以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ車両における向きと同一とする。また、図中矢印FRは車両前方を、矢印LHは車両左方を、矢印UPは車両上方をそれぞれ示す。
図1に示す自動二輪車1において、その前輪2は左右一対のフロントフォーク3の下端部に回転可能に軸支され、各フロントフォーク3の上部はステアリングステム4を介して車体フレーム5前端のヘッドパイプ6に操向可能に枢支される。左右フロントフォーク3の上端部はステアリングステム4の上方に突出し、この突出部分に左右ハンドルバー7が取り付けられる。
車体フレーム5において、ヘッドパイプ6の後方には左右メインチューブ8が斜め下後方に向けて延び、これら左右メインチューブ8の後端部には左右ピボットフレーム9の上端部がそれぞれ接続される。左右ピボットフレーム9にはスイングアーム11の前端部が揺動可能に枢支され、このスイングアーム11の後端部に後輪12が回転可能に軸支される。車体フレーム5内側にはエンジン13が懸架され、このエンジン13と後輪12とが例えばチェーン式伝動機構を介して動力伝達可能に連係される。
図2を併せて参照し、エンジン13は、例えばクランクシャフト14の回転中心軸線(クランク軸線)C1を左右方向(車幅方向)に沿わせた水冷四ストロークV型四気筒エンジンであり、そのクランクケース15の前部上方には、斜め前上方に向けて起立する前シリンダ16及び斜め後上方に向けて起立する後シリンダ17が立設される。なお、前後シリンダ(前後バンク)16,17の起立方向に沿う軸線(シリンダ軸線)をそれぞれ図中符号C2,C3で示す。
前後シリンダ16,17は、それぞれクランクケース15側から順にシリンダ本体16a,17a、シリンダヘッド16b,17b及びヘッドカバー16c,17cを積み重ねてなる。なお、各シリンダ本体16a,17aはクランクケース15と一体形成されている。各シリンダ本体16a,17a内には各気筒に対応するシリンダボア18がそれぞれ設けられ、これら各シリンダボア18内にそれぞれピストン19が往復動可能に嵌装される。各ピストン19はそれぞれコンロッド19aを介してクランクシャフト14のクランクピンに連結され、もって各ピストン19の往復動がクランクシャフト14の回転動に変換される。
エンジン13は、そのクランクケース15前端の前支持部21がメインチューブ8前部から下方に延びるエンジンハンガー8aの下端部に締結固定されると共に、クランクケース15上部(前シリンダ16後部)の上支持部22がエンジンハンガー8aの基端部後側に締結固定され、かつクランクケース15後端の後上支持部23及び後下支持部24がそれぞれピボットフレーム9前部の上下に締結固定されることで、車体フレーム5に固定的に支持される。
エンジン13は、その後部にトランスミッション(変速機、図3参照)25を一体に設けた構成を有し、クランクケース15の後部が変速機ケースを兼ねる。クランクケース15は、例えばクランク軸線C1と平行かつ略水平な分割平面15dを境に上下ケース体15a,15bに分割される。クランクケース15(下ケース体15b)の下方にはオイルパン15cが取り付けられる。なお、クランクケース15(下ケース体15b)下端の略水平な平面(オイルパン15cとの割面)を図中符号15eで示す。
図2,3を併せて参照し、各シリンダヘッド16b,17b内には吸気側及び排気側カムシャフト26,27がそれぞれ配設され、これらがクランクシャフト14とギヤ式あるいはチェーン式のカム駆動機構28を介して連係して回転駆動する。これら各カムシャフト26,27の回転駆動により、各シリンダヘッド16b,17b内に往復動可能に保持された吸排気バルブ26a,27aがそれぞれ作動する。
クランクシャフト14の後方には、トランスミッション25のメインシャフト31及びカウンタシャフト32が前後に並んで配置される。各シャフト31,32はクランク軸線C1と平行な回転中心軸線(メイン軸線、カウンタ軸線)C4,C5を有する。各シャフト14,31,32は、例えば各々の軸線C1,C4,5が分割平面15d上に位置するように配置される。
クランクシャフト14の回転動力は、クランクケース15の右側内に配置されたクラッチ35及びクランクケース15の後部内に配置されたトランスミッション25を介して、クランクケース15の後部左側に配置されたドライブスプロケット36に出力され、このドライブスプロケット36からドライブチェーン36a等を介して後輪12に伝達される。
前シリンダ16のシリンダヘッド16bの前側には各気筒に対応する二本の排気管37が、後シリンダ17のシリンダヘッド17bの後側には同じく各気筒に対応する二本の排気管37がそれぞれ接続される。また、前シリンダ16のシリンダヘッド16bの後側には各気筒に対応する二つのスロットルボディ38が、後シリンダ17のシリンダヘッド17bの前側には同じく各気筒に対応する二つのスロットルボディ38がそれぞれ接続される。なお、図中符号75は前後シリンダ16,17間に配されるサーモスタットを、符号76はクランクケース15の後端部に設けられてピボットフレーム9と共にスイングアーム11の前端部を支持するピボット支持部をそれぞれ示す。
図3を参照し、クランクシャフト14の右側部にはプライマリドライブギヤ41が同軸かつ一体回転可能に設けられ、このプライマリドライブギヤ41がメインシャフト31の右側部に同軸配置されたプライマリドリブンギヤ42に噛み合う。なお、クランクシャフト14の左端部にはジェネレータ43が同軸配置される。
