが指示されているときはパンチャ31が作動し、パンチ穴が形成された用紙がさらに搬送されて用紙受け台136上に排出される。用紙受け台136は、図1に実線で示す位置と破線で示す位置との間で上下動自在であり、用紙受け台136上に順次積層される用紙の全体の厚みに応じて順次下降する。
後処理装置30に装備されたステープラ32により用紙束をとじることが指示されている場合は、以下のようにしてステープラ32によるステープル動作が実行される。
図2は、図1に示す後処理装置30のステープラ周りの機構の動作説明図である。
ここには、用紙が載置される固定板137と、矢印X−X′方向に進退自在な可動板135が備えられている。図2では可動板135は矢印X方向に進出した状態にある。また、ここには、排紙ロール132と対向ロール133が備えられている。排紙ロール132は図2に示す矢印Y−Y′方向に上下動自在である。この排紙ロール132が下降すると、その排紙ロール132と対向ロール133との間に用紙を挟み、回転して用紙を図1に示す用紙受け台136上に排出する。ここでは、排紙ロール132は、矢印Y方向に上昇した位置にある。さらにここには、パドラ134と叩き板139が備えられている。パドラ134は矢印B方向に回転し用紙をステープラ32側に押す役割りを担っている。ステープラ32側に押された用紙は突き当て壁138に突き当てられる。また、叩き板139は、用紙を左右から挟むように1組配置されていて、移動機構部140によって各叩き板139が図2の紙面に垂直の方向に、図1に示す用紙処理制御部35からの指示に従って移動させられる。この叩き板139は、横方向(即ち図2の紙面に垂直の方向)に用紙を叩くことで用紙の横位置を揃える役割りを担っている。また、この叩き板139は、用紙束を横方向に移動させる役割も担っている。
図1に示すパンチャ31の配置領域を通過した用紙は、図2に示す用紙搬送経路P1に従って進行する。このとき、排紙ロール132は矢印Y方向に上昇した位置にあり、可動板135は、矢印X方向に進出した状態にある。用紙搬送経路P1に従って進行してきた用紙は、固定板137と可動板135とに跨って載置され、パドラ134により突き当て壁138に突き当てられるとともに叩き板139によって叩かれ、これにより縦横ともに位置決めがなされる。以上の動作が1つの用紙束を形成する枚数(前述の例では10枚)の用紙が送られてくる間、繰り返され、これにより、1つの用紙束を形成する複数枚の用紙が縦横の位置を揃えて積み重ねられる。この積み重ねられた複数枚の用紙はステープラ32により1つの用紙束にとじられる。ステープラ32には、2つの突起331を有する足部33が取り付けられており、この足部33の2つの突起331は案内部材34に設けられた、図2の紙面に垂直の方向に延びる2本のレール342にそれぞれ形成された溝341に入り込んでいる。このステープラ32は、2本のレール342に案内されて図2の紙面に垂直な方向に移動自在である。足部33にはモータが内蔵されており、足部33は2本のレール342に沿ってステープラ32を、図1に示す用紙処理制御部35からの指示に従って移動させる。その結果、用紙束をステープラ32でとじるにあたっては、レール342に案内されてステープラ32が移動し、例えば中央付近の2箇所、あるいは隅の1箇所など、用紙束の、指定された箇所をとじる。
ステープラ32によるステープル動作自体については後述する。
ステープラ32により用紙束がとじられるのと同期して排紙ロール132は矢印Y′方向に下降してその用紙束を対向ロール133との間に挟み、また、可動板135は、矢印X′方向に退がる。用紙束へのとじ動作が終了すると、排紙ロール132の回転によりその用紙束が用紙受け台136上に排出される。
以上のとじ動作を行なっている間にはプリンタ10(図1参照)からさらに次の用紙が搬送されて来ないように、プリンタ10と後処理装置30との間での調整により、プリンタ10におけるプリント動作の中断等が行なわれる。この中断の時間が長いと、プリントや用紙束の生産性の低下につながることになる。このため、ステープル動作の高速化が望まれるが、ステープル動作を高速化すると大きな動作音が発生する。
そこで、本実施形態では、中断時間を短縮させて生産性を向上させるための制御と、動作音の発生を抑えるための制御が行なわれる。これらの制御方法については後述する。
図3は、2本のレールが形成された案内部材を示す斜視図である。
この案内部材34の2本のレール342にはそれぞれ溝341が形成されており、図2に示す足部33の突起331が溝341に入り込んでステープラ32の移動が案内される。これらのレール342は、全体としては図2の紙面に垂直な方向に延びているが、両端近傍がわん曲した形状を有する。これは、用紙束の角をとじるときに、用紙の角部を用紙に対し斜めにとじるためである。
