JP2011182726A - 新規な成長ホルモン分泌促進因子受容体阻害ペプチド - Google Patents

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Abstract

【課題】成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHS−R)に作用するアンタゴニストの提供をする。
【解決手段】特定のアミノ酸配列からなるペプチド、あるいは、特定のアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加をもつアミノ酸配列からなり、かつ、GHS−Rアンタゴニスト活性を有するペプチド、該ペプチドをコードする核酸、該ペプチドを有効成分として含有する医薬、該ペプチドに対する抗体、該ペプチドの定量方法及び該ペプチドの製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHS−R)のアンタゴニストとして機能する新規ペプチドに関する。
成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHS−R)の内因性リガンドとして、グレリンが同定されている(非特許文献1)。グレリンは、28アミノ酸からなるペプチドホルモンで、主に胃で産生されるが、視床下部、腸、腎臓、膵臓、心臓などでも少量ながら分泌されている。グレリンの受容体であるGHS−Rも視床下部、心臓、消化管、膵臓、甲状腺、血管などに広く発現している。
グレリンは成長ホルモン分泌促進作用のほかに、強力な摂食促進や脂肪代謝調節、胃酸分泌・胃運動亢進など様々な生理活性をもつことが報告されている。血中のグレリンは主に胃から供給されており、ヒトにおいて血漿グレリン濃度は各食事前に上昇し、食事後に基礎値に戻る(非特許文献2)。また、げっ歯類において絶食時に血漿グレリン濃度が増加し(非特許文献3)、グレリンの末梢投与によって摂食量および体重が増加する(非特許文献3、4、5及び6)。このような、同様の摂食亢進作用がヒトにおいても確認されており(非特許文献4及び7)、グレリンは末梢投与によって摂食亢進作用を示す唯一のホルモンである。
従って、GHS−Rのアンタゴニストは摂食量と体重を減少させ、糖尿病や高血圧、高脂血症等の発症リスクの上昇に関与している肥満症への臨床応用の可能性が期待される。 実際、抗グレリン抗体(非特許文献6)及びグレリン結合性RNAアプタマー(非特許文献8)の投与によって摂食抑制と体重減少を引き起こすことが報告されており、ペプチド性GHS−Rアンタゴニストである[D−Lys−3]−GHRP−6のマウス末梢投与が摂食量と体重の減少をもたらすことが報告されている(非特許文献9)。これらのことから、GHS−Rの働きを阻害することが肥満症の改善につながると見込まれる。
GHS−R アンタゴニストは、合成小分子によるものの開発が進んでいる。モンペリエ大グループによる1,2,4−triazole誘導体(非特許文献10)、アボット社による2,4−diaminopyrimidine誘導体(非特許文献11)、isoxazole carboxamide誘導体(非特許文献12)、tetralin carboxamide誘導体(非特許文献13)、バイエル社によるqunazolinone誘導体(非特許文献14)等が代表的なものである。各々、グレリンに対するIC50は、数nMと強く、in vivoにおいて摂食抑制と体重減少が確認されているもの(非特許文献10、11及び14)もある。特にアボット社による2,4−diaminopyrimidine誘導体とバイエル社によるqunazolinone誘導体は経口投与が可能と報告されている。しかしながら小分子化合物であることから標的特異性の低さによる副作用が懸念される。
一方、ペプチド性のGHS−Rアンタゴニストの報告は非常に少ない。最もよく知られているのは、人工の成長ホルモン放出ペプチドであるGHRP−6の1アミノ酸置換体である[D−Lys−3]−GHRP−6(非特許文献15)である。グレリンに対するIC50は、数μMと弱いが、一般的に入手可能なGHS−Rアンタゴニストとして基礎研究分野で広く使われている。また、[D−Arg1,D−Phe5,D−Trp7,9,Leu11]Substance Pは、ニューロキニン受容体やボンベシン受容体とともにGHS−Rのアンタゴニストとでもあることが知られている。そのグレリンに対するIC50は、やはり数μMと弱いが、アンタゴニストとしての性質の他に、GHS−Rの強力なインバースアゴニスト(EC50=5.2nM)として働くことが報告されている(非特許文献16)。[D−Lys−3]−GHRP−6と[D−Arg1,D−Phe5,D−Trp7,9,Leu11]Substance Pのマウス末梢投与によって、摂食量の減少を引き起こすことが確認されている(非特許文献9)。グレリンの3番目セリンのオクタノイル化はGHS−Rの活性に必須であるが、3番目のセリンをトリプトファンに置換しても活性が維持することが知られている(非特許文献17)
Kojimaら、Nature 1999;402:656−660. Cummingsら、Diabetes 2001;50:1714−1719. Tschopら、Nature 2000;407:908−913. Inui、Nat Rev Neurosci 2001;2:551−60. Asakawaら、Gastroenterology 2001;120:337−456. Nakazatoら、Nature 2001;409:194−8. Wrenら、J Clin Endocrinol Metab 2001;86:5992−5 Shearmanら、Endocrinology 2006;147:1517−1526. Asakawaら、Gut 2003;52:947−952. Moulinら、J. Med. Chem.2008;51: 689−693. Xinら、Journal of Medicinal Chemistry,2006;49:4459−4469. Xinら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2005;15:1201−1204. Zhaoら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2005;15:1825−1828. Rudolphら、Journal of Medicinal Chemistry,2007;50:5202−5216. Chengら、Endocrinology,1989;124:2791−2798. Holstら、Mol Endocrinol,2003;17:2201−2210. Matsumotoら、Biochemical and Biophysical Research Communications,2001;287:142−146.
