JP2011196490A - アイドルストップ車の発進クラッチ制御装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】クランキング不良等によってエンジン完爆が遅れた場合でも、ベルト滑り及びショック発生を防止しながら発進クラッチを係合できるアイドルストップ車の発進クラッチ制御装置を提供する。
【解決手段】クラッチ伝達トルクがベルト伝達トルクを上回らないように目標クラッチ圧を設定してクラッチ圧を制御する第1工程と、クラッチ圧を所定の時間勾配をもって上昇させる第2工程と、クラッチ圧を締結状態まで上昇させる第3工程とを順次実施すべく所定の設定時間を設定し、アイドルストップ復帰条件を満足した後、エンジンの完爆遅れが生じた場合には、完爆遅れ時間を計測し、この完爆遅れ時間に応じて第1工程の設定時間Bを延長する。
【選択図】 図4
【解決手段】クラッチ伝達トルクがベルト伝達トルクを上回らないように目標クラッチ圧を設定してクラッチ圧を制御する第1工程と、クラッチ圧を所定の時間勾配をもって上昇させる第2工程と、クラッチ圧を締結状態まで上昇させる第3工程とを順次実施すべく所定の設定時間を設定し、アイドルストップ復帰条件を満足した後、エンジンの完爆遅れが生じた場合には、完爆遅れ時間を計測し、この完爆遅れ時間に応じて第1工程の設定時間Bを延長する。
【選択図】 図4
Description
本発明はアイドルストップ車の発進クラッチ制御装置、特にアイドルストップ状態からの発進時における発進クラッチの制御装置に関するものである。
従来より、車両停止時にエンジンを自動停止させ、停車中の無駄な燃料消費や排出ガスの発生を抑えるアイドルストップ車が知られている。このようなアイドルストップ車におけるエンジン停止条件としては、車速零、アクセルオフ、ブレーキオンなどがあり、エンジンの再始動条件(復帰条件)としては、ブレーキオフ、アクセルオンなどがある。
アイドルストップ車において、エンジンによって駆動されるオイルポンプと、出力軸が駆動輪と連結されたベルト式無段変速機と、エンジンと無段変速機との間に設けられた発進クラッチと、オイルポンプが発生する油圧に基づいて、無段変速機及び発進クラッチに油圧を供給する油圧制御装置とを備えた車両がある。このような車両では、アイドルストップに伴いオイルポンプも停止するため、アイドルストップ中は無段変速機や発進クラッチへの供給油圧がなくなる。そのため、アイドルストップ状態から発進しようとすると、エンジン駆動状態から発進する場合と比べて、種々の問題が発生する。
図6はアイドルストップ復帰(エンジン再始動)時の発進クラッチの係合制御の一例を示す。(a)はエンジン回転数、(b)はベルト挟圧、(c)は通常時のクラッチ圧、(d)は完爆遅延時のクラッチ圧の各時間変化を示す。時刻t1でエンジン再始動条件が成立してアイドルストップ復帰指令が出ると、クランキングが実施され、通常時は時刻t2でエンジンが完爆し、エンジン回転数が急上昇する。セカンダリプーリには所定のベルト挟圧力を発生させるための油圧が供給され、発進クラッチのクラッチ圧は所定の目標クラッチ圧に近づくように制御される。目標クラッチ圧の設定方法としては、定圧出力基準時間Bの間は一定の初期圧に設定し、定圧出力基準時間Bの終了と共に一定時間勾配での昇圧制御(スイープ制御)を開始するのが一般的である。しかし、クランキング期間中はオイルポンプの吐出圧自体が低く、ベルト挟圧力の上昇が遅れるので、クラッチ伝達トルクが一時的にベルト伝達トルクを越え、ベルト滑りが発生する可能性がある。
そこで、図6の(c)では、ベルト挟圧力が低いクランキング期間中は、クラッチ伝達トルクがベルト伝達トルクを越えないように目標クラッチ圧の上限を設定し、ベルト滑りを抑制している。時刻t2でクランキングが終了すると、ベルト挟圧力も上昇するので、目標クラッチ圧は初期圧に保持され、定圧出力基準時間Bが終了する時刻t3まで継続される。時刻t3以後はスイープ制御へ以降し、実クラッチ圧も目標クラッチ圧に追従して上昇する。時刻t4で2段目のスイープ制御へ以降し、時刻t5で発進クラッチの制御を終了する。タービン回転数センサ(発進クラッチの入力回転数センサ)を備えていない無段変速機の場合、上述のように定圧出力基準時間やスイープ切替時間等は予め設定されている。
