JP2011198603A - 固体高分子電解質膜およびその製造方法、それを用いた膜電極接合体ならびに燃料電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】微細な凹凸構造を持ち、熱接合時においてもその凹凸構造を保持でき、高温低加湿で作動しても固体高分子電解質膜と電極触媒層との間に良好な密着性および高い発電特性を有する固体高分子電解質膜およびその製造方法、それを用いた膜電極接合体ならびに燃料電池を提供する。
【解決手段】固体高分子電解質膜は、少なくとも一方の面に凹部と凸部とからなる線形状を有し、ガラス転移温度が150℃以上の固体高分子電解質を含む。また、その線形状は、一方の面に凹部と凸部とからなる線形状を有する基材の線形状を有する面に、ガラス転移温度が150℃以上の固体高分子電解質を含む塗液を塗布し、塗膜を乾燥させ、基材から剥離することで形成する。
【選択図】図3
【解決手段】固体高分子電解質膜は、少なくとも一方の面に凹部と凸部とからなる線形状を有し、ガラス転移温度が150℃以上の固体高分子電解質を含む。また、その線形状は、一方の面に凹部と凸部とからなる線形状を有する基材の線形状を有する面に、ガラス転移温度が150℃以上の固体高分子電解質を含む塗液を塗布し、塗膜を乾燥させ、基材から剥離することで形成する。
【選択図】図3
Description
本発明は、固体高分子電解質およびその製造方法、その固体高分子電解質を用いた膜電極接合体ならびにその膜電極接合体を備えてなる固体高分子形燃料電池に関するものである。
燃料電池は、水素を含有する燃料ガスと酸素を含む酸化剤ガスとを、触媒を含む電極で水の電気分解の逆反応を起こさせ、熱と同時に電気を生み出す発電システムである。この発電システムは、従来の発電方式と比較して高効率で低環境負荷、低騒音などの特徴を有し、将来のクリーンなエネルギー源として注目されている。用いるイオン伝導体の種類によってタイプがいくつかあり、イオン伝導性高分子膜を用いたものは、固体高分子形燃料電池と呼ばれる。
燃料電池の中でも、固体高分子形燃料電池は、室温付近で使用可能なことから、車搭載源や家庭据置用電源などへの使用が有望視されており、近年、様々な研究開発が行われている。固体高分子形燃料電池は、膜電極接合体(Membrance and Electrolyte Assembly;以下、MEAと称することがある)と呼ばれる高分子電解質の両面に一対の電極触媒層を配置させた接合体を、前記電極の一方に水素を含有する燃料ガスを供給し、前記電極の他方に酸素を含む酸化剤ガスを供給するためのガス流路を形成した一対のセパレータ板で挟持した電池である。ここで、燃料ガスを供給する電極を燃料極、酸化剤を供給する電極を空気極と呼んでいる。これらの電極は、白金系の貴金属などの触媒物質を担持したカーボン粒子と高分子電解質を積層してなる電極触媒層とガス通気性と電子伝導性を兼ね備えたガス拡散層からなる。
MEAは、固体高分子電解質膜が一対の電極触媒層により挟持されてなるものであり、場合によっては、上記電極触媒層がさらに一対のガス拡散層により挟持されてなるものである。このような構成を有するMEAの作製方法としては、導電性材料の表面に触媒成分を担持させた電極触媒とプロトン伝導性を有するフッ素系ポリマー等の電解質とを水や低級アルコールの溶剤中に分散した触媒インクを、固体高分子電解質膜に直接塗布した後、乾燥する直接塗布法がある。他の作製方法としては、上記触媒インクを、転写用台紙に塗布・乾燥して、電極触媒層を形成させた後、ホットプレスにより固体高分子電解質膜に電極触媒層を転写させる転写法などがある。
上記方法のうち、現在主流となっている転写法では、電極触媒層をホットプレスにより転写する場合、固体高分子電解質膜に対して相溶性の悪い材料を電極触媒層に使用すると、固体高分子電解質膜と電極触媒層間に良好な密着性が得られないという問題が生じる。このため、このような固体高分子電解質膜を用いた燃料電池では、電極触媒層が固体高分子電解質膜より剥がれるなどにより、固体高分子電解質膜と電極触媒層との接触抵抗が大きくなり、十分な発電特性が得られない。