メインシャフト31の右端部には運転者が操作可能なクラッチ35が同軸配置される。クラッチ35は周知の湿式多板クラッチであり、右方に開放する有底円筒状をなしてメインシャフト31に相対回転可能に支持されるクラッチアウタ35aと、このクラッチアウタ35aの内側にてメインシャフト31に相対回転不能に支持されるクラッチインナ35bと、このクラッチインナ35bとクラッチアウタ35aとの間に積層されてこれらの間の動力伝達を断接する複数のクラッチ板35cとを有する。クラッチアウタ35aの左側部にはプライマリドリブンギヤ42が一体回転可能に取り付けられる。なお、図中符号44,45はクランクケース15の左右側部にそれぞれ取り付けられる左右ケースカバーをそれぞれ示す。
トランスミッション25は、クランクシャフト14と平行なメインシャフト31及びカウンタシャフト32と、これら両シャフト31,32に跨って支持される変速ギヤ群33とを主になる。クランクシャフト14の回転動力は、メインシャフト31から変速ギヤ群33の任意のギヤ対を介してカウンタシャフト32に伝達される。カウンタシャフト32におけるクランクケース15の後部左側に突出した左端部には、前記ドライブスプロケット36が一体回転可能に取り付けられる。
変速ギヤ群33は、両シャフト31,32にそれぞれ支持された変速段数分のギヤを有する。トランスミッション25は、両シャフト31,32間で変速ギヤ群33の対応するギヤ対同士が常に噛み合った常時噛み合い式とされる。両シャフト31,32に支持された各ギヤは、対応するシャフトに対して回転可能なフリーギヤと、対応するシャフトにスプライン嵌合するスライドギヤ(シフター)とに分類される。これらフリーギヤ及びスライドギヤの一方には軸方向で凸のドッグが、他方にはドッグを係合させるべく軸方向で凹のスロットがそれぞれ設けられている。
図2,4,5を併せて参照し、トランスミッション25の下方には、その変速ギヤ対を切り替えるチェンジ機構が配設される。チェンジ機構34は、両シャフト31,32と平行な中空円筒状のシフトドラム51の回動により、その外周に形成されたリード溝51aのパターンに応じて複数のシフトフォーク52を作動させ、変速ギヤ群33における両シャフト31,32間の動力伝達に用いるギヤ対を切り替える。シフトドラム51の斜め前上方にはこれと平行なシフトフォークシャフト53が配置され、シフトドラム51の下方には同じくこれと平行なシフトスピンドル46が配置される。なお、図中符号C6,C7はシフトスピンドル46及びシフトドラム51における左右方向に沿う回転中心軸線(軸心)をそれぞれ示す。
各シフトフォーク52は、シフトフォークシャフト53を挿通する基部52aの斜め後下方にシフトドラム51のリード溝51aに係合するフォークピン52bを突出させる。そして、シフトスピンドル46及びこれに固定されたシフトアーム54の回動時には、後述の伝動機構(操作力伝達手段)81等を介してシフトドラム51が回動し、そのリード溝51aのパターンに応じてシフトフォーク52がシフトフォークシャフト53の軸方向で移動して、変速ギヤ群33の所定のスライドギヤをスライドさせて変速段を切り替える。
シフトスピンドル46はチェンジ機構34を操作可能とするべくクランクケース15外側に突出するもので、そのクランクケース15外側(左方)への突出部分には、直接又は所定のリンク機構等を介してシフトペダル47が連結される。シフトペダル47は、その前側を揺動基端側、後側を揺動先端側(運転者の足による操作端側)として上下揺動可能に配置される。
ここで、自動二輪車1は、クラッチ35及びトランスミッション25の両操作を運転者が行う通常のマニュアルモードの他に、トランスミッション25の変速操作(シフトペダル47の操作)のみを運転者が行いクラッチ35の断接操作はシフトペダル47の操作に応じて電気制御により自動で行うようにしたセミオートマチックモードによる走行が可能とされている。
図5を参照し、自動二輪車1は、例えば左ハンドルバー7に取り付けられてクラッチレバー55aの操作により液圧を発生させるマスターシリンダ55と、クランクケース15の後部左側に取り付けられてマスターシリンダ55からの液圧を受けて作動するスレーブシリンダ56と、これら各シリンダ55,56間に渡る液圧配管57とを有する。
スレーブシリンダ56はメインシャフト31と同軸配置され、このスレーブシリンダ56にマスターシリンダ55からの液圧が供給されて作動する。このスレーブシリンダ56の作動により、メインシャフト31内を貫通するプッシュロッド56aを介してクラッチ35が接続状態から切断状態へ作動する。一方、前記液圧の供給がなくなると、スレーブシリンダ56が作動前の状態に戻ると共にクラッチ35が自身のクラッチスプリングの作用により接続状態に戻る。
液圧配管57の中間部には、前記セミオートマチックモードにおいてクラッチ35の断接を自動で行うためのアクチュエータ58が配設される。アクチュエータ58は不図示の電気モータ等の駆動源を有し、このアクチュエータ58がECU59により作動制御されてクラッチ35断接用の液圧制御を行う。
なお、ECU59には、シフトドラム51の回動角から変速段位を検知するギヤポジションセンサ61及びシフトスピンドル46の回動角度を検知するシフトスピンドル角センサ62からの検知情報、並びにスロットル開度センサ63、車速センサ64及びエンジン回転数センサ5等からの各種の車両状態検知情報が入力され、これら各情報に基づいてアクチュエータ58が作動制御されると共に点火装置66及び燃料噴射装置67が作動制御される。
また、ECU59は、運転者によるシフト操作が開始されたことを検知するシフト操作開始検知手段68と、シフト操作によって変速動作が完了したことを検知するシフトチェンジ完了検知手段69とを有する。そして、前記セミオートマチックモードにおいて、ECU59によりアクチュエータ58が作動制御されることで、クラッチ35の断接がシフト操作に応じて自動で行われる。
図6,7を参照し、クランクケース15の左下部後側には、左右方向に沿う駆動軸71aを有する側面視略円形のウォータポンプ71が配設される。クランクケース15の左下部後側であってウォータポンプ71の後方には、左方(外側方)に解放する機構収容室72が設けられる。この機構収容室72の左開口には、これを閉塞する左後カバー73が取り付けられる。機構収容室72及び左後カバー73の前部外側方には、ウォータポンプ71の後部が側面視で重なるように配置される。