上述の説明は、アイドルストップ復帰指令に伴い短時間でエンジンが完爆した場合であるが、(a)に破線で示すようにクランキング不良によってエンジン完爆が遅れることがある。その場合には、通常のアイドルストップ復帰時よりオイルポンプの吐出圧の立ち上がりが遅れるので、ベルト挟圧にも一層の遅れが生じる。特に、クランキング期間が定圧出力基準時間Bより長くなると、エンジン完爆の前に強制的にスイープ制御を開始するため、(d)のように時刻t3で目標クラッチ圧がステップ状に上昇することになる。その結果、目標クラッチ圧に対して実クラッチ圧が追従できなくなり、エンジンの完爆につれてベルト挟圧と共に実クラッチ圧が急激に上昇した時、不快なショックが発生する可能性がある。
特許文献1には、アイドルストップ復帰時の発進クラッチへ初期圧を供給する際に、油圧の供給速度を速める急速増圧制御を実行すると共に、急速増圧制御が短時間で連続して行われると判断されたときには、急速増圧制御の実行に制限を加えるものが開示されている。
また、特許文献2には、ベルト式無段変速機と発進クラッチとを直列に設けたアイドルストップ車において、エンジン再始動から所定時間経過後まで、発進クラッチの係合力が車両のクリープ力以上に上昇することを阻止する係合阻止手段を有し、所定時間を無段変速機のプライマリプーリ及びセカンダリプーリの油圧が立ち上がる時間に合わせて設定することで、ベルト滑りを抑制するものが開示されている。
特許文献1及び2には、アイドルストップ復帰時における制御において、油路内に残圧があるか否かを考慮する点は開示されているが、特許文献1では発進クラッチの急速増圧制御と無段変速機のベルト挟圧との関係について全く触れておらず、ベルト滑りを有効に防止できない。一方、特許文献2では、発進クラッチの係合力の上昇を遅らせる所定時間を、無段変速機のプライマリプーリ及びセカンダリプーリの油圧が立ち上がる時間に合わせて設定しているが、クランキング不良等があると、プライマリプーリ及びセカンダリプーリの油圧が立ち上がる時間は一定せず、クランキング不良時のベルト滑り又はショック発生を防止できるものではない。
本発明の目的は、クランキング不良等によってエンジン完爆が遅れた場合でも、ベルト滑り及びショック発生を防止しながら発進クラッチを係合できるアイドルストップ車の発進クラッチ制御装置を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明は、エンジンと、所定のアイドルストップ条件を満足したときにエンジンを自動停止させ、所定のアイドルストップ復帰条件を満足したときにエンジンを再始動させるエンジン制御装置と、前記エンジンによって駆動されるオイルポンプと、エンジン動力を駆動輪に伝達するベルト式無段変速機と、前記エンジンと前記無段変速機との間に設けられた発進クラッチと、前記オイルポンプが発生する油圧に基づいて、前記無段変速機及び前記発進クラッチに油圧を供給する油圧制御装置と、前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、前記無段変速機のベルト挟圧を検出するベルト挟圧検出手段と、を備えたアイドルストップ車において、前記油圧制御装置は、前記検出されたベルト挟圧からベルト伝達トルクを計算する伝達トルク計算手段と、前記発進クラッチのクラッチ圧を制御するクラッチ制御手段とを備え、前記クラッチ制御手段は、クラッチ伝達トルクが前記計算されたベルト伝達トルクを上回らないように目標クラッチ圧を設定してクラッチ圧を制御する第1工程と、クラッチ圧を所定の時間勾配をもって上昇させる第2工程と、クラッチ圧を締結状態まで上昇させる第3工程とを順次実施すべく所定の設定時間を設定し、前記アイドルストップ復帰条件を満足した後、前記エンジンの完爆遅れが生じた場合に、完爆遅れ時間を計測し、当該完爆遅れ時間に応じて前記第1工程の設定時間を延長することを特徴とする、アイドルストップ車の発進クラッチ制御装置を提供する。
発進クラッチの入力回転数センサ又は出力回転数センサを備えていない無段変速機の場合、クラッチ圧は予め設定された時間に基づいて制御される。つまり、目標クラッチ圧を設定してクラッチ圧を制御する第1工程と、クラッチ圧を所定の時間勾配をもって上昇させる第2工程と、クラッチ圧を締結状態まで上昇させる第3工程とを、それぞれ設定時間だけ順次実施する。アイドルストップ復帰時には、第1工程の目標クラッチ圧を一定値とすると、過渡的にベルトが滑る可能性があるので、クラッチ伝達トルク容量がベルト伝達トルク容量を上回らないように発進クラッチの目標クラッチ圧を設定し、ベルト滑りを防止している。
