JP2011179100A - 切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来に比べてバイト寿命を長くすることができる、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクとその製造方法を提供する。
【解決手段】焼鈍された磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクであって、Mg:3.5〜10mass%を含有するAl−Mg合金の基板と、当該基板の表面に形成された酸化皮膜とからなり、当該酸化皮膜の平均膜厚が15nm以下であり、酸化皮膜の平均組成がAlとOとMgの原子数で0.05≦Mg/(Al+O+Mg)≦0.25であることを特徴とする切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク、ならびに、その製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、パソコンや家電製品に搭載されるハードディスク等の磁気ディスクに用いられるアルミニウム合金ブランク及びその製造方法に関する。
磁気ディスク用の基板としては、アルミニウム合金板をディスク状に打ち抜いた基板にNi−Pめっきを施したものが使用されている。アルミニウム合金の種類としては、ディスク回転時の振動を抑制するために、強度の高いAl−Mg系合金が使用される。また、回転するディスクとヘッドの間隔が安定するように、ディスク状基板には高い表面平坦度が要求される。磁気ディスク用基板の平坦度は、Ni-Pめっきを施した後、両面研磨することで最終的には得られるものの、アルミニウム合金基板自身の平坦度も要求される。平坦度を満足させるため、打ち抜いたディスク状基板には焼鈍が施される。この焼鈍後のディスク状基板(以下、「ブランク」と記す)の端部を面取りするため、旋盤とバイトでブランク端部を切削加工する。
焼鈍が施されたブランクの表面及び端部には、Mgを含有する硬く厚い酸化皮膜が形成される。その後、ブランク端部を切削加工するが、同一バイトで何枚も繰り返し切削加工すると、バイトは徐々に摩耗し、最終的には形状不良で使用できなくなり、その時点で新品のバイトと交換する。使用できなくなるまでの加工枚数がバイトの寿命であり、バイトの寿命が長いほど、生産性が良好で低コストとなる。
バイトの寿命は、バイトが接触するブランク表面及び端部の酸化皮膜と相関があり、酸化皮膜が硬く厚いほど、バイトの寿命は低下する。バイトの寿命を長くする施策として、焼鈍後にブランク表面及び端部の酸化皮膜を化学的または機械的に除去する方法が考えられる。これらの方法は、非特許文献1に記載されているように、公知の方法である。しかしながら、これらの方法では生産性が悪くコスト高となる。
特許文献1には、芯材の両面に皮材をクラッドして焼鈍された磁気ディスク用クラッドアルミニウム合金基板が記載されている。このアルミニウム合金基板では、芯材の厚さ方向における中央部から表層に向かうにつれMg含有量を減少させることによって、表面研削性を向上させることが記載されている。しかしながら、ブランク端部の切削性については何らの記載も示唆もない。
社団法人軽金属学会「アルミニウムの製品と製造技術」p154(2001)
特開2004−332068号公報
本発明の目的は、酸化皮膜を化学的にまたは機械的に除去する必要がなく、従来に比べてバイト寿命を長くすることができる、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクとその製造方法を提供することである。
本発明者らは鋭意検討の結果、従来よりもバイト寿命を長くすることができる、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクとその製造方法を見出した。
