JP4356580B2 - 無方向性電磁鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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例えば特許文献1では、Si含有量を3.5〜7.0%と高め、これに固溶強化能の高い元素を添加し、抗張力を高める方法が提案されている。しかしながら、この方法により得られる鋼板は非常に脆いため、冷間圧延時に破断しやすく歩留まりが非常に低いという問題がある。
また、特許文献2では、通常の無方向性電磁鋼板のハイグレード品程度にSiを含有させると同時に、Nb,Zrの1種または2種、あるいはTi,Vの1種または2種の炭窒化物を活用し、さらには熱間圧延条件および仕上げ焼鈍条件を制御することにより、機械特性および磁気特性を兼備した降伏強度の高い無方向性電磁鋼板を製造する方法が提案されている。しかしながら、この方法では仕上げ焼鈍温度が低いために、鋼板の結晶粒径が非常に小さく、鉄損が非常に劣るという問題がある。
さらに、特許文献3では、鋼材内部に直径1.0μm以下のCuからなる金属相を含有させることにより、抗張力を高める方法が提案されている。しかしながら、Si含有量の多いフェライト相においてはCu固溶限が小さくなるため、微細なCu相による析出強化が十分得られない場合があり、改良の余地があった。
A=[Ni]+0.5[Mn]+0.5[Cu]+100[C]−([Al]+0.5[Si]+[P]) … (1)
(ここで、[X]は成分Xの含有量(質量%)を示す。)
B=[Ni]+0.5[Mn]+100[C] … (2)
(ここで、[X]は成分Xの含有量(質量%)を示す。)
このようにして得られた鋼板よりJIS5号の引張試験片を加工し、JIS−Z−2241に規定の方法により引張試験を行った。
A=[Ni]+0.5[Mn]+0.5[Cu]+100[C]−([Al]+0.5[Si]+[P]) … (1)
(ここで、[X]は成分Xの含有量(質量%)を示す。)
まず、本発明の無方向性電磁鋼板について説明する。
本発明の無方向性電磁鋼板は、質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以上3.5%以下、Mn:3%以下、P:0.2%以下、Al:0.1%以上1.5%以下、Ni:0.05%以上3%以下、およびCu:1%超4%以下を含有し、残部が実質的にFeおよび不純物からなり、下記式(1)で規定される成分パラメータAが0.8以上3以下、降伏強度が600MPa以上、鉄損W10/400が30W/kg以下、板厚が0.1mm以上0.35mm以下であることを特徴とするものである。
A=[Ni]+0.5[Mn]+0.5[Cu]+100[C]−([Al]+0.5[Si]+[P]) … (1)
(ここで、[X]は成分Xの含有量(質量%)を示す。)
以下、本発明の無方向性電磁鋼板の鋼成分、成分パラメータA、降伏強度、鉄損および板厚について説明する。
(1)C
Cは成分パラメータAを調整するのに安価で有効な元素である。その効果を確実に得るには、C含有量を少なくとも0.005%以上にすることが好ましい。しかしながら、C含有量が0.03%を超えるとセメンタイトなどの炭化物が粗大に析出し、磁気特性劣化が顕著になる可能性がある。したがってC含有量は0.03%以下に限定する。好ましくは、C含有量は0.005%以上0.02%以下である。
Siは鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効である。また、Siは固溶強化により鋼板の強度を高めるのにも有効である。さらにSiは鋼の耐酸化性を向上させ、Cu含有鋼特有の表面疵を抑制するのにも有効である。Si含有量は必要な鉄損特性および強度特性に応じて決定すればよい。しかしながら、Si含有量が1%未満では必要な降伏強度および鉄損が得られない可能性がある。一方、Si含有量が3.5%を超えると冷間圧延において破断しやすくなり製造コストが著しく増大するおそれがある。したがって、Si含有量は1%以上3.5%以下とする。より好ましいSi含有量は1.5%以上3%以下である。
Mnは不可避不純物元素であり添加する必要はない。しかしながら、Mnは鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効である。また、MnはNiやCと共に成分パラメータAを調整しCu析出を制御するのに有効な元素である。それらの効果を確実に得るには、Mnを0.1%以上含有させることが好ましい。一方、Mn含有量が3%を超えると原料コストが大きくなる場合がある。したがって、Mn含有量は3%以下に限定する。