アイドルストップ復帰に伴ってエンジンが通常通り完爆すれば問題はないが、クランキング不良により完爆が遅れると、その分だけベルト挟圧の上昇が遅れると共に、目標クラッチ圧がステップ状に変化し、実クラッチ圧が追従できなくなくなる可能性がある。そこで、本発明ではアイドルストップ復帰条件を満足した後、エンジンの完爆遅れ時間を計測し、この完爆遅れ時間に応じて第1工程の設定時間を延長することで、目標クラッチ圧がステップ状に変化しないようにしている。その結果、目標クラッチ圧と実クラッチ圧との乖離を軽減でき、急激なクラッチ圧の上昇によるショックの発生を抑制できる。
ベルト伝達トルクの計算方法は任意である。例えば油圧センサで無段変速機のセカンダリプーリの油圧を検出し、この検出された油圧からベルト挟圧を計算で求め、さらにベルト挟圧からベルト伝達トルクを求めてもよい。また、ベルト挟圧と相関関係のある値、例えばライン圧を測定することで、ベルト挟圧を推定してもよい。
以上のように、本発明によれば、アイドルストップ復帰直後の第1工程において、クラッチ伝達トルク容量がベルト伝達トルク容量を上回らないように発進クラッチの目標クラッチ圧を設定しているので、ベルト滑りを未然に防止できる。また、エンジン完爆が遅れた場合には、その完爆遅れ時間に応じて第1工程の設定時間を延長するので、目標クラッチ圧と実クラッチ圧とが乖離せず、急激なクラッチ圧の上昇によるショックの発生を抑制できる。
図1は本発明に係るアイドルストップ車の構成の一例を示す。エンジン1の出力軸1aは、無段変速機2を介してドライブシャフト32に接続されている。無段変速機2には、トルクコンバータ3、変速装置4、油圧制御装置7及びエンジン1により駆動されるオイルポンプ6などが設けられている。
無段変速機2は、トルクコンバータ3のタービン軸5の回転を正逆切り替えてプライマリ軸10に伝達する前後進切替装置8、プライマリプーリ11、セカンダリプーリ21及び両プーリ間に巻き掛けられたVベルト15を有する変速装置4、セカンダリ軸20の動力をドライブシャフト32に伝達するデファレンシャル装置30などで構成されている。タービン軸5とプライマリ軸10とは同一軸線上に配置され、セカンダリ軸20とドライブシャフト32とがタービン軸5に対して平行でかつ非同軸に配置されている。
前後進切替装置8は、遊星歯車機構80と逆転ブレーキB1と直結クラッチC1とで構成され、逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1が本発明における発進クラッチに相当する。逆転ブレーキB1と直結クラッチC1は、それぞれ湿式多板式のブレーキ及びクラッチである。遊星歯車機構80のサンギヤ81が入力部材であるタービン軸5に連結され、リングギヤ82が出力部材であるプライマリ軸10に連結されている。遊星歯車機構80はシングルピニオン方式であり、逆転ブレーキB1はピニオンギヤ83を支えるキャリア84とトランスミッションケースとの間に設けられ、直結クラッチC1はキャリア84とサンギヤ81との間に設けられている。直結クラッチC1を解放して逆転ブレーキB1を締結すると、タービン軸5の回転が逆転され、かつ減速されてプライマリ軸10へ伝えられる。そして、セカンダリ軸20を経てドライブシャフト32がエンジン回転方向と同方向に回転するため、前進走行状態となる。逆に、逆転ブレーキB1を解放して直結クラッチC1を締結すると、キャリア84とサンギヤ81とが一体に回転するので、タービン軸5とプライマリ軸10とが直結される。そして、セカンダリ軸20を経てドライブシャフト32がエンジン回転方向と逆方向に回転するため、後進走行状態となる。
変速装置4のプライマリプーリ11は、プライマリ軸10上に一体に固定された固定シーブ11aと、プライマリ軸10上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ11bとを備えている。可動シーブ11bの背後には、プライマリ軸10に固定されたシリンダ12が設けられ、可動シーブ11bとシリンダ12との間にプライマリ油室13が形成されている。この油室13への供給油量を制御することにより、変速制御が実施される。