すなわち、本発明は請求項1において、焼鈍された磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクであって、Mg:3.5〜10mass%を含有するAl−Mg合金の基板と、当該基板の表面に形成された酸化皮膜とからなり、当該酸化皮膜の平均膜厚が15nm以下であり、酸化皮膜の平均組成がAlとOとMgの原子数で0.05≦Mg/(Al+O+Mg)≦0.25であることを特徴とする切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクとした。
本発明は請求項2では、前記基板を構成するAl−Mg合金が、Cr:0.01〜0.1mass%を更に含有するものとした。更に本発明は請求項3において、磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクの表面における平坦度の最大値を5μm未満とした。
本発明は請求項4では、Mg:3.5〜10mass%を含有するAl−Mg合金の基板を、昇温開始から冷却終了までの間において、露点が−20℃以上の雰囲気中で270〜320℃の温度で30分〜6時間焼鈍することを特徴とする切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクの製造方法とした。
本発明は請求項5では、基板を構成するAl−Mg合金が、Cr:0.01〜0.1mass%を更に含有するものとした。請求項6では、焼鈍雰囲気中の露点を加湿によって−20℃以上にするものとした。更に本発明は請求項7において、焼鈍後のブランクの内径側切削部分と外径側切削分を、バイトで切削加工する工程を更に備えるものとした。
本発明により、従来の磁気ディスク用アルミニウム合金板をそのまま適用でき、焼鈍で形成される酸化皮膜の硬度を低減させることで、従来よりもバイトの寿命を長くでき、生産性向上と低コスト化が可能となる。
本発明に係るアルミニウム合金ブランクにおいて、焼鈍後のブランクの内径側切削部分と外径側切削部分を示す斜視図である。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクは、所定の合金組成を有するアルミニウム合金を所定のサイズのディスク状に打ち抜き、それを焼鈍し、これによって形成されたブランクの内径側及び外形側の酸化皮膜部分をバイトで切削することによって作製される。以下、詳細に説明する。
A.焼鈍前のアルミニウム合金の基板
本発明に係る磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク(以下、単に「アルミニウム合金ブランク」と記す)に用いる焼鈍前のアルミニウム合金としては、従来から使用されているJIS 5086合金等の磁気ディスク用Al−Mg系合金が高強度であり好適に用いられる。Mg含有量は3.5〜10mass%である。3.5mass%未満では材料強度が不足するので不適切である。一方、10mass%を超えると、後述する酸化皮膜のMg濃度が0.25を超えてバイト寿命が短くなるので不適切である。
焼鈍前のアルミニウム合金は、Crを0.01〜0.1mass%更に含有してもよい。Crを添加すると、焼鈍時にMg元素を取り込み、アルミニウム合金中にAl−Mg−Cr系金属間化合物を形成する。このような金属間化合物の形成によって、アルミニウム合金から酸化皮膜へのMg元素の移動を阻害することができる。これによって、上述の酸化皮膜中のMg濃度を低下させる作用がある。Cr含有量が0.01mass%未満では、酸化皮膜中のMg濃度の低減作用が十分に得られない。一方、0.1mass%を超えると、Al−Mg−Cr系金属間化合物が増加し、アルミニウム合金表面の欠陥となるので不適切である。
また、バイト寿命に直接影響を及ぼす元素ではないが、Ni−Pめっき後のめっき面における平滑性の観点から、Cu、Znの一方又は両方を添加してもよい。Cuについては0.01〜0.1mass%であり、Znについては0.1〜0.5mass%である。
