JP2011179027A - 高周波用無方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

高周波用無方向性電磁鋼板の製造方法 Download PDF

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【課題】 本発明は、歪取焼鈍での結晶粒界への炭化物析出抑制と同時に、時効での粒内炭化物析出抑制を低コストでかつ効果的に行う技術を開発したもので、高周波用途に優れた無方向性電磁鋼板のセミプロセス材の製造技術を提供する。
【解決手段】 質量%で、C:0.002〜0.006%、Cr:0.3〜6%、Si:2〜4%、Al:0.1〜3%、Mn≦1.5%、S≦0.003%、N≦0.003%、Mo:0.0005〜0.02%を含み、残部不可避的不純物およびFeよりなる熱延板を熱延板焼鈍し、次いで冷間圧延してから再結晶焼鈍し、更に、歪取焼鈍を実施する工程を含む無方向性電磁鋼板の製造工程において、歪取焼鈍での冷却過程の700℃から300℃までの冷却速度を3〜50℃/minとすることを特徴とする高周波用無方向性電磁鋼板の製造方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は無方向性電磁鋼板の高級グレード、特に高周波で用いられる優れた固有抵抗を有するモータコア用素材の製造方法を提供する。
地球環境の観点から、近年におけるエネルギー多消費文明の弊害が問題視されている。無方向性電磁鋼板の使用される電気機器の分野でいえば、冷暖房機器のモータ、電気自動車用の駆動モータなどに更なる消費電力の低減が求められている。また、モータ駆動の制御方式は、従来の電流ON−OFF制御でなく、インバータによる高調波が重畳されたPWM(パルス変調:pulse width modulation)波形制御になってきている。このため、高周波特性に優れた電磁鋼板が求められるようになってきた。
従来、無方向性電磁鋼板の製造技術としては、高周波鉄損を改善する目的で、Si、Al、Crなどを増加させて固有抵抗を増やすこと、また、製品板厚を極力薄くすることが行われてきた。しかしながら、Cr含有鋼では、製鋼段階での脱炭が困難であり、C量が多くなって、炭化物が析出しやすい傾向にあった。炭化物には、二種類あって一つは、鉄クロム炭化物でもう一つは鉄炭化物であった。鉄クロム炭化物は歪取焼鈍で結晶粒界に析出し、形態としては(Fe,Cr) が多い。炭化物が析出するとヒステリシス損が増加して鉄損劣化となる。
歪取焼鈍は顧客でモータコアの形に打ち抜き加工された後に実施される焼鈍であって、通常700〜800℃の温度に加熱される。つまり、本発明は顧客で採用される歪取焼鈍を含む工程を対象とし、鉄心打抜き加工や歪取焼鈍を顧客が予定する出荷製品、いわゆるセミプロセス材を対象にする。
また鉄炭化物は、例えばモータコアに加工され、モータ駆動して時間が経つと、粒内にFeC(セメンタイト)が析出することがあり、磁気時効を引き起こす原因となることがあった。
前記したCr添加鋼の炭化物析出は過去にも問題となっており、いくつかの解決策が提案されてきた。例えば特許文献1では、第一の手段としてC量を0.0009%以下とすることで炭化物析出を減少させた。しかし、Cr含有鋼では製鋼段階での真空脱ガスで平衡論的に脱炭が困難で、十分に脱炭しようとすれば長時間の真空脱ガス時間が必要となり重大な生産性障害があった。
第二の手段として、C量が0.005%以下であってもTiを添加することでTi系炭化物として結晶粒内析出させ、疲労強度低下を防止する方法である。しかし、Tiが含まれると微細なTiCNが析出しやすく、鉄損の大きな劣化が避けられなかった。
特許文献2では、歪取焼鈍後の結晶粒界への炭化物析出の抑制を、Mo:0.05〜1.5%を添加することで達成している。確かに、Moの効果は認められるものの、Moは高価なため0.05%以上では添加コストの問題が大きかった。
特許文献3では、熱延板での脱炭焼鈍によりC量を0.0015%以下とすることで、炭化物形成を抑えている。しかしながら、実施例に示されているように脱炭焼鈍工程は従来工程に一つの工程が追加されるものであるから、そのコスト負担は大きかった。
特開2002−212689号公報 特開2002−294417号公報 特開2003−247020号公報
本発明は上記の点に鑑み、歪取焼鈍での結晶粒界への炭化物析出を低コストでかつ効果的に抑制する技術を開発したもので、高周波用途に優れた無方向性電磁鋼板のセミプロセス材の製造技術を提供するものである。
本発明は、Crを含有する高周波用途の無方向性電磁鋼板において、鋼中の結晶粒界に析出する炭化物が磁気特性、特に鉄損を低下させることに着眼し、鋼中に含有させる成分及び歪取焼鈍の条件を特定することにより特性を改善することを見出した。
即ち本発明は、質量%で、