ここで、図1〜図3を参照して説明した後処理装置30は、図1に示す形態のプリンタにのみ連結可能なものではなく、別な形態のプリンタにも連結可能である。ここでは、別の形態のプリンタの構成を含む複写機について説明する。
図4は、複写機と後処理装置とが連結されたプリントシステムの全体構成図である。
このプリントシステム1Bは、複写機40と後処理装置30とで構成されている。後処理装置30は、図1に示す後処理装置30と同一のものであり、ここでは、図1に付した符号と同一の符号を付して示し、説明は省略する。
この図4に示す複写機40には、画像読取部41、操作パネル42、および画像形成部43が備えられている。
画像読取部41には、原稿画像を読み取る透明な原稿台411と、図示しないランプ、ミラー等からなる光学走査系などが収容された本体部412とが備えられている。原稿台411には、原稿画像が原稿台411に接する向きに原稿が載せられ、光学走査系での走査によりその原稿画像が読み取られ、その原稿画像を表わす画像信号が生成される。この生成された画像信号は本体制御部450内のメモリに蓄積される。
また、操作パネル42では、ユーザによる操作が受け付けられる。ここでは、各種設定、画像読取りや画像形成の開始指示など、様々な操作が行なわれる。操作パネル42での各種指示等も本体制御部450内に記憶される。
画像形成部43は、本体制御部450に蓄積された画像信号に基づく画像を用紙上に形成する電子写真方式のプリンタである。
この画像形成部43には、3台の用紙収容部431が設けられており、各用紙収容部431には、それぞれ紙種や寸法や向き(縦置き、横置き)の異なる用紙PPが収容されている。用紙収容部431に収容されている用紙の紙種や寸法や向きの情報は、操作パネル42の操作によりあらかじめ設定され、本体制御部450に記憶されている。操作パネル42からプリント指令を受け取ると、その指令に応じた用紙が収容されている用紙収容部431から取出しロール432により用紙PPが取り出され、その取り出された用紙PPは供給ロール433、搬送ロール434により用紙搬送路R1に従って搬送され、その用紙先端が調整ロール435に至る。
一方、露光器435は、C,M,Y,Kの各色ごとに配置された各感光体436を露光し、各感光体436上に静電潜像を形成する。各感光体436上に形成された静電潜像は図示しない現像器により各色トナーで現像されてトナー像が形成され、各色のトナー像は、転写ロール437の作用により、張架ロール438により張架された状態で矢印A方向に循環する中間転写ベルト439上に各色のトナー像が互いに重なるように転写される。
先端が調整ロール435にまで達している用紙PPは、中間転写ベルト439上のトナー像と時機を合わせて二次転写位置Tに送り出され、二次転写ロール440の作用により中間転写ベルト439上のトナー像が用紙PPに転写される。トナー像の転写を受けた用紙PPは搬送ベルト441によりさらに搬送され、ロール442aとベルト442bとによる定着器442で加熱加圧を受けて用紙上のトナー像がその用紙PPに定着され、その用紙PP上に定着画像が形成される。定着後の用紙PPは片面印刷の場合は用紙搬送路R2に従って進行し、用紙矯正部435により用紙の湾曲が矯正され、さらに搬送されてこの複写機40から排出される。この複写機40から排出された用紙は、その後段に連結されている後処理装置30に受け継がれる。
用紙の両面への印刷が指定されているときは、定着器442による第1面の画像の定着後の用紙が用紙搬送路R3に従って搬送され、さらに用紙搬送路R4に至る。その後、搬送方向が逆転し今度は用紙搬送路R5に従って進行しさらに用紙搬送路R1に従って進行する。このとき用紙は、用紙収容部431から取り出されて用紙搬送路R1を進行するときとは表裏が逆になっている。用紙搬送路R5,R1と進んできた用紙の、今度は第2面に、上記と同様にして画像が形成され、用紙搬送路R2を通ってこの複写機40から排出され、後処理装置30に受け継がれる。
この複写機40では、操作パネル42の操作により、1つのジョブ単位での指定が行なわれる。具体的には、一例として画像読取部41で今回順次読み取った10枚の原稿画像を1〜10ページとする複写画像の束を10束作成する、といった指示が入力される。例えばこの例の場合、その画像の寸法等に応じた用紙が収容されている用紙収容部111から用紙PPが順次取り出され、順に取り出された各用紙3に、1ページ目の画像,2ページ目の画像,・・・,10ページ目の画像,1ページ目の画像,2ページ目の画像,・・・,10ページ目の画像の順に、合計10束分(用紙100枚分)のプリントが順次に行なわれる。但し、ここでは片面プリントを例にして説明している。プリント後の用紙は後処理装置30に順次に送り込まれる。
本体制御部450は、画像信号の記憶、操作パネル42の操作による指令の記憶のほか、この複写機40の全体の制御、さらには、後処理装置30との通信を担っている。後処理装置30との間の動作上の調整も、この本体制御部450が担っている。