一方、現在、固体高分子形燃料電池の固体高分子電解質膜として実験的に作動させている際には、80℃の条件が多いが、将来的に車搭載源として固体高分子形燃料電池の高分子電解質を利用するためには、高温低加湿でのプロトン伝導度が必要とされている。高温低加湿になると、固体高分子電解質膜と電極触媒層が剥離しやすくなるため、高温低加湿で作動しうる固体高分子電解質膜と電極触媒層との間に良好な密着性を有する必要がある。
この問題を解決するために、特許文献1では、(ア)表面に凹凸加工が施してあるシート状物やフィルムなどを固体高分子電解質膜上に置き、この凹凸形状を固体高分子電解質膜に転写する方法、(イ)固体高分子電解質膜表面に剛性微粒子等を塗布した後、これを金属板などに挟んで圧着する方法などが記載されている。この方法を用いると、例えば、ガラス転移温度(以下Tgと略す。)が低いナフィオン(登録商標、デュポン社製、以下同じ)などのフッ素系電解質膜に対して、凹凸構造を容易に付与することができる。
しかしながら、特許文献1に記載の方法でフッ素系電解質膜に凹凸構造を形成し、このフッ素系電解質膜と、フッ素系電解質をアイオノマーとして用いた電極触媒層とを熱接合する場合、フッ素系電解質膜表面の凹凸構造が戻ってしまい、接触面積を大きくすることによる密着性の向上を図ることができない。
一方、高温低加湿での密着性を向上させるために、Tgの高い炭化水素系電解質膜を用いる場合、特許文献1に記載の方法では、Tgが高く剛直な骨格を用いることが多い炭化水素系電解質膜に凹凸構造を転写しにくい。そのため、上記炭化水素系電解質膜と、フッ素系電解質をアイオノマーとして用いた電極触媒層とを熱接合する場合、密着性の向上を図るのに十分な接触面積を確保することができない。
また、Tgが高い炭化水素系電解質膜を用いて、炭化水素系電解質をアイオノマーとして用いた電極触媒層と接合する場合、電極触媒層の炭化水素系電解質アイオノマーのTgを下げることがあり、電解質膜と電解質アイオノマーのTgが異なる場合でも両者の密着性の向上を図る必要がある。
そこで、本発明は、固体高分子電解質膜に凹凸構造を微細に転写することができ、固体高分子電解質膜と電極触媒層とを熱接合する場合でもその凹凸構造を保持することができ、また、固体高分子電解質膜と電極触媒層に含まれる電解質アイオノマーとが異なるTgを有していても両者の密着性を向上させることができ、さらに、高温低加湿で作動しても固体高分子電解質膜と電極触媒層との間に良好な密着性および高い発電特性を有する固体高分子電解質膜およびその製造方法、それを用いた膜電極接合体ならびに燃料電池を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、少なくとも一方の面に凹部と凸部とからなる線形状を有し、ガラス転移温度が150℃以上の固体高分子電解質を含むことを特徴とする固体高分子電解質膜である。
また、請求項2に記載の発明は、前記凹部の底面と前記凸部の上面との距離が、1μm以上であり、かつ前記固体高分子電解質膜の厚みの1/5以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子電解質膜である。
また、請求項3に記載の発明は、一方の面に凹部と凸部とからなる線形状を有する基材の、前記線形状を有する面に、ガラス転移温度が150℃以上の固体高分子電解質を含む塗液を塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥させて固体高分子電解質膜を形成する工程と、前記固体高分子電解質膜を前記基材から剥離する工程とを具備することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法である。
また、請求項4に記載の発明は、前記凸部の幅が、50μm以上であり、前記凸部の高さが、10μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子電解質膜の製造方法である。
また、請求項5に記載の発明は、前記線形状が、切削刃を用いた機械加工により形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の固体高分子電解質膜の製造方法である。
また、請求項6に記載の発明は、前記基板が、ガラス基板もしくはシリコンウエハであることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜の製造方法である。