C :0.002〜0.006%、 Cr:0.3〜6%、 Si:2〜4%、
Al:0.1〜3%、 Mn≦1.5%、 S≦0.003%、
N≦0.003%、 Mo:0.0005〜0.02%
を含み、残部不可避的不純物およびFeよりなる熱延板を熱延板焼鈍し、次いで冷間圧延してから再結晶焼鈍し、更に、歪取焼鈍を実施する工程を含む無方向性電磁鋼板の製造工程において、歪取焼鈍での冷却過程の700℃から300℃までの冷却速度を3〜50℃/minとすることを特徴とする高周波用無方向性電磁鋼板の製造方法である。
本発明は上記構成により、歪取焼鈍での結晶粒界への炭化物析出および低温での時効析出問題を効果的に抑制する技術を開発したもので、高周波用途に優れた無方向性電磁鋼板のセミプロセス材の製造技術を提供することができる。
Cr添加鋼の課題である二つの炭化物、すなわちFeCと(Fe,Cr)xCの析出をいかに抑制するかが、本発明のポイントであるが、対策は以下の三点に要約される。
第一の点は、微量のMoを使うことによって、300℃以下程度の低温でのFe3C析出を抑制し、いわゆる磁気時効を防止すること。このFeCは、結晶粒内に析出する傾向がある。第二点は、歪取焼鈍での冷却速度を調整することによって、(Fe,Cr)xC析出を抑制する。微量のMoを添加した系において、結晶粒界に析出する(Fe,Cr)xCの析出挙動を仔細に検討すると、750℃程度では析出が見られず、700℃から300℃までの温度範囲で析出した。また、700℃から300℃までの冷却速度によっては炭化物(Fe,Cr)xCが析出しないことを見出した。第三のポイントは、微量Mo添加および冷却制御は十分工業的に容易に実施可能な技術であることである。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、鋼に含有させる成分について説明する。なお、以下の説明において含有する成分量は質量%である。
C量を0.002〜0.006%に限定する。その理由は、0.002%未満ではどのような歪取焼鈍条件でも炭化物が析出しないし、また0.006%を超えるC量では、本発明の方法でも炭化物が析出し磁性劣化するので避ける。
Cr量は0.3〜6%とする。Crは、脆化させないで固有抵抗を増大させるので有効である。0.3%未満ではCr系の炭化物析出はないし、6%超では添加コストの問題も大きくなるので避ける。
Si量は2〜4%に限定する。一般に、Si量は鉄損を改善するが多すぎると脆化する。Si量が2%未満では高周波鉄損が不満で、4%超では冷間圧延での破断が多くなるので避ける。
Al量を0.1〜3%に制限する。一般に、Al量は鉄損を改善するが、多すぎると磁束密度が劣化する傾向である。Al量が0.1%未満では鉄損が不満で、3%超では磁束密度が不満となるので、この成分範囲を避ける。
Mn量を1.5%以下とする。Mnも固有抵抗を増大させ、鉄損が減少するが、1.5%を超えると脆性問題が生じるので避ける。
S量を0.003%以下とする。S量が0.003%を超えると、MnSなどの硫化物が増え、製品での磁壁移動を阻害して磁気特性を劣化させるので避けなければならない。
N量は0.003%以下に制限する。0.003%超では、ブリスターと称されるフクレ状の表面欠陥が生じるためである。
Mo量は0.0005〜0.02%に制限する。Moは300℃以下の低温で析出するFe3Cの析出を抑制するために有効である。0.0005%以上でこの効果が認められるが、0.02%超では効果が飽和するし、添加コストも問題となるため避ける。
次に本発明の製造方法について説明する。
上記成分を含有する溶鋼を、連続鋳造等の一般的鋳造法によって鋳造し、鋳片(スラブ)とする。スラブは加工され、またはそのままで加熱されて熱延に供される。
熱延時のスラブ加熱は特に制限しないが、微細析出物を防止する目的で低温が良く、950〜1200℃が好ましく、次いで通常の熱間圧延を行うが、熱延板の厚みは通常の0.8〜3.0mmで良い。
次いで熱延板の焼鈍を行う。熱延板の焼鈍をした方が磁束密度が向上し、ヒステリシス損の低減を図ることが可能であるため、特に中周波(300Hz程度)以下で鉄損の優れたものが得られる。熱延板の焼鈍温度は、コイルの均熱性の面から連続焼鈍での800〜1100℃が好ましい。
熱延板焼鈍の前もしくは後に酸洗を行い、次いで冷延を施す。冷延は、通常のレバースまたはタンデムで行われるが、ゼンジマーミルなどのレバースの方が、知られているように高磁束密度が得られるので好ましい。公知のように温度40〜300℃での温間圧延することも脆性破断の防止抑制の面から好ましい。板厚は、高周波磁気特性改善のため薄いほうが良く、0.1〜0.5mmが好ましい。
冷延後は、脱脂して、通常の連続焼鈍に供される。焼鈍の温度は、通常の900〜1100℃が好ましい。雰囲気は通常の非酸化性とする。