この複写機40は、さらに、上位装置から、画像読取部41による画像読取りに代わる画像信号の受信や操作パネル42の操作に代わる指令の受信を行なうこともできる。この場合、上位装置からの指令により用紙上に画像が形成される。この上位装置との通信も本体制御部450が担っている。
ここでは後処理装置30が連結される装置として図1に示すプリンタ10と図4に示す複写機40を示したが、後処理装置30を、それらのプリンタ10や複写機40に限られず、さらに電子写真方式に限られず、例えばインクジェットプリンタ等他のプリント方式のプリンタにも連結可能に構成してもよい。
次にステープラ自体の動作について説明する。
図5は、ステープラの駆動力伝達機構およびセンサを示した模式図である。
このステープラ32は押え部材328を有する。このステープラ32には、DCモータ321が備えられており、DCモータ321が回転すると押え部材328が矢印D−D′方向に回動する。
DCモータ321から押え部材328への駆動力伝達機構は以下の通りである。DCモータ321が回転するとギア322、中継ギア323および駆動ギア324の順に駆動力が伝達され、駆動軸325が回転する。図6、図7の説明の後、再度この図5に戻って説明する。
図6は、ステープラに備えられた押え部材の動作機構の説明図である。
押え部材328は回転中心328aを中心に回転することにより、図6(A)に示す上位置と図6(B)に示す下位置との間で上下動する。ここで、駆動軸325には、駆動カム326が取り付けられていて、回転中心327aを中心に回転する中継カム327を経由して、押え部材328が上下動する。駆動軸325が1回転すると、押え部材が一往復し、一回のステープル動作が終了する。
また、駆動軸325には、駆動カム326とは軸方向(図6の紙面に垂直な方向)について異なる位置に遮光板51が取り付けられている。この遮光板51は、駆動軸325に固定されており、駆動カム326の回転と同期して同一速度で同一回転角度だけ回転する。また遮光板51の近傍には、HP(ホームポジション)センサ52が備えられている。
図7は、遮光板とHPセンサの位置関係を示した図である。
このHPセンサ52は、光を投受光する光電センサであって、回転する遮光板51がそのHPセンサ52による光の投受光を遮るように通過する位置に固定されている。HPセンサ52は、遮光板51が通過している間はLレベルの信号を出力し、遮光板51がHPセンサ52から外れるとHレベルの信号を出力する。遮光板51は駆動軸325の回転に伴って一緒に回転するので、このHPセンサ52により、駆動軸325の回転位置が検出される。ここではこのセンサは、駆動軸325の初期位置の検出と、ステープル動作中の後述する特定動作箇所の検出に使われている。
DCモータ321に電力を供給してステープラ32にステープル動作を開始させた後、ある閾値時間(例えば500msec)を経過しても駆動軸325が一回転して初期位置に戻ったことがHPセンサ52で検出されなかったときは、ステープル動作不良とみなし、DCモータ321の回転が停止され、DCモータ321が逆転される。このDCモータ321を逆転させたときは、HPセンサ52により、ある閾値時間(例えば200msec)以内に駆動軸325が初期位置に戻るか否かが監視される。DCモータ321の逆転によりその閾値時間以内にHPセンサ52により駆動軸325が初期位置に戻ったことが検出されるか否かにより処理内容は異なるが、いずれの場合もエラー処理が行なわれる。
図5に戻り、ステープラ32に備えられている各種センサについて説明する。
このステープラ32には、HPセンサ52のほかセンサ53とセンサ54が備えられている。センサ53は、ステープル針(後述する)が、用紙束をとじるステープル動作の実行が可能な状態にあるか否かを検出するセンサである。また、センサ54は、ステープル針の残りが少なくなったことを検出するセンサである。
図8は、ステープル針の形状を示した図である。
ステープル針61は、直線形状を有し、図8(A)に示すように、その直線形状のステープル針61が一枚の板形状に並べられて容易にはバラバラにならないように接着され針プレート60を形成している。ここで、使用中のステープル針61は、先頭の2本のステープル針61a,61bだけが、その両端部が針プレート60から直角に立設する方向に折り曲げられる。
ステープル針61の左右の先端部は、図8(B)に示すように先端ほど厚みが薄くなるようにテーパ形状に形成され、用紙束への差し込みを容易にしている。
図9は、針プレートが針ストッパに突き当てられた状態を示す平面図である。針ストッパ62は、折り曲げられる前の直線形状のステープル針61の両端部が突き当てられる第1ストッパ62aと、折り曲げられた先端2本のステープル針61a,61bのうちの先頭のステープル針61aが突き当てられる第2ストッパ62bとを有する。針プレート60の上には、ガイド部材63が被せられている。このガイド部材63の先端部分は折り曲げられた2本のステープル針61a,61bの内側に入り込む寸法を有する。