以上の状況に鑑み、本発明は、成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHS−R)に対するアンタゴニスト活性を持つ新規なペプチドの提供を目的とする。
また、本発明は、該ペプチドからなる摂食抑制剤、及び成長ホルモンの分泌過剰に起因する疾患の治療剤の提供を目的とする。
さらに、本発明は、上記ペプチドに対する抗体、当該抗体を用いる当該ペプチドの定量方法、および当該ペプチドの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、cDNAディスプレイ法を用いてGHS−Rに対するアンタゴニストの探索を行った結果、アンタゴニストとしての活性を有する新規なペプチドを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明の以下の(1)〜(8)である。
(1)以下の(a)又は(b)に示されるペプチド。
(a)配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)配列番号12で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加をもつアミノ酸配列からなり、かつ、GHS−Rアンタゴニスト活性を有するペプチド。
(2)上記(1)に記載のペプチドをコードする核酸。
(3)上記(1)に記載のペプチドを有効成分として含有する摂食抑制剤。
(4)上記(1)に記載のペプチドを有効成分として含有する成長ホルモン分泌抑制剤。
(5)上記(1)に記載のペプチドを有効成分として含有する成長ホルモンの分泌過剰に起因する疾患の治療剤。
(6)上記(1)に記載のペプチドに対する抗体。
(7)上記(1)に記載のペプチドを、当該ペプチドに対する抗体を用いて検出することを含む、当該ペプチドの定量方法。
(8)上記(1)のペプチドを遺伝子組み換え技術を用いて製造する方法であって、当該ペプチドをコードするDNAを含有するベクターにより宿主細胞を形質転換すること;及び、
得られた形質転換細胞を培養して培養物から目的のペプチドを採取すること;
を含む方法。
本発明のペプチドは、成長ホルモン分泌促進因子受容体(GHS−R)アンタゴニスト活性を有し、摂食抑制剤、成長ホルモン分泌抑制剤及び成長ホルモンの分泌過剰に起因する疾患の治療剤として用いることができる。
本発明のペプチドは、L−アミノ酸のみで構成した場合にも活性を有しており、特に、アンタゴニスト活性を有するペプチドの場合、従来はD−アミノ酸により構成されているものが多いことから、従来のアンタゴニストペプチドよりも調製コストを低減させることが可能である。
また、本発明のペプチドは、L−アミノ酸のみで構成しても活性を有するため、本発明のペプチドは、バイオリアクターでの大量生産も可能である。
さらに、本発明のペプチドは、L−アミノ酸のみで構成した場合、D−アミノ酸含有ペプチドに比べて生体内で分解されやすくなるため、薬効持続時間の必要以上の延長による副作用の軽減も可能である。
本発明のペプチドによるグレリン刺激性胃収縮の抑制について検討した結果を示す。
本発明の実施態様の一つは、以下の(a)又は(b)に示されるペプチドである。
(a)配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
(b)配列番号12で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加をもつアミノ酸配列からなり、かつ、GHS−Rアンタゴニスト活性を有するペプチド。
ここで、上述の「1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加」との記載中、「1若しくは数個」とは、好ましくは、1〜3個、より好ましくは1又は2個、最も好ましくは1個である。アミノ酸の置換、付加を行う場合、非天然アミノ酸で置換又は付加を行ってもよい。
本発明のペプチドのC末端は、通常カルボキシル基(−COOH)又はカルボキシレート(−COO−)の他、当該カルボキシル基は、アミド(−CONH)やエステル(−COOR)等に化学修飾されていてもよい。ここで、エステル中のRとしては、C1−6アルキル基(例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル)、C3−8シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル、シクロヘキシル)、C1−6アリール基(例えば、フェニル、α−ナフチル)、フェニル−C1−2アルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル)、α−ナフチル−C1−2アルキル基(例えば、α−ナフチルメチル)等が挙げられる。その他、経口用エステルとして汎用されているピバロイルオキシメチルエステルとすることも可能である。本発明のペプチドがC末端以外にもそのペプチド鎖中にカルボキシル基を有する場合には、当該カルボキシル基がアミド化又はエステル化されているものも本発明のペプチドに含まれる。この場合のエステルとしては上記の各エステルが挙げられる。同様に、本発明のペプチドのN末端は、通常アミノ基(−NH)であるが、当該アミノ基は、ホルミル基、アセチル基等のC1−6アシル基等で化学修飾されていてもよい。その他、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したものや、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な官能基(例えば、ホルミル基、アセチル等)で化学修飾されているものや糖鎖の結合しているものも本発明のペプチドに含まれる。