また、請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜を有することを特徴とする膜電極接合体である。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする燃料電池である。
本発明の固体高分子電解質膜によれば、表面に微細な線形状を有し、電極触媒層との熱接合時にその線形状を十分保持することができる。また、電極触媒層に含まれる電解質アイオノマーと異なるTgを有していても、両者の密着性を向上させることができる。
また、本発明の固体高分子電解質膜の製造方法によれば、表面に微細な線形状を有し、電極触媒層との熱接合時にその線形状を十分保持することができる固体高分子電解質膜を得ることができる。また、電極触媒層に含まれる電解質アイオノマーと異なるTgを有していても、両者の密着性を向上させることができる固体高分子電解質膜を得ることができる。
さらに、本発明の固体高分子電解質膜を用いた燃料電池は、高温低加湿で作動しても、電解質膜と電極触媒層との間の密着性が良好で、高い発電特性を有することができる。
以下に、本発明の密着性に優れた固体高分子電解質膜の製造方法および、本発明の固体高分子電解質膜を用いた膜電極接合体について説明する。なお、本発明は、以下に記載する各実施の形態に限定されうるものではなく、当業者の知識に基づいて設計の変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施の形態も本発明の範囲に含まれうるものである。
[切削刃を用いた基材の機械加工方法]
本発明で用いられる基材としては、金属、樹脂、ガラスなどからなる板状の基材やシート状の基材などが挙げられるが、樹脂は、金属やガラスと比べて熱変形しやすいため、加工した構造を維持しにくく、また、金属は高価であるものも多い。このため、表面に微細な凹部と凸部とからなる線形状を形成することができるものとして、機械強度に優れ、安価なガラス又はシリコンウエハからなる板状の基材を用いることが好ましい。ガラス又はシリコンウエハからなる板状の基材を用いることで、所望の微細パターンを精度よく形成することができる。
本発明で用いられる基材としては、金属、樹脂、ガラスなどからなる板状の基材やシート状の基材などが挙げられるが、樹脂は、金属やガラスと比べて熱変形しやすいため、加工した構造を維持しにくく、また、金属は高価であるものも多い。このため、表面に微細な凹部と凸部とからなる線形状を形成することができるものとして、機械強度に優れ、安価なガラス又はシリコンウエハからなる板状の基材を用いることが好ましい。ガラス又はシリコンウエハからなる板状の基材を用いることで、所望の微細パターンを精度よく形成することができる。
ここで、凹部と凸部とからなる線形状とは、3次元構造を有するラインパターンのことをいい、具体的には、図1に示すように、基材100の表面に形成された凹部101と凸部102とからなる形状のことをいう。凹部101と凸部102とからなる線形状は、少なくとも面内の一方向に線状に伸びる凹部と凸部とを有していればよく、凹部の底面や凸部の上面が水平であっても曲率を有していてもよい。また、凸部と凸部との距離(ピッチ)が基材の深さ方向で小さくなっても、逆に大きくなってもよい。
ガラス又はシリコンウエハからなる基材の表面に凹部と凸部とからなる線形状を形成する方法としては、公知の表面加工方法を用いることができる。例えば、リソグラフィーによりマスクを形成しエッチングを行う方法がある。
光又は電子線リソグラフィーを用いれば、微細かつ任意のパターン形状を有するエッチングマスクを形成することができるため、エッチングにより、1μm以上のミクロンオーダーの3次元構造パターンを加工することができる。また、半導体レベルの微細加工が可能であり、トレンチエッチングなどの手法を適用することにより、極微細なパターン又はピッチでアスペクト比の高い3次元構造パターンを加工することができる。エッチング方法としては、ドライ又はウェットが挙げられる。