図10は、ステープル針が針ストッパに突き当てられた状態を示す側面図である。
ガイド部材63には、折り曲げられた先端のステープル針61aの上部を覆い下部を露出するように斜面63aが形成されている。またこのガイド部材63は、図示しないバネにより、図10(A)に示す矢印E方向に付勢されている。
ステープラ32には、さらに、ステープル針61一本分の幅とほぼ同じ厚さの針押上部材71と、同様の厚さの針曲げ部材72が備えられている。針押上部材71は、折り曲げられた先頭のステープル針61aの直下に配置され、針曲げ部材72は、先頭から3本目のステープル針61、すなわち、まだ折り曲げられていない先頭のステープル針の直下に配置されている。
ステープラ32に備えられたDCモータ321(図5参照)が回転して駆動軸325が回転すると、針押上部材71が先端のステープル針61aを矢印G方向に押し上げて図示しない用紙束に差し込む。この押し上げ時には、ガイド部材63は、バネ付勢に抗して、図10(B)に示す矢印F方向にステープル針61の1本分の厚さだけ押し戻される。そして針押上部材71により押し上げられたステープルに続いて上昇してきた針曲げ部材72により、折り曲げられていない先頭のステープル針が、ガイド部材63の先端部分をガイドにして折り曲げられる。針押上部材71および針曲げ部材72は、針押上部材71により押し上げられたステープル針61aによる用紙束1束分のとじ動作が終了すると、図10(A)に示す初期位置まで下降する。
図11〜図20は、ステープラによるステープル動作の各ステップにおける部材の動作を示す図である。前述の通り、ステープラ32にはDCモータ321(図5参照)が備えられており、そのDCモータ321の回転により駆動軸325が回転し、この駆動軸325の回転により、ステープル動作に関係する各部材が連携して動作する。
図11は、ステープラに針プレート60を装填した直後の初期の状態が示されている。針プレート60は複数枚重ねられて収容されている。またここには、図9、図10を参照して説明した第1ストッパ62aと第2ストッパ62bとからなる針ストッパ62、針押上部材71、針曲げ部材72のほか、針送り用の板バネ73が示されている。この板バネ73は、積み重ねられた針プレート60のうちの最下層の針プレート60aを針ストッパ62側に送り出す役割りを担っている。またここには、図5等に示す押え部材328を構成する構成部品である、針折曲げ部材74、押え部材75および上部部材76が示されている。針折曲げ部材74は、ステープル針の用紙束を貫通した両端部分を折り曲げて用紙束に押し当てる役割りを担っており、押え部材75は、針折曲げ部材74を上から押える役割りを担っている。また、上部部材76は、用紙束を上から押える役割りを担っている。
図12は、図11に示す状態の次のステップを示している。
ここでは板バネ73により最下層の針プレート60aが矢印H方向に押されて移動し、その針プレート60aの先端の両側が第1ストッパ62aに突き当てられ、さらに上部部材76が、針折曲げ部材74および押え部材75を上に残したまま矢印I方向に下降している。この上部部材76には、針折曲げ部材74が入り込む溝761が形成されており、上部部材76の下降により相対的に針折曲げ部材74が上部部材76よりも上部に移動しその溝761があらわれた状態にある。
次に、図13に示すように、針押上部材71が矢印J方向に上昇するが、この段階では、第2ストッパ62bに突き当てられているステープル針61a(図9参照)は存在せず、したがって針押上部材71は空打ちとなる。この針押上部材71の上昇に伴い針曲げ部材72も上昇し、第1ストッパ62aに突き当てられている先頭のステープル針61の両端部を針プレート60aに対し直角に折り曲げる。この時、板バネ73は、針プレート60aを矢印H方向に付勢し続ける。
次いで、図14に示すように、押え部材75が矢印K方向に下降し、針折曲げ部材74を溝761内に押し込むが、この段階ではステープル針が存在せず空打ちとなる。板バネは73は一旦後方に移動する。
次いで、図15に示すように、上部部材76が針折曲げ部材74および押え部材75とともに矢印L方向に上昇し、針押上部材71および針曲げ部材72が矢印M方向に下降する。針プレート60aは、板バネ73に押されて、折り曲げられた先頭1本分のステープル針61aが第1ストッパ62aを擦り抜け、先頭から2本目の、まだ折り曲げられていないステープル針61bが第1ストッパ62aに突き当てられた状態となる。
次にもう一度、図13〜図15の各ステップを繰り返すと、今度は先頭の2本のステープル針61a,61bが折り曲げられて、図16に示すように、先頭のステープル針61aが第2ストッパ62bに突き当てられた状態となる。