不可避的不純物としては、Fe、Si、Mn等が挙げられる。特にFe、Siが、金属間化合物を形成してアルミニウム合金表面の欠陥を形成する。したがって、Fe、Siはできるだけ少量であることが好ましく、いずれの元素も0.1mass%以下とするのが好ましい。
本発明で用いる焼鈍前のアルミニウム合金の基板の形態は、圧延材又は連続鋳造法で作製した板材が好適に用いられる。圧延材の場合には、アルミニウム合金のスラブを鋳造し、均質化処理、熱間圧延、冷間圧延を行う。連続鋳造法の場合には、板状のアルミニウム合金を鋳造し、冷間圧延を行う。鋳造は、半連続鋳造法(DC鋳造法)、電磁場鋳造法、水平連続鋳造法等が好適に適用できる。鋳造の後、鋳塊表面の粗大セル層を除去するため、0〜25mm程度面削を行ってもよい。均質化処理は、鋳造時に生成したミクロ偏析を解消する等の目的で行う。500〜570℃で1〜24時間程度保持するのが好ましい。500℃未満ではミクロ偏析の解消が不十分となる場合があり、570℃を超えるとアルミニウム合金が熔融する危険がある。熱間圧延と冷間圧延により、所望の厚さの板材にする。なお、冷間圧延前又は冷間圧延中に、圧延により加工硬化したアルミニウム合金を軟化させる等の目的で、中間焼鈍を行ってもよい。300〜570℃で1秒〜3時間程度保持する。300℃未満ではアルミニウム合金の軟化が不十分となる場合があり、570℃を超えるとアルミニウム合金が熔融する危険がある。基板の厚さは、0.7〜2.0mm程度が好適に用いられるが、近年はさらなる薄肉化の要求もある。
B.焼鈍方法
上記のようにして調製されたアルミニウム合金基板は、ディスク状に打ち抜かれる。平坦度を確保するために、ディスク状に打ち抜いたアルミニウム合金基板には焼鈍が施される。焼鈍は、昇温開始から冷却終了までの間、露点が−20℃以上の雰囲気中にて、270℃〜320℃の温度で、30分〜6時間の条件で行う。本発明の酸化皮膜を得るためには前記条件が必要である。
焼鈍における雰囲気温度が高いほど保持時間が長いほど、酸化皮膜の膜厚は厚くなり、かつ、アルミニウム合金中に含有されるMgは酸化皮膜中に移動して濃化し易い。一方、雰囲気温度が低く、保持時間が短い場合には、アルミニウム合金板のO材化が完了せず、適切な平坦度が確保できない。したがって、雰囲気温度と保持時間のそれぞれについて上下限の規定が必要となるもので、雰囲気温度は270℃〜320℃で、保持時間は30分〜6時間とする必要がある。
しかしながら、温度と時間の規定だけでは所望の酸化皮膜は得られない。昇温開始から冷却終了までの間、焼鈍雰囲気の露点を−20℃以上とすることが必要である。好ましくは0℃以上である。焼鈍雰囲気の露点が−20℃以上であれば、雰囲気中のHO成分が多くなり、酸化皮膜中のMg濃度を低く抑えることが可能となる。この場合には、雰囲気を大気としてもよい。焼鈍雰囲気の露点が−20℃未満の場合には、雰囲気中のHO成分が少なくなり、酸化皮膜中のMg濃度が高くなる。
焼鈍雰囲気の露点を−20℃以上とすることによってHO成分を多くすると、酸化皮膜中のMg濃度を低く抑えることができる理由は次のように考えられる。Mgを含有するアルミニウム合金を加熱焼鈍すると、Mg原子はアルミニウム合金中を移動して合金表面に集まり酸化皮膜中に移動して、酸化皮膜中のAl酸化物から酸素を奪うか、又は雰囲気中の酸素と結合して酸化される。焼鈍雰囲気中のHO成分が少ない場合には、酸化皮膜中に存在するAl水和物も少量となる。これにより、Mg原子は、Al水和物に邪魔されずに酸化皮膜中をスムースに移動でき、次々と酸化されて酸化皮膜中に濃化する。一方、焼鈍雰囲気中のHOが多い場合には、酸化皮膜中に存在するAl水和物も多量となる。Mg原子はこのAl水和物によって酸化皮膜中での移動を邪魔されるため、酸化皮膜中での酸化による濃化が抑制される。その結果、酸化皮膜中のMg濃度が低くなると考えられる。