本発明の表面加工方法としては、上記のようなエッチング方法を用いることもできるが、加工工程がより簡略である切削刃を用いた機械加工方法を用いることが好ましい。切削刃を用いた機械加工方法は、切削刃を1方向に移動させることにより、該方向に沿った線状の溝を形成することが出来るため、本発明の表面に凹凸構造を有する固体高分子電解質膜の3次元構造ラインパターンの形成方法として好適である。また、切削刃を用いた機械加工を用いると、アスペクト比が高くかつ微細な3次元構造ラインパターンを形成することができる。
本発明の基材の表面に形成された凹部又は凸部とからなる線形状は、基材の線形状を有する面に形成される固体高分子電解質膜の、表面に形成される凹部の底面と凸部の上面との距離が1μm以上あり、固体高分子電解質膜の厚みの1/5以下になるように設計することが好ましい。
具体的には、基材の凸部の幅が50μm以上、高さが10μm以上1000μm以下であることが好ましく、また、凸部のアスペクト比は、0.2以上20以下であることが好ましい。上記範囲を満たすことにより、凹部及び凸部の形状が安定し、繰り返し母型として使用することができる。
[固体高分子電解質膜]
固体高分子電解質膜の材料としては、芳香族ポリエーテル、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリエーテルスルホン、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルニトリル、芳香族ポリエーテルピリジン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリアゾール、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネートなどを挙げることができる。これらの高分子はスルホン化されていてもよく、スルホン化されていなくてもよい。
固体高分子電解質膜の材料としては、芳香族ポリエーテル、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリエーテルスルホン、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルニトリル、芳香族ポリエーテルピリジン、芳香族ポリイミド、芳香族ポリアミド、芳香族ポリアミドイミド、芳香族ポリアゾール、芳香族ポリエステル、芳香族ポリカーボネートなどを挙げることができる。これらの高分子はスルホン化されていてもよく、スルホン化されていなくてもよい。
固体高分子電解質膜のガラス転移温度は、150℃以上であることが好ましい。150℃以下では、車搭載用に要求される120℃に対応しきれない可能性があり、要求される耐久性と発電特性を満たすことができない。
固体高分子電解質膜の表面に形成された線形状は、凸部の高さ(凹部の底面と凸部の上面との距離)が1μm以上であり、固体高分子電解質膜の膜厚の1/5以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、固体高分子電解質膜を10μm程度に薄膜化しても機械強度を保持することができ、電極触媒層との密着性を確保することができる。さらに、凸部と凸部の距離が、100μm以上5000μm以下であることが好ましい。この範囲を満たすことにより、さらに、固体高分子電解質膜の機械強度の保持や電極触媒層との密着性確保を図ることができる。
[線形状を有する固体高分子電解質膜の作製]
線形状を有する固体高分子電解質膜の作製としては、図2に示すように、切削刃を用いて機械加工されたガラス基材を用意し(工程1)、固体高分子電解質が溶解した塗液を塗布する工程(工程2)を経て作製するのが好ましい。固体高分子電解質が溶解した塗液を塗布することで、溶液に含まれる固体高分子電解質をガラス基材表面の微細なラインパターンに十分入り込ませることができるため、その後の乾燥工程および剥離工程を経て得られる固体高分子電解質膜の表面に、ガラス基材表面の微細なラインパターンと同程度のパターンを形成することができる。
線形状を有する固体高分子電解質膜の作製としては、図2に示すように、切削刃を用いて機械加工されたガラス基材を用意し(工程1)、固体高分子電解質が溶解した塗液を塗布する工程(工程2)を経て作製するのが好ましい。固体高分子電解質が溶解した塗液を塗布することで、溶液に含まれる固体高分子電解質をガラス基材表面の微細なラインパターンに十分入り込ませることができるため、その後の乾燥工程および剥離工程を経て得られる固体高分子電解質膜の表面に、ガラス基材表面の微細なラインパターンと同程度のパターンを形成することができる。