また、機構収容室72の上方には、ドライブスプロケット36及びその外側方を覆うドライブスプロケットカバー74が配置される。ドライブスプロケットカバー74の下部内側方には、機構収容室72及び左後カバー73の上部が側面視で重なるように配置される。ドライブスプロケット36の下端部内側方には、機構収容室72及び左後カバー73の上端部が側面視で重なるように配置される。
ドライブスプロケットカバー74の前端部外側にはスレーブシリンダ56が取り付けられ、ドライブスプロケットカバー74の下端部外側にはギヤポジションセンサ61が取り付けられる。ドライブスプロケットカバー74の上端前部外側には、ドライブスプロケット36の回転数から車速を検知する車速センサ64が取り付けられる。
ギヤポジションセンサ61の前部下側には、不図示のハーネス側コネクタを差し込み可能とするカプラ61aが斜め前下方に向けて突設され、このカプラ61aがウォータポンプ71の後端部外側方でこれと側面視で重なるように配置される。
左後カバー73の前下部外側には、シフトスピンドル46の回動角を検出するシフトスピンドル角センサ62が取り付けられる。シフトスピンドル角センサ62の前部下側には、不図示のハーネス側コネクタを差し込み可能とするカプラ62aが斜め前下方に向けて突設される。このシフトスピンドル角センサ62の外側方には、ウォータポンプ71の後下部が側面視で重なるように配置される。
図8,9を参照し、シフトスピンドル46のクランクケース15内(機構収容室72内)に臨む左右中間部には、これと略直交する板状のシフトアーム54の基端部が固定される。シフトアーム54は、シフトスピンドル46上方のシフトドラム51の外側方に向けて延び、このシフトアーム54とシフトドラム51とが伝動機構81を介して互いに係合する。これらシフトアーム54及び伝動機構81、並びに後述するポールラチェット機構91Aを主に、シフトスピンドル46に入力されたシフト操作力をシフトドラム51へ伝達する操作力伝達機構81Aが構成される。
図12を併せて参照し、伝動機構81は、シフトドラム51と同軸をなす環状のシフタ側回動部材87及びドラム側回動部材88、並びに各回動部材87,88間に配置されるロストモーション機構89を有してなる。
以下、ポールラチェット機構91A及びその周辺について説明する。
シフタ側回動部材87は左方に開放するカップ状をなし、その内部に入り込むようにシフタ組み立て体91が配設される。これらシフタ側回動部材87及びシフタ組み立て体91により、シフトスピンドル46及びシフトアーム54の一往復回転動を軸線C7回りの所定角度の回転動に変換するポールラチェット機構91Aが構成される。
シフタ組み立て体91の左側面における軸線C7からオフセットした位置には、左方に向けて突出する係止ピン92が設けられる。シフタ組み立て体91の左方にはシフトアーム54の先端部が位置し、その先端部に形成された凹部93内に係止ピン92がカラー部材92aを介して係合する。これら凹部93及び係止ピン92を介して、シフトスピンドル46及びシフトアーム54の回転力がシフタ組み立て体91に入力される。
シフトアーム54の先端側には軸線C6を中心とした比較的長い円弧状のガイド孔94が形成されると共に、シフトアーム54の中間部前側には同じく軸線C6を中心とした比較的短い円弧状をなす中間ガイド孔95が形成される。ガイド孔94にはシフトドラム51と同軸の伝動機構支持軸96の中間部が挿通されると共に、中間ガイド孔95には左後カバー73の内側に立設されたガイドピン97の先端部が挿通される。
そして、シフトアーム54がその延出方向を上下方向に沿わせた回動初期位置にある状態(図9参照)において、ガイド孔94の長手方向中央部には伝動機構支持軸96が位置し、中間ガイド孔95の長手方向中央部にはガイドピン97が位置する。この回動初期位置からシフトアーム54が正逆それぞれの方向(図10(a),図10(b)参照)に回動する際の回動角度は、中間ガイド孔95の両端内周にガイドピン97が当接することで規定される。なお、図中矢印F,Bはそれぞれシフトドラム51及び伝動機構81等の軸線C7回りの正転方向(シフトアップ方向)及び逆転方向(シフトダウン方向)をそれぞれ示す。
中間ガイド孔95の上部には左方(外側方)に向けて起立する係止片98が設けられ、この係止片98の両側にシフトアーム54基端の左方(外側方)に隣接配置された戻しバネ99のコイル端が係合する。戻しバネ99はシフトスピンドル46を挿通するトーションコイルスプリングであり、その両コイル端間にガイドピン97及び係止片98が挟持される。
そして、シフトアーム54が前記回動初期位置から正逆何れかの方向に回動すると、係止片98とガイドピン97とが軸線C6回りに相対移動して戻しバネ99の両コイル端を互いに離間させ、シフトアーム54を回動初期位置に戻すべく付勢力を発生させる。
図9,10,12,13を参照し、シフタ側回動部材87の外周には、クランクケース15に支持された前ストッパアーム101を係合させるシフタ側ストッパ部102が一体形成される。シフタ側ストッパ部102は、所定角度毎に複数並ぶシフタ側外周凹部102aを形成し、これら各シフタ側外周凹部102aの何れかに前ストッパアーム101を係合させることで、シフタ側回動部材87の回動を所定角度毎に規制する。以下、シフタ側ストッパ部102及び前ストッパアーム101の組み合わせを前ドラムストッパ102Aとする。