図5に示すセンサ53は、上記のようにして折り曲げられた針プレート60aの先頭のステープル針61aが第2ストッパ62bに突き当てられている状態にあることを検出するセンサである。このセンサ53によりこの状態にあることが検出されると、用紙束をとじる実際のステープル動作の実行が可能となる。
ここで、図13〜図15に示す空打ち動作は、最大13回繰り返される。これは板バネ73による針プレート60aの送り出しに失敗する可能性もあるからである。図13〜図15のステップを13回繰り返してもセンサ53が先頭のステープル針61aの存在を検出しなかったときは、エラー処理が実行される。
図16は、実際のステープル動作開始時の状態を示している。
ここでは、針プレート60aの先頭の2本のステープル針61a,61bが折り曲げられ、先頭のステープル針61aが第2ストッパ62bに突き当てられている。またこの図16には、ステープル針でとじられる予定の用紙束PSも示されている。
次に、図17に示すように、板バネ73が針プレート60aを矢印N方向に押して針プレート60aを針ストッパ62に押し付け、また上部部材76が矢印O方向に下降して用紙束PSを上から押える。このとき溝761が形成される。
次に図18に示すように針押上部材71が矢印P方向に上昇し、先頭のステープル針61aで用紙束PSを貫通させる。また針曲げ部材72も上昇し、2つ隣りの直線形状の先頭のステープル針61の両側部を上向きに折り曲げる。
次いで、図19に示すように、押え部材75が矢印Q方向に下降し針折曲げ部材74が溝761内に押し込まれてステープル針61aの両端が内側に折り曲げられる。溝761は、ステープル針61aの、内側に折り曲げられた両端が互いにぶつからないように若干斜めに形成されている。
次いで図20に示すように、上部部材76が矢印R方向に上昇し、これに伴い、針折曲げ部材74および押え部材75も上部部材76とともに上昇する。また、針押上部材71および針曲げ部材72は、矢印S方向に下降する。針プレート60aは、板バネ73に押されて、次の先頭のステープル針が第2ストッパ62bに突き当てられる。
ステープル針によりとじられた用紙束PSは、図2を参照して説明したようにして、後処理装置30の外部に排出される。
以上の図16〜図20の各ステップが繰り返され、ステープル針61によりとじられた用紙束PSが順次形成される。
図5に示すもう1つのセンサ54は、上記のようにしてステープル針61を消費していった結果、残りのステープル針61の本数が少なくなったことを検出するセンサである。ステープル針61が残り少なくなると、ユーザに向け注意喚起がなされる。
図21は、一連のステープル動作を構成する各工程における動作音波形を示した図である。また、この図21には遮光板51とHPセンサ52も示されている。この図では遮光板51の回転方向は左回りとなっている。
ここでは、一連のステープル動作が、起動工程T1と、とじ工程T2と、復帰工程T3とに分けられている。本実施形態では起動工程T1の時間長t1は、t1=50msecに固定されている。また、とじ工程T2後に用紙押さえを解除するタイミングは、HPセンサ52の出力の変化で知ることができる。また復帰工程T3の終了タイミング(すなわち初期状態)もHPセンサ52の出力変化により知ることができる。
起動工程T1は、図16に示す初期状態にあるときにDCモータ321(図5参照)への電力供給を開始した時点から50msecの時間である。とじ工程T2は、起動工程T1に続き、図19の状態まで続く工程である。復帰工程T3は、図20を参照して説明した動作を行なう工程である。
ここでは、起動工程T1の時間長をt1、とじ工程T2の時間長をt2、復帰工程T3の時間長をt3、起動工程T1の開始から復帰工程T3の終了までの、一連のステープル動作1回分の時間長をt123であらわす。また起動工程T1ととじ工程T2の合計の時間長t1+t2をt12であらわす。
以下では、とじ工程T2および復帰工程T3における動作音を低減するための制御アルゴリズムを説明する。
図22は、後処理装置におけるステープラの動作制御を担う制御回路のブロック図である。
ここでは、この後処理装置30は、図1に示すプリンタ10に連結されているものとする。
ここには、CPU351、RAM352、モータ駆動部353および発振器354が示されている。これらは、図1等に示す用紙処理制御部35内の構成要素の一部である。
また、ここには、ステープラ32の構成要素として、DCモータ321、前述した各種の機構要素からなるステープル機構39およびHPセンサ52が示されている。