また、本発明のペプチドには、非天然型のペプチド結合、例えば、ケトメチレン、チオアミドなどによって構成されるものも含まれる。
本発明のペプチドは、当該技術分野において周知の方法、例えば、cDNAディスプレイ法(後述を参照のこと)など、によって取得されたcDNAを使用して、in vitroにおける無細胞翻訳系や、生物学的に合成することで調製する他、化学的ペプチド合成法(固相法又は液相法)によって調製することができる。
化学的にペプチドを合成する場合、本発明のペプチドを構成するペプチドの一部もしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。合成反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出、蒸留、カラムクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを単離精製することができる。
さらに、本発明には、本発明のペプチドをコードする核酸が含まれる。ここで核酸とは、DNA、RNAのいずれであってもよく、また、一本鎖及び二本鎖のいずれであってもよい。当該核酸は、本発明のペプチドを合成するために使用することができる。当該核酸からの本発明のペプチドの合成は、当該技術分野において周知の方法などを利用して容易に実施することができる。例えば、当該ペプチドをコードするDNAを含有するベクターにより宿主細胞を形質転換し、得られた形質転換細胞を培養して培養物から目的のペプチドを採取することにより、本発明のペプチドを得ることができる。
本発明のさらなる実施態様は、本発明のペプチドを有効成分として含有する摂食抑制剤、成長ホルモン分泌抑制剤及び成長ホルモンの分泌過剰に起因する疾患の治療剤である。ここで、成長ホルモンの分泌過剰に起因する疾患には、巨人症及び末端肥大症が含まれる。「治療」には、すでに疾患発症した諸症状を緩和し、完治せしめることの他、疾患の発症が疑われ又は予想される対象において、該疾患の発症を予め阻止する、予防的な治療も含まれる。治療の対象は、哺乳動物であり、この哺乳動物は、哺乳類に分類される任意の動物を意味し、特に限定はしないが、例えば、ヒトの他、イヌ、ネコ、ウサギなどのペット動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマなどの家畜動物などである。特に好ましい「哺乳動物」は、ヒトである。これらの剤は、通常、医薬製剤の形で治療対象に投与することができる。
本発明の医薬製剤の剤型は、特に限定はされず、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、シロップ剤、懸濁剤、座剤、軟膏、クリーム剤、ゲル剤、貼付剤、吸入剤、点滴剤、注射剤及び経鼻・経肺による吸入剤等が挙げられるが、点滴剤、注射剤、あるいは、経鼻・経肺による吸入剤の形態が好ましい。場合によっては、高分子などで被覆した徐放製剤を体内・皮下に直接投与することも可能である。
これらの製剤は常法に従って調製される。液体製剤にあっては、用時、水又は他の適当な溶媒に溶解又は懸濁する形であってもよい。また錠剤、顆粒剤は周知の方法でコーティングしてもよい。注射剤の場合には、本発明のペプチドを水、生理食塩水、あるいは、ブドウ糖溶液等の溶媒に溶解させて調製される、必要に応じて緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
本発明の医薬製剤の製造に用いられる製剤用添加物の種類、有効成分に対する製剤用添加物の割合、又は医薬製剤の製造方法は、製剤の形態に応じて当業者が適宜選択することが可能である。製剤用添加物としては無機又は有機物質、あるいは、固体又は液体の物質を用いることができ、一般的には、有効成分重量に対して1重量%から90重量%の間で配合することができる。具体的には、その様な物質の例として乳糖、ブドウ糖、マンニット、デキストリン、シクロデキストリン、デンプン、蔗糖、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、イオン交換樹脂、メチルセルロース、ゼラチン、アラビアゴム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、軽質無水ケイ酸、ステアリン酸マグネシウム、タルク、トラガント、ベントナイト、ビーガム、酸化チタン、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリル硫酸ナトリウム、グリセリン、脂肪酸グリセリンエステル、精製ラノリン、グリセロゼラチン、ポリソルベート、マクロゴール、植物油、ロウ、流動パラフィン、白色ワセリン、フルオロカーボン、非イオン性界面活性剤、プロピレングルコール等が挙げられる。
