JP2011196530A - 変速機の潤滑油循環構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】潤滑油がデフリングギヤの回転抵抗となるのを防止することにより、掻き揚げ損失を低減できる変速機の潤滑油循環構造を提供する。
【解決手段】デフ室B内の、デファレンシャル機構8のデフリングギヤ8aの外周部に臨む空隙部には、該デフリングギヤ8aの回転により掻き揚げられた潤滑油を貯留する第1貯留部3gが設けられ、ミッション室A内の底面空隙部には第2貯留部3hが設けられ、第1貯留部3gには、該第1貯留部3g内の潤滑油を分離壁3aを伝って第2貯留部3hに流す連通孔3iが設けられ、第2貯留部3hには、該第2貯留部3h内の潤滑油をデフ室B内に戻す戻し通路3jが設けられている。
【選択図】図3

Description

本発明は、トランスミッション機構が内蔵された変速機ケースをミッション室とデフ室とに分離壁により分離した変速機の潤滑油循環構造に関する。
この種の変速機の潤滑油循環構造として、例えば、特許文献1には、変速機ケースの底部を仕切り壁で前室,後室に区画し、仕切り壁に油穴を形成するとともに、該油穴に切り屑,ダスト等を除去する網を配設した構造のものが提案されている。この構造では、カウンタシャフトの歯車により掻き揚げた潤滑油を変速機ケース内の上部に設けられた油樋を介して後室に流し、該後室から油穴を通って前室に流す際に網によりダスト等を捕捉するようにしている。
実開平6−59654号公報
ところで、前記従来の循環構造は、変速機ケースのミッション室内で潤滑油を循環させる構造であるので、ミッション室内に配設された第1速歯車や後退歯車等の潤滑作用が得られる。しかしデフリングギヤが掻き揚げた潤滑油の貯留についての言及はなく、ミッション室内の潤滑油レベルが高いためデフリングギヤの回転抵抗を低減できない。
本発明は、前記従来の状況に鑑みてなされたもので、走行時にはデフリングギヤが掻き揚げた潤滑油の貯留容積を拡大して回転抵抗を低減し、車両停止から発進時には適正な油面レベルを確保できる変速機の潤滑油循環構造を提供することを課題としている。
本発明は、トランスミッション機構が内蔵された変速機ケースを、ミッション室と、デファレンシャル機構に連なるデフ室とに分離壁により分離した変速機の潤滑油循環構造であって、前記デフ室内のケース内壁に、前記デファレンシャル機構のデフリングギヤの回転により掻き揚げられた潤滑油を貯留する第1貯留部が凹設され、前記ミッション室内の底面空隙部には第2貯留部が設けられ、前記第1貯留部には、該第1貯留部内の潤滑油を前記分離壁を伝って前記第2貯留部に流下させる連通路が設けられ、前記第2貯留部には、該第2貯留部内の潤滑油を前記デフ室内に戻す戻し通路が設けられており、前記第1貯留部のオイル進入開口部を前記デフリングギヤの外周歯面の一部が覆っていることを特徴としている。
本発明に係る潤滑油循環構造によれば、デフ室内のケース内壁にデフリングギヤが掻き揚げた潤滑油を貯留する第1貯留部を凹設し、ミッション室内の分離壁近傍の底面空隙部に第2貯留部を設けたので、変速機ケースを大型化することなく、潤滑油貯留部の容積を拡大でき、走行時には第1,第2貯留部に掻き揚げ油を貯留することで油面レベルを低くしてデフリングギヤの回転抵抗を軽減できる。
また第1貯留部内の潤滑油を分離壁を伝って第2貯留部に流す連通路を設けるとともに、第2貯留部内の潤滑油をデフ室内に戻す戻し通路を設けたので、車両停止時には、デフリングギヤが掻き揚げた潤滑油を第1貯留部から第2貯留部に逃がすとともに、デフ室に戻すことで、適正な油面レベルを確保でき、発進時の潤滑性を確保することができる。
本発明の実施例1による自動車の変速機の概略構成図である。 前記変速機の平面図である。 前記変速機の側面図である。 前記変速機の第1貯留部の断面図(図3のIV-IV線断面図)である。
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1ないし図4は、本発明の実施例1による変速機の潤滑油循環構造を説明するための図である。