セカンダリプーリ21は、セカンダリ軸20上に一体に固定された固定シーブ21aと、セカンダリ軸20上に軸方向移動自在に、かつ一体回転可能に支持された可動シーブ21bとを備えている。可動シーブ21bの背後には、セカンダリ軸20に固定されたピストン22が設けられ、可動シーブ21bとピストン22との間にセカンダリ油室23が形成されている。この油室23への供給油圧を制御することにより、トルク伝達に必要なベルト挟圧力が与えられる。なお、セカンダリ油室23には初期挟圧力を与えるバイアススプリングを配置してもよい。セカンダリ油室23の近傍の供給油路中には、後述するようにセカンダリ油室23の油圧を検出する油圧センサ108が設けられている。
セカンダリ軸20の一方の端部はエンジン側に向かって延び、この端部に出力ギヤ27が固定されている。出力ギヤ27はデファレンシャル装置30のリングギヤ31に噛み合っており、デファレンシャル装置30から左右に延びるドライブシャフト32に動力が伝達され、車輪が駆動される。
エンジン1及び無段変速機2は電子制御装置100によって制御される。電子制御装置100には、エンジン回転数センサ101、車速(又はセカンダリプーリ回転数)センサ102、スロットル開度(又はアクセル開度)センサ103、シフトポジションセンサ104、プライマリプーリ回転数(又はタービン回転数)センサ105、ブレーキ信号センサ106、CVTの作動油温センサ107、及びセカンダリプーリ21への供給油圧を検出する油圧センサ108から信号が入力されている。入力信号としては、そのほかに、バッテリ電圧、路面傾斜角、アイドル信号、スタート信号、エンジン水温、吸入空気量、エアコン信号、イグニッション信号などを入力してもよい。なお、図1では説明を簡単にするため、単一の電子制御装置100によってエンジン1と無段変速機2の両方を制御する例を示したが、実際には個別の電子制御装置によって制御され、両電子制御装置は通信用バスによって相互に連携している。
電子制御装置100は、所定の停止条件が成立したときにエンジン1を停止(アイドルストップ)させ、所定の復帰条件が成立したときにエンジン1を再始動させるアイドルストップ制御を実施する。アイドルストップを許可する条件としては、例えば車両停止かつブレーキON(ブレーキペダルの踏み込み)などがある。但し、エンジン水温が低いときや、電気負荷が大きいとき、アクセルペダルが踏まれているときには、アイドルストップを許可しない。一方、アイドルストップ復帰(エンジン再始動)条件としては、例えばブレーキOFF、アクセルペダル踏み込み、車速信号の入力などがある。アイドルストップ許可条件及び復帰条件は公知であるため、ここでは詳しい説明を省略する。
電子制御装置100は、油圧制御装置7に内蔵されたソレノイド弁を制御している。油圧制御装置7は、オイルポンプ6、プライマリ油室13、セカンダリ油室23、逆転ブレーキB1、直結クラッチC1と配管を介して接続されている。電子制御装置100は、車速とスロットル開度とに応じて予め設定された変速マップに従って目標プライマリ回転数を決定し、油圧制御装置7内のソレノイド弁DS1,DS2を制御することによって、プライマリ油室13への供給油量を調整し、プライマリ回転数を目標値へと変速制御すると共に、リニアソレノイド弁SLSを制御することによって、セカンダリ油室23の油圧(ベルト挟圧力)をベルト滑りを発生させない値へと制御している。さらに、油圧制御装置7は、リニアソレノイド弁SLSを用いて逆転ブレーキB1及び直結クラッチC1への供給油圧を制御する機能も有しており、この制御には後述するアイドルストップ復帰時の逆転ブレーキ(発進クラッチ)B1の係合制御も含まれる。
図2は油圧制御装置7の一例の油圧回路図である。図2において、71はレギュレータ弁、72はクラッチモジュレータ弁、73はソレノイドモジュレータ弁、74はガレージシフト弁、75はマニュアル弁、76はアップシフト用レシオ制御弁、77はダウンシフト用レシオ制御弁、78はレシオチェック弁、79は挟圧コントロール弁である。また、リニアソレノイド弁SLSはライン圧の調圧制御、逆転ブレーキB1及び直結クラッチC1の過渡制御、及びセカンダリプーリ21の油室23の調圧制御を行うため、ソレノイド圧Pslsを出力する。DS1はアップシフト用信号圧Pds1 を調圧制御するアップシフト用ソレノイド弁、DS2はダウンシフト用信号圧Pds2 を調圧制御するダウンシフト用ソレノイド弁である。ソレノイド弁DS1,DS2は、ガレージシフト弁74を過渡圧側に切り替えるための信号圧を発生するソレノイド弁としての機能も有する。本実施形態では、リニアソレノイド弁SLSは常開型のリニアソレノイド弁、ソレノイド弁DS1,DS2は共に常閉型のデューティソレノイド弁を使用している。