RAM352には、この後処理装置30の電源立ち上げ時に図示しない不揮発性メモリ内に記憶されている後述する各種データが転送され、また、CPU351で動作する動作制御プログラムもこのRAM352にロードされる。CPU351には、プリンタ10から今回のプリントに用いた用紙の種類(紙種)、ひと束あたりの用紙枚数、用紙束の数等の情報が入力される。また、このCPU351には、HPセンサ52の出力信号も入力され、CPU351ではステープラ32が初期状態にあること、また用紙押さえの解除タイミングにあることが認識される。
モータ駆動部353では、CPU351により指示を受けたデューティのパルス幅変調電力が生成される。発振器354はモータ駆動部353でのパルス幅変調電力(PWM電力)生成用のクロック信号を発生させる。
ここでPWMとは、周期的なパルス状の波形に電力を変調する技術である。変調された波形でのパルス高はDCモータ321の定格電圧に等しい。そして、変調された波形におけるパルス周期に対するパルス幅の比率は、定格出力に対する実効出力の比率となる。この比率はPWM電力のデューティ(出力比率)と称され、このデューティが調整されることで、PWM電力の実効出力は、0から定格電力までの間で調整される。
モータ駆動部353で生成されたPWM電力はDCモータ321に供給され、DCモータ321はその供給されたPWM電力で回転する。ここで、DCモータ321は、そのDCモータ321に供給されたPWM電力のデューティに概ね沿った回転数で回転するが、ステープラ32の個体差やとじ対象の用紙の紙種や枚数等に応じて大きくばらつき、デューティと回転数は必ずしも一対一の関係ではない。
図23は、制御概念図である。
ここで行なおうとしている制御は、各工程ごとにデューティを調整することである。起動工程T1は、DCモータ321の回転を開始させる工程であり、大きなパワーを必要とし、ここではデューティ100%に固定される。起動工程T1の時間長t1は、前述した通り、t1=50msecに固定されている。
次のとじ工程T2では、デューティが、とじ対象の用紙の紙種や枚数等に応じたデューティに調整され、動作音の抑制が図られる。デューティを下げるとDCモータ321の回転数が低下するが、回転数の低下にとどまらず駆動力も低下し、これが低下し過ぎるとステープル動作が正常に行なわれずにとじ不良が発生するおそれがある。そこで、このとじ工程T2のデューティは、とじ不良が発生しない駆動力が確保される最低限のデューティに決められている。
次の復帰工程T3においても、デューティが、とじ対象の用紙の紙種や枚数等に応じたデューティに調整される。この復帰工程T3でも駆動力が低下し過ぎると復帰動作が不良となるおそれがある。そこで、この復帰工程T3のデューティは、復帰動作の不良が発生しない駆動力が確保される最低限のデューティに決められている。
デューティを、図23に実線で示すように変化させると、DCモータ321の実回転数は、ここに破線で示すように時間遅れ等を伴いながらそのデューティの変化に追随する。
図24は、紙種と枚数とによって用紙束を群に分類する群テーブルを示す図である。
ここに示す群テーブルでは、ステープル対象の用紙枚数(ステープル枚数)が、10枚区切りで5つの区分に分けられている。また、用紙の種類としては、薄い方から順に「薄紙」、「普通紙1」、「普通紙2」、「厚紙」、「コート紙」、「厚紙2」という6種類の用紙が想定されている。そして、この群テーブルは、どのような種類の用紙が何枚束ねられたらどの群に属することになるかを示している。
図22に示すようにプリンタ10から今回のプリントに使った用紙の紙種、ひと束あたりの用紙枚数および束数の情報が後処理装置30に入力されるが、後処理装置30ではそれらの情報のうちの紙種とひと束あたりの用紙枚数の情報を利用し、この群テーブルを参照して用紙束の群を決める。
ここに示す群テープルでは、とじ対象の用紙束は、紙種と枚数とにより、A群,B群,C群の3群に分けられている。用紙束に対するステープル動作に要する負荷は、A群では低負荷、B群では中負荷、C群では高負荷となっている。例えば、紙厚が薄目の普通紙1については、2枚から10枚の束はA群に属し、11枚から30枚の束はB群に属する。また、31枚以上になると、C群に属することになる。一方、紙厚が厚目のコート紙については、2枚でもC群に属する。
この図24に示す情報は、図示しない不揮発性メモリに記憶されており、動作に先立って図22に示すRAM352にロードされる。
図25は、デューティテーブルを表す図である。
ここに示すデューティテーブルでは、A群,B群,C群の3群それぞれについて、起動工程T1、とじ工程T2、および復帰工程T3それぞれにおけるデューティが対応付けられている。この図25に示すd1,d2,d3は、それぞれ起動工程T1,とじ工程T2,復帰工程T3のデューティを表わしている。
起動工程T1については、A群,B群,C群の3群いずれについてもデューティは100%に固定されている。