Pは不可避不純物元素であり添加する必要はない。しかしながら、Pは固溶強化により鋼板の強度を高めるのに有効な元素であり、その効果を得るには0.05%以上含有させることが好ましい。一方、P含有量が0.2%を超えると鋼の靱性が劣化し、冷間圧延時に破断するおそれがある。したがって、P含有量は0.2%以下に限定する。
AlはSiと同様に鋼の比抵抗を高め、鉄損低減に有効である。また、Alは鋼の耐酸化性も向上させるので、Cu含有鋼特有の表面疵を抑制するのにも有効である。しかしながら、Al含有量が1.5%を超えると、成分パラメータAの調整のためにMnやNiを多量に含有させる必要が生じ、飽和磁束密度が著しく低下して鉄心性能が劣化する可能性がある。一方、Cuによる表面疵を抑制するにはAl含有量を0.1%以上とすることが有効である。したがって、Al含有量は0.1%以上1.5%以下に限定する。
Cuは本発明において必須の元素である。上述したように、Cu析出物が非常に微細である場合、磁気特性をほとんど劣化させることなく、強度特性を向上させる効果がある。しかしながら、Cu含有量が1%以下ではCu析出による強度上昇が十分得られない場合がある。一方、Cu含有量が増加するにつれて時効強化量は大きくなるが4%を超えると析出強化現象が飽和し、また鋼板の磁束密度も低下する可能性がある。したがって、Cu含有量は1%超4%以下に限定する。また、より望ましいCu含有量は、析出強化が最も顕著になるという点から2%以上3%以下である。
Niはスラブ加熱時の溶融Cuによる耳割れや表面疵発生を抑制するのに必要な元素である。また、成分パラメータAを調整するのにも有効であり、本発明において必須の元素である。その効果を得るにはNi含有量を0.05%以上とする必要がある。一方、Ni含有量が3%を超えると、成分パラメータAを調整するためにSiやAlの含有量を多くする必要が生じ、飽和磁束密度が著しく低下して鉄心性能が劣化する可能性がある。したがって、Ni含有量は0.05%以上3%以下に限定する。より望ましいNi含有量は、0.5%以上2.5%以下である。
本発明においては、Cu析出物を仕上げ焼鈍後の冷却中に微細に分散させるため、α(フェライト)/γ(オーステナイト)変態を有する鋼成分にすることが必須である。具体的には、本発明の無方向性電磁鋼板の主要な成分を、下記式(1)で規定される成分パラメータAが0.8以上3以下となるように調整する。
(ここで、[X]は成分Xの含有量(質量%)を示す。)
本発明の無方向性電磁鋼板の降伏強度は、600MPa以上である。降伏強度を上記範囲とすることにより、本発明の無方向性電磁鋼板を用いて例えばモータロータとした際に、運転中に変形や破壊が発生することなく安定して使用することが可能となるからである。
また、降伏強度の上限値としては特に限定されないが、通常1000MPa以下とする。
本発明の無方向性電磁鋼板の鉄損は、高周波400Hz、最大磁束密度1Tにて測定した値で30W/kg以下であり、好ましくは25W/kg以下とする。高周波での鉄損を上記範囲とすることにより、本発明の無方向性電磁鋼板を用いて例えばモータロータとした際に、モータ損失が低減されるだけでなく、磁石の温度上昇を抑制してトルク特性を低下させずに使用することが可能となるからである。
無方向性電磁鋼板の板厚と電気抵抗とは反比例の関係にあり、板厚が薄いほど無方向性電磁鋼板の渦電流損失を低減することができる。特に、本発明の無方向性電磁鋼板を高速回転するモータロータに用いる場合には、ロータ材の渦電流損を低減することが鋼板の高強度化とならんで重要である。その効果を十分得るには、板厚を0.30mm以下にすることが必要である。一方、板厚が0.1mm未満では積層したロータ鉄心の製造が非常に困難となる場合がある。したがって、板厚は0.1mm以上0.30mm以下に限定する。より望ましくは、0.15mm以上0.30mm以下である。
本発明の無方向性電磁鋼板は、時効熱処理用無方向性電磁鋼板として用いてもよい。本発明の無方向性電磁鋼板に時効熱処理を施すことにより、降伏強度をより一層高めることができるからである。
次に、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法について説明する。