図2では、プライマリプーリ11、セカンダリプーリ21、逆転ブレーキB1及び直結クラッチC1に関する油圧回路だけを示してあるが、トルクコンバータ3に内蔵されたロックアップクラッチ3aの油圧回路等については、本発明と直接関係がないので省略する。なお、油圧制御装置7の油圧供給源は、エンジン1によって駆動されるオイルポンプ6のみであり、電動ポンプなどの格別のオイルポンプは備えていない。
レギュレータ弁71は、オイルポンプ6の吐出圧を所定のライン圧PL に調圧する弁であり、信号ポート71aに入力されるソレノイド圧Pslsに応じてライン圧PL を調圧している。
クラッチモジュレータ弁72は、直結クラッチC1および逆転ブレーキB1への供給圧(PC1,PB1)の元圧となるクラッチモジュレータ圧Pcmを出力する弁である。入力ポート72aにはライン圧PLが入力され、出力ポート72bからクラッチモジュレータ圧Pcmが出力される。また、第1信号ポート72cには出力圧がスプリング荷重と対向するようにフィードバックされている。そのため、クラッチモジュレータ圧Pcmは、スプリング荷重に相当する一定圧に調圧される。
ソレノイドモジュレータ弁73は、クラッチモジュレータ圧Pcmを調圧して、スプリング荷重に相当する一定のソレノイドモジュレータ圧Psmを発生する弁である。このソレノイドモジュレータ圧Psmは、アップシフト用ソレノイド弁DS1及びダウンシフト用ソレノイド弁DS2の元圧となると共に、ガレージシフト弁74及び挟圧コントロール弁79にも供給されている。
マニュアル弁75はシフトレバーと機械的に連結された手動操作弁であり、P、R、N、D、S、Bの各レンジに切り換えられ、ガレージシフト弁74から供給される油圧を直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1に選択的に導くものである。入力ポート75aにはガレージシフト弁74から油圧が供給され、出力ポート75bは直結クラッチC1と接続され、出力ポート75c,75dは共に逆転ブレーキB1に接続されている。マニュアル弁75は、Rレンジでは直結クラッチC1に油圧を供給するとともに逆転ブレーキB1の油圧をドレーンし、D、S、Bレンジでは逆転ブレーキB1に油圧を供給するとともに直結クラッチC1の油圧をドレーンし、非走行レンジであるP、Nレンジでは直結クラッチC1及び逆転ブレーキB1の油圧を共にドレーンする。
アップシフト用レシオ制御弁76及びダウンシフト用レシオ制御弁77は、アップシフト用信号圧Pds1 とダウンシフト用信号圧Pds2 との相対関係によってプライマリ油室13に給排される作動油量を調整する流量制御弁である。また、レシオチェック弁78は、閉じ込み制御のために、プライマリ油室13を流量制御から油圧制御に切り替えて、プライマリ油室13の油圧とセカンダリ油室23の油圧との比率を予め設定された関係に保持し、変速比を保持するための弁である。アップシフト用レシオ制御弁76及びダウンシフト用レシオ制御弁77については、例えば特開2007−263207号公報等によって公知であるため、説明を省略する。
挟圧コントロール弁79は、セカンダリ油室23の油圧を制御するための圧力制御弁であり、スプリングによって一方向に付勢されたスプールを備えている。スプリング荷重と対向する一端側の信号ポート79aにソレノイドモジュレータ弁73から一定圧Psmが供給されている。入力ポート79bにはライン圧PLが供給されており、出力ポート79cはセカンダリ油室23と接続され、出力圧はポート79dにフィードバックされている。スプリングが収容された他端側の信号ポート79eにはソレノイド圧Pslsが供給される。そのため、信号ポート79eに入力されたソレノイド圧Psls を所定の増幅度で増幅した油圧をセカンダリ油室23に供給することができる。セカンダリ油室23の油圧(セカンダリ圧)は油圧センサ108によって検出され、検出された油圧に基づいてベルト伝達トルクを計算で求めることができる。ベルト伝達トルクの計算方法としては、例えば油圧センサ108によってセカンダリ油圧を検出し、そのセカンダリ油圧と受圧面積とからベルト挟圧を計算し、さらにベルト挟圧、ベルトとプーリとの摩擦係数、ベルト巻き掛け径などからベルト伝達トルクを計算することができる。
