JP2011183335A - デミスタ洗浄方法 - Google Patents

Abstract

【課題】大掛かりな足場を仮設せずにデミスタエレメントの洗浄作業の安全性を確保しつつ、費用の低減および工程の短縮を図ることが可能な排煙脱硫装置のデミスタ洗浄方法を提供する。
【解決手段】燃焼装置から排出された排ガス中の有害物質を除去する排煙脱硫装置の吸収塔の上部に配置され、多数のデミスタエレメント１０を配設して構成されるデミスタを洗浄するにあたり、既設のデミスタエレメント１０と交換可能な予備エレメント１３を用意し、洗浄対象となるデミスタエレメント１０を選択して予備エレメント１３とを交換し、洗浄対象となるデミスタエレメント１０をデミスタ７上で洗浄する。
【選択図】 図３

Description

この発明は、排煙処理装置である排煙脱硫装置に設けられるデミスタ(ミストエリミネータ)を洗浄する方法に関する。

化石燃料の燃焼に伴って発生する排煙中の硫黄酸化物（ＳＯｘ）は、人体に有害であり、大気汚染等の問題にもなることから、火力発電所などにおいては、排煙脱硫装置を設けて排煙中の有害な硫黄酸化物を除去するようにしている。

排煙脱硫の手法としては、種々の手法があるが、殆どの火力発電所において、石灰石を吸収剤とする湿式石灰・石膏法が採用されている。
この湿式石灰・石膏法は、硫黄酸化物を含む排煙を吸収塔に導き、この吸収塔内でアルカリ成分である石灰石（ＣａＣＯ３）をスラリ状にした吸収液（石灰石スラリ）を排煙と接触させて排煙中の硫黄酸化物を吸収除去するとともに、石膏を副生品として回収するようにしたものである。

このような排煙脱硫装置は、吸収塔内に、石灰石スラリを散布するスプレー配管、ガス分散板、デミスタ（ミストエリミネータ）等の構造物が入っており、図１に示される排煙脱硫装置１においては、吸収塔３に流入した排ガスを分散させる複数層のガス分散板５、そのガス分散板５の上方に配置され、下方に向けて石灰石スラリーを噴霧するスプレー配管６、吸収塔３の最上部（吸収塔３の出口近傍）に配置されて、ガス流中に同伴される吸収液ミストを除去するデミスタ（ミストエリミネータ）７、このデミスタ７の下方に配置されて上方に向けて洗浄水を噴霧する下部洗浄配管８、及び、デミスタ７の上方に配置されて下方に向けて洗浄水を噴霧する上部洗浄配管９を有して構成されている。

デミスタ７は、多数の枠状のデミスタエレメントをパネル状に敷き詰めて構成されており、スラリ分を含んだミストをデミスタ表面に付着させて除去すると共に、デミスタエレメントの上下から系外から供給される洗浄水を噴霧することにより、ガス流中に同伴されるミストがこれ以上下流側へ飛散することを防止するようにしている。

しかし、このようなデミスタ７においても、長期の使用により硫黄酸化物を吸収したスラリが酸化することによって生じる石膏が付着して堆積し、ミストの捕獲能力が低下するため、高圧洗浄器などを用いて定期的にデミスタエレメントを洗浄する必要がある。

そこで、従来においては、このデミスタエレメントを洗浄する場合に、安全上の観点から、図４に示されるように、足場Ａをガス分散板５の上からデミスタ７の直下まで仮設し、デミスタ７の下側全体を足場Ａで覆って、その足場Ａの上に転落防止ネットＢを敷くと共に、デミスタ７を洗浄する上部洗浄配管９を取り外し、その上で、図４（ａ）に示されるように、洗浄対象となるデミスタエレメント１０を取り外し、他のデミスタエレメント１０の上に敷いた養生シート１２の上に置いて高圧洗浄器でデミスタエレメント１０の表面を洗浄し、その後、取り外した箇所へデミスタエレメント１０を戻す作業を繰り返すようにしたり、図４（ｂ）に示されるように、洗浄したいデミスタエレメント１０をクレーンＣで吸収塔３の外部へ持ち出し、そこで、洗浄した後に戻すようにしていた。
これにより、デミスタから洗浄するデミスタエレメントを取り外した場合でもデミスタに形成される開口部１４が転落防止ネットで塞がれるため、誤って開口部１４から転落することを防止するようにしていた。