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、上述した鋼組成を備える冷延鋼板に、900℃以上1150℃以下の範囲内の仕上げ焼鈍温度で仕上げ焼鈍を施す仕上げ焼鈍工程と、上記仕上げ焼鈍工程後の鋼板を、900℃以下700℃以上の温度域での平均冷却速度が1℃/s以上50℃/s以下の範囲となるように冷却する冷却工程とを有することを特徴とするものである。
以下、本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法の各工程について説明する。
本発明における仕上げ焼鈍工程は、上述した鋼組成を備える冷延鋼板に、900℃以上1150℃以下の範囲内の仕上げ焼鈍温度で仕上げ焼鈍を施す工程である。
本発明における冷却工程は、上記仕上げ焼鈍工程後の鋼板を、900℃以下700℃以上の温度域での平均冷却速度が1℃/s以上50℃/s以下の範囲となるように冷却する工程である。
本発明においては、上記仕上げ焼鈍工程前に、通常、上述した鋼成分を有する鋼塊または鋼片(以下、スラブということもある。)に熱間圧延を施す熱間圧延工程と、この熱間圧延工程により得られる熱延鋼板に冷間圧延を施す冷間圧延工程とが行われる。
本発明においては、上記冷却工程後に、鋼板に時効熱処理を施す時効熱処理工程を行ってもよい。本発明によれば、時効熱処理を施さなくても降伏強度600MPa以上を得ることができるので、時効熱処理は必須の工程ではないが、より一層降伏強度を高めたい場合は、例えば冷却工程後に得られた鋼板を用いてモータロータを組み立てた後に時効熱処理を施すことが有効である。
P=(T+273)×(20+log(t)) … (3)
(ここで、Tは時効熱処理温度(℃)であり、tは時効熱処理時間(h)である。)
[実施例1]
転炉で脱炭脱硫した溶鋼230tonを取鍋内に出鋼し、取鍋をRH式真空脱ガス装置に移動した。RH式真空脱ガス装置で減圧脱炭を行い、鋼中のC含有量を0.03%以下とした後に、Si、Mn、P、Al、CuおよびNiの含有量を調整し、連続鋳造機にてスラブとした。
上記スラブを加熱炉で1200℃まで加熱し、仕上げ温度780〜850℃、巻き取り温度450℃で熱間圧延し、厚さ2.2mmとした。次いで、酸洗脱スケールして750℃で10時間焼鈍後、厚さ0.27mmまで冷間圧延し、950〜1020℃で仕上げ焼鈍した。そして、900℃〜700℃の温度域を20〜25℃/sの平均冷却速度で冷却した。さらに、鋼板表面に絶縁皮膜を塗布した。
製品の成分分析値、製造条件、および磁気特性・強度特性の評価結果を表−1および表−2に示す。
実施例1にて製造した鋼No.A5およびA9を用いて板厚0.27mmまたは0.50mmの冷延鋼板を製造し、仕上げ焼鈍温度を変化させて仕上げ焼鈍を行い、さらに平均冷却速度を変化させて冷却を行った。そして、鋼板表面に絶縁皮膜を塗布した。
なお、平坦度とは、仕上げ焼鈍後の鋼帯から長手方向に3mの鋼板を採取して、水平な定盤上にのせ、側波の高さ(h)および波長(L)を測定することにより得られるh/L値を基準とするものである。表−3では、平坦度100h/L値が0.4以下のものを「○」印で表し、平坦度100h/L値が0.4を超えるものを「×」印で表す。
Claims (2)
- 質量%で、C:0.03%以下、Si:1%以上3.5%以下、Mn:3%以下、P:0.2%以下、Al:0.1%以上1.5%以下、Ni:0.05%以上3%以下、およびCu:1%超4%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなり、下記式(1)で規定される成分パラメータAが0.8以上3以下、降伏強度が600MPa以上、鉄損W10/400が30W/kg以下、板厚が0.1mm以上0.30mm以下であることを特徴とする無方向性電磁鋼板。
A=[Ni]+0.5[Mn]+0.5[Cu]+100[C]−([Al]+0.5[Si]+[P])
… (1)
(ここで、[X]は成分Xの含有量(質量%)を示す。) - 請求項1に記載の鋼組成を備えるとともに板厚が0.1mm以上0.30mm以下である冷延鋼板に、900℃以上1150℃以下の範囲内の仕上げ焼鈍温度で仕上げ焼鈍を施す仕上げ焼鈍工程と、
前記仕上げ焼鈍工程後の鋼板を、900℃以下700℃以上の温度域での平均冷却速度が1℃/s以上50℃/s以下の範囲となるように冷却する冷却工程とを有することを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
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