固体高分子電解質が溶解した塗液を塗布する方法としては、公知の塗布方法を用いることができ、例えば、ロールコーター、リバースロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、ダイスロットコーター、サイズプレスコーター、キャストコーター等を用いた塗布方法などが挙げられる。
また、形成した塗膜を乾燥させる工程(工程3)では、溶媒をゆっくり乾燥させることが好ましい。たとえば、初期乾燥を30℃〜45℃で12h、二次乾燥を60〜100℃で12h程度行うのが望ましい。初期乾燥温度を高くし過ぎると、膜の平滑性が乏しくなる。
また、ガラス基材から固体高分子電解質膜を剥離する工程(工程4)では、水やアルコール、具体的にはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどの低級アルコールに含浸させ、膨潤させて剥離するのが好ましい。上記溶媒に含浸させ膨潤させて剥離することで、曲げ強度の低い固体高分子電解質膜においても剥離することができる。また、剥離後、固体高分子電解質膜の残存する剥離用の溶媒の乾燥は、80℃で1時間程度真空乾燥するのが好ましい。
[膜電極接合体の製造方法]
(電極触媒インク)
本発明の電極触媒インクの分散媒として使用される溶媒は、触媒粒子や高分子電解質を侵食することなく、高分子電解質の流動性の高い状態で溶解または微細ゲルとして分散できるもので特に制限はない。しかし、揮発性の液体有機溶媒が少なくとも含まれることが望ましく、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、1−プロパノ―ル、2−プロパノ―ル、1−ブタノ−ル、2−ブタノ−ル、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノ−ル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、メチルイソブチルケトン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等の極性溶剤等が使用される。また、これらの溶剤のうち二種以上を混合させたものも使用できる。
(電極触媒インク)
本発明の電極触媒インクの分散媒として使用される溶媒は、触媒粒子や高分子電解質を侵食することなく、高分子電解質の流動性の高い状態で溶解または微細ゲルとして分散できるもので特に制限はない。しかし、揮発性の液体有機溶媒が少なくとも含まれることが望ましく、特に限定されるものではないが、メタノール、エタノール、1−プロパノ―ル、2−プロパノ―ル、1−ブタノ−ル、2−ブタノ−ル、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ペンタノ−ル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、メチルイソブチルケトン、へプタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、アセトニルアセトン、ジイソブチルケトンなどのケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アニソール、メトキシトルエン、ジブチルエーテル等のエーテル系溶剤、その他ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジアセトンアルコール、1−メトキシ−2−プロパノール等の極性溶剤等が使用される。また、これらの溶剤のうち二種以上を混合させたものも使用できる。
また、溶媒として低級アルコールを用いたものは発火の危険性が高く、このような溶媒を用いる際は水との混合溶媒にするのが好ましい。高分子電解質となじみがよい水が含まれていてもよい。水の添加量は、高分子電解質が分離して白濁を生じたり、ゲル化したりしない程度であれば特に制限はない。
電極触媒インク中の固形分含有量は、多すぎると電極触媒インクの粘度が高くなるため、電極触媒層表面にクラックが入りやすくなり、また逆に少なすぎると成膜レートが非常に遅く、生産性が低下してしまうため、1〜50質量%であることが好ましい