前ストッパアーム101は、そのアーム本体101aの前端部がクランクケース15に固設された支持軸101bに揺動可能に支持されると共に、支持軸101bを挿通するトーションコイルスプリング101cによりアーム本体101aの後端部をその下方に位置するシフタ側回動部材87に向けて付勢し、この後端部外側に支持したストッパローラ101dをシフタ側外周凹部102aに係合させる。これにより、所定の回動位置にあるシフタ側回動部材87に所定の回動規制力が付与されると共に、この回動規制力を上回る回転力によってシフタ側回動部材87が回動可能となる。
図9,10を参照し、シフタ組み立て体91は、シフタ側回動部材87に対して相対回転可能なシフタ本体105と、このシフタ本体105に組み付けられる一対のラチェットポール106と、各ラチェットポール106をシフタ外周側に個別に付勢する一対のプランジャ107とを有する。
図8を併せて参照し、シフタ本体105は、その右側部がシフタ側回動部材87内に収容されると共に、これの左方に離間する左側部がシフタ側回動部材87の左方に突出する。シフタ本体105の中央部には伝動機構支持軸96の中間部が挿通され、もってシフタ本体105とシフタ側回動部材87とが相対回転可能に連結される。シフタ本体105の左側面には前記係止ピン92が突設される。
シフタ本体105は、側面視で係止ピン92の軸心とシフタ本体105の軸心(伝動機構支持軸96の軸心)とを結ぶ直線(シフタ中心線)T2に関して線対称に構成される。以下、シフタ本体105(シフタ組み立て体91)におけるシフタ中心線T2を上下方向に沿わせた位置をシフタ回動初期位置とする。
シフタ本体105におけるシフタ中心線T2を挟んだ両側には、各ラチェットポール106がその上辺部を中心に下辺部をシフタ本体105の内外に移動させるべく揺動可能に保持される。各ラチェットポール106は、その下辺部をシフタ本体105の外周に突出させるべく各プランジャ107により付勢されている。
一方、シフタ側回動部材87内には複数の内周凹部108が所定角度毎に形成され、これら各内周凹部108の何れかに各ラチェットポール106の下辺部が突き当たるように係合可能である。そして、シフタ側回動部材87の内周凹部108にラチェットポール106の下辺部が係合した状態において、これらを互いに突き当てる側へのシフタ側回動部材87とシフタ組み立て体91との相対回動は規制され、前記突き当てる側と反対側へのシフタ側回動部材87とシフタ組み立て体91との相対回動はラチェットポール106がシフタ本体105内に没することで許容される。
図12を併せて参照し、シフトアーム54とシフタ側回動部材87との間には、左右方向と直交する平板状をなしてシフタ組み立て体91を挿通するガイドプレート109が配設される。ガイドプレート109は、その中央部にシフタ組み立て体91の挿通孔111を有すると共に、外周側には自身をクランクケース15に締結固定するための複数のステー部109aを有する。
挿通孔111は、シフタ本体105の右側部と略同一径のベース径部111aと、その下部両側に形成された一対の拡径部111bと、各拡径部111b間に形成された凸部111cとを有する。この挿通孔111内に挿通されたシフタ組み立て体91は、各拡径部111b内に位置するラチェットポール106についてはその下辺部をシフタ本体105外側に突出させてシフタ側回動部材87の内周凹部108に係合可能とし、ベース径部111a内に位置するラチェットポール106についてはその下辺部がベース径部111a内周に乗り上げることでこれをシフタ本体105内に入り込ませてシフタ側回動部材87の内周凹部108への係合を不能とする。
ポールラチェット機構91Aは、シフタ組み立て体91がシフタ回動初期位置にあるときは(図9参照)、各ラチェットポール106を各拡径部111b内に位置させてこれらをシフタ側回動部材87の各内周凹部108の何れかに係合可能とする。そして、これら各ラチェットポール106が各内周凹部108の何れかに係合することで、シフタ組み立て体91及びシフタ側回動部材87の正逆両方向への相対回動が不能とされる。
一方、シフトアーム54の回動によりシフタ組み立て体91がシフタ側回動部材87と共にシフタ回動初期位置から一方向へ回動したときは(図10参照)、このシフタ組み立て体91の他方向への回動側にあるラチェットポール106がガイドプレート109のベース径部111a内周に乗り上げてシフタ本体105内に没し、このラチェットポール106による内周凹部108への係合が不能となる。このため、シフタ側回動部材87に対するシフタ組み立て体91の他方向への相対回動が可能となる。
すなわち、シフタ組み立て体91及びシフタ側回動部材87の一方向への回動後には、前ドラムストッパ102Aにより回動規制がなされるシフタ側回動部材87に対して、シフタ組み立て体91のみがガイドプレート109との協働により他方向へ回動可能(空転可能)となる。なお、シフタ組み立て体91のシフタ回動初期位置からの正逆回転は、前記シフトアーム54の中間ガイド孔95の両端内周にガイドピン97が当接することで所定角度に規定される。また、シフタ側回動部材87のイナーシャによる回り過ぎは、各ラチェットポール106の何れかの下辺部がガイドプレート109の凸部111cの側端に突き当たることで規制される。
このようなシフタ組み立て体91の正逆往復の回転動により、シフタ側回動部材87を正逆それぞれの回転方向に間欠送り可能となる。このシフタ側回動部材87の回動がロストモーション機構89を介してドラム側回動部材88に伝達されることで、このドラム側回動部材88と共にシフトドラム51が所定角度だけ回動してトランスミッション25の変速段を一段ずつ変化させる。すなわち、前記間欠送りによりシフトドラム51が一度に回動する角度はトランスミッション25の変速段を一段シフトアップ又はシフトダウンさせるだけの角度に相当する。
以下、ロストモーション機構89及びその周辺について説明する。