ガレージシフト弁74は、シフトレバーをN→D又はN→Rへ切り替えた時(ガレージシフト時)に、直結クラッチC1及び逆転ブレーキB1への供給圧を過渡制御できるように油路を切り替えるための切替弁である。図2の中心線より右側が過渡状態、左側が保持状態である。スプリング74aによって一方向に付勢されたスプール74bを備えており、スプリング荷重と同方向にアップシフト用信号圧Pds1とダウンシフト用信号圧Pds2 とが入力される信号ポート74c,74dが形成されている。カウンタポート74hには、スプリング荷重と対向方向にソレノイドモジュレータ圧Psmが入力されている。ガレージシフト時にはソレノイド弁DS1,DS2は共にONとなるので、信号ポート74c,74dに入力される信号圧Pds1,Pds2 も共にONになり、スプール74bはスプリング74aに抗して下方へ移動し、右側の過渡状態になる。ポート74eに入力されたソレノイド圧(過渡圧)Pslsは出力ポート74fから出力され、マニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給される。そのため、ソレノイド圧Psls によって直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1の係合ショックを回避しつつ緩やかに係合を開始することができる。信号圧Pds1,Pds2 の少なくとも一方がOFFになると、左側の保持状態になり、ポート74gに入力されたクラッチモジュレータ圧(保持圧)Pcmが出力ポート74fから出力され、マニュアル弁75を介して直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1へ供給される。そのため、リニアソレノイド弁SLSの作動如何にかかわらず直結クラッチC1又は逆転ブレーキB1の締結状態を保持できる。アイドルストップ復帰時には、ガレージシフト弁74は過渡位置に保持され、リニアソレノイド弁SLSによって制御されたソレノイド圧Pslsが逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1に供給される。このソレノイド圧Psls によって、後述するように、発進クラッチB1を介してプライマリ軸10に伝達されるトルクがベルト伝達トルク容量を上回らないように発進クラッチB1の伝達トルク容量を制御することにより、ベルト滑りを防止できる。
図3にソレノイド圧Psls に対する、ライン圧PL 、クラッチモジュレータ圧Pcm、クラッチ制御圧、及びセカンダリ圧の各特性を示す。ライン圧PLはソレノイド圧Psls にほぼ比例した油圧に調圧される。クラッチモジュレータ圧Pcmは、ソレノイド圧Psls が所定値に達するまではライン圧PLと同圧であり、所定値を超えると一定圧に制御される。また、逆転ブレーキB1又は直結クラッチC1には過渡状態においてソレノイド圧Psls が直接供給されるので、クラッチ制御圧はソレノイド圧Pslsそのものとなる。セカンダリ圧はソレノイド圧Psls に比例し、油圧ライン圧PL より僅かに低い油圧に調圧される。図3に示したように、クラッチ制御圧とセカンダリ圧は共にソレノイド圧Pslsによって制御されるが、常にセカンダリ圧がクラッチ制御圧を上回るように設定されている。セカンダリ圧は、油圧センサ108によって検出される。
ここで、本発明におけるアイドルストップ復帰時の発進クラッチ(B1)の係合制御について、図4を参照しながら説明する。図4には、クラッチ油圧とベルト挟圧とが記載されているが、両者は共にリニアソレノイド弁SLSによって制御可能である。
時刻t1で所定のアイドルストップ復帰条件(例えばブレーキOFF)を満足すると、アイドルストップ復帰指令が出力され、クランキングが開始される。(a)の実線及び破線は通常完爆時と完爆遅れ時のエンジン回転数であり、(b)の実線及び破線は通常完爆時と完爆遅れ時のベルト挟圧である。(c)は通常完爆時のクラッチ圧であり、(d)は完爆遅れ時のクラッチ圧である。エンジン完爆時刻、つまりエンジン回転数が予め設定した完爆判定回転数を越えた時刻が予め設定した完爆遅れ判定時間C以内であれば、目標クラッチ圧を通常完爆時の特性(c)に従って設定する。通常完爆時には、特性(c)に示すように、定圧出力基準時間B内において、油圧センサ108によって検出されたセカンダリ油圧に基づいてベルト伝達可能トルクを計算し、クラッチ伝達トルクが計算されたベルト伝達トルクを上回らないように、目標クラッチ圧を設定する。なお、ベルト伝達トルクが初期圧を越えた後は、目標クラッチ圧を初期圧と同圧に設定すればよい。このようにして、実クラッチ圧は目標クラッチ圧と乖離することなく上昇する。