注射剤(点滴剤などを含む)を製造するには、有効成分を必要に応じて塩酸、水酸化ナトリウム、乳糖、乳酸、ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムなどのpH調整剤、塩化ナトリウム、ブドウ糖などの等張化剤と共に注射用蒸留水に溶解し、無菌濾過してアンプルに充填するか、更にマンニトール、デキストリン、シクロデキストリン、ゼラチンなどを加えて真空凍結乾燥し、用時溶解型の注射剤としてもよい。また、有効成分にレチシン、ポリソルベート80 、ポリオキシエチレン、硬化ヒマシ油などを加えて水中で乳化せしめ注射剤用乳剤とすることもできる。
本発明の医薬製剤の投与量及び投与回数は特に限定されず、治療対象疾患の悪化・進展の防止及び/又は治療の目的、疾患の種類、患者の体重や年齢などの条件に応じて、医師の判断により適宜選択することが可能である。一般的には、経口投与における成人一日あたりの投与量は0.01〜1000mg(有効成分重量)程度であり、一日1回又は数回に分けて、あるいは数日ごとに投与することができる。注射剤として用いる場合には、成人に対して一日量0.001〜100mg(有効成分重量)を連続投与又は間欠投与することが望ましい。
本発明の医薬製剤は、植込錠及びマイクロカプセルに封入された送達システムなどの徐放性製剤として、体内から即時に除去されることを防ぎ得る担体を用いて調製することができる。例えば、エチレンビニル酢酸塩、ポリ酸無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステル、及びポリ乳酸などの、生物分解性、生物適合性ポリマーを用いることができる。このような材料は、当業者によって容易に調製することができる。また、リポソームの懸濁液も薬剤的に受容可能な担体として使用することができる。有用なリポソームは、限定はしないが、ホスファチジルコリン、コレステロール及びPEG誘導ホスファチジルエタノール(PEG−PE)を含む脂質組成物として、使用に適するサイズになるように、適当なポアサイズのフィルターを通して調製され、逆相蒸発法によって精製される。
本発明の医薬製剤は、キットの形態で、容器、パック中に投与の説明書と共に含めることができる。本発明に係る医薬製剤がキットとして供給される場合、該医薬製剤のうち複数の構成成分が別々の容器中に包装され、使用直前に混合される。このように構成成分を別々に包装するのは、活性構成成分の機能を失うことなく長期間の貯蔵を可能にするためである。
キット中に含まれる本発明のペプチドや製剤用添加物は、これらの構成成分が活性を長期間有効に持続し、容器の材質によって吸着されず、変質を受けないような何れかの種類の容器中に供給される。例えば、該容器がアンプルである場合には、窒素ガスのような中性で不反応性ガスと共に構成成分を収納してもよい。アンプルの材質としては、ガラス、ポリカーボネート、ポリスチレンなどの有機ポリマー、セラミック、金属、又は試薬を保持するために通常用いられる他の何れかの適切な材料などが使用される。アンプル以外でも、製剤の特徴や用途形態によって、試験管、バイアル、フラスコ、ボトル、シリンジ、又はその類似物を使用することができる。本発明のキットには使用説明書を添付してもよい。当該使用説明は、紙などに印刷され、及び/又はフロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、Zipディスク、ビデオテープ、オーディオテープなどの電気的又は電磁的に読み取り可能な媒体に記録されて供給されてもよい。詳細な使用説明は、キット内に実際に添付されていてもよく、あるいは、キットの製造者又は分配者によって指定され又は電子メール等で通知されるウェブサイトに掲載されていてもよい。
本発明のさらなる実施態様は、本発明のペプチドに対する抗体である。本発明のペプチドを抗原とする抗体は、公知の方法により取得することができる。本発明の抗体はモノクローナル抗体またはポリクローナル抗体のいずれでもよい。また、本発明は、これらの抗体を用いた本発明のペプチドの定量方法である。例えば、被検試料中の抗原量に対応した抗体、抗原もしくは抗体-抗原複合体の量を化学的又は物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法である。
以下に本発明を具体例によって説明するが、本発明の範囲はこれらの例によって限定されるものではない。
1.ピューロマイシンリンカーの作製
1−1.ピューロマイシンリンカーの合成
ピューロマイシンリンカーは、EMCS (N-(6-Maleimidocaproyloxy)succinimide)を用いて以下の2つの修飾オリゴヌクレオチドを架橋させることにより合成した。
Puro−F−S;5’-(S)-TC(T-FITC)-(Spc18)-(Spc18)-(Spc18)-(Spc18)-CC-(Puro)-3’
Biotin−loop;5’-CCCGGTGCAGCTGTTTCATC(T-Biotin)CGGAAACAGCTGCACCCCCCGCCGCCCCCCG(T-NH2)CCT-3’(配列番号1)
ここで、(S)は5’-Thiol-Modifier-C6、(T-FITC)はFluorescein dT、(Puro)はピューロマイシン、(Spc18)はspacer 18、(T-NH2)はAmino-Modifier C6 dT、(T-Biotin)はBiotin-dTを表す。これら修飾ホスホロアミダイト試薬は、Glen Research社から購入した。
1−2.Puro−F−Sのチオール基の還元反応