(電極触媒層)
本発明の固体高分子電解質膜を用いて作製した膜電極接合体の製造方法において、高分子電解質で包埋した触媒担持炭素粒子は、触媒担持炭素粒子と、高分子電解質を溶媒に分散させた電極触媒インクを転写シートに塗布し、乾燥させることで得られる。
本発明の固体高分子電解質膜を用いて作製した膜電極接合体の製造方法において、高分子電解質で包埋した触媒担持炭素粒子は、触媒担持炭素粒子と、高分子電解質を溶媒に分散させた電極触媒インクを転写シートに塗布し、乾燥させることで得られる。
このとき、塗布方法としては、ドクターブレード法、ディッピング法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、スプレー法などを用いることができる。
本発明の電極触媒層の製造方法における基材としては、ガス拡散層、転写シートを用いることができる。ガス拡散層としては、ガス拡散性と導電性とを有する材質のものを用いることができる。また転写シートとしては、転写性がよい材質であればよい。
基材として転写シートを用いた場合には、固体高分子電解質膜に電極触媒層を接合後に転写シートを剥離し、高分子電解質膜の両面に電極触媒層を備える膜電極接合体とすることができる。本発明の膜電極接合体は、図3に示すように、固体高分子電解質膜1に凹部301及び凸部302とからなる線形状を有しているため、電極触媒層2との密着性がよく、発電特性が高い。
[固体高分子形燃料電池]
図4に本発明の実施の形態に係る固体高分子形燃料電池の分解模式図を示す。本発明の固体高分子形燃料電池にあっては、膜電極接合体11の電極触媒層2および電極触媒層3と対向して空気極側のガス拡散層5および燃料極側のガス拡散層4が配置される。これによりそれぞれ空気極(カソード)7及び燃料極(アノード)6が構成される。そしてガス流通用のガス流路8を備え、相対する主面に冷却水流通用の冷却水流路9を備えた導電性でかつ不透過性の材料よりなる一組のセパレータ10が配置される。燃料極側のセパレータ10のガス流路8からは燃料ガスとして、例えば水素ガスが供給される。一方、空気極側のセパレータ10のガス流路8からは、酸化剤ガスとして、例えば酸素を含むガスが供給される。そして、燃料ガスの水素と酸素ガスとを触媒の存在下で電極反応させることにより、燃料極と空気極の間に起電力を生じることができる。
図4に本発明の実施の形態に係る固体高分子形燃料電池の分解模式図を示す。本発明の固体高分子形燃料電池にあっては、膜電極接合体11の電極触媒層2および電極触媒層3と対向して空気極側のガス拡散層5および燃料極側のガス拡散層4が配置される。これによりそれぞれ空気極(カソード)7及び燃料極(アノード)6が構成される。そしてガス流通用のガス流路8を備え、相対する主面に冷却水流通用の冷却水流路9を備えた導電性でかつ不透過性の材料よりなる一組のセパレータ10が配置される。燃料極側のセパレータ10のガス流路8からは燃料ガスとして、例えば水素ガスが供給される。一方、空気極側のセパレータ10のガス流路8からは、酸化剤ガスとして、例えば酸素を含むガスが供給される。そして、燃料ガスの水素と酸素ガスとを触媒の存在下で電極反応させることにより、燃料極と空気極の間に起電力を生じることができる。
線形状を有する固体高分子電解質膜は、その線形状を空気極(カソード)側にして配置しても燃料極(アノード)側にして配置してもどちらでもよいが、アノード側に配置することがより好ましい。アノードは、随伴水によって水分がカソード側に移動するため、乾燥しやすく、固体高分子電解質膜とアノード側の電極触媒層が剥離しやすいためである。
次に、(実施例)および(比較例)について説明する。なお、本発明は、これらに限定されるものではない。
(実施例:線形状を有する固体高分子電解質膜の作製)
機械加工により、25cm2のガラス基材の中央5cm2の領域に高さ5μm、ピッチ1mmの三次元構造ラインパターンを作製した。その機械加工されたガラス基材の上に、Tgが200℃以上のスルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)とジメチルスルホキシドを用いて、固形分10wt%に設定されたS−PES溶液をキャストした。その後、初期乾燥(40℃、12時間)、二次乾燥(90℃、12時間)を行い、純水中にガラス基材ごと含水させ、剥離し、80℃で1時間真空乾燥させて、線形状を有する固体高分子電解質膜を作製した。