図において、1は自動車のエンジンEに一体に結合されたマニュアル式の変速機1を示している。この変速機1は、前記エンジンEに接続されたクラッチケース2と、該クラッチケース2に接続された変速機ケース3と、該変速機ケース3に接続されたデフケース4とを備えている。
前記クラッチケース2内には、不図示のクラッチペダルの踏込み操作によりエンジン動力を後述する入力軸5に伝達又は遮断するクラッチ機構2aが内蔵されている。
前記変速機ケース3内には、トランスミッション機構7が内蔵されている。このトランスミッション機構7は、前記クラッチ機構2aを介してエンジン動力が伝達される前記入力軸5と、該入力軸5の回転が前進5段,後進1段の何れかの変速ギヤ列7a,7a・・を介して伝達される出力軸6とを有する。
前記デフケース4内には、デファレンシャル機構8が内蔵されている。該デファレンシャル機構8のデフリングギヤ8aには、前記出力軸6の出力側端部に固定されたドライブギヤ6aが噛合している。前記デファレンシャル機構8の回転軸8b,8bには、車軸8c,8cを介して車輪9,9が接続されている。
前記デファレンシャル機構8は、図2に示すように、前記デフリングギヤ8aがボルト締め固定されたデフハウジング11内に差動歯車機構12を収容し、該デフハウジング11を4つの軸受12aにより支持した構造を有する。該差動歯車機構12に前記回転軸8b,8bが連結されている。
前記変速機ケース3内には、前記何れかの変速ギヤ列7aを選択するための3本のシフト軸13と、不図示のシフト操作部材に連結され、縦向きに挿入配置されたコントロール軸14と、該コントロール軸14に連結されたシフト・セレクト機構15とが配置されている。
このシフト・セレクト機構15は、前記シフト操作部材をニュートラル位置から前後,左右に揺動操作することにより、前記各シフト軸13を介してトランスミッション機構7を何れかの変速段に切り替える。
前記変速機ケース3は、前記トランスミッション機構7が内蔵されたミッション室Aと、前記デファレンシャル機構8に連なるデフ室Bとに分離壁3aにより分離されている。
前記分離壁3aは、前記差動歯車機構12を囲むように形成された円弧部3bと、該円弧部3bに続いて概ね放射状に延びるように形成された第1〜第3リブ3c,3d,3eとを有する。
そして前記変速機ケース3のデフ室B内の内壁には、前記デフリングギヤ8aの回転により掻き揚げられた潤滑油の一部を貯留する第1貯留部3gが凹設されている。
この第1貯留部3gは、前記分離壁3aの円弧部3bと第1,第2リブ3c,3dとで囲まれた空間により形成されており、該変速機ケース3の入力軸方向に略全長に渡って延びている。
前記第1貯留部3gのデフケース側に開口するオイル進入開口3fの略下半部は、前記デフリングギヤ8aの外周部側面により覆われている。該デフリングギヤ8aの外周部側面と、オイル進入開口3fとの間、及び第1リブ3cの先端面3c′との間には、図2に示す平面視で僅かな隙間t1が設けられている。一方、前記デフリングギヤ8aの外周部側面と前記第2リブ3dの先端面3d′との間には比較的大きな隙間t2が設けられている。これによりデフリングギヤ8aが反時計回りに回転すると、デフケース4の底部に充填された潤滑油が掻き揚げられ、前記隙間t2部分を通って第1リブ3cの内壁面に当たり、第1貯留部3g内に進入する。
前記変速機ケース3のミッション室A内の前記分離壁3a近傍の底面空隙部には第2貯留部3hが形成されている。この第2貯留部3hは、変速機ケース3の底壁3kと分離壁3aとの間に形成され、入力軸方向に略全長に渡って延びている。
前記第2貯留部3h内の底壁3kには磁石18が配置されている。該磁石18は第2貯留部3h内を流れる潤滑油に含まれる金属粉等のダストを吸着させて捕捉するものである。
前記第1貯留部3gの第1リブ3cには、該第1貯留部3g内の潤滑油を前記分離壁3aを伝って前記第2貯留部3hに流下させる連通孔3iが形成されている。該連通孔3iは、ミッション室A内の分離壁3aの第1リブ3cの下端近傍に臨む位置に配置されている。