焼鈍雰囲気の露点を−20℃以上にするには、炉内の雰囲気を加湿してもよい。加湿方法は特に制限されない。例えば炉内に水蒸気を導入してもよいし、水を噴霧してもよい。なお、露点の上限は特に制限されない。炉内の雰囲気を加湿する場合は、露点が−20℃以上、好ましくは0℃以上に達した時点で直ちに昇温を開始するのがよい。焼鈍にかかる時間を短くし、生産能力を上げるためである。焼鈍には、平坦度を確保する目的で、複数のブランク同士を高平坦のスペーサーを介して積み重ねて加圧焼鈍する方法が好適に用いられる。
以上のようにして焼鈍したブランクでは、アルミニウム合金から酸化皮膜中に合金成分であるAlやMgが移動する。したがって、焼鈍前のアルミニウム合金に比べて焼鈍後のアルミニウム合金では、厳密には移動した分だけAlやMgが減少している。しかしながら、酸化皮膜厚はアルミニウム合金厚に比べて十分に小さいため(実施例や比較例に示すように、前者は20nm未満であるのに対して、後者は1.62mmである)、焼鈍前後のアルミニウム合金における合金組成は同じとすることができる。
C.酸化皮膜
アルミニウム合金基板に焼鈍が施されると、ブランク表面及び端部にMgを含有する硬く厚い酸化皮膜が形成される。酸化皮膜厚や皮膜中におけるMg濃度は焼鈍条件に依存する。本発明では、酸化皮膜厚と皮膜中のMg濃度を規定するものである。
C−1.Mg濃度
上述のように、酸化皮膜中にはアルミニウム合金に含有されるMgが移動して濃化する。本発明においては、酸化皮膜中のMg濃度を、酸化皮膜中における平均組成として、AlとOとMgの原子数によって表されるMg/(Al+O+Mg)として定義する。このように定義したものを、以下、「酸化皮膜Mg濃度」と記す。酸化皮膜Mg濃度は、0.05≦Mg/(Al+O+Mg)≦0.25に規制される。酸化皮膜Mg濃度が0.25を超えると、酸化皮膜の硬度が大き過ぎてバイトの消耗が著しい。酸化皮膜Mg濃度が低いほど酸化皮膜の硬度が減少して、バイトが摩耗し難く寿命が長くなる。しかしながら、焼鈍によって形成される酸化皮膜Mg濃度を0.05未満とすることは極めて困難なので、下限を0.05とする。
酸化皮膜Mg濃度は、ブランク端部をX線光電子分光分析(XPS)で測定し、AlとOとMgの原子数を求める。このときの測定領域は通常、Φ1mm程度である。Arイオンでスパッタしながら最表面から酸化皮膜厚全体にわたった深さ方向に、XPS測定を行なう。スパッタ深さの間隔は、酸化皮膜中を10箇所以上測定できる間隔とする。各測定部において、酸化皮膜中の各元素の原子数比を求め、Mg/(Al+O+Mg)を算出し、更に、全測定部の平均を算出して酸化皮膜Mg濃度とした。なお、酸化皮膜厚とは、最表面からO濃度の最大値の半値となる深さまでとした。
C−2.膜厚
酸化皮膜の平均膜厚は、15nm以下に規制される。15nmを超えると酸化皮膜厚が厚過ぎてバイトの消耗が著しい。酸化皮膜の膜厚が薄いほど、バイトが消耗し難い。しかしながら、焼鈍によって少なくとも7nmの酸化皮膜が形成されるので、酸化皮膜厚の下限は7nmである。酸化皮膜の膜厚測定は、バイトが接触するブランク端部をミクロトームなどで切削して断面薄片を作製し、それを透過電子顕微鏡(TEM)で観察して行う。
D.平坦度
アルミニウム合金ブランクの表面における平坦度の最大値は、5μm未満とするのが好ましい。平坦度の最大値が5μm以上では、ブランク端部をバイトで切削加工した際に、バイトの刃が欠けるなどの不具合が生じるので不適当である。ブランクの平坦度は、平坦度測定器等で測定される。
以上のようにして作製されるアルミニウム合金ブランクは、図1に示すように、焼鈍後のブランク1の内径側切削部分2と外径側切削部分3をバイトで切削加工して、製品とされる。なお、図1において、4はブランク試料1の表面、5はブランク試料1の内径側端面、6はブランク試料の外径側端面である。
以下、実施例及び比較例に基づいて、本発明の好適な実施の形態を具体的に説明する。
本発明例1〜12及び比較例13〜19