一方、エンジン完爆が遅れ、所定の完爆判定回転数まで上昇する時間が完爆遅れ判定時間Cより長くなった場合には、完爆遅れ判定時間Cの終了時刻t6から実際にエンジンが完爆した時刻t7までの完爆遅れ時間Aを計測し、(d)のように定圧出力基準時間Bを完爆遅れ時間Aだけ延長する。つまり、定圧出力基準時間Bが経過した後も、クラッチ伝達トルクがベルト伝達トルクを上回らないように目標クラッチ圧を設定する制御を継続する。やがて、エンジン完爆に伴ってベルト挟圧が上昇するので、目標クラッチ圧は初期圧相当まで上昇し、定圧出力基準時間Bと完爆遅れ時間Aの和の時間後(時刻t8)、スイープ制御を開始する。スイープ制御の開始時点t8では、既に目標クラッチ圧は初期圧まで上昇しているので、実クラッチ圧と目標クラッチ圧との乖離は起きず、実クラッチ圧を目標クラッチ圧へ追従させることができる。その結果、実クラッチ圧の急激な上昇を抑制でき、ショックを軽減できる。その後の制御でも、スイープ切替時間及びクラッチ制御終了時間を共に完爆遅れ時間Aだけ延長することで、円滑に発進クラッチを締結できる。
前記説明では、定圧出力基準時間B、スイープ切替時間、クラッチ制御終了時間をそれぞれ一定時間としたが、これら期間を油温に応じて変更してもよい。また、図4では、アイドルストップ復帰直後から目標クラッチ圧をベルト挟圧に応じた圧に設定したが、発進クラッチの無効ストローク時間を短縮するため、アイドルストップ復帰直後の短時間だけ高い一定目標圧を設定してファーストフィル制御を実施してもよい。
図5は、本発明のアイドルストップ復帰時におけるクラッチ係合制御の一例のフローチャートである。まず最初に完爆判定時間C内でエンジン回転数が完爆判定回転数を越えたかどうかを判定する(ステップS1)。越えた場合には、セカンダリ油圧を検出し(ステップS2)、セカンダリ油圧からベルト伝達トルクを計算し、そのベルト伝達トルクを越えない目標クラッチ圧を設定してクラッチ制御を行う(ステップS3)。次に、目標クラッチ圧が初期圧以上かどうかを判定し(ステップS4)、初期圧以上であれば、目標クラッチ圧=初期圧とする(ステップS5)。次に、アイドルストップ復帰からの経過時間tが定圧出力基準時間以上であるかどうかを判定し(ステップS6)、定圧出力基準時間以上であれば、目標クラッチ圧を第1の時間勾配でスイープ制御する(ステップS7)。次に、経過時間tがスイープ切替時間以上であるかどうかを判定し(ステップS8)、スイープ切替時間以上であれば、目標クラッチ圧を第2の時間勾配でスイープ制御する(ステップS9)。そして、経過時間tがクラッチ制御終了時間以上であるかどうかを判定し(ステップS10)、クラッチ制御終了時間以上であれば、クラッチを完全係合してクラッチ制御を終了する。
一方、ステップS1において、完爆判定時間C内でエンジン回転数が完爆判定回転数を越えない場合には、完爆遅れ時間Aを計測し(ステップS11)、続いてセカンダリ油圧を検出し(ステップS12)、セカンダリ油圧からベルト伝達トルクを計算し、そのベルト伝達トルクを越えない目標クラッチ圧を設定してクラッチ制御を行う(ステップS13)。次に、目標クラッチ圧が初期圧以上かどうかを判定し(ステップS14)、初期圧以上であれば、目標クラッチ圧=初期圧とする(ステップS15)。次に、アイドルストップ復帰からの経過時間tが定圧出力基準時間B+完爆遅れ時間A以上であるかどうかを判定し(ステップS16)、その時間以上であれば、目標クラッチ圧を第1の時間勾配でスイープ制御する(ステップS17)。次に、経過時間tがスイープ切替時間+完爆遅れ時間A以上であるかどうかを判定し(ステップS18)、その時間以上であれば、目標クラッチ圧を第2の時間勾配でスイープ制御する(ステップS19)。そして、経過時間tがクラッチ制御終了時間+完爆遅れ時間A以上であるかどうかを判定し(ステップS20)、その時間以上であれば、クラッチを完全係合してクラッチ制御を終了する。
無段変速機及び発進クラッチの油圧回路としては、図2に示すものに限らない。アイドルストップ復帰と共に発進する際に、無段変速機へは即座に油圧を供給でき、発進クラッチへはソレノイド弁への指示電流に対応した油圧を供給できるものであれば、その構成は任意である。また、図2では、共通のソレノイド弁SLSを用いてベルト挟圧制御と発進クラッチの係合制御とを実施する例を示したが、これに限るものではなく、個別のソレノイド弁を用いて両者の油圧制御を実施してもよい。
1 エンジン
2 無段変速機
3 トルクコンバータ