前記連通孔3iは、前記第1リブ3cの上下方向中央部にミッション室A側に断面コ字状なすように形成された膨出部3mに上方からドリルによる穴あけ加工を施すことにより形成されたものである。
前記第2貯留部3hの分離壁3aのデフケース側端部には、第2貯留部3h内の潤滑油をデフ室Bに戻す戻し通路3jが形成されている。この戻し通路3jは、分離壁3aの底壁3kとの接続部に形成されている。
車両の走行中にデフリングギヤ8aの回転により掻き揚げられた潤滑油は、差動歯車機構12及び各軸受12a等に供給され、その一部が第1貯留部3gに貯留される。該第1貯留部3gに貯留された潤滑油の油面が連通孔3iに達すると、潤滑油は連通孔3iからミッション室A側の分離壁3aを伝って第2貯留部3hに流下開始し、該第2貯留部3hに貯留され、これによりミッションケース内の油面レベルが低くなる。なお第2貯留部3h内の潤滑油は、戻し通路3jを介してデフ室B内に流入する。
車両停止時には、第1貯留部3gの潤滑油がオイル進入開口3fからデフ室Bに戻るとともに、第2貯留部3hの潤滑油がデフ室Bに戻る。これにより発進時の適正油面が確保される。
このように本実施例によれば、デフ室B内の内壁の、デフリングギヤ8aの外周部側面に臨む部位に該デフリングギヤ8aが掻き揚げた潤滑油を貯留する第1貯留部3gを形成し、ミッション室A内の分離壁3a近傍の底面空隙部に第2貯留部3hを形成したので、貯留容積を増大でき、走行中には、掻き揚げた潤滑油を貯留して油面レベルを下げることができ、デフリングギヤ8aの回転抵抗を低減できる。
また、第1貯留部3g内の潤滑油を分離壁3aを伝って第2貯留部3hに流下させる連通孔3iを形成するとともに、第2貯留部3h内の潤滑油をデフ室B内に戻す戻し通路3jを形成したので、車両停止時には、ミッションケース内の油面レベルを確保でき、発進時の潤滑性を確保できる。
また本実施例では、変速機ケース3の前記デフ室B及びミッション室A内の空隙部を利用して潤滑油を貯留する第1,第2貯留部3g,3hを設けたので、変速機ケース3を大型化することなく、走行中における潤滑油の貯留容積を確保できるとともに、発進時の油面レベルを確保することができる。
本実施例では、前記第1貯留部3gを、既存の分離壁3aの円弧部3bと各第1,第2リブ3c,3dを利用して形成したので、新しく貯留部を形成する必要がなく、コストの上昇を抑制できる。また第2貯留部3hを、分離壁3aと底壁3kとの間を利用して形成したので、この点からもコストの上昇を抑制できる。
さらに本実施例では、前記第2貯留部3h内に磁石18を配置したので、潤滑油に含まれる金属粉等のダストの捕捉性能を向上でき、前述の網でダストを捕捉する場合の目詰まりを防止できる。
1 変速機
3 変速機ケース
3a 分離壁
3g 第1貯留部
3h 第2貯留部
3i 連通路
3j 戻し通路
7 トランスミッション機構
8 デファレンシャル機構
8a デフリングギヤ
A ミッション室
B デフ室

Claims (1)

  1. トランスミッション機構が内蔵された変速機ケースを、ミッション室と、デファレンシャル機構に連なるデフ室とに分離壁により分離した変速機の潤滑油循環構造であって、
    前記デフ室内のケース内壁に、前記デファレンシャル機構のデフリングギヤの回転により掻き揚げられた潤滑油を貯留する第1貯留部が凹設され、
    前記ミッション室内の底面空隙部には第2貯留部が設けられ、
    前記第1貯留部には、該第1貯留部内の潤滑油を前記分離壁を伝って前記第2貯留部に流下させる連通路が設けられ、
    前記第2貯留部には、該第2貯留部内の潤滑油を前記デフ室内に戻す戻し通路が設けられており、
    前記第1貯留部のオイル進入開口部を前記デフリングギヤの外周歯面の一部が覆っている
    ことを特徴とする変速機の潤滑油循環構造。
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