図8,10を参照し、ドラム側回動部材88は左方に開放するカップ状をなし、その底部がシフトドラム51の左端部に締結固定されると共に、このドラム側回動部材88内にシフトドラム51と同軸の伝動機構支持軸96の右端部が入り込む。シフトドラム51の左端部、ドラム側回動部材88及び伝動機構支持軸96の右端部は、左右方向に沿うノックピン88bを介して一体回転可能に係合する。なお、ドラム側回動部材88は前記内周凹部108に相当する構成を有さない。
ドラム側回動部材88の外周には、クランクケース15に支持された後ストッパアーム103を係合させるドラム側ストッパ部104が一体形成される。ドラム側ストッパ部104は、所定角度毎に複数並ぶドラム側外周凹部104aを形成し、これら各ドラム側外周凹部104aの何れかに後ストッパアーム103を係合させることで、ドラム側回動部材88の回動を所定角度毎に規制する。以下、ドラム側ストッパ部104及び後ストッパアーム103の組み合わせを後ドラムストッパ104Aとする。
図13を併せて参照し、後ストッパアーム103は、そのアーム本体103aの後端部がクランクケース15に固設された支持軸103bに揺動可能に支持されると共に、支持軸103bを挿通するトーションコイルスプリング103cによりアーム本体103aの前端部をその下方に位置するドラム側回動部材88に向けて付勢し、この後端部内側に支持したストッパローラ103dをドラム側外周凹部104aに係合させる。これにより、所定の回動位置にあるドラム側回動部材88に回動規制力が付与されると共に、この回動規制力を上回る回転力によってドラム側回動部材88が回動可能となる。
図8,11を参照し、ロストモーション機構89は、シフタ側ガイド部材112及びドラム側ガイド部材113間にロストモーションスプリング114を保持し、このロストモーションスプリング114の弾発力を介してシフタ側回動部材87の回動をドラム側回動部材88に伝達すると共に、後述のロック機構82によりドラム側回動部材88の回動を規制した状態でシフトスピンドル46を回動させた場合にその回転力をロストモーションスプリング114に蓄力可能である。
図7,15,16を参照し、ロック機構(操作力伝達切替手段)82は伝動機構81の動力伝達のタイミングを制御するもので、クランクケース15内(機構収容室72内)にてシフトスピンドル46の前方に配置される左右一対のソレノイド83,84、及びシフトスピンドル46の直ぐ上方に配置される左右一対のアーム85,86を主になる。各構成は後に詳述する。
そして、ロストモーションスプリング114に前記回転力を蓄力した状態において、前記ECU59がシフトスピンドル角センサ62からの検知信号に基づき、シフトスピンドル46の回動量が変速ギヤ段位を変更できるだけのシフトドラム回動量を確保できる所定量を上回ったと判断したときには、ロック機構82を作動させてドラム側回動部材88の回動を許可し、前記蓄力した回転力によりドラム側回動部材88及びシフトドラム51を回動させてトランスミッション25の変速段位を変化させる。
図8,11を参照し、シフタ側ガイド部材112は、伝動機構支持軸96を挿通する円筒状の外スリーブ112aと、この外スリーブ112aの周方向の所定範囲から内側方(シフトドラム51側)に向けて起立する湾曲板状のシフタ側ガイド壁112bと、外スリーブ112aの内周側にシフタ側ガイド壁112bから離間して配置される円筒状の内スリーブ112cとを有する。
同様に、ドラム側ガイド部材113は、伝動機構支持軸96を挿通する円筒状の外スリーブ113aと、この外スリーブ113aの周方向の所定範囲から外側方(シフトアーム54側)に向けて起立する湾曲板状のドラム側ガイド壁113bと、外スリーブ113aの内周側にドラム側ガイド壁113bから離間して配置される円筒状の内スリーブ113cとを有する。
シフタ側ガイド壁112bの正転方向下流側端にはトーションコイルスプリングであるロストモーションスプリング114の一方のコイル端114aが係合し、ドラム側ガイド壁113bの逆転方向下流側端にはロストモーションスプリング114の他方のコイル端114bが係合する。
ロストモーションスプリング114は、その両コイル端114a,114bを前述の如く各ガイド壁112b,113bに係合させ、かつその内周側に各ガイド部材112,113の内スリーブ112c,113cを挿通すると共に外周側の所定範囲を各ガイド壁112b,113bに覆われた状態で、各ガイド部材112,113間に保持される。このとき、ロストモーションスプリング114のバネ力により、シフタ側ガイド部材112は逆転方向に付勢され、ドラム側回動部材88は正転方向に付勢される。
なお、各ガイド部材112,113間にロストモーションスプリング114を組み付ける際はロストモーションスプリング114を捻りつつ行うこととなるが、各ガイド壁112b,113bがロストモーションスプリング114の外周側の所定範囲を覆ってガイドすることで、前記組み付け作業が行い易くなっている。
シフタ側ガイド壁112bの起立方向先端部には、その逆転方向下流側端を延長するように径方向視三角形状をなして内側方(シフトドラム51側)に突出するシフタ側ガイド先端部112dが設けられる。同様に、ドラム側ガイド壁113bの起立方向先端部には、その正転方向下流側端を延長するように径方向視三角形状をなして外側方(シフトアーム54側)に突出するドラム側ガイド先端部113dが設けられる。
シフタ側ガイド壁112bの起立方向基端部の逆転方向下流側端には、シフタ側回動部材87から内側方に向けて起立するシフタ側ガイドピン87aが係合し、ドラム側ガイド壁113bの起立方向基端部の正転方向下流側端には、ドラム側回動部材88から外側方に向けて起立するドラム側ガイドピン88aが係合する。シフタ側ガイドピン87aはシフタ側ガイド壁112b基端側の逆転方向下流側端とドラム側ガイド先端部113dの正転方向下流側端との間に挟持され、ドラム側ガイドピン88aはドラム側ガイド壁113b基端側の正転方向下流側端とシフタ側ガイド先端部112dの逆転方向下流側端との間に挟持される。