表1に示す7種類の組成のアルミニウム合金(合金A〜G)をDC鋳造後、鋳塊表面を20mm面削し、540℃で4時間均質化処理し、熱間圧延と冷間圧延を行い、板厚1.62mmのアルミニウム合金基板を作製した。次いで、このアルミニウム合金基板を300℃で1時間焼鈍を行いO材化してO材化試料とした。
Figure 2011179100
まず、O材化試料の引張強さと耐力を以下のようにして測定した。
<引張強さ>
圧延方向に切り出したO材化JIS5号試験片の引張強さを、島津製作所製インストロン型引張試験機AG−50kNGを使用して測定した。測定条件は、標点距離50mm、クロスヘッド速度10mm/分とした。
<耐力>
圧延方向に切り出したO材化試料について、上記と同じく引張強さを測定して応力/歪曲線から0.2%耐力を求めた。
基準とするJIS 5086合金の材料強度である、引張強度245N/mm以上で、かつ、耐力100N/mm以上を満足するものを合格(○)とし、引張強さ245N/mm未満及び/又は耐力100N/mm未満を不合格(×)と判定した。表1に示すように、合金A〜E及び合金Gが合格で、合金Fが不合格であった。
参考までに、Cr系金属間化合物について調査した。O材化試料表面を鏡面研磨し、EPMAで表面の晶析出物を観察した。装置倍率1000倍で、合計1mmの面積を観察し、長さ1μm以上のCr系金属間化合物の個数を測定した。合金A、B、D〜Gからは観察されず、合金Cからは1個/mm観察された。このCr金属間化合物は、アルミニウム合金基板の欠陥の原因となるため、できるだけ少量であることが好ましい。
次に合金Fを除く材料強度を合格した6種類の合金について、ブランク試料の性能評価に供した。板厚1.62mmの冷間圧延材を内径24mm、外径71mmの円盤状に打ち抜きディスク状アルミニウム合金試料とした。この試料を湯洗、乾燥後、表2に示す条件で、実施例1〜比較例18については焼鈍を施した。焼鈍炉は、昇温、保持、冷却の各ゾーンを試料が進行する連続炉を使用した。炉内雰囲気の露点は、各ゾーンで測定した。実施例1では炉内を加湿し、露点を20℃に調整した後に焼鈍を開始した。実施例2〜比較例18では、加湿せずに大気雰囲気を炉内に導入して焼鈍を開始した。比較例19では焼鈍せずに打ち抜いたディスク状アルミニウム合金試料のままとした。このようにして、実施例1〜比較例18のブランク試料と比較例19の試料を作製した。以下、比較例19の試料もブランク試料と記す。
Figure 2011179100
前記手順で作製したブランク試料について、酸化皮膜の膜厚を測定した。各試料の端部の任意箇所をミクロトームで切削して断面薄片を作製し、それを透過電子顕微鏡(TEM)で観察して、TEM像の一視野中の5箇所における膜厚の平均値をとって膜厚とした。
酸化皮膜Mg濃度は、ブランク端部におけるAlとOとMgの原子数をX線光電子分光分析(XPS)で測定した。測定領域は、Φ1mm程度とした。Arイオンでスパッタしながら最表面から酸化皮膜厚全体にわたった深さ方向に、XPS測定を行なった。ここで、酸化皮膜厚とは、最表面からO濃度の最大値の半値となる深さまでとした。スパッタ深さの間隔は、約0.4nmとした。各測定部において、酸化皮膜中の各元素の原子数比を求めて、Mg/(Al+O+Mg)を算出し、更に、全測定部の平均を算出して酸化皮膜Mg濃度とした。
次に平坦度を評価した。ブランク試料100枚について測定し、最大値が5μm未満を合格(○)、5μm以上を不合格(×)と判定した。
更に切削性を評価した。図1に示すように、ブランク試料1の内径側切削部分2と外径側切削部分3をバイトで切削加工し、形状不良で使用できなくなるまでの加工枚数(バイト寿命)を調べた。バイト寿命が15万枚に達したものを合格(◎)、10万枚以上15万枚未満も合格(○)、10万枚未満を不合格(×)と判定した。従来のバイト寿命は5万枚前後であった。なお、バイト寿命が15万枚に達した時点で評価を終了した。
本発明例及び比較例について、表1の合金記号、焼鈍条件、酸化皮膜の膜厚とMg濃度、ならびに、平坦度と切削性の評価結果を表2に示す。