この焼鈍の後は、通常、有機質と無機質との混合、全有機質または全無機質の絶縁被膜を塗布、焼付けされる。顧客では、そのまま打ち抜いてから積層されてモータコアとなる。その積層されたコアを700〜800℃程度で歪取焼鈍(stress relief annealing。SRAとも略記される)される。歪取焼鈍での冷却過程の700℃から300℃までの冷却速度は、3℃/min以上、50℃/min以下とする。3℃/min未満では、粒界に(Fe,Cr)xCが析出し鉄損が劣化する。50℃/min超では、冷却速度が速すぎてコア内部に残留ひずみが入ってこれも鉄損劣化するので避ける。なお、従来の冷却速度は1℃/min程度が多かったが、この程度では炭化物が析出してしまうので、本発明の効果が達成されない。
以下、本発明の実施例について説明する。
真空溶解試験により、表1に示す成分を溶解鋳造し、1.5mm厚まで熱間圧延した。得られた熱延板を1080℃で2min、N雰囲気中で熱延板焼鈍してから酸洗、冷間圧延して、0.30mm厚の鋼帯とした。次いで、1050℃で15s均熱、雰囲気を100%Hとした再結晶焼鈍を行った。再結晶焼鈍された鋼板は、100mm角に打ち抜いてから、800Hzで磁気特性を測定した。鉄損の測定は通常のように、圧延方向とそれと垂直に磁化したものとを平均化した(表2のSRA前、時効前の欄に相当)。
次いで、200℃で96hrの大気中焼鈍を行ってから再度、鉄損を測定した(表2のSRA前、200℃時効後の欄に相当)。
さらに、再結晶焼鈍後の鋼板を750℃で2hr、N雰囲気で歪取焼鈍を行い、700℃から300℃までの平均冷却速度を10℃/minとした。次いで、鉄損を測定して(表2のSRA後、時効前の欄に相当)から、200℃で96hrの大気中焼鈍を行って鉄損を測った(表2のSRA後、200℃時効後の欄に相当)。結果を一覧にして表2に示す。表で見られるように、本願発明範囲の成分で磁気時効の少ない無方向性電磁鋼板が得られることが分かる。
なお、200℃での時効処理の意味は以下の通りである。
モータが駆動状態にあるときは、鉄損や銅損などにより熱が発生し、モータコア温度が50〜120℃となる。炭素(C)はこのような低温でも長時間加熱状態にあると、拡散して炭化物(FeCなど)を析出し磁性劣化を引き起こすことがある。これが磁気時効であるが、50〜120℃ではC拡散が遅いので時効評価に数カ月もかかる。このため、評価を簡略化するため、より高温で評価時間を短縮することも一般に行われている。これが200℃×96hrの意味である。経験的には、200℃では96hr程度で最大の鉄損劣化率を示し、それよりも短時間でも長時間でも鉄損劣化率は減少の傾向を示す。また、評価温度が300℃と高温にしすぎるとFeCなどが固溶し始めるため、評価として正しくない。時効劣化の保証基準については定まったものはないとされるが、常識的には鉄損で3%以内の劣化率であろう。
Figure 2011179027
Figure 2011179027
質量%で、0.0056%C、1.6%Cr、3%Si、1.2%Al、0.1%Mn、0.001%S、0.001%N、0.006%Moを含む溶鋼を連続鋳造し、得られたスラブを1030℃で加熱して熱延し、2.6mm厚の熱延コイルとした。次いで、960℃で1minの焼鈍をN雰囲気中で実施してから、酸洗し、冷間圧延で0.23mm厚とした。この冷延コイルに対して、1000℃×30sの再結晶焼鈍を70%H+30%N雰囲気中で行った。エプスタイン試片を採取して鉄損を測定した後、歪取焼鈍750℃×2hrをN雰囲気中で実施し、700℃から300℃までの冷却速度を変更した。冷却速度は炉温の制御および冷却N流量制御によって行った。 歪取焼鈍してから鉄損を測定した。さらに、200℃×96hrの時効試験を大気中で実施して、鉄損を再測定した。得られた結果を表3に示す。
表3に示すように、本発明範囲の冷却速度のみで歪取焼鈍でも磁性劣化がほとんど生じない高周波用無方向性電磁鋼板が得られた。なお、200℃時効処理では、どの冷却速度でも鉄損劣化が認められなかったが、これは実施例1で示したように、Moの効果である。
Figure 2011179027

Claims (1)

  1. 質量%で、
    C :0.002〜0.006%、 Cr:0.3〜6%、 Si:2〜4%、
    Al:0.1〜3%、 Mn≦1.5%、 S≦0.003%、
    N≦0.003%、 Mo:0.0005〜0.02%
    を含み、残部不可避的不純物およびFeよりなる熱延板を熱延板焼鈍し、次いで冷間圧延してから再結晶焼鈍し、更に、歪取焼鈍を実施する工程を含む無方向性電磁鋼板の製造工程において、歪取焼鈍での冷却過程の700℃から300℃までの冷却速度を3〜50℃/minとすることを特徴とする高周波用無方向性電磁鋼板の製造方法。

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