この構成において、シフタ側回動部材87の正転時には、シフタ側ガイドピン87a、シフタ側ガイド部材112、ロストモーションスプリング114、ドラム側ガイド部材113及びドラム側ガイドピン88aの順にこれらを経てドラム側回動部材88に回転力が伝達され、シフタ側回動部材87の逆転時には、シフタ側ガイドピン87a、ドラム側ガイド部材113、ロストモーションスプリング114、シフタ側ガイド部材112及びドラム側ガイドピン88aの順にこれらを経てドラム側回動部材88に回転力が伝達される。
一方、ロック機構82によりドラム側回動部材88の回動を規制した状態では、シフタ側回動部材87の正転時にはシフタ側ガイド部材112のみが回動してロストモーションスプリング114にドラム側ガイド部材113及びドラム側回動部材88を正転させるだけの力が蓄力され、シフタ側回動部材87の逆転時にはドラム側ガイド部材113のみが回動してロストモーションスプリング114にシフタ側ガイド部材112及びドラム側回動部材88を逆転させるだけの力が蓄力される。
これらの状態から、所定のタイミングでロック機構82によるドラム側回動部材88の回動規制を解除することで、ドラム側回動部材88及びシフトドラム51を回動させてシフトチェンジを行うことが可能である。
以下、ロック機構82をより詳細に説明する。
図7,15,16を参照し、ロック機構82において、各ソレノイド83,84及びアーム85,86の内の左側のもの(以下、これらをそれぞれシフタ側ソレノイド83及びシフタ側アーム85とし、かつこれらの組み合わせをシフタ側ロック機構82aとする)は、シフトスピンドル46の回動量が前記所定量になるまではシフタ側回動部材87の回動を許可する一方、シフトスピンドル46の回動量が前記所定量になったときはシフタ側回動部材87の回動を規制する。
また、各ソレノイド83,84及びアーム85,86の内の右側のもの(以下、これらをそれぞれドラム側ソレノイド84及びドラム側アーム86とし、かつこれらの組み合わせをドラム側ロック機構82bとする)は、シフタ側回動部材87の回動が許可された状態では(シフトスピンドル46の回動量が前記所定量になるまでは)ドラム側回動部材88の回動を規制する一方、シフタ側回動部材87の回動を規制したとき(シフトスピンドル46の回動量が前記所定量になったとき)にはドラム側回動部材88の回動を許可する。
これら各ロック機構82a,82bは、各回動部材87,88に対して個別に係合又は離脱することで、これらの回動を個別に規制又は許可することが可能である。
各ソレノイド83,84は円柱状をなし、それぞれ中心軸線を上下方向に沿わせるように配置される。各ソレノイド83,84は、左右に長い上面視楕円状をなす単一のソレノイドケース116内に左右に並んだ状態で収納される。ソレノイドケース116の右端部には、クランクケース15に対する固定ネジ軸116aが突設される。一方、ソレノイドケース116の左端部には、ガイドプレート109の前部下側に対する前後一対の係合ピン116bが突設されると共に、シフトスピンドル角センサ62の一部をなす回動部材62cの支持軸116cが突設される。
各ソレノイド83,84は、それぞれコイル83a,84aの中心部に上下方向に沿う棒状のプランジャ83b,84bをストローク可能に挿通保持する。各プランジャ83b,84bは上方に向けて付勢され、その上端部を各アーム85,86の対応するものの先端部85c,86cに下方から当接させる。
各アーム85,86は、その後端部(基部85a,85b)がクランクケース15に固設された左右方向に沿うピボット軸117に挿通支持され、この後端部を中心に前端側を上下に移動させるように揺動する。なお、図中符号C8はピボット軸117の中心軸線を示す。ピボット軸117は各回動部材87,88の後端部の下方に位置し、各ソレノイド83,84は各回動部材87,88の前端部の下方に位置している。各アーム85,86の後端部にはピボット軸117を挿通するトーションコイルスプリング85e,86eがそれぞれ配設され、これら各スプリング85e,86e及びプランジャ83b,84bからのバネ力により、各アーム85,86がその前端側を上方に移動させるべく付勢される。なお、トーションコイルスプリング85e,86eは一体のダブルトーションコイルスプリングとされる。
シフタ側アーム85は、ピボット軸117を挿通する円筒状の基部85aと、この基部85aの左右内側から前方に延びるアーム本体85bと、このアーム本体85bの前端部から左右外側に起立する先端部85cとを有する。アーム本体85bの前後中間部には、その上方に位置するシフタ側回動部材87のシフタ側係合部118に係合する係合ピン85dが左右外側に向けて突設される。
係合ピン85dは、シフタ側ソレノイド83の非通電時にはシフタ側係合部118のシフタ側係合凹部118aに弾性的に係合するのみであり、所定以上の回転力が作用した際にはシフタ側係合凹部118aの側端を乗り越えてシフタ側回動部材87の回動を許容するが、シフタ側ソレノイド83に通電がなされてプランジャ83b,84bが上昇状態で固定保持されたときには、係合ピン85dがシフタ側係合凹部118aの側端を乗り越えることなくシフタ側回動部材87の回動をロックする。
同様に、ドラム側アーム86は、ピボット軸117を挿通する円筒状の基部86aと、この基部86aの左右外側から前方に延びるアーム本体86bと、このアーム本体86bの前端部から左右内側に起立する先端部86cとを有する。アーム本体86bの前後中間部には、その上方に位置するドラム側回動部材88のドラム係合部に係合する係合ピン86dが左右内側に向けて突設される。
係合ピン86dは、ドラム側ソレノイド84の非通電時にはドラム側係合部119のドラム側係合凹部119aに弾性的に係合するのみであり、所定以上の回転力が作用した際にはドラム側係合凹部119aの側端を乗り越えてドラム側回動部材88の回動を許容するが、ドラム側ソレノイド84に通電がなされてプランジャ83b,84bが上昇状態で固定保持されたときには、係合ピン86dがドラム側係合凹部119aの側端を乗り越えることなくドラム側回動部材88の回動をロックする。