とじ工程T2および復帰工程T3それぞれのデューティは、用紙束が属する群に応じたデューティとなっている。とじ工程T2について見ると、A群にはデューティ65%が対応付けられており、B群にはデューティ75%が対応付けられており、C群にはデューティ85%が対応付けられている。また、復帰工程T3について見ると、A群にはデューティ50%が対応付けられており、B群にはデューティ40%が対応付けられており、C群にはデューティ25%が対応付けられている。このように、デューティテーブルでは、ステープル動作に要する負荷が大きい群ほど大きいデューティが対応付けられている。この結果、駆動力不足によるステープル不良の回避とステープル動作音の低下とのバランスが保たれる。
この図25に示す情報も、図示しない不揮発性メモリに記憶されており、動作に先立って図22に示すRAM352にロードされる。
以下、ステープル動作前後で実行される各動作の動作タイミングについて説明する。ステープル動作前には、ステープル対象の用紙束を作成する束作成動作が実行される。この束作成動作は、図1,2を参照して上記でも説明したが、パドラ134と叩き板139によって実行される動作である。またステープル動作後には、とじられた用紙束を排紙ロール132と対向ロール133が用紙受け台136上に排出する用紙排出動作が実行される。さらに、用紙受け台136上の用紙束同士でステープル箇所が重ならないように用紙束を交互にシフトさせるシフト動作も、用紙排出動作に先だって実行される。このシフト動作は叩き板139によって実行される動作である。いずれの動作のタイミングも、後処理装置30の用紙処理制御部35から各駆動部などへの指示によって制御されている。この指示は、具体的には指示信号の伝達などによって実現されるが、指示技術そのものは周知の技術であるのでこれ以上の説明は省略し、以下では、指示によって実現される動作タイミングについて説明する。
図26は、束作成動作とステープル動作とシフト動作との実行タイミングを表すタイミングチャートである。図27は、束作成動作とステープル動作が実行されるときのステープラ、用紙束、叩き板の位置を示す図である。
図26のタイミングチャートには、1組の叩き板139それぞれの位置変化のタイミングと、ステープル動作の実行タイミングと、ステープラ32の位置変化のタイミングとが4本のラインで示されており、横軸は共通の時間軸となっている。また、このタイミングチャートでは、1つの用紙束PSに対して2箇所がとじられる例が示されている。
タイミングチャートの上段側の2本のラインは1組の叩き板139それぞれの位置変化を示しており、図26の上下方向が図27の上下方向に相当する。図26のタイミングチャートが示すように、1組の叩き板139は、用紙束PSを挟み込むような移動を行っている。このような挟み込みは、用紙束PSに新たな用紙が追加される度に実行される。そして、用紙数が、プリンタ10から入力されたひと束あたりの用紙枚数に達したら、タイミングチャートの最下段のラインが示すように、ステープラ32が1箇所目のとじ位置まで移動する。1箇所目のとじ位置は、図27では点線で示されている。
そして、1組の叩き板139が用紙を挟み込んだ状態で、図26の下から2段目のラインが示すように1回目のステープル動作が実行される。
1回目のステープル動作が終了すると、図26のタイミングチャートの最下段のラインと図27の矢印Uが示すように、ステープラ32が2箇所目のとじ位置まで移動する。そして、ステープラ32が2箇所目のとじ位置に達すると、図26の下から2段目のラインが示すように2回目のステープル動作が開始される。
図28は、2回目のステープル動作におけるステープラの初期状態を示す図であり、この初期状態は、図16に示す初期状態に相当する。
ステープラの初期状態では、ステープル針でとじられる予定の用紙束PSがステープラ32に対してセットされており、押え部材328は図の上方に位置している。
図29は、2回目のステープル動作におけるステープラの、図17に示す状態に相当する状態を示す図である。
図28に示す状態からステープラ32のモータが起動されると、モータの駆動力によって押え部材328が図の下方へと下がってきて用紙束PSが押え部材328によって押さえられる。この図29に示す状態に達した後は、図26のタイミングチャートに示されるように、ステープラ32と1組の叩き板139が揃って移動する。これによりシフト動作が実行される。
図30は、シフト動作と用紙排出動作が実行されるときのステープラ、用紙束、叩き板の位置を示す図である。
図30の矢印Vが示すように、ステープラ32と1組の叩き板139が図の上方へと移動し、1組の叩き板139の移動に伴って用紙束PSも図の上方へと移動する。このように用紙束PSを移動させる動作がシフト動作である。そして、この移動中も、図29に示したように押え部材328は用紙束PSを押さえており、さらにこの移動中(即ちシフト動作中)に、ステープラは、図18、図19に示した状態に順次に移行してステープル動作を進行させる。つまり、シフト動作とステープル動作が同時に進行していることになり、その結果、動作実行の総時間は短縮されることとなる。