0.7mM Puro−F−S、0.7mM リン酸バッファー(pH9.0)、0.3mM DTTの反応組成で室温、1時間反応させた。反応後、NAP−5 column(GEヘルスケア)により20mM リン酸バッファー(pH7.0)を用いて精製物を精製した。
1−3.Biotin−loopのEMCS修飾
70μM Biotin−loop、14mM EMCS(同仁化学)、140mM リン酸バッファー(pH7.0)の反応組成で37℃、30分反応させ、生成物をエタノールで沈殿させペレットにした。
1−4.Puro−F−SとBiotin−loopの架橋反応
EMCS修飾されたBiotin−loopのペレットを還元puro−F−S溶液に溶解し、4℃で一晩反応させることにより架橋物(ピューロマイシンリンカー)を得た。この溶液に、100mMのDTTを加え室温で30分反応させた後、エタノール沈殿により未反応のPuro−F−Sを除去した。これを、0.1MのTEAAで平衡化したクロマトグラフィーカラム(Waters Symmetry300 C18,4.6×250mm、粒径5μm)に負荷し、バッファーA:0.1M TEAA、バッファーB:80%アセトニトリル(バッファーB%:初期濃度15%,終濃度35%)を用いて流速0.5ml/minで30分間の溶出を行うことにより、未反応のBiotin−loopを分離した。各分画を尿素変性ポリアクリルアミドゲルで解析し、目的の分画を濃縮遠心機で濃縮した後、エタノール沈殿し、ペレットを水に溶解後、分光光度計で濃度を算出した。
2.cDNA−ディスプレイ用ペプチドライブラリ作製の為のDNAコンストラクトの作製
GHS−Rの内因性リガンドであるグレリンは脊椎動物間でそのN末端7アミノ酸の相同性が高い。また、グレリンのN末端5アミノ酸が活性に必須(M. Matsumoto et al. BBRC 284, 655-659 (2001))で、N末端1番目もしくは2番目のアミノ酸の置換によってアゴニスト・アンタゴニスト活性が変換する(Kang Cheng et al. Endocrinology 124(6) 2791-2798 (1989), K. Ohinata, et. al., PEPTIDES 27, 1632-1637 (2006))ことから、グレリンのN末端がGHS−Rへの結合に関与していると考えられる。また、グレリンからそのC末端を除くとin vivoでの活性が減少することから、グレリンのC末端はグレリンの安定性に関与していると考えられる。以上のことからグレリンのN末端8アミノ酸をランダム化したcDNA−ディスプレイ用ペプチドライブラリを作製した。以下その作製法を示す。
T7プロモーター、タバコモザイクウイルスの翻訳促進配列(UTR)、翻訳開始部位、スキャフォールドとしてPOU DNA結合ドメイン(POU)、ヒスチジンタグ、ピューロマイシンリンカーのハイブリ部位を含む2本鎖DNA;
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGGACCTTGAGGAGCTTGAGCAGTTTGCCAAGACCTTCAAACAAAGACGAATCAAACTTGGATTCACTCAGGGTGATGTTGGGCTCGCTATGGGGAAACTATATGGAAATGACTTCAGCCAAACTACCATCTCTCGATTTGAAGCCTTGAACCTCAGCTTTAAGAACATGTGCAAGTTGAAGCCACTTTTAGAGAAGTGGCTAAATGATGCAGAGGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGGCGGAAGCAGGACGGGGGGCGGCGGGGAAA-3’, Junichi Yamaguchi, et al. Nucleic Acids Research 37(16):e108 (2009)、配列番号2)
をテンプレートにして、1本鎖DNA;
5’- GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATA-3’ (配列番号3)
及び、ヒスチジンタグとXaプロテアーゼ認識切断部位(Xa)を含む一本鎖DNA;5’-CGACCTTCAATGCCGCTTCCTGCGTGATGATGATGATGATGGCTGCCTCCCCC-3’ (配列番号4)
を用いてオーバーラップPCRを行い、T7プロモーター、UTR、翻訳開始部位、POU、ヒスチジンタグ、Xaを含む2本鎖DNA;
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGGACCTTGAGGAGCTTGAGCAGTTTGCCAAGACCTTCAAACAAAGACGAATCAAACTTGGATTCACTCAGGGTGATGTTGGGCTCGCTATGGGGAAACTATATGGAAATGACTTCAGCCAAACTACCATCTCTCGATTTGAAGCCTTGAACCTCAGCTTTAAGAACATGTGCAAGTTGAAGCCACTTTTAGAGAAGTGGCTAAATGATGCAGAGGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGCAGGAAGCGGCATTGAAGGTCG?3’;配列番号5)
を作製した。
また、Xa、ランダム化グレリンN末端領域を含む1本鎖DNA;