シフタ側回動部材87の外周であってシフタ側ストッパ部102よりも左右内側(ロストモーション機構89側)に位置する部位には、シフタ側アーム85の係合ピン85dを係合させるシフタ側係合部118が一体形成される。シフタ側係合部118は、所定角度毎に複数並ぶシフタ側係合凹部118aを形成し、これら各シフタ側係合凹部118aの何れかにシフタ側アーム85の係合ピン85dを係合させることで、シフタ側回動部材87の回動を所定角度毎に規制する。なお、図中符号は各ソレノイド83,84から延びる配線を機構収容室72の下部後側の配線取り出し孔に導くべく当該部位の壁部に沿うように設けられたリテーナを示す。
同様に、ドラム側回動部材88の外周であってドラム側ストッパ部104よりも左右外側(ロストモーション機構89側)に位置する部位には、ドラム側アーム86の係合ピン86dを係合させるドラム側係合部119が一体形成される。ドラム側係合部119は、所定角度毎に複数並ぶドラム側係合凹部119aを形成し、これら各ドラム側係合凹部119aの何れかにドラム側ロック機構82bのドラム側アーム86を係合させることで、ドラム側回動部材88の回動を所定角度毎に規制する。
なお、シフタ側係合凹部118aは、ドラム側係合凹部119aよりも周方向で大きな遊びを有するように係合ピン85dを係合させる。また、各係合凹部118a,119aは、その正転方向下流側(シフトアップ側)の側端118b,119bにおける径方向に対する傾斜を、逆転方向下流側(シフトダウン側)の側端118c,119cの前記傾斜よりも大きくすることで、シフトダウン時に対して比較的操作力の小さいシフトアップ時の操作性向上に寄与している。
ここで、各ソレノイド83,84及びアーム85,86は、側面視で上下に並ぶシフトドラム51及びシフトスピンドル46の各軸心(各軸線C7,C6)を結ぶ直線T1よりも前方に配置されと共に、クランクケース15とオイルパン15cとの割面15eよりも上方に配置される。各アーム85,86は、側面視でシフトスピンドル46とシフトドラム51との間を前後に延びるように配置されている。
また、各アーム85,86後端の回動中心(軸線C8、支点)は、側面視で前記直線T1よりも後方に位置し、各アーム85,86前端の各ソレノイド83,84との接触点(先端部85c,86c、入力点)は、側面視で前記直線T1よりも前方に位置し、各アーム85,86中間の各回動部材87,88との係合点(係合ピン85d,86d、作用点)は、側面視で前記直線T1の直ぐ前方(前記回動中心と接触点との間の略中央)に位置する。なお、図15中符号116dは各ソレノイド83,84から延びる配線を機構収容室72内でガイドするリテーナを、符号116eは前記配線の引き出し孔に取り付けられるグロメットをそれぞれ示す。
以下、シフトスピンドル角センサ62及びギヤポジションセンサ61について説明する。
図6,7,14を参照し、各ソレノイド83,84の外側方であって左後カバー73の外側には、前記シフトスピンドル角センサ62が配置される。シフトスピンドル角センサ62は、そのハウジング内に保持した左右方向に沿う回動軸62bの回動量からシフトスピンドル46の回動角を検出する。回動軸62bの内側端には、左後カバー73内側からこれを貫通する回動部材62cの先端部が一体回転可能に係合する。回動部材62cは、ソレノイドケース116の外側端に突設された左右方向に沿う支持軸116cに、その軸心回りで回動可能に支持される。
回動部材62cの内側端には、側面視楕円状をなして後方に延びる板状部62dが一体に設けられ、この板状部62dの後部に形成された後方に開放する切り欠き62e内に、シフトアーム54の基端前側から左右内側に向けて起立する係合ピン54aが係合する。これにより、シフトスピンドル46と共にシフトアーム54が回動すると、回動部材62cを介してシフトスピンドル角センサ62の回動軸62bが回動し、この回動量からシフトスピンドル46の回動角が検知される。
また、ギヤポジションセンサ61は、そのハウジング内に保持した不図示のロータの回動量からシフトドラム51(伝動機構支持軸96)の回動角を検出する。前記ロータの内側部には、ドライブスプロケットカバー74に保持された回動部材61cから外側方に突出する一対の係止ピン61bが係合する。回動部材61cは、ドライブスプロケットカバー74に穿設された左右方向に沿う保持孔61dにその軸心回りに回動可能に支持される。
回動部材61cの外側端には、側面視扇状をなして斜め前下方に延びる扇状ギヤ61eが一体に設けられ、この扇状ギヤ61e先端のギヤ歯に伝動機構支持軸96の外側端に形成されたピニオンギヤ96aが噛み合う。これにより、シフトドラム51と共に伝動機構支持軸96が回動すると、回動部材61cを介してギヤポジションセンサ61の前記ロータが回動し、この回動量からシフトドラム51の回動角ひいてはトランスミッション25の変速段が検知される。
次に、この実施例の作用について説明する。
まず、トランスミッション25の変速操作がなされず、かつ各アーム85,86の係合ピン85d,86dが各係合凹部118a,119aに係合した状態にあるときには(図15,16参照)、シフタ側ソレノイド83が非通電状態となり、ドラム側ソレノイド84が通電状態となる(又は各ソレノイド83,84が共に非通電状態となる)。
この状態から例えばシフトペダル47がシフトアップ側に操作され、シフトスピンドル46及びシフトアーム54がシフトアップ側に回動すると、ポールラチェット機構91Aを介してシフタ側回動部材87が正転方向に回動を開始する(図10参照)。