その後、図30の矢印Wが示すように、用紙排出動作が開始される。この用紙排出動作の開始タイミングについては、図26のタイミングチャートよりも詳細なタイミングチャートを参照して説明する。
図31は、用紙排出動作の開始タイミングを示すタイミングチャートである。
図31のタイミングチャートには、ステープル動作の実行タイミングと、HPセンサ52の出力と、用紙排出動作の実行タイミングとが3本のラインで示されており、横軸は共通の時間軸となっている。
このタイミングチャートの中段のラインが示すように、HPセンサ52の出力は、ステープル動作の実行に、一時的にoffからonへと変化する。図21に示す形状を遮光板51が有しているため、このoffからonへの出力変化は、とじ工程T2後に押え部材328が用紙束PSの押さえを解除するタイミングで生じる。そして、この出力変化を用紙処理制御部35が捉えて、タイミングチャートの下段のラインが示すように用紙排出動作を開始させる。用紙束PSの押さえが解除されるタイミングは、図25に示すデューティテーブルで決まるデューティに概ね依存したタイミングであるが、ステープラ32の個体差やとじ対象の用紙の紙種や枚数等によってもばらつく。しかし、HPセンサ52の出力変化は、常に、ステープル動作に同期して生じるため、HPセンサ52の出力変化に基づいた制御によって、用紙排出動作の開始タイミングは、用紙束PSの押さえ解除のタイミングに常に同期する。
図32は、用紙排出動作の開始時におけるステープラの状態を示す図である。
用紙排出動作によって用紙束PSは、図の矢印Wが示すようにステープラ32から引き出される。このとき、ステープラ32では、ステープル動作の復帰工程が実行中であり、押え部材328が用紙束PSの押さえを解除し始めたところである。
図33は、ステープル動作の終了時におけるステープラと用紙束とを示す図である。
ステープル動作の終了時には、押え部材328が完全に上に上がって初期状態に戻るが、このとき既に用紙束PSは矢印Wの方向に送り出されている。このように用紙排出動作とステープル動作の復帰工程とが同時進行していることでも、動作実行の総時間は短縮されることとなる。
上記では、用紙束PSの押さえが解除されるタイミングで出力変化を生じるHPセンサ52を有したステープラが用いられる場合における用紙排出動作の開始タイミングの決定方法について説明した。しかし、そのような出力変化を生じるHPセンサを有していないステープラが用いられる場合には別の決定方法が必要となる。以下、このような別の決定方法について説明する。
図34は、用紙排出動作の開始タイミングの別の決定方法を説明するタイミングチャートである。
図34のタイミングチャートには、図31のタイミングチャートと同様に、ステープル動作の実行タイミングと、HPセンサの出力と、用紙排出動作の実行タイミングとが3本のラインで示されており、横軸は共通の時間軸となっている。
図34のタイミングチャートの中段に示されたHPセンサの出力は、ステープラの初期状態を表した出力変化を生じるが、用紙束PSの押さえ解除のタイミングでは出力変化を生じていない。そこで、開始タイミングの別の決定方法では、ステープル動作開始後の「x」msec経過時点を用紙排出動作の開始タイミングとしている。この「x」msecは、ステープル動作開始から用紙押さえ解除までの予測時間である。但し、上述したように、用紙束PSの押さえが解除されるタイミングは、図25に示すデューティテーブルで決まるデューティに概ね依存したタイミングであるので、この「x」の値は、以下説明するように、用紙束が属する群に依存した値となっている。
図35は、「x」msecを求めるための時間テーブルを示す図である。
この時間テーブルでは、デューティ決定の元になった群と、ステープル動作開始から用紙押さえ解除までの予測時間とが対応付けられている。低いデューティの元になるA群については350msecという長い時間が対応付けられており、B群には310msecが対応付けられ、C群には280msecという短い時間が対応付けられている。このように対応付けられた各時間は、予め実験などによって算出された時間である。このような時間テーブルを、図24に示す群テーブルによって決められた群に基づいて参照することにより、用紙排出動作の開始タイミングを求めるための「x」msecが決まる。このように決められた「x」msecで求められた開始タイミングで用紙排出動作が開始された場合であっても、ステープル動作の復帰工程と用紙排出動作は十分に重なり合い、動作実行の総時間は短縮されることとなる。
なお、上述した実施形態では、動作音を低減するためにデューティを制御しているが、本発明ではデューティ制御は必須ではなく、ステープラのモータを常に定格の直流電圧で駆動するものであってもよい。