5’-GAAGCGGCATTGAAGGTCGTNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKCACCAGAGAGTCCAGCAGAGAAAGGAGTCG-3’,N=A/T/G/C, K=G/T;配列番号6)
及びグレリンC末端配列とピューロマイシンリンカーハイブリ部位を含む1本鎖DNA;
5’-TTTCCCCGCCGCCCCCCGTCCTCCTCGGGGCTGCAGCTTGGCTGGTGGCTTCTTCGACTCCTTTCTCTGCTGGAC-3’(配列番号7)
を用いてオーバーラップPCRを行い、Xa、N末端8アミノ酸をランダム化したグレリン配列、ピューロマイシンリンカーハイブリ部位を含む2本鎖DNA;
5’-GAAGCGGCATTGAAGGTCGTNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKCACCAGAGAGTCCAGCAGAGAAAGGAGTCGAAGAAGCCACCAGCCAAGCTGCAGCCCCGAGGAGGACGGGGGGCGGCGGGGAAA-3’(配列番号8)
を作製した。
そして、配列番号5及び配列番号8で示されるDNAを用いてオーバーラップPCRを行い、T7プロモーター、UTR、翻訳開始部位、POU、ヒスチジンタグ、Xa、N末端8アミノ酸をランダム化したグレリン配列、ピューロマイシンリンカーハイブリ部位を含む2本鎖DNA;
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACAACAACAACAAACAACAACAACATTACATTTTACATTCTACAACTACAAGCCACCATGGACCTTGAGGAGCTTGAGCAGTTTGCCAAGACCTTCAAACAAAGACGAATCAAACTTGGATTCACTCAGGGTGATGTTGGGCTCGCTATGGGGAAACTATATGGAAATGACTTCAGCCAAACTACCATCTCTCGATTTGAAGCCTTGAACCTCAGCTTTAAGAACATGTGCAAGTTGAAGCCACTTTTAGAGAAGTGGCTAAATGATGCAGAGGGGGGAGGCAGCCATCATCATCATCATCACGCAGGAAGCGGCATTGAAGGTCGTNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKNNKCACCAGAGAGTCCAGCAGAGAAAGGAGTCGAAGAAGCCACCAGCCAAGCTGCAGCCCCGAGGAGGACGGGGGGCGGCGGGGAAA-3’(配列番号9)
を作製し。シリカメンブレンカラム(Qiaquick PCR purification column,QIAGEN)で精製した。
PCR反応は、prime STAR polymerase(takara)を使用し、
98℃2分−[98℃10秒/55℃5秒/72℃30秒]×20サイクル−72℃2分− 4℃∞、のプログラムで行った。配列番号3、4、6、及び7は、ホスホロアミダイト法によって化学合成した。各配列の下線部はオーバーラップPCRの原料として用いる際のオーバーラップ領域を示している。
3.DNAコンストラクトの転写
2本鎖DNA(配列番号9)をテンプレートにして、mG(5’)ppp(5’)G RNA キャッピングアナログ(invitrogen)存在下、RiboMAX Large Scale RNA Production System(Promega)を用いて、T7 RNAポリメラーゼにより転写反応を行い、mRNAを合成した。合成したmRNAはシリカメンブレンカラムを用いて精製した。
4.ピューロマイシンリンカーのmRNAへのライゲーション
ピューロマイシンリンカーとmRNAを、T4 RNA Ligase buffer(takara)中で、95℃で熱変性し、15分かけて25℃に下げることで、ハイブリ部位でアニーリングさせた。T4ポリヌクレオチドキナーゼとT4 RNAリガーゼを加え、25℃で2時間反応させることにより、mRNAとピューロマイシンリンカーをライゲーションさせた。生成したライゲーション産物はシリカメンブレンカラムを用いて精製した。
5.cDNA−ペプチド複合体の形成(in vitro翻訳)
mRNA−ピューロマイシンリンカー複合体を、Retic Lysate IVT Kit(Ambion)を用いて30℃で60分間翻訳した後、75mM KCl及び250mM MgCl存在下で、30℃60分間インキュベートすることにより、mRNA−ピューロマイシンリンカー−蛋白質の複合体を形成させた。
6.翻訳産物の磁気ビーズへの固定
翻訳過程で生成したRNA−タンパク質複合体を、ストレプトアビジン磁気ビーズを用いて精製した。
7.逆転写反応
SUPER script III(invitrogen)を用いて逆転写反応を行い、cDNA/RNAハイブリッドを形成した。
8.制限酵素処理
次に、ピューロマイシンリンカーのステム構造部位を制限酵素PvuIIで消化することにより、cDNA−ピューロマイシンリンカー−蛋白質複合体をストレプトアビジンビーズから離脱させた。
9.Ni−NTA精製
離脱させた複合体をNi−NTA磁気ビーズを用いて精製した。
10.Factor Xa protease 処理