このとき、シフタ側ソレノイド83が非通電状態、ドラム側ソレノイド84が通電状態にあることから、シフタ側回動部材87においては所定の回転力でシフタ側アーム85の係合ピン85dがシフタ側係合凹部118aの側端を乗り越えることでその回動が許容され、ドラム側回動部材88においてはプランジャ84bが上昇状態で固定保持されることでその回動がロックされる(図17(a),18(a)参照)。このときの各回動部材87,88の相対回動により、ロストモーション機構89にシフトドラム51を回動させるための蓄力がなされる。
上記したシフトスピンドル46の回動は、シフトスピンドル角センサ62を介してECU59に検知され、その回動角が前記所定値に達したと判断されたとき、換言すればロストモーション機構89に変速ギヤ段位を変更できるだけのシフトドラム51の回動量を確保できる蓄力がなされたと判断されたときには、ECU59が各ソレノイド83,84の通電状態を切り替えて、シフタ側ソレノイド83を通電状態にすると共にドラム側ソレノイド84を非通電状態とする(図17(b),18(b)参照)。
すると、シフタ側回動部材87においてはプランジャ83bが上昇状態で固定保持されることでその回動がロックされ、ドラム側回動部材88においては所定の回転力でドラム側アーム86の係合ピン86dがドラム側係合凹部119aの側端を乗り越えることでその回動が許容される(図17(c),18(c)参照)。このときのドラム側回動部材88及びシフトドラム51の回動は、ロストモーション機構89に蓄力した回転力によりなされる。
上記したシフトドラム51の回動は、ギヤポジションセンサ61を介してECU59に検知され、シフトチェンジが完了したと判断されたときには、ECU59が各ソレノイド83,84の通電状態を切り替えて、シフタ側ソレノイド83を非通電状態にすると共にドラム側ソレノイド84を通電状態とした変速操作前の状態に戻る(図17(d),18(d)参照)。
このように、ロストモーション機構89に変速ギヤ段位を変更できるだけの蓄力がなされた後にこれを解放してシフトドラム51を回動させることで、セミオートマチックモードにおけるシフトチェンジの確実性及びシフト操作のフィーリングが高められる。
また、不意の外力(例えば運転者が無意識にシフトペダル47に触れる等の操作をした際)にも意図しないチェンジ機構34の作動を防止する等、副次的な機能も併せ持つこともできる。
以上説明したように、上記実施形態における鞍乗り型車両の変速制御装置は、水冷式のエンジン13とトランスミッション25とを具備し、前記トランスミッション25が、シフトペダル47が結合されると共に左右方向に沿って配置されるシフトスピンドル46と、前記シフトスピンドル46と平行に配置されてこのシフトスピンドル46の回動により間欠回動して変速ギヤ段位を変更するシフトドラム51と、を備える自動二輪車1に適用されるものにおいて、前記エンジン13のクランクケース15の一側方に突出すると共に前記シフトスピンドル46に近接して配置されるウォータポンプ71と、前記シフトスピンドル46の回動角を検出するシフトスピンドル角センサ62と、を備え、前記シフトスピンドル角センサ62が、側面視で前記ウォータポンプ71と少なくとも一部をラップさせ、かつ前記ウォータポンプ71よりも左右内側に配置されるものである。
この構成によれば、シフトスピンドル角センサ62及びウォータポンプ71を簡易かつコンパクトなレイアウト構成にできると共に、ウォータポンプ71によってシフトスピンドル角センサ62の保護を容易にできる。
また、上記鞍乗り型車両の変速制御装置は、前記シフトスピンドル角センサ62が、前記ウォータポンプ71における左右方向に沿う駆動軸71aよりも後方に配置され、前記シフトスピンドル46及びシフトドラム51が互いに上下位置を異ならせて配置され、前記シフトスピンドル角センサ62が、側面視で前記シフトスピンドル46及びシフトドラム51の各軸線C6,C7を結ぶ直線T1よりも前方に配置されるものである。
この構成によれば、シフトスピンドル角センサ62を効率よく配置してエンジン13をコンパクトに形成することができる。
また、上記鞍乗り型車両の変速制御装置は、前記シフトスピンドル46に入力されたシフト操作力を前記シフトドラム51へ伝達する伝動機構81と、ソレノイド83,84を具備して前記伝動機構81の動力伝達の可否を切り替えるロック機構82と、を備え、前記ソレノイド83,84が、側面視で前記シフトスピンドル角センサ62と少なくとも一部をラップさせるものである。
この構成によれば、ソレノイド83,84及びスピンドル角センサ62を効率よくレイアウトしてエンジン13をコンパクトに形成することができる。
また、上記鞍乗り型車両の変速制御装置は、前記シフトスピンドル角センサ62が、前記クランクケース15とその下方のオイルパン15cとの割面15eよりも上方に配置されるものである。
この構成によれば、エンジン13の組み付け性を向上させると共に、シフトスピンドル角センサ62を路面からの飛び石等から保護し易くできる。
また、上記鞍乗り型車両の変速制御装置は、前記ソレノイド83,84がソレノイドケース116に収容され、このソレノイドケース116に前記シフトスピンドル角センサ62の回動部材62cが支持されるものである。
この構成によれば、ソレノイド83,84及びシフトスピンドル角センサ62を効率よくレイアウトした上で、シフトスピンドル角センサ62の部品点数を抑えて配置することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、例えば、エンジン(クランクケース)とトランスミッション(変速機ケース)とが別体構成をなす車両に適用することも可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、当該発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であることはいうまでもない。