本発明例1〜12では、酸化皮膜の膜厚及びMg濃度が所望の範囲内であり、平坦度及び切削性ともに合格であった。
本発明例1、2、4、5では、合金のCr添加量が0.01〜0.1mass%の範囲にあり、かつ、焼鈍雰囲気中の露点が0℃以上であったので、切削性が特に優れていた。
比較例13では、焼鈍雰囲気中の露点が−20℃未満であったため酸化皮膜Mg濃度が本発明の範囲外となり、切削性が不合格であった。
比較例14では、焼鈍時間が6時間を超えたために、酸化皮膜厚が厚過ぎ、かつ、酸化皮膜のMg濃度が本発明の範囲外となり、切削性が不合格であった。
比較例15では、焼鈍温度が320℃を超えたために、酸化皮膜厚が厚過ぎ、かつ、酸化皮膜のMg濃度が本発明の範囲外となり、切削性が不合格であった。
比較例16では、焼鈍温度が270℃未満であったため平坦度が不合格であった。そのため、不良と判断し切削性評価に供さなかった。
比較例17では、焼鈍時間が30分未満であったため平坦度が不合格であった。そのため、不良と判断し切削性評価に供さなかった。
比較例18では、アルミニウム合金GのMg含有量が多過ぎたため酸化皮膜のMg濃度が本発明の範囲外となり、切削性が不合格であった。
比較例19では、焼鈍を実施しなかったため、平坦度が劣った。そのため、不良と判断し、切削性評価に供さなかった。
本発明の磁気ディスク用アルミニウム合金板の製造方法を適用することで、ブランク端部の切削加工に使用するバイトの寿命が、従来に比べて長くなり、生産性が向上し、低コストが可能となる。
1‥‥‥ブランク、ブランク試料
2‥‥‥内径側切削部分
3‥‥‥外径側切削部分
4‥‥‥ブランクの表面
5‥‥‥内径側端面
6‥‥‥外径側端面

Claims (7)

  1. 焼鈍された磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクであって、Mg:3.5〜10mass%を含有するAl−Mg合金の基板と、当該基板の表面に形成された酸化皮膜とからなり、当該酸化皮膜の平均膜厚が15nm以下であり、酸化皮膜の平均組成がAlとOとMgの原子数で0.05≦Mg/(Al+O+Mg)≦0.25であることを特徴とする切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク。
  2. 前記基板を構成するAl−Mg合金が、Cr:0.01〜0.1mass%を更に含有する、請求項1に記載の切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク。
  3. 表面における平坦度の最大値が5μm未満である、請求項1又は2に記載の切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランク。
  4. Mg:3.5〜10mass%を含有するAl−Mg合金の基板を、昇温開始から冷却終了までの間において、露点が−20℃以上の雰囲気中で270〜320℃の温度で30分〜6時間焼鈍することを特徴とする切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクの製造方法。
  5. 前記基板を構成するAl−Mg合金が、Cr:0.01〜0.1mass%を更に含有する、請求項4に記載の切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクの製造方法。
  6. 焼鈍雰囲気中の露点を加湿によって−20℃以上にする、請求項4又は5に記載の切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクの製造方法。
  7. 焼鈍後のブランクの内径側切削部分と外径側切削分を、バイトで切削加工する工程を更に備える、請求項4〜6のいずれか一項に記載の切削加工性に優れた磁気ディスク用アルミニウム合金ブランクの製造方法。
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