4 変速装置
6 オイルポンプ
7 油圧制御装置
11 プライマリプーリ
13 プライマリ油室
21 セカンダリプーリ
23 セカンダリ油室
76 アップシフト用レシオ制御弁
77 ダウンシフト用レシオ制御弁
79 挟圧コントロール弁
B1 逆転ブレーキ(発進クラッチ)
100 電子制御装置
101 エンジン回転数センサ
102 セカンダリプーリ回転数センサ(車速センサ)
105 プライマリプーリ回転数センサ
108 油圧センサ
SLS リニアソレノイド弁
DS1 ソレノイド弁
DS2 ソレノイド弁
2 無段変速機
3 トルクコンバータ
4 変速装置
6 オイルポンプ
7 油圧制御装置
11 プライマリプーリ
13 プライマリ油室
21 セカンダリプーリ
23 セカンダリ油室
76 アップシフト用レシオ制御弁
77 ダウンシフト用レシオ制御弁
79 挟圧コントロール弁
B1 逆転ブレーキ(発進クラッチ)
100 電子制御装置
101 エンジン回転数センサ
102 セカンダリプーリ回転数センサ(車速センサ)
105 プライマリプーリ回転数センサ
108 油圧センサ
SLS リニアソレノイド弁
DS1 ソレノイド弁
DS2 ソレノイド弁
Claims (1)
- エンジンと、
所定のアイドルストップ条件を満足したときにエンジンを自動停止させ、所定のアイドルストップ復帰条件を満足したときにエンジンを再始動させるエンジン制御装置と、
前記エンジンによって駆動されるオイルポンプと、
エンジン動力を駆動輪に伝達するベルト式無段変速機と、
前記エンジンと前記無段変速機との間に設けられた発進クラッチと、
前記オイルポンプが発生する油圧に基づいて、前記無段変速機及び前記発進クラッチに油圧を供給する油圧制御装置と、
前記エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出手段と、
前記無段変速機のベルト挟圧を検出するベルト挟圧検出手段と、を備えたアイドルストップ車において、
前記油圧制御装置は、
前記検出されたベルト挟圧からベルト伝達トルクを計算する伝達トルク計算手段と、
前記発進クラッチのクラッチ圧を制御するクラッチ制御手段とを備え、
前記クラッチ制御手段は、
クラッチ伝達トルクが前記計算されたベルト伝達トルクを上回らないように目標クラッチ圧を設定してクラッチ圧を制御する第1工程と、クラッチ圧を所定の時間勾配をもって上昇させる第2工程と、クラッチ圧を締結状態まで上昇させる第3工程とを順次実施すべく所定の設定時間を設定し、
前記アイドルストップ復帰条件を満足した後、前記エンジンの完爆遅れが生じた場合に、完爆遅れ時間を計測し、当該完爆遅れ時間に応じて前記第1工程の設定時間を延長することを特徴とする、アイドルストップ車の発進クラッチ制御装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2010065490A JP2011196490A (ja) | 2010-03-23 | 2010-03-23 | アイドルストップ車の発進クラッチ制御装置 |
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JP2010065490A JP2011196490A (ja) | 2010-03-23 | 2010-03-23 | アイドルストップ車の発進クラッチ制御装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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KR101526847B1 (ko) * | 2014-05-07 | 2015-06-10 | 현대오트론 주식회사 | Isg 기능이 탑재된 차량의 변속제어장치 및 방법 |
CN114294350A (zh) * | 2021-12-10 | 2022-04-08 | 重庆长安汽车股份有限公司 | Dct车型制动停车工况离合器扭矩控制方法、系统及车辆 |
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-
2010
- 2010-03-23 JP JP2010065490A patent/JP2011196490A/ja active Pending
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