機械加工により、25cm2のガラス基材の中央5cm2の領域に高さ5μm、ピッチ1mmの三次元構造ラインパターンを作製した。その機械加工されたガラス基材の上に、Tgが200℃以上のスルホン化ポリエーテルスルホン(S−PES)とジメチルスルホキシドを用いて、固形分10wt%に設定されたS−PES溶液をキャストした。その後、初期乾燥(40℃、12時間)、二次乾燥(90℃、12時間)を行い、純水中にガラス基材ごと含水させ、剥離し、80℃で1時間真空乾燥させて、線形状を有する固体高分子電解質膜を作製した。
(比較例:固体高分子電解質膜の作製)
25cm2のガラス基材の上に、実施例と同様に、ジメチルスルホキシドを用いて固形分10wt%に設定されたS−PES溶液をキャストした。その後、初期乾燥(40℃、12時間)、二次乾燥(90℃、12時間)を行い、純水中にガラス基材ごと含水させ、剥離し、80℃で1時間真空乾燥させて、固体高分子電解質膜を作製した。
25cm2のガラス基材の上に、実施例と同様に、ジメチルスルホキシドを用いて固形分10wt%に設定されたS−PES溶液をキャストした。その後、初期乾燥(40℃、12時間)、二次乾燥(90℃、12時間)を行い、純水中にガラス基材ごと含水させ、剥離し、80℃で1時間真空乾燥させて、固体高分子電解質膜を作製した。
(電極触媒インクの調整)
白金担持量が50質量%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質分散溶液(ナフィオン:登録商標、Dupont社製)を溶媒中で混合し、遊星ボールミル(商品名:Pulverisette7、Fritsch社製)で分散処理を行った。ボールミルのポット、ボールにはジルコニア製のものを用いた。出発原料の組成比を白金担持カーボン粒子とナフィオン(登録商標、Dupont社製)の質量比で2:1としたものを電極触媒インクとした。
白金担持量が50質量%である白金担持カーボン触媒(商品名:TEC10E50E、田中貴金属工業製)と、20質量%高分子電解質分散溶液(ナフィオン:登録商標、Dupont社製)を溶媒中で混合し、遊星ボールミル(商品名:Pulverisette7、Fritsch社製)で分散処理を行った。ボールミルのポット、ボールにはジルコニア製のものを用いた。出発原料の組成比を白金担持カーボン粒子とナフィオン(登録商標、Dupont社製)の質量比で2:1としたものを電極触媒インクとした。
(電極触媒層の作製)
電極触媒層用インクをPTFE基材上に塗布し、ドクターブレードにより塗工した。塗工した電極触媒層を80℃で5分間乾燥させて作製した。また、電極触媒層の厚さは、白金担持量が約0.3mg/cm2になるように調整し、電極触媒層の電極面積は5cm2の正方形になるようにカッティングした。
電極触媒層用インクをPTFE基材上に塗布し、ドクターブレードにより塗工した。塗工した電極触媒層を80℃で5分間乾燥させて作製した。また、電極触媒層の厚さは、白金担持量が約0.3mg/cm2になるように調整し、電極触媒層の電極面積は5cm2の正方形になるようにカッティングした。
(膜電極接合体の作製)
5cm2の正方形に切り抜かれた電極触媒層を、実施例で作製した線形状を有する固体高分子電解質膜および比較例で作製した固体高分子電解質膜のそれぞれ両面に対面するように転写シートを配置し、130℃の条件で30分間ホットプレスして膜電極接合体を作製した。
5cm2の正方形に切り抜かれた電極触媒層を、実施例で作製した線形状を有する固体高分子電解質膜および比較例で作製した固体高分子電解質膜のそれぞれ両面に対面するように転写シートを配置し、130℃の条件で30分間ホットプレスして膜電極接合体を作製した。
(線形状を有する固体高分子電解質膜との比較)
膜電極接合体にガス拡散層としてのカーボンクロスを挟むように貼り合わせ、発電評価セル(エヌエフ回路設計ブロック社製)内に設置した。これを燃料電池測定装置(商品名:GFT−SG1、東陽テクニカ社製)を用いて、セル温度80℃で、以下に示す運転条件で電流電圧測定を行った。燃料ガスとして水素、酸化剤ガスとして空気を、それぞれ500cc/min、1000cc/minで行った。加湿器は、アノード60%RH、カソード60%RHとした。