尚、排煙脱硫装置のミストエリミネータの洗浄方法としては、以下の特許文献１〜３に示される方法が公知となっている。

特開平０５−３０１０１９号公報 特開平１１−２６７４４９号公報 特開２００３−０６２４２６号公報

しかしながら、このような従来の洗浄作業においては、デミスタエレメントの点検洗浄のために大掛かりな足場を仮設しているため、費用が増大し、また、作業工程の長期化を余儀なくされていた。特に、吸収塔の上部に設けられるデミスタは、多数のデミスタエレメントをパネル状に敷き詰めて構成されているため、デミスタ下に設置される足場も、安全上の観点からデミスタエレメントが設置されている全範囲にわたって仮設しなければならず、一度設置すると解体が容易でないため、膨大な労力を要し、デミスタエレメントの洗浄を簡易かつ頻繁に行うことができないものであった。

本発明は、係る事情に鑑みてなされたものであり、大掛かりな足場を仮設せずにデミスタエレメントの洗浄作業の安全性を確保しつつ、費用の低減および作業工程の短縮を図ることが可能な排煙脱硫装置のデミスタ洗浄方法を提供することを主たる課題としている。

上記課題を達成するために、本発明に係る排煙脱硫装置のデミスタ洗浄方法は、燃焼装置から排出された排ガス中の有害物質を除去する排煙脱硫装置の吸収塔の上部に配置され、多数のデミスタエレメントを配設して構成されるデミスタ（ミストエリミネータ）を洗浄する方法であって、前記デミスタエレメントと交換可能な予備エレメントを用意し、前記デミスタから洗浄対象となるデミスタエレメントを選択して前記予備エレメントと交換し、前記洗浄対象となるデミスタエレメントを前記デミスタ上で洗浄することを特徴としている。

したがって、本発明に係るデミスタ洗浄方法においては、予め用意された予備エレメントを洗浄対象となるデミスタエレメントを選択してこのエレメントと交換するので、デミスタにデミスタエレメントがない空所（開口部）ができることがなく、作業員が誤って転落することを防止することが可能となる。したがって、大掛かりな足場をデミスタの下方に仮設する必要がなくなるので、作業に係る経費を低減することができると共に作業工程の短縮が可能となる。
また、交換された洗浄対象となるデミスタエレメントをデミスタの上で洗浄するので、デミスタエレメントを大きく移動させる必要がなくなり、作業効率を高めることが可能となる。

ここで、洗浄対象となるデミスタエレメントは、前記デミスタの上部に敷設された養生シート上で行うことが好ましい。このような作業により、硬質の石膏のスケールを養生シート上で回収することが可能となり、石膏が下方に落下して下側にある機器や配管等を破損させる虞が無くなる。

また、予備エレメントは、前記デミスタエレメントのタイプ毎に１つずつ設けられることが好ましい。デミスタエレメントのタイプ毎に予備エレメントを設けることで、デミスタの全範囲を予備エレメントを利用して空所を形成することなく洗浄することが可能となる。

尚、予備エレメントを利用した洗浄方法としては、前記デミスタ上で洗浄された前記洗浄対象となるデミスタエレメントを、再び前記予備エレメントと交換し、次の洗浄対象となるデミスタエレメントを選択して前記予備エレメントと交換し、交換された次の洗浄対象となるデミスタエレメントを前記デミスタ上で洗浄するようにしても、用意した予備エレメントを初めに洗浄するデミスタエレメントと交換した後にそのままデミスタの一部として用い、次の洗浄対象となるデミスタエレメントを選択して前記デミスタ上で洗浄されたデミスタエレメントと交換し、交換された次の洗浄対象となるデミスタエレメントをデミスタ上で洗浄するようにしてもよい。

前者は、予め決められた予備エレメントをそれぞれのデミスタエレメントと順次差し替えて用いるものであり、デミスタエレメントの交換回数は多くなるが、デミスタエレメントの設置箇所がずれることがなく、それぞれのデミスタエレメントの状態を把握しやすくなる。また、後者は、洗浄されたデミスタエレメントを予備エレメントとして用いて次のデミスタエレメントと交換するものであり、エレメントの交換回数を減らして作業効率を高めることが可能となる。いずれの方法を用いるかは、現場での作業の都合や作業計画等に基づいて決定すればよい。

以上述べたように、本発明に係る排煙脱硫装置のデミスタ洗浄方法によれば、
洗浄したいデミスタエレメントを取り出して洗浄する際に、デミスタに空所を形成することなく、取り出したデミスタエレメントを洗浄することが可能となり、大掛かりな足場をデミスタの下方に仮設する必要がなくなる。このため、洗浄作業の安全性を確保することができると共に、足場を仮設する必要がなくなるので、費用の低減および作業工程の短縮化を図ることが可能となる。

図１（ａ）は、本発明に係る排煙脱硫装置を示す斜視図であり、図１（ｂ）は、吸収塔の上部に配置されるデミスタのデミスタエレメントの構成を示す斜視図である。 図２は、本発明に係る排煙脱硫装置を示す模式図であり、デミスタを洗浄している状態を示す図である。 図３は、デミスタのデミスタエレメントを洗浄する方法を説明する説明図である。 図４は、デミスタを洗浄する従来の洗浄方法を説明する図であり、（ａ）は取り出したデミスタエレメントをデミスタ上で洗浄する方法を示す図であり、（ｂ）は取り出したデミスタエレメントを吸収塔の外部に取り出し、外部で洗浄する方法を示す図である。

以下、本発明に係る排煙脱硫装置のデミスタ洗浄方法の実施例を図面を用いて説明する。

図１及び図２において、湿式排煙脱硫装置１が示され、この排煙脱硫装置１は、ボイラ等の燃焼装置から排出される硫黄酸化物（ＳＯ２）を含む排出ガスが図示しない熱回収器を経由して下部に設けられた導入路２を介して吸収塔３に導入される。この吸収塔３の導入路２よりも上方には、ガス通路４を覆うように設けられた複数層のガス分散板５が設けられ、このガス分散板５の上方には、アルカリ成分である石灰石（ＣａＣＯ３）をスラリ状にした吸収液（石灰石スラリ）を下方に向けて噴霧するスプレー配管６が設けられている。

吸収塔３の最上部（吸収塔の出口近傍）には、ガス流中に同伴される吸収液ミストを除去するデミスタ（ミストエリミネータ）７が設けられ、このデミスタ７の下方には、上方に向けて洗浄水を噴霧する下部洗浄配管８が、また、デミスタの上方には、下方に向けて洗浄水を噴霧する上部洗浄配管９がそれぞれ設けられている。

デミスタ７は、多数の枠状のデミスタエレメント１０をパネル状に敷き詰めて構成されているもので、それぞれのデミスタエレメント１０は、例えば、図１（ａ）に示されるように、合成樹脂又は金属製の薄板を波状に折り曲げて所定の間隔、例えば３０mm間隔で平行に多数並べてウエザールーバ１０ａを構成したものであり、１７００ｍｍ×６００ｍｍ程度の大きさに形成されている。この例では、８種類のデミスタエレメントがあり、全体で６０枚程度のデミスタエレメント１０によってデミスタ７が構成されている。

したがって、導入路２を介して吸収塔３に導入された排ガスは、ガス分散板５で吸収塔３のガス通路４を偏ることなく略均等に拡散されて上方へ流れ、その過程で、スプレー配管６から噴霧される石灰石スラリの液滴と接触し、排ガス中のＳＯｘが液滴表面で吸収されると共に、排ガス中の媒塵が液滴との衝突により除去される。また、ガス流中に同伴されるスラリ分を含んだミストは、デミスタ７を通過する際にデミスタエレメント１０のウエザールーバ１０ａに衝突して除去されると共に、デミスタの上下から洗浄配管８，９によって噴霧される洗浄水により、上昇してきたスラリーを、これ以上、下流側へ飛散することを防止し、同時にデミスタエレメント１０のウエザールーバ１０ａの表面を洗浄するようにしている。

ところで、デミスタエレメント１０のウエザールーバ１０ａの表面には、長期の使用により、ミスト中のスラリが堆積して石膏として付着するため、定期的に付着した石膏を高圧洗浄水を吹き付けて除去する洗浄作業を行う必要がある。

この洗浄作業は、デミスタ７の上部に除去された石膏を受ける養生シート１２を広げて置くと共に、デミスタ上から落下した石膏を受ける養生シート１５を吸収塔３の下部にも広げて敷いておき（図２参照）、また、上部洗浄配管９を取り外し、その上で、図３（a)に示されるように、デミスタエレメントのタンプ毎に各１枚ずつの予備エレメント１３を洗浄作業の開始時に吸収塔内に持ち込み、デミスタ７の上部に置いておく。

その後、図３（ｂ）に示されるように、洗浄対象となるデミスタエレメント１０を選択して取り外し、養生シート上に載置した後に、取り外した箇所に形成される開口部１４に、取り外したデミスタと同タイプの予備エレメント１３を嵌め入れて開口部１４を塞ぐ。

以上のように、洗浄したいデミスタエレメント１０と予備エレメント１３とを差し換えた後に、取り外したデミスタエレメント１０を高圧洗浄水を吹き付けてウエザールーバ１０ａに付着した石膏を除去する（図３（ｃ））。これにより、デミスタエレメント１０のウエザールーバ１０ａの表面に付着した石膏は剥がれて養生シート１２上に集められ、洗浄水は養生シート１２の脇から吸収塔３の下方へ流れ落ちる。

デミスタエレメントの洗浄が完了すると、洗浄したデミスタエレメントを元に戻すために、元の箇所に嵌め込んだ予備エレメント１３と洗浄したデミスタエレメント１０とを再び差し替える（図３（ｄ）のＩで示す作業）。
そして、次に洗浄したい同タイプのデミスタエレメント１０を選択して取り外し、予備エレメント１３と交換し、上述と同様の作業を同タイプの全てのデミスタエレメントが洗浄し終わるまで繰り返す。その後、タンプの異なるデミスタエレメントに対して、上述した作業を繰り返し行えば洗浄作業は完了する。

尚、上述の洗浄作業においては、洗浄したデミスタエレメント１０を元の箇所に戻して、次の洗浄対象となるデミスタエレメント１０と予備エレメント１３とを差し替える例、即ち、予め用意した予備エレメント１３を順次使い回す例を示したが、洗浄したデミスタエレメント１０を次の洗浄対象となるデミスタエレメントと差し替える予備エレメントとして用いるようにしてもよい。

即ち、次に洗浄したい同タイプのデミスタエレメント１０を選択して取り外し、取り外した開口箇所に先ほど洗浄したデミスタエレメント１０を嵌め入れる（図３（ｄ）のIIで示す作業）。
そして、以上の作業を同タイプの全てのデミスタエレメントが洗浄し終わるまで繰り返し行い、その後、異なるタイプのデミスタエレメントに対して同様の作業を行う。
以上のようにして、デミスタ７の洗浄が完了した後に、予備エレメント１３又は最後に取り出したデミスタエレメント１０を吸収塔３から持ち出すことで一連の作業を終える。

したがって、以上の洗浄作業によれば、洗浄したいデミスタエレメントを取り外しても、その部分に形成される開口部１４を予備エレメント１３又は洗浄されたデミスタエレメント１０で塞ぐことができるので、誤って開口部１４から転落する危険がなくなり、洗浄作業の都度に大掛かりな足場を仮設する必要がなくなる。
このため、作業時の安全性を確保しつつ、洗浄作業に掛かる費用を低減することができると共に作業工程の短縮を図ることが可能となる。

１ 排煙脱硫装置
３ 吸収塔
７ デミスタ
１０ デミスタエレメント
１３ 予備エレメント

Claims (5)

1. 燃焼装置から排出された排ガス中の有害物質を除去する排煙脱硫装置の吸収塔の上部に配置され、多数のデミスタエレメントを配設して構成されるデミスタを洗浄する方法であって、
   前記デミスタエレメントと交換可能な予備エレメントを用意し、
   前記デミスタから洗浄対象となるデミスタエレメントを選択して前記予備エレメントとを交換し、
   前記洗浄対象となるデミスタエレメントを前記デミスタ上で洗浄する
   ことを特徴とするデミスタ洗浄方法。
2. 前記洗浄対象となるデミスタエレメントは、前記デミスタの上部に敷設された養生シート上で行われることを特徴とする請求項１記載のデミスタ洗浄方法。
3. 前記予備エレメントは、前記デミスタエレメントのタイプ毎に１つずつ設けられていることを特徴とする請求項１記載のデミスタ洗浄方法。
4. 前記デミスタ上で洗浄された前記洗浄対象となるデミスタエレメントを、再び前記予備エレメントと交換し、
   次の洗浄対象となるデミスタエレメントを選択して前記予備エレメントと交換し、
   交換された次の洗浄対象となるデミスタエレメントを前記デミスタ上で洗浄する
   ことを特徴とする請求項１記載のデミスタ洗浄方法。
5. 次の洗浄対象となるデミスタエレメントを選択して前記デミスタ上で洗浄されたデミスタエレメントと交換し、
   交換された次の洗浄対象となるデミスタエレメントを前記デミスタ上で洗浄する
   ことを特徴とする請求項１記載のデミスタ洗浄方法。