factor Xa proteaseでPOUドメイン領域とランダム化グレリン領域の間を切断し、cDNA/RNA−ピューロマイシンリンカー−ランダム化グレリン ライブラリを作製した。
11.スクリーニング
1ラウンド目は、GHS−R非発現細胞によるプレセレクションを省き、直接GHS−R発現細胞にライブラリーを作用させた。2ラウンド目以降は、GHS−R非発現細胞でプレセレクションした後に、GHS−R発現細胞を用いてセレクションを行った。
11−1.スクリーニング (1 ラウンド目 )
細胞数2.4E7のCHO−GHSR62細胞をスクリーニングバッファー(10mM HEPES−NaOH,pH7.4,135mM NaCl,5mM KCl,2.5mM CaCl,0.8mM MgCl,10mM Glucose,0.2% BSA,0.6 mM NaHCO)で2回洗浄したのち、cDNA−ペプチド複合体0.5pmolをスクリーニングバッファー15mlに溶解し、氷上でCHO−GHSR62細胞にかけ、氷上で一時間インキュベートした。 インキュベート後、スクリーニングバッファーで細胞を3 回洗浄した。その後、細胞に0.1M glycin−HCl(pH3.5)を15mlかけ、室温で10分間インキュベーションした後、上清を回収した。回収溶液に1M Tris−HCl,pH8.9を120μl加えpHを中性化した。その後、ブタノールで濃縮し、エタノール沈殿した。 沈殿したペレットを水に溶解後、シリカメンブレンカラムで精製した。そして、精製産物をテンプレートに、
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACA-3’(配列番号10)
5’-TTTCCCCGCCGCCCCCCGTCCTC-3’(配列番号11)
をプライマーにしてPCR増幅した。
PCR反応は、Ex Taq polymerase(takara)を使用し、95℃ 2min−[98℃ 10s/55℃ 10s/72℃ 30s]×40サイクル−4℃∞、のプログラムで行った。PCR産物をPAGE確認後、QIAquick PCR purification column(QIAGEN)で精製した。このPCR産物を元に、2ラウンド目の[転写]−[ピューロマイシンリンカーライゲーション]−[cDNA−ペプチド複合体の形成]を行った。
11−2.スクリーニング(2ラウンド目以降)
細胞数1.0E7のCHO細胞(GHS−R非発現)をスクリーニングバッファーで2回洗浄し、cDNA−ペプチド複合体0.05pmolをスクリーニングバッファー7.5mlに溶解し、CHO細胞にかけ、一時間インキュベーションした。インキュベーション後、その上清を、スクリーニングバッファーで2回洗浄した細胞数1.0E7のCHO−GHSR 62細胞にかけ1時間インキュベーションした。インキュベーション後、スクリーニングバッファーで細胞を3回洗浄し、細胞に0.1M glycin−HCl(pH3.5)を7.5mlかけ、室温で10minインキュベーションした後、上清を回収した。回収した上清溶液に、1M Tris−HCl,pH8.9を60μl加えpHを中性化した。その後、ブタノールで濃縮し、エタノール沈殿した。沈殿したペレットを水に溶解後、シリカメンブレンカラムで精製した。そして、精製産物をテンプレートに、
5’-GATCCCGCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGGAAGTATTTTTACAACAATTACCAACA-3’(前述の配列番号10に同じ)
5’-TTTCCCCGCCGCCCCCCGTCCTC-3’(前述の配列番号11に同じ)
をプライマーにしてPCR増幅した。
PCR反応は、Ex Taq polymerase(takara)を使用し、95℃ 2min−[98℃ 10s/55 ℃ 10s/72 ℃ 30s]×40サイクル−4℃∞、のプログラムで行った。PCR産物をPAGE確認後、シリカメンブレンカラムで精製した。このPCR産物を元に、3ラウンド目以降の[転写]−[ピューロマイシンリンカーライゲーション]−[cDNA−ペプチド複合体の形成]を行った。
上記スクリーニングを5ラウンド行った。なお、ラウンド毎に、投入するcDNA−ペプチド複合体の量および、細胞数等の反応スケールを減らした。スクリーニング反応スケールの減少に伴い、[転写]−[ピューロマイシンリンカーライゲーション]−[cDNA−ペプチド複合体の形成]の反応スケールも減らした。また、ラウンド毎に淘汰圧を強めるために、インキュベーション時間を短く、洗浄時間を長く、洗浄回数を多くした。
11−3.配列決定
上記スクリーニングにより得られたPCR産物をpGEM−T easy vector(promega)及びE.coli JM109を用いてクローニングし、SP6プライマーを用いてシーケンシングを行った。その結果、14クローンを配列決定したところ、11クローンが配列番号12の配列、2クローンが配列番号13の配列、1クローンが配列番号14の配列であった。
配列番号12:FQFLPFMF HQRVQQRKESKKPPAKLQPR
配列番号13:FQFLPFMS HQRVQQRKESKKPPAKLQPR
配列番号14:FQFLPVMF HQRVQQRKESKKPPAKLQPR
12.ペプチド(配列番号12)によるグレリン刺激依存的胃収縮の抑制