膜電極接合体にガス拡散層としてのカーボンクロスを挟むように貼り合わせ、発電評価セル(エヌエフ回路設計ブロック社製)内に設置した。これを燃料電池測定装置(商品名:GFT−SG1、東陽テクニカ社製)を用いて、セル温度80℃で、以下に示す運転条件で電流電圧測定を行った。燃料ガスとして水素、酸化剤ガスとして空気を、それぞれ500cc/min、1000cc/minで行った。加湿器は、アノード60%RH、カソード60%RHとした。
その結果、線形状を有する固体高分子電解質膜を用いた膜電極接合体の方が、界面の抵抗が下がり、また、発電特性が向上した。
本発明は、電気自動車、携帯電話、自動販売機、水中ロボット、潜水艦、宇宙船、水中航走体、水中基地用電源等に用いる固体高分子形燃料電池に利用できる。特に低加湿での発電特性を要求される車載用固体高分子電解質膜に有用である。
100 基材
101 基材の凹部
102 基材の凸部
1 固体高分子電解質膜
2 電極触媒層
3 電極触媒層
4 ガス拡散層
5 ガス拡散層
6 燃料極(アノード)
7 空気極(カソード)
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレータ
11 膜電極接合体
301 固体高分子電解質膜の凹部
302 固体高分子電解質膜の凸部
101 基材の凹部
102 基材の凸部
1 固体高分子電解質膜
2 電極触媒層
3 電極触媒層
4 ガス拡散層
5 ガス拡散層
6 燃料極(アノード)
7 空気極(カソード)
8 ガス流路
9 冷却水流路
10 セパレータ
11 膜電極接合体
301 固体高分子電解質膜の凹部
302 固体高分子電解質膜の凸部
Claims (8)
- 少なくとも一方の面に凹部と凸部とからなる線形状を有し、ガラス転移温度が150℃以上の固体高分子電解質を含むことを特徴とする固体高分子電解質膜。
- 前記凹部の底面と前記凸部の上面との距離が、1μm以上であり、かつ前記固体高分子電解質膜の厚みの1/5以下であることを特徴とする請求項1に記載の固体高分子電解質膜。
- 一方の面に凹部と凸部とからなる線形状を有する基材の、前記線形状を有する面に、ガラス転移温度が150℃以上の固体高分子電解質を含む塗液を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥させて固体高分子電解質膜を形成する工程と、
前記固体高分子電解質膜を前記基材から剥離する工程と
を具備することを特徴とする固体高分子電解質膜の製造方法。 - 前記凸部の幅が、50μm以上であり、前記凸部の高さが、10μm以上1000μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の固体高分子電解質膜の製造方法。
- 前記線形状が、切削刃を用いた機械加工により形成されることを特徴とする請求項3又は4に記載の固体高分子電解質膜の製造方法。
- 前記基板が、ガラス基板もしくはシリコンウエハであることを特徴とする請求項3乃至5のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜の製造方法。
- 請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の固体高分子電解質膜を有することを特徴とする膜電極接合体。
- 請求項7に記載の膜電極接合体を有することを特徴とする燃料電池。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2010063883A JP2011198603A (ja) | 2010-03-19 | 2010-03-19 | 固体高分子電解質膜およびその製造方法、それを用いた膜電極接合体ならびに燃料電池 |
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- 2010-03-19 JP JP2010063883A patent/JP2011198603A/ja active Pending
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