食虫目トガリネズミ科ジネズミ亜科ジャコウネズミ属の小型哺乳類であるスンクスの胃は、マグヌス装置を用いたin vitro実験において、低濃度のモチリンで処理した後に、グレリンで累加刺激すると、グレリン用量依存的に収縮が起こることが知られている。そこで、この実験系を用いて、ペプチド(配列番号12)の添加による胃収縮の抑制を確認した。
実験動物および組織の準備
ネパール、カトマンズ自然集団より確立した非近交系カトマンズ系成体スンクス(5−12週齢、B.W45−70g)を用いて実験を行った。動物は巣箱となるペットボトルや空き缶を入れたプラスチックケージで21±2℃、8:00−20:00の明暗周期、自由摂食及び自由飲水の条件下で飼育した。
実験に使用した個体は胃内容物を取り除くため、胃摘出開始前に暗期5時間、明期5−6時間の計10±1時間絶食を行った。ただし、絶食時でも飲水は自由に行えるようにした。実験個体はジエチルエーテルによる深麻酔後、断頭にて屠殺した。その後開腹し、噴門部および十二指腸の位置で眼科バサミを用いて組織を摘出し、クレブス緩衝液(NaCl,118mM;KCl,4.7mM;CaCl,1.9mM;MgSO,0.7mM;NaHPO,1.8mM;NaHCO,19.6mM;グルコース,10mM,pH7.2)内にてカミソリ刃により幽門部直上で切り、加えて胃底部に2mm程度の切り込みを入れ、クレブス緩衝液で胃組織内部を洗浄し、残渣を取り除いた。小型のセルフィンで胃底部頂端中央部と前底部の中央部の二点を、縦走筋方向に固定されるように挟んだ。クレブス緩衝液は37±0.5℃の条件下で、O95%, CO 5%のガスで常にバブリングを行い、緩衝液のpHの調整は1N HClを用いて行った。組織に対する初期加重は1.0gとした。加えて、組織のマグヌス管内への設置後、組織を安定させるために40分間静置し、それから各薬剤の投与を開始するようにした。
Organ bath 実験
In vitroの消化管収縮測定実験として、マグヌス管を用いたorgan bath実験系を用いた。スンクス胃は10mlクレブス緩衝液の入ったマグヌス管内に吊るした。マグヌス管内は恒温槽から常に送られる温水により37±0.5℃温度条件に保たれ、O95%, CO5%のガスにより常にバブリングを行った。組織の両端を挟んでいるセルフィンのうち下端のものはマグヌス管内のL字フックに、上端のものはアイソメトリックトランスデューサーにつないだ。トランスデューサーはアンプを介してAD変換機PicoLogへと接続した。組織の収縮データのサンプリングは100msに1回の割合で行った。
データはUSBケーブルを介してWindows(登録商標)上のPicoLog Recorderソフトに出力した。試薬添加前の1分間の自律収縮の極大値の平均値を基底値としてとり、各濃度の試薬添加後の最大収縮値をそれぞれの試薬の反応値とし、基底値との差を各濃度の試薬の効果として算出した。アセチルコリン(10μM)により引き起こされる収縮を組織の最大の収縮として、薬剤添加開始の前に2回および最後に1回記録し、その平均値に対する試薬の添加による収縮圧の割合をデータとして算出した。
アンプの感度調整は実験ごとに行い、トランスデューサーに1gの圧力変化が生じたときに0.1Vの電圧として出力されるように調整した。
試薬添加
配列番号12のペプチド(終濃度1μM)と、モチリン(終濃度100pM)の混合液を投与した30秒後に、グレリン(終濃度10pM−100nM)を累加投与し、ペプチド(配列番号12)の存在下及び非存在下での用量反応曲線をそれぞれ作成した。
測定の結果、配列番号12のペプチド(1μM)による前処理によって、グレリン刺激による胃収縮が有意に抑制されることが確認できた(図1)。すなわち、本発明のペプチドは、GHS−Rアンタゴニスト活性を有し、消化管の機能亢進を抑制することから、該ペプチドは摂食抑制剤及び成長ホルモン分泌抑制剤として有用であることが示された。
本発明は、摂食促進ホルモンであるグレリンの作用を阻害するペプチドを提供するものであり、摂食障害、成長ホルモンの分泌過剰に起因する疾患(例えば、巨人症及び末端肥大症など)に対する新たな治療法、あるいは、治療剤の開発に大きく貢献するものである。

Claims (8)

  1. 以下の(a)又は(b)に示されるペプチド。
    (a)配列番号12で示されるアミノ酸配列からなるペプチド。
    (b)配列番号12で示されるアミノ酸配列において、1若しくは数個のアミノ酸の置換、欠失又は付加をもつアミノ酸配列からなり、かつ、GHS−Rアンタゴニスト活性を有するペプチド。
  2. 請求項1に記載のペプチドをコードする核酸。
  3. 請求項1に記載のペプチドを有効成分として含有する摂食抑制剤。
  4. 請求項1に記載のペプチドを有効成分として含有する成長ホルモン分泌抑制剤。
  5. 請求項1に記載のペプチドを有効成分として含有する成長ホルモンの分泌過剰に起因する疾患の治療剤。
  6. 請求項1に記載のペプチドに対する抗体。
  7. 請求項1に記載のペプチドを、当該ペプチドに対する抗体を用いて検出することを含む、当該ペプチドの定量方法。
  8. 請求項1に記載のペプチドを遺伝子組み換え技術を用いて製造する方法であって、当該ペプチドをコードするDNAを含有するベクターにより宿主細胞を形質転換すること;及び、
    得られた形質転換細胞を培養して培養物から目的のペプチドを採取すること;
